(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】信号伝送装置及び信号伝送方法
(51)【国際特許分類】
H04B 13/00 20060101AFI20231114BHJP
H04B 1/38 20150101ALI20231114BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H04B13/00
H04B1/38
H01Q1/22 C
(21)【出願番号】P 2019151946
(22)【出願日】2019-08-22
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】新川 智大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕和
(72)【発明者】
【氏名】菅原 寿之
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-172788(JP,A)
【文献】特開2002-124806(JP,A)
【文献】特開2016-032176(JP,A)
【文献】特開2000-307496(JP,A)
【文献】特表2015-522221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 13/00
H04B 1/38
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周波数で変調された信号を含む電波を送信する第1アンテナと、
前記信号を含む電波を、
建造物又は移動体の非金属部分である媒体を介して受信する第2アンテナと、
前記第2アンテナに接続され、前記信号の復調を行う復調装置と、
前記復調装置に接続され、前記第1周波数よりも低い第2周波数で前記信号を変調する変調装置と、
前記第1アンテナと前記第2アンテナとを前記媒体
を介して向かい合わせに固定するための固定部材と、
を含み、
前記第2周波数で変調された信号を
、前記変調装置に接続されたアンテナによって建造物又は移動体の内部に電波として放射する、信号伝送装置。
【請求項2】
前記第1アンテナ及び前記第2アンテナの少なくとも一方は、指向性アンテナである、請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項3】
前記第1アンテナに接続され、前記信号を含む電波を受信する第3アンテナをさらに含む、請求項1
又は2に記載の信号伝送装置。
【請求項4】
前記第1アンテナ及び前記第2アンテナの少なくとも一方に接続された給電装置を含む、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項5】
第1周波数で変調された信号を含む電波を受信するアンテナと、
前記アンテナに接続された第1電極と、
第2電極と、
前記第2電極に接続され、前記信号の復調を行う復調装置と、
前記復調装置に接続され、前記第1周波数よりも低い第2周波数で前記信号を変調する変調装置と、
前記第1電極と前記第2電極とを
建造物又は移動体の非金属部分である媒体
を介して向かい合わせに固定するための固定部材と、
を含み、
前記第2周波数で変調された信号を
、前記変調装置に接続されたアンテナによって建造物又は移動体の内部に電波として放射する、信号伝送装置。
【請求項6】
前記媒体は、ガラスである、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項7】
前記固定部材は、磁石を含む、請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項8】
第1周波数で変調された信号を含む電波を、建造物又は移動体の外部に固定された第1アンテナを用いて前記建造物又は移動体の内部に向かって送信し、
前記第1アンテナから送信された電波を、
建造物又は移動体の非金属部分である媒体を介して、前記建造物又は移動体の内部に
前記第1アンテナと向かい合わせに固定された第2アンテナを用いて受信し、
前記第2アンテナで受信された電波を、前記第2アンテナに接続された復調装置を用いて復調し、
前記復調装置で復調された信号を、前記復調装置に接続された変調装置を用いて前記第1周波数よりも低い第2周波数で変調し、
前記第2周波数で変調された信号を
、前記変調装置に接続されたアンテナによって前記建造物又は移動体の内部に電波として放射する、信号伝送方法。
【請求項9】
前記第1アンテナ及び前記第2アンテナの少なくとも一方は、指向性アンテナである、請求項
8に記載の信号伝送方法。
【請求項10】
前記第1アンテナから送信された電波は、前記建造物又は移動体の一部である前記媒体を通して前記第2アンテナに受信される、請求項
8又は
9に記載の信号伝送方法。
【請求項11】
第3アンテナを用いて第1周波数で変調された信号を含む電波を受信し、前記第3アンテナで受信した信号を前記第1アンテナに伝送する、請求項
