(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
A63B37/00 430
A63B37/00 424
A63B37/00 418
(21)【出願番号】P 2019230379
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南馬 昌司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄祐
【審査官】田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-261792(JP,A)
【文献】特開2016-202768(JP,A)
【文献】特開2008-194471(JP,A)
【文献】特開2013-138722(JP,A)
【文献】特開2012-139320(JP,A)
【文献】特開2018-102692(JP,A)
【文献】特開2009-034505(JP,A)
【文献】特開2013-233781(JP,A)
【文献】特開平09-313646(JP,A)
【文献】特開平10-000248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00-47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層のゴム製コアと、該コアを被覆する中間層及び最外層を具備するゴルフボールにおいて、上記中間層は、曲げ剛性率400~500MPa及びメルトフローレート(MFR)15g/10min以下の熱可塑性樹脂組成物により形成されてなり、該熱可塑性樹脂組成物には、
環状カルボジイミド化合物を含み、且つ、エチレン性不飽和カルボン酸共重合体のマグネシウム塩が熱可塑性樹脂組成物全体の50~100質量%の範囲で含まれると共に、上記最外層はポリウレタン樹脂組成物により形成され、その材料硬度がショアD硬度で55以下であり、ゴルフボールの初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量が2.2~3.8mmであることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
上記熱可塑性樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が12g/10min以下である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記熱可塑性樹脂組成物の曲げ剛性率が420MPa以上である請求項1又は2記載のゴルフボール。
【請求項4】
上記熱可塑性樹脂組成物には、曲げ剛性率が380~450MPaであるエチレン性不飽和カルボン酸共重合体のナトリウム塩が含まれる請求項1~3のいずれか1項記載のゴルフボール。
【請求項5】
上記熱可塑性樹脂組成物には、メルトフローレート(MFR)が30~500g/10minである未中和のエチレン性不飽和カルボン酸共重合体が含まれる請求項1~4のいずれか1項記載のゴルフボール。
【請求項6】
上記熱可塑性樹脂組成物には、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化アルミニウムの群から選ばれる金属酸化物を含有する請求項1~5のいずれか1項記載のゴルフボール。
【請求項7】
上記金属酸化物が酸化マグネシウムである請求項6記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1層のコアと、中間層及び最外層の少なくとも2層からなるカバー層を有するスリーピース以上のゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ゴルフボールの構造は、ゴム製コアの周囲に2層以上のカバー層を設けたスリーピースやフォーピースの多層ゴルフボールが市場に多く出回っている。通常、多層ゴルフボールのうち外側カバー(「最外層」とも呼ばれる。)と内側カバー(「中間層」とも呼ばれる。)とは、ボールの反発性やスピン性能等を考慮して異種の樹脂材料により形成されることが多い。
【0003】
また、最外層のカバー材料としては、特にプロや上級者向きとして、アイオノマー樹脂材料に代わるものとしてウレタン樹脂材料を採用するものが多くなっている。ゴルフボールの2層カバー材料の組み合わせとしては、例えば、中間層にアイオノマー樹脂、最外層にポリウレタン樹脂により形成したものが多く存在する。
【0004】
即ち、アプローチショット時でのスピン量を多くしてコントロール性を高めるために、最外層に比較的軟らかい材料が用いられ、ポリウレタン樹脂材料を用いることが主流となっている。ドライバーやロングアイアン及びミドルアイアンでのスピン量を抑えて飛距離を増大させるためには、中間層に比較的高剛性の樹脂材料が用いられ、アイオノマー樹脂材料を用いることが主流となっている。この構造を有するゴルフボールに関する技術は多数開示されている。しかしながら、高剛性の中間層を有するゴルフボールは繰り返し耐久性の確保が難しい。
【0005】
