(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】空調用レジスタ
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20231114BHJP
F24F 13/065 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B60H1/34 611Z
B60H1/34 631
F24F13/065
(21)【出願番号】P 2020145215
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 廣人
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 仁士
(72)【発明者】
【氏名】谷川 達也
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-043172(JP,A)
【文献】特開平10-272918(JP,A)
【文献】特開平11-007332(JP,A)
【文献】特開2016-159721(JP,A)
【文献】特開2016-097692(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0231022(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
F24F 13/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リテーナ内の空調用空気の通風路に傾動可能に配置された可動フィンと、
前記可動フィンから離れた箇所において、少なくとも回転可能に設けられた操作ノブと、
前記操作ノブの回転を前記可動フィンに伝達して同可動フィンを傾動させる伝達機構とを備える空調用レジスタであって、
前記伝達機構における力の伝達経路の途中には荷重発生機構が設けられ、
前記荷重発生機構は、受圧部、押圧部材及びばねを備え、
前記受圧部は受圧面を有しており、
前記押圧部材は、前記操作ノブの回転に伴い前記受圧部に対し回転し、
前記ばねは、前記押圧部材を前記受圧面に接近させる側へ付勢して前記受圧面に押付けることにより、前記押圧部材と前記受圧部との間に荷重を発生させるもので
あり、
前記受圧部は、前記通風路の中心軸線に沿って延びる筒状をなし、かつ円筒状の内壁面を有しており、
前記受圧部は、自身の前記内壁面に前記受圧面を有しており、
前記受圧部の内部には、前記中心軸線に沿って延び、かつ前記操作ノブの回転が伝達されて回転することにより、前記可動フィンを傾動させるダンパドライブが配置され、
前記ダンパドライブは、同ダンパドライブの径方向へ延びる収容部を有し、
前記収容部は、前記径方向における両端部に、開放されて前記受圧面に対向する開放端をそれぞれ有し、
前記押圧部材及び前記ばねは前記収容部内に配置されており、
前記押圧部材は、前記径方向における前記収容部の両方の端部に配置され、前記ばねは前記収容部内の両押圧部材間に配置されており、
前記押圧部材及び前記受圧部は、それぞれ硬質の樹脂材料により形成され、前記押圧部材は前記受圧面に対し直接接触して前記荷重を発生する空調用レジスタ。
【請求項2】
前記ばねはコイルばねにより構成され、
前記押圧部材は、前記ばねの端部に隣接した箇所に配置される押圧本体部と、前記押圧本体部から前記径方向へ延び、かつ前記ばねの端部に挿入される挿入部とを備えている請求項
1に記載の空調用レジスタ。
【請求項3】
前記可動フィンは、前記空調用空気の流れ方向における前記荷重発生機構よりも上流に配置されたシャットダンパを備え、
前記シャットダンパは、前記伝達機構から伝達される力により、ダンパ軸を支点として、互いに反対方向に傾動されて、前記通風路を開放及び閉鎖する一対のダンパプレートを備えている請求項
1又は2に記載の空調用レジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置から送られてくる空調用空気を通風路の吹出口から吹き出す空調用レジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のインストルメントパネルには、空調装置から送られてくる空調用空気を、リテーナにおける通風路の吹出口から吹き出す空調用レジスタが組み込まれている。この空調用レジスタの一形態として、
図14に示すように、可動フィン202、操作ノブ203及び伝達機構204を備えるものが、例えば、特許文献1に記載されている。可動フィン202は、通風路201に傾動可能に配置される。操作ノブ203は、可動フィン202から離れた箇所において、少なくとも回転可能に設けられる。伝達機構204は、操作ノブ203の回転を可動フィン202に伝達して同可動フィン202を傾動させる。
