(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】発電システム
(51)【国際特許分類】
F03G 6/00 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
F03G6/00 541
(21)【出願番号】P 2020008424
(22)【出願日】2020-01-22
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一紀
(72)【発明者】
【氏名】水野 良治
(72)【発明者】
【氏名】丹原 千里
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-129274(JP,A)
【文献】特開平03-105076(JP,A)
【文献】特開2007-239725(JP,A)
【文献】特開2014-070618(JP,A)
【文献】特開2014-134186(JP,A)
【文献】国際公開第2010/119739(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上空に向かって延びる上昇流路を有する筒部と、
前記筒部の周辺領域における空気を前記上昇流路に集める集気部と、
前記上昇流路を流れる上昇気流によって回転する風力タービンを有する発電機と、を備え、
前記筒部は、浮力発生体が発生する浮力により、前記上昇流路を形成する筒体を有
し、
前記筒体は、前記浮力発生体に供給される気体が流れる管状の流通路と、前記流通路に支持される筒状の流路形成シートと、からなる
発電システム。
【請求項2】
前記流通路は、前記上昇流路の長さ方向に延び
て前記浮力発生体に接続された第1流通路と、
前記上昇流路の長さ方向に所定の間隔で設けられ、前記第1流通路に連通して前記上昇流路の断面方向に延び
、前記上昇流路の断面形状を保持する第2流通路と、を有する
請求項
1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記上昇流路が上空に向かって拡径している
請求項
1または2に記載の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上昇気流を利用して発電を行う発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上昇気流を利用して発電を行う発電システムが知られている。例えば特許文献1には、地面との間に間隔を空けて設けられた透光体を備える集気部と、集気部の中央部分から立設する筒体とを備え、透光体において温められた空気が筒体内を上昇気流として流れることを利用して発電する発電システムが開示されている。こうした発電システムでは、筒体の上端が高い位置に配置されるほど、大きな上昇気流が発生し、発電効率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、筒体を長くすると筒体の固定荷重が大きくなるため、筒体の支持に必要となる支持力が大きくなる。また、筒体の固定荷重が大きくなると、地震荷重や風荷重など、外力に起因した荷重も大きくなるため、筒体の形状保持に必要とされる剛性も大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する発電システムは、上空に向かって延びる上昇流路を有する筒部と、前記筒部の周辺領域における空気を前記上昇流路に集める集気部と、前記上昇流路を流れる上昇気流によって回転する風力タービンを有する発電機と、を備え、前記筒部は、浮力発生体が発生する浮力により、前記上昇流路を形成する筒体を有する。
【0006】
上記構成の発電システムにおいて、前記筒体は、前記上昇流路の長さ方向に延びて前記浮力発生体に供給される気体が流れる流通路を有していることが好ましい。
上記構成の発電システムにおいて、前記筒体は、前記上昇流路の長さ方向に所定の間隔で設けられて前記上昇流路の断面形状を保持する形状保持部を有することが好ましい。
【0007】
上記構成の発電システムにおいて、前記流通路は、前記上昇流路の長さ方向に延びる第1流通路と、前記第1流通路に連通して前記上昇流路の断面方向に延びる第2流通路と、を有し、前記形状保持部は、前記第2流通路で構成されることが好ましい。
【0008】
上記構成の発電システムにおいて、前記上昇流路が上空に向かって拡径していることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、筒体の固定荷重が小さくなることから、筒体の支持に必要とされる支持力、および、筒体の形状保持に必要とされる剛性を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】発電システムの一実施形態の概略構成を示す斜視図。