8乃至
10のいずれか一項に記載の信号伝送方法。
【請求項12】
アンテナを用いて第1周波数で変調された信号を含む電波を受信し、
建造物又は移動体の外部に固定された第1電極と
、前記建造物又は移動体の内部に
前記建造物又は移動体の非金属部分である媒体を介して固定された第2電極とで構成されたコンデンサを用いて、前記アンテナで受信された電波を、
前記媒体を介して前記建造物又は移動体の内部に伝送し、
前記第2電極に接続された復調装置を用いて前記信号を復調し、
前記復調装置で復調された信号を、前記復調装置に接続された変調装置を用いて前記第1周波数よりも低い第2周波数で変調し、
前記第2周波数で変調された信号を
、前記変調装置に接続されたアンテナによって前記建造物又は移動体の内部に電波として放射する、信号伝送方法。
【請求項13】
前記第1電極と前記第2電極とは、前記建造物又は移動体の一部である前記媒体を介して向かい合わせに固定される、請求項
12に記載の信号伝送方法。
【請求項14】
前記媒体は、ガラスである、請求項
8乃至
13のいずれか一項に記載の信号伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号伝送装置に関する。特に、建造物又は移動体の外部から内部へ信号を伝送するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、タブレット端末等のモバイル端末の普及に伴い、データ通信のための無線通信環境の確保が重要となっている。特に、建造物等の内部(屋内)は、基地局より高い建造物等によって電波が遮られ、電波が到達しにくい場合があった。このような状況を改善するために、建造物の窓ガラスにアンテナ機能を与えることにより、電波の送受信を可能とする技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術は、複層ガラスを構成する一対のガラスに対してスロットアンテナを設け、それら2つのスロットアンテナを中継装置で繋ぐ構成を有する。したがって、特許文献1に記載された技術を利用するためには、建造物に対して専用の複層ガラス及び中継装置を設置する必要があり、一般家庭での導入には難があるという問題があった。
【0005】
特に、近年、次世代の通信規格である5G(第5世代移動通信システム)において、ミリ波も含む高周波数帯の電波の利用が想定されている。5Gで利用する電波は直進性が高く、従来よりも高層ビル等に遮られると電波が届きにくいという問題がある。さらに、高周波数帯の電波は波長が短いため、建造物の非金属部分(例えば、窓ガラス)における減衰や反射が大きくなるという問題もある。
【0006】
したがって、今後普及する5Gに対応するためには、建造物や車両等の移動体の内部に安定した無線通信環境を確保することが急務となっている。
【0007】
本発明の課題の一つは、簡易な構成により、建造物又は移動体の内部に安定した無線通信環境を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態における信号伝送装置は、第1周波数で変調された信号を含む電波を送信する第1アンテナと、前記信号を含む電波を、媒体を介して受信する第2アンテナと、前記第2アンテナに接続され、前記信号の復調を行う復調装置と、前記第1アンテナと前記第2アンテナとを前記媒体に固定するための固定部材と、を含む。
【0009】
本発明の一実施形態における信号伝送装置は、第1周波数で変調された信号を含む電波を受信するアンテナと、前記アンテナに接続された第1電極と、第2電極と、前記第2電極に接続され、前記信号の復調を行う復調装置と、前記第1電極と前記第2電極とを媒体に固定するための固定部材と、を含む。
【0010】
本発明の一実施形態における窓ガラスは、第1面に、第1周波数で変調された信号を含む電波を受信する第1アンテナと、前記第1アンテナに接続された第1電極とを備え、前記第1面とは反対側の第2面に、前記第1電極と向かい合う第2電極を備える。
【0011】
本発明の一実施形態における信号伝送方法は、第1周波数で変調された信号を含む電波を、建造物又は移動体の外部に固定された第1アンテナを用いて前記建造物又は移動体の内部に向かって送信し、前記第1アンテナから送信された電波を、媒体を介して、前記建造物又は移動体の内部に固定された第2アンテナを用いて受信し、前記第2アンテナで受信された電波を、前記第2アンテナに接続された復調装置を用いて復調する。
【0012】
本発明の一実施形態における信号伝送方法は、アンテナを用いて第1周波数で変調された信号を含む電波を受信し、建造物又は移動体の外部に固定された第1電極と前記建造物又は移動体の内部に固定された第2電極とで構成されたコンデンサを用いて、前記アンテナで受信された電波を、媒体を介して前記建造物又は移動体の内部に伝送し、前記第2電極に接続された復調装置を用いて前記信号を復調する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、簡易な構成により、建造物又は移動体の内部に安定した無線通信環境を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態における信号伝送装置の構成を示す図である。
