(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】エキシマランプ、光照射装置
(51)【国際特許分類】
H01J 61/35 20060101AFI20231114BHJP
H01J 65/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H01J61/35 F
H01J65/00 C
(21)【出願番号】P 2020055316
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀部 大輝
(72)【発明者】
【氏名】藤田 尚樹
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-011341(JP,A)
【文献】特開2015-056303(JP,A)
【文献】特開2014-006997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61/35
H01J 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光に対して透過性を有する長尺状の発光管と、
前記発光管の径方向に離間して設けられた一対の電極と、
前記発光管の内壁面に形成された反射膜とを備え、
前記反射膜は、
光照射対象領域に向けて光を出射する光出射面と対向する第一反射領域と、
前記発光管の周方向に関して前記光出射面とは異なる位置に設けられた採光部と対向する第二反射領域とを備えることを特徴とするエキシマランプ。
【請求項2】
前記採光部は、前記発光管の管軸方向に関し、前記発光管の前記光出射面側における有効発光領域とは異なる位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項3】
前記採光部は、前記光出射面とは
前記発光管の管軸に対して反対側に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエキシマランプ。
【請求項4】
前記反射膜は、前記第一反射領域を構成する第一反射膜と、前記第二反射領域を構成し、前記第一反射膜と離間した位置に形成された第二反射膜からなることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のエキシマランプ。
【請求項5】
前記第二反射膜は、前記発光管の管軸方向に関し、前記第一反射膜よりも前記発光管の端部側に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のエキシマランプ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のエキシマランプと、
受光部を有し、前記受光部に入射した光を検知する光量センサとを備え、
前記光量センサは、前記受光部の受光可能領域が前記採光部に含まれるように配置されていることを特徴とする光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマランプ、及びエキシマランプを備えた光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体や液晶パネルの製造や、空気清浄用のオゾンの生成に、紫外光が用いられている。紫外光を出射する光源として、例えば、下記特許文献1に記載されているようなエキシマランプが利用されている。下記特許文献1には、発光管から放射される紫外光を、効率よく照射対象物に照射するために、発光管の内壁面に反射膜を形成したエキシマランプが開示されている。
【0003】
半導体や液晶パネルの製造の際には、製品間での品質の差異を小さくするために、各照射対象物(ワーク)間で照度を均一化するのが好ましい。かかる観点から、特許文献2には、光照射装置から処理対象物への安定した照射を担保するため、内壁面の一部に光出射面とは異なる位置に採光口を設けて、光量を検知する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-335350号公報
【文献】特開2010-225343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者は、上記特許文献2に開示されたエキシマランプの構成を検討していたところ、以下のような課題が存在することを見出した。以下、図を参照しながら説明する。
【0006】
図18は、従来構成のエキシマランプ100の採光部105周辺の拡大斜視図である。
図18に示すエキシマランプ100は、発光管101の外壁面101aに対向するように設けられた一対の電極102と、
図18内における-X方向が光取り出し方向とされており、+X方向に進行する紫外光L1の進行方向を-X方向に変換させるために、発光管101の壁面に形成された反射膜103とを有する。そして、
図18に示すように、従来のエキシマランプ100は、この反射膜103の一部に光出射面104以外の場所から紫外光L1を取り出すための開口である採光部105が設けられていた。
