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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】インバータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231114BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20231114BHJP
   G01R 15/09 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
G01R19/00 A
G01R15/09
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020012087
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021118655
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】粂田 典宏
(72)【発明者】
【氏名】宮本 恭昌
【審査官】町田 舞
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-007666(JP,A)
【文献】特開2019-149863(JP,A)
【文献】特開2001-211659(JP,A)
【文献】特開2005-037323(JP,A)
【文献】実開平04-130076(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42- 7/98
G01R 15/00-17/22
G01R 19/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の接続端子部を有し、当該各接続端子部の何れかに負荷が接続される端子台と、
それぞれ異なる電流経路を介して各接続端子部に接続され、当該各接続端子部の何れかに接続されている負荷を駆動する電力変換部と、
各電流経路が貫通する貫通部を有し、前記駆動する負荷の負荷電流を検出する電流検出器と、を備え、
各電流経路の貫通部に対するターン数がそれぞれ異なり、
貫通部を1回のみ貫通し、各接続端子部のうち何れかと電力変換部との間を接続している第1接続配線と、
各接続端子部を電気的直列に接続し、当該直列方向において隣り合う2つの接続端子部間が貫通部を1回のみ貫通している第2接続配線と、を備え、
各電流経路は、第1,第2接続配線のうち少なくとも第1接続配線により接続されていることを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
端子台は、
各接続端子部が設けられている電力変換部側接続部と、
負荷が接続される負荷側接続部と、
負荷側接続部を電力変換部側接続部の各接続端子部の何れかに対し選択的に切り替えて接続する接続切替部と、
を備えていることを特徴とする請求項記載のインバータ装置。
【請求項3】
接続切替部は、電流検出器の検出結果に基づいて切り替わることを特徴とする請求項記載のインバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置に係るものであって、例えば、モータ等の負荷に流れる負荷電流に基づいて制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータ等の負荷を駆動するインバータ装置においては、当該負荷に流れる負荷電流を検出して、当該インバータ装置を制御したり駆動状況を監視できる構成がある。負荷電流の検出構成としては、例えばインバータ装置とモータとの間の電流経路(接続配線等)に貫通型の電流検出器(以下、単に貫通型検出器と適宜称する)を設置して検出できるものが知られている。
【0003】
ここで、1つのインバータ装置により、例えば負荷容量の異なる複数個の負荷を適宜切り替えて駆動する場合には、各負荷のうち負荷容量が比較的大きい負荷(例えば後述の実施例では負荷M1;以下、単に大容量負荷と適宜称する)に適合するように、当該インバータ装置のインバータ容量や貫通型検出器の定格電流を適宜選定することが挙げられる。
【0004】
しかしながら、大容量負荷に適合するように選定した貫通型検出器の場合、比較的小さい負荷電流の検出精度は低くなってしまうことが考えられる。例えば、当該大容量負荷よりも負荷容量の小さい負荷(例えば後述の実施例では負荷M2,M3;以下、単に小容量負荷と適宜称する)における負荷電流の検出精度は低くなってしまい、インバータ装置の制御精度が十分に得られないおそれがある。