【
図2】第1アンテナ及び第2アンテナを固定するための固定部材の一例を示す図である。
【
図3】第1実施形態における信号伝送方法の構成を示すフローチャート図である。
【
図4】第2実施形態における信号伝送装置の構成を示す図である。
【
図5】第3実施形態における信号伝送装置の構成を示す図である。
【
図6】第3実施形態において、第1電極及び第2電極を窓ガラスに固定した一例を示す図である。
【
図7】第4実施形態における信号伝送装置の構成を示す図である。
【
図8】第5実施形態における固定部材の一例を示す図である。
【
図9】第6実施形態における信号伝送装置の建造物又は移動体への適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、機能が同一または類似の部分には同一または類似の符号を付し、説明を省略する場合がある。また、説明の都合上、図面の寸法比率が実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。
【0016】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の信号伝送装置100の構成を示す図である。本実施形態の信号伝送装置100は、建造物の壁、屋根又は窓ガラスなどの媒体(非金属部分)に装着される。これにより、信号伝送装置100は、建造物の外部で受信した電波に含まれる信号を建造物の内部に伝送する機能を有する。なお、本実施形態の信号伝送装置100は、5Gで使用する電波を建造物の内部に伝送する装置の一例である。したがって、後述する第1アンテナ120、第2アンテナ130及び第3アンテナ140は、いずれも数GHz以上(例えば、数十GHz以上)の高い周波数の電波(例えば、ミリ波)を送受信可能である。
【0017】
図1に示されるように、建造物(例えば、家屋)の窓ガラス110の第1面(建造物の外部に対する面)110aには、第1アンテナ120が固定される。窓ガラス110の第1面110aとは反対側の第2面(建造物の内部に対する面)110bには、第2アンテナ130が固定される。第1アンテナ120と第2アンテナ130は、互いに誘電体である窓ガラス110を介して向かい合わせに固定される。本実施形態では、第1アンテナ120と第2アンテナ130との間で、第1周波数(例えば、28GHz)で変調された信号を含む電波の送受信が行われる。
【0018】
本実施形態では、第1アンテナ120及び第2アンテナ130として、指向性アンテナを用いる。指向性アンテナとは、電波の放射方向と放射強度を制御可能なアンテナであり、例えば特定の方向へ強く電波を放射することが可能である。このような指向性アンテナとしては、例えばアレイアンテナを用いることができる。アレイアンテナは、複数のアンテナ素子を規則的に配列したアンテナである。指向性アンテナは、各アンテナ素子の振幅及び位相を電気的に制御することにより、アンテナの指向性を制御することができる。
【0019】
具体的には、本実施形態では、第1アンテナ120及び第2アンテナ130は、フェーズドアレイアンテナである。フェーズドアレイアンテナを用いた場合、第1アンテナ120と第2アンテナ130との間でビームフォーミングによる電波の送受信が可能となる。この場合、第1アンテナ120及び第2アンテナ130は、最適な指向性を設定して電波の送受信を行うことができる。このように、指向性アンテナを用いた場合、アンテナ間で最適な指向性を設定できるため、互いの位置が多少ずれても、良好な信号伝送が可能である。
【0020】
第1アンテナ120及び第2アンテナ130の窓ガラス110への固定は、接着剤、粘着剤又は磁石などの固定部材を用いることができる。本実施形態の信号伝送装置100は、一般家庭において、使用者が自分で窓ガラス110等の媒体に固定して使用することを想定している。そのため、簡易な固定部材を用いて第1アンテナ120及び第2アンテナ130を窓ガラス110に固定できる構成となっている。
【0021】
図2(A)及び
図2(B)は、第1アンテナ120及び第2アンテナ130を固定するための固定部材の一例を示す図である。
図2(A)において、第1アンテナ120における窓ガラス110に対向する面120aには、固定部材として粘着剤122aが設けられている。第1アンテナ120の面120aは、複数のアンテナ素子(図示せず)が配列されている。また、第2アンテナ130における窓ガラス110に対向する面130aには、固定部材として粘着剤132aが設けられている。第2アンテナ130の面130aもまた、複数のアンテナ素子(図示せず)が配列されている。
【0022】
