(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】浴室及び浴室用壁掛け照明装置
(51)【国際特許分類】
E04H 1/12 20060101AFI20231114BHJP
A47K 4/00 20060101ALI20231114BHJP
F21S 8/00 20060101ALI20231114BHJP
F21V 33/00 20060101ALI20231114BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20231114BHJP
【FI】
E04H1/12 301
A47K4/00
F21S8/00 100
F21V33/00 200
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2019150095
(22)【出願日】2019-08-20
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】辻 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】岡田 志朗
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-079703(JP,A)
【文献】特開2018-152177(JP,A)
【文献】特開平04-020671(JP,A)
【文献】特開2019-120066(JP,A)
【文献】特開2016-149286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/00-1/14
F21V 33/00
F21S 8/00
A47K 4/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に実装されたLEDと、
前記基板及びLEDを内蔵する外郭と、
を備え、
前記外郭は、その上面及び下面に、前記LEDが発する光を外部に照射する第一透光面及び第二透光面を有し、さらに、側面を非透光面としてなり、
前記第一透光面を透過した光は、前記外郭の上方に向けて照射され、
前記第二透光面を透過した光は、前記外郭の下方に向けて照射される、
ことを特徴とする浴室用壁掛け照明装置。
【請求項2】
前記第一透光面から照射される光量は、前記第二透光面から照射される光量よりも大となるように設定してなる、請求項1記載の浴室用壁掛け照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置を備えた浴室、及び浴室の壁面に取り付けられる照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、浴室照明装置の光源としてLEDが多く用いられるようになってきた。しかし、白熱電球や蛍光灯に比べ、LEDは指向性が強く、照射範囲が狭い。そのため、これまでの照明器具の取付位置である洗い場の中央正面の壁面に、LED照明器具を配置すると、LED照明器具の正面側への配光が強くなり、照明器具の直下の作業面である洗い場の明るさが不足しがちである。また、LED照明器具の正面部のグレアにより不快となる問題もある。
これらを解決するために、基板上に配置されたLEDの出射光を浴室の床方向に向けて反射させる反射片を有する金属製の反射器を備えた浴室照明装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の照明装置においても、入浴者に対して正面から光が照射されるため、LEDの強い指向性により不快と感じることがある。例えば、立った姿勢でのシャワー浴は照明装置に近接した位置でなされるので、正面部のグレアにより不快となってしまう。
そこで、本発明は、指向性の強いLEDを光源として用いながら、使用者にとって快適に感じられる照射光を得られる浴室、及び、浴室用壁掛け照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、本発明の浴室は、洗い場床と、前記洗い場床の隣に設置される浴槽と、前記洗い場床及び/又は浴槽の周囲に設置される複数枚の壁材と、前記壁材の上端部に設置される天井と、を備えた浴室において、前記複数の壁材のうち、前記浴槽及び洗い場の双方に隣接する位置に設置される壁材を、その前面にカウンター及び水栓装置を設置してなる第一の壁材とし、さらに、前記第一の壁材の前面における前記水栓装置よりも上方に、光源としてのLEDを内蔵し、上面及び下面にそれぞれ前記LEDが発する光を外部に照射する第一透光面及び第二透光面を設けた照明装置を設置し、前記第一透光面を透過した光は、前記天井に向けて照射されて、当該天井の表面で反射して前記浴室の全体を照らしてなり、前記第二透光面を透過した光は、前記カウンター及び水栓装置を直接的に照射してなる、ことを特徴とする。
【0006】
これによれば、浴室の全体は、照明装置の第一透光面から透過した光が浴室の天井で反射した光で照らされる。指向性の強いLEDを用いて浴室の壁から浴室の全体を照射しようとする際に、従来の照明装置のように照明装置から直接浴室の全体に光を照射すると照明装置の正面にグレアが発生するので入浴者は不快に感じる。しかし、本発明では、照明装置の上面の第一透光面から浴室の天井に向けて照射した光が、天井で反射して浴室の全体に照射される。そのため、入浴者がグレアによる不快を感じることなく、快適に入浴することが可能となる。
また、頭や体を洗ったり髭を剃るなどの作業を行うカウンターや水栓装置は第二透光面から透過した光で直接照らされる。第一透光面から照射されて天井で反射した光は、カウンターの前に居る入浴者よりも後方を照射するため、カウンターや水栓装置を明るく照射することができないが、カウンターや水栓装置は第二透光面からの光で照射されるので、手元を明るくして洗体や洗髪を行うことができる。
