(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】直流電源装置及びサーボDC給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20231114BHJP
H02M 1/14 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H02J1/00 306C
H02M1/14
(21)【出願番号】P 2019187380
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桐淵 岳
(72)【発明者】
【氏名】財津 俊行
(72)【発明者】
【氏名】蘆田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】土井 昌志
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-039145(JP,U)
【文献】特開2013-162719(JP,A)
【文献】実開昭54-128141(JP,U)
【文献】特開昭61-157284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00
H02M 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流を出力する電源部と、
前記電源部からの出力される直流の電圧変動又は電流変動を検知し、検知結果に基づき、前記直流の電圧変動又は電流変動が抑制されるように、自回路のインピーダンスを調整するフィルタ回路と、
を備え
、
前記フィルタ回路は、
前記電源部からのプラス側の電力線とマイナス側の電力線との間に配置された、コンデンサと可変抵抗の直列接続体と、
前記可変抵抗の抵抗値を、前記プラス側の電力線又は前記マイナス側の電力線の電圧変動の検知結果に基づき、前記直流の電圧変動が抑制されるように制御する制御部と、
を備える、
る直流電源装置。
【請求項2】
前記電源部が、交流を直流に変換する回路である、
請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項3】
前記可変抵抗が、前記制御部により能動領域で動作するよう制御されるトランジスタである、
請求項
1又は
2に記載の直流電源装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載の直流電源装置と、
1つ以上のモータ制御装置と、
前記直流電源装置からの電力を前記1つ以上のモータ制御装置に供給する電力供給路と、
を含むサーボDC給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源装置とサーボDC給電システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等では、複数の電動機が、離れた場所に配置された複数のサーボドライバにてPWM駆動されるシステム(ロボットとその制御装置とで構成されたシステム等)が使用されている。そのようなシステムには、電動機・サーボドライバ間の長いケーブルからの放射ノイズを低減するために、スイッチングスピードを速くできない、電動機・サーボドライバ間の接続に多数のケーブルが必要とされる、といった問題がある。
【0003】
各電動機の近傍に、サーボドライバからコンバータを除去した装置(以下、モータ制御装置と表記する)を配置し、1つの直流電源装置からDCバスにて各モータ制御装置に電力を供給する構成を採用しておけば、上記問題が発生しないようにすることが出来る。ただし、この構成を採用したシステムでは、DCバス側のLC回路とモータ制御装置側とが干渉してDCバスの電圧が発振する場合がある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】横尾 真志, 近藤 圭一郎,「直流電気鉄道車両におけるベクトル制御された誘導電動機駆動システムのダンピング制御系設計法」、電気学会論文誌D,Vol.135 No.6 pp.622-631(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、1つ以上のモータ制御装置に電力を供給する電力供給路の電圧の発振を抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点に係る直流電源装置は、直流に出力する電源部と、前記電源部から出力される直流の電圧変動又は電流変動を検知し、検知結果に基づき、前記直流の電圧変動又は電流変動が抑制されるように、自回路のインピーダンスを調整するフィルタ回路と、を備える。
【0007】
1つ以上のモータ制御装置に電力を供給する電力供給路の電圧の発振は、モータ側(インバータ回路とサーボモータとからなる部分)のインピーダンスが、電源側(電力供給路側)のインピーダンスよりも小さい場合に生じるものである。直流電源装置は、出力される直流の電圧変動が抑制されるように、自回路(自フィルタ回路)のインピーダンスを調整するフィルタ回路を備えている。従って、この直流電源装置を用いておけば、1つ以上のモータ制御装置へ電力を供給するための電力供給路の電圧の発振を抑制することができる。
【0008】
