(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】織物
(51)【国際特許分類】
D03D 23/00 20060101AFI20231114BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20231114BHJP
【FI】
D03D23/00
A41D31/00 502B
(21)【出願番号】P 2020018674
(22)【出願日】2020-02-06
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】稲田 康二郎
(72)【発明者】
【氏名】川原 慎也
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/150937(WO,A1)
【文献】特公昭42-025517(JP,B1)
【文献】特公昭43-000919(JP,B1)
【文献】特許第7243242(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 31/00
A47C 27/00 - 27/22
A47G 9/02
D03D 1/00 - 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織糸を経緯に交差させて製織した一重組織の側地であり、同方向に配列された織糸YA、YBが、それぞれ異なるクリンプ率A、Bを有し、クリンプ率Bが4%未満であり、クリンプ率Aが15≦A≦500の関係を満たす側地。
【請求項2】
クリンプ率Bの織糸YBと交差する織糸YCの糸繊度D(dtex)と側地厚さ方向における織糸YCの上端と下端との距離L(μm)とが下記式の関係を満たす、請求項1に記載の側地。
L/√D ≧ 15
【請求項3】
クリンプ率Aの織糸YAとクリンプ率Bの織糸YBが1:1の割合で配置されている、請求項1または2に記載の側地。
【請求項4】
GB/T 12705.1-2009で評価したダウン抜け防止性が10個以下となる、請求項1~3のいずれかに記載の側地。
【請求項5】
カバーファクターが2000以上である、請求項1~4のいずれかに記載の側地。
【請求項6】
通気度が0.05cm
3/cm
2/sec以上2.0cm
3/cm
2/sec以下である、請求項1~5のいずれかに記載の側地。
【請求項7】
耐水圧が300mmH
2O以上である、請求項1~6のいずれかに記載の側地。
【請求項8】
少なくとも片面には撥水加工が施されている、請求項1~7のいずれかに記載の側地。
【請求項9】
平組織あるいはリップストップ組織である、請求項1~8のいずれかに記載の側地。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の側地を少なくとも一部に有し、かつ、羽毛を含んでなる衣料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中綿やダウン等充填材の吹き出し防止性に優れた側地に関する。
【背景技術】
【0002】
中綿やダウン等の吹き出し防止性に優れた側地として、高密度織物や、織物などの布帛にポリウレタン等の樹脂をコーティングした樹脂コーティング品が、ダウンジャケットやダウンパック等の側地用途で広く使用されている。
【0003】
しかしながら、高密度織物や樹脂コーティング品等の織物は、ダウン抜け防止性には非常に優れているが、通気性に乏しく、ダウンジャケット等の縫製品を一旦圧縮して空気を抜きコンパクトに収納すると、その後取り出した際に充填材へ空気が吸い込まれにくく、元の形に戻りにくいという欠点がある。このため、通気性を確保しつつ、充填材の吹き出し防止性にも優れた側地の要求が高い。
【0004】
このような要求に応えるため、樹脂のコーティング塗布量をコントロールし、適度な通気性を確保するなど、種々の検討がなされている。
【0005】
例えば、特許文献1には、繊維糸条の繊度が33デシテックス以下の合成繊維から構成され、50g/m2以下の目付および1400以上1800以下のカバーファクターを有する織物に、樹脂を固形成分として0.1g/m2以上5g/m2以下の塗布量でコーティングすることにより、洗濯耐久性のあるダウン抜け防止側地を提供するという技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載のダウン抜け防止織物では、コーティング樹脂の経年劣化によりダウン抜け防止性が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点を改善し、一定の通気性を確保しつつも長期間中綿やダウン等充填材の吹き出し防止性に優れた側地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明は、次のいずれかの構成を有する。
(1) 織糸を経緯に交差させて製織した一重組織の側地であり、同方向に配列された織糸YA、YBが、それぞれ異なるクリンプ率A、Bを有し、クリンプ率Bが4%未満であり、クリンプ率Aが15≦A≦500の関係を満たす側地。
