(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】書籍用紙およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 15/02 20060101AFI20231114BHJP
D21H 11/00 20060101ALI20231114BHJP
D21H 17/69 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
D21H15/02
D21H11/00
D21H17/69
(21)【出願番号】P 2020103014
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿野山 恵多
(72)【発明者】
【氏名】大塚 真理子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 俊
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-094678(JP,A)
【文献】特開平04-281094(JP,A)
【文献】特開2010-133076(JP,A)
【文献】特開2001-316999(JP,A)
【文献】特開2003-336195(JP,A)
【文献】特開2010-285723(JP,A)
【文献】特開2017-192435(JP,A)
【文献】特開平10-245791(JP,A)
【文献】特開2010-084239(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00347153(EP,A2)
【文献】特開平02-099690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00-1/38
D21C 1/00-11/14
D21D 1/00-99/00
D21F 1/00-13/12
D21G 1/00-9/00
D21H 11/00-27/42
D21J 1/00-7/00
A47K 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
書籍用紙であって、
KES試験法により測定した縦横平均の表面粗さ(平均SMD)が、0.800μm以下であり、かつ、表裏面のSMDの差が0.070μm以下であり、
構成するパルプ成分の長さ加重平均繊維長が0.90mm以下であり、
坪量が50g/m
2以上90g/m
2以下であ
り、
前記書籍用紙が予め両性ポリマーにより処理した炭酸カルシウムを配合してなり、
前記書籍用紙が塗工層を有しない、
書籍用紙。
【請求項2】
前記書籍用紙が単層である、請求項1に記載の書籍用紙。
【請求項3】
前記書籍用紙を構成するパルプ成分の平均繊維幅が15.0μm以下である、請求項1または2に記載の書籍用紙。
【請求項4】
前記書籍用紙を構成するパルプ成分のルンケル比が0.9以下である、請求項1~3のいずれかに記載の書籍用紙。
【請求項5】
密度が0.650g/cm
3以上である、請求項1~4のいずれかに記載の書籍用紙。
【請求項6】
縦横平均の比引張強さが40.0N・m/g以上である、請求項1~5のいずれかに記載の書籍用紙。
【請求項7】
前記書籍用紙の固形分中の嵩高剤の配合量が0.1質量%以下である、請求項1~6のいずれかに記載の書籍用紙。
【請求項8】
原料パルプのカナダ標準ろ水度が380mL以上450mL以下である、請求項1~7のいずれかに記載の書籍用紙。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の書籍用紙の製造方法であって、両面脱水型抄紙機で抄紙する工程を有する、書籍用紙の製造方法。
【請求項10】
前記両面脱水型抄紙機における一次脱水時のプレス線圧が30kN/m以上90kN/m以下であり、二次脱水時のプレス線圧が70kN/m以上130kN/m以下である、請求項9に記載の書籍用紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書籍用紙およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
書籍用紙には、その用途から、しなやかであり、ページのめくりやすさまたは良好な手触り感が求められる。
特許文献1には、十分な紙の強度を有し、しなやかであり、ページのめくりやすさ、手触り感に優れた書籍用紙を提供することを目的として、用紙坪量に対して1質量%~5質量%の含有量となるよう水溶性金属塩を塗布してなり、用紙の横目方向のクラーク剛直度が35cm3/100~55cm3/100の範囲であることを特徴とする書籍用紙が開示されている。