【0005】
そこで、定格電流の異なる複数個の貫通型検出器を用意しておき、負荷が変わる毎に、当該負荷の負荷容量に合う貫通型検出器を適宜装着して適用することも考えられるが、インバータ装置の複雑化,高コスト化等を招くおそれがある。
【0006】
特許文献1,2では、貫通型検出器の検出電流に対し増幅回路等を用い、A/D変換器のフルスケールを操作することにより、検出精度を確保することが試みられている。また、特許文献3では、一次巻線にタップが備えられた負荷電流検出用変流器において、切替スイッチを介してタップを切り替えることにより、変流器の一次ターン数を負荷容量に合わせて変更できる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-17222号公報
【文献】特開2015-24867号公報
【文献】特開昭61-212778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2のような構成では、貫通型検出器の実際の検出精度自体は変わらない。このため、例えば貫通型検出器の温度特性等に起因する検出誤差が拡大してしまう可能性もあり、その結果、所望の検出精度が得られないおそれがある。
【0009】
また、特許文献3では、変流器にタップや切替スイッチを取り付ける必要があるため、当該変流器による大型化や複雑化を招いてしまうおそれがある。
【0010】
本発明は、前述のような技術的課題に鑑みてなされたものであって、負荷容量の異なる負荷の負荷電流の検出精度に貢献可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係るインバータ装置は、前記の課題の解決に貢献できるものであり、その一態様は、複数個の接続端子部を有し、当該各接続端子部の何れかに負荷が接続される端子台と、それぞれ異なる電流経路を介して各接続端子部に接続され、当該各接続端子部の何れかに接続されている負荷を駆動する電力変換部と、各電流経路が貫通する貫通部を有し、前記駆動する負荷の負荷電流を検出する電流検出器と、を備え、各電流経路の貫通部に対するターン数がそれぞれ異なることを特徴とするものである。
【0012】
また、各電流経路は、それぞれ貫通部に対するターン数が異なる接続配線により接続されていることを特徴としても良い。
【0013】
また、貫通部を貫通し、各接続端子部のうち何れかと電力変換部との間を接続している第1接続配線と、各接続端子部を電気的直列に接続し、当該直列方向において隣り合う2つの接続端子部間が貫通部を貫通している第2接続配線と、を備え、各電流経路は、第1,第2接続配線のうち少なくとも第1接続配線により接続されていることを特徴としても良い。
【0014】
また、端子台は、各接続端子部が設けられている電力変換部側接続部と、負荷が接続される負荷側接続部と、負荷側接続部を電力変換部側接続部の各接続端子部の何れかに対し選択的に切り替えて接続する接続切替部と、を備えていることを特徴としても良い。
【0015】
また、接続切替部は、電流検出器の検出結果に基づいて切り替わることを特徴としても良い。
【発明の効果】
【0016】
以上示したように本発明によれば、負荷容量の異なる負荷の負荷電流の検出精度に貢献することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1によるインバータ装置11を説明するための概略構成図。
図2】実施例2によるインバータ装置12を説明するための概略構成図。
図3】実施例3によるインバータ装置13を説明するための概略構成図。
図4】A/D分解能A,B,Cに対する貫通部領域電流特性図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態のインバータ装置は、特許文献1~3のような構成とは全く異なるものであり、複数個の接続端子部を有し、当該各接続端子部の何れかに負荷が接続される端子台と、それぞれ異なる電流経路を介して各接続端子部に接続され、当該各接続端子部の何れかに接続されている負荷を駆動する電力変換部と、各電流経路が貫通する貫通部を有し、前記駆動する負荷の負荷電流を検出する電流検出器と、を備えたものである。そして、各電流経路の貫通部に対するターン数がそれぞれ異なることを特徴とするものである。
【0019】
各電流経路のターン数は、駆動対象である負荷の負荷容量等に応じて適宜設定する。例えば、N個の負荷を駆動対象とする場合、ターン数が1~N(Nは2以上の自然数)までのN個の電流経路を構成することが挙げられる。
【0020】