(2) クリンプ率Bの織糸YBと交差する織糸YCの糸繊度D(dtex)と側地厚さ方向における織糸YCの上端と下端との距離L(μm)とが下記式の関係を満たす、前記(1)に記載の側地。
L/√D ≧ 15
(3) クリンプ率Aの織糸YAとクリンプ率Bの織糸YBが1:1の割合で配置されている、前記(1)または(2)に記載の側地。
(4) GB/T 12705.1-2009で評価したダウン抜け防止性が10個以下となる、前記(1)~(3)のいずれかに記載の側地
(5) カバーファクターが2000以上である、前記(1)~(4)のいずれかに記載の側地。
(6) 通気度が0.05cm3/cm2/sec以上2.0cm3/cm2/sec以下である、前記(1)~(5)のいずれかに記載の側地。
(7) 耐水圧が300mmH2O以上である、前記(1)~(6)のいずれかに記載の側地。
(8) 少なくとも片面には撥水加工が施されている、前記(1)~(7)のいずれかに記載の側地。
(9) 平組織あるいはリップストップ組織である、前記(1)~(8)のいずれかに記載の側地。
(10) 前記(1)~(9)のいずれかに記載の側地を少なくとも一部に有し、かつ、羽毛を含んでなる衣料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一定の通気性を確保しつつも長期間中綿やダウン等の充填材の吹き出し防止性に優れた側地を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例3で得られた側地の表面SEM写真である。
【
図2】
図2は、
図1のクリンプ率Aの経糸方向の切断線αに沿って切断した時の緯糸断面のSEM写真である。
【
図3】
図3は、
図1のクリンプ率Bの経糸方向の切断線βに沿って切断した時の緯糸断面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による側地は、織糸を経および緯に交差させて製織した一重組織の側地であって、同方向に配列された織糸YA、YBが、それぞれ異なるクリンプ率A、Bを有し、クリンプ率Bが4%未満であり、クリンプ率Aが15≦A≦500の関係を満たす側地であることを特徴とする。
【0013】
なお、上記「同方向に配列された織糸が、それぞれ異なるクリンプ率を有し」とは、経糸方向および/または緯糸方向に配列されたある織糸があるクリンプ率を有するとき、少なくとも前記クリンプ率とは異なるクリンプ率を有する織糸が少なくとも1種類以上前記織糸と同方向に配列されて存在することを意味する。そして、前記2種類以上のクリンプ率のうち、最大のものを「クリンプ率A」、最小のものを「クリンプ率B」とし、「クリンプ率A」を有する織糸を「織糸YA」、「クリンプ率B」を有する織糸を「織糸YB」とする。
【0014】
クリンプ率Bは、4%未満であり、2%以下であることが好ましい。下限としては0.1%以上であることが好ましい。
【0015】
また、クリンプ率Aは、15%以上であり、50%以上であることが好ましい。上限としては500%以下である。500%を超えると製織時に糸が弛み、糸切れが生じて生産性が低下するため好ましくない。
【0016】
前記クリンプ率A、Bの関係を上記の範囲とすることで、極めて高密度の側地とすることが可能となる。
【0017】
また、クリンプ率Bの織糸と交差する織糸YCの糸繊度D(dtex)と、側地厚さ方向における織糸YCの上端と下端との距離L(μm)は、L/√Dが15以上であることが好ましい。L/√Dを上記の値とすることで、より凹凸形状の発達した表面となり、水滴と織物の間により多くの空気を噛み込む形態となり、撥水性の高い側地を得られる。より高い撥水性を発現せしめるためには、L/√Dが20以上であることが好ましい。一方、L/√Dが35を超えると織り糸が表面で密に並びすぎ凹部と凸部の構造差が小さくなり撥水性が低下しやすい。よって好ましくは20≦L/√D≦35である。
【0018】
なお、上記において、「クリンプ率Bの織糸と交差する織糸YC」とは、クリンプ率Bの織糸が経糸ならば緯糸、クリンプ率Bの織糸が緯糸ならば経糸を意味する。「糸繊度D」とは、織糸YCの総繊度をいい、織物を分解して採取した糸条の総繊度である。
【0019】
「側地厚さ方向における織糸YCの上端と下端との距離L」とは、クリンプ率Bの織糸に沿って生地を切断した断面において、クリンプ率Bの織糸を上下から挟むように配置された、クリンプ率Bの織糸と交差する2本の織糸について、上方に位置する織糸断面の上端頂点接線と下方に位置する織糸断面の下端頂点接線との最短距離を意味する。
【0020】
【0021】
図1は、後述の実施例3で得られた側地の表面SEM写真であり、
図3は、
図1の側地をクリンプ率Bの経糸(織糸YB)方向の切断線βに沿って切断した時の緯糸(織糸YC)断面のSEM写真である。
図3に示す、クリンプ率Bの経糸4(織糸YB)に沿って切断した生地断面において、クリンプ率Bの経糸4を上下から挟むように配置された、クリンプ率Bの経糸4と交差する2本の緯糸3(織糸YC)について、上方に位置する織糸断面の上端頂点接線5と下方に位置する織糸断面の下端頂点接線6との間の最短距離が距離Lである。
【0022】