【0007】
以下の説明においては、
図18に示すように、エキシマランプ100の発光管101が延伸する方向(管軸方向)をZ方向、電極102が対向する方向をX方向、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向とする。そして、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0008】
当該構成では、採光部105から出射される紫外光L1は、発光管101から放射されて採光部105に向かって進行した紫外光L1のみであって、光出射面104から照射対象物に向かって照射される紫外光L1のように、反射膜103によって反射された光が含まれていなかった。つまり、従来構成のエキシマランプ100では、採光部105から出射される光を光量センサによって計測しても、反射膜103の劣化状態等まで含めた光出力を検知できていなかった。
【0009】
また、発光管101には、放射される紫外光L1によって透過率に経時的な変化が現れるため、その変化量は、発光管101を形成する材料によっても異なる。さらに、発光管101や反射膜103に現れる経時的な変化は、使用環境等によっても異なり、一様な変化としては現れにくい。つまり、光出力と劣化状態との相関データ等を用いて、発光管101の特性の変化や劣化の状態を予測することも困難であった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑み、光出力状態を、より正確に検知することができるエキシマランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のエキシマランプは、
紫外光に対して透過性を有する長尺状の発光管と、
前記発光管の径方向に離間して設けられた一対の電極と、
前記発光管の内壁面に形成された反射膜とを備え、
前記反射膜は、
光照射対象領域に向けて光を出射する光出射面と対向する第一反射領域と、
前記光出射面とは異なる位置に設けられた採光部と対向する第二反射領域とを備えることを特徴とする。
【0012】
光出射面から出射される光は、発光管の内部から放射され、光出射面に向かって進行する光と反射膜の第一反射領域によって光出射面に向かうように反射された光とを含む。採光部から出射される光は、発光管の内部から放射され、採光部に向かって進行する光と反射膜の第二反射領域によって採光部に向かうように反射された光とを含む。
【0013】
したがって、採光部から出射される光は、光出射面から出射される光と同様に、反射膜によって反射された光が含まれるため、エキシマランプの反射膜の劣化等を含めた経時的な光出力の変化を検知することができる。
【0014】
上記エキシマランプにおいて、
前記採光部は、前記発光管の管軸方向に関し、前記発光管の前記光出射面側における有効発光領域とは異なる位置に形成されていても構わない。
【0015】
長尺状の発光管で構成されるエキシマランプは、管軸方向において、端部側では中央部側と比較すると周囲からの照射量が少ないため、出射される光の強度が相対的に低くなってしまう。
【0016】
そこで、照射対象物に対して照射ムラが発生しないように、エキシマランプの多くは、照射対象物の幅(管軸方向と同方向に係る長さを指す。)よりも長い発光管で構成され、中央部側の所定の光強度以上の光が出射される領域のみを使用して照射処理が行われる。
【0017】
本明細書において「有効発光領域」とは、発光管の管軸方向に関し、所定の光強度が出力されて、照射対象物への照射に使用できる領域をいい、より詳細には、発光管の管軸に沿った光の強度分布において、ピーク値の60%以上の光が出射されている領域をいう。
【0018】
上記構成とすることで、有効発光領域には、採光部や反射膜の第二反射領域が形成されず、照射対象物に対して、一様な強度分布の光を出射できる。
【0019】
上記エキシマランプにおいて、
前記採光部は、前記光出射面とは反対側に形成されていても構わない。
【0020】
エキシマランプは、上述したように、紫外光を出射するランプであり、光出射面付近は、光強度の高い紫外光に曝されることになる。紫外線は、可視光等に比べてエネルギーが高く、採光部から出射される光を計測する光量センサによっては、高い強度で照射されると、受光感度等が急速に劣化してしまうおそれがある。
【0021】
上記構成とすることで、光出射面から出射される強度の高い光(特に紫外光)に曝されることが少なくなるため、受光感度等が急速に劣化してしまうことを抑制することができる。
【0022】
上記エキシマランプにおいて、
前記反射膜は、前記第一反射領域を構成する第一反射膜と、前記第二反射領域を構成し、前記第一反射膜と離間した位置に形成された第二反射膜からなるものであっても構わない。
【0023】
上記エキシマランプにおいて、
前記第二反射膜は、前記発光管の管軸方向に関し、前記第一反射膜よりも前記発光管の端部側に形成されていても構わない。
【0024】