粘着剤122a及び132aは、どのような態様で設けてもよい。例えば、フィルム状の粘着剤を用いてもよいし、ゲル状の粘着剤を用いてもよい。このように、本実施形態の場合、第1アンテナ120及び130の固定に粘着剤122a及び132aを用いるため、第1アンテナ120及び130の窓ガラス110からの着脱が容易である。なお、「粘着剤」は、「接着剤」よりも接着力が弱く、被接着物に対して着脱可能な固定部材である。
【0023】
図2(A)の例では、粘着剤122a及び132aを用いて第1アンテナ120と第2アンテナ130とを窓ガラス110に対して向かい合わせに固定することができる。すなわち、特別な工具及び技術を用いなくても簡単に第1アンテナ120及び第2アンテナ130を窓ガラス110に対して固定できる。なお、本実施形態では、粘着剤122a及び132aは、それぞれ面120a及び130aの外縁に設けられている。しかしながら、これに限らず、粘着剤122a及び132aを設ける位置は任意である。
【0024】
また、
図2(B)において、第1アンテナ120の面120aには、固定部材として磁石122bが設けられている。また、第2アンテナ130の面130aには、固定部材として磁石132bが設けられている。このとき、磁石122b及び磁石132bは、互いに逆極性の磁力を有している。したがって、面120aと面130aとの間には、磁石122b及び磁石132bによって、互いに引き寄せ合う力が働く。
【0025】
図2(B)の例では、磁石122b及び磁石132bの磁力により、第1アンテナ120及び第2アンテナ130の位置を固定することができる。そのため、窓ガラス110を介して第1アンテナ120及び第2アンテナ130を向かい合わせるだけでよい。
図2(B)の例では、第1アンテナ120及び第2アンテナ130の磁力による位置決めが容易である。したがって、使用者が細かな調整を行わなくてもアンテナの位置決めを正確に行うことができる。
【0026】
次に、
図1に示されるように、第1アンテナ120に対しては、第1給電装置125が接続されている。第1給電装置125は、窓ガラス110の第1面110aに固定されている。第2アンテナ130に対しては、第2給電装置135が接続されている。第2給電装置135は、窓ガラス110の第2面110bに固定されている。第1給電装置125及び第2給電装置135は、それぞれ第1アンテナ120及び第2アンテナ130に対して給電を行うための電源として機能する。一点鎖線の矢印で示すように、第2給電装置135は、第1給電装置125に対して窓ガラス110を介して無線給電を行っている。第1給電装置125及び第2給電装置135は、接着剤、粘着剤又は磁石等の固定部材を用いて窓ガラス110に固定すればよい。
【0027】
建造物の外部に位置する第1アンテナ120には、第3アンテナ140が取り付けられている。第3アンテナ140は、空中の電波(第1周波数で変調された信号を含む電波)を受信して、第1アンテナ120に信号を伝送する役割を有する。また、第3アンテナ140は、第1アンテナ120から伝送された信号を電波として空中に出力する役割を有している。第3アンテナ140としては、例えばダイポールアンテナを用いることができる。ただし、第3アンテナ140は、これに限らず、マイクロストリップアンテナ等の他のタイプのアンテナを用いてもよい。
【0028】
第2アンテナ130は、第1変復調装置150に接続されている。第1変復調装置150は、第1復調装置150a及び第1変調装置150bを含む。第1復調装置150aは、第2アンテナ130から受信した信号を復調して、元の信号(変調前の信号)を取得する。逆に、第1変調装置150bは、後述する第2復調装置160aから受信した信号を第1周波数で変調する。このように、第3アンテナ140から第1変復調装置150に至るまで、信号伝送装置100は、第1周波数で変調された信号を処理する構成となっている。
【0029】
さらに、信号伝送装置100は、第2変復調装置160を含む。第2変復調装置160は、第2復調装置160a及び第2変調装置160bを備えている。第2復調装置160aは、第4アンテナ170から受信した信号を復調して、元の信号(変調前の信号)を取得する。逆に、第2変調装置160bは、第1復調装置150aから受信した信号を第1周波数よりも低い第2周波数で変調する。
【0030】
第2周波数は、例えば免許が不要な無線LAN等で使用する数GHz(例えば、2.4GHz又は5GHz)の周波数である。第2変復調装置160としては、例えば、モデム又は光回線終端装置(ONU:Optical Network Unit)などを例示することができる。また、第4アンテナ170としては、無線LANルーターのアンテナなどを例示することができる。
【0031】
このように、本実施形態によれば、第1周波数の電波を第2周波数の電波にダウンコンバートして屋内の無線通信環境を構築することができる。他方、第4アンテナ170で受信された電波は、第2復調装置160aにて元の信号に復調される。復調された信号は、第1変調装置150bにて第1周波数で変調された信号に変換される。すなわち、本実施形態では、第2周波数の電波を第1周波数の電波にアップコンバートして屋外に出力することができる。
