(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】スライド装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20231114BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/06
(21)【出願番号】P 2020008472
(22)【出願日】2020-01-22
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山岡 知憲
(72)【発明者】
【氏名】山下 志麻
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/188811(WO,A1)
【文献】特開2007-104828(JP,A)
【文献】特開2003-339113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00- 2/90
H02G 11/00-11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が着座可能なシート本体、及び当該シート本体に搭載された電気機器に接続される扁平状のケーブルを有する乗物用シートに適用され、前記シート本体をスライド可能に支持するためのスライド装置において、
乗物に対して固定される固定レールと、
前記固定レールに対してスライド可能な可動レールであって、前記シート本体が固定される可動レールと、
前記ケーブルの一部を前記固定レールに固定するための固定具であって、当該ケーブルが蛇行した状態で係止される固定具とを備え、
前記ケーブルのうち厚み方向一端側の面を第1面とし、厚み方向他端側の面を第2面としたとき、
前記固定具は、
前記第1面に圧接して前記ケーブルを屈曲させる第1当接部
、
前記第1当接部からずれた位置にて前記第2面に圧接して前記ケーブルを屈曲させる第2当接部
、
前記ケーブルの幅方向一端側に配置される第1部材、
前記ケーブルの幅方向他端側に配置される第2部材、及び
前記第1部材と前記第2部材とを連結するための連結部を有
し
記第1部材及び前記第2部材のうち少なくとも一方の部材には、他方の部材に面した部位から当該他方の部材から離間する向きに窪み、かつ、前記ケーブルが嵌め込まれる略S字状の保持溝が設けられており、
さらに、前記第1部材及び前記第2部材のうち少なくとも一方の部材には、前記ケーブルの幅方向端部に設けられた凹部に嵌り込み可能な凸部が設けられているスライド装置。
【請求項2】
前記第2当接部は、前記第1当接部に対して前記固定レールの長手方向と直交する方向にずれており、
さらに、前記第2当接部の頂部は、前記第1当接部の頂部に対して前記長手方向にずれ、かつ、前記第1当接部の頂部と前記第2当接部の頂部とを通る仮想線が前記固定具に係止されている前記ケーブルと交差する請求項1に記載のスライド装置。
【請求項3】
前記凸部は、前記保持溝の延び方向一端側及び他端側のうちいずれか一方に設けられている請求項
1又は2に記載のスライド装置。
【請求項4】
前記保持溝の底部側幅寸法は、前記保持溝の開口側幅寸法より小さい請求項
1ないし3のいずれか1項に記載のスライド装置。
【請求項5】
前記固定レールの長手方向端部を覆う樹脂製のエンドキャップを備え、
さらに、前記固定具は、前記エンドキャップに固定されている請求項1ないし
4のいずれか1項に記載のスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物用シートのシート本体をスライド可能に支持するためのスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の乗物用シートでは、フラットケーブルの一部が固定レール内に配索されている。当該配索されたフラットケーブルは、固定レールの長手方向端部にて当該固定レールに固定されている。
【0003】
なお、フラットケーブル(以下、ケーブルと略す。)は、可撓性を有する扁平状の電気線(ハーネス)であって、シート本体に搭載された電気機器に接続される電気線である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、簡便な構成にてケーブルを固定可能なスライド装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
利用者が着座可能なシート本体(2)、及び当該シート本体(2)に搭載された電気機器に接続される可撓性を有する扁平状のケーブル(7)を有する乗物用シートに適用され、シート本体(2)をスライド可能に支持するためのスライド装置(10)は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0007】
すなわち、当該構成要件は、乗物に対して固定される固定レール(11)と、固定レール(11)に対してスライド可能な可動レール(12)であって、シート本体(2)が固定される可動レール(12)と、ケーブル(7)の一部を固定レール(11)に固定するための固定具(15)であって、当該ケーブル(7)が蛇行した状態で係止される固定具(15)とを備え、固定具(15)は、第1面(7A)に圧接してケーブル(7)を屈曲させる第1当接部(19A)、及び第1当接部(19A)からずれた位置にて第2面(7B)に圧接してケーブル(7)を屈曲させる第2当接部(19B)を有することである。なお、上記第1面(7A)とはケーブル(7)のうち厚み方向一端側の面をいう。上記第2面(7B)とはケーブル(7)のうち第1面(7A)の裏面側の面をいう。