【0007】
また、前記第一透光面から照射される光量は、前記第二透光面から照射される光量よりも大となるように設定することができる。
【0008】
これによれば、第二透光面からは比較的小さな光量でカウンターや水栓装置を照らすことになる。そのため、第二透光面からカウンターや水栓装置に向けて照射された光によるカウンターの影あるいは水栓装置の影により洗い場床上あるいはカウンター上に作り出される明暗ラインを薄くすることができるので、暗さや不快感を感じにくくなるとともに、足元や手元での作業に支障をきたさないものとなる。
【0009】
さらに、前記照明装置は、前記第一透光面と第二透光面とをつなぐ側面を非透光面とすることができる。
【0010】
これによれば、照明装置の側面の一部である正面から入浴者に向けて照明装置内で反射した光が照射されるのを防止することができるので、より一層、入浴者が不快に感じることがない。
【0011】
さらに、また、前記天井は、その表面に光拡散面を設けることができる。
【0012】
これによれば、第一透光面から浴室の天井に照射された光を、浴室の全体により好適に拡散させることができるので、浴室の隅に暗がりが生成されるのを抑制することができ、快適な照度の浴室空間を提供することが可能となる。
【0013】
また、本発明の浴室用壁掛け照明装置は、基板と、前記基板に実装されたLEDと、前記基板及びLEDを内蔵する外郭と、を備え、前記外郭は、その上面及び下面に、前記LEDが発する光を外部に照射する第一透光面及び第二透光面を有し、さらに、側面を非透光面としてなり、前記第一透光面を透過した光は、前記外郭の上方に向けて照射され、前記第二透光面を透過した光は、前記外郭の下方に向けて照射される、ことを特徴とする。
【0014】
これによれば、浴室の全体は、照明装置の第一透光面から透過した光が浴室の天井で反射した光で照らされる。指向性の強いLEDを用いて浴室の壁から浴室の全体を照射しようとする際に、従来の照明装置のように照明装置から直接浴室の全体に光を照射すると照明装置の正面にグレアが発生するので入浴者は不快に感じる。しかし、本発明では、照明装置の上面の第一透光面から浴室の天井に向けて照射した光が、天井で反射して浴室の全体に照射される。そのため、入浴者がグレアによる不快を感じることなく、快適に入浴することが可能となる。
また、頭や体を洗ったり髭を剃るなどの作業を行うカウンターや水栓装置は第二透光面から透過した光で直接照らされる。第一透光面から照射されて天井で反射した光は、カウンターや水栓装置を明るく照射することができないが、カウンターや水栓装置は第二透光面からの光で照射されるので、手元を明るくして洗体や洗髪を行うことができる。
【0015】
また、前記第一透光面から照射される光量は、前記第二透光面から照射される光量よりも大となるように設定することができる。
【0016】
これによれば、第二透光面からは比較的小さな光量が照明装置の下方に向けて照射される。そのため、第二透光面からカウンターや水栓装置に向けて照射された光によるカウンターの影あるいは水栓装置の影により洗い場床上あるいはカウンター上に作り出される明暗ラインを薄くすることができるので、暗さや不快感を感じにくくなるとともに、足元や手元での作業に支障をきたさないものとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、指向性の強いLEDを光源として用いながら、使用者にとって快適に感じられる照射光を得られる浴室、及び、浴室用壁掛け照明装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本発明の実施形態にかかる壁掛け照明装置を示す斜視図
【
図4】壁掛け照明装置により浴室を照らす態様を示す模式的概略図
【
図5】壁掛け照明装置の第二の変形例を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施形態にかかる浴室を示す図である。
浴室Aは、洗い場床100と浴槽110が隣り合うように配置され、洗い場床100と浴槽110を囲むように壁材120及びドア枠130が設置され、それら壁材120及びドア枠130の上端に天井140が設置される。この天井140にはエンボス加工が施され、その表面に細かな凹凸が形成されている。この細かな凹凸は、後述する照明装置から天井に向けて照射される光を拡散する光拡散面として機能する。
そして、洗い場床100に面する壁材120の一つ(第一の壁材121)には、洗面器用カウンター150、水栓装置160、シャワーハンガー170、鏡180、壁掛け照明装置190が取り付けられる。
壁掛け照明装置190は、その上面191a及び下面191bに透光面192,193が形成されている。壁掛け照明装置190の上面の透光面(第一透光面)192から照射された光は天井140で反射して浴室全体を照らす。また、壁掛け照明装置190の下面の透光面(第二透光面)193から照射された光は水栓装置160や洗面器用カウンター150を照らす。この壁掛け照明装置190は、第一の壁材121にネジ止めによって取り付けられている。
なお、水栓装置160には、シャワーホース161及びシャワーヘッド162が付設され、シャワーヘッド162はシャワーハンガー170に掛止される。
【0020】
次に、壁掛け照明装置190について説明する。
図2は本発明の実施形態にかかる壁掛け照明装置を示す斜視図、
図3は壁掛け照明装置を示す概略縦断面図である。
この壁掛け照明装置190は、上面191aと、下面191bと、上面191a及び下面191bとを繋ぐ側面(正面191c、左側面191d、右側面191e)と、第一の壁材121への取付部を有する背面191fと、を具備する外郭191を備えている。そして、外郭191の内部には、基板194が内蔵されている。そして、その基板194の上面及び下面にLED195が実装されている。LED195は、図示せぬ電気配線により電力供給を受けて所定の範囲に光を照射する。また、LED195への電力供給は、天井140の裏に設置された制御部(図示せず)により制御される。