そして、N個の負荷のうち、大容量負荷を定格運転等で駆動する場合には、ターン数が比較的小さい電流経路に係る接続端子部に当該負荷を接続することが挙げられる。また、大容量負荷を比較的低い負荷電流等で駆動する場合や、小容量負荷を駆動する場合には、ターン数が比較的大きい電流経路に係る接続端子部に当該負荷をそれぞれ接続することが挙げられる。
【0021】
このような構成によれば、異なる負荷容量の負荷においては、それぞれ各接続端子部のうち何れかに接続して電流制御部により駆動できる。この場合、当該負荷が接続されている電流経路において、貫通部が位置する領域を流れる電流(以下、単に貫通部領域電流と適宜称する)は、当該貫通部に対するターン数に応じた電流量となる。
【0022】
したがって、異なる負荷容量の負荷をそれぞれ各接続端子部のうち何れかに適宜接続することにより、当該接続されている電流経路の貫通部領域電流を貫通型検出器の定格電流に適合(あるいは近似)させることが可能となり、当該貫通部領域電流を負荷電流として良好な検出精度で検出し易くなる。
【0023】
以上のように貫通部領域電流を負荷電流として良好な検出精度で検出することにより、インバータ装置の制御精度に貢献することも可能となる。
【0024】
本実施形態における各電流経路の接続構成には、例えば貫通部に対するターン数が異なる接続配線により接続した構成(例えば後述の実施例1)を適用することが挙げられるが、これに限定されるものではない。各電流経路の貫通部に対するターン数が負荷容量に応じて適宜設定されているものであれば、他の接続構成(例えば後述の実施例2,3)を適宜適用することも可能である。
【0025】
すなわち、本実施形態のインバータ装置は、前述のように電力変換部と各端子接続部とを接続しているそれぞれの電流経路が貫通型検出器の貫通部を貫通し、各電流経路の貫通部に対するターン数が適宜設定されている構成であれば良く、種々の分野(例えば電力変換分野,電流検出器分野,端子台分野,モータ分野等)の技術常識を適宜適用し、必要に応じて先行技術文献等を適宜参照して設計変形することが可能である。
【0026】
その一例としては、以下に示す実施例1~3が挙げられる。なお、実施例1~3においては、例えば重複する内容について同一符号を適用する等により、詳細な説明を適宜省略しているものとする。また、後述の負荷M1~M3においては、当該M1~M3の順に負荷容量が小さくなっているものとする。
【0027】
≪実施例1≫
図1(A),(B)は、実施例1によるインバータ装置11の概略構成を示すものである。このインバータ装置11は、電力変換部1と、端子台2と、貫通型検出器3と、電流経路41,42と、を主として備えている。
【0028】
電力変換部1は、IGBT等のスイッチング素子を有したものであって、それぞれ異なる負荷容量の負荷(モータ等)M1,M2を駆動するものである。この電力変換部1は、種々の態様のものを適用することが可能であるが、インバータ容量において、負荷容量が大きい負荷M1に適合可能なものとする。
【0029】
端子台2は、接続端子部T1,T2が設けられており、図1(A),(B)のように当該接続端子部T1,T2にそれぞれ負荷M1,M2を接続できる構成となっている。
【0030】
貫通型検出器3は、電流経路41,42が貫通可能な形状の貫通部31を有しており、当該電流経路41,42の貫通部領域電流を負荷M1,M2の負荷電流として検出できる構成となっている。この貫通型検出器3は、種々の態様のものを適用することが可能であるが、定格電流において、負荷容量が大きい負荷M1に適合可能なものとする。
【0031】
貫通型検出器3により検出した検出電流は、例えば図外の制御部(後述の図3では制御部7)を介して、電力変換部1の制御や負荷M1,M2の駆動状況の監視に利用する。
【0032】
電流経路41,42は、電力変換部1の出力端子(図示省略)と接続端子部T1,T2との間をそれぞれ接続する接続配線51,52により構成されている。接続配線51,52は、貫通部31に対し、それぞれ異なるターン数で貫通している。
【0033】
接続配線51,52のターン数は、負荷M1,M2の負荷容量に応じて適宜設定することが可能であり、当該負荷容量が小さくなるに連れてターン数を増加させることが挙げられる。図1の場合、大容量負荷の負荷M1が接続される接続配線51のターン数は1、小容量負荷の負荷M2が接続される接続配線52のターン数は2となっている。
【0034】
以上示したインバータ装置11において、図1(A)のように接続端子部T1に負荷M1を接続している場合、電流経路41を介して電力変換部1から負荷M1に電流供給することにより、当該負荷M1を駆動できる。この場合、貫通型検出器3においては、電流経路41の貫通部領域電流を負荷M1の負荷電流として検出できる。