また、特許文献2には、高白色度であり、かつ極めて低密度、柔軟(剛度が低い)で、しかも印刷適性に優れ、ブリード(印刷滲み)が発生しない嵩高中質印刷用紙を提供することを目的として、リファイナーグランドウッドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、アルカリ過酸化水素メカニカルパルプまたはアルカリ過酸化水素サーモメカニカルパルプから選ばれる1種類以上の広葉樹機械パルプと、嵩高剤とを少なくとも含有してなる紙料を、抄紙して得られる原紙の表面に澱粉系紙力剤を塗工してなる、密度が0.35~0.50g/cm3であることを特徴とする嵩高中質印刷用紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-133561号公報
【文献】特開2005-163253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された書籍用紙では、水溶性金属塩を塗布することにより柔軟性を付与しており、製造工程上、経済合理性に欠けるという問題があった。また、特許文献2に記載の発明では、嵩高剤を含有するものであり、同様に、製造工程上、経済合理性に欠けるという問題があった。さらに、特許文献1および2では、塗工した面の手触り感は向上するものの、裏面(非塗工面)の手触り感に劣るという問題があった。
本発明は、表裏のいずれにおいても手触り感に優れ、かつ、書籍用紙として使用性を満足する紙質強度を有する書籍用紙、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、書籍用紙のKES試験法により測定した平均SMDの値および表裏面のSMDの差を特定の値以下とし、かつ、構成するパルプの加重平均繊維長を特定の値以下とし、坪量を特定の範囲とすることにより、上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の<1>~<10>に関する。
<1> KES試験法により測定した縦横平均の表面粗さ(平均SMD)が、0.800μm以下であり、かつ、表裏面のSMDの差が0.070μm以下であり、構成するパルプ成分の長さ加重平均繊維長が0.90mm以下であり、坪量が50g/m2以上90g/m2以下である、書籍用紙。
<2> 前記書籍用紙が単層である、<1>に記載の書籍用紙。
<3> 前記書籍用紙を構成するパルプ成分の平均繊維幅が15.0μm以下である、<1>または<2>に記載の書籍用紙。
<4> 前記書籍用紙を構成するパルプ成分のルンケル比が0.9以下である、<1>~<3>のいずれかに記載の書籍用紙。
<5> 密度が0.650g/cm3以上である、<1>~<4>のいずれかに記載の書籍用紙。
<6> 縦横平均の比引張強さが40.0N・m/g以上である、<1>~<5>のいずれかに記載の書籍用紙。
<7> 前記書籍用紙の固形分中の嵩高剤の配合量が0.1質量%以下である、<1>~<6>のいずれかに記載の書籍用紙。
<8> 前記書籍用紙が予め両性ポリマーにより処理した炭酸カルシウムを配合してなる、<1>~<7>のいずれかに記載の書籍用紙。
<9> <1>~<8>のいずれかに記載の書籍用紙の製造方法であって、両面脱水型抄紙機で抄紙する工程を有する、書籍用紙の製造方法。
<10>前記両面脱水型抄紙機における一次脱水時のプレス線圧が30kN/m以上90kN/m以下であり、二次脱水時のプレス線圧が70kN/m以上130kN/m以下である、<9>に記載の書籍用紙の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、表裏のいずれにおいても手触り感に優れ、かつ、書籍用紙として使用性を満足する紙質強度を有する書籍用紙、およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[書籍用紙]
本発明の書籍用紙は、KES試験法により測定した縦横平均の表面粗さ(平均SMD)が、0.800μm以下であり、かつ、表裏面のSMDの差が0.070μm以下であり、構成するパルプ成分の長さ加重平均繊維長が0.90mm以下であり、坪量が50g/m2以上90g/m2以下である。
本発明の書籍用紙は、表裏いずれにおいても手触り感にすぐれ、かつ、書籍用紙として使用性を満足する紙質強度を有する。
上述の効果が得られる理由として、一部は以下のように考えられる。
KES試験法により測定した縦横平均の表面粗さ(平均SMD)を、0.800μm以下とし、かつ、表裏面のSMDの差を0.070μm以下とするとともに、構成するパルプ成分の長さ平均繊維長を0.90mm以下とすることにより、表裏面のいずれにおいても手触り感に優れる書籍用紙が得られたと考えられる。また、坪量を50g/m2以上90g/m2以下とすることにより、書籍用紙として必要な強度が得られたものと考えられる。
以下、本発明の書籍用紙について詳述する。
【0008】
<平均SMD>
本発明の書籍用紙は、KES試験法により測定した縦横平均の表面粗さ(平均SMD)が、0.800μm以下である。平均SMDは、手触り感に優れる書籍用紙とする観点から、好ましくは0.760μm以下、より好ましくは0.720μm以下、さらに好ましくは0.700μm以下、よりさらに好ましくは0.680μm以下である。