【0003】
上記空調用レジスタ200では、伝達機構204における力の伝達経路の途中に荷重発生機構205が設けられる。荷重発生機構205は、受圧面206を有する受圧部207と、受圧面206に対し接近及び離間する方向へ移動可能に設けられた押圧部材208と、押圧部材208を受圧面206に接近する側へ付勢して同受圧面206に押付けて荷重を発生させるばね209とを備える。押圧部材208及び受圧部207において、互いに摺動する部位は、弾性体210によって形成される。弾性体210は、ゴム状の弾性を有する材料、例えば、エラストマ、シリコーンゴム等の軟質材料によって形成される。そして、押圧部材208を介してばね209によって付勢された弾性体210が、受圧面206又は押圧部材208に対し押圧される。この押圧により、弾性体210と受圧面206との間、又は弾性体210と押圧部材208との間に、摩擦による荷重が発生する。この荷重により、操作ノブ203を回転する際の操作荷重が付与される。また、可動フィン202を傾動させる際の傾動負荷(トルク)が付与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1に記載された空調用レジスタ200では、弾性体210の弾性が気温の影響を受けやすい。例えば、寒冷地では、非寒冷地よりも弾性体210が硬くなる。これに伴い、寒冷地では非寒冷地に比べ、操作ノブ203を回転する際の操作荷重が大きくなり、操作フィーリングが低下する。同様の現象は、同じ地域でも起り得る。冬期には夏期よりも弾性体210が硬くなるからである。
【0006】
上記とは逆に、夏期には、冬期よりも弾性体210が柔らかくなる。これに伴い、夏期には冬期に比べ、可動フィン202の傾動負荷(トルク)が小さくなる。この傾動負荷(トルク)が適正値よりも小さくなると、通風路201を流れる空調用空気A1によって可動フィン202が傾動されてしまい、操作ノブ203の操作によって設定した傾動角度に可動フィン202を保持することが困難となる。例えば、中間の傾動角度で静止していた可動フィン202が傾動してしまう懸念がある。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、荷重発生機構で発生する荷重を安定させることのできる空調用レジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する空調用レジスタは、リテーナ内の空調用空気の通風路に傾動可能に配置された可動フィンと、前記可動フィンから離れた箇所において、少なくとも回転可能に設けられた操作ノブと、前記操作ノブの回転を前記可動フィンに伝達して同可動フィンを傾動させる伝達機構とを備える空調用レジスタであって、前記伝達機構における力の伝達経路の途中には荷重発生機構が設けられ、前記荷重発生機構は、受圧部、押圧部材及びばねを備え、前記受圧部は受圧面を有しており、前記押圧部材は、前記操作ノブの回転に伴い前記受圧部に対し回転し、前記ばねは、前記押圧部材を前記受圧面に接近させる側へ付勢して前記受圧面に押付けることにより、前記押圧部材と前記受圧部との間に荷重を発生させるものであり、前記押圧部材及び前記受圧部は、それぞれ硬質の樹脂材料により形成され、前記押圧部材は前記受圧面に対し直接接触して前記荷重を発生する。
【0009】
上記の構成によれば、荷重発生機構では、ばねによって付勢された押圧部材が、受圧部の受圧面に押付けられる。押圧部材と受圧面との間には、摩擦による荷重が発生する。
リテーナに供給された空調用空気は、可動フィンを傾動させようとする。この際、空調用空気から可動フィンに対し加えられる力が上記摩擦に打ち勝たないと、可動フィンは傾動されず、そのときの傾動角度に保持される。操作ノブに対し、これを回転させようとする力が加えられ、その力が、上記摩擦に打ち勝たない場合も上記と同様である。操作ノブは回転されない。
【0010】
操作ノブに対し、これを回転させようとする力が加えられ、その力が、上記摩擦に打ち勝つと、操作ノブが回転するとともに、押圧部材が受圧面に対し押付けられた状態で受圧部に対し回転する。また、上記操作ノブの回転は伝達機構を介して可動フィンに伝達され、同可動フィンが傾動させられる。
【0011】
ここで、上記の構成によれば、押圧部材及び受圧部が、それぞれ硬質の樹脂材料により形成され、押圧部材が受圧面に対し直接接触している。押圧部材及び受圧部は、それらの間に弾性体が介在された場合に比べ、気温の影響を受けにくい。そのため、空調用レジスタが、気温の異なる時期に使用されても、また、気温の異なる地域で使用されても、荷重発生機構で発生する荷重が安定する。