【0032】
ここで、本実施形態の信号伝送装置100を用いた信号伝送方法について、
図3を用いて説明する。
【0033】
図3は、第1実施形態における信号伝送方法の構成を示すフローチャート図である。まず、第3アンテナ140は、第1周波数で変調された信号を含む電波を受信する。第3アンテナ140により受信された信号は、建造物の外部に固定された第1アンテナ120に伝達される。第1アンテナ120は、受信した信号を含む電波を、建造物の内部に向かって送信する(S301)。
【0034】
建造物の内部に固定された第2アンテナ130は、第1アンテナ120から送信された電波を、窓ガラス110を介して受信する(S302)。このように、本実施形態では、第1アンテナ120及び第2アンテナ130を用いて、窓ガラス110を介した電波の送受信を行う。したがって、建造物の外部で受信した5Gで使用される電波を、建造物の内部に伝送することができる。
【0035】
第2アンテナ130で受信された信号は、第2アンテナ130に接続された第1復調装置150aに伝達される。第1復調装置150aは、受信した信号を復調して元の信号を抽出する(S303)。以上の過程を経て、5Gで使用する電波を建造物の内部に伝送し、当該電波に含まれる元の信号を得ることができる。
【0036】
復調された信号は、第1復調装置150aに接続された第2変調装置160bに伝達され、第1周波数よりも低い第2周波数で変調される。第2周波数で変調された信号は、第4アンテナ170により、建造物の内部に電波として放射される。これにより、5Gで使用される電波に含まれる信号を、屋内のWiFi等の環境で利用することができる。
【0037】
以上、往路(建造物の外部から内部への信号伝送)を例に挙げて説明したが、復路(建造物の内部から外部への信号伝送)も同様である。すなわち、第4アンテナ170で受信された第2周波数で変調された信号は、第2復調装置160aで復調される。復調された信号は、第1変調装置150bにより第1周波数で変調され、第2アンテナ130に伝達される。第2アンテナ130は、受信した信号を含む電波を、建造物の外部に向かって送信する。第1アンテナ120は、第2アンテナ130から送信された電波を、窓ガラス110を介して受信し、第3アンテナ140に伝達する。第1周波数で変調された信号は、第3アンテナ140により、建造物の外部に電波として放射される。
【0038】
以上のように、本実施形態の信号伝送装置100によれば、一対のアンテナを窓ガラスに固定するという簡易な構成により、5Gに使用する高周波数で変調された信号を建造物の内部へと伝送することができる。したがって、本実施形態の信号伝送装置100は、高い周波数で変調された信号であっても建造物の内部に安定して供給することができ、屋内に安定した無線通信環境を提供することができる。また、本実施形態の場合、建造物の外に配置する部材は、アンテナのみとなる。したがってアンテナ部分だけを外部環境に対応させればよく、製品の実装が簡単になるという利点を有する。
【0039】
さらに、本実施形態によれば、数十GHz以上の高い周波数で変調された信号を建造物の内部に伝送した後、既存の設備で使用可能な周波数にダウンコンバートすることにより、屋内に安定した無線通信環境を構築することができる。
【0040】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態の信号伝送装置100aの構成を示す図である。具体的には、信号伝送装置100aは、第1実施形態の信号伝送装置100から第2変復調装置160及び第4アンテナ170を省略した構成を有する。代わりに、信号伝送装置100aは、第1周波数より低い第2周波数で変調された信号を取り扱うモデム内蔵タイプの無線LANルーター180が接続されている。
【0041】
本実施形態の場合、信号伝送装置100aによって伝送された第1周波数で変調された信号は、第1復調装置150aによって復調され、元の信号に変換される。無線LANルーター180は、第1復調装置150aから元の信号を受信し、第2周波数で変調する。そして、無線LANルーター180は、第2周波数で変調された信号を含む電波を建造物の内部に放射する。
【0042】
このように、本実施形態では、第1周波数で変調された信号を取り扱う部分を信号伝送装置100aとして構成する。そして、第2周波数で変調された信号を取り扱う部分を既存の構成(例えば、モデム、光回線終端装置、無線LANルーター等)とする。
【0043】
(変形例1)
第1実施形態及び第2実施形態では、第3アンテナ140を用いて空中の電波を受信したり空中に電波を送信したりする例を示した。しかしながら、第1アンテナ120が、空中の電波を受信する機能と空中に電波を送信する機能を兼ね備えていてもよい。この場合には、第3アンテナ140は、信号伝送装置100から省略することができる。
