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  • 特許-ゴルフボール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
A63B37/00 412
A63B37/00 314
A63B37/00 322
A63B37/00 340
A63B37/00 416
A63B37/00 418
A63B37/00 328
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019212795
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2021083532
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山邊 将大
(72)【発明者】
【氏名】望月 雄宣
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-028153(JP,A)
【文献】特開2008-119461(JP,A)
【文献】特開2006-000344(JP,A)
【文献】特開2002-078828(JP,A)
【文献】特開2014-180553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00-47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層のゴム製コアと、該コアを被覆する内側カバー及び外側カバーを具備するゴルフボールにおいて、上記内側カバーは、下記(A)及び(B)成分
(A)ショアD硬度が58~68であるポリウレタン又はポリウレア
(B)熱可塑性ポリエステルエラストマー
を含有し、この配合比(A)/(B)が質量比で20/80~40/60である樹脂組成物により形成され、該樹脂組成物のショアD硬度が52以下であり、該樹脂組成物の反発弾性率が50%以上であると共に、上記外側カバーは、上記(A)成分と同種又は異種のポリウレタン又はポリウレアを含有した樹脂組成物により形成されることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
上記内側カバーの樹脂組成物のショアD硬度が50以下であり、該樹脂組成物の反発弾性率が52%以上である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記内側カバーの樹脂組成物において、上記(B)成分の配合割合が該内側カバーの樹脂組成物中80質量%以下である請求項1又は2記載のゴルフボール。
【請求項4】
上記内側カバーの樹脂組成物において、上記(A)成分の樹脂材料は、その反発弾性率が48%以下である請求項1~3のいずれか1項記載のゴルフボール。
【請求項5】
上記内側カバーの樹脂組成物において、上記(B)成分の樹脂材料は、そのショアD硬度が55以下であり、その反発弾性率が48%以上である請求項1~4のいずれか1項記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1層のコアと、内側カバー及び外側カバーの2層カバーを有するスリーピース以上のゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ゴルフボールの構造は、ゴム製コアの周囲に2層以上のカバー層を設けたスリーピースやフォーピースの多層ゴルフボールが市場に多く出回っている。通常、多層ゴルフボールのうち外側カバー(「最外層」とも呼ばれる。)と内側カバー(「中間層」とも呼ばれる。)とは、ボールの反発性やスピン性能等を考慮して異種の樹脂材料により形成されることが多い。
【0003】
また、最外層のカバー材料としては、特にプロや上級者向きとして、アイオノマー樹脂材料に代わるものとしてウレタン樹脂材料を採用するものが多くなっている。ゴルフボールの2層カバー材料の組み合わせとしては、例えば、内側カバーにアイオノマー樹脂、外側カバーにポリウレタン樹脂により形成したものが多く存在する。しかしながら、このゴルフボールでは割れ耐久性が悪くなり、層間の密着性を高めるための工夫が種々行われている。
【0004】
そこで、2層カバーの異種による密着性の低下を改善するために、中間層を最外層層と同種のウレタン材料により構成するゴルフボールが提案されている。例えば、特開2003-325703号公報(特許文献1)や特開2003-325704号公報(特許文献2)には、コアと該コアを被覆する内側カバー(中間層)と、該中間層を被覆する外側カバーと有し、外側カバーがポリウレタン系エラストマーにより形成されるとともに中間層にはポリウレタン系エラストマーを50質量%以上含む樹脂材料により形成することにより、フルショットする各種クラブでの飛距離及び打感が良好であり、かつ耐久性や耐擦過傷性に優れたゴルフボールが提案されている。
【0005】
しかしながら、上記のゴルフボールでは、中間層にウレタン樹脂材料を用いているため反発性及び耐久性の面では不十分であり、未だ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-325703号公報
