(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】車両部品表示装置及び車両部品表示方法
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20231114BHJP
G06F 3/0484 20220101ALI20231114BHJP
【FI】
G06T19/00 600
G06F3/0484
(21)【出願番号】P 2020086959
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栢野 浩一
(72)【発明者】
【氏名】坂井 博
【審査官】鈴木 圭一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0251747(US,A1)
【文献】国際公開第2019/176007(WO,A1)
【文献】特開2012-043396(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0308751(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00
G06F 3/0484
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部により撮像された車両の撮像画像から所定の基準形状を取得する基準形状取得部と、
前記基準形状に対応する部品画像の三次元データを読み出し、ユーザが視認可能なディスプレイに前記車両と重畳させた状態で前記部品画像を表示させる重畳表示部と、
前記ディスプレイに前記部品画像と共に部品構成図を表示させる構成図表示部と、
前記部品構成図から部品が選択された際に、前記ディスプレイに表示させた前記部品画像における当該部品を強調表示させる表示変化部と、
を有
し、
前記ディスプレイは、ユーザが装着可能な端末に設けられており、
前記構成図表示部は、前記端末の位置及び方向に追従して前記部品構成図を表示させることで、ユーザの立ち位置に関係なく常時ユーザの視界に前記部品構成図を表示させる、車両部品表示装置。
【請求項2】
前記部品画像は、車両を構成する電子部品同士を接続する配線画像を含む画像であり、
前記表示変化部は、前記部品構成図から選択された配線と対応する前記配線画像を強調表示させる請求項1に記載の車両部品表示装置。
【請求項3】
前記表示変化部は、視線検知センサによって検知されたユーザの視線方向が部品画像に所定時間重なった場合に当該部品画像を強調表示させる請求項1又は2に記載の車両部品表示装置。
【請求項4】
前記重畳表示部は、前記車両の傾きに応じて前記部品画像を傾斜して表示させる請求項1~3の何れか1項に記載の車両部品表示装置。
【請求項5】
前記部品画像は、サイドドア及びバックドアを構成する部品を含んでおり、
前記重畳表示部は、前記サイドドア及び前記バックドアの開閉状態に追従して前記部品画像を表示させる請求項1~4の何れか1項に記載の車両部品表示装置。
【請求項6】
撮像部により撮像された車両の撮像画像から所定の基準形状を取得する基準形状取得ステップと、
前記基準形状に対応する部品画像の三次元データを読み出し、ユーザが視認可能なディスプレイに前記車両と重畳させた状態で前記部品画像を表示させる重畳表示ステップと、
前記ディスプレイに前記部品画像と共に部品構成図を表示させる構成図表示ステップと、
前記部品構成図から部品が選択された際に、前記ディスプレイに表示させた前記部品画像における当該部品を強調表示させる表示変化ステップと、
を有
し、
前記ディスプレイは、ユーザが装着可能な端末に設けられており、
前記構成図表示ステップでは、前記端末の位置及び方向に追従して前記部品構成図を表示させることで、ユーザの立ち位置に関係なく常時ユーザの視界に前記部品構成図を表示させる、車両部品表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両部品表示装置及び車両部品表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、眼鏡型のウェラブル端末が開示されており、このウェラブル端末は、端末の位置を検出する手段を備えている。そして、端末の位置に応じて作業マニュアルをスクリーンに表示することで作業者に対して作業マニュアルを視認させる構成となっている。一方、特許文献2には、リアルタイム画像と半透明静止画像とをモニタに重合して表示させ、リアルタイム画像が半透明静止画像に一致した状態でモニタが操作されると、半透明静止画像に換えてマニュアルをモニタに表示させる設備点検システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-049763号公報
【文献】特開2016-200855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動車等の車両は部品点数が多いため、点検及び修理等を実施する際に上記特許文献1及び特許文献2に記載の技術を用いた場合であっても、表示するマニュアルが多くなる。このため、部品の位置等を確認するのに時間を要することとなり、作業効率を向上させる観点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、車両の点検及び修理等の作業効率を向上させることができる車両部品表示装置及び車両部品表示方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両部品表示装置は、撮像部により撮像された車両の撮像画像から所定の基準形状を取得する基準形状取得部と、前記基準形状に対応する部品画像の三次元データを読み出し、ユーザが視認可能なディスプレイに前記車両と重畳させた状態で前記部品画像を表示させる重畳表示部と、前記ディスプレイに前記部品画像と共に部品構成図を表示させる構成図表示部と、前記部品構成図から部品が選択された際に、前記ディスプレイに表示させた前記部品画像における当該部品を強調表示させる表示変化部と、を有し、前記ディスプレイは、ユーザが装着可能な端末に設けられており、前記構成図表示部は、前記端末の位置及び方向に追従して前記部品構成図を表示させることで、ユーザの立ち位置に関係なく常時ユーザの視界に前記部品構成図を表示させる。
【0007】
請求項1に記載の車両部品表示装置では、基準形状取得部は、撮像部によって撮像された車両の撮像画像から所定の基準形状を取得する。また、重畳表示部は、基準形状に対応する部品画像の三次元データを読み出してユーザが視認可能なディスプレイに表示させる。このとき、重畳表示部は、車両と重畳させた状態で部品画像を表示させる。これにより、ユーザは、重畳表示された部品画像を通じて部品の位置を容易に把握することができる。
【0008】
ここで、ディスプレイには、部品画像とは別に構成図表示部によって部品構成図が表示される。そして、表示変化部は、部品構成図から部品が選択された際に、ディスプレイに表示させた部品画像における当該部品を強調表示させる。これにより、ディスプレイに表示されている部品構成図からユーザが任意の部品を選択するだけで、該当する部品画像を強調表示させることができる。この結果、部品を取り外すことなく、また、マニュアルを見ることなく任意の部品の位置及び構造を把握することができる。
さらに、ユーザが装着可能な端末のディスプレイに部品画像及び部品構成図を表示させる。ここで、構成図表示部は、端末の位置及び方向に追従して前記部品構成図を表示させる。これにより、部品構成図を空間上に固定して表示した場合と比較して、ユーザが部品構成図を見失うことを抑制することができる。また、ユーザの立ち位置に関係なく常時ユーザの視界に部品構成図を表示させることができる。なお、ここでいう「部品構成図」とは、システムダイアグラム及びコネクタのフェイスビューなどを広く含む概念である。
【0009】
請求項2に記載の車両部品表示装置は、請求項1において、前記部品画像は、車両を構成する電子部品同士を接続する配線画像を含む画像であり、前記表示変化部は、前記部品構成図から選択された配線と対応する前記配線画像を強調表示させる。
【0010】
請求項2に記載の車両部品表示装置では、表示変化部は、部品構成図から選択された配線と対応する配線画像をディスプレイ上で強調表示させる。ここで、車両の配線は他の部品に隠れていて見え難く、マニュアルの配線図を見ながら作業する必要がある。これに対して、本発明では、ディスプレイ上で任意の配線と重畳表示されている配線画像を強調表示させることで、マニュアルを見る必要なく配線の位置及び接続先等を容易に把握することができる。
【0011】
請求項3に記載の車両部品表示装置は、請求項1又は2において、前記表示変化部は、視線検知センサによって検知されたユーザの視線方向が部品画像に所定時間重なった場合に当該部品画像を強調表示させる。
【0013】
請求項4に記載の車両部品表示装置は、請求項1~3の何れか1項において、前記重畳表示部は、前記車両の傾きに応じて前記部品画像を傾斜して表示させる。
【0014】
請求項4に記載の車両部品表示装置では、車両の傾きに応じて部品画像が傾斜して表示されるため、車両と部品画像の位置及び向きがずれるのを抑制することができる。
【0015】
請求項5に記載の車両部品表示装置は、請求項1~4の何れか1項において、前記部品画像は、サイドドア及びバックドアを構成する部品を含んでおり、前記重畳表示部は、前記サイドドア及び前記バックドアの開閉状態に追従して前記部品画像を表示させる。
【0016】
請求項5に記載の車両部品表示装置では、ユーザがサイドドア及びバックドアを開いた状態で点検する場合であっても、部品画像を通じて部品の位置を把握することができる。
【0017】
請求項6に記載の車両部品表示方法は、撮像部により撮像された車両の撮像画像から所定の基準形状を取得する基準形状取得ステップと、前記基準形状に対応する部品画像の三次元データを読み出し、ユーザが視認可能なディスプレイに前記車両と重畳させた状態で前記部品画像を表示させる重畳表示ステップと、前記ディスプレイに前記部品画像と共に部品構成図を表示させる構成図表示ステップと、前記部品構成図から部品が選択された際に、前記ディスプレイに表示させた前記部品画像における当該部品を強調表示させる表示変化ステップと、を有し、前記ディスプレイは、ユーザが装着可能な端末に設けられており、前記構成図表示ステップでは、前記端末の位置及び方向に追従して前記部品構成図を表示させることで、ユーザの立ち位置に関係なく常時ユーザの視界に前記部品構成図を表示させる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明に係る車両部品表示装置及び車両部品表示方法によれば、車両の点検及び修理等の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る車両部品表示装置で部品画像を表示する前の状態における車両の概略正面図である。
【
図2】実施形態に係る車両部品表示装置によって部品画像が重畳表示された状態における車両の概略正面図である。
【
図3】
図2の状態からさらに部品構成図が表示された状態における車両の概略正面図である。
【
図4】
図3の状態で配線が選択された状態における車両の概略正面図である。
【
図5】実施形態に係る車両部品表示装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図6】実施形態に係る車両部品表示装置の機能構成を示すブロック図である
【
図7】実施形態に係る車両部品表示装置の部品表示処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施形態に係る車両部品表示装置10について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1には、車両部品表示装置10によって車両部品が表示される車両Vを正面から見た概略正面図が示されており、この車両Vは、車両本体12を備えている。
【0022】
図1では、車両本体12のフード60は開いており、パワーユニット室62が車両Vの外部から視認できる状態となっている。なお、説明の便宜上、パワーユニット室62の内部は簡略化して描かれている。
【0023】
パワーユニット室62には、車両Vの駆動源となるパワーユニット64の他に、電子部品P1、電子部品P2、電子部品P3及び電子部品P4を備えており、これらの電子部品間は図示しない配線により接続されている。
【0024】
図2には、車両部品表示装置10によって部品画像が車両Vに重畳表示された状態が示されている。本実施形態では、部品画像の一例として、電子部品P1、電子部品P2、電子部品P3及び電子部品P4の画像と、これらの電子部品を接続するワイヤハーネス等の配線画像が表示されている。そして、以下の説明において、電子部品の画像及び配線画像を含む画像を部品画像と称する。
【0025】
配線画像は、電子部品P1に一端部が接続され、電子部品P1から車両右側へ延出された配線画像VI1、電子部品P1と電子部品P2とを接続する配線画像VI2等を含んでいる。また、電子部品P2と左側ヘッドランプとを接続する配線画像VI3、電子部品P3に一端部が接続された配線画像VI4、及び電子部品P4から右側ヘッドランプへ向かって延出された配線画像VI5等がホログラムで表示されている。
【0026】
ここで、部品画像は、ユーザが頭部に装着可能な眼鏡型の端末である、図示しないスマートグラスのディスプレイに表示される。すなわち、ユーザがスマートグラスを装着した状態で車両Vを見ると、ディスプレイを通じて車両Vに重畳表示された部品画像を視認することができるように構成されている。また、配線画像VI1、配線画像VI2、配線画像VI3、配線画像VI4及び配線画像VI5は、それぞれ異なる色で表示されており、識別し易いように表示されている。そして、これらの部品画像は、車両Vの画像から所定の基準形状を認識した際に表示される。
【0027】
(車両部品表示装置10のハードウェア構成)
図5には、車両部品表示装置10のハードウェア構成のブロック図が図示されている。この
図5に示されるように、車両部品表示装置10は、CPU(Central Processing Unit)14、ROM(Read Only Memory)16、RAM(Random Access Memory)18、ストレージ20、通信インタフェース22及び入出力インタフェース24を含んで構成されている。各構成は、バス26を介して相互に通信可能に接続されている。また、CPU14はプロセッサの一例であり、RAM18はメモリの一例である。
【0028】
CPU14は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU14は、ROM16又はストレージ20からプログラムを読み出し、RAM18を作業領域としてプログラムを実行する。CPU14は、ROM16又はストレージ20に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0029】
ROM16は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM18は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ20は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。本実施形態では、ROM16には、部品表示処理を行うための部品表示等が格納されている。
【0030】
通信インタフェース22は、車両部品表示装置10が外部のサーバ等とコンピュータネットワークによって通信するためのインタフェースであり、例えば、5G、LTE、Wi-Fi(登録商標)、イーサネット(登録商標)等の規格が用いられる。
【0031】
入出力インタフェース24には、撮像部としてのカメラ28、スピーカ30、マイク32、ディスプレイ34及び視線検知センサ36が接続されており、これらはスマートグラスに搭載されている。スマートグラスとしては、複合現実(MR:Mixed Reality)を実現できる端末が用いられる。
【0032】
カメラ28は、スマートグラスの外部を撮像するために設けられた光学カメラであり、ヘッドトラッキング用に複数設けられている。スピーカ30は、ユーザへ音声で通知等を行うために設けられており、マイク32は、ユーザが発した音声を集音するために設けられている。このため、マイク32は、ユーザがスマートグラスを装着した状態でユーザの口元に近い位置に設けられていてもよい。
【0033】
ディスプレイ34は、ユーザがスマートグラスを装着した状態でユーザの目の前に位置しており、ユーザがディスプレイ34を通じて修理対象又は検査対象の車両Vを視認できるように構成されている。本実施形態では一例として、半透明の材質でディスプレイ34が形成されているため、ディスプレイ34に映像を表示させる前の状態でユーザがディスプレイ34を通じて外部の景色を視認できる構成となっているが、これに限定されない。例えば、不透明の材質でディスプレイを形成してもよい。この場合、カメラ28で撮影した映像をリアルタイムでディスプレイ34に表示させることで、ユーザが視線の先の景色を視認することができる。
【0034】
視線検知センサ36は、例えば、2台の赤外線カメラを含んで構成されており、ユーザの視線方向を検知するアイトラッキング用のセンサである。
【0035】
(車両部品表示装置10の機能構成)
車両部品表示装置10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。車両部品表示装置10が実現する機能構成について
図6を参照して説明する。
【0036】
図6に示されるように、車両部品表示装置10は、機能構成として、画像取得部40、基準形状取得部42、重畳表示部44、構成図表示部46、ジェスチャ検知部48、音声認識部52及び表示変化部54を含んで構成されている。各機能構成は、CPU14がROM16又はストレージ20に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0037】
画像取得部40は、カメラ28によって撮像された画像を取得する。具体的には、画像取得部40は、スマートグラスの前部に設けられたカメラ28によって撮像された画像を取得している。このため、画像取得部40が取得した画像は、ユーザが見ている方向の景色と同じものとなっている。
【0038】
基準形状取得部42は、カメラ28により撮像された車両Vの撮像画像から所定の基準形状を取得する。具体的には、車両Vにおいて部品画像を表示させる部位の外観形状が基準形状とされており、基準形状取得部42は、撮影された画像の中に基準形状があった場合に、基準形状を取得する。例えば、
図1に示されるパワーユニット室62の部品画像に対応する基準形状として、車両Vの正面の外観形状が設定されている。また、車両Vのサイドドアの部品画像に対応する基準形状として、図示しないサイドドアの外観形状が設定されている。さらに、車両Vのバックドアの部品画像に対応する基準形状として、図示しないバックドアの外観形状が設定されている。
【0039】
図6に示される重畳表示部44は、基準形状に対応する部品画像の三次元データを読み出し、スマートグラスのディスプレイ34に車両Vと重畳させた状態で部品画像を表示させる。本実施形では、部品画像の三次元データがストレージ20に格納されており、重畳表示部44がストレージ20から部品画像の三次元データを読み出す。そして、車両Vと重畳させた状態で電子部品P1、電子部品P2、電子部品P3及び電子部品P4の画像と、これらの電子部品を接続するワイヤハーネス類を表示させる。このため、スマートグラスのディスプレイ34を通じて車両Vを見た場合、
図2に示される画像が視認される。また、本実施形態の重畳表示部44は、車両Vの傾きに応じて部品画像を傾斜して表示させる。例えば、車両Vを支持している台が傾斜している場合には、この傾斜状態に合わせて部品画像が傾斜して表示される。
【0040】
さらに、重畳表示部44は、サイドドア及びバックドアの開閉状態に追従して部品画像を表示させるように構成されている。すなわち、サイドドア及びバックドア等の開閉可能な部位においては、開閉位置に合わせて部品画像が表示される。
【0041】
構成図表示部46は、ディスプレイ34に部品画像と共に部品構成図を表示させる。
図3には、スマートグラスのディスプレイ34を通じて車両Vを見た場合の画像が表示されており、ディスプレイ34には、部品画像とは別に部品構成図としてのシステムダイアグラムVI6が表示されている。ここで、システムダイアグラムVI6は、空間上に固定表示されており、ユーザの操作によって移動及び削除ができるようになっている。また、構成図表示部46は、複数のシステムダイアグラムVI6及び複数のコネクタのフェイスビューをディスプレイ34に表示できるように構成されている。
【0042】
ここで、本実施形態の構成図表示部46は、スマートグラスの位置及び方向に追従して部品構成図を表示させるように構成されている。このため、ユーザが移動した場合であっても、スマートグラスとシステムダイアグラムVI6との相対位置が変わらないようになっている。
【0043】
図6に示されるジェスチャ検知部48は、ユーザのハンドジェスチャを検知する。具体的には、ジェスチャ検知部48は、カメラ28で撮像されたユーザの手を認識し、手の動きが所定の動作であった場合に、動作に対応する出力を行う。例えば、ユーザの手で部品構成図の選択項目に触れた場合、ジェスチャ検知部48がユーザの手を検知して選択項目を実行する。
【0044】
図6に示される視線検知部50は、ユーザの視線を検知する。具体的には、視線検知部50は、視線検知センサ36によって取得されたユーザの視線から所定の動きを検知し、出力を行う。例えば、ユーザの視線をディスプレイ34上にカーソルとして表示させ、この視線を特定の選択項目に所定時間重ねた場合に、視線検知部50が検知して選択項目を実行する。
【0045】
音声認識部52は、ユーザが発話した内容を認識する。具体的には、音声認識部52は、マイク32によって集音されたユーザの音声から所定の言葉を認識し、この言葉に対応する出力を行う。ジェスチャ検知部48、視線検知部50及び音声認識部52は、ユーザの操作によってON、OFFを切替えられるように構成されている。
【0046】
表示変化部54は、部品構成図から部品が選択された際に、ディスプレイ34に表示させた部品画像における当該部品を強調表示させる。また、本実施形態の表示変化部54は、部品構成図から選択された配線と対応する配線画像を強調表示させる。本実施形態では、
図3の状態において、システムダイアグラムVI6からユーザが任意の配線を選択した場合、選択された配線と対応する配線画像が点滅する。例えば、ユーザがシステムダイアグラムVI6から配線画像VI1と対応する配線を選択した場合、
図4に示されるように、表示変化部54が配線画像VI1を点滅させる。このとき、表示変化部54は、システムダイアグラムVI6上の配線画像VI1と対応する配線も同様に点滅させる。
【0047】
(作用)
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0048】
(部品表示処理の一例)
図7は、車両部品表示装置10による部品表示処理の流れの一例を示すフローチャートである。この部品表示処理は、CPU14がROM16又はストレージ20からプログラムを読み出して、RAM18に展開して実行することによって実行される。なお、この部品表所処理は、ユーザがスマートグラスを装着した状態で部品画像の表示を行うプログラムを実行した際に行われる。
【0049】
CPU14は、ステップS102で画像を取得する。具体的には、CPU14は、画像取得部40の機能により、スマートグラスの前部に設けられたカメラ28によって撮像された画像を取得する。このため、ステップS102で取得された画像は、ユーザが見ている方向の景色を同様のものとなっている。
【0050】
CPU14は、ステップS104で基準形状が有るか否かについて判定する(基準形状取得ステップ)。具体的には、CPU14は、基準形状取得部42の機能により、取得した車両Vの画像に基準形状が含まれている場合は、基準形状が有ると判定してステップS106の処理へ移行する。また、CPU14は、取得した車両Vの画像に基準形状が含まれていない場合は、基準形状が無いと判定して部品表示処理を終了させる。
【0051】
CPU14は、ステップS106で部品画像を重畳表示させる(重畳表示ステップ)。具体的には、CPU14は、重畳表示部44の機能により、車両Vに対して、電子部品P1、電子部品P2、電子部品P3、電子部品P4、配線画像VI1、配線画像VI2、配線画像VI3、配線画像VI4及び配線画像VI5を重畳表示させる(
図2参照)。
【0052】
続いて、CPU14は、ステップS108でユーザから操作があったか否かについて判定する。ここで、スマートグラスのディスプレイ34には、構成図表示部46の機能により部品構成図であるシステムダイアグラムVI6が表示されているものとする(構成図表示ステップ)。
【0053】
ステップS108で、CPU14は、ジェスチャ検知部48、視線検知部50及び音声認識部52の機能により、ユーザから各種の方法で操作が行われた場合は、操作が認識されたと判定してステップS108の処理へ移行する。また、CPU14は、ステップS108でジェスチャ検知部48、視線検知部50及び音声認識部52から操作が検知されなかった場合は、操作が認識されなかったと判定して部品表示処理を終了させる。
【0054】
CPU14は、ステップS110で配線が選択されたか否かについて判断する。具体的には、CPU14は、ステップS108で認識された操作がシステムダイアグラムVI6上の配線を選択する操作であると判定した場合、ステップS112の処理へ移行する。また、CPU14は、ステップ108で認識された操作がシステムダイアグラムVI6上の配線を選択する操作以外の操作であると判定した場合、ステップS114の処理へ移行する。
【0055】
CPU14は、ステップS112で部品画像上及び部品構成図上で配線画像を点滅させる(表示変化ステップ)。具体的には、CPU14は、車両Vに重畳表示された配線画像のうち、ユーザが選択した配線画像を点滅させる(
図4参照)。また、システムダイアグラムVI6上でも同様の配線画像を点滅させる。そして、CPU14は、部品表示処理を終了させる。
【0056】
一方、CPU14は、ステップS114では、部品構成図の表示を変更する。すなわち、CPU14は、ステップS108で認識したユーザの操作に応じてシステムダイアグラムVI6の表示を変更する。例えば、ステップS108で認識された操作がシステムダイアグラムVI6を移動させる操作であった場合、ステップS114でシステムダイアグラムVI6を移動させる。そして、CPU14は、部品表示処理を終了させる。
【0057】
以上のように、本実施形態の車両部品表示装置10では、重畳表示部44によって車両Vと重畳させた状態で部品画像(電子部品P1、電子部品P2、電子部品P3、電子部品P4、配線画像VI1、配線画像VI2、配線画像VI3、配線画像VI4及び配線画像VI5)を重畳表示させる。これにより、ユーザは、重畳表示された部品画像を通じて部品の位置を容易に把握することができる。
【0058】
ここで、ディスプレイ34には、部品画像とは別に構成図表示部46によってシステムダイアグラムVI6が表示される。そして、表示変化部54は、システムダイアグラムVI6から部品が選択された際に、ディスプレイ34に表示させた配線画像を点滅させる。これにより、ユーザがディスプレイ34に表示されているシステムダイアグラムVI6から任意の配線を選択するだけで、該当する配線画像が点滅され、部品を取り外すことなく、配線の位置及び構造を把握することができる。このように、本発明に係る車両部品表示装置10によれば、車両Vの点検及び修理等の作業効率を向上させることができる。
【0059】
特に、車両Vの配線は他の部品に隠れていて見え難く、マニュアルの配線図を見ながら作業する必要がある。これに対して、ディスプレイ34上で任意の配線画像を強調表示させることで、マニュアルを見る必要なく配線の位置及び接続先等を容易に把握することができる。
【0060】
また、本実施形態では、ユーザが装着可能なスマートグラスのディスプレイ34に部品画像及びシステムダイアグラムVI6を表示させる。ここで、システムダイアグラムVI6は、スマートグラスの位置及び方向に追従してシステムダイアグラムVI6を表示させる。これにより、システムダイアグラムVI6を空間上に固定して表示した場合と比較して、ユーザがシステムダイアグラムVI6を見失うことを抑制することができる。また、ユーザの立ち位置に関係なく常時ユーザの視界にシステムダイアグラムVI6を表示させることができる。
【0061】
さらに、本実施形態では、車両Vの傾きに応じて部品画像が傾斜して表示されるため、車両Vと部品画像の位置及び向きがずれるのを抑制することができる。また、サイドドア及びバックドア等の配線を確認する際には、ユーザがサイドドア及びバックドアを開いた状態で点検した場合であっても、配線画像を通じて配線の位置を把握することができる。
【0062】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、車両部品表示装置10のハードウェア構成がスマートグラスに設けられているが、これに限定されず、ハードウェア構成の一部又は全部が外部のサーバに設けられていてもよい。この場合、スマートグラスに設けられた通信部によりサーバから配線画像及びシステムダイアグラム等を取得して表示させてもよい。また、スマートグラスに設けたカメラで撮像した画像を外部のサーバへ送信し、画像処理等をクラウド上で行ってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、部品画像及び部品構成図を表示させる端末としてスマートグラスを用いたが、これに限定されない。例えば、タブレットやスマートフォン等のディスプレイに部品画像及び部品構成図を表示させてもよい。ただし、部品画像及び部品構成図等を確認しながら作業を行う観点で、スマートグラス等のウェアラブル端末のディスプレイに部品構成図及び部品構成図を表示させるのが好ましい。
【0064】
さらに、上記実施形態では、選択された部品画像を強調表示させる場合に、部品画像を点滅させる構成としたが、これに限定されず、他の強調表示を採用してもよい。例えば、選択された部品画像のみをカラーで表示し、他の部品画像をモノクロで表示させる構成としてもよい。また、選択された部品画像のみ輝度及び彩度を高くすることで強調表示してもよい。
【0065】
さらにまた、上記実施形態でCPU14がソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した異常検出処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、異常検出処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【符号の説明】
【0066】
10 車両部品表示装置
34 ディスプレイ
42 基準形状取得部
44 重畳表示部
46 構成図表示部
54 表示変化部
V 車両
VI1 配線画像(部品画像)
VI2 配線画像(部品画像)
VI3 配線画像(部品画像)
VI4 配線画像(部品画像)
VI5 配線画像(部品画像)
VI6 システムダイアグラム(部品構成図)