KES試験法により測定した縦横平均の表面粗さ(平均SMD)は、次のようにして測定するものである。縦方向(抄紙機の進行方向、以下、「MD方向」ともいう。)について測定する場合には、表面試験機KES-FB4(カトーテック株式会社製、KES-FBシステム)に試料を測定方向がMD方向と平行になるように、張力20gf/cmの張力でセットする。測定子は、測定幅5mmとなるようにした直径0.5mmのピアノ線で構成されており、測定子を通して試料表面に10gfの荷重が付与されている。サンプルを速度0.1cm/secでMD方向と平行な方向に水平に移動させ、測定距離3cmの間の試料の表面厚さの変動(μm)を測定する。その際、測定距離(測定子の移動距離)を横軸に、測定した表面厚さを縦軸にしたチャートを作成し、さらに表面厚さの平均値を求めて、各測定点における、表面厚さとその平均値との差の絶対値を算出する。この差の絶対値を横軸の測定距離で積分し(チャートにおいて、表面厚さの折れ線とその平均値の直線によって囲まれた部分の面積を求め)、さらにこの積分値を測定距離で割った値が表面粗さ(SMD)である。なお、書籍用紙から切り出した3サンプルについて、任意の3箇所で測定し、得られた測定結果(n=9)の相加平均値を表面粗さ(SMD)とする。測定方法の詳細は、公知文献、たとえば、近藤智吏;「紙の基本力学特性の測定とその風合いの計測」,機能紙研究会誌,No.28,p62-79(1989)等にも詳しく記述されている。
横方向(抄紙機の進行方向と直角な方向、以下、「CD方向」ともいう)について測定する場合には、同様に、表面試験機に試料をCD方法に平行になるようにセットし、CD方向と平行な方向に水平に移行させて、表面厚さの変動を測定する。
また、CD方向における表面(F面)の表面粗さ(CD-F-SMD)およびCD方向における裏面(W面)の表面粗さ(CD-W-SMD)を測定し、これらの相乗平均値を求めることで、横方向の表面粗さ(CD-SMD)とする。本発明において、「平均SMD」とは、縦方向の表面粗さ(MD-SMD)と横方向の表面粗さ(CD-SMD)との相乗平均値である。
【0009】
本発明において、表裏面のSMDの差は、0.070μm以下である。
表面のSMD(F-SMD)は、上述した表面(F面)の縦方向(MD方向)における表面粗さ(MD-F-SMD)と、表面(F面)の横方向(CD方向)における表面粗さ(CD-F-SMD)との相乗平均値とする。
同様に、裏面のSMD(W-SMD)は、上述した裏面(W面)の縦方向(MD方向)における表面粗さ(MD-W-SMD)と、裏面(W面)の横方向(CD方向)における表面粗さ(CD-W-SMD)との相乗平均値とする。
表裏面のSMDの差は、表面のSMD(F-SMD)と裏面のSMD(W-SMD)との差の絶対値である。
表裏面のSMDの差は、表裏面ともに手触り感に優れる書籍用紙とする観点から、好ましくは0.068μm以下、より好ましくは0.045μm以下、さらに好ましくは0.030μm以下である。下限は特に限定されない。
【0010】
<構成パルプの特性>
(長さ加重平均繊維長)
本発明の書籍用紙を構成するパルプ成分の長さ加重平均繊維長は、手触り感の観点から、0.90mm以下である。書籍用紙を構成するパルプ成分の長さ加重平均繊維長は、0.90mm以下であり、好ましくは0.85mm以下、さらに好ましくは0.80mm以下であり、そして、紙質強度を高める観点から、好ましくは0.60mm以上、より好ましくは0.65mm以上、さらに好ましくは0.70mm以上である。
構成するパルプ成分の長さ加重平均繊維長は、書籍用紙を離解して測定する。具体的には、実施例に記載の方法により測定される。
【0011】
(平均繊維幅)
本発明の書籍用紙を構成するパルプ成分の平均繊維幅は、手触り感の観点から、好ましくは15.0μm以下、より好ましくは14.5μm以下、さらに好ましくは14.2μm以下、よりさらに好ましくは13.9μm以下であり、そして、紙質強度の観点から、好ましくは12.0μm以上、より好ましくは12.5μm以上、さらに好ましくは13.0μm以上、よりさらに好ましくは13.5μm以上である。
構成するパルプの平均繊維幅は、書籍用紙を離解して測定する。具体的には、実施例に記載の方法により測定される。
【0012】
(ルンケル比)
本発明の書籍用紙を構成するパルプ成分のルンケル比は、手触り感および紙質強度の観点から、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.7以下であり、そして、手触り感の観点から、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.6以上である。
【0013】
<書籍用紙の特性>
本発明の書籍用紙の坪量は、手触り感および紙質強度の観点から、50g/m2以上90g/m2以下である。書籍用紙の坪量は、好ましくは55g/m2以上、より好ましくは60g/m2以上、さらに好ましくは63g/m2以上であり、そして、好ましくは86g/m2以下、より好ましくは82g/m2以下である。