前記側地は、一重組織である。二重織、三重織のような多重織ではダウン抜け防止性には効果が認められるものの、側地として硬くなりすぎて衣料用等としては不向きである。
【0023】
そして、本発明における側地は、一重組織であるため、織糸YA、YBが、それらと交差する織糸YCによって、織糸YA、YBの配列方向にも織糸YCの配列方向にも一定の周期で交互に浮き沈みを繰り返すが、クリンプ率Aの織糸YAとクリンプ率Bの織糸YBは、1:1の割合で配置されていることが好ましい。上記クリンプ率Aの織糸とクリンプ率Bの織糸の「割合」とは、織糸の本数比を意味する。織糸の本数は、経糸または緯糸が緯糸又は経糸と交錯する単位を1本として計算し、同口で複数本入れる場合には、1本と数える。「クリンプ率Aの織糸YAとクリンプ率Bの織糸YBが、1:1の割合で配置されている」とは、織糸YAと織糸YBが同数本ずつ交互に配列されていることを意味する。
【0024】
なかでもクリンプ率Aの織糸YAとクリンプ率Bの織糸YBは、1本交互、もしくは2本交互に配列することが好ましい。
【0025】
なお、ここでいう「1:1」の意味は、例えば上記のようにn本交互で、織物両端ともに織糸YAが配置される場合に若干ずれることがあるが、このような場合をも含み、実質的に1:1であればよい。
【0026】
上記の構成とすることで、丈夫で寸法安定性に優れた織物とすることができる。
【0027】
また、同方向に配列された織糸YA、YBが異なるクリンプ率A、Bを有することで、従来得られなかった高いレベルの高密度織物とすることが可能である。
【0028】
本発明の側地は、GB/T 12705.1-2009で評価したダウン抜け防止性が、10個以下となることが好ましい。10個超になると着用時に抜けたダウンが目立ち、外観を損なう恐れがある。
【0029】
本発明の側地は、織物のカバーファクターが2000以上であることが好ましく、更に好ましくは2500以上、より好ましくは2600以上である。上限としては、3000以下であることが好ましい。
【0030】
なお、カバーファクター(Cf)は、以下の式により求められる。
Cf=NW×(DW)1/2+NF×(DF)1/2
NW:経糸織密度(本/2.54cm)
NF:緯糸織密度(本/2.54cm)
DW:経糸総繊度(dtex)
DF:緯糸総繊度(dtex)
【0031】
カバーファクターを上記の範囲とすることで、軽量薄地でダウン抜け防止性を有する側地が得られる。側地のカバーファクターが2000より小さいと、より薄く軽い側地が得られるが、ノンコーティングタイプではダウン抜け防止性を満足するものになりにくい。また、3000を超えると、通気度が低くなりすぎ、ダウン等充填材の圧縮-回復性が悪くなり、また、側地が重くなりやすい傾向にある。
【0032】
また、本発明の好ましい態様においては、通気度が0.05cm3/cm2/sec以上2.0cm3/cm2/sec以下でダウン抜け防止性を両立することが可能であり、更に好ましい態様では0.3cm3/cm2/sec以上、2.0cm3/cm2/sec以下、より好ましい態様では0.7cm3/cm2/sec以上2.0cm3/cm2/sec以下で両立することも可能である。
【0033】
前記通気度を上記の範囲とすることで、例えばダウンジャケットとした場合に中綿やダウンが抜けるのを抑制しやすくなり、外衣等において防風性に優れ、外気を遮断できる。
【0034】
また、本発明の好ましい態様においては、耐水圧300mmH2O(2.9kPa)以上を達成することも可能であり、更に好ましい態様では500mmH2O(4.9kPa)以上、より好ましい態様では1000mmH2O(9.8kPa)以上を達成することも可能である。
【0035】
前記耐水圧を上記の範囲とすることで、ダウンなど充填物に浸水しにくい側地が得られる。300mmH2O未満であると、風雨に対して耐水性が下がり、充填物に雨がしみこみやすくなり、保温性が下がる原因となる。
【0036】
本発明の側地は、マルチフィラメント糸から構成されるものであることが好ましい。マルチフィラメント糸を形成する繊維としては、例えば、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、アラミド系繊維、レーヨン系繊維、ポリサルホン系繊維、超高分子量ポリエチレン系繊維、ポリオレフィン系繊維等を用いることができる。なかでも、大量生産性や経済性に優れたポリアミド系繊維やポリエステル系繊維が好ましい。
【0037】
ポリアミド系繊維としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン46や、ナイロン6とナイロン66との共重合ポリアミド、ナイロン6にポリアルキレングリコール、ジカルボン酸、アミン等を共重合させた共重合ポリアミド等からなる繊維を挙げることができる。ナイロン6繊維、ナイロン66繊維は耐衝撃性に特に優れており、好ましい。
【0038】
ポリエステル系繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等からなる繊維を挙げることができる。ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートに酸成分としてイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸や、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸を共重合させた共重合ポリエステルからなる繊維であってもよい。