【文献】特開2003-325704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、反発性及び耐久性の両立をより一層改善したゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、外側カバーおよび内側カバーをポリウレタン材料により形成されたゴルフボールについて着目し、特に内側カバーの樹脂材料として、ウレタン樹脂材料に熱可塑性ポリエステルエラストマーをブレンドするとともに内側カバーのショアD硬度及び反発弾性を特定化することにより、内側・外側カバー層にウレタン樹脂単体で用いた場合よりも耐久性及び反発性が向上することを知見した。さらに、このゴルフボールは、アプローチ時のスピン量も適正化され、ボール打撃時の打感も改善し得るものであり、本発明をなすに至ったものである。
【0009】
従って、本発明は、下記のゴルフボールを提供する。
1.少なくとも1層のゴム製コアと、該コアを被覆する内側カバー及び外側カバーを具備するゴルフボールにおいて、上記内側カバーは、下記(A)及び(B)成分
(A)ショアD硬度が58~68であるポリウレタン又はポリウレア
(B)熱可塑性ポリエステルエラストマー
を含有し、この配合比(A)/(B)が質量比で20/80~40/60である樹脂組成物により形成され、該樹脂組成物のショアD硬度が52以下であり、該樹脂組成物の反発弾性率が50%以上であると共に、上記外側カバーは、上記(A)成分と同種又は異種のポリウレタン又はポリウレアを含有した樹脂組成物により形成されることを特徴とするゴルフボール。
2.上記内側カバーの樹脂組成物のショアD硬度が50以下であり、該樹脂組成物の反発弾性率が52%以上である上記1記載のゴルフボール。
3.上記内側カバーの樹脂組成物において、上記(B)成分の配合割合が該内側カバーの樹脂組成物中80質量%以下である上記1又は2記載のゴルフボール。
4.上記内側カバーの樹脂組成物において、上記(A)成分の樹脂材料は、その反発弾性率が48%以下である上記1~3のいずれかに記載のゴルフボール。
5.上記内側カバーの樹脂組成物において、上記(B)成分の樹脂材料は、そのショアD硬度が55以下であり、その反発弾性率が48%以上である上記1~4のいずれかに記載のゴルフボール。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴルフボールは、耐久性及び反発性が向上し得ると共に、さらにアプローチ時のスピン量が適正されてコントロール性能が良好であり、耐久性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施態様であるゴルフボールの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボールは、少なくとも1層からなるコアの周囲に、内側カバー及び外側カバーの複数層のカバーが形成されるゴルフボールである。例えば、図1に示すように、コア1と、該コア1を被覆する内側カバー2と、該内側カバーを被覆する外側カバー3を具備するマルチピースソリッドゴルフボールGが挙げられる。なお、上記外側カバー(最外層)3は、塗膜層を除き、ゴルフボールの層構造での最外層に位置するものである。上記外側カバー(最外層)3の表面には、通常、空力特性の向上のためにディンプルDが多数形成される。また、外側カバー3の表面には、特に図示してはいないが、通常、塗膜層が形成される。
【0013】
上記コアは、公知のゴム材料を基材として形成することができる。基材ゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴムの公知の基材ゴムを使用することができ、より具体的には、ポリブタジエン、特にシス構造を少なくとも40%以上有するシス-1,4-ポリブタジエンを主に使用することが推奨される。また、基材ゴム中には、所望により上述したポリブタジエンと共に、天然ゴム,ポリイソプレンゴム,スチレンブタジエンゴムなどを併用することができる。
【0014】
また、ポリブタジエンは、Nd触媒の希土類元素系触媒,コバルト触媒及びニッケル触媒等の金属触媒により合成することができる。
【0015】
上記の基材ゴムには、不飽和カルボン酸及びその金属塩等の共架橋剤,酸化亜鉛,硫酸バリウム,炭酸カルシウム等の無機充填剤,ジクミルパーオキサイドや1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物等を配合することができる。また、必要により、市販品の老化防止剤等を適宜添加することができる。
【0016】
上記コアは、上記各成分を含有するゴム組成物を加硫硬化させることにより製造することができる。例えば、バンバリーミキサーやロール等の混練機を用いて混練し、コア用金型を用いて圧縮成形又は射出成形し、有機過酸化物や共架橋剤が作用するのに十分な温度として、100~200℃、好ましくは140~180℃、10~40分の条件にて成形体を適宜加熱することにより、該成形体を硬化させて製造することができる。
【0017】
本発明では、内側カバーの樹脂材料として、下記(A)及び(B)成分
(A)ポリウレタン又はポリウレア
(B)熱可塑性ポリエステルエラストマー
を含有した樹脂組成物により形成される。
【0018】
(A)ポリウレタンまたはポリウレア
(A)成分であるポリウレタン(I-a)またはポリウレア(I-b)の詳細は以下のとおりである。
【0019】
(A-1)ポリウレタン