ゴム材料からなるコアを熱可塑性樹脂で被覆してなるゴルフボールの繰り返し耐久性については必ずしも一義的に決まるものではないが、コアを被覆する熱可塑性樹脂の樹脂材料自体の耐久性に依るよるところが大きい。また、軟質なポリウレタン樹脂製のカバー層とアイオノマー樹脂製の中間層を有するゴルフボールにおいて、その耐久性はアイオノマー樹脂材料からなる中間層自体の耐久性に大きく依存する。即ち、上記のゴルフボールにおいて、飛距離増大を図るために、より高剛性なアイオノマー樹脂を用いると、ゴルフボールの繰り返し打撃耐久性が悪くなる。
【0006】
また、中間層に剛性の高いアイオノマー樹脂材料を用いて飛距離性能を向上させ、かつ、中間層の厚みを増大させて、飛距離性能を向上させ、繰り返し打撃耐久性を確保することも提案されるが、このゴルフボールでは、ドライバー(W#1)で打撃した時のフィーリングが悪くなってしまう。
【0007】
特開平9-56849号公報には、ゴルフボールの樹脂材料として、曲げ剛性率が200~300MPaのマグネシウムタイプアイオノマーが記載されており、また、特開平10-127822号公報には、曲げ剛性率が340~410MPaのジアミン錯体アイオノマーが記載されている。しかしながら、これらのゴルフボールは、いずれも、アイオノマー樹脂の曲げ剛性率が低く、ボールにスピンが掛かり過ぎて飛び性能が十分なものではなく、また、割れ耐久性にも決して良好なものとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平9-56849号公報
【文献】特開平10-127822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、中間層の樹脂材料としてアイオノマー樹脂を用いた場合であっても、飛距離増大と割れ耐久性との両方に優れたゴルフボールを提供することを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、少なくとも1層のゴム製コアと、該コアを被覆する中間層及び最外層を具備するゴルフボールにおいて、中間層の材料として用いる熱可塑性樹脂組成物には、特定範囲の曲げ剛性率及びメルトフローレート(MFR)を有する熱可塑性樹脂組成物を用い、該熱可塑性樹脂組成物には、エチレン性不飽和カルボン酸共重合体のマグネシウム塩を所定範囲の配合量で含むものであると共に、最外層をポリウレタン樹脂組成物により形成し、その材料硬度をショアD硬度で55以下、且つ、ゴルフボールの初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量を所定範囲とすることにより、従来から中間層材料として用いられた高剛性のアイオノマー樹脂を有するゴルフボールに比べて、ドライバー(W#1)やロング・ミドルアイアンでのスピン量を抑えて飛距離増大を図ることができ、繰り返し打撃耐久性が高く得られることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0011】
従って、本発明は、下記のゴルフボールを提供する。
1.少なくとも1層のゴム製コアと、該コアを被覆する中間層及び最外層を具備するゴルフボールにおいて、上記中間層は、曲げ剛性率400~500MPa及びメルトフローレート(MFR)15g/10min以下の熱可塑性樹脂組成物により形成されてなり、該熱可塑性樹脂組成物には、環状カルボジイミド化合物を含み、且つ、エチレン性不飽和カルボン酸共重合体のマグネシウム塩が熱可塑性樹脂組成物全体の50~100質量%の範囲で含まれると共に、上記最外層はポリウレタン樹脂組成物により形成され、その材料硬度がショアD硬度で55以下であり、ゴルフボールの初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量が2.2~3.8mmであることを特徴とするゴルフボール。
2.上記熱可塑性樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が12g/10min以下である上記1記載のゴルフボール。
3.上記熱可塑性樹脂組成物の曲げ剛性率が420MPa以上である上記1又は2記載のゴルフボール。
4.上記熱可塑性樹脂組成物には、曲げ剛性率が380~450MPaであるエチレン性不飽和カルボン酸共重合体のナトリウム塩が含まれる上記1~3のいずれかに記載のゴルフボール。
5.上記熱可塑性樹脂組成物には、メルトフローレート(MFR)が30~500g/10minである未中和のエチレン性不飽和カルボン酸共重合体が含まれる上記1~4のいずれかに記載のゴルフボール。
6.上記熱可塑性樹脂組成物には、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化アルミニウムの群から選ばれる金属酸化物を含有する上記1~5のいずれかに記載のゴルフボール。
7.上記金属酸化物が酸化マグネシウムである上記6記載のゴルフボール。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゴルフボールによれば、従来から中間層材料として用いられた高剛性のアイオノマー樹脂を有するゴルフボールに比べて、ドライバー(W#1)やロング・ミドルアイアンでのスピン量を抑えて飛距離増大を図ることができ、繰り返し打撃耐久性が高く得られることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施態様であるゴルフボールの概略断面図である。
【