第一反射膜と第二反射膜とが管軸方向の一部において重複していると、当該重複部分において光が反射を繰り返してしまうため、光出射面や採光部の当該重複部分付近では、光強度が大きく変化する場合や、局所的に反射膜の劣化が急速に進んでしまう場合がある。
【0025】
上記構成とすることで、第一反射膜と第二反射膜は、管軸方向において重複する部分が形成されず、第一反射膜と第二反射膜との間で何度も光が反射を繰り返すことがないため、光出射面及び採光部から出射される光において、光強度分布の局所的に大きく変化してしまうことを抑制することができる。
【0026】
本発明の光照射装置は、
上記エキシマランプと、
受光部を有し、前記受光部に入射した光を検知する光量センサとを備え、
前記光量センサは、前記受光部の受光可能領域が前記採光部に含まれるように配置されていることを特徴とする。
【0027】
上記構成とすることで、エキシマランプの採光部から出射される光を、光量センサで計測することができ、エキシマランプの光出射面から出射される光の変化量や劣化量を検知することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、光出力状態を、より正確に検出することができるエキシマランプが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】光照射装置の一実施形態をY方向に見たときの模式的な図面である。
【
図2】エキシマランプの一実施形態をY方向に見たときの模式的な断面図である。
【
図3】
図2のエキシマランプの採光部周辺の拡大斜視図である。
【
図4】
図2のエキシマランプをX方向に見たときの模式的な図面である。
【
図5】
図2のエキシマランプをZ方向に見たときの模式的な断面図である。
【
図6】
図2のエキシマランプを+X側から見たときの模式的な図面と、光出射面から出射される紫外線の強度分布を示すグラフである。
【
図7】
図1の光照射装置をZ方向に見たときの模式的な断面図である。
【
図8】
図1の光照射装置を+X側から見たときの模式的な図面である。
【
図9A】準備した発光管の採光部周辺をY方向に見たときの断面図である。
【
図9B】
図9Aの発光管の内壁面にマスキングテープを貼り付けた状態を示す断面図である。
【
図9C】
図9Bの発光管の内壁面に反射膜を形成する懸濁液を塗布した状態を示す断面図である。
【
図9D】
図9Cの発光管からマスキングテープを除去した状態を示す断面図である。
【
図10】エキシマランプに別実施形態をY方向に見たときの断面図である。
【
図11】
図10のエキシマランプの採光部周辺の拡大斜視図である。
【
図12A】エキシマランプの別実施形態をZ方向に見たときの模式的な断面図ある。
【
図13A】エキシマランプの別実施形態をZ方向に見たときの模式的な断面図ある。
【
図14】エキシマランプの別実施形態をY方向に見たときの模式的な断面図ある。
【
図15】エキシマランプの別実施形態をY方向に見たときの模式的な断面図ある。
【
図16】エキシマランプの別実施形態をY方向に見たときの模式的な断面図ある。
【
図17】エキシマランプの別実施形態の採光部周辺の拡大斜視図である。
【
図18】従来構成のエキシマランプの採光部周辺の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明のエキシマランプ及び光照射装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0031】
図1は、光照射装置1の一実施形態をY方向に見たときの模式的な図面である。
図1に示すように、光照射装置1は、エキシマランプ2と、光量センサ3と、照射対象物W1を載置する搬送機構4とを備える。
【0032】
なお、以下の説明においては、
図1に示すように、エキシマランプ2の延伸する方向(管軸方向)をZ方向、エキシマランプ2の光出射面12に平行な面をX方向及びY方向によって規定されるXY平面とする。そして、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0033】
まず、エキシマランプ2の構成について説明する。エキシマランプ2は、照射対象物W1に対して紫外光を照射するように、光出射面12が搬送機構4と対向するように配置されている。
【0034】
図2は、エキシマランプ2の一実施形態をY方向に見たときの模式的な断面図である。
図3は、
図2のエキシマランプ2の採光部13周辺の拡大斜視図である。
図2に示すように、エキシマランプ2は、発光管10と、一対の電極11と、光出射面12と、採光部13と、第一反射膜14a及び第二反射膜14bとを備える。なお、
図3においては、第二反射膜14bの形状を把握しやすいように、第二反射膜14bよりも-Z側は、図示していない。ここで、エキシマランプ2が光照射装置1に組み込まれた状態で
図1による方向の定義と対応するように、以下の説明においては、
図2及び
図3に示すように、エキシマランプ2の発光管10が延伸する方向(管軸方向)をZ方向、電極11が対向する方向をX方向、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向とする。