ポリウレタンの構造は、長鎖ポリオールである高分子ポリオール(ポリメリックグリコール)からなるソフトセグメントと、ハードセグメントを構成する鎖延長剤及びポリイソシアネートからなる。ここで、原料となる高分子ポリオールとしては、従来からポリウレタン材料に関する技術において使用されるものはいずれも使用でき、特に制限されるものではない。例えば、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、共役ジエン重合体系ポリオール、ひまし油系ポリオール、シリコーン系ポリオール、ビニル重合体系ポリオールなどを挙げることができる。ポリエステル系ポリオールとしては、具体的には、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリプロピレンアジペートグリコール、ポリブタジエンアジペートグリコール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコール等のアジペート系ポリオールやポリカプロラクトンポリオール等のラクトン系ポリオールを採用することができる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)及びポリ(テトラメチレングリコール)、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記高分子ポリオールとしては、ポリエーテル系ポリオールを用いることが好適である。
【0021】
上記の長鎖ポリオールの数平均分子量は、1,000~5,000の範囲内であることが好ましい。かかる数平均分子量を有する長鎖ポリオールを使用することにより、上記した反発性や生産性などの種々の特性に優れたポリウレタン組成物からなるゴルフボールを確実に得ることができる。長鎖ポリオールの数平均分子量は、1,500~4,000の範囲内であることがより好ましく、1,700~3,500の範囲内であることが更に好ましい。
【0022】
なお、上記の数平均分子量とは、JIS-K1557に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である(以下、同様。)。
【0023】
鎖延長剤としては、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限されるものではない。本発明では、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有し、かつ分子量が2,000以下である低分子化合物を用いることができ、その中でも炭素数2~12の脂肪族ジオールを好適に用いることができる。具体的には、1,4-ブチレングリコール、1,2-エチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール等を挙げることができ、その中でも特に1,4-ブチレングリコールを好適に使用することができる。
【0024】
ポリイソシアネートとしては、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限はない。具体的には、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン1,5-ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ダイマー酸ジイソシアネートからなる群から選択された1種又は2種以上を用いることができる。ただし、イソシアネート種によっては射出成形中の架橋反応をコントロールすることが困難なものがある。
【0025】
また、上記ポリウレタン形成反応における活性水素原子:イソシアネート基の配合比は適宜好ましい範囲にて調整することができる。具体的には、上記の長鎖ポリオール、ポリイソシアネート化合物及び鎖延長剤を反応させてポリウレタンを製造するに当たり、長鎖ポリオールと鎖延長剤とが有する活性水素原子1モルに対して、ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基が0.95~1.05モルとなる割合で各成分を使用することが好ましい。
【0026】
ポリウレタンの製造方法は特に限定されず、長鎖ポリオール、鎖延長剤及びポリイソシアネート化合物を使用して、公知のウレタン化反応を利用して、プレポリマー法、ワンショット法のいずれで製造してもよい。そのうちでも、実質的に溶剤の不存在下に溶融重合することが好ましく、特に多軸スクリュー型押出機を用いて連続溶融重合により製造することが好ましい。
【0027】
上述したポリウレタンとしては、熱可塑性ポリウレタン材料を用いることが好ましく、特にエーテル系熱可塑性ポリウレタン材料であることが好適である。熱可塑性ポリウレタン材料としては、市販品を好適に用いることができ、例えば、ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」や、大日精化工業社製の商品名「レザミン」などを挙げることができる。
【0028】
(A-2)ポリウレア
ポリウレアは、(i)イソシアネートと(ii)アミン末端化合物との反応により生成するウレア結合を主体にした樹脂組成物である。この樹脂組成物について以下に詳述する。
【0029】
(i)イソシアネート
イソシアネートは、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限はなく、上記ポリウレタン材料で説明したものと同様のものを用いることができる。
【0030】
(ii)アミン末端化合物
アミン末端化合物は、分子鎖の末端にアミノ基を有する化合物であり、本発明では、以下に示す長鎖ポリアミン及び/又はアミン系硬化剤を用いることができる。
【0031】
長鎖ポリアミンは、イソシアネート基と反応し得るアミノ基を分子中に2個以上有し、かつ数平均分子量が1,000~5,000であるアミン化合物である。本発明では、より好ましい数平均分子量は1,500~4,000であり、更に好ましくは1,900~3,000である。上記長鎖ポリアミンの具体例としては、アミン末端を持つ炭化水素、アミン末端を持つポリエーテル、アミン末端を持つポリエステル、アミン末端を持つポリカーボネート、アミン末端を持つポリカプロラクトン、及びこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの長鎖ポリアミンは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