直流電源装置内のフィルタ回路の具体的な回路構成は、特に限定されない。フィルタ回路は、前記電源部(例えば、交流を直流に変換する回路)からのプラス側の電力線とマイナス側の電力線との間に配置された、コンデンサと可変抵抗の直列接続体と、前記可変抵抗の抵抗値を、前記プラス側の電力線又は前記マイナス側の電力線の電圧変動の検知結果に基づき、前記直流の電圧変動が抑制されるように制御する制御部と、を備えていても良い。フィルタ回路は、前記電源部からのプラス側の電力線又はマイナス側の電力線に挿入
された可変抵抗と、前記可変抵抗の抵抗値を、前記プラス側の電力線又は前記マイナス側の電力線の電圧変動の検知結果に基づき、前記直流の電圧変動が抑制されるように制御する制御部と、を備えても良い。また、この構成を有する各フィルタ回路の可変抵抗は、前記制御部により能動領域で動作するよう制御されるトランジスタであっても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1つ以上のモータ制御装置へ電力を供給する電力供給路の電圧発振を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るサーボDC給電システムの概略構成の説明図である。
【
図2】
図2は、サーボDC給電システム内のモータ制御装置の概略構成の説明図である。
【
図3】
図3は、サーボDC給電システムに用いられている直流電源装置の概略構成の説明図である。
【
図4】
図4は、サーボDC給電システムの等価回路の説明図である。
【
図5】
図5は、
図4に示した等価回路の不安定となる領域を説明するための図である。
【
図6】
図6は、フィルタ回路の機能を説明するための図である。
【
図7】
図7は、フィルタ回路の他の構成例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
図1に、本発明の一実施形態に係るサーボDC給電システムの概略構成を示し、
図2に、サーボDC給電システムに含まれるモータ制御装置10の概略構成を示す。
【0013】
図1に示してあるように、本実施形態に係るサーボDC給電システムは、直流電源装置30と複数のモータ制御装置10との間を、電力供給路35にて接続したシステムである。
【0014】
直流電源装置30は、所定の直流電圧を出力する電源である。この直流電源装置30の詳細については後述する。
【0015】
モータ制御装置10は、PLC(Programmable Logic Controller)等の上位装置からの指令(位置指令、速度指令等)に従って、サーボモータ40(以下、単に、モータ40とも表記する)を制御する装置である。
図2に示してあるように、モータ制御装置10は、インバータ回路11と制御部12とを備えている。
【0016】
インバータ回路11は、電力供給路35を介して入力される直流電源装置30からの直流電圧を三相交流に変換するための回路である。インバータ回路11は、プラス側の電力線とマイナス側の電力線との間に、U相用のレグ、V相用のレグ及びW相用のレグを並列接続した構成を有しており、モータ制御装置10には、インバータ回路11の各レグの出力電流を測定するための電流センサ28が設けられている。
【0017】
制御部12は、上位装置(PLC等)からの指令に従って、インバータ回路11をPWM(Pulse Width Modulation)制御するユニットである。制御部12は、プロセッサ(マイクロコントローラ、CPU等)とその周辺回路とから構成されており、制御部12は、各電流センサ28からの信号、モータ40に取り付けられたエンコーダ41(アブソリュ
ートエンコーダやインクリメンタルエンコーダ)からの信号等が入力されている。
【0018】
電力供給路35(
図1)は、直流電源装置30からの電力(電流)を、サーボDC給電システム内の各モータ制御装置10に分配供給できるように複数の電力ケーブルを組み合わせた給電路である。
図1に示してあるように、電力供給路35の各モータ制御装置10との接続部分(各モータ制御装置10の電源端子間)には、通常、平滑コンデンサ18が設けられる。
【0019】
図3に、本実施形態に係るサーボDC給電システムに用いられている直流電源装置30の概略構成を示す。図示してあるように、直流電源装置30は、電源部31とフィルタ回路32とを備える。
【0020】
電源部31は、所定の直流電圧を出力するユニットである。
図3には、電源部31として、三相交流電源50からの三相交流を直流電圧に変換するユニットを示してあるが、電源部31は、単相交流を直流電圧に変換するユニットであっても良い。また、電源部31は、ダイオードを組み合わせた整流回路(例えば、全波整流回路)であっても、スイッチング素子が用いられたAC-DCコンバータ(例えば、電源回生コンバータ)であっても良い。さらに、電源部31は、二次電池であっても良い。
【0021】
フィルタ回路32は、自フィルタ回路32に入力される直流を安定化して出力する回路である。図示してあるように、フィルタ回路32は、電源部31からのプラス側の電力線33p及びマイナス側の電力線33m間に配置された、コンデンサ23とトランジスタ24の直列接続体と、振動電圧検出回路21と駆動回路22とを備える。
【0022】