図2】実施例及び比較例の各例における6番アイアン(I#6)打撃時のスピン量と割れ耐久性との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボールは、少なくとも1層のゴム製コアと、該コアに複数層からなるカバーとを具備し、該カバーは、少なくとも中間層及び最外層の2層のカバー層を有する。例えば、
図1に示すように、コア1と、該コア1を被覆する中間層2と、該中間層を被覆する最外層3を具備するゴルフボールGが挙げられる。なお、最外層3は、塗膜層を除き、ゴルフボールの層構造での最外層に位置するものである。最外層3の表面には、通常、空力特性の向上のためにディンプルDが多数形成される。また、最外層3の表面には、特に図示してはいないが、通常、塗膜層が形成される。
【0015】
上記コアは、公知のゴム組成物を用いて形成することができ、特に制限されるものではないが、好適なものとして以下に示す配合のゴム組成物を例示することができる。
【0016】
上記コアを形成する材料としては、ゴム材を主材として用いることができる。例えば、基材ゴムに、共架橋剤、有機過酸化物、不活性充填剤、硫黄、老化防止剤、有機硫黄化合物等を含有するゴム組成物を用いて形成することができる。
【0017】
上記ゴム組成物の基材ゴムとしては、ポリブタジエンを使用したものが好ましい。このポリブタジエンとしては、そのポリマー鎖中に、シス-1,4-結合を好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上有するものを好適に使用することができる。分子中の結合に占めるシス-1,4-結合が少なすぎると、反発性が低下する場合がある。また、上記ポリブタジエンに含まれる1,2-ビニル結合の含有量は、そのポリマー鎖中に好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.7質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である。1,2-ビニル結合の含有量が多すぎると、反発性が低下する場合がある。
【0018】
上記ポリブタジエンとしては、良好な反発性を有するゴム組成物の加硫成形物を得る観点から、希土類元素系触媒又はVIII族金属化合物触媒で合成されたものを配合することが好ましく、中でも特に希土類元素系触媒で合成されたものであることが好ましい。
【0019】
なお、上記ゴム組成物には、上記ポリブタジエン以外にも他のゴム成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合し得る。上記ポリブタジエン以外のゴム成分としては、上記ポリブタジエン以外のポリブタジエン、その他のジエンゴム、例えばスチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等を挙げることができる。
【0020】
共架橋剤としては、例えば不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の金属塩等が挙げられる。不飽和カルボン酸として具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。不飽和カルボン酸の金属塩としては、特に限定されるものではないが、例えば上記不飽和カルボン酸を所望の金属イオンで中和したものが挙げられる。具体的にはメタクリル酸、アクリル酸等の亜鉛塩やマグネシウム塩等が挙げられ、特にアクリル酸亜鉛が好適に用いられる。
【0021】
上記不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上とすることができ、配合量の上限は好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは45質量部以下とすることができる。配合量が多すぎると、硬くなりすぎて耐え難い打感になる場合があり、配合量が少なすぎると、反発性が低下してしまう場合がある。
【0022】
上記有機過酸化物としては市販品を用いることができ、例えば、商品名「パークミルD」、「パーヘキサ3M」、「パーヘキサC-40」、「ナイパーBW」、「パーロイルL」等(いずれも日油社製)、または、Luperco 231XL(アトケム社製)などを例示することができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記有機過酸化物は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、最も好ましくは0.7質量部以上とすることができ、配合量の上限は好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは2質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると好適な打感、耐久性及び反発性を得ることができない場合がある。
【0024】
不活性充填剤としては、例えば酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を好適に用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