【0035】
発光管10は、光(特に、紫外光)に対して透過性を有する材料(例えば、石英ガラス)で形成されており、
図2に示すように、長尺状で内側に発光ガスG1が封入される発光空間10cが設けられ、発光空間10c内で発生した紫外光L1を外側に向かって放射する。
【0036】
図4は、
図2のエキシマランプ2をX方向に見たときの模式的な図面である。電極11は、
図4に示すように、発光管10の外壁面10aにメッシュ状に形成されており、複数の開口によって、発光管10の発光空間10cから放射される光を取り出すための光取り出し部11hを構成している。電極11に対して、発光に必要な電圧が印加されると、発光空間10c内で放電が発生し、光取り出し部11hから紫外光L1が放射される。
【0037】
図5は、
図2のエキシマランプ2をZ方向に見たときの断面図である。
図5に示すように、本実施形態の発光管10は、XY平面で切断したときの断面が、矩形状を呈するように形成されており、互いに対向する平坦な外壁面10aに、一対の電極11が形成されている。しかし、発光管10の断面形状は、円形状や楕円形状等でもよく、六角形や八角形等の他の多角形状であっても構わない。
【0038】
光出射面12(
図2及び
図3参照)は、発光管10の発光空間10cから放射された紫外光L1を照射対象物W1に向かって照射する発光管10の壁面の一部の領域である。発光空間10cから放射された紫外光L1のうち、光出射面12に向かって進行する紫外光L1は、そのまま電極11の光取り出し部11hを通過して、発光管10の外側に向かって出射される。
【0039】
発光空間10cから放射された紫外光L1のうち、光出射面12とは反対側、すなわち+X方向に向かって進行する紫外光L1は、第一反射膜14aによって、光出射面12側、すなわち-X方向に向かうように反射されて、電極11の光取り出し部11hを通過して、発光管10の外側に向かって出射される。
【0040】
採光部13は、発光管10の発光空間10cから放射された紫外光L1の光量を光量センサ3で計測するために発光管10の壁面に形成される紫外光L1の出射窓である。発光空間10cから放射された紫外光L1のうち、採光部13に向かって進行する紫外光L1は、そのまま電極11の光取り出し部11hを通過して、発光管10の外側に向かって出射される。
【0041】
発光空間10cから放射された紫外光L1のうち、採光部13とは反対側の-X方向に向かって進行する紫外光L1は、第二反射膜14bによって、採光部13側の+X方向に向かうように反射されて、電極11の光取り出し部11hを通過して、発光管10の外側に向かって出射される。
【0042】
第二反射膜14bは、
図2に示すように、第一反射膜14aよりも発光管10の端部側に形成されている。そして、
図3に示すように、第一反射膜14aと第二反射膜14bは、Z方向に見たときには、対向するように形成されている。
【0043】
ここで、上述した有効発光領域と採光部との位置関係について説明する。有効発光領域は、Z方向に関し、所定の光強度が出力されて、照射対象物W1への照射に使用できる領域をいい、より詳細には、Z方向の強度分布において、ピーク値の60%以上の光が出射されている領域をいう。
【0044】
図6は、エキシマランプ2を+X側から見たときの模式的な図面と、光出射面12から出射される紫外光L1の強度分布を示すグラフである。
図6に示すように、有効発光領域A1は、第一反射膜14aの中央部側、すなわち、第一反射膜14aと対向する光出射面12の中央部側の一部の領域である。なお、
図6においては、発光管10の内部の構造を確認しやすいように、電極11が図示されておらず、光出射面12は、第一反射膜14aによって隠されている。
【0045】
上記のように構成とすることで、採光部13は、光出射面12の有効発光領域A1とは異なる位置に形成される。なお、光出射面12が複数形成されているエキシマランプ2の場合、採光部13は、それぞれの有効発光領域A1と異なる位置に形成される。
【0046】
なお、採光部13から出射される紫外光L1は、光出射面12と同じ反射膜で反射された紫外光L1を検知できることが期待されるため、第一反射膜14aと第二反射膜14bは、同じ材料で形成されていることが好ましい。
【0047】
第一反射膜14a及び第二反射膜14bの構成材料は、例えば、粒子状のシリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)等が含まれる懸濁液等を塗布し、焼成することで形成されたものを採用し得る。
【0048】
上記構成とすることで、採光部13から出射される紫外光L1は、発光管10の発光空間10cから放射され、採光部13に向かって進行する紫外光L1と第二反射膜14bによって採光部13に向かうように反射された紫外光L1とが含まれることになる。したがって、エキシマランプ2の反射膜の劣化等を含めた経時的な光出力の変化を検知することができる。
【0049】