【0039】
マルチフィラメント糸を構成する繊維は、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、可塑剤、増粘剤、顔料および難燃剤などを含有していることも好ましい。
【0040】
なお、経糸と緯糸の材質は、同じであっても、異なっていてもよいが、後加工や染色を考慮すると同じ材質とすることが好ましい。
【0041】
本発明の側地に用いるマルチフィラメント糸は、総繊度を22~220dtexとすることが好ましく、33~167dtexであることが好ましい。マルチフィラメント糸の総繊度を前記範囲とすることで薄地の織物としても実用に十分な強度を得られやすく、軽い織物が得られやすい。
【0042】
マルチフィラメント糸の単繊維繊度は、織物柔軟性の点から、0.01dtex~6dtexであることが好ましく、0.02dtex~0.5dtexであることが好ましい。
【0043】
また、織物を構成するマルチフィラメント糸は直接紡糸により得られたマルチフィラメント糸であっても、海島複合繊維を脱海処理した、いわゆる極細繊維であってもよい。
【0044】
本発明の側地は、例えば、製織時に同方向に配列される織糸YA、YBを異なる張力で製織し、同方向に配列された該織糸YA、YBにクリンプ率差が生じるようにすることで製造できる。具体的には例えば下記のような方法が挙げられる。
【0045】
織糸YA、YBが経糸である場合、製織時において、クリンプ率Bを有するよう制御する経糸(以下「クリンプ率Bの経糸」と称する場合もある)は張力を高くするとともに、クリンプ率Aを有するよう制御する経糸(以下「クリンプ率Aの経糸」と称する場合もある)は開口に支障のない範囲で張力を低くして製織することが好ましい。例えば、[織糸YAの張力×2.5]=[織糸YBの張力]とすることが好ましい。クリンプ率Bに対しクリンプ率Aを大きくしたい場合には、クリンプ率Bの経糸張力に対し、クリンプ率Aの経糸張力を小さくすればよく、所望のクリンプ率A、Bが得られるよう適宜調整する。具体的には原糸強度に問題ない範囲であれば、[クリンプ率Bの経糸張力]≧[クリンプ率Aの経糸張力×2.5]とするのが好ましい。
【0046】
一般に、高密度の織物で、経糸のクリンプ率を大きくするため、製織時に経糸の張力を低くすると、バンピング(緯糸打戻)により、緯糸密度を高くすることが難しい。しかしながら、上記の実施形態によれば、クリンプ率Bの経糸を支点にしてクリンプ率Aの経糸で緯糸を拘束することができ、バンピングを抑制することができる。そのため、クリンプ率Aの経糸のクリンプ率を大きくすることができる。
【0047】
経糸張力を上記範囲内に調整する具体的方法としては、織機の経糸送り出し速度を調整する他、緯糸の打ち込み速度を調整する方法が上げられる。経糸張力が製織中に実際に上記範囲になっているかどうかは、例えば織機稼働中に経糸ビームとバックローラーとの中間において、経糸一本当たりに加わる張力を張力測定器で測ることで確認することができる。
【0048】
また、織糸YA、YBが緯糸である場合、緯糸を経糸開口間に挿入するときの張力を調整すればよい。
【0049】
前記織物の織組織としては平組織を例示できるが、経糸と緯糸は互いに交差することでそれぞれ浮き沈みするように製織されていればよく、経糸と緯糸を1本ずつ交錯させて製織される平織物の他、応用組織として緯糸を同口で数本入れるタテ拡大組織、隣り合う経糸数本を同開口にしたヨコ拡大組織でも良く、バスケット織のようにタテヨコ共に数本ずつ並べて組織する織物でも良く、引裂強力を向上させるためのリップストップ組織も適用される。
【0050】
また、前記織物の製造に使用する織機も特に限定されず、ウォータージェット織機やエアージェット織機、レピア織機を使用することができる。
【0051】
製織した織物は、一般的な加工機械を使って、精練、リラックス、プレセット、染色、仕上げ加工してもよい。
【0052】
前記織物は、少なくとも片面にはカレンダー加工が施されていることが、高耐水圧を達成し得る点で好ましい。カレンダー加工は織物の片面のみ、あるいは両面に施されても良いが、例えばアウター等に使用する場合、表面の凹凸構造を潰してしまうと撥水性が低下するため、片面のみカレンダー加工を施すのが好ましい。なかでも裏面にカレンダー加工を施し、表面にはカレンダー加工を施さないか、施すとしても所望の撥水性を維持し得る程度にとどめることが好ましい。これにより、表面は凹凸構造による高撥水、裏面は高耐水圧化という特性をハイレベルに付与することができる。また、上記においてカレンダー加工の回数は特に限定されない。
【0053】