不活性充填剤の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上とすることができ、配合量の上限は好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは60質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると適正な重量、及び好適な反発性を得ることができない場合がある。
【0026】
更に、必要に応じて老化防止剤を配合することができ、例えば、市販品としてはノクラックNS-6、同NS-30、同200(大内新興化学工業社製)、ヨシノックス425(吉富製薬社製)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
該老化防止剤の配合量は0質量部超とすることができ、好ましくは基材ゴム100質量部に対して0.05質量部以上、特に0.1質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は特に制限されないが、好ましくは基材ゴム100質量部に対して3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、最も好ましくは0.5質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると、適正なコア硬度傾斜が得られずに好適な反発性、耐久性及びフルショット時の低スピン効果を得ることができない場合がある。
【0028】
また、必要に応じて、コアの反発性向上を目的として、上記ゴム組成物に有機硫黄化合物を配合することができる。有機硫黄化合物を配合する場合、その配合量は、基材ゴム100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、配合量の上限は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは2質量部以下とすることができる。有機硫黄化合物の配合量が少なすぎると、コアの反発性向上効果が十分に得られない場合があり、逆に、その配合量が多すぎると、コアの硬度が軟らかくなりすぎて、フィーリングが悪くなり、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0029】
上記の各成分を含有するゴム組成物は、通常の混練機、例えばバンバリーミキサーやロール等を用いて混練することにより調製される。また、該ゴム組成物を用いてコアを成形する場合、所定のコア成形用金型を用いて圧縮成形又は射出成形等により成形すればよい。得られた成形体については、ゴム組成物に配合された有機過酸化物や共架橋剤が作用するのに十分な温度条件で加熱硬化し、所定の硬度分布を有するコアとする。この場合、加硫条件は特に限定されるものではないが、約130~170℃の条件とされる。
【0030】
上記コアの直径は、特に制限はないが、好ましくは20mm以上、より好ましく25mm以上、さらに好ましくは30mm以上であり、上限値としては、好ましくは41mm以下、より好ましくは40mm以下である。
【0031】
上記コアのたわみ量、即ち、コアに対して、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷したときまでの変形量は、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは2.5mm以上、さらに好ましくは2.7mm以上であり、上限としては、好ましくは6.0mm以下、より好ましくは5.0mm以下である。この変形量の値が小さすぎると、打感が硬くなりすぎる。逆に、上記の変形量の値が大きすぎると、打感が軟らかくなりすぎ、或いは繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなる場合がある。
【0032】
また、上記コアの中心硬度と表面硬度とが特定以上の硬度差を有すること、具体的には、JIS-C硬度で20以上とすることが所望の初速、打感、スピン特性及び耐久性が得られる点から、好適である。
【0033】
本発明で用いる中間層は、曲げ剛性率400~500MPa及びメルトフローレート(MFR)15g/10min以下の熱可塑性樹脂組成物により形成されるものである。
【0034】
上記熱可塑性樹脂組成物の曲げ剛性率は、本発明の所望の効果、即ち、割れ耐久性と飛距離増大を両立させる点から、JIS K 7106(1995)規格に基づいた測定値が、400MPa以上であり、好ましくは420MPa以上であり、上限値は、500MPa以下である。
【0035】
上記熱可塑性樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、JIS-K7210に準拠し、試験温度190℃、試験荷重21.18N(2.16kgf)条件下での測定値としては、射出成形時の流動性、成形加工性を良好なものにするために、好ましくは15g/10min以下であり、好ましくは12g/10min以下とするものであり、下限値としては、好ましくは0.5g/10min以上、より好ましくは1.0g/10min以上であることが推奨される。
【0036】