駆動回路22は、振動電圧検出回路21からの制御信号に応じた、トランジスタ24が能動領域(線形領域)で動作することになる電圧をトランジスタ24のゲートに印加する回路である。
【0023】
振動電圧検出回路21は、電力線33pの電圧変動(所定時間内の電圧変化量)を検出し、予め定められている閾値以上の電圧変動を検出したときに、トランジスタ24の抵抗が上昇する方向に駆動回路22への制御信号のレベルを変更する回路である。なお、振動電圧検出回路21は、上位装置からの指示に従って、駆動回路22への制御信号のレベルを変更する機能、及び、電力線33pの電圧変動が無いとみなせる状態が規定時間継続した場合に、トランジスタ24の抵抗が下降する方向に駆動回路22への制御信号のレベルを変更する機能も有している。
【0024】
本実施形態に係るサーボDC給電システムは、以上、説明した構成を有している。従って、サーボDC給電システムによれば、電力供給路35の電圧の発振を抑制することが出来る。
【0025】
具体的には、
図1に示したような構成のサーボDC給電システムは、モータ側(複数のモータ制御装置10と複数のモータ40からなる部分)のインピーダンスをZmと表記すると、
図4に示した等価回路で表すことが出来る。
【0026】
なお、この
図4において、L
1は、電力供給路35のインダクタンス、r
Lは、L
1の直列抵抗である。また、C
1は、電力供給路35のキャパシタンスと平滑コンデンサ18のキャパシタンスの合成キャパシタンス、r
Cは、C
1の直列抵抗である。
【0027】
この等価回路(
図4)における電源側の出力インピーダンスのピーク値Z
o-peakは、以下の式により表される。
【0028】
【0029】
そして、
図5に模式的に示してあるように、“Z
o-peak>Zm”が成立する場合に、電力供給路35の電圧が不安定となる。従って、Z
o-peak値を減少させれば、電力供給路35の電圧が不安定になること(発振すること)を抑止することができる。
【0030】
上記したように、サーボDC給電システムの直流電源装置30(
図3)の電源部31の後段には、フィルタ回路32が設けられている。
【0031】
そして、フィルタ回路32は、トランジスタ24の抵抗が、振動電圧検出回路21により、電力供給路35の電圧が不安定とならない抵抗に制御される構成を有している。従って、本実施形態に係るサーボDC給電システムでは、
図6に模式的に示してあるように、フィルタ回路32が設けられていない直流電源装置が用いられたシステムよりも、Z
o-peak値を低くすることが出来る。そして、その結果として、電力供給路35の電圧が不安定になること(発振すること)が抑止されることになる。
【0032】
《変形形態》
上記したサーボDC給電システム、直流電源装置30は、各種の変形が可能なものである。例えば、サーボDC給電システムの電力供給路35は、直流電源装置30からの電力(電流)を、サーボDC給電システム内の全モータ制御装置10に供給できるものであれば、
図1に示したものとは異なる構成のものであっても良い。また、直流電源装置30内のフィルタ回路32は、電力供給路35の電圧変動が抑制されるように、自フィルタ回路32のインピーダンスを調整可能な回路であれば良い。従って、フィルタ回路32(
図3)のトランジスタ24の代わりに、複数の抵抗器と、それらの抵抗器の中のいずれかをコンデンサ23の一端とマイナス側の電力線33m間に挿入するセレクタとを設けても良い。また、フィルタ回路32のコンデンサ23及びトランジスタ24の代わりに、容量を電気的に制御できるバリアブルキャパシタを用いても良い。
【0033】
フィルタ回路32として、
図7に示した構成の回路、すなわち、プラス側の電力線33pに挿入されたトランジスタ24と、当該トランジスタ24の抵抗を制御する振動電圧検出回路21及び駆動回路22とで構成された回路を採用しても良い。
図7に示した構成のフィルタ回路32を、マイナス側の電力線33mにトランジスタ24が挿入されているものに変形しても良い。回路振動電圧検出回路21を、電力線33pの電圧変動を検出する回路としても良い。
【0034】
また、電力供給路35の電圧変動時には、電力供給路35を流れる電流も変動する。そして、電流変動を抑制すれば、電圧変動が抑制されるのであるから、フィルタ回路32は、電力供給路35の電流変動を検知して、当該電流変動が抑制されるように、自回路のインピーダンスを調整する回路であっても良い。フィルタ回路32を、閾値を外部から設定可能な回路とした上で、サーボDC給電システムを、フィルタ回路に設定する閾値を調整しながら運用されるシステムに変形しておいても良い。
【0035】
《付記1》
直流に出力する電源部(31)と、
前記電源部からの出力される直流の電圧変動又は電流変動を検知し、検知結果に基づき
、前記直流の電圧変動又は電流変動が抑制されるように、自回路のインピーダンスを調整するフィルタ回路(32)と、
を備える直流電源装置(10)。
【符号の説明】
【0036】
10 モータ制御装置
11 インバータ回路
12 制御部
18 平滑コンデンサ
21 振動電圧検出回路
22 駆動回路
23 コンデンサ
24 トランジスタ
25 インダクタ
28 電流センサ
30 直流電源装置
31 電源部
32 フィルタ回路
33p プラス側の電力線
33m マイナス側の電力線
35 電力供給路
40 サーボモータ
41 エンコーダ
50 三相交流電源