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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】加湿器
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04119 20160101AFI20231114BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20231114BHJP
【FI】
H01M8/04119
H01M8/04 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020059413
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021158054
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】管 宇
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-172592(JP,A)
【文献】特開2007-149386(JP,A)
【文献】特開平11-233132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
F24F 6/00-6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に含水ガス流路が形成され、他方の面に乾燥ガス流路が形成された板状の複数のセパレータと、
前記含水ガス流路と前記乾燥ガス流路とが交互になるように複数の前記セパレータが積層された状態で、隣接する前記セパレータの境界に挟み込まれる水交換膜と、
積層された複数の前記セパレータの前記含水ガス流路に含水ガスを供給する含水ガス供給部と、
積層された複数の前記セパレータの前記乾燥ガス流路に乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給部と、
外部から供給されるガスのガス圧により、複数の前記セパレータに対して積層方向に圧力を作用させる加圧ユニットを備え
前記加圧ユニットが、積層された複数の前記セパレータのうち積層方向の端部位置のものに対し隣接して配置される加圧体と、
乾燥ガスのガス圧の作用により前記積層方向に沿う方向に作動することで、前記加圧体に対し前記積層方向に沿う方向に圧力を作用させるピストンと、
前記乾燥ガス供給部から供給される乾燥ガスの一部を前記ピストンに供給する加圧流路と、を備えている加湿器。
【請求項2】
前記ピストンのうち乾燥ガスの圧力が作用する面積が、前記積層方向に沿う方向視での前記セパレータの面積より大きい請求項に記載の加湿器。
【請求項3】
前記乾燥ガス供給部が、乾燥ガスを送り出すポンプと、前記ポンプからの乾燥ガスが供給される乾燥ガス供給路と、前記乾燥ガス供給路を開閉する開閉バルブとを備え、前記加圧流路が、前記乾燥ガス供給路のうち、前記開閉バルブの上流側に接続している請求項又はに記載の加湿器。
【請求項4】
複数の前記セパレータを互いに圧接させる方向に付勢力を作用させる付勢部材を備えている請求項1~の何れか一項に記載の加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池のカソード側に供給されるカソードガスを加湿するための加湿器は、ガスを案内するセパレータと、複数の水を透過する膜とを交互に配置する構成が多く採用され、例えば、以下に説明する特許文献1と特許文献2とが存在する。
【0003】
特許文献1には、燃料電池を構成する複数の発電セル、及び、加湿器を構成する複数のセパレータと水透過性膜とを積層し、複数のボルトにより連結した燃料電池システムが記載されている。つまり、複数の締め付けボルトの締結により複数の発電セルと、複数のセパレータとを積層状態に維持している。また、複数の締め付けボルトに対し弾性円筒体を外嵌することにより、加湿器全体のばね定数を調整するように構成されている。
【0004】
この燃料電池システムは、加湿器の外面となる第3エンドプレートに形成した空気入口連通孔から加湿器に空気を供給し、加湿器で加湿された空気を燃料電池に供給する。また、燃料電池から排出される含水空気を加湿器に供給することで、空気入口連通孔から供給された空気に水分を与え、この加湿器で加湿した後の空気を空気オフガス出口排出連通口孔から排出するように構成されている。
【0005】
特許文献2にはセパレータと加湿膜とを交互に配置して積層し、これらの積層方向の外端に加圧板を配置し、両端の加圧板を貫通する複数のねじ棒の一端側にナットと座金とバネを備えた加湿器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-234314号公報