【0008】
これにより、当該スライド装置では、ケーブル(7)が第1当接部(19A)及び第2当接部(19B)に圧接した状態となるため、ケーブル(7)は固定具(15)に強固に係止された状態となる。
【0009】
したがって、当該スライド装置では、ケーブル(7)が係止される固定具(15)が固定レール(11)に固定されると同時にケーブル(7)の固定レール(11)への固定作業が完了し得る。つまり、当該スライド装置では、簡便な構成にてケーブル(7)が固定レール(11)に固定され得る。
【0010】
なお、当該スライド装置は、例えば、以下の構成であってもよい。
【0011】
すなわち、第2当接部(19B)は、第1当接部(19A)に対して固定レール(11)の長手方向と直交する方向にずれており、さらに、第2当接部(19B)の頂部(T2)は、第1当接部(19A)の頂部(T1)に対して長手方向にずれ、かつ、第1当接部(19A)の頂部(T1)と第2当接部(19B)の頂部(T2)とを通る仮想線(L1)がケーブル(7)と交差する構成が望ましい。これにより、ケーブル(7)が確実に固定具(15)に係止され得る。
【0012】
つまり、ケーブル(7)に発生する張力の方向は、概ね、固定レール(11)の長手方向と略平行な方向である。したがって、第1当接部(19A)及び第2当接部(19B)が上記のようにずれていれば、各当接部(19A、19B)でのケーブル(7)の曲率が大きくなるので、ケーブル(7)が固定具(15)に確実に係止された状態となる。
【0013】
固定具(15)は、ケーブル(7)の幅方向一端側に配置される第1部材(16)、ケーブル(7)の幅方向他端側に配置される第2部材(17)、及び第1部材(16)と第2部材(17)とを連結するための連結部(18)を有して構成されていることが望ましい。
【0014】
第1部材(16)及び第2部材(17)のうち少なくとも一方の部材には、他方の部材に面した部位から当該他方の部材から離間する向きに窪み、かつ、前記ケーブル(7)が嵌め込まれる略S字状の保持溝(19C)が設けられており、さらに、第1部材(16)及び第2部材(17)のうち少なくとも一方の部材には、ケーブル(7)の幅方向端部に設けられた凹部(20B)に嵌り込み可能な凸部(20A)が設けられていることが望ましい。これにより、固定具(15)に対するケーブル(7)の位置が、容易かつ正確に決まり得る。
【0015】
凸部(20A)は、保持溝(19C)の延び方向一端側及び他端側のうちいずれか一方に設けられていることが望ましい。これにより、凸部(20A)の位置バラツキの影響が小さくなる。
【0016】
保持溝(19C)の底部側幅寸法(W1)は、保持溝(19C)の開口側幅寸法(W2)より小さいことが望ましい。これにより、保持溝(19C)の溝幅が小さく、保持溝(19C)の内壁とケーブル(7)との接触面圧が大きい構成であっても、作業者(自動組付機も含む。)は、ケーブル(7)を保持溝(19C)に容易に挿入組み付けでき得る。
【0017】
固定レール(11)の長手方向端部を覆う樹脂製のエンドキャップ(11A)を備え、固定具(15)は、エンドキャップ(11A)に固定されていることが望ましい。
【0018】
これにより、スライド装置を提供する者は、現状の固定レール(11)、つまりケーブル(7)を固定する機能を備えていない固定レール(11)をそのまま利用して、容易にケーブル(7)を固定レール(11)に固定することが可能となる。
【0019】
すなわち、固定レール(11)は、通常、金属製である。このため、スライド装置を提供する者は、樹脂製のエンドキャップ(11A)に固定具(15)を固定するための構成を設ければ、ケーブル(7)を固定レール(11)に固定可能なスライド装置を容易に得ることが可能となる。
【0020】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る乗物用シートを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るスライド装置を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る固定具及びケーブルを示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る固定具及びケーブルを示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る第1部材を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る第2部材を示す図である。
【
図7】第1実施形態に係る固定具によるケーブルの固定構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0023】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係るスライド装置が適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載されたものである。