カレンダー加工の温度は特に限定されないが、使用素材のガラス転移温度より80℃以上高いことが好ましく、120℃以上高いことがより好ましく、また、使用素材の融点より20℃以上低いことが好ましく、30℃以上低いことがより好ましい。カレンダー加工の温度を前記範囲にすることにより、低通気度と高引裂き強力を両方維持できる織物が得られる。一方、前記カレンダー加工の温度が使用素材のガラス転移温度+80℃以上であることで、適度な圧縮度合が得られ、防水性を有する織物を得ることができる。また、使用素材の融点-20℃以上低いことで、適度な圧縮度合が得られ、織物の引裂き強力に優れる。
【0054】
例えば、織糸にポリアミド系繊維を用いる場合、カレンダー加工の温度は、120℃~200℃であることが好ましく、130℃~190℃であることがより好ましい。また、織糸にポリエステル系繊維を用いる場合、カレンダー加工の温度は160℃~240℃であることが好ましい。
【0055】
カレンダー加工の圧力は、0.98MPa(10kgf/cm2)以上であることが好ましく、1.96MPa(20kgf/cm2)以上であることがより好ましく、また、5.88MPa(60kgf/cm2)以下であることが好ましく、4.90MPa(50kgf/cm2)以下であることがより好ましい。カレンダー加工の圧力を前記範囲にすることにより、低通気度と引裂き強力を両方維持できる織物が得られやすい。すなわち、前記カレンダー加工の圧力が0.98MPa(10kgf/cm2)以上であることで、適度な圧縮度合が得られ、優れた防水性を有する織物が得られる。また、5.88MPa(60kgf/cm2)以下とすることで、適度に圧縮されて、織物の引裂き強力が優れるものとなる。
【0056】
また、カレンダーロールの材質は特に限定されないが、織物を挟む対向する2つのロールのうち片方のロールは金属製であることが好ましい。金属ロールはそれ自身の温度を調節することができ、かつ生地表面を均一に圧縮することができる。もう一方のロールは特に限定されないが、金属製または樹脂製が好ましく、樹脂製の場合はナイロン製が好ましい。
【0057】
前記織物は、少なくとも片面に撥水加工が施されていることが好ましく、各種機能加工や、風合いや織物の強力を調整するための柔軟仕上げを併用することができる。前記L/√Dの好ましい範囲を持つ織物に撥水加工を施せば、洗濯20回後でも撥水度が3級以上の織物を得ることができる。
【0058】
撥水剤としては一般的な繊維用撥水加工剤でよく、例えば、シリコーン系撥水剤、パーフルオロアルキル基を有するポリマーからなるフッ素系撥水剤、パラフィン系撥水剤が好適に用いられる。なかでも、フッ素系撥水剤を用いると、被膜の屈折率を低く抑えることができ、さらに、繊維表面における光の反射を低減できるため、特に好ましい。撥水加工の方法は、パディング法、スプレー法、プリント法、コーティング法、グラビア法など一般的な方法を用いることができる。
【0059】
柔軟剤としては、アミノ変性シリコーンやポリエチレン系、ポリエステル系、パラフィン系柔軟剤等を用いることができる。
【0060】
なお、本発明の側地は、織構造により充填剤の吹き出し防止性を高めているが、該織構造に加え樹脂コーティングを施すことで充填剤吹き出し防止性をより高めてもよい。
【0061】
このようにして得られた織物は、中綿やダウン(羽毛)等の充填材の吹き出し防止性に優れた側地となり、また、撥水加工を施した場合には撥水性にも優れた側地となるので、これらの特徴の一つ以上を活かし、ダウンウエアやダウンジャケット等の衣料に加え、ふとん、寝袋等、中綿やダウン等の充填材を包む側地に有用に使用することができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の実施例を比較例と共に説明する。
【0063】
なお、本実施例で用いる各種特性の測定方法は、以下のとおりである。
【0064】
(1)総繊度、フィラメント数
総繊度は、JIS L 1013:2010 8.3.1(A法)(正量繊度)に基づき測定した。
フィラメント数は、JIS L 1013:2010 8.4に基づき測定した。
【0065】
(2)織密度
織密度は、JIS L 1096:2010 8.6.1(A法)に基づき測定した。
試料を平らな台上に置き、不自然なしわや張力を除いて、異なる5カ所について0.5cm間のタテ糸およびヨコ糸の本数を数え、それぞれの平均値を算出し、2.54cm当たりの本数に換算した。
【0066】
(3)クリンプ率
クリンプ率は、JIS L 1096:2010 8.7(B法)に基づき測定した。
試料を平らな台上に置き、不自然なしわや張力を除いて、クリンプ率の異なる糸A1、糸B1が隣り合う位置に配置された、異なる3カ所について200mmの距離に印をつけ、この印内の糸を解いて分解糸とし、JIS L 1013:2010 5.1に規定された初荷重の下で真っすぐに張った長さをそれぞれ測定して平均値を算出し、変化長を計算した。
【0067】
(4)カバーファクター
カバーファクター(Cf)は、以下の式により求めた。
Cf=NW×(DW)1/2+NF×(DF)1/2
NW:経糸織密度(本/2.54cm)
NF:緯糸織密度(本/2.54cm)
DW:経糸総繊度(dtex)
DF:緯糸総繊度(dtex)
【0068】
(5)通気度
通気度は、JIS L 1096:2010 8.26.1(A法)(フラジール形法)に基づき測定した。
【0069】
(6)耐水圧