一方、アミン系硬化剤は、イソシアネート基と反応し得るアミノ基を分子中に2個以上有し、かつ数平均分子量が1,000未満であるアミン化合物である。本発明では、より好ましい数平均分子量は800未満であり、更に好ましくは600未満である。上記アミン系硬化剤の具体例としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1-メチル-2,6-シクロヘキシルジアミン、テトラヒドロキシプロピレンエチレンジアミン、2,2,4-及び2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、4,4’-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジシクロヘキシルメタン、1,4-ビス-(sec-ブチルアミノ)-シクロヘキサン、1,2-ビス-(sec-ブチルアミノ)-シクロヘキサン、4,4’-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジシクロヘキシルメタンの誘導体、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサン-ビス-(メチルアミン)、1,3-シクロヘキサン-ビス-(メチルアミン)、ジエチレングリコールジ-(アミノプロピル)エーテル、2-メチルペンタメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、プロピレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピレントリアミン、イミド-ビス-プロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、イソホロンジアミン、4,4’-メチレンビス-(2-クロロアニリン)、3,5-ジメチルチオ-2,4-トルエンジアミン、3,5-ジメチルチオ-2,6-トルエンジアミン、3,5-ジエチルチオ-2,4-トルエンジアミン、3,5-ジエチルチオ-2,6-トルエンジアミン、4,4’-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジフェニルメタン及びその誘導体、1,4-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ベンゼン、1,2-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ベンゼン、N,N’-ジアルキルアミノ-ジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、トリメチレングリコール-ジ-p-アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート、4,4’-メチレンビス-(3-クロロ-2,6-ジエチレンアニリン)、4,4’-メチレンビス-(2,6-ジエチルアニリン)、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、及びこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。これらのアミン系硬化剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
(iii)ポリオール
ポリウレアには、必須成分ではないが、上述した(i)成分及び(ii)成分に加えて更にポリオールを配合することができる。このポリオールとして、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限はないが、具体例として、以下に示す長鎖ポリオール及び/又はポリオール系硬化剤を例示することができる。
【0034】
長鎖ポリオールとしては、従来からポリウレタンに関する技術において使用されるものはいずれも使用でき、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、共役ジエン重合体系ポリオール、ひまし油系ポリオール、シリコーン系ポリオール、ビニル重合体系ポリオールなどを挙げることができる。これらの長鎖ポリオールは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
上記長鎖ポリオールの数平均分子量は、1,000~5,000であることが好ましく、より好ましくは1,700~3,500である。この数平均分子量の範囲であれば、反発性及び生産性等がより一層優れるものとなる。
【0036】
ポリオール系硬化剤としては、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限されるものではない。本発明では、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有し、かつ分子量が1,000未満である低分子化合物を用いることができ、その中でも炭素数2~12の脂肪族ジオールを好適に用いることができる。具体的には、1,4-ブチレングリコール、1,2-エチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール等を挙げることができ、その中でも特に1,4-ブチレングリコールを好適に使用することができる。また、上記ポリオール系硬化剤の、好ましい数平均分子量は800未満であり、より好ましくは600未満である。