【0024】
したがって、当該乗物用シート(スライド装置を含む。)は、各図に付された方向に限定されない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シート装置が車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示さない。
【0025】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された乗物用シートは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素を備える。
【0026】
(第1実施形態)
<1.乗物用シート装置の概要>
乗物用シート1は、
図1に示されるように、シート本体2及びスライド装置10等を少なくとも備える。シート本体2は利用者が着座可能な座席である。本実施形態に係るシート本体2は、シートクッション3及びシートバック5等を有する。
【0027】
シートクッション3は、着席者の臀部を支持するための部位である。シートバック5は着席者の背部を支持するための部位である。なお、本実施形態に係る乗物用シート1は、いわゆる「ミニバン」型車両の助手席又は2列目シートに適用される。
【0028】
シート本体2には電気ヒータ等の電気機器(図示せず。)が搭載されている。電気機器にはケーブル7(
図2参照)が接続されている。ケーブル7は、断面形状が扁平状に構成され、かつ、可撓性を有する電気線である。
【0029】
スライド装置10は、シート本体2をスライド可能に支持するための装置である。シート本体2は、2つのスライド装置10によりスライド可能に支持される。具体的には、第1のスライド装置は、乗物用シートのシート幅方向一端側を支持する。第2のスライド装置は、乗物用シートのシート幅方向他端側を支持する。
【0030】
<2.スライド装置の構成>
<2.1 スライド装置の概要>
2つのスライド装置は略左右対称な構成である。以下の説明は、シート幅方向左端側に配置されたスライド装置10の説明である。当該スライド装置10は、
図2に示されるように、固定レール11、可動レール12及び固定具15等を少なくとも備える。
【0031】
固定レール11は、乗物に直接的又は間接的に固定される金属製のレール部材である。固定レール11の長手方向端部にはエンドキャップ11Aが設けられている。エンドキャップ11Aは、固定レール11の長手方向端部を覆う樹脂製の部材である。なお、当該エンドキャップ11Aは、ボルト等の締結具(図示せず。)により固定レール11に固定されている。
【0032】
可動レール12は、固定レール11に対してスライド可能な部材である。当該可動レール12は、固定レール11内に配置されたローラ等の転動体(図示せず。)介して支持されている。そして、可動レール12にはシート本体2が固定される。これにより、シート本体2は、可動レール12と共にスライド変位する。
【0033】
固定具15は、固定レール11内に配策されたケーブル7の一部を当該固定レール11に固定するための部材である。当該固定具15はエンドキャップ11Aに固定されている。なお、本実施形態に係る固定具15は、エンドキャップ11Aに圧入固定されている。
【0034】
<2.2 固定具の構造>
固定具15は、
図3に示されるように、ケーブル7が蛇行した状態で係止される固定具である。具体的には、当該固定具15は、第1部材16、第2部材17及び連結部18等を有して構成されている。
【0035】
<固定具の概要>
第1部材16は、
図4に示されるように、ケーブル7の幅方向一端側に配置されるブロック状の部材である。なお、ケーブル7の幅方向とは、当該ケーブル7の長手方向及び厚み方向と直交する方向(
図4では、左右方向)をいう。
【0036】
第2部材17は、ケーブル7の幅方向他端側に配置されるブロック状の部材である。連結部18は、第1部材16と第2部材17とを連結するための部位である。本実施形態に固定具15には、少なくとも2つの連結部18が設けられている(
図5及び
図6参照)。
【0037】
2つの連結部18は同一構造である。具体的には、当該連結部18は、
図4に示されるように、係止部18A及び被係止部18B等を有して構成されている。係止部18A及び被係止部18は、互いに引っ掛かるように係止される部位である。
【0038】
本実施形態係る被係止部18Bは、弾性変形可能なスナップフィット状の部位である。係止部18Aは被係止部18Bが引っ掛かる突起状の部位である。係止部18Aは、第1部材16に設けられている。
【0039】
第1部材16と係止部18Aとは樹脂にて一体成形された一体品である。被係止部18Bは第2部材17に設けられている。第2部材17と被係止部18Bとは樹脂にて一体成形された一体品である。
【0040】
なお、第1部材16と第2部材17とは、係止部18A及び被係止部18Bを除き、(
図5及び
図6に示されるように、第1部材16と第2部材17との合わせ面Cfに対して対称な形状である。
【0041】
第1部材16及び第2部材17それぞれには、