【文献】特開2007-163035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、特許文献2に示されるように加湿器は、ガス流路が両面に形成されたプレート状部材(以下、セパレータと称する)と、水の透過が可能な膜(以下、水交換膜と称する)とを交互に配置し、これらを積層する構成が多く採用されている。
【0008】
このような加湿器では、セパレータと水交換膜との間のシール性能を維持するために、これらを適切な荷重で圧接させることが必要となる。また、従来からの加湿器では、セパレータが樹脂材の成形物であるため、寸法精度に僅かなバラツキが発生し、また、成形時の歪みにより僅かに湾曲する等の変形を招くおそれがある。このようなセパレータを用いる場合には、積層方向に適切な荷重を加えることにより、実用上は不都合を生ずることなく、必要とする性能を発揮させるために何らかの対策が必要であった。
【0009】
しかしながら、例えば、特許文献2に記載されるようにバネの荷重を作用させる構成で、バネの荷重が過大でない場合でも、継続的に荷重が作用することによりセパレータが樹脂クリープ現象により変形するおそれがあり、また、樹脂が経年劣化する現象も加わるため、水透過膜を挟んで隣合う位置のセパレータの当接する全面の圧力が不均一になり、シール性能に悪影響を与えることが起こり得る。
【0010】
このような理由から、長期に亘って使用しても、セパレータと水交換膜とを良好に密着させシール性を維持できる加湿器が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る加湿器の特徴構成は、一方の面に含水ガス流路が形成され、他方の面に乾燥ガス流路が形成された板状の複数のセパレータと、前記含水ガス流路と前記乾燥ガス流路とが交互になるように複数の前記セパレータが積層された状態で、隣接する前記セパレータの境界に挟み込まれる水交換膜と、積層された複数の前記セパレータの前記含水ガス流路に含水ガスを供給する含水ガス供給部と、積層された複数の前記セパレータの前記乾燥ガス流路に乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給部と、外部から供給されるガスのガス圧により、複数の前記セパレータに対して積層方向に圧力を作用させる加圧ユニットを備え、前記加圧ユニットが、積層された複数の前記セパレータのうち積層方向の端部位置のものに対し隣接して配置される加圧体と、乾燥ガスのガス圧の作用により前記積層方向に沿う方向に作動することで、前記加圧体に対し前記積層方向に沿う方向に圧力を作用させるピストンと、前記乾燥ガス供給部から供給される乾燥ガスの一部を前記ピストンに供給する加圧流路と、を備えている点にある。
【0012】
この特徴構成によると、加湿器で加湿を行う場合に外部からガスを供給することで、ガスを供給している間だけセパレータと水交換膜との積層方向に荷重(ガス圧)を作用させることが可能となり、ガス供給が停止しているときには積層方向に荷重を作用させないので、バネ等を用いて荷重を得る構成のように継続的に荷重を作用させた場合の変形を緩和できる。
従って、長期に亘って使用しでも、セパレータと水交換膜とを良好に密着させシール性を維持できる加湿器が構成された。
【0014】
これによると、加圧流路から供給される乾燥ガスの圧力でピストンを作動させ、このピストンの圧力を、加圧体を介して複数のセパレータに対して積層方向に作用させるため、ピストンを作動させるために専用のガス供給源を用いる必要がない。また、ピストンの圧力を加圧体の広い面を介してセパレータに作用させるため、セパレータに対して均一の圧力を作用させることも可能となる。
【0015】
上記構成に加えた構成として、前記ピストンのうち乾燥ガスの圧力が作用する面積が、前記積層方向に沿う方向視での前記セパレータの面積より大きくても良い。
【0016】
また、乾燥ガスがセパレータを離間させる方向に作用させる単位面積あたりの圧力より、ピストンからセパレータに作用させる単位面積あたりの圧力を大きくして、セパレータ同士を確実に密着させることが可能となる。
【0017】
上記構成に加えた構成として、前記乾燥ガス供給部が、乾燥ガスを送り出すポンプと、前記ポンプからの乾燥ガスが供給される乾燥ガス供給路と、前記乾燥ガス供給路を開閉する開閉バルブとを備え、前記加圧流路が、前記乾燥ガス供給路のうち、前記開閉バルブの上流側に接続しても良い。
【0018】
これによると、例えば、燃料電池の発電を一時的に停止した場合のように、開閉バルブが閉じた状態であっても、複数のセパレータの圧着状態を維持でき、複数のセパレータと水交換膜との間からガスを漏出させることもない。