上記熱可塑性樹脂組成物には、エチレン性不飽和カルボン酸共重合体のマグネシウム塩が含まれる。エチレン性不飽和カルボン酸共重合体のマグネシウム塩とは、具体的には、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体及び/又はエチレン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体であって、その共重合体の酸基が少なくともマグネシウムイオンによって中和されたアイオノマー樹脂であることが好ましい。ここで、上記の不飽和カルボン酸としては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)等が使用されるが、特に、メタクリル酸(MAA)とすることが好適である。また、上記の不飽和カルボン酸エステルは、低級アルキルエステルが好ましく、特に、アクリル酸ブチル(n-アクリル酸ブチル、i-アクリル酸ブチル)が好ましい。
【0037】
また、上記のエチレン性不飽和カルボン酸共重合体中の不飽和カルボン酸の含有量(酸含量)については、特に制限はないが、好ましくは15質量%以上、26質量%以下、より好ましくは17質量%以上、23質量%以下の範囲である。この酸含量が低いと、ゴルフボール用材料の成形物の反発性が得られなくなるおそれがある。また、酸含量が高くなると、極端に硬度が高くなってしまい、耐久性に影響するおそれがある。
【0038】
上記のエチレン性不飽和カルボン酸共重合体中のマグネシウム塩による中和度は、少なくとも酸基の20モル%以上が中和されていることが好適であり、より好ましくは25モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上である。
【0039】
上記のエチレン性不飽和カルボン酸共重合体中の金属イオンについては、マグネシウム以外のほかの金属イオン、例えば、ナトリウムイオンや亜鉛イオンによってエチレン性不飽和カルボン酸共重合体中の酸基が中和されていてもよい。この場合、酸含量及び中和度については上述したマグネシウム塩についての記載と同様にするのが好適である。
【0040】
上記のエチレン性不飽和カルボン酸共重合体中のマグネシウム塩は、熱可塑性樹脂組成物の主材となり得るものであり、具体的には、熱可塑性樹脂組成物全体の50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、上限としては、100質量%以下である。
【0041】
本発明で用いる中間層材料である熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、下記の熱可塑性樹脂を配合することができる。具体的に熱可塑性樹脂としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン系エラストマー(ポリオレフィン、メタロセンポリオレフィン含む)、ポリスチレン系エラストマー、ジエン系ポリマー、ポリアクリレート系ポリマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアセタールなどを任意に配合することができる。
【0042】
上記熱可塑性樹脂組成物には、上記のとおり、エチレン性不飽和カルボン酸共重合体のマグネシウム塩が含まれるが、これと併用して、エチレン性不飽和カルボン酸共重合体のナトリウム塩を含有させることができる。この場合、エチレン性不飽和カルボン酸共重合体のナトリウム塩としては、エチレン-アクリル酸共重合体のナトリウム塩やエチレン-メタクリル酸共重合体のナトリウム塩である。また、このエチレン性不飽和カルボン酸共重合体のナトリウム塩の曲げ剛性率は380~450MPaであることが好適である。
【0043】
また、上記熱可塑性樹脂組成物は、加工性の点から、メルトフローレート(MFR)が30~500g/10minである未中和のエチレン性不飽和カルボン酸共重合体を含有させることができる。この場合、エチレン性不飽和カルボン酸共重合体中の不飽和カルボン酸の含有量(酸含量)については、得られるボールのスピン量や繰り返し打撃耐久性の点から、好ましくは18質量%以上23質量%以下の範囲である。
【0044】
また、上記熱可塑性樹脂組成物には、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム等の金属酸化物を含有させることが中和度の調整の点から好適に採用される。このうち、酸化マグネシウムを用いることがより好適に採用される。
【0045】
上記熱可塑性樹脂組成物には、加工時の耐熱性の向上、粘度調整及び繰り返し打撃耐久性の向上の点から環状カルボジイミドを含有させることが好適に採用される。この場合、環状カルボジイミドの添加量は、特に制限はないが、熱可塑性樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.005~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%である。
【0046】
更に、上記熱可塑性樹脂組成物には、任意の添加剤を用途に応じて適宜配合することができ、例えば、顔料,分散剤,老化防止剤,紫外線吸収剤,光安定剤などの各種添加剤を加えることができる。これら添加剤を配合する場合、その配合量としては、上記樹脂組成物の総和100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、上限として、好ましくは10質量%以下、より好ましくは4質量%以下である。
【0047】