【0012】
上記空調用レジスタにおいて、前記受圧部は、前記通風路の中心軸線に沿って延びる筒状をなし、かつ円筒状の内壁面を有しており、前記受圧部は、自身の前記内壁面に前記受圧面を有しており、前記受圧部の内部には、前記中心軸線に沿って延び、かつ前記操作ノブの回転が伝達されて回転することにより、前記可動フィンを傾動させるダンパドライブが配置され、前記ダンパドライブは、同ダンパドライブの径方向へ延びる収容部を有し、前記収容部は、前記径方向における少なくとも一方の端部に、開放されて前記受圧面に対向する開放端を有し、前記押圧部材及び前記ばねは前記収容部内に配置されていることが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、操作ノブが回転されると、その回転はダンパドライブに伝達される。ダンパドライブは、受圧部の内部で回転する。このダンパドライブの回転が可動フィンに伝達されて、同可動フィンが傾動される。
【0014】
ダンパドライブの収容部内では、押圧部材がばねによりダンパドライブの径方向であって、受圧面に接近する側へ付勢される。付勢された押圧部材の一部は、収容部の開放端から押し出されて、受圧部の受圧面に押付けられる。押圧部材と受圧面との間に、摩擦による荷重が発生する。
【0015】
上記空調用レジスタにおいて、前記収容部は、前記径方向における両端部に前記開放端をそれぞれ有し、前記押圧部材は、前記収容部内に1つ配置され、前記ばねは、前記押圧部材を付勢して、同押圧部材の一部を前記収容部の一方の開放端から露出させて前記受圧面に押付けることが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、1つの押圧部材がばねによって、ダンパドライブの径方向における一方へ付勢される。押圧部材の一部が、収容部の一方の開放端から露出して、受圧面に押付けられる。円筒状の受圧面の1箇所において、摩擦による荷重が発生する。
【0017】
なお、収容部内に押圧部材及びばねを収容した状態で、これらを受圧部に組込む場合には、1つの押圧部材を収容部内に押し込むだけですむため、組み込み作業がしやすい。
上記空調用レジスタにおいて、前記収容部は、前記径方向における両端部に前記開放端をそれぞれ有し、前記押圧部材は、前記径方向における前記収容部の両方の端部に配置され、前記ばねは前記収容部内の両押圧部材間に配置されていることが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、収容部内に配置された2つの押圧部材がばねによって互いに遠ざかる側へ付勢される。各押圧部材の一部が収容部の開放端から露出して、受圧面に押付けられる。円筒状の受圧面であって、ダンパドライブを挟んで上記径方向に互いに反対側に位置する2箇所において、摩擦による荷重がそれぞれ発生する。
【0019】
上記空調用レジスタにおいて、前記ばねはコイルばねにより構成され、前記押圧部材は、前記ばねの端部に隣接した箇所に配置される押圧本体部と、前記押圧本体部から前記径方向へ延び、かつ前記ばねの端部に挿入される挿入部とを備えていることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、押圧部材における挿入部が、ばねの端部に挿入されることにより、押圧部材がばねに装着される。上記押圧部材の押圧本体部は、ばねによって付勢されて、受圧部の受圧面に押付けられる。
【0021】
上記空調用レジスタにおいて、前記可動フィンは、前記空調用空気の流れ方向における前記荷重発生機構よりも上流に配置されたシャットダンパを備え、前記シャットダンパは、前記伝達機構から伝達される力により、ダンパ軸を支点として、互いに反対方向に傾動されて、前記通風路を開放及び閉鎖する一対のダンパプレートを備えていることが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、操作ノブが回転されると、その回転が伝達機構を介してシャットダンパ(可動フィン)における一対のダンパプレートのそれぞれに伝達される。各ダンパプレートは、ダンパ軸を支点としてそれぞれ反対方向へ傾動されて、通風路を開放及び閉鎖する。
【0023】
荷重発生機構では、ばねによって受圧面に接近する側へ付勢された押圧部材が、受圧部の受圧面に押付けられ、押圧部材と受圧面との間に、摩擦による荷重が発生する。
【発明の効果】
【0024】
上記空調用レジスタによれば、荷重発生機構で発生する荷重を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一実施形態における空調用レジスタの斜視図。
【
図5】
図1の空調用レジスタにおける一部の構成部材の分解斜視図。