【0019】
上記構成に加えた構成として、複数の前記セパレータを互いに圧接させる方向に付勢力を作用させる付勢部材を備えても良い。
【0020】
これによると、ガス圧が作用しない場合でも複数のセパレータの圧着状態を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】加湿器の斜視図である。
図2】加湿器とガス流路とを示す平面図である。
図3】上部プレートとセパレータと水交換膜と配置を示す分解斜視図である。
図4】セパレータの下面を示す斜視図である。
図5】加湿器の断面と供給路と加圧流路とを示す図である。
図6】別実施形態(a)の加湿器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1図3図5に示すように、上端の上部プレート1と、下端の下部ケース2とを複数の連結ロッド3の連結により一体化した本体フレーム部Fを備え、下部ケース2の上側に対し上下に移動自在な加圧体4を配置し、上部プレート1と加圧体4の間に加湿ユニットHを配置し、外部の加圧流路24から供給される空気(ガスの一例)の空気圧(ガス圧の一例)により加圧体4を作動させ、上部プレート1と加圧体4との間に加湿ユニットHの複数のセパレータ6を挟み込むことで複数のセパレータ6に積層方向に荷重を作用させる加圧ユニットPを備えて加湿器Aが構成されている。
【0023】
図5に示すように、この加湿器Aでは、コンプレッサ21(ポンプの一例)で加圧された空気(乾燥ガスの一例)が供給路22(乾燥ガス供給路の一例)と開閉バルブ23とを介して供給される。この構成では、コンプレッサ21と、供給路22と、開閉バルブ23とで乾燥ガス供給部が構成されている。また、図2に示すように、加湿器Aに対して燃料電池Bから排出された含水ガスが供給される含水ガス供給部の一部としての含水ガス供給管路17が形成されている。
【0024】
燃料電池Bは、水素ガスを含む燃料ガスと、酸素ガスを含む空気とを供給することで発電が行われる。燃料電池Bは、発電により燃料電池Bから排出される反応後の空気に多くの水が水蒸気の状態で含まれる。このように水を含む空気を含水空気と称する。
【0025】
加湿器Aは、燃料電池Bに供給される空気(以下、乾燥空気と称する)を加湿する。つまり、加湿器Aは、含水空気と、乾燥空気とを供給することにより加湿ユニットHにおいて、含水空気に含まれる水分を、乾燥空気に与え、加湿空気を作り出すように機能する。尚、図1図5の加湿器Aでは、上端に上部プレート1を配置した姿勢を示しているが、この加湿器Aは、この姿勢で用いるものに限らず横向き姿勢や斜め姿勢で用いても良い。
【0026】
〔加湿ユニット〕
図3図4に示すように、加湿ユニットHは、樹脂材で成る複数の板状のセパレータ6と、樹脂膜で成る複数の水交換膜7とを交互に重ね合わせて積層されている。セパレータ6は、一方の面(実施形態では上面)に乾燥ガス流路6Dが形成され、他方の面(実施形態では下面)に含水ガス流路6Wが形成されている。そして、積層状態で、隣接する含水ガス流路6W、及び、乾燥ガス流路6Dの境界に挟み込まれる位置に水交換膜7が配置される。
【0027】
含水ガス流路6Wは、含水ガス供給口6Waから含水ガス排出口6Wbに向けて対角線に沿う方向に乾燥ガスを流し、乾燥ガス流路6Dは、乾燥ガス供給口6Daから乾燥ガス排出口6Dbに向け、含水ガスが流れる方向と交差する対角線に沿う方向に含水ガスを流すように流路の姿勢が設定されている。セパレータ6と水交換膜7との中央には後述するセンターロッド10が挿通する貫通孔が形成されている。
【0028】
このように含水ガス流路6Wと乾燥ガス流路6Dとが形成されるため、加湿ユニットHでは、図2図5に示すように、積層された複数のセパレータ6の夫々の含水ガス供給口6Waが積層方向に延びる1つの空間となり、積層された複数のセパレータ6の夫々の含水ガス排出口6Wbが、積層方向に延びる1つの空間となる。これと同様に、積層された複数のセパレータ6の夫々の乾燥ガス供給口6Daが積層方向に延びる1つの空間となり、積層された複数のセパレータ6の夫々の乾燥ガス排出口6Dbが積層方向に延びる1つの空間となる。
【0029】
尚、図2には、夫々の空間に対して含水ガス供給口6Wa、含水ガス排出口6Wb、乾燥ガス供給口6Da、乾燥ガス排出口6Dbの夫々と共通する符号を付している。
【0030】
加圧体4は、積層された複数のセパレータ6のうち積層方向の下端部位置のものに対し下側に隣接して配置されている。この加圧体4には、図2に示すように、含水ガス供給口6Waに連通する含水ガス供給ポート4Waと、含水ガス排出口6Wbに連結する含水ガス排出ポート4Wbと、乾燥ガス供給口6Daに連通する乾燥ガス供給ポート4Daと、乾燥ガス排出口6Dbに連通する乾燥ガス排出ポート4Dbとが形成されている。