書籍用紙の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
【0014】
本発明の書籍用紙の紙厚は、手触り感および紙質強度の観点から、好ましくは60μm以上、より好ましくは70μm以上、さらに好ましくは80μm以上であり、そして、好ましくは150μm以下、より好ましくは120μm以下、さらに好ましくは110μm以下である。
書籍用紙の厚みは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
【0015】
また、本発明の書籍用紙の密度は、手触り感および紙質強度の観点から、好ましくは0.650g/cm3以上であり、より好ましくは0.700g/cm3以上、さらに好ましくは0.750g/cm3以上であり、そして、好ましくは1.000g/cm3以下、より好ましくは0.900g/cm3以下、さらに好ましくは0.850g/cm3以下である。
【0016】
本発明の書籍用紙は、紙質強度の観点から、縦横平均の比引張強さが、好ましくは40.0N・m/g以上、より好ましくは41.5N・m/g以上、さらに好ましくは43.0N・m/g以上であり、そして、製造容易性および手触り感の観点から、好ましくは80.0N・m/g以下、より好ましくは70.0N・m/g以下、さらに好ましくは60.0N・m/g以下である。
比引張強さは、縦方向および横方向のそれぞれについてJIS P 8113:2006に準拠して測定し、縦方向の比引張強さと横方向の比引張強さの相乗平均を縦横平均の比引張強さとする。
【0017】
本発明の書籍用紙は、単層であることが好ましい。すなわち、単層抄きの紙であり、かつ、塗工層を有しないことが好ましい。
上記の態様とすることにより、表裏の表面粗さの差を少なくすることができ、表裏ともに手触り感に優れる書籍用紙を得ることができるため、好ましい。
さらに塗工層を有しないことにより、製造容易であり、経済性に優れる観点からも好ましい。
【0018】
<書籍用紙の原料>
(原料パルプ)
書籍用紙の原料パルプとしては、たとえば、木材パルプ、非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、晒しクラフトパルプ(BKP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえば、コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、特に限定されないが、たとえば、古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。原料パルプは、上記の1種を単独でも2種以上混合して用いてもよい。なお、原料パルプに、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の有機合成繊維、ポリノジック繊維等の再生繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の無機繊維を混用してもよく、好ましくは、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の有機合成繊維、ポリノジック繊維等の再生繊維を混用することである。
【0019】
これらの中でも、原料パルプとしては、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)が好ましく、広葉樹クラフトパルプがより好ましい。原料パルプが、広葉樹クラフトパルプのみであるか、広葉樹クラフトパルプと針葉樹クラフトパルプとを併用することがさらに好ましい。
また、広葉樹クラフトパルプ(LKP)としては、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)が好ましく、針葉樹クラフトパルプ(NKP)としては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)が好ましい。
【0020】
また、本発明の書籍用紙の原料パルプのカナダ標準ろ水度(CSF)は、手触り感および紙質強度の観点から、好ましくは300mL以上、より好ましくは350mL以上、さらに好ましくは380mL以上であり、そして、好ましくは600mL以下、より好ましくは500mL以下、さらに好ましくは450mL以下、よりさらに好ましくは420mL以下である。
カナダ標準ろ水度が上記範囲内となるように、叩解の程度を調整すればよい。
原料パルプのカナダ標準ろ水度(CSF)は、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定される。
【0021】
(任意成分)
原料パルプには、必要に応じて、たとえば、サイズ剤、アニオン性、カチオン性もしくは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、填料等の内添助剤、耐水化剤、染料、蛍光増白剤等の任意成分を添加してもよい。