【
図6】
図1の空調用レジスタにおける一部の構成部材の分解斜視図。
【
図7】
図1の空調用レジスタにおける一部の構成部材の分解斜視図。
【
図8】一実施形態の荷重発生機構における一部の構成部材の分解斜視図。
【
図13】
図11に対応する図であり、荷重発生機構の変形例を示す断面図。
【
図14】従来の空調用レジスタの内部構造を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、車両用の空調用レジスタに具体化した一実施形態について、
図1~
図12を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の進行方向(前進方向)を前方とし、後進方向を後方とし、高さ方向を上下方向として説明する。また、車幅方向(左右方向)については、車両を後方から見た場合を基準として方向を規定する。
【0027】
車室内において、車両の前席(運転席及び助手席)の前方にはインストルメントパネルが設けられ、その左右方向における中央部、側部等には空調用レジスタが組み込まれている。この空調用レジスタの主な機能は、空調装置から送られてきて、吹出口から車室内に吹き出す空調用空気の向きを変更すること、同空調用空気の吹出し量を調整すること等である。吹出し量の調整には、吹き出しを遮断することが含まれる。
【0028】
図1、
図3及び
図4に示すように、空調用レジスタ10は、リテーナ11、バレル41、シャットダンパ60、操作ノブ81、伝達機構85及び荷重発生機構100を備えている。次に、空調用レジスタ10の各部の構成について説明する。
【0029】
<リテーナ11>
図3、
図4及び
図6に示すように、リテーナ11は、空調装置の送風ダクト(図示略)と、インストルメントパネルに設けられた開口(図示略)とを繋ぐためのものである。リテーナ11の内部空間は、空調用空気A1の通風路12を構成している。ここで、空調用空気A1の流れ方向に関し、空調装置に近い側を「上流」、「上流側」等といい、同空調装置から遠い側を「下流」、「下流側」等というものとする。
【0030】
リテーナ11は、上流リテーナ構成部13、下流リテーナ構成部25及びベゼル34を備えている。上流リテーナ構成部13は、リテーナ11の上流部を構成する部材であり、外筒部14、ダンパベース16、支持部21(
図10参照)を備えている。
【0031】
外筒部14は、上記流れ方向に延び、かつ両端が開放された円筒状をなしている。外筒部14は、上流端に空調用空気A1の流入口15を有している。外筒部14の上流端部は、上記送風ダクトの下流端部内に挿入された状態で配置される。外筒部14の上流端部の外周には、スポンジ等の弾性材料からなる環状のシール22が配置される。シール22は、送風ダクトの下流端部と上流リテーナ構成部13の上流端部との間をシールする。
【0032】
ダンパベース16は、上記流れ方向に延び、かつ両端が開放された円筒状をなしている。ダンパベース16は、上記外筒部14よりも小径をなしている。ダンパベース16は、外筒部14内の中心部に配置され、通風路12の中心軸線CL1に沿って延びている。ダンパベース16は円筒状の内壁面17を有している。ダンパベース16は、上記流れ方向については、上流リテーナ構成部13と下流リテーナ構成部25とに跨がって配置されている。
【0033】
支持部21は、ダンパベース16の周方向における複数箇所から径方向における外方へ放射状に延びて、外筒部14に繋がっている。ダンパベース16は、これらの支持部21によって外筒部14に支持されている。
【0034】
ダンパベース16内の下流部には、一対のシム18が取付けられている(
図2参照)。両シム18は、後述する外シャフト部55の外軸支部57を傾動可能に支持する軸受の機能を有している(
図9参照)。
【0035】
ダンパベース16の上流端部の外周面には、径方向のうち互いに反対方向、本実施形態では左右方向に突出する一対の軸部19が形成されている(
図9参照)。
ダンパベース16を含めて上流リテーナ構成部13の全体は、硬質の樹脂材料によって形成されている。本実施形態では、この樹脂材料としてアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS)が用いられているが、これ以外の硬質の樹脂材料が用いられてもよい。
【0036】
図3~
図5に示すように、下流リテーナ構成部25は、リテーナ11の下流部を構成する部材である。下流リテーナ構成部25は、上記流れ方向に延び、かつ両端が開放された円筒状をなしており、上記上流リテーナ構成部13の下流側に隣接した箇所に配置されている。下流リテーナ構成部25は、下流端部に空調用空気A1の吹出口27を有している。下流リテーナ構成部25は、爪嵌合等の連結手段(図示略)によって上流リテーナ構成部13に連結されている。