外郭191の上面191aには、前述した透光面のうちの一方である第一透光面192が、下面191bには第二透光面193が設けられている。LED195が発する光は、これらの透光面192,193を透過して壁掛け照明装置190の外部を照らす。一方、外郭191の正面191c、左側面191d、右側面191eは、LED195が照射する光を透過しない非透光面となる遮光部196とされている。
【0021】
この壁掛け照明装置190は、外郭191の側面(正面191c、左側面191d、右側面191e)からは光を照射せず、その上面191a及び下面191bからのみ光を照射する。
【0022】
また、この壁掛け照明装置190は、第一透光面192から照射される光量よりも、第二透光面193から照射される光量が小さくなるように設定されている。
この光量は、LED195の数や種類、LED195に供給される総電力量を調整することにより設定される。または、第一透光面192の光透過率を第二透光面193の光透過率よりも高めて設定してもよい。
【0023】
図4は、この壁掛け照明装置190により浴室100を照らす態様を示す模式的概略図である。
従来の浴室では、壁に設けられたLEDを内蔵した照明装置300の上面、下面、側面(正面、左側面、右側面)から全方向に向けて同等の光量の光が照射される。そのため、立ち上がった入浴者は、照明装置300の正面に発生するグレアにより不快感を感じることがある。また、下方に照射された光は、水栓装置160や洗面器用カウンター150にあたり、それらの下方に濃い影を作るため、影の境界部分に濃い明暗ラインが発生して足元や手元に暗さを感じることがある。
これに対して、本発明の浴室では、壁掛け照明装置190は、その上面191aの第一透光面192及び下面191bの第二透光面193から光を照射する。上面191aから照射される光は、天井140の表面の凹凸により拡散されて、浴室100の全体を照らす。また、頭や体を洗ったり髭を剃るなどの作業を行う水栓装置160や洗面器用カウンター150は、第二透光面193から照射される光で直接照らされる。第一透光面192から照射されて天井140で反射した光は、洗面器用カウンター150の前に居る入浴者よりも後方を照射するため、水栓装置160や洗面器用カウンター150を明るく照射することができないが、水栓装置160や洗面器用カウンター150は第二透光面193からの光で照射されるので、手元を明るくして洗体や洗髪を行うことができる。さらに、第二透光面193から照射される光は、上面191aよりも光量が小さくされている。そのため、水栓装置160や洗面器用カウンター150によりできる影により形成される明暗ラインを従来よりも薄くすることができるので、足元や手元に暗さを感じにくいものとなる。
そして、壁掛け照明装置190の側面(正面191c、左側面191d、右側面191e)からは、光は照射されない。より詳しくは、LED195が発する光が壁掛け照明装置190の内部で反射した光が壁掛け照明装置190の側面から水平方向に向けて照射されることがない。そのため、壁掛け照明装置190の正面にグレアが生じることがなく、立ち上がった入浴者が壁掛け照明装置190の光を眩しいと感じにくく、不快を感じにくくなる。
【0024】
また、第一透光面192から照射される光量は、第二透光面193から照射される光量よりも大きくなるように設定されている。言い換えると、第二透光面193から照射される光量は、第一透光面192から照射される光量よりも小さくなるように設定されている。そのため、第二透光面193から洗面器用カウンター150や水栓装置160に向けて照射された光により洗面器用カウンター150の影あるいは水栓装置160の影が洗い場床110上あるいは洗面器用カウンター150上に作り出される明暗ラインを薄くすることができる。したがって、暗さや不快感を感じにくくなるとともに、足元や手元での作業に支障をきたさないものとなる。
【0025】
次に、本実施形態の変形例を示す。
図5は、壁掛け照明装置の変形例を示す概略断面図である。
この変形例の壁掛け照明装置290においては、基板294の上面のみにLED295が実装されている。そして、このLED295が発する光は、一部は第一透光面292から照射され、一部は壁掛け照明装置290の内部で反射して外郭291と基板294の隙間から基板294の下方に回って第一透光面292よりも小さな光量で第二透光面293から照射される。
これによれば、基板294の上下両面にLED295を実装せずに壁掛け照明装置290の上面291a及び下面291bから好適に光を照射することができる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の作用効果を発揮する限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、壁掛け照明装置の外郭の正面、左側面、右側面を遮光部とするのに代えて、光量を大きく減じて外部に照射する減光部としてもよい。
また、LEDを実装した基板を、室内側の端部を下方となるように傾斜させ、第二透光面から第一の壁材側に向けて光を照射することもできる。
さらに、また、第一透光面から照射される光量と、第二透光面から照射される光量は、それぞれ光量を調整可能にすることもできる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0027】
100 浴室
110 洗い場床
120 浴槽
130 壁材
131 第一の壁材
140 天井
150 洗面器用カウンター
160 水栓装置
190 照明装置
191 外郭
191a 上面
191b 下面
192 第一透光面
193 第二透光面
194 基板
195 LED
196 非透光面(遮光部)