さらに、上記実施形態によれば、Z方向に関して、第二反射膜14bが第一反射膜14aよりも端部側に形成されているため、第一反射膜14aと第二反射膜14bとの間で何度も光が反射を繰り返すことがなくなる。したがって、光出射面12及び採光部13から出射される光強度分布において、局所的に大きく変化してしまうことを抑制することができる。
【0050】
次に、光照射装置1のエキシマランプ2以外の構成について説明する。
図7は、
図1の光照射装置1をZ方向に見たときの模式的な断面図である。
図8は、
図1の光照射装置1を+X側から見たときの模式的な図面である。光量センサ3は、構成や、受光部3aとして用いられる装置やそれらを構成する材料にもよるが、
図7及び
図8に示すように、特定の受光可能領域3sを有する。
【0051】
図7及び
図8に示すように、光量センサ3は、受光部3aにおいて、エキシマランプ2の採光部13から出射される紫外光を十分に受光できるように、受光可能領域3sがエキシマランプ2の採光部13に含まれるように配置されている。なお、光量センサ3が取り込んだ光を受光部3aに導光する導光部材を備えており、当該導光部材によって光を取込むことができる領域が採光部13に含まれるように配置されていても構わない。つまり、光量センサ3は、採光部13と対向して配置されていなくても構わない。
【0052】
光量センサ3は、例えば、シリコンフォトダイオードを採用し得る。光量センサ3は、採光部13から出射される光をシリコンフォトダイオードで直接観測する構成でも構わない。また、光量センサ3は、シリコンフォトダイオードによって測定可能な範囲と、採光部13から出射される光の波長とが異なる場合には、蛍光物等によって測定可能な範囲の波長の光に変換して計測する構成としても構わない。
【0053】
搬送機構4は、載置された照射対象物W1を搬送し、照射対象物W1にエキシマランプ2の光照射対象領域を通過させて、光出射面12から出射される紫外光を照射させるように構成されている。また、本実施形態において、搬送機構4は、照射対象物W1をY方向に搬送するように構成されている。
【0054】
本実施形態の搬送機構4は、個別に離間して配置された複数のローラで構成されているが、ベルト状のコンベア等、エキシマランプ2と照射対象物W1との離間距離を維持しつつ、照射対象物W1を所定の方向に向かって搬送できるものであれば、どのような構成であっても構わない。
【0055】
本実施形態の光照射装置1は、光量センサ3が受光部3aによってエキシマランプ2の採光部13から出射された紫外光を受光し、光量を計測することで、エキシマランプ2の劣化具合等を把握することができる。
【0056】
ここで、本実施形態における、第一反射膜14aと第二反射膜14bの形成方法について説明する。
【0057】
図9Aは、準備した発光管10の採光部13周辺をY方向に見たときの断面図である。第一工程は、
図9Aに示すように、発光管10を準備する工程である。
【0058】
図9Bは、
図9Aの発光管10の内壁面10bにマスキングテープ70を貼り付けた状態を示す断面図である。第二工程は、
図9Bに示すように、第一工程で準備した発光管10の内壁面10bのうち、反射膜を形成しない部分に、マスキングテープ70を貼り付ける工程である。
【0059】
図9Cは、
図9Bの発光管10の内壁面10bに反射膜を形成する懸濁液71を塗布した状態を示す断面図である。懸濁液71は、上述したように、粒子状のシリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)等によって生成され得る。第三工程は、
図9Cに示すように、第二工程でマスキングテープ70を貼り付けた発光管10の内壁面10bに、反射膜を形成するための懸濁液71を塗布する工程である。なお、懸濁液71を塗布する方法は、発光管10の内側にノズルを挿入して掃引する方法や、発光管10内に懸濁液71を流し込む方法等を採用し得る。
【0060】
図9Dは、
図9Cの発光管10からマスキングテープ70を除去した状態を示す断面図である。第四工程は、
図9Dに示すように、第三工程で塗布された懸濁液71が乾燥したところで、マスキングテープ70を除去する工程である。
【0061】
第五工程は、発光管10の内壁面10bで乾燥した懸濁液71を焼成して、反射膜を形成する工程である。
【0062】
以上の工程を経て、
図3に示すような、第一反射膜14aと第二反射膜14bが形成される。なお、Y方向に対向する壁面については、本実施形態では、反射膜が形成されないので説明を省略したが、当該壁面に反射膜を形成する場合は、第二工程において、マスキングテープ70を適当な形状で発光管10の内壁面10bに貼り付けて、懸濁液71を塗布すればよい。
【0063】
第二反射膜14bは、採光部13と対向する位置に全体にわたって形成されていなくてもよく、光照射装置1に備えられたときに、光量センサ3の受光可能領域3sの範囲内において、受光可能領域3sの面積に対して50%以上の範囲で形成されていることが好ましい。
【0064】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0065】
〈1〉