上記熱可塑性樹脂組成物の成形物、即ち、中間層の材料硬度としては、ショアD硬度で好ましくは60以上、より好ましくは65以上であり、上限としては、好ましくは75以下である。
【0048】
中間層の厚さは、特に制限はないが、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上であり、上限としては、好ましくは1.2mm以下、好ましくは1.1mm以下、さらに好ましくは0.9mm以下である。
【0049】
本発明では、カバーの最外層として、所望のボール性能を総合的に得る点から、ポリウレタン樹脂材料を主成分として形成することができる。上記のポリウレタン樹脂材料としては、特に制限されるものではないが、熱可塑性ポリウレタンエラストマーや熱硬化性ウレタン樹脂が用いられることが好ましく、特に、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを採用することが好適である。
【0050】
上記熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしては、ポリウレタンを主成分とするエラストマーであれば特に限定されるものではないが、ソフトセグメントを構成する高分子ポリオール化合物と、ハードセグメントを構成するジイソシアネート及び単分子鎖延長剤とから構成されていることが好ましい。
【0051】
高分子ポリオール化合物としては、特に制限されるものではないが、例えばポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール等が挙げられ、反発弾性の観点あるいは低温特性の観点から、ポリエーテル系が好ましく用いられる。ポリエーテル系ポリオールとしては、例えばポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられ、特に、ポリテトラメチレングリコールが好ましく用いられる。また、これらの数平均分子量は好ましくは1000~5000、より好ましくは1500~3000である。
【0052】
ジイソシアネートとしては、特に制限されるものではないが、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。本発明では、後述するイソシアネート混合物を配合した場合の、イソシアネート混合物との反応安定性の観点から、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく用いられる。
【0053】
単分子鎖延長剤としては、特に制限されないが、通常の多価アルコール、アミン類を用いることができ、例えば1,4-ブチレングリコール、1,2-エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキシレングリコール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、ジシクロヘキシルメチルメタンジアミン(水添MDA)、イソホロンジアミン(IPDA)などが挙げられる。これら鎖延長剤の平均分子量は20~15000であることが好ましい。
【0054】
このようなポリウレタンエラストマーとしては、市販品を用いることができ、例えばパンデックスT7298、同TR3080、同T8230、同T8290、同T8293、同T8295、同T8260(ディーアイシーコベストロポリマー社製)やレザミン2593、同2597(大日精化工業社製)などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0055】
なお、最外層を形成するポリウレタン樹脂材料には、必要に応じて、種々の添加剤を配合することができ、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤等を適宜配合することができる。
【0056】
最外層の厚さは、特に制限はないが、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上であり、上限としては、好ましくは1.2mm以下、好ましくは1.1mm以下、さらに好ましくは0.9mm以下である。
【0057】
最外層の硬度は、特に制限されるものではないが、ショアD硬度で、好ましくは30以上であり、より好ましくは40以上であり、上限としては、55以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは45以下とすることができる。
【0058】
上記中間層及び最外層の各カバー層の形成方法としては、公知の方法を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、予め作製したコアまたは中間層を被覆した被覆球体を金型内に配置し、上記で調製した中間層または最外層の樹脂材料を射出成形する方法等を採用できる。
【0059】
ボールのたわみ量、即ち、該球体に対して、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷したときまでの変形量は、2.2mm以上であり、上限としては、3.8mm以下である。この変形量の値が小さすぎると、打感が硬くなりすぎる場合がある。逆に、上記の変形量の値が大きすぎると、打感が軟らかくなりすぎ、或いは繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなる場合がある。