【0035】
また、図1(B)のように接続端子部T2に負荷M2を接続している場合には、電流経路42を介して電力変換部1から負荷M2に電流供給することにより、当該負荷M2を駆動できる。この場合、貫通型検出器3においては、電流経路42の貫通部領域電流を負荷M2の負荷電流として検出できる。また、電流経路42は、電流経路41と比較してターン数が大きいため、たとえ負荷M2が小容量負荷であっても、当該電流経路42の貫通部領域電流を貫通型検出器3の定格電流に十分適合させることが可能となる。
【0036】
以上示したインバータ装置11によれば、電流経路41,42の貫通部領域電流をそれぞれ負荷M1,M2の負荷電流として良好な検出精度で検出することができ、当該インバータ装置11の制御精度に貢献することが可能となる。
【0037】
なお、インバータ装置11は、図1に示した構成に限定されるものではなく、駆動対象(負荷)の個数や負荷容量に応じて適宜設計変形することが可能である。
【0038】
例えば、図1(C),(D)に示すように、端子台2において、接続端子部T1,T2の他に接続端子部T3を設け、当該接続端子部T1~T3にそれぞれ負荷M1~M3を接続できるようにした構成が挙げられる。
【0039】
図1(C),(D)の場合、電力変換部1の出力端子(図示省略)と接続端子部T3との間を接続し貫通部31に対するターン数が3の接続配線53により、電流経路43が構成されている。
【0040】
そして、負荷M1において、図1(C)のように接続端子部T1に接続することにより、図1(A)と同様に負荷M1を駆動でき、当該電流経路41の貫通部領域電流を負荷M1の負荷電流として検出できる。
【0041】
負荷M2においては、図1(B)と同様に接続端子部T2に接続することにより、当該図1(B)と同様に負荷M2を駆動でき、当該電流経路42の貫通部領域電流を負荷M2の負荷電流として検出できる。
【0042】
負荷M3においては、図1(D)のように接続端子部T3に接続し、電流経路43を介して電力変換部1から電流供給することにより、駆動できる。この場合、貫通型検出器3においては、電流経路43の貫通部領域電流を負荷M3の負荷電流として検出できる。また、電流経路43は、電流経路41,42と比較してターン数が大きいため、たとえ負荷M3が小容量負荷であっても、当該電流経路43の貫通部領域電流を貫通型検出器3の定格電流に十分適合させることが可能となる。
【0043】
以上、インバータ装置11においては、例えば図1(C),(D)のように適宜設計変形した場合であっても、同様の作用効果を奏することが判る。
【0044】
なお、負荷M1~M3の適用例としては、エレベータ等の駆動用のモータを挙げられることができるが、これに限定されるものではなく、種々の態様に適用可能である。
【0045】
≪実施例2≫
図2(A),(B)は、実施例2によるインバータ装置12の概略構成を示すものである。このインバータ装置12は、インバータ装置11と同様に電力変換部1,端子台2,貫通型検出器3,電流経路41,42を主として備えており、当該電流経路41,42を以下に示すように設計変形した構成となっている。
【0046】
まず、図2(A),(B)の電流経路41,42は、第1接続配線61および第2接続配線62のうち少なくとも第1接続配線61により接続した構成となっている。図2(A),(B)の場合、電流経路41が第1接続配線61のみにより接続した構成であり、電流経路42が第1接続配線61および第2接続配線62により接続した構成となっている。
【0047】
第1接続配線61は、貫通部31を貫通し、各接続端子部T1,T2のうち何れか(図2(A),(B)では接続端子部T1)と、電力変換部1の出力端子と、の間を接続している。
【0048】
第2接続配線62は、各接続端子部T1,T2を電気的直列に接続し、当該第2接続配線62における中央部(すなわち当該直列方向において隣り合う接続端子部T1,T2の間)が貫通部31を貫通している。
【0049】
第1,第2接続配線61,62のターン数は、負荷M1,M2の負荷容量に応じて適宜設定することが可能であり、当該負荷容量が小さくなるに連れてターン数を増加させることが挙げられる。図2の場合、第1,第2接続配線61,62のターン数はそれぞれ1となっている。
【0050】
以上示したインバータ装置12において、図2(A)のように接続端子部T1に負荷M1を接続している場合、電流経路41(すなわち、第1接続配線61)を介して電力変換部1から負荷M1に電流供給することにより、当該負荷M1を駆動できる。この場合、貫通型検出器3においては、電流経路41(すなわち、第1接続配線61)の貫通部領域電流を負荷M1の負荷電流として検出できる。