【0031】
尚、この加圧体4は、図2に示すように、乾燥ガス供給ポート4Daに対して供給路22から乾燥空気が供給され、含水ガス供給ポート4Waに対して含水ガス供給管路17から含水空気が供給される。
【0032】
〔本体フレーム部と加圧ユニット〕
図1図2に示すように、前述した上部プレート1は平面視で多角形状に成形され、前述した下部ケース2は平面視で円形に成形されている。図5に示すように、加湿器Aは、上部プレート1の中央と、下部ケース2の中央とを結ぶセンターラインXと同軸芯でセンターロッド10を備えている。このセンターロッド10は、上部プレート1と、複数のセパレータ6と、複数の水交換膜7と、加圧体4と、下部ケース2とが積層された状態で上下に貫通するように備えられ、センターロッド10の上端部に抜け止めプレート10aが一体形成され、下端部が下部ケース2の底部に対してボルト11により固定されている。
【0033】
また、下部ケース2は、中央部にスプリング収容空間2aを形成し、この外部にリング状に形成されたシリンダ状空間2bが形成されている。
【0034】
加圧ユニットPは、スプリング収容空間2aに収容された圧縮コイル型のスプリング12(付勢部材の一例)と、シリンダ状空間2bに収容されたピストン13と、加圧体4と加圧流路24とを有している。また、ピストン13の外周と、シリンダ状空間2bとの間にシールリング14を備えている。
【0035】
ピストン13は、加圧体4を加湿ユニットHの方向に作動させる荷重を発生させるものであり、ピストン13の押圧面と、加圧体4の受圧面との間にゴムシート15を配置することでピストン13の作動による荷重を押圧面から加圧体4の受圧面の全面に等しく作用させ、複数のセパレータ6と水交換膜7とを全面に亘って良好に密着させている。
【0036】
加圧ユニットPは、下部ケース2のスプリング12とピストン13と有すると共に、加圧体4を有し、ピストン13に乾燥ガスを供給する加圧流路24を有している。
【0037】
加圧体4の乾燥ガス供給ポート4Daは、コンプレッサ21(ポンプの一例)からの乾燥ガスとしての空気を供給する供給路22が接続されており、この供給路22には電磁式の開閉バルブ23が介装されている。また、加圧流路24は、コンプレッサ21と開閉バルブ23との間の供給路22に分岐接続されており、この加圧流路24からの空気が下部ケース2の底面の供給プラグ25を介してシリンダ状空間2bに供給される。
【0038】
また、この加圧ユニットPでは、積層方向に沿う方向視において加圧体4に圧力を作用させるピストン13の面積が、積層方向に沿う方向視におけるセパレータ6の面積より大きい値に設定されている。これにより、乾燥ガス、あるいは、含水ガスがセパレータ6を離間させる方向に作用させる単位面積あたりの圧力より、ピストン13からセパレータ6に作用させる単位面積あたりの圧力が大きくなり、複数のセパレータ6の夫々を確実に密着させる。
【0039】
また、スプリング12の付勢力は、加湿ユニットHにガスが供給されない状態で、複数のセパレータ6が密着する状態を維持する値に設定している。
【0040】
図2に示すように、加湿器Aは、乾燥ガス排出ポート4Dbから加湿空気を排出し、この加湿空気が燃料電池Bのカソード側に供給される。また、燃料電池Bのカソード側から排出される反応後の空気(カソードオフガス)には多くの水蒸気が含まれる含水空気となるため、この含水空気は、加湿器Aの含水ガス供給ポート4Waに供給される。
【0041】
このように含水ガス供給ポート4Waから含水空気が加湿ユニットHに供給され、乾燥ガス供給ポート4Daから供給される乾燥空気が加湿される。
【0042】
〔加圧ユニットによる加圧作動〕
前述したように加圧ユニットPが構成されているため、燃料電池Bで発電を行うためにコンプレッサ21を作動させた場合には、加圧流路24に加圧された空気(乾燥空気)が供給されるため、空気の圧力で下部ケース2のピストン13を作動させ、このピストン13の作動により、加圧体4からの荷重で複数のセパレータ6を圧着させる。
【0043】
この空気の圧力による荷重は、コンプレッサ21を作動させてシリンダ状空間2bに乾燥空気が供給された場合にのみ作用し、コンプレッサ21を停止させてシリンダ状空間2bに乾燥空気が供給されないときには作用しないので、例えば、ばねを用いてセパレータ6を圧接させる構成と比較すると、ばねにより常時圧力が作用することでセパレータ6の一部を樹脂クリープ現象により塑性変形させることや、セパレータ6を湾曲させる等の不都合を招くことがない。
【0044】