【0060】
上記最外層の外表面には多数のディンプルを形成することができる。最外層の表面に配置されるディンプルについては、特に制限はないが、好ましくは250個以上、より好ましくは300個以上、更に好ましくは320個以上であり、上限として、好ましくは440個以下、より好ましくは400個以下、更に好ましくは360個以下を具備することができる。ディンプルの個数が上記範囲より多くなると、ボールの弾道が低くなり、飛距離が低下することがある。逆に、ディンプル個数が少なくなると、ボールの弾道が高くなり、飛距離が伸びなくなる場合がある。また、それらディンプルの配置は、四面体、八面体、二十面体、その他多面多角形に従った対称性、または極を結ぶ軸において回転対称性のいずれかをもっていてもよい。
【0061】
ディンプルの種類としては、直径及び/又は深さが互いに異なるディンプルが2種以上形成されることが好ましく、より好ましくは3種以上形成されることが推奨される。ディンプルの平面形状については、円形、各種多角形、デュードロップ形、その他楕円形など1種類又は2種類以上を組み合わせて適宜使用することができる。例えば、円形ディンプルを使用する場合には、直径は2.5mm以上6.5mm以下程度、深さは0.07mm以上0.30mm以下とすることができる。ディンプルの断面形状については、円弧、コーン、なべ底、各種関数で表記されるカーブなど1種類又は2種類以上を組み合わせで定義され、エッジ近傍以外に複数の変曲点を持ち合わせていてもよい。
【0062】
ディンプルがゴルフボールの球面に占めるディンプル占有率、即ち、各ディンプルの縁部によって囲まれる仮想球面の総面積が占める割合(ディンプル表面占有率)SR値(%)については、空気力学特性を十分に発揮し得る点から70%以上90%以下であることが望ましい。また、各々のディンプルの縁に囲まれた平面下のディンプルの空間体積を、上記平面を底面とし、かつこの底面からのディンプルの最大深さを高さとする円柱体積で除した値V0は、ボールの弾道の適正化を図る点から0.35以上0.80以下とすることが好適である。更に、ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル容積の合計がディンプルが存在しないと仮定したボール球容積に占めるVR値は、0.6%以上1.0%以下とすることが好ましい。上述した各数値の範囲を逸脱すると、良好な飛距離が得られない弾道となり、十分満足した飛距離を出せない場合がある。またボール飛距離の対称性に対するルールを満たすよう、極・赤道近傍以外のディンプル体積に対して、極近傍のディンプル体積を小さく、赤道近傍のディンプル体積を大きくしてもよい。
【0063】
また、上記カバー表面には、更に各種塗料を塗装することができ、この塗料としては、ゴルフボールの過酷な使用状況に耐えうる必要から、2液硬化型のウレタン塗料、特に、無黄変のウレタン塗料が好適に挙げられる。
【0064】
なお、ボール重量、直径等のボール規格はゴルフ規則に従って適宜設定することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0066】
[実施例1~15、比較例1~13]
下記表1に示すように、全ての例に共通する下記のゴム組成物を用い、155℃で15分間の加硫により、各例のソリッドコアを作成した。
【0067】
【0068】
なお、上記コア材料の詳細は下記のとおりである。
・「cis-1,4-ポリブタジエン」 JSR社製、商品名「BR01」
・「アクリル酸亜鉛」 日本触媒社製
・「酸化亜鉛」 堺化学工業社製
・「メタクリル酸亜鉛」 浅田化学工業社製
・「老化防止剤」 商品名「ノクラックNS6」(大内新興化学工業社製)
・「有機過酸化物」 ジクミルパーオキサイド、商品名「パークミルD」(日油社製)
・「水」:蒸留水
【0069】
カバー層(中間層及び最外層)の形成
次に、上記で得た直径38.5mmのコアの周囲に、下記表2及び表3に示す樹脂材料「M1」~「M28」の配合により、厚さ1.3mmの中間層を射出成形法により被覆して中間層被覆球体を製造し、次いで、該中間層被覆球体の周囲に、全ての例に共通する下記表4に示す厚さ0.8mmの最外層材料(カバー材料)を射出成形法により被覆して、スリーピースゴルフボールを作製した。この際、各実施例、比較例のカバー表面には、特に図示してはいないが、共通するディンプルが形成された。
【0070】
【0071】
【0072】
表中に記載した材料の商品名は以下の通りである。
「アイオノマーA~F」 ・・・ エチレン-メタクリル酸共重合体のナトリウム塩
「アイオノマーG~J」 ・・・ エチレン-メタクリル酸共重合体の亜鉛塩
「アイオノマーK~Q」 ・・・ エチレン-メタクリル酸共重合体のマグネシウム塩
「ニュクレル2060」「ニュクレル2050H」 ・・・ 三井・ダウケミカル社製の未中和のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体
「環状カルボジイミド」 ・・・ 帝人社製の商品名「カルボジスタ」
「ポリオール 」 ・・・ 三菱ガス化学社製のトリメチロールプロパン
「酸化マグネシウム」 ・・・ 協和化学工業社製
【0073】
【0074】
表中に記載した主な材料の商品名は以下の通りである。
