(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20231114BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G02B27/01
(21)【出願番号】P 2019170940
(22)【出願日】2019-09-19
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金子 文吉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋平
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-45388(JP,A)
【文献】特開2019-36568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示光を出力する表示装置と、
前記表示装置から出力された前記表示光を反射する反射鏡と、
前記表示装置及び前記反射鏡を内部空間に収容し、第一ねじ用の第一ねじ孔を有する第一座面と、第二ねじ用の第二ねじ孔を有する第二座面と、を有するケースと、
前記第二座面上に配置され前記第二ねじで前記ケースに固定される、前記第二ねじ用の第三ねじ孔を有する第三座面を有する被固定部材と、を備え、
前記第一ねじ孔、前記第二ねじ孔、及び前記第三ねじ孔は、前記第一座面に直交する方向を軸方向とし、
前記第二座面は、前記第一座面に対して非平行であり、
前記第三座面は、前記第一座面に対して平行である、ヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記ケースは、前記第一ねじにより前記ヘッドアップディスプレイを取付先に取り付ける取付ステーを
有し、
前記第一座面は、前記取付ステーに設けられ、
前記被固定部材は、前記第二座面上に順次配置される、前記表示装置を制御する回路基板と、前記回路基板を覆う基板カバーである、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両等に搭載されるヘッドアップディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイは、内部空間に表示装置や反射鏡を収容するケースを有する。ケース内には、表示装置から出射された表示光の光路が形成されるため、表示装置を制御するための回路基板はケースの外表面にねじを介して取り付けられる。
【0003】
また、ヘッドアップディスプレイは、ケースの外表面に設けられた取付ステーにおいて、ねじを介して車両に取り付けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ケースが射出成形により形成される場合、製造性の観点から、二方向の抜きが成立するような金型であることが好ましい。すなわち、複数のねじ孔を有する場合、これらのねじ孔の軸方向が一致することが好ましい。一致しない場合には、金型にスライド構造を設ける必要があるからである。
【0006】
例えば、取付ステーのねじ孔は、取付先に応じて、ねじの座面や位置、軸方向が決まる。また、回路基板は、表示装置の配置場所や取付角度に応じて、配置場所や取付角度が決まる。これに伴い、回路基板を固定するためのねじ孔も、回路基板の配置場所や取付角度に応じて、軸方向が決まる。よって、ケースは、これら一例のように周辺構造の影響を受けて、ねじ孔の軸方向が不一致となる虞がある。
【0007】
本開示はこのような事情を考慮してなされたもので、製造性を向上させることができるヘッドアップディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のヘッドアップディスプレイは、上述した課題を解決するために、表示光を出力する表示装置と、前記表示装置から出力された前記表示光を反射する反射鏡と、前記表示装置及び前記反射鏡を内部空間に収容し、第一ねじ用の第一ねじ孔を有する第一座面と、第二ねじ用の第二ねじ孔を有する第二座面と、を有するケースと、前記第二座面上に配置され前記第二ねじで前記ケースに固定される、前記第二ねじ用の第三ねじ孔を有する第三座面を有する被固定部材と、を備え、前記第一ねじ孔、前記第二ねじ孔、及び前記第三ねじ孔は、前記第一座面に直交する方向を軸方向とし、前記第二座面は、前記第一座面に対して非平行であり、前記第三座面は、前記第一座面に対して平行である。
【発明の効果】
【0009】
本開示のヘッドアップディスプレイにおいては、製造性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示のヘッドアップディスプレイの一実施形態であり、全体構成を説明する外観斜視図。
【
図2】上ケースを外した状態のヘッドアップディスプレイを上方から見た平面図。
【
図3】
図2のヘッドアップディスプレイを下方から見た底面図。
【
図4】
図2のヘッドアップディスプレイの上下方向に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示のヘッドアップディスプレイの実施形態を添付図面に基づいて説明する。本開示のヘッドアップディスプレイは、例えば自動車等の車両に搭載される。