図3に示されるように、圧入突起18Cが設けられている。圧入突起18Cは、エンドキャップ11Aとの内壁と接触して、合わせ面Cfにおける第1部材16と第2部材17との接触面圧を高めるとともに、固定具15がエンドキャップ11Aから脱落することを規制する。
【0042】
フランジ部16A、17Aは、エンドキャップ11Aに対する固定具15の位置を決めるための部位である。具体的には、フランジ部16A、17Aがエンドキャップ11Aに設けられた窪み部(図示せず。)に嵌り込むことにより、固定具15が位置決めされた状態でエンドキャップ11Aに固定される。
【0043】
<固定具の詳細>
固定具15は、
図7に示されるように、ケーブル7に接触する第1当接部19A及び第2当接部19Bを有する。なお、本実施形態では、第1部材16及び第2部材17それぞれが第1当接部19A及び第2当接部19Bを有する。
【0044】
すなわち、
図5及び
図6に示されるように、第1部材16及び第2部材17それぞれには、略S字状の保持溝19Cが設けられている。第1部材16に設けられた保持溝19Cは、第2部材17に面した部位、つまり合わせ面Cfから第2部材17から離間する向きに窪んだ溝である。
【0045】
第2部材17に設けられた保持溝19Cは、合わせ面Cfから第1部材16から離間する向きに窪んだ溝である。そして、各保持溝19Cには、
図7に示されるように、ケーブル7が嵌め込まれる。
【0046】
各第1当接部19A及び各第2当接部19Bは、各保持溝19Cの側壁の少なくとも一部を構成する。各第1当接部19Aは、ケーブル7の第1面7Aに圧接して当該ケーブル7を屈曲させる。
【0047】
第2当接部19Bは、第1当接部19Aからずれた位置にてケーブル7の第2面7Bに圧接して当該ケーブル7を屈曲させる。なお、第1面7Aは、ケーブル7のうち厚み方向一端側の面をいう、第2面7Bとは、ケーブル7のうち厚み方向他端側の面をいう。圧接とは、接触面圧が0より大きい状態で接触している状態をいう。
【0048】
そして、第2当接部19Bは、第1当接部19Aに対して固定レール11の長手方向と直交する方向(
図7では、上下方向)にずれている。第2当接部19Bの頂部T2は、第1当接部19Aの頂部T1に対して前記長手方向にずれている。
【0049】
さらに、第1当接部19Aの頂部T1と第2当接部19Bの頂部T2とを通る仮想線L1が固定具15に係止されているケーブル7と交差する。このため、各保持溝19Cは、大きくS字状に蛇行した溝となる。
【0050】
図5及び
図6に示されるように、各保持溝19Cは、底部側幅寸法W1が開口側(合わせ面Cf側)幅寸法W2より小さいくなるように構成されている。なお、本実施形態では、各保持溝19Cの開口側にテーパ部19Dが設けられて当該寸法関係に構成されている。
【0051】
なお、各保持溝19Cのうちテーパ部19D以外の部位の溝幅は、第1面7A及び第2面7Bと保持溝19Cの内壁との接触面圧が、0より大きい所定面圧以上となるような寸法である。これにより、ケーブル7が各保持溝19Cに嵌め込まれた状態では、当該ケーブル7は各保持溝19Cの内壁に圧接した状態となる。
【0052】
<ケーブルの位置決め構造>
第1部材16及び第2部材17ぞれぞれの保持溝19Cには、
図5及び
図6に示されるように、凸部20Aが設けられている。各凸部20Aは、ケーブル7の幅方向一端端部及び他端に設けられた凹部20B(
図4参照)に嵌り込み可能な部位である。
【0053】
各凸部20Aは、各保持溝19Cの延び方向一端側及び他端側のうちいずれか一方(本実施形態では、前端側)に設けられている。なお、保持溝19Cの延び方向とは、当該保持溝19Cの延び方向に沿った方向という意味である。
【0054】
本実施形態では、保持溝19Cが略S字状に蛇行しているので、
図5における保持溝19Cの延び方向とは、第1部材16の前端から略S字状に蛇行しながら第1部材16の後端に至る方向である。
【0055】
<3.本実施形態に係るスライド装置の特徴>
本実施形態に係るスライド装置10では、ケーブル7が第1当接部19A及び第2当接部19Bに圧接した状態となるため、ケーブル7は固定具15に強固に係止された状態となる。
【0056】
したがって、当該スライド装置10では、ケーブル7が係止される固定具15が固定レール11に固定されると同時にケーブル7の固定レール11への固定作業が完了し得る。つまり、当該スライド装置10では、簡便な構成にてケーブル7が固定レール11に固定され得る。
【0057】
第2当接部19Bは、第1当接部19Aに対して固定レール11の長手方向と直交する方向にずれ、第2当接部19Bの頂部T2が第1当接部19Aの頂部T1に対して長手方向にずれ、かつ、頂部T1と頂部T2とを通る仮想線L1がケーブル7と交差する構成となっている。これにより、ケーブル7が第1当接部19A及び第2当接部19Bに確実に圧接した状態となるため、ケーブル7が確実に固定具15に係止され得る。
【0058】
つまり、ケーブル7に発生する張力の方向は、概ね、固定レール11の長手方向と略平行な方向である。したがって、第1当接部19A及び第2当接部19Bが上記のようにずれていれば、各当接部19A、19Bでのケーブル7の曲率が大きくなるので、ケーブル7が固定具15に確実に係止された状態となる。
【0059】