耐水圧は、JIS L 1092:2009 7.1.1(A法)(低水圧法)に基づき測定した。片面カレンダーを施した生地については、非カレンダー面を表側として測定した。
【0070】
(7)撥水性
撥水性はJIS L 1092:2009 6.2.1(C法)(家庭用電気洗濯機を用いる方法)に基づき20回洗濯した後、同7.2撥水度試験(スプレー試験)に基づき測定した。
【0071】
(8)厚さ方向の糸上端と下端の距離L
試料をクリンプ率Bの織糸YBに沿って生地を切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用い、100倍で観察し、クリンプ率Bの織糸YBを上下に挟むように配置された、2本の、クリンプ率Bの織糸YBと交差する糸について、上部糸断面の上端頂点接線と下部糸断面の下端頂点接線との距離Lを測定した。
【0072】
(9)分解糸の糸繊度D
織物を構成する糸を痛めないように織物から分解して採取した糸をJIS L 1013:2010 5.1に記載の初荷重をかけた状態で、正確に長さ9cmに切断し、質量を電子天秤(メトラー・トレド株式会社製)で測定して、以下の式から糸繊度D(dtex)を求め、5本の平均値を算出した。
D=m/l×10000
D:分解糸の糸繊度(dtex)
m:試料の質量(g)
l:試料長(m)
【0073】
(10)ダウン抜け防止性
ダウン抜け防止性は、GB/T 12705.1-2009に基づき評価した。
【0074】
(11)経年劣化試験後のダウン抜け防止性
湿熱による経年劣化の加速試験として、70℃×90%RHの温湿度条件に設定した恒温恒湿槽内に生地サンプルを入れ、10週間経過後にサンプルを恒温恒湿槽から取り出し、前項(10)のダウン抜け防止性を評価した。
【0075】
[実施例1]
クリンプ率Aの織糸YAとして、84dtex、144フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維、クリンプ率Bの織糸YBとして、84dtex、144フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維を用い、これらを経糸に用いた。また、84dtex、144フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維を織糸YCとして緯糸に用いた。
【0076】
そして、製織時において、織糸YAに対し織糸YBの張力比を2.5倍にして、経糸密度を169本/2.54cmに、緯糸密度を170本/2.54cmに設定し、経糸、緯糸とも1本ずつ交差させた平織組織にて製織して、一重の平織物を得た。得られた平織物を、オープンソーパーを用いて精練、ピンテンターを用いて185℃×30secでプレセットし、パッダーを用いてフッ素系樹脂化合物をパッド・キュアー法にて付与し撥水処理を行い、130℃×1minで乾燥し、180℃×30secで中間セットを行った。その後、カレンダー加工(加工条件:シリンダー加工、温度170℃、圧力2.45MPa(25kgf/cm2、速度20m/min)を織物の片面に2回施して、経糸密度が190本/2.54cm、緯糸密度が168本/2.54cm、カバーファクターが3281である平織物を得た。
【0077】
得られた平織物について、通気度、耐水圧、ダウン抜け防止性、および経年劣化試験後のダウン抜け防止性を前記方法で評価した。得られた平織物の特性を表1に示す。
【0078】
[実施例2]
クリンプ率Aの織糸YAおよびクリンプ率Bの織糸YBとして、22dtex、20フィラメントのナイロン繊維を用い、これを経糸に用いた。また、28dtex、48フィラメントのポリアミド繊維を織糸YCとして緯糸に用いた。
【0079】
そして、製織時において、織糸YAと織糸YBを1:1の割合(本数比)で一本ずつ交互に配置し、織糸YAの張力×2.5=織糸YBの張力として、経糸密度を290本/2.54cmに、緯糸密度を190本/2.54cmに設定し、経糸、緯糸とも1本ずつ交差させた平織組織にて製織して、一重の平織物を得た。得られた平織物を、オープンソーパーを用いて精練、ピンテンターを用いて185℃×30secでプレセットし、パッダーを用いてフッ素系樹脂化合物をパッド・キュアー法にて付与し撥水処理を行い、130℃×1minで乾燥し、180℃×30secで中間セットを行った。その後、カレンダー加工(加工条件:シリンダー加工、温度170℃、圧力2.45MPa(25kgf/cm2、速度20m/min)を織物の片面に2回施して、経糸密度が324本/2.54cm、緯糸密度が210本/2.54cm、カバーファクターが2631である平織物を得た。
【0080】
得られた平織物について、通気度、耐水圧、ダウン抜け防止性、および経年劣化試験後のダウン抜け防止性を前記方法で評価した。得られた平織物の特性を表1に示す。
【0081】
[実施例3]
クリンプ率Aの織糸YAおよびクリンプ率Bの織糸YBとして、56dtex、144フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維を用い、これを経糸に用いた。また、同糸を緯糸に用いた。
【0082】