【
図3】変形例において、発電システムの概略構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1および
図2を参照して、発電システムの一実施形態について説明する。
図1および
図2に示すように、発電システム10は、集気部11、筒部12、発電機13を備えている。発電システム10においては、集気部11によって筒部12の周辺領域の空気が集められ、その集められた空気が筒部12の内部を上昇気流となって流れることを利用して発電機13による発電が行われる。
【0012】
集気部11は、地面15との間に間隔を空けた状態で配置される透光体16と、透光体16を支持する複数の支柱17とを有している。透光体16は、筒部12の周辺領域を上方から覆うように配設されている。透光体16は、例えば透光性を有する複数のパネルを隙間なく並べることにより構成される。透光体16は、中央部分に開口部19を有しており、この開口部19に向けて地面15からの高さが徐々に高くなるように形成される。
【0013】
集気部11は、透光体16と地面15との間に、太陽光や地熱などによって空気が加熱される加熱空間20を形成する。集気部11は、加熱空間20で加熱されて軽くなった空気を透光体16で案内することにより、筒部12の周辺領域における空気を透光体16の開口部19に集める。開口部19に集められた空気は、筒部12に形成された上昇流路21に流入する。
【0014】
筒部12は、透光体16の開口部19から上空に向かって延びる上昇流路21を有している。上昇流路21は、上空に配置される排気口23に向けて拡径する形状を有している。上昇流路21に流入した空気は、上空の空気との圧力差や温度差などによって上昇気流となり、排気口23から排気される。筒部12は、その基端部が地面15に支持されていてもよいし、透光体16の開口部19に支持されていてもよい。
【0015】
発電機13は、上昇流路21を流れる上昇気流によって回転する風力タービン25を有している。発電機13は、風力タービン25が回転することによって発電する。
図1および
図2に示すように、筒部12は、浮力を発生させる浮力発生体として機能するバルーン30と、バルーン30が発生させる浮力によって透光体16の開口部19から上空に向かって延びる状態に保持されることで上昇流路21を形成する筒体31とを有している。
【0016】
バルーン30は、可撓性を有する軽量な材料、例えばナイロンやポリエステル、ゴムなどによって構成される。バルーン30は、例えば水素やヘリウムなど、空気よりも比重の軽い気体が充填されることにより、集気部11から筒体31が立設された状態を保持可能な浮力を発生させる。本実施形態では、空気よりも比重の軽い気体として水素を用いている。
【0017】
上昇流路21を形成する筒体31は、主に可撓性を有する材料で構成されることにより、上昇流路21の長さ方向において折りたたみ可能に構成されている。また、筒体31は、透明性を有する材料で構成されることが好ましい。これにより、筒体31が景観に与える影響を小さくすることができる。
【0018】
筒体31は、水素製造装置32が製造する水素がバルーン30に向けて流れる流通路33を有している。水素製造装置32は、発電機13が発電した電力で駆動されてもよい。流通路33は、可撓性を有する軽量な材料、例えばナイロンやポリエステル、ゴムなどによって構成される。流通路33は、複数の第1流通路34と複数の第2流通路35とで構成されている。
【0019】
第1流通路34は、上昇流路21の長さ方向に延びており、その先端部にバルーン30が接続されている。
第2流通路35は、上昇流路21の長さ方向において所定の間隔で設けられており、上昇流路21の断面方向において環状に延びている。第2流通路35は、上昇流路21が上空に向けて拡径するようにバルーン30に近づくほど大きな径に形成されている。第2流通路35は、複数の第1流通路34を互いに連通させており、バルーン30に供給される水素が流通することにより、上昇流路21の断面方向についての形状を保持する。バルーン30に最も近い第2流通路35は、排気口23を構成する。
【0020】
第1流通路34および第2流通路35は、水素製造装置32から水素が供給されることで、浮力を発生させる浮力発生体として機能するとともに、上昇流路21の躯体部分を構成することで上昇流路21の形状を保持する形状保持部として機能する。
【0021】
筒体31は、第1流通路34および第2流通路35に支持される筒状の流路形成シート36を有している。流路形成シート36は、可撓性を有する軽量な材料、例えばナイロンやポリエステル、ゴムなどで形成されたシート材を適宜繋ぎ合わせることにより構成される。なお、
図1および