・「T-8290」「T-8283」:ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」、エーテルタイプの熱可塑性ポリウレタン
・「ハイトレル4001」:ポリエステルエラストマー、東レデュポン社製
・「イソシアネート化合物」:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
【0075】
得られたゴルフボールについて、コア、中間層被覆球体、ボールの外径、各層の厚さ及び材料硬度、各被覆球体の表面硬度及び所定荷重変形量(たわみ量)などの諸物性を下記の方法で評価し、表5及び表6に示す。また、各例により製造されたゴルフボールの初速、密着性及び打撃耐久性を下記方法で評価した。その結果を表5及び表6に示す。
【0076】
コア及び中間層被覆球体の外径
23.9±1℃の温度で、任意の表面5箇所を測定し、その平均値を1個のコア、中間層被覆球体の測定値とし、測定個数5個での平均値を求めた。
【0077】
ボールの外径
23.9±1℃の温度で、任意のディンプルのない部分を5箇所測定し、その平均値を1個のボールの測定値とし、測定個数5個のボールの平均値を求めた。
【0078】
コア、中間層被覆球体及びボールのたわみ量
コア、中間層被覆球体又はボールを硬板の上に置き、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷したときまでのたわみ量をそれぞれ計測した。なお、上記のたわみ量はいずれも23.9℃に温度調整した後の測定値である。
【0079】
中間層及び最外層の材料硬度(ショアD硬度)
中間層及び最外層の樹脂材料を厚さ2mmのシート状に成形し、2週間以上放置した。その後、ショアD硬度はASTM D2240-95規格に準拠して計測した。
【0080】
初速度
初速は、R&Aの承認する装置であるUSGAのドラム回転式の初速計と同方式の初速測定器を用いて測定した。ボールは23±1℃の温度で3時間以上温度調節し、室温23±2℃の部屋でテストされた。10個のボールを各々2回打撃して、6.28ft(1.91m)の間を通過する時間を計測し、初速を計算した。比較例1の初速の計測値を基準にしてその差を表示した。
【0081】
ドライバー(W#1)及びミドルアイアン(I#6)の打撃時のスピン量
ゴルフ打撃ロボットに、ドライバー(W#1)を装着し、ヘッドスピード(HS)45m/sで打撃した直後のバックスピン量を初期条件計測装置により測定した。
また、ゴルフ打撃ロボットに、6番アイアン(I#6)を装着し、ヘッドスピード(HS)37m/sで打撃した直後のバックスピン量を初期条件計測装置により測定した。また、実施例及び比較例の各例における6番アイアン(I#6)打撃時のスピン量と割れ耐久性との関係を示すグラフを
図2に示した。
【0082】
打撃耐久性
米国Automated Design Corporation製のADC Ball COR Durability Testerにより、ボールの耐久性を評価した。この試験機は、ゴルフボールを空気圧で発射させた後、平行に設置した2枚の金属板に連続的に衝突させる機能を有する。金属板への入射速度は43m/sとした。ゴルフボールが割れるまでに要した発射回数を測定した。比較例1の発射回数を100として指数で表した。
【0083】
【0084】
【0085】
表5及び表6の各例のボール性能及び
図2のグラフより以下の点が考察される。
比較例1,2,3,4及び6は、中間層材料として、曲げ剛性率が比較的高いNaアイオノマーを用いた例であり、その結果、6番アイアンショット時のバックスピン量が比較的少なくなり、ボールの飛行中の吹き上りが抑制されて、よく飛ぶものであるが、繰り返し打撃耐久性が悪い。
比較例5は、中間層材料として、Naアイオノマーを用いた例であり、繰り返し打撃耐久性は良いが、6番アイアンショット時のバックスピン量が多くなり好ましくない。
比較例7,8,9及び10は、中間層材料として、Znアイオノマーを用いた例であり、いずれも繰り返し打撃耐久性が悪い。
比較例11及び比較例12は、中間層材料として、曲げ剛性率が比較的低いMgアイオノマーを用いた例であり、6番アイアンショット時のバックスピン量が多く好ましくない。
一方、本実施例1~5は、中間層材料として、曲げ剛性率の高いMgアイオノマーを用いた例であり、6番アイアンショット時のバックスピン量が少なく、かつ繰り返し打撃耐久性が高いものとなった。
また、実施例1と比して高曲げ剛性率のNaアイオノマーを所定量含む実施例6及び実施例7については、実施例1と同様に高い繰り返し打撃耐久性と#6アイアンショット時のバックスピン量を抑える効果が見られ、実施例1と比してMFRが30~500g/10minの未中和のエチレン性不飽和カルボン酸共重合体を所定量含む樹脂組成物を中間層に用いた実施例8,9及び10についても、実施例1と同様に高い繰り返し打撃耐久性と#6アイアンショット時のバックスピン量を抑える効果が見られた。また、実施例1と比して環状カルボジイミドを含む樹脂組成物を中間層材料に用いた実施例11、12及び13については、実施例1と同様に高い繰り返し打撃耐久性と#6アイアンショット時のバックスピン量を抑える効果が見られ、実施例1と比して所定の金属酸化物を含む樹脂組成物を中間層材料に用いた実施例14及び実施例15についても、実施例1と同様に高い繰り返し打撃耐久性と#6アイアンショット時のバックスピン量を抑える効果が見られた。