【0051】
また、図2(B)のように接続端子部T2に負荷M2を接続している場合には、電流経路42(すなわち、第1接続配線61および第2接続配線62)を介して電力変換部1から負荷M2に電流供給することにより、当該負荷M2を駆動できる。この場合、貫通型検出器3においては、電流経路42(すなわち、第1,第2接続配線61,62)の貫通部領域電流を負荷M2の負荷電流として検出できる。また、電流経路42のターン数は、第1,第2接続配線61,62の総和であり、電流経路41と比較して大きくなるため、たとえ負荷M2が小容量負荷であっても、当該電流経路42の貫通部領域電流を貫通型検出器3の定格電流に十分適合させることが可能となる。
【0052】
以上示したインバータ装置12によれば、インバータ装置11と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、各電流経路41,42は、少なくとも第1接続配線61を共有した構成(すなわち、一部が共通化された構成)であるため、インバータ装置11と比較すると、当該各電流経路41,42の簡略化,低コスト化,配線作業容易化等に貢献できる可能性がある。
【0053】
なお、インバータ装置12は、図2に示した構成に限定されるものではなく、駆動対象(負荷)の個数や負荷容量に応じて適宜設計変形することが可能である。
【0054】
例えば、図2(C),(D)に示すように、端子台2において、接続端子部T1,T2の他に接続端子部T3を設け、当該接続端子部T1~T3にそれぞれ負荷M1~M3を接続できるようにした構成が挙げられる。
【0055】
図2(C),(D)の場合、第2接続配線62においては、2つの接続配線62a,62bを電気的直列に接続した構成となっている。また、接続配線62aが、各接続端子部T1,T2を電気的直列に接続し、接続配線62bが、各接続端子部T2,T3を電気的直列に接続している。さらに、各接続配線62a,62bにおける中央部(すなわち当該直列方向において隣り合う接続端子部T1~T3の間)が、それぞれ貫通部31を貫通している。
【0056】
なお、図2(C),(D)の第2接続配線62の場合、複数個の接続配線(接続配線62a,62b)に分割された分割構成となっているが、これに限定されるものではない。すなわち、各接続端子部T1~T3を電気的直列に接続できる構成であれば、当該複数個の接続配線を一体化した構成にしても良い。
【0057】
そして、負荷M1において、図2(C)のように接続端子部T1に接続することにより、図2(A)と同様に負荷M1を駆動でき、当該電流経路41の貫通部領域電流を負荷M1の負荷電流として検出できる。
【0058】
負荷M2においては、図2(B)と同様に接続端子部T2に接続することにより、当該図2(B)と同様に負荷M2を駆動でき、当該電流経路42(すなわち、第1接続配線61と、接続配線62a)の貫通部領域電流を負荷M2の負荷電流として検出できる。
【0059】
負荷M3においては、図2(D)のように接続端子部T3に接続し、電流経路43を介して電力変換部1から電流供給することにより、駆動できる。この場合、貫通型検出器3においては、電流経路43(すなわち、第1接続配線61と、接続配線62a,62b)の貫通部領域電流を負荷M3の負荷電流として検出できる。また、電流経路43は、電流経路41,42と比較してターン数が大きいため、たとえ負荷M3が小容量負荷であっても、当該電流経路43の貫通部領域電流を貫通型検出器3の定格電流に十分適合させることが可能となる。
【0060】
ゆえに、インバータ装置12においては、例えば図2(C),(D)のように適宜設計変形した場合であっても、同様の作用効果を奏することが判る。
【0061】
≪実施例3≫
図3は、実施例3によるインバータ装置13の概略構成を示すものである。このインバータ装置13は、インバータ装置12と同様の電力変換部1,端子台2,貫通型検出器3,電流経路41,42の他に、制御部7を備えている。また、当該端子台2を以下に示すように設計変形した構成となっている。
【0062】
まず、図3の端子台2は、各接続端子部T1~T3が設けられている電力変換側接続部21と、負荷M1~M3を接続可能な共通接続端子部mが設けられた負荷側接続部22と、負荷側接続部22を電力変換側接続部21の各接続端子部T1~T3の何れかに対し選択的に切り替えて接続する接続切替部23と、を備えている。
【0063】
接続切替部23は、各接続端子部T1~T3それぞれに接続されている接続端子部S1~S3と、共通接続端子部mに接続されている接続端子部S4と、が設けられている。そして、接続端子部S4を、各接続端子部S1~S3の何れかに対し選択的に切り替えて接続できる構成となっている。