サイズ剤としては、ロジンサイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)等の内添サイズ剤;スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体等の表面サイズ剤が挙げられる。
歩留向上剤としては、硫酸バンド、ポリアクリルアミド等が挙げられる。歩留向上剤は、原料パルプに添加されることが好ましい。
乾燥紙力増強剤としては、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
湿潤紙力増強剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン(PAE)、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。湿潤紙力増強剤は、紙基材全層の原料パルプに添加されることが好ましい。
填料としては、クレー、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の無機填料;アクリル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の有機填料が挙げられる。
【0022】
サイズ剤の配合量は、特に限定されないが、製造時の操業性に優れる観点から、原料パルプ100質量部(固形分換算)に対して、好ましくは2.5質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下であり、その下限は0質量%である。
【0023】
歩留向上剤の配合量は、特に限定されないが、原料パルプ100質量部(固形分換算)に対して、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下である。
【0024】
乾燥紙力増強剤の配合量は、特に限定されないが、原料パルプ100質量部(固形分換算)に対して、好ましくは2.5質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下であり、その下限は0質量%である。
また、湿潤紙力増強剤の配合量は、特に限定されないが、原料パルプ100質量部(固形分換算)に対して、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.7質量部以下である。
【0025】
本発明の書籍用紙は、嵩高剤の含有量が少ないことが、紙質強度の観点から好ましい。書籍用紙の固形分中の嵩高剤の配合量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは含有しないことである。
【0026】
本発明の書籍用紙は、填料として、予め両性ポリマーにより処理した炭酸カルシウムを含有することが好ましい。炭酸カルシウムを予め両性ポリマーにより処理することにより、炭酸カルシウムが凝集し、パルプ繊維同士の絡み合いの阻害が抑制され、その結果、紙質強度に優れた書籍用紙が得られる。
炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウム(粉砕炭酸カルシウム)、軽質炭酸カルシウム(沈降炭酸カルシウム)のいずれも用いることができる。また、クレー、タルク、シリカ、アルミノケイ酸塩、酸化チタン、酸化亜鉛、ホワイトカーボン、水酸化アルミ、ゼオライト等の炭酸カルシウム以外の填料や、有機填料を併用してもよい。
処理前の炭酸カルシウムの50%体積平均粒子径は、好ましくは10μm以下である。
【0027】
炭酸カルシウムを処理する両性ポリマーとしては、アクリルアミド系共重合体が好ましく、非イオン性モノマーと、カチオン性モノマーと、アニオン性モノマーとの共重合体が好ましい。
非イオン性モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミドが挙げられる。
カチオン性モノマーとしては、3級アミノ基、または4級アンモニウム塩類を有するビニルモノマーが挙げられる。3級アミノ基を有するビニルモノマーとしては、たとえばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、およびジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、およびジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類、前記3級アミノ基を有するビニルモノマーの塩酸塩、および硫酸塩等の無機酸塩類、並びに前記3級アミノ基を有するビニルモノマーのギ酸塩、および酢酸塩等の有機酸塩類が挙げられる