【0037】
上記リテーナ11は、機能面からは、一般通路部31及びバレル作動部32を備えている。一般通路部31は円筒状をなしており、上流リテーナ構成部13の上流部によって構成されている。バレル作動部32は、一般通路部31の下流側に隣接している。バレル作動部32は、上流リテーナ構成部13の下流部と、下流リテーナ構成部25の下流端部を除く多くの部分とによって構成されている。バレル作動部32の内壁面33は、リテーナ11の周方向における全周にわたり、径方向における外方へ膨らむ断面円弧状に形成されている。
【0038】
ベゼル34は、バレル作動部32の下流端部の周囲に形成されており、円環状をなしている。ベゼル34の周方向に互いに離れた複数箇所には、係止孔を有する係止部36がそれぞれ形成されている。下流リテーナ構成部25の外周面であって、周方向に互いに離れた複数箇所には、係止突起28が形成されている。そして、各係止突起28が、対応する係止部36の係止孔に係止されることにより、ベゼル34が下流リテーナ構成部25に連結されている。ベゼル34の下流側の端面であって、吹出口27の周りの部分は、空調用レジスタ10の意匠面37を構成している。
【0039】
<バレル41>
バレル41は、外バレル部42、中間バレル部45、内バレル部46及び複数の支持フィン部47を備えている。外バレル部42、中間バレル部45及び内バレル部46は、それぞれ上記流れ方向へ延び、かつ両端が開放された円筒状をなしている。外バレル部42、中間バレル部45及び内バレル部46は、この順に直径が小さくなるように形成されており、同心円上に配置されている。外バレル部42は、径方向における外方へ膨らむように湾曲している。
【0040】
複数の支持フィン部47は、中間バレル部45の周方向における複数箇所に設けられている。各支持フィン部47は、中間バレル部45の径方向における内方及び外方の両方へ延びている。上記径方向における各支持フィン部47の外端部は外バレル部42に接続されている。同径方向における各支持フィン部47の内端部は、内バレル部46に接続されている。
【0041】
上記外バレル部42、中間バレル部45、内バレル部46及び各支持フィン部47は、傾動されることにより、空調用空気A1の流れ方向を変える機能を有している。
図3、
図4及び
図9に示すように、バレル41は、上記内バレル部46において、上記ダンパベース16に対し傾動可能に支持されている。この支持のために、シャフト48が内バレル部46に対し挿通された状態で取付けられている。シャフト48は、内シャフト部49と、内シャフト部49の外側に被せられた外シャフト部55とを備えている。外シャフト部55は、上記流れ方向へ延び、かつ両端が開放された筒状をなしている。外シャフト部55は、下流端部に板状の取付部56を有している。外シャフト部55は、内バレル部46に対し上流側から挿入されており、取付部56が、上記流れ方向における内バレル部46の中間部に位置している。
【0042】
外シャフト部55の上流部には、径方向における外方へ膨らむように湾曲した外軸支部57が形成されている。外軸支部57の外面は球面状をなしている。外軸支部57は、上記一対のシム18により、ダンパベース16の下流部に対し傾動可能に支持されている。
【0043】
図2、
図3及び
図7に示すように、内シャフト部49の下流部は、外シャフト部55から下流側へ突出している。内シャフト部49の上流部には内軸支部51が形成されている。内軸支部51は、外シャフト部55の上記外軸支部57に対し内側から嵌合し得る形状、より詳しくは、径方向における外方へ膨らむように湾曲した形状をなしている。内軸支部51の径方向に相対向する箇所には、一対の係合溝部52が形成されている。各係合溝部52は、内軸支部51の上流端面から中心部の近くまで延びている。
【0044】
<シャットダンパ60>
図3、
図4及び
図7に示すように、シャットダンパ60は、特許請求の範囲における可動フィンに相当する部材である。シャットダンパ60は、上記流れ方向については、荷重発生機構100よりも上流であって、リテーナ11内のダンパベース16の上流部となる箇所に配置されている。シャットダンパ60は、上側のダンパプレート61と下側のダンパプレート71とを備えている。各ダンパプレート61,71は略半円形の板状をなしている。各ダンパプレート61,71の周囲であって、外筒部14の内壁面に接触する箇所には、同ダンパプレート61,71の他の箇所よりも薄くて、可撓性を有するシール部61a,71aが形成されている。
【0045】
図4及び