また、燃料電池Bでの発電を一時的に停止するために開閉バルブ23を閉じた場合にも加圧流路24からの空気をピストン13に供給できるため、セパレータ6を圧接状態に維持でき、セパレータ6と水交換膜7とを全面に亘って密着させ、良好なシール性を維持できる。また、ピストン13で圧力を作用させる面積が、セパレータ6の面積より大きいため、常にセパレータ6と水交換膜7とを確実に密着させ、空気を無駄に漏出させることもない。
【0045】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0046】
(a)図6に示す加湿器Aは、上端の上部プレート1と、下端の下部ケース2とを上下に貫通するセンターロッド10をセンターラインXと同軸芯で備え、下部ケース2のシリンダ状空間2bにピストン13を上下方向に移動自在に収容し、ピストン13をシールするシールリング14を下部ケース2に備えている。また、センターロッド10の上端には、このセンターロッド10を上方に引き上げる付勢力を作用させる圧縮コイル型のスプリング12を備えている。
【0047】
この別実施形態(a)の加湿器Aは、ピストン13の上面に加圧体4を備えており、この加圧体4の上面と上部プレート1との間に加湿ユニットHが配置されている。また、加圧体4は、供給路22を介して外部から乾燥ガス(乾燥空気)を受け入れる乾燥ガス供給ポート4Daと、加湿されたガス(加湿空気)を排出する乾燥ガス排出ポート4Dbとを備えている。
【0048】
更に、この別実施形態(a)の加湿器Aでは、乾燥ガス供給口6Daに供給された乾燥ガスの一部をシリンダ状空間2bに供給する加圧流路24を備えている。
【0049】
図6には示していないが、この別実施形態(a)は、加湿ユニットHは実施形態と同様に一方の面に含水ガス流路6Wが形成され、他方の面に乾燥ガス流路6Dが形成された樹脂材で成る板状のセパレータ6と、セパレータ6が積層される状態で、隣接する含水ガス流路6W、及び、乾燥ガス流路6Dの境界に挟み込まれる水交換膜7とを有している。
【0050】
この別実施形態(a)の加湿器Aは、スプリング12と、ピストン13と、加圧体4とで成る加圧ユニットPを備えている。このような構成から、加圧体4に乾燥空気を供給することで、乾燥空気を加湿ユニットHに供給して加湿が行われ、加圧体4に供給された乾燥ガスの一部が、加圧流路24を介してシリンダ状空間2bに供給される。これによりピストン13が作動し、この作動による荷重が加圧体4を介して加湿ユニットHに圧力を作用させるため、セパレータ6と水交換膜7との良好な圧着を可能にしている。
【0051】
この別実施形態(a)でも、実施形態と同様に、常時圧力が作用することに起因してセパレータ6の一部を塑性変形させることや、セパレータ6を湾曲させる等の不都合を招くことがない。これにより、例えば、ばねを用いてセパレータ6を圧接させる構成と比較すると、セパレータ6と水交換膜7とを全面に亘って密着させ、良好なシール製を維持できる。
【0052】
(b)加圧ユニットPから加圧ガスが供給されない状態においても、加湿ユニットHの複数のセパレータ6を圧着させる付勢部材を、スプリング12に代えて、例えば、下部ケース2のシリンダ状空間2bの底壁となる部材に対して上向きに突出する突起で構成することが考えられる。これと同様に、上部プレート1の下面に下方に向けて突出し、弾性変形可能な突起を形成することも考えられる。このように構成することにより、加湿器Aを構成する部材の一部の形状を変更することによりスプリング12を用いずに付勢力を得ることが可能となる。
【0053】
(c)供給するガスは、専用のポンプで加圧流路24に供給することも可能である。また、加圧流路24に供給するガスは、乾燥ガスに限るものではなく、含水ガスを用いても良く、その他の任意のガスを用いることも可能である。
【0054】
(d)セパレータ6の形状は実施形態に示したものに限るものはなく、加圧体4に形成されるポートの配置も実施形態に示した位置に限らず、任意の位置に配置できる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、燃料電池に供給されるガスを加湿する加湿器に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
4 加圧体
6 セパレータ
6D 乾燥ガス流路
6W 含水ガス流路
7 水交換膜
12 スプリング(付勢部材:加圧ユニット)
13 ピストン(加圧ユニット)
21 コンプレッサ(ポンプ:乾燥ガス供給部)
22 供給路(乾燥ガス供給部)
23 開閉バルブ(乾燥ガス供給部)
24 加圧流路(加圧ユニット)
P 加圧ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6