図2では、流路形成シート36の部分にドットを付している。
【0022】
なお、バルーン30内の水素は、流通路33を通じて水素製造装置32によって排気される構成であってもよいし、バルーン30に設けられた弁体を遠隔操作等で開弁させることによって排気される構成であってもよい。
【0023】
(作用)
上述した発電システム10においては、バルーン30が発生する浮力によって筒体31が上空に向かって延びることにより上昇流路21が形成される。上昇流路21が形成されると、集気部11によって透光体16の開口部19に集められた空気が上昇気流となって上昇流路21を流れる。発電機13は、その上昇気流によって風力タービン25が回転することで発電を行う。
【0024】
また、悪天候や強風などが予想される場合には、前もってバルーン30から水素が排気される。バルーン30から水素が排気されると、筒体31は、バルーン30の降下にともなって集気部11に近い部分から順に折りたたまれることでコンパクトになる。バルーン30への水素の供給が再開されると、筒体31は、バルーン30に近い部分から順に上空へと引き上げられ、上昇流路21を形成する。
【0025】
本実施形態の効果について説明する。
(1)発電システム10においては、バルーン30による浮力を利用して上昇流路21が形成される。これにより、筒体31の固定荷重を小さくすることができる。その結果、筒体の支持に必要とされる支持力を小さくすることができる。
【0026】
(2)筒体31の固定荷重が小さくなることから、地震荷重や風荷重などの外力に起因して筒体31に作用する荷重が小さくなる。その結果、筒体31(上昇流路21)の形状保持のために、筒体31そのものに必要とされる剛性を小さくすることができるとともに、筒体31の支持構造、すなわち集気部11と筒体31との連結部分に必要とされる剛性を小さくすることができる。
【0027】
(3)第1流通路34および第2流通路35によって上昇流路21の躯体部分が構成されている。これにより、筒部12に作用する浮力が大きくなることから、例えば上昇流路21の形成部材について、材質の自由度を向上させることができる。
【0028】
(4)筒体31は、上昇流路21の長さ方向において所定の間隔で設けられた第2流通路35によって上昇流路21の断面形状が保持されている。これにより、横風を受けても上昇流路21の形状変化を小さくすることができる。
【0029】
(5)第2流通路35は、第1流通路34を互いに連通させている。これにより、バルーン30間における圧力差が小さくなることから、上昇流路21の形状が所定の形状に維持されやすくなる。
【0030】
(6)上昇流路21が上空に向かって拡径している。これにより、筒体31が折りたたみやすくなるとともに、折りたたみ後の筒体31をよりコンパクトにすることができる。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0031】
・上昇流路21は、上空に向かって拡径せずに直線状に延びていてもよい。
・上昇流路21の断面形状を保持する形状保持部は、バルーン30に供給される水素が流れる第2流通路35に限らず、例えば、線状の鋼材などによって構成されてもよい。こうした構成の場合、上昇流路21を上空に向かって拡径させることで、鋼材同士を重ねることなく筒体31を折りたたむことができる。その結果、上記(6)に記載した効果をより効果的に得ることができる。
【0032】
・筒体31は、流路形成シート36のみで構成されていてもよい。この場合、流路形成シート36にバルーン30が接続される。また、流通路33は、流路形成シート36とは別のルートでバルーン30に接続される。
【0033】
・
図3に示すように、筒体31は、筒状の流路形成シート36に対して流通路33がスパイラル状に巻き回されている構成であってもよい。換言すれば、流通路33は、上昇流路21の長さ方向にスパイラル状に延びる構成であってもよい。こうした構成によれば、筒体31の折りたたみを円滑に行うことができる。また、こうした構成においては、流通路33によって排気口23が形成されることが好ましい。
【0034】
・浮力発生体は、流路形成シート36を上空に引き上げる浮力が発生させればよく、バルーン30のみで構成されてもよいし、流通路33のみで構成されてもよい。例えば、筒体31の上端にチューブ状のバルーンを設けてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10…発電システム、11…集気部、12…筒部、13…発電機、15…地面、16…透光体、17…支柱、19…開口部、20…加熱空間、21…上昇流路、23…排気口、25…風力タービン、30…バルーン、31…筒体、32…水素製造装置、33…流通路、34…第1流通路、35…第2流通路、36…流路形成シート。