図10は、エキシマランプ2の別実施形態をY方向に見たときの断面図である。
図11は、
図10のエキシマランプ2の採光部周辺の拡大斜視図である。
図10及び
図11に示すように、光出射面12側に向かうように紫外光L1を反射する第一反射領域14pと、採光部13側に向かうように紫外光L1を反射する第二反射領域14qとを備える一体の反射膜14が形成されていても構わない。なお、
図11においては、反射膜14の形状を把握しやすいように、第二反射領域14qよりも-Z側は、図示していない。
【0066】
図10及び
図11に示すように、反射膜14は、光出射面12に対向する位置に第一反射領域14pが形成され、採光部13と対向する位置に第二反射領域14qが形成され、それらの間は、発光管10の側面を介して反射膜14と同じ材料の部材で連絡されている。これは、上述した実施形態の構成に対応させると、第一反射膜14aと第二反射膜14bが、いずれもが、発光管10の管軸を中心とした周方向において、半周以上にわたってX方向に対向するように形成され、Z方向において一部が重複するように形成されている構成である。
【0067】
〈2〉
図12A及び
図13Aは、エキシマランプ2の別実施形態をZ方向に見たときの模式的な断面図ある。
図12Bは、
図12Aのエキシマランプ2をY方向に見たときの模式的な断面図であり、
図13Bは、
図13Aのエキシマランプ2をY方向に見たときの模式的な断面図である。
図5を参照して上述したエキシマランプ2は、発光管10がZ方向に見たときの形状が矩形状を呈する、いわゆる扁平管形状と称される構成であった。しかし、エキシマランプ2はこれに限られず、
図12Aに示すような、一重管と称される形状や、
図13Aに示すような、二重管と称される形状の構成であっても構わない。
【0068】
図13Aに示すように、二重管形状のエキシマランプ2の場合、第二反射膜14bは、発光管10の内側に配置された管壁10d上に形成される。
図13Aでは、第二反射膜14bが発光管10の内側の管壁10d上に、周方向に関して半周分だけ形成されているが、全周にわたって形成されていても構わない。
【0069】
なお、いずれの形状の構成においても、一対の電極11が、発光管10の管軸を中心として径方向に離間するように形成されている。また、
図12A~
図13Bに示す、いずれの構成も、発光管10の外壁面側に形成される電極11は、金属線で形成された網状電極としたが、蒸着によって形成された金属膜や、金属板で構成された電極11であっても構わない。また、
図12Aに示す、発光管10の発光空間10c内に配置された電極11や、
図13Aに示す、発光管10の内側に形成された電極11も同様に、図示された構成に限定されない。
【0070】
〈3〉 第一反射膜14aと第二反射膜14bは、一つのエキシマランプ2において、複数形成されていても構わない。また、反射膜14は、複数の第一反射領域14pと第二反射領域14qが形成されていても構わない。
図14~
図16は、エキシマランプ2の別実施形態をY方向に見たときの模式的な断面図ある。例えば、
図14及び
図15に示すように、採光部13が二つ設けられ、第二反射膜14b、第二反射領域14qが二つ形成されていても構わない。
【0071】
さらに、
図16に示すように、エキシマランプ2は、Z方向において、第二反射膜14bが、複数の第一反射膜14aの間に形成され、採光部13が、発光管10の中央部側に形成されていても構わない。なお、図示はしていないが、第一反射領域14pと第二反射領域14qに関しても同様に、第二反射領域14qが複数の第一反射領域14pに間に形成され、採光部13が、発光管10の中央部側に形成されていても構わない。
【0072】
〈4〉
図17は、エキシマランプ2の別実施形態の採光部13周辺の拡大斜視図である。上述した構成では、光出射面12と採光部13は、いずれもX方向に面するように構成されているが、
図17に示すように、光出射面12がX方向に面するように形成され、採光部13がY方向に面するように形成されていても構わない。なお、
図17においては、第二反射膜14bの形状を把握しやすいように、第二反射膜14bよりも-Z側は、図示していない。
【0073】
〈5〉 上述した光照射装置1及びエキシマランプ2が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0074】
1 : 光照射装置
2 : エキシマランプ
3 : 光量センサ
3a : 受光部
3s : 受光可能領域
4 : 搬送機構
10 : 発光管
10a : 外壁面
10b : 内壁面
10c : 発光空間
11 : 電極
11h : 光取り出し部
12 : 光出射面
13 : 採光部
14 : 反射膜
14a : 第一反射膜
14b : 第二反射膜
14p : 第一反射領域
14q : 第二反射領域
70 : マスキングテープ
71 : 懸濁液
100 : エキシマランプ
101 : 発光管
101a : 外壁面
102 : 電極
103 : 反射膜
104 : 光出射面
105 : 採光部
G1 : 発光ガス
L1 : 紫外光
W1 : 照射対象物