そして、製織時において、織糸YAと織糸YBを1:1の割合(本数比)で一本ずつ交互に配置し、織糸YAの張力×2.5=織糸YBの張力として、経糸密度を200本/2.54cmに、緯糸密度を200本/2.54cmに設定し、経糸、緯糸とも1本ずつ交差させた平織組織にて製織して、一重の平織物を得た。得られた平織物を、オープンソーパーを用いて精練、ピンテンターを用いて185℃×30secでプレセットし、パッダーを用いてフッ素系樹脂化合物をパッド・キュアー法にて付与し撥水処理を行い、130℃×1minで乾燥し、180℃×30secで中間セットを行った。その後、カレンダー加工(加工条件:シリンダー加工、温度170℃、圧力2.45MPa(25kgf/cm2、速度20m/min)を織物の片面に2回施して、経糸密度が220本/2.54cm、緯糸密度が222本/2.54cm、カバーファクターが3308である平織物を得た。
【0083】
得られた平織物について、通気度、耐水圧、ダウン抜け防止性、および経年劣化試験後のダウン抜け防止性を前記方法で評価した。得られた平織物の特性を表1に示す。また、得られた平織物の表面SEM写真を
図1に、
図1のクリンプ率Aの経糸方向の切断線αに沿って切断した時の緯糸断面のSEM写真を
図2に、
図1のクリンプ率Bの経糸方向の切断線βに沿って切断した時の緯糸断面のSEM写真を
図3に示した。
図2は、平織物1において、クリンプ率Aの経糸2(織糸YA)が緯糸3(織糸YC)の表面を、左右から覆い、緻密な構造を形成している様子を示し、
図3は、クリンプ率Bの経糸4(織糸YB)が緯糸3(織糸YC)を厚み方向に押し上げ、凹凸構造を発現している様子を示している。
【0084】
[実施例4]
クリンプ率Aの織糸YAのとして、84dtex、144フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維、クリンプ率Bの織糸YBの原糸として、84dtex、144フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維を用い、これらを経糸に用いた。また、84dtex、144フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維を織糸YCの原糸として緯糸に用いた。
【0085】
そして、製織時において、織糸YAと織糸YBを1:1の割合(本数比)で一本ずつ交互に配置し、織糸YAの張力×5.5=織糸YBの張力として、経糸密度を154本/2.54cmに、緯糸密度を250本/2.54cmに設定し、経糸、緯糸とも1本ずつ交錯させた平織組織にて製織して、一重の平織物を得た。得られた平織物を、オープンソーパーを用いて精練、ピンテンターを用いて185℃×30secでプレセットし、パッダーを用いてフッ素系樹脂化合物をパッド・キュアー法にて付与し撥水処理を行い、130℃×1minで乾燥し、180℃×30secで中間セットを行った。その後、カレンダー加工(加工条件:シリンダー加工、温度170℃、圧力2.45MPa(25kgf/cm2、速度20m/min)を織物の片面に2回施して、経糸密度が166本/2.54cm、緯糸密度が266本/2.54cm、カバーファクターが3959である平織物を得た。
【0086】
得られた平織物について、通気度、耐水圧、ダウン抜け防止性、および経年劣化試験後のダウン抜け防止性を前記方法で評価した。得られた平織物の特性を表1に示す。
【0087】
[実施例5]
クリンプ率Aの織糸YAおよびクリンプ率Bの織糸YBとして、56dtex、144フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維を用い、これを経糸に用いた。また、同糸を緯糸に用いた。
【0088】
そして、製織時において、織糸YAと織糸YBを1:1の割合(本数比)で一本ずつ交互に配置し、織糸YAの張力×1.4=織糸YBの張力として、経糸密度を155本/2.54cmに、緯糸密度を110本/2.54cmに設定し、経糸、緯糸とも1本ずつ交差させた平織組織にて製織して、一重の平織物を得た。得られた平織物を、オープンソーパーを用いて精練、ピンテンターを用いて185℃×30secでプレセットし、パッダーを用いてフッ素系樹脂化合物をパッド・キュアー法にて付与し撥水処理を行い、130℃×1minで乾燥し、180℃×30secで中間セットを行った。その後、カレンダー加工(加工条件:シリンダー加工、温度170℃、圧力2.45MPa(25kgf/cm2、速度20m/min)を織物の片面に2回施して、経糸密度が170本/2.54cm、緯糸密度が120本/2.54cm、カバーファクターが2170である平織物を得た。
【0089】
得られた平織物について、通気度、耐水圧、ダウン抜け防止性、および経年劣化試験後のダウン抜け防止性を前記方法で評価した。得られた平織物の特性を表1に示す。
【0090】
[比較例1]
56dtex、36フィラメント、のポリエチレンテレフタレート繊維を経糸と緯糸に用いた。
【0091】