4級アンモニウム塩類を有するビニルモノマーとしては、前記3級アミノ基を有するビニルモノマーと4級化剤との反応によって得られるビニルモノマーが挙げられる。前記4級化剤としては、メチルクロライド、およびメチルブロマイド等のアルキルハライド、ベンジルクロライド、およびベンジルブロマイド等のアラルキルハライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、エピクロロヒドリン、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、並びにグリシジルトリアルキルアンモニウムクロライド等が挙げられる。これらの3級アミノ基、または4級アンモニウム塩類を有するビニルモノマーは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
アニオン性モノマーとしては、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和トリカルボン酸、不飽和テトラカルボン酸、不飽和スルホン酸、不飽和ホスホン酸およびそれらの塩類等が挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を併用して使用することができる。
不飽和モノカルボン酸およびそれらの塩類としては、アクリル酸、メタクリル酸、2-アクリルアミド-N-グリコール酸、およびそれらのナトリウム、カリウム塩等のアルカリ金属類またはアンモニウム塩等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸およびそれらの塩類の例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸およびそれらのナトリウム、カリウム塩等のアルカリ金属塩類またはアンモニウム塩等が挙げられる。
不飽和トリカルボン酸およびそれらの塩類の例としてはアコニット酸、3-ブテン-1,2,3-トリカルボン酸、4-ペンテン-1,2,4-トリカルボン酸およびそれらのナトリウム、カリウム塩等のアルカリ金属塩類またはアンモニウム塩等が挙げられる。
不飽和テトラカルボン酸およびそれらの塩類の例としては、1-ペンテン-1,1,4,4-テトラカルボン酸、4-ペンテン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、3-ヘキセン-1,1,6,6-テトラカルボン酸およびそれらのナトリウム、カリウム塩等のアルカリ金属塩類またはアンモニウム塩等が挙げられる。
不飽和スルホン酸の例としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸およびそれらのナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩等が挙げられる。
不飽和ホスホン酸の例としては、ビニルホスホン酸、α-フェニルビニルホスホン酸およびそれらのナトリウム、カリウム塩等のアルカリ金属塩類またはアンモニウム塩等が挙げられる。
上記のアニオン性ビニルモノマーの中でも紙質強度および経済性の点で不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、具体的には、アクリル酸、イタコン酸、2-アクリルアミド-N-グリコール酸、およびその塩類が特に好ましい。
【0029】
両性ポリマーは、イオン性モノマー(カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとの合計量)と、非イオン性モノマーとのモル比が、好ましくは5/95以上40/60以下、より好ましくは10/90以上25/75以下である。
また、同様の観点から、(カチオン性モノマーのモル数×カチオン性モノマー1分子中のカチオン性基の数)/(アニオン性モノマーのモル数×アニオン性モノマー1分子中のアニオン性基の数)の比は、好ましくは50/50以上90/10以下、より好ましくは50/50以上80/20以下である。
【0030】
両性ポリマーの重量平均分子量は、紙質強度の観点から、好ましくは200万以上、より好ましくは250万以上であり、そして、好ましくは700万以下、より好ましくは500万以下である。両性ポリマーの重量平均分子量は、GPC-MALS法により測定される。
【0031】
炭酸カルシウム100質量部に対する両性ポリマーの処理量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.4質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。
【0032】
炭酸カルシウムと両性ポリマーとを混合する方法として特に限定されないが、水を溶媒とした炭酸カルシウムのスラリーと、両性ポリマーの水溶液とを混合する方法が簡便である。混合方法については、均一に混合可能な公知の方法および装置が採用される。なお、剪断力が強すぎる場合には、未凝集の粒子が増加する傾向があるので、適宜調整することが好ましい。
【0033】
<書籍用紙の製造方法>