【0044】
(変形例2)
第1実施形態及び第2実施形態では、建造物の外部から内部へ信号を伝送する場合と、建造物の内部から外部へ信号を伝送する場合の両方に対応する構成を示した。しかしながら、この例に限らず、例えば、建造物の外部から内部へ信号を伝送する場合のみ(又は、その逆の場合のみ)に対応する構成としてもよい。例えば、建造物の外部から内部へ電波を伝送する目的のみであれば、第1変復調装置150に代えて、第1復調装置150aを設ければよい。逆に、建造物の内部から外部へ電波を伝送する目的のみであれば、第1変復調装置150に代えて、第1変調装置150bを設ければよい。
【0045】
(変形例3)
第1実施形態及び第2実施形態では、第1アンテナ120に対して第1給電装置125を設け、第2アンテナ130に対して第2給電装置135を設ける例を示した。しかしながら、第1アンテナ120及び第2アンテナ130の少なくとも一方に給電装置が設けられていればよい。このような構成は、例えば、第1アンテナ120及び第2アンテナ130のいずれか一方のみがビームフォーミング可能であれば良い場合に採用できる。この場合、ビームフォーミングを行う側のアンテナに対してのみ給電装置を接続する構成であってもよい。具体的には、第2給電装置135のみ給電を行い、第2給電装置135がビームフォーミングを行っても良い。また、特に給電の必要がなければ第1給電装置125及び第2給電装置135を両方とも省略してもよい。
【0046】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、第1給電装置125に対して無線給電を行う例を示した。しかしながら、この例に限らず、第1アンテナ120と有線による給電を行ってもよい。この場合、建造物の外壁等に、任意の位置で給電が可能なレール部材(例えば、スライドコンセント等と呼ばれる部材)を設け、第1アンテナ120に連結された電源をレール部材に沿って移動可能としてもよい。
【0047】
<第3実施形態>
第1実施形態及び第2実施形態では、窓ガラス110を介して電波を送受信する構成を示したが、本実施形態では、窓ガラス110を誘電体としてコンデンサを形成する例を示す。本実施形態では、周波数の高い信号ほどコンデンサを通過しやすいという特性を利用して、5Gに使用する電波を建造物の内部に伝送する。なお、本実施形態では、第1実施形態と異なる点に着目して説明を行い、図面において共通する部分は、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0048】
図5は、第3実施形態の信号伝送装置200の構成を示す図である。
図1に示した信号伝送装置100と異なる点は、第1アンテナ120及び第2アンテナ130に代えて、第1電極220及び第2電極230を設けた点である。
図5に示した信号伝送装置200は、第1電極220及び第2電極230を構成に含む。第1電極220と第2電極230は、窓ガラス110を挟むことによりコンデンサを形成している。なお、本実施形態では、第1電極220に対してアンテナ240で受信した電波に含まれる信号を伝送している。しかしながら、第1電極220にアンテナとしての機能を設け、アンテナ240を省略することも可能である。
【0049】
第1電極220及び第2電極230は、導電性を有する材料であれば如何なる材料を用いても良い。例えば、銀、銅又はアルミニウムを用いることにより、コンデンサの抵抗成分を減らすことができる。他の例として、ITO(Indium Tin Oxide)等の金属酸化物で構成される透明導電膜を用いてもよい。この場合、窓ガラス110の透光性を損なうことなくコンデンサを形成することが可能である。その他の方法として、幅の狭い線状の電極を互いに狭い間隔で並べて配置し、電気的に面状の電極として機能させることも可能である。
【0050】
図6(A)及び
図6(B)は、第3実施形態において、第1電極220及び第2電極230を窓ガラス110に固定した一例を示す図である。
【0051】
図6(A)は、第1電極220及び第2電極230として、銀、銅、アルミニウム等の導電性に優れた金属材料を用いた例である。これらの金属材料は遮光性を有するため、窓ガラス110の一部の領域を用いてコンデンサを形成することが望ましい。この場合、第1電極220及び第2電極230の面積は小さくなるが、抵抗の低い金属材料を用いることができるため、コンデンサのインダクタンス成分又はインピーダンス成分を小さくすることができる。
【0052】
図6(A)に示されるように、本実施形態では、アンテナ240も窓ガラス110の第1面110aに固定されている。例えば、アンテナ240としてマイクロストリップアンテナを用いれば、第1電極220の近傍にアンテナ240を配置することができる。このように、
図6(A)に示される窓ガラス110は、第1面110aにアンテナ240及び第1電極220を備える。また、窓ガラス110は、第1面とは反対側の第2面110bに第1電極220と向かい合う第2電極230を備えている。