【0037】
上記ポリウレアの製造方法については、公知の方法を採用し得、プレポリマー法、ワンショット法等の公知の方法を適宜選択すればよい。
【0038】
上記(A)成分の材料硬度については、上記成分(B)とブレンドすることによって得られるゴルフボールのスピン性能と反発性の点から、ショアD硬度で55以上であることが好ましく、より好ましくはショアD硬度で58以上、更に好ましくは61以上である。また、その上限値としては、成型性の点からショアD硬度で68以下が好ましく、より好ましくはショアD硬度で65以下である。
【0039】
上記(A)成分の反発弾性率は、JIS-K 6255規格の測定で48%以下であることが好ましく、より好ましくは46%以下、更に好ましくは44%以下である。
【0040】
(B)熱可塑性ポリエステルエラストマー
(B)成分の熱可塑性ポリエステル系エラストマーは、(b-1)ポリエステルブロック共重合体と(b-2)硬質樹脂とからなる樹脂組成物である。更に、上記(b-1)成分は、(b-1-1)高融点結晶性重合体セグメントと、(b-1-2)低融点重合体セグメントとを構成成分とする。
【0041】
上記(b-1)成分のポリエステルブロック共重合体を構成する(b-1-1)高融点結晶性重合体セグメントは、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体、ジオール又はそのエステル形成性誘導体よりなる群から選択される1種又は2種以上で形成されるポリエステルである。
【0042】
まず、芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、及び3-スルホイソフタル酸ナトリウム等が挙げられる。本発明においては、芳香族ジカルボン酸を主に用いるが、必要に応じてこの芳香族ジカルボン酸の一部を、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、及び4,4’-ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、及びダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸に置換してもよい。また、ジカルボン酸のエステル形成性誘導体の具体例としては、上述したジカルボン酸の低級アルキルエステル、アリールエステル、炭酸エステル及び酸ハロゲン化物等を挙げることができる。
【0043】
次に、ジオールとしては、分子量400以下のジオールを好適に用いることができる。具体的には、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びデカメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジシクロヘキサンジメタノール、及びトリシクロデカンジメタノール等の脂環族ジオール、キシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニルプロパン、2,2’-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-p-ターフェニル、及び4,4’-ジヒドロキシ-p-クオーターフェニル等の芳香族ジオールを例示することができる。また、ジオールのエステル形成性誘導体の具体例としては、上述したジオールのアセチル体、アルカリ金属塩等を挙げることができる。
【0044】
上記の芳香族ジカルボン酸、ジオール、並びにこれらの誘導体は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0045】
上記(b-1-1)成分としては、特にテレフタル酸及び/又はジメチルテレフタレートと1,4-ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位からなるものや、イソフタル酸及び/又はジメチルイソフタレートと1,4-ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位からなるもの、更には、その両者の共重合体を好適に用いることができる。
【0046】
上記(b-1-2)低融点重合体セグメントは、脂肪族ポリエーテル及び/又は脂肪族ポリエステルである。
【0047】
脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコール等が挙げられる。また、脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が挙げられる。本発明では、弾性特性の観点から、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコール、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、及びポリエチレンアジペート等を好適に使用することができる。更には、これらの中でも特にポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、及びエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコールを使用することが推奨される。また、これらのセグメントの数平均分子量としては、共重合された状態において300~6,000程度であることが好ましい。
【0048】