図7に示すように、上側のダンパプレート61の左端部には、外軸支持部62が形成されている。外軸支持部62の左端部には、左方へ突出する外ダンパ軸63が形成され、右端部には凹部64が形成されている。下側のダンパプレート71の右端部には、外軸支持部72が形成されている。外軸支持部72の右端部には、右方へ突出する外ダンパ軸73が形成され、左端部には凹部74が形成されている。
【0046】
上側のダンパプレート61において、上記外軸支持部72に対し左側に隣接する箇所には、内軸支持部65が形成されている。内軸支持部65の右端部には、右方へ突出する内ダンパ軸66が形成され、左端部には凹部67が形成されている。下側のダンパプレート71において、上記外軸支持部62に対し右側に隣接する箇所には、内軸支持部75が形成されている。内軸支持部75の左端部には、左方へ突出する内ダンパ軸76が形成され、右端部には凹部77が形成されている。
【0047】
そして、内ダンパ軸66が凹部74に係合され、かつ内ダンパ軸76が凹部64に係合されることにより、両ダンパプレート61,71が相互に傾動可能に連結され、シャットダンパ60が構成されている。
【0048】
両外ダンパ軸63,73は、外筒部14の左側部及び右側部のそれぞれに設けられた軸受部78に係合されている。これらの係合により、シャットダンパ60はリテーナ11に対し傾動可能に支持されている。上記外ダンパ軸63,73及び内ダンパ軸66,76によって、特許請求の範囲におけるダンパ軸が構成されている。
【0049】
また、シャットダンパ60の両凹部67,77には、ダンパベース16の対応する軸部19が係合されている(
図9参照)。これらの係合により、シャットダンパ60はダンパベース16に対し傾動可能に支持されている。
【0050】
各ダンパプレート61,71は、自身の外ダンパ軸63,73及び内ダンパ軸66,76を支点として、
図3において実線で示す全開位置と、同
図3において二点鎖線で示す全閉位置との間で、互いに反対方向へ傾動可能である。各ダンパプレート61,71は、図示はしないが、全開位置と全閉位置との間の中間位置で静止することも可能である。
【0051】
なお、上記とは逆に、内ダンパ軸66,76が外軸支持部62,72に設けられ、凹部64,74が内軸支持部65,75に設けられ、内ダンパ軸66,76が凹部64,74に係合されることにより、両ダンパプレート61,71が相互に傾動可能に連結されてもよい。
【0052】
また、上記とは逆に、外筒部14に外ダンパ軸63,73が設けられ、外軸支持部62,72に軸受部が設けられ、シャットダンパ60が軸受部及び外ダンパ軸63,73により外筒部14に傾動可能に支持されてもよい。
【0053】
<操作ノブ81>
図1、
図3及び
図4に示すように、操作ノブ81は、バレル41を傾動させるとともにシャットダンパ60を傾動させる際に乗員によって操作される部材である。操作ノブ81は、ノブ本体82及びキャップ83を備えている。ノブ本体82は、上記内バレル部46に対し下流側から回転可能に装着されている。ノブ本体82の多くの部分は、上記内バレル部46よりも下流側に配置されている。ノブ本体82は、上記内シャフト部49の下流部に対し、一体回転可能に取付けられている。キャップ83は、ノブ本体82に対し下流側から一体回転可能に装着されている。
【0054】
<伝達機構85>
図3、
図4及び
図7に示すように、伝達機構85は、操作ノブ81の回転をシャットダンパ60に伝達して傾動させるための機構である。伝達機構85は、上記シャフト48、ダンパドライブ86及び一対のアーム部95,96を備えている。ダンパドライブ86は、通風路12の中心軸線CL1に沿って延びるように、ダンパベース16の内部に配置されている。
【0055】
図3、
図7及び
図9に示すように、ダンパドライブ86は、回転支持部87と、同回転支持部87よりも上流側に形成されたカム部88とを備えている。上記流れ方向における回転支持部87の中間部の外周面には、全周にわたってフランジ部89(
図12参照)が形成されている。フランジ部89は上記両シム18に対し上流側から接触している。
【0056】
図2、
図7及び
図9に示すように、回転支持部87のうちフランジ部89よりも下流側の部分は、両シム18間に挿通されている。回転支持部87の下流端部には球状部91が形成されている。この球状部91は、上記内軸支部51に対し内側から係合されている。そのため、シャフト48は、内軸支部51及び外軸支部57を支点として球状部91に対し傾動可能である。
【0057】
球状部91の外周面には、径方向であって互いに反対方向へ突出する一対の伝達ピン92が形成されている。両伝達ピン92は、上記内軸支部51の対応する係合溝部52に係合されている。そのため、シャフト48の回転を、係合溝部52及び伝達ピン92を介してダンパドライブ86に伝達可能である。