【0012】
図1は、本開示のヘッドアップディスプレイの一実施形態であり、全体構成を説明する外観斜視図である。
図2は、上ケース10を外した状態のヘッドアップディスプレイ1を上方から見た平面図である。
図3は、
図2のヘッドアップディスプレイ1を下方から見た底面図である。
図4は、
図2のヘッドアップディスプレイ1の上下方向に沿う断面図である。
図5は、
図3のV-V線に沿う断面図である。
【0013】
以下の説明において、「前(前面)」、「後(背面)」、「上」、「下」、「右」、及び「左」は、
図1から
図5における定義「Fr.」、「Re.」、「To.」、「Bo.」、「R」、及び「L」に従う。
【0014】
ヘッドアップディスプレイ1(以下、HUD1という。)は、自動車のインストルメントパネル内に配置される。HUD1は、表示装置3と、平面鏡4と、凹面鏡5と、ケース6と、回路基板40と、基板カバー50と、を主に有する。HUD1は、表示装置3が表示した表示画像を表す表示光Lを、リレー光学系を構成する平面鏡4及び凹面鏡5で反射し、透過反射部の一例である自動車のウインドシールドに照射する。視認者(主に運転者)は、車両前方の実景と重ねて表示画像の虚像を視認することができる。
【0015】
表示装置3は、表示光Lを出力する。表示装置3は、例えばTFT(Thin Film Transistor)型の液晶表示装置である。表示装置3は、バックライトユニットと、液晶表示パネルと、を有する。バックライトユニットは、光源基板、レンズ、及びヒートシンク等を有する。尚、表示装置3は、プロジェクタ、及び表示面を構成するスクリーンを備えるものであってもよい。
【0016】
平面鏡4(反射鏡)は、例えば合成樹脂材料からなる基材と、蒸着等により基材の表面に形成された反射膜と、を有する。平面鏡4は、表示装置3から出力された表示光Lを凹面鏡5に向けて反射する。
【0017】
凹面鏡5(反射鏡)は、例えば合成樹脂材料からなる基材と、蒸着等の手段により基材の表面に形成された反射膜と、を有する。凹面鏡5は、平面鏡4で反射した表示光Lをウインドシールドに向けて反射する。凹面鏡5は、拡大鏡としての機能を有し、表示画像を拡大してウインドシールドへ反射する。これにより、視認者は、表示画像が拡大された虚像を視認する。凹面鏡5は、アクチュエータ(図示せず)により回転軸周りに回転する。アクチュエータは、凹面鏡5を回転させることで凹面鏡5の角度を調整し、表示光Lの照射位置を調整したり、外光が凹面鏡5によって表示装置3に向かうように反射されない角度に調整したりする。
【0018】
ケース6は、上ケース10と、下ケース20と、を有する。ケース6は、上ケース10及び下ケース20を組み合わせることで、内部空間6aを形成する。表示装置3、平面鏡4、及び凹面鏡5は、この内部空間6aに収容される。また、ケース6の内部空間6aは、表示光Lの光路となる。上ケース10及び下ケース20は、例えば黒色の遮光性を有する合成樹脂(例えばポリプロピレン)からなる。ケース6は、スライド構造を用いない、二方向を抜き方向とする金型を用いた射出成形により形成される。このときの金型の割面は、概ね左右前後方向に水平な面である。
【0019】
上ケース10は、ウインドシールドに対向する部分に、開口部11を有する。開口部11は、透光性を有する透光カバー12に覆われる。透光カバー12は、凹面鏡5で反射した表示光Lを透過する。
【0020】
下ケース20は、表示装置3、平面鏡4、凹面鏡5、回路基板40及び基板カバー50を取り付けるための構造を有する。特に、下ケース20は、略下方を向く外表面20b上に、基板取付構造を有する。
【0021】
基板取付構造は、基板取付面26と、ねじ孔形成部27と、を有する。基板取付面26は、下ケース20の下方に面し、内部空間6a内の表示装置3の配置に依存して、位置や傾斜が設定される。ねじ孔形成部27は、基板取付面26上の4箇所に、下方に突出して設けられる。ねじ孔形成部27は、基板座面28と、基板座面28上に設けられる基板側ケースねじ孔29と、を有する。
【0022】
基板座面28(第二座面)は、ねじ孔形成部27の端面であり、回路基板40の座面である。基板座面28(
図5の面方向61)は、ステーねじ座面31(面方向62)に対して非水平である(傾斜している)。基板座面28のステーねじ座面31に対する傾斜は、基板取付面26同様、表示装置3の配置(位置やステーねじ座面31に対する傾き)に依存して決定される。
【0023】
基板側ケースねじ孔29(第二ねじ孔)は、基板ねじ8(第二ねじ)用のねじ孔であり、基板ねじ8が挿入される。基板側ケースねじ孔29は、基板座面28に対して非直交する方向(軸方向71)であって、ステー側ケースねじ孔32の軸方向(軸方向72)と一致する方向を軸方向とする。
【0024】
基板座面28は、上述した射出成形時に使用される金型の割面に対して、面方向が非水平である。また、基板側ケースねじ孔29の軸方向71は、金型の抜き方向と一致する。
【0025】
また、下ケース20は、外表面20bの4箇所に取付ステー30を有する。取付ステー30は、HUD1を取付先としての車両に取り付けるために設けられる。