上記(b-1)成分は公知の方法で製造することができる。具体的には、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコール及び低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下でエステル交換反応させ、得られる反応生成物を重縮合する方法や、ジカルボン酸と過剰量のグリコール及び低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下でエステル化反応させ、得られる反応生成物を重縮合する方法等を採用することができる。
【0049】
(b-1)成分において上記(b-1-2)成分が占める割合は30~60質量%である。この場合、好ましい下限値は35質量%以上とすることができ、好ましい上限値は55質量%以下とすることができる。(b-1-2)成分の割合が少なすぎると、(特に低温時における)耐衝撃性や相溶性が不足するおそれがある。一方、(b-1-2)成分の割合が多すぎると、樹脂組成物(及び成形体)の剛性が不足することがある。
【0050】
(b-2)成分の硬質樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ABS樹脂やポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、及び変性ポリフェニレンエーテルよりなる群から選択される1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、相溶性の点からポリエステル樹脂を好適に使用することができ、更に好ましくは、ポリブチレンテレフタレート及び/又はポリブチレンナフタレートを使用することが推奨される。
【0051】
上記の(b-1)成分及び(b-2)成分の配合比率((b-1):(b-2))は、特に制限されるものではないが、質量比で50:50~90:10とすることが好ましく、より好ましくは55:45~80:20である。(b-1)成分の割合が少なすぎると、(低温時における)耐衝撃性が不足するおそれがある。一方、(b-1)成分の割合が多すぎると、組成物(及び成形体)の剛性及び成形加工性が不足するおそれがある。
【0052】
このような(B)ポリエステル系エラストマーとしては、市販品を用いることができ、具体例としては、東レ・デュポン社製の“ハイトレル”を挙げることができる。
【0053】
上記(B)成分の材料硬度については、上記成分(A)とブレンドすることによって得られるゴルフボールのスピン性能と反発性の点から、ショアD硬度で55以下であることが好ましく、より好ましくはショアD硬度で50以下、更に好ましくは45以下である。また、その下限値としては、ショアD硬度で30以上が好ましく、より好ましくはショアD硬度で35以上である。
【0054】
(B)成分の反発弾性率は、JIS-K 6255規格の測定で48%以上であることが好ましく、より好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上である。この反発弾性率が低いと内側カバー樹脂全体の反発弾性率が低下してしまいボール反発性の低下を招くおそれがある。
【0055】
(B)成分の配合割合については、内側カバーの樹脂組成物中80質量%以下であることが望ましい。この値を超えると耐久性低下のおそれがある。
【0056】
また、上記(A)成分と上記(B)成分との配合比(A)/(B)については、質量比で20/80~80/20であることが好ましい。(B)成分の配合量が上記割合より多くなると、耐久性や成型性が悪化するおそれがある。一方、(B)成分の配合量が上記割合より少ないと、低硬度且つ所望の反発弾性が得らなくなり、要求する飛距離が得られない場合がある。
【0057】
上記(A)及び(B)を含有する樹脂組成物には、上述した樹脂成分以外には、他の樹脂材料を配合してもよい。その目的は、ゴルフボール用樹脂組成物の更なる流動性の向上や反発性、耐擦過傷性等の諸物性を高めるなどの点からである。
【0058】
他の樹脂材料としては、具体的には、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、アイオノマー樹脂、エチレン-エチレン・ブチレン-エチレンブロック共重合体又はその変性物、ポリアセタール、ポリエチレン、ナイロン樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド及びポリアミドイミドから選ばれ、その1種又は2種以上を用いることができる。
【0059】
また、上記樹脂組成物には、更に、活性のあるイソシアネート化合物を含むことができる。この活性イソシアネート化合物は、主成分であるポリウレタン又はポリウレアと反応して、樹脂組成物全体の耐擦過傷性を更に向上させることができるほか、イソシアネートの可塑化効果により流動性を向上させて成型性を向上させることができる。
【0060】
上記のイソシアネート化合物としては、通常のポリウレタンに使用されているイソシアネート化合物であれば特に制限なく用いることができ、例えば芳香族イソシアネート化合物としては、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート又はこれら両者の混合物、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ビフェニルジイソシアネートなどが挙げられ、これら芳香族イソシアネート化合物の水添物、例えばジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどを用いることもできる。また、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。更に、末端に2個以上のイソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基と活性水素を有する化合物とを反応させたブロックイソシアネート化合物や、イソシアネートの二量化によるウレチジオン体などが挙げられる。