そして、製織時において、経糸に張力差を付けず、経糸密度を146本/2.54cmに、緯糸密度を92本/2.54cmに設定し、経糸、緯糸とも1本ずつ交差させた平織組織にて製織して、一重の平織物を得た。得られた平織物を、オープンソーパーを用いて精練、ピンテンターを用いて185℃×30secでプレセットし、パッダーを用いてフッ素系樹脂化合物をパッド・キュアー法にて付与し撥水処理を行い、130℃×1minで乾燥し、180℃×30secで中間セットを行った。その後、カレンダー加工(加工条件:シリンダー加工、温度170℃、圧力2.45MPa(25kgf/cm2、速度20m/min)を織物の片面に2回施して、経糸密度が152本/2.54cm、緯糸密度が96本/2.54cm、カバーファクターが1856である平織物を得た。
【0092】
得られた平織物について、通気度、耐水圧、ダウン抜け防止性、および経年劣化試験後のダウン抜け防止性を前記方法で評価した。得られた平織物の特性を表1に示す。
【0093】
[比較例2]
クリンプ率Aの織糸(A1)の原糸として、56dtex、36フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維、クリンプ率Bの織糸(B1)の原糸として、56dtex、36フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維を用い、これらを経糸に用いた。また、167dtex、144フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維を緯糸に用いた。
【0094】
そして、製織時において、糸A1と糸B1を1:1の割合(本数比)で一本ずつ交互に配置し、糸A1の張力×1.2=糸B1の張力として、経糸密度を126本/2.54cmに、緯糸密度を65本/2.54cmに設定し、経糸、緯糸とも1本ずつ交差させた平織組織にて製織して、一重の平織物を得た。得られた平織物を、オープンソーパーを用いて精練、ピンテンターを用いて185℃×30secでプレセットし、パッダーを用いてフッ素系樹脂化合物をパッド・キュアー法にて付与し撥水処理を行い、130℃×1minで乾燥し、180℃×30secで中間セットを行った。その後、カレンダー加工(加工条件:シリンダー加工、温度170℃、圧力2.45MPa(25kgf/cm2、速度20m/min)を織物の片面に2回施して、経糸密度が132本/2.54cm、緯糸密度が70本/2.54cm、カバーファクターが1892である平織物を得た。
【0095】
得られた平織物について、通気度、耐水圧、ダウン抜け防止性、および経年劣化試験後のダウン抜け防止性を前記方法で評価した。得られた平織物の特性を表1に示す。
【0096】
[比較例3]
クリンプ率Aの織糸(A1)の原糸として、56dtex、36フィラメント、のポリエチレンテレフタレート繊維と、クリンプ率Bの織糸(B1)の原糸として、56dtex、36フィラメント、のポリエチレンテレフタレート繊維とを経糸に用いた。また、167dtex、144フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維を原糸として緯糸に用いた。
【0097】
そして、製織時において、糸A1と糸B1を1:1の割合(本数比)で一本ずつ交互に配置し、糸A1の張力×1.2=糸B1の張力として、経糸密度を126本/2.54cmに、緯糸密度を65本/2.54cmに設定し、経糸、緯糸とも1本ずつ交差させた平織組織にて製織して、一重の平織物を得た。得られた平織物を、オープンソーパーを用いて精練、ピンテンターを用いて185℃×30secでプレセットし、パッダーを用いてフッ素系樹脂化合物をパッド・キュアー法にて付与し撥水処理を行い、130℃×1minで乾燥し、180℃×30secで中間セットを行った。その後、カレンダー加工(加工条件:シリンダー加工、温度170℃、圧力2.45MPa(25kgf/cm2、速度20m/min)を織物の片面に2回施した。また、非溶剤系ウレタン樹脂「パラゾールPNA-284」(大原パラジウム)を90部、架橋剤「パラキャットPEG」を3部、柔軟剤「AYL-50E(大原パラジウム)」を7部調合した樹脂分散液を、カレンダー加工を施さない側の面にフローティングナイフでコーティングし、120℃×1minの乾燥と、170℃×1minの熱セットを施した。このようにして、経糸密度が132本/2.54cm、緯糸密度が70本/2.54cm、カバーファクターが1892である、コーティング樹脂を付与した平織物を得た。
【0098】
得られた平織物について、通気度、耐水圧、ダウン抜け防止性、および経年劣化試験後のダウン抜け防止性を前記方法で評価した。得られた平織物の特性を表1に示す。
【0099】
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の側地は、ダウンウエアやダウンジャケット等の衣料に加え、ふとん、寝袋等、中綿やダウン等の充填材を包む側地に有用に使用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1.平織物
2.クリンプ率Aの経糸(織糸YA)
3.緯糸(織糸YC)
4.クリンプ率Bの経糸(織糸YB)
5.上方に位置する織糸断面の上端頂点接線
6.下方に位置する織糸断面の下端頂点接線
α.クリンプ率Aの経糸方向の切断線
β.クリンプ率Bの経糸方向の切断線