図3に示すように、取付ステー30は、下ケース20の略上下方向に沿い左右方向に面する外表面20bから、直交方向(主に左右方向)に突出する。取付ステー30は、ステーねじ座面31と、ステーねじ座面31上に設けられるステー側ケースねじ孔32と、を有する。
【0026】
ステーねじ座面31(第一座面)は、下ケース20の外表面20bから突出した片上に設けられ、ステーねじ9(第一ねじ)の座面である。ステー側ケースねじ孔32(第一ねじ孔)は、ステーねじ9用のねじ孔であり、ステーねじ9が挿入される。ステー側ケースねじ孔32は、ステーねじ座面31(面方向62)に直交する方向(軸方向72、略上下方向)をステーねじ9の軸方向とする。ステーねじ座面31は、上述した射出成形時に使用される金型の割面に対して、面方向が水平である。また、ステー側ケースねじ孔32の軸方向72は、金型の抜き方向と一致する。
【0027】
回路基板40は、表示装置3等の動作を制御する制御部が実装されたプリント回路基板である。制御部は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有しており、例えば、ROMに書き込まれたプログラムに従って所定の演算処理を実行する。制御部は、例えば、車両のECU(Electronic Control Unit)から各種車両情報を取得する。制御部は、取得した情報に基づき、表示装置3を駆動する。
【0028】
回路基板40は、下ケース20の内部空間6a外であって、下ケース20の外表面20bに配置される。具体的には、回路基板40は、下ケース20の基板座面28上に配置される。回路基板40は、下ケース20上の4箇所の基板側ケースねじ孔29に対応する位置に、基板ねじ8用の基板ねじ孔41を有する。基板ねじ孔41(第三ねじ孔)は、回路基板40(面方向61)に非直交する方向(軸方向71)であって、ステー側ケースねじ孔32の軸方向(軸方向72)と一致する方向を軸方向とする。
【0029】
基板カバー50は、回路基板40を覆い保護する。基板カバー50は、回路基板40と共に基板ねじ8により下ケース20に固定される。基板カバー50は、下ケース20上の4箇所の基板側ケースねじ孔29に対応する位置に、基板ねじ8用の基板ねじ座面51と、基板ねじ座面51上に設けられるカバーねじ孔52と、を有する。
【0030】
基板ねじ座面51(第三座面)は、基板カバー50の外表面50b(主に下方を向く面)上に設けられる。基板ねじ座面51(面方向63)は、取付ステー30のステーねじ座面31(面方向62)と平行であり、且つ下ケース20の基板座面28(面方向61)と非平行である。一方、基板カバー50の内表面50a(主に上方を向く面)上であり、基板ねじ座面51に対向する面は、基板座面28(面方向61)と平行であり、且つステーねじ座面31(面方向62)と非平行である。すなわち、基板ねじ座面51と、この基板ねじ座面51に上下方向に対向する内表面50aとは、非平行である。
【0031】
カバーねじ孔52(第三ねじ孔)は、基板ねじ8用のねじ孔であり、基板ねじ8が挿入される。カバーねじ孔52は、基板ねじ座面51に直交する方向(軸方向71)であって、ステー側ケースねじ孔32の軸方向(軸方向72)と一致する方向を軸方向とする。
【0032】
尚、本実施形態においては、回路基板40及び基板カバー50は、基板座面28(第二座面)上に配置され、基板ねじ8(第二ねじ)で下ケース20に固定される被固定部材である。
【0033】
このようなHUD1は、製造性を向上させることができる。すなわち、HUD1は、回路基板40の配置に起因して基板ねじ座面51がステーねじ座面31と非平行になる場合であっても、被固定部材としての基板カバー50の基板ねじ座面51の面方向63(厚み)を好適に設計することにより、下ケース20に設けられる複数のねじ孔29、32、41、52の軸方向71、72を一致させることができる。これにより、下ケース20を射出成形で形成する場合、基板ねじ8の軸方向71及びステーねじ9の軸方向72を、金型の抜き方向と一致させることができ、金型に複雑なスライド構造を設けることなく、二方向の抜きを成立させることができる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0035】
例えば、被固定部材の一例として、回路基板40及び基板カバー50を適用して説明したが、ケース6にねじにより固定される他の部材であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 ヘッドアップディスプレイ(HUD)
3 表示装置
4 平面鏡(反射鏡)
5 凹面鏡(反射鏡)
6 ケース
6a 内部空間
8 基板ねじ(第二ねじ)
9 ステーねじ(第一ねじ)
10 上ケース
11 開口部
12 透光カバー
20 下ケース
20b 外表面
26 基板取付面
27 ねじ孔形成部
28 基板座面(第二座面)
29 基板側ケースねじ孔(第二ねじ孔)
30 取付ステー
31 ステーねじ座面(第一座面)
32 ステー側ケースねじ孔(第一ねじ孔)
40 回路基板(被固定部材)
41 基板ねじ孔(第三ねじ孔)
50 基板カバー(被固定部材)
50a 内表面
50b 外表面
51 基板ねじ座面(第三座面)
52 カバーねじ孔(第三ねじ孔)
61、62、63 面方向
71、72 軸方向
L 表示光