本発明の書籍用紙は、原料パルプを含有するパルプスラリーを抄紙および脱水する抄紙工程と、得られた湿紙を乾燥する乾燥工程とを含む方法により得られる。抄紙方法は、特に限定されず、たとえば、pHが4.5付近で抄紙を行う酸性抄紙法、pHが約6~約9で抄紙を行う中性抄紙法等が挙げられる。抄紙機についても、特に限定されず、たとえば、長網式、ツインワイヤー式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機、またはこれらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等が挙げられる。
【0034】
本発明において、表裏面ともに手触り感に優れる書籍用紙を得る観点から、抄紙工程は、両面脱水型抄紙機で抄紙する工程であることが好ましい。
このような観点から、抄紙機としては、ツインワイヤー式抄紙機が好ましく、特に、ギャップフォーマーおよびオントップフォーマーが好ましい。
また、表裏面ともに手触り感に優れる書籍用紙を得る観点から、多段階で脱水を行うことが好ましく、一次脱水時のプレス線圧は、好ましくは30kN/m以上、より好ましくは40kN/m以上、さらに好ましくは50kN/m以上であり、そして、好ましくは90kN/m以下、より好ましくは80kN/m以下、さらに好ましくは70kN/m以下である。
また、同様の観点から、二次脱水時のプレス線圧は、好ましくは70kN/m以上、より好ましくは80kN/m以上、さらに好ましくは90kN/m以上であり、そして、好ましくは130kN/m以下、より好ましくは120kN/m以下、さらに好ましくは110kN/m以下である。
また、乾燥方法についても、特に限定されず、公知の乾燥装置を用いることができる。
また、乾燥後に、カレンダー処理を行い、所望の平滑度となるように調整することが好ましい。
【0035】
また、抄紙工程中に、品質を損なわない範囲で下記の添加剤を含浸させてもよい。
添加剤としては、PVA、デンプン、バインダー、顔料、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、着色剤等が挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。以下の説明において、「部」、「%」は、特に断りのない限り、それぞれ「質量部」「質量%」を意味する。
【0037】
<炭酸カルシウムの事前処理>
10質量部の軽質炭酸カルシウムと0.05質量部の両性ポリマー(アクリルアミド系共重合化合物、粘度:4000~10000mPa・s(15%、25℃)、電荷:0.27meq/g、星光PMC株式会社製)を事前混合した。
【0038】
<実施例1>
原料パルプとして、CSF400mLの広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を使用した。パルプ100質量部(絶乾質量)に対して0.5質量部の硫酸バンド(硫酸アルミニウム18水和物)と、1.2質量部のカチオン化澱粉(ピラースターチ株式会社製、商品名:P-3Y)を添加した後、0.14質量部のアルケニル無水コハク酸を添加し、パルプ濃度が0.5質量%になるように希釈し、パルプスラリーを調製した。
上記パルプスラリーに、事前処理した炭酸カルシウムを、パルプ100質量部(絶乾質量)に対して10.05質量部添加した。さらに、パルプ100質量部(絶乾質量)に対して0.01質量部の歩留向上剤(ハイモ株式会社製、商品名:ND-300)を添加して、抄紙用パルプスラリーを調製した。
上記抄紙用パルプスラリーを、両面脱水型抄紙機にて抄紙することにより、書籍用紙を得た。この時の一次脱水時のプレス線圧を60kN/mとし、二次脱水時のプレス線圧を100kN/mとして、脱水を行った。
得られた書籍用紙について、各種測定、評価を行った、結果を表1および2に示す。
【0039】
<実施例2>
坪量を表2に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして書籍用紙を製造した。
【0040】
<実施例3>
原料パルプとして、パルプ100質量部(絶乾質量)に対して広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を80質量部と針葉樹クラフパルプ(NBKP)を20質量部の混合原料CSF400mLを使用した。
パルプ100質量部(絶乾質量)に対して0.5質量部の硫酸バンド(硫酸アルミニウム18水和物)と、1.0質量部のカチオン化澱粉(ピラースターチ社製、P-3Y)を添加した後、0.10質量部のアルケニル無水コハク酸を添加し、パルプ濃度が0.5質量%になるように希釈し、パルプスラリーを調製した。
上記パルプスラリーに、事前処理した炭酸カルシウムを、パルプ100質量部(絶乾質量)に対して10.5質量部添加した。さらに、パルプ100質量部(絶乾質量)に対して0.01質量部の歩留向上剤(ハイモ株式会社製、商品名:ND-300)を添加して、抄紙用パルプスラリーを調製した。
上記抄紙用パルプスラリーを、両面脱水型抄紙機にて抄紙した。この時の一次脱水時のプレス線圧を60kN/mとし、二次脱水時のプレス線圧を100kN/mとして、脱水を行った。