【0058】
図3、
図7及び
図9に示すように、上記回転支持部87は、径方向へ延びる収容部93を、上記フランジ部89の上流側に隣接する箇所に有している。収容部93は、径方向における両端部に開放端94をそれぞれ有している。
【0059】
一方のアーム部95は上側のダンパプレート61に設けられ、他方のアーム部96は下側のダンパプレート71に設けられている。アーム部95は、ダンパプレート61において、左右方向における中間部分から下流側へ延びている。このアーム部95は、球面を有する摺動端部95aを下流端部に備えている。アーム部96は、ダンパプレート71において、左右方向における中間部分から下流側へ延びている。このアーム部96は、球面を有する摺動端部96aを下流端部に備えている。
【0060】
カム部88は、カム溝88aを外面に有している。本実施形態では、カム溝88aは、カム部88の外面において全周にわたって形成されており、無端状をなしている。そして、摺動端部95a,96aが、上記カム溝88aに対し摺動可能に係合されている。なお、カム溝88aは無端状をなしていなくてもよい。摺動端部95aが係合するカム溝88aと、摺動端部96aが係合するカム溝88aとが別々に形成されてもよい。
【0061】
<荷重発生機構100>
図8、
図9及び
図11に示すように、荷重発生機構100は、上記伝達機構85における力の伝達経路の途中に設けられている。荷重発生機構100は、受圧面102を有する受圧部101、一対の押圧部材103及びばね106を備えている。
【0062】
受圧部101は、上記ダンパベース16の一部によって構成されていて、回転不能である。受圧面102は、ダンパベース16の円筒状の内壁面17の一部によって構成されている。各押圧部材103は、ばね106の端部に隣接した箇所に配置され、かつばね106によって受圧面102に圧接される押圧本体部104を備えている。また、各押圧部材103は、各押圧本体部104からダンパドライブ86の径方向、表現を変えると、他方の押圧部材103側へ延びる挿入部105を備えている。
【0063】
各押圧部材103は、硬質の樹脂材料によって形成されている。本実施形態では、この樹脂材料としてポリアセタール(POM)が用いられているが、これとは異なる硬質の樹脂材料が用いられてもよい。
【0064】
各押圧部材103は、受圧面102に対し接近及び離間する方向へ移動可能に設けられている。また、各押圧部材103は、上記操作ノブ81の回転に伴いダンパドライブ86と一緒に回転するように構成されている。本実施形態では、押圧部材103が2つ用いられている。これらの押圧部材103は、上記径方向における収容部93の両方の端部に配置されている。
【0065】
ばね106は、コイルばねによって構成されている。ばね106は、収容部93内の両押圧本体部104間に圧縮された状態で配置されている。ばね106の両端部には、各押圧部材103における挿入部105が挿入されている。ばね106は、各押圧部材103を受圧面102に接近する側(径方向における外方)へ付勢して、同押圧本体部104を同受圧面102に押付ける。押圧部材103毎の押圧本体部104は受圧面102に対し直接接触して、荷重を発生する。
【0066】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
図3における二点鎖線は、両ダンパプレート61,71がともに全閉位置にあるときの状態を示している。この状態では、上側のダンパプレート61は、上流側ほど高くなるように傾斜した状態となり、シール部61aにおいて外筒部14の内壁面の上部に接触する。下側のダンパプレート71は、上流側ほど低くなるように傾斜した状態となり、シール部71aにおいて外筒部14の内壁面の下部に接触する。両ダンパプレート61,71は、外ダンパ軸63,73及び内ダンパ軸66,76を支点として屈曲した状態となる。通風路12は、両ダンパプレート61,71によって閉鎖される。通風路12の両ダンパプレート61,71よりも下流では空調用空気A1の流通が遮断され、吹出口27からの空調用空気A1の吹き出しが停止される。
【0067】
これに対し、
図3における実線は、両ダンパプレート61,71がともに全開位置にあるときの状態を示している。この状態では、ダンパプレート61,71がともに中心軸線CL1に対し略平行な状態となる。両ダンパプレート61,71が上下方向に重なり合った状態となり、通風路12が大きく開放される。空調用空気A1は、ダンパプレート61の上側とダンパプレート71の下側とに分かれて流れる。両ダンパプレート61,71を通過した空調用空気A1の一部は、バレル41における外バレル部42、中間バレル部45、内バレル部46、支持フィン部47等に