【0061】
上記のイソシアネート化合物の配合量は、(A)成分であるポリウレタンまたはポリウレア樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、上限値としては、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。この配合量が少なすぎると、十分な架橋反応が得られず、物性の向上が認められない場合がある。一方、この配合量が多すぎると、経時、熱や紫外線による変色が大きくなり、あるいは、熱可塑性を失ってしまったり、反発の低下等の問題が生じる場合がある。
【0062】
更に、上記樹脂組成物には、任意の添加剤を用途に応じて適宜配合することができる。例えば、本発明のゴルフボール用材料をカバー材として用いる場合、上記成分に、充填剤(無機フィラー)、有機短繊維、補強剤、架橋剤、顔料,分散剤,老化防止剤,紫外線吸収剤,光安定剤などの各種添加剤を加えることができる。これら添加剤を配合する場合、その配合量としては、基材樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、上限として、好ましくは10質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0063】
上記樹脂組成物の反発弾性率については、ドライバーショット時の反発低下及び飛距離の低減をできるだけ抑制するために、JIS-K 6255規格の測定で50%以上であることが必要とされ、好ましくは52%以上、さらに好ましくは55%以上、最も好ましくは60%以上である。
【0064】
また、上記樹脂組成物の材料硬度については、ゴルフボールとして得られるスピン特性や耐久性の点から、ショアD硬度で52以下であることが必要とされ、好ましくは50以下、より好ましくはショアD硬度で48以下、さらに好ましくは46以下である。なお、その下限値としては、成型性の点からショアD硬度で30以上が好ましく、より好ましくはショアD硬度で35以上である。
【0065】
上記樹脂組成物の各成分の調製方法については、例えば、混練型(単軸又は)二軸押出機,バンバリー,ニーダー,ラボプラストミル等の各種の混練機を用いて混合することができ、或いは、樹脂組成物の射出成形時にドライブレンドにより各成分を混合しても良い。更に、上記の活性イソシアネート化合物を用いる場合には、各種混練機を用いて樹脂混合時に含有させてもよく、または、予め活性イソシアネート化合物やその他の成分を含有したマスターバッチを別途用意し、樹脂組成物の射出成形時にドライブレンドすることにより、各成分を混合しても良い。
【0066】
例えば、上記樹脂組成物により内側カバーを成形する方法としては、例えば、射出成形機に上述の樹脂組成物を供給し、コアの周囲に溶融した樹脂組成物を射出することにより内側カバーを成形することができる。この場合、成形温度としては、主成分である(A)ポリウレタン又はポリウレア等の種類によって異なるが、通常150~270℃の範囲である。
【0067】
内側カバーの厚さは、好ましくは0.4mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは0.6mm以上であり、上限として、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下である。
【0068】
一方、外側カバーについては、上記(A)成分と同種又は異種のポリウレタン又はポリウレアを含有した樹脂組成物により形成される。
【0069】
また、上記外側カバーの樹脂組成物の材料硬度については、ゴルフボールとして得られるスピン特性や耐擦過傷性の点から、ショアD硬度で65以下であることが好ましく、より好ましくはショアD硬度で60以下、更に好ましくは55以下である。また、その下限値としては、成型性の点からショアD硬度で25以上が好ましく、より好ましくはショアD硬度で30以上である。
【0070】
外側カバーを成形する方法としては、例えば、射出成形機に上述の樹脂組成物を供給し、内側カバー(中間層)被覆球体の周囲に溶融した外側カバー樹脂組成物を射出することにより外側カバーを成形することができる。この場合、成形温度としては、主成分である(A)ポリウレタン又はポリウレア等の種類によって異なるが、通常150~270℃の範囲である。
【0071】
外側カバーの厚さは、好ましくは0.4mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは0.6mm以上であり、上限として、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下である。
【0072】
本発明のゴルフボールには、空気力学的性能の点から、最外層の表面に多数のディンプルが設けられる。上記最外層表面に形成されるディンプルの個数については、特に制限はないが、空気力学的性能を高め飛距離を増大させる点から、好ましくは250個以上、より好ましくは270個以上、さらに好ましくは290個以上、最も好ましくは300個以上であり、上限値として、好ましくは400個以下、より好ましくは380個以下、さらに好ましくは360個以下である。
【0073】
本発明では、カバー表面には塗膜層が形成される。この塗膜層を形成する塗料としては、2液硬化型ウレタン塗料を採用することが好適である。具体的には、この場合、上記2液硬化型ウレタン塗料は、ポリオール樹脂を主成分とする主剤と、ポリイソシアネートを主成分とする硬化剤とを含むものである。