【0053】
図6(B)は、第1電極220及び第2電極230として、ITO等の金属酸化物を用いた例である。これらの金属酸化物を用いた導電膜は透光性を有するため、窓ガラス110を誘電体とした場合には、透光性のコンデンサを形成することができる。したがって、
図6(B)に示されるように、第1電極220及び第2電極230の面積が窓ガラス110の大部分を占めても、窓ガラス110の透光性を損なうことがない。一般的に、金属酸化物の導電性は金属に比べて低い。しかしながら、金属酸化物であれば大きな面積を確保することができるため、コンデンサのインダクタンス成分又はインピーダンス成分を小さくすることができる。なお、
図6(B)に示す窓ガラス110も、
図6(A)と同様に、アンテナ240が窓ガラス110の第1面110aに固定されている。
【0054】
なお、本実施形態において、第1電極220及び第2電極230の窓ガラス110への固定には、第1実施形態と同様に、接着剤、粘着剤又は磁石等の固定部材を用いることができる。本実施形態の場合、第1電極220と第2電極230とが向かい合う部分がコンデンサを形成する。そのため、第1電極220と第2電極230の位置合わせが重要と言える。したがって、本実施形態においては、固定部材として磁石を用い、磁力によって自発的に位置合わせができるようにすることが好ましい。
【0055】
また、本実施形態では、第1電極220、窓ガラス110及び第2電極230で形成したコンデンサを用いて、第1周波数で変調された信号を通過させる。この場合、コンデンサは、共振周波数が第1周波数となるように調整される。コンデンサの共振周波数は、第1電極220、窓ガラス110及び第2電極230の各物性値により調整すればよい。第1電極220又は第2電極230に補助回路等を追加して、容量成分、抵抗成分又はインダクタンス成分等を追加することにより調整してもよい。
【0056】
第1電極220、窓ガラス110及び第2電極230で構成されるコンデンサを通過した信号は、第1復調装置150aで復調される。その後、復調された元の信号が第2変調装置160bにおいて第2周波数で変調され、アンテナ270から放射される。
【0057】
以上のように、信号伝送装置200は、一対の電極を窓ガラスに固定するという簡易な構成を有する。これにより、信号伝送装置200は、5Gに使用する高周波数で変調された信号を建造物の内部へと伝送することができる。したがって、信号伝送装置200は、高い周波数で変調された信号であっても建造物の内部に安定して供給することができる。また、信号伝送装置200は、屋内に安定した無線通信環境を提供することができる。
【0058】
さらに、本実施形態では、数十GHz以上の高い周波数で変調された信号を建造物の内部に伝送した後、既存の設備で使用可能な周波数にダウンコンバートする。これにより、信号伝送装置200は、屋内に安定した無線通信環境を構築することができる。
【0059】
なお、第1実施形態に示した変形例1及び2は、第3実施形態の信号伝送装置200においても適用することができる。すなわち、アンテナ240は省略してもよいし、第1復調装置150a及び第1変調装置150bは、いずれか一方のみであってもよい。また、第3実施形態の信号伝送装置200は、第2実施形態と同様に、第2変復調装置160及びアンテナ270を省略してもよい。つまり、信号伝送装置200は、第1周波数で変調された信号を取り扱う部分(例えば、第1電極220、第2電極230及び第1変復調装置150)で構成されていてもよい。
【0060】
<第4実施形態>
第1実施形態から第3実施形態までは、建造物の外部で受信した第1周波数で変調された信号を、その周波数で建造物の内部に伝送する構成を示した。これに対し、本実施形態では、建造物の外部で周波数変換を行い、第2周波数で変調された信号を建造物の内部に伝送する例を示す。なお、本実施形態では、第1実施形態と異なる点に着目して説明を行い、図面において共通する部分は、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0061】
図7は、第4実施形態の信号伝送装置300の構成を示す図である。
図1に示した信号伝送装置100と異なる点は、第1変復調装置150及び第2変復調装置160が、建造物の外部(窓ガラス110の第1面110aの側)に配置される点である。本実施形態では、アンテナ340が第1変復調装置150に接続される。また、窓ガラス110の第1面110aに固定されたアンテナ320が第2変復調装置160に接続される。
【0062】
第1周波数(例えば、28GHz)で変調された信号を含む電波は、アンテナ340で受信され、第1復調装置150aに伝送される。伝送された信号は、第1復調装置150aで復調され、元の信号となって第2変調装置160bに伝送される。第2変調装置160bでは、元の信号が第1周波数よりも低い第2周波数(例えば、2.4GHz)にダウンコンバートされる。ダウンコンバートされた信号は、アンテナ320から電波として放射される。