第1部材16及び第2部材17には、ケーブル7が嵌め込まれる略S字状の保持溝19Cが設けられ、当該保持溝19Cには、ケーブル7に設けられた凹部20Bに嵌り込み可能な凸部20Aが設けられている。これにより、各凹部20Bに各凸部20Aが嵌り込むことにより、固定具15に対するケーブル7の位置が、容易かつ正確に決まり得る。
【0060】
凸部20Aは、保持溝19Cの延び方向一端側及び他端側のうちいずれか一方に設けられている。これにより、凸部20Aの位置バラツキの影響が小さくなる。
【0061】
なお、仮に、凸部20Aが当該延び方向一端側及び他端側の2箇所に設けられた構成であると、寸法バラツキにより、いずれか一方の凸部20Aが凹部20Bに嵌らない可能性がある。また仮に、凸部20Aが当該延び方向中間部に設けられた構成であると、作業者(自動組付機も含む。)がケーブル7を各保持溝19Cに嵌め込む際の作業性が悪化するおそれがある。
【0062】
保持溝19Cの底部側幅寸法W1は、保持溝19Cの開口側幅寸法W2より小さい。これにより、保持溝19Cの溝幅が小さく、保持溝19Cの内壁とケーブル7との接触面圧が大きい構成であっても、作業者(自動組付機も含む。)は、ケーブル7を保持溝19Cに容易に挿入組み付けでき得る。
【0063】
スライド装置10は、固定レール11の長手方向端部を覆う樹脂製のエンドキャップ11Aを備え、固定具15は、エンドキャップ11Aに固定されている。
【0064】
これにより、スライド装置10を提供する者は、現状の固定レール11、つまりケーブル7を固定する機能を備えていない固定レール11をそのまま利用して、容易にケーブル7を固定レール11に固定することが可能となる。
【0065】
すなわち、固定レール11は、通常、金属製である。このため、スライド装置10を提供する者は、樹脂製のエンドキャップ11Aに固定具15を固定するための構成を設ければ、ケーブル7を固定レール11に固定可能なスライド装置10を容易に得ることが可能となる。
【0066】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、各保持溝19Cの開口側のみにテーパ部19Dが設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、各テーパ部19Dが保持溝19Cの底部まで設けられた構成、テーパ部19Dが設けられておらず、底部側幅寸法W1と開口側幅寸法W2とが同一である構成、又は溝幅が階段状に変化する構成等であってもよい。
【0067】
上述の実施形態では、第1部材16及び第1部材16に保持溝19Cが設けられた構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1部材16及び第1部材16のうちいずれか一方の部材のみに保持溝19Cが設けられた構成であってもよい。
【0068】
上述の実施形態に係る第1当接部19A及び第2当接部19Bは、保持溝19Cの内壁を構成する部材であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、保持溝19Cが無く、固定具15内にケーブル7が配索可能な空間が設けられ、かつ、当該空間に円柱状の第1当接部19A及び第2当接部19Bが設けられた構成であってもよい。
【0069】
上述の実施形態では、第2当接部19Bは、第1当接部19Aに対して固定レール11の長手方向と直交する方向にずれ、第2当接部19Bの頂部T2が第1当接部19Aの頂部T1に対して長手方向にずれ、かつ、頂部T1と頂部T2とを通る仮想線L1がケーブル7と交差する構成となっていたしかし、本開示はこれに限定されない。
【0070】
上述の実施形態では、ケーブル7の位置決め構造として、凸部20A及び凹部20Bが設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、凸部20A及び凹部20Bが廃止された構成であってもよい。
【0071】
上述の実施形態では、凸部20Aは、保持溝19Cの延び方向一端側及び他端側のうちいずれか一方に設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、凸部20Aが当該延び方向一端側及び他端側の2箇所に設けられた構成、又は凸部20Aが当該延び方向中間部に設けられた構成であってもよい。
【0072】
上述の実施形態に係る固定具15は、エンドキャップ11Aを介して間接的に固定レール11に固定されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、固定具15が固定レール11に直接的に固定された構成であってもよい。
【0073】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0074】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成でもよい。
【符号の説明】
【0075】
1… 乗物用シート 2… シート本体 7… ケーブル
10… スライド装置 11… 固定レール 12… 可動レール
15… 固定具 16… 第1部材 17… 第2部材
18… 連結部 19A… 第1当接部 19B… 第2当接部
19C… 保持溝 19D… テーパ部