【0074】
カバー表面に上記の塗料を塗装して塗膜層を形成する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができ、エアガン塗装法や静電塗装法等、所望の方法を用いることができる。
【0075】
塗膜層の厚さについては、特に制限はないが、通常、8~22μm、好ましくは10~20μmである。
【0076】
なお、本発明のゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、ボール外径は42.672mm内径のリングを通過しない大きさで42.80mm以下、質量は好ましくは45.0~45.93gに形成することができる。
【実施例
【0077】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0078】
〔実施例1~7、比較例1~4〕
表1に示す配合により、全ての例に共通するコア用のゴム組成物を調製・加硫成形することにより直径38.6mmのコアを作製した。
【0079】
【表1】
【0080】
上記コア材料の詳細は下記のとおりである。
・「cis-1,4-ポリブタジエン」JSR社製、商品名「BR01」
・「アクリル酸亜鉛」日本触媒社製
・「酸化亜鉛」堺化学工業社製
・「硫酸バリウム」堺化学工業社製
・「老化防止剤」商品名「ノクラックNS6」(大内新興化学工業社製)
・「有機過酸化物(1)」ジクミルパーオキサイド、商品名「パークミルD」(日油社製)
・「有機過酸化物(2)」1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンとシリカの混合物、商品名「パーヘキサC-40」(日油社製)
・「ステアリン酸亜鉛」日油社製
【0081】
次に、直径38.6mmのコアの周囲に下記表2に示す内側カバー材料を射出成形し、厚さ1.25mmの内側カバーを有する内側カバー(中間層)被覆球体を製した。次に、上記中間層被覆球体の周囲に下記表2に示す外側カバー材料を射出成形し、厚さ0.8mmの外側カバーを有する直径42.7mmのスリーピースゴルフボールを作製した。この際、各実施例、比較例のカバー表面には、特に図示してはいないが、共通するディンプルが形成された。なお、内側カバーの樹脂組成物については、下記の表2に示す各成分の配合量でドライブレンドにより混合し、成形温度200~250℃で射出成形した。
【0082】
下記表2中の組成物中の含有成分の詳細は、以下の通りである。
・「TPU1」:ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」、エーテルタイプ熱可塑性ポリウレタン(ショアD硬度「65」及び反発弾性率「34%」)
・「TPU2」:ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」、エーテルタイプ熱可塑性ポリウレタン(ショアD硬度「55」及び反発弾性率「47%」)
・「TPU3」:ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」、芳香族系エーテルタイプ熱可塑性ポリウレタン(ショアD硬度「43」及び反発弾性「61%」)
・「TPEE」:東レデュポン社製の商品名「ハイトレル4001」熱可塑性ポリエステルエラストマー(ショアD硬度「37」及び反発弾性率「77%」)
【0083】
各ゴルフボールの飛び性能(W#1)、アプローチ時のスピン性能、耐久性及び打感を下記の方法で評価した。その結果を表7に示す。
【0084】
W#1初速
ゴルフ打撃ロボットにドライバー(W#1)を装着し、ヘッドスピード(HS)45m/sで打撃した直後のボールの初速を初期条件計測装置により測定した。
【0085】
アプローチ時のスピン性能
ゴルフ打撃ロボットにサンドウェッジ(SW)を装着し、ヘッドスピード(HS)20m/sで打撃した直後のボールの初速及びバックスピン量を初期条件計測装置により測定した。
【0086】
耐久性
ゴルフ打撃ロボットに上記と同様のドライバー(W#1)を装着し、ヘッドスピード(HS)45m/sで打撃し、測定数N=10個のボールを繰り返し打撃し、割れ回数の平均値で評価した。実施例1の割れ回数を指数で100として各実施例及び比較例の耐久性の指数を調べ、下記の基準で判定した。
〈判定基準〉
○:指数100以上
△:指数80以上100未満
×:指数80未満
【0087】
打感
ドライバー(W#1)によるヘッドスピードが45~50m/sの上級者10名による実打における官能評価を行い、下記の基準で判定した。
〈判定基準〉
10人中6人以上が良い打感と評価 ・・・ ○
10人中4人又は5人が良い打感と評価 ・・・ △
10人中3人以下が良い打感と評価 ・・・ ×
【0088】
【表2】
【0089】
表2の結果に示されるように、比較例1~4のゴルフボールは、本発明品(実施例)に比べて以下の点で劣る。
比較例1は、内側カバーの材料硬度が高いため、耐久性及び打感が悪くなり、スピン量が少なくなり、また、熱可塑性ポリエステルエラストマーを配合していないため、反発弾性が低くなり、ドライバー(W#1)打撃時のボールの初速も低い。
比較例2は、内側カバーの材料硬度が高いため、耐久性及び打感が悪くなり、スピン量もやや少ない。
比較例3は、内側カバーの材料硬度が高いため、耐久性及び打感が悪くなり、スピン量がやや少なく、熱可塑性ポリエステルエラストマーを配合していないため、反発弾性が低くなり、ドライバー(W#1)打撃時のボールの初速も低い。
比較例4は、内側カバーの材料として熱可塑性ポリエステルエラストマーを配合しているが反発弾性が低くなり、ドライバー(W#1)打撃時のボールの初速も低い。
図1