【0064】
制御部7は、貫通型検出器3で検出される貫通部領域電流をA/D変換し、当該A/D変換結果に基づいて、接続切替部23の接続端子部S4と各接続端子部S1~S3との間の接続を切り替え制御(図中では制御信号IOを出力して切り替え制御)できる構成となっている。
【0065】
この制御部7による接続切替部23の切り替え制御構成は、種々の態様を適用することが可能である。この一例としては、図4に示すようなA/D分解能A,B,Cに対する貫通部領域電流特性に基づいて、以下に示すように切り替え制御できるものが挙げられる。
【0066】
なお、図4中の3つの正弦波電流曲線は、分解能A,B,Cに係るものであって、それぞれ電流経路43(ターン数3),電流経路42(ターン数2),電流経路41(ターン数1)を介して負荷M1を駆動する場合の貫通部領域電流を示すものである。また、各曲線の図示左側に表示されているA,B,Cは、貫通型検出器3による貫通部領域電流の検出可能範囲を示すものであって、それぞれ分解能A,B,Cに対応したものとする。同様に、図示左側に表示されているA’,B’,C’は、当該各曲線のピーク値に係る閾値であって、予め制御部7に設定されているものとする。
【0067】
この図4による切り替え制御においては、まず、負荷M1が比較的低い負荷電流等で駆動(例えば駆動開始直後等)し、貫通型検出器3で検出される貫通部領域電流のピーク値が閾値A’以下の場合、制御部7の切り替え制御により接続端子部S4を接続端子部S3に接続する。この接続状態における制御部7は分解能Aとなり、貫通部領域電流の検出可能範囲はA以下となる。
【0068】
その後、貫通部領域電流のピーク値が閾値A’~B’の範囲内に変わった場合には、当該貫通部領域電流のゼロクロスの点において、制御部7の切り替え制御により接続端子部S4を接続端子部S2に接続する。この接続状態における制御部7は分解能Bとなり、貫通部領域電流の検出可能範囲はB以下となる。
【0069】
そして、貫通部領域電流のピーク値が閾値B’~C’の範囲内に変わった場合には、当該貫通部領域電流のゼロクロスの点において、制御部7の切り替え制御により接続端子部S4を接続端子部S1に接続する。この接続状態における制御部7は分解能Cとなり、貫通部領域電流の検出可能範囲はC以下となる。
【0070】
以上示したインバータ装置13によれば、インバータ装置12と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、例えば負荷側接続部22に接続される駆動対象の負荷電流が変化し、貫通部領域電流が変化してしまう場合であっても、当該貫通部領域電流の変化に応じて接続切替部23を適宜切り替え制御(例えば自動的に制御)し、当該貫通部領域電流を負荷電流として適宜検出することができ、当該インバータ装置13の制御精度に貢献し易くなる。
【0071】
また、インバータ装置13の貫通型検出器3においては、特許文献3のようなタップや切替スイッチを取り付けなくても、前記のように変化する貫通部領域電流を負荷電流として適宜検出することが可能である。すなわち、特許文献3の場合と比較すると、貫通型検出器3の小型化や簡略化等に貢献できる可能性がある。
【0072】
なお、インバータ装置13は、図3図4に示した構成に限定されるものではなく、駆動対象(負荷)の個数や負荷容量に応じて適宜設計変形することが可能である。
【0073】
例えば、インバータ装置11においても、インバータ装置13と同様に、電力変換側接続部21,負荷側接続部22,接続切替部23による端子台2を備え、当該接続切替部23を制御部7により切り替え制御することが可能であり、当該インバータ装置13と同様の作用効果を奏することになる。
【0074】
また、端子台2においては、負荷側接続部22と各接続端子部T1~T3の何れかとの間を選択的に切り替えて接続できる構成であれば、適宜設計変更しても良い。一例としては、接続切替部23において接続端子部S1~S3を省略し、接続端子部S4を各接続端子部T1~T3それぞれに直接的に接続できるようにした構成が挙げられる。
【0075】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0076】
1…電力変換部
11,12,13…インバータ装置
2…端子台
3…貫通型検出器
31…貫通部
41,42,43…電流経路
51,52,53…接続配線
61…第1接続配線
62…第2接続配線
7…制御部
M1,M2,M3…負荷
T1,T2,T3…接続端子部
図1
図2
図3
図4