【0063】
このとき、アンテナ320から放射された電波は、周波数が比較的低い周波数であるため、問題なく窓ガラス110を通過することができる。つまり、信号伝送装置300は、5Gで使用される電波を、建造物の外部にて、既存の設備で使用可能な低い周波数に変換して建造物の内部に伝送することができる。これにより、信号伝送装置300は、高い周波数で変調された信号を建造物の内部に安定して供給することができる。また、信号伝送装置300は、屋内に安定した無線通信環境を提供することができる。
【0064】
<第5実施形態>
本実施形態では、第1実施形態から第4実施形態とは異なる方法で一対のアンテナ又は一対の電極を窓ガラスに固定する例について説明する。
【0065】
図8は、第5実施形態における固定部材708の一例を示す図である。
図8において、建造物の窓枠702には、窓ガラス704が嵌められている。本実施形態では、アンテナ706を窓ガラス704に固定するに当たり、補助部材として、窓枠702に固定された固定部材708を用いている。固定部材708は、例えば金属材料又はプラスチック材料で構成され、窓枠702とアンテナ706とを連結する。アンテナ706は、図示を省略するが粘着剤を用いて窓ガラス704に固定されている。この場合、固定部材708とアンテナ706との連結部分708aを分離可能としておくことが好ましい。このようにすれば、固定部材708とアンテナ706とを分離させて窓ガラス704を開けることができる。
【0066】
固定部材708は、窓枠702を構成する材料に応じて適宜選択すればよい。例えば、窓枠702が強磁性体等の磁性を帯びる物質で構成されていれば、磁石を用いて固定部材708を固定することができる。また、窓枠702が木材であれば、釘又はねじ等の固定具を用いて固定部材708を固定することができる。さらに、固定部材708として接着剤を用いれば、窓枠702の材料にかかわらず固定部材708を固定することが可能である。
【0067】
なお、本実施形態では、第1実施形態、第2実施形態及び第4実施形態に示したように、窓ガラス704にアンテナ706を固定する場合を例示して説明した。しかしながら、この例に限らず、第3実施形態のように窓ガラス704に電極を固定する場合においても適用することができる。
【0068】
<第6実施形態>
第1実施形態から第5実施形態では、建造物として家屋を例示し、非金属部分として窓ガラスを例示して説明した。しかしながら、各実施形態の信号伝送装置100、100a、200又は300は、車両、鉄道、航空機等の移動体の非金属部分にも適用することが可能である。
【0069】
図9(A)及び
図9(B)は、第6実施形態における信号伝送装置の建造物又は移動体への適用例を示す図である。具体的には、
図9(A)は、第1実施形態の信号伝送装置100を、家屋802の窓ガラス804に適用した例である。つまり、家屋802の外部で電波820を受信し、窓ガラス804を介して家屋802の内部に信号を伝送する。また、
図9(B)は、信号伝送装置100を車両812のフロントガラス814に適用した例である。つまり、車両812の外部で電波820を受信し、フロントガラス814を介して車両812の内部に信号を伝送する。移動体への適用については、例えば空港リムジンバスのように車内でフリーWiFiサービスを提供するような場合に特に好適である。本実施形態によれば、簡易な構成により、家屋802又は車両812の内部に安定した無線通信環境を提供することができる。
【0070】
なお、本実施形態では、家屋802又は車両812に対して第1実施形態の信号伝送装置100を適用した例について説明した。しかしながら、他の実施形態の信号伝送装置も適用可能であることは明らかである。
【0071】
以上、本発明の実施形態として説明した構成を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0072】
また、上述した実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされると解される。
【符号の説明】
【0073】
100、100a、200、300…信号伝送装置、110…窓ガラス、110a…第1面、110b…第2面、120…第1アンテナ、122a…粘着剤、122b…磁石、125…第1給電装置、130…第2アンテナ、132a…粘着剤、132b…磁石、135…第2給電装置、140…第3アンテナ、150…第1変復調装置、150a…第1復調装置、150b…第1変調装置、160…第2変復調装置、160a…第2復調装置、160b…第2変調装置、170…第4アンテナ、180…無線LANルーター、220…第1電極、230…第2電極、240、270、320、340…アンテナ、702…窓枠、704…窓ガラス、706…アンテナ、708…固定部材、708a…連結部分、802…家屋、804…窓ガラス、812…車両、814…フロントガラス、820…電波