【0041】
<比較例1>
原料パルプとして、CSF450mLの広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を使用したこと、および片面脱水型抄紙機にて抄紙したこと以外は、実施例1と同様にして書籍用紙を得た。
【0042】
<比較例2>
原料パルプとして、CSF370mLの広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を使用したこと、および片面脱水型抄紙機にて抄紙したこと以外は、実施例1と同様にして書籍用紙を得た。
【0043】
<比較例3>
パルプ100質量部(絶乾質量)に対して、嵩高剤(荒川化学工業株式会社製、サイズパイン DL-FA20)を0.4質量部添加し、片面脱水型抄紙機にて抄紙したこと以外は、実施例1と同様にして書籍用紙を得た。
【0044】
<比較例4>
事前処理した炭酸カルシウム10.5質量部の代わりに、未処理の炭酸カルシウム10質量部を添加した以外は実施例1と同様にして書籍用紙をえた。
【0045】
[測定および評価]
実施例および比較例で得られた書籍用紙について、以下の評価を行った。
<坪量、紙厚、および密度>
書籍用紙の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定した。
また、書籍用紙の厚みは、JIS P 8118:2014に準拠して測定した。
書籍用紙の密度は、JIS P 8118:2014に準拠し、上述した方法で測定された書籍用紙の坪量および厚さから算出した。
【0046】
<SMD>
得られた書籍用紙から、20cm×20cmの試料を得た。
縦方向(MD方向)について測定する場合には、表面試験機KES-FB4(カトーテック株式会社製、KES-FBシステム)に試料を測定方向がMD方向と平行になるように、張力20gf/cmの張力でセットした。測定子は、測定幅5mmとなるようにした直径0.5mmのピアノ線で構成されており、測定子を通して試料表面に10gfの荷重を付与した。サンプルを速度0.1cm/secでMD方向と平行な方向に水平に移動させ、測定距離3cmの間の試料の表面厚さの変動(μm)を測定した。その際、測定距離(測定子の移動距離)を横軸に、測定した表面厚さを縦軸にしたチャートを作成し、さらに表面厚さの平均値を求めて、各測定点における、表面厚さとその平均値との差の絶対値を算出した。この差の絶対値を横軸の測定距離で積分し(チャートにおいて、表面厚さの折れ線とその平均値の直線によって囲まれた部分の面積を求め)、さらにこの積分値を測定距離で割った値が表面粗さ(SMD)とした。なお、1試料当たり、任意の3箇所で測定を行い、3試料から得られた合計9つの測定結果の相加平均値を(SMD)とした。
CD方向について測定する場合には、同様に、表面試験機に試料をCD方法に平行になるようにセットし、CD方向と平行な方向に水平に移行させて、表面厚さの変動を測定した。
【0047】
<比引張強さ>
比引張強さは、JIS P 8113:2006に準拠して測定した。
縦方向および横方向のそれぞれについて、10回ずつ測定し、比引張強さを測定し、縦方向と横方向のそれぞれの相加平均値を算出後、縦横のそれぞれの相加平均値から相乗平均値を算出し、縦横平均の比引張強さとした。
【0048】
<長さ加重繊維長、繊維幅およびルンケル比>
得られた書籍用紙をJIS P 8220:2012に従い離解し、得られたパルプ繊維分散スラリーの繊維長を、繊維長測定装置カヤーニファイバーラボVer4.0(メッツォオートメーション社製)を用いて測定した。
なお、長さ加重平均繊維長は投影長さを示しており、平均繊維幅は投影幅を示している。
また、上記繊維長測定装置を用いて、繊維壁厚(μm)、ルーメン径(μm)を測定し、ルンケル比を下記式に従った算出した。
ルンケル比=繊維壁厚×2/ルーメン径
【0049】
<手触り感>
書籍用紙の手触り感については、下記の評価基準で評価を行った。
実施例および比較例で得た書籍用紙について、銘柄を隠した状態で官能評価を実施した。50人に書籍用紙を触ってもらい、肌に当てたときの手触りを4段階で評価を行った。最も多い評価を、当該書籍用紙の評価とした。評価人数が同じであった場合には、最も高い評価を採用した。表2に示した記号の意味を示す。
A:特に優れる
B:優れる
C:やや劣る
D:劣る
【0050】
【0051】
【0052】
表1および表2によれば、平均SMD、表裏面のSMDの差、構成するパルプの加重平均繊維長、および坪量が本発明の範囲を満たす実施例1~3では、表裏面ともに手触り感に優れ、かつ、書籍用紙として十分な紙質強度を有する書籍用紙が得られた。
一方、表裏面のSMDの差が0.070μmを超える比較例1、2、3および4では、十分な紙質強度を得られなかったり、手触り感に劣るものであった。特に、平均SMDが0.800μmを超え、かつ、表裏面のSMDの差が0.070μmを超える比較例2では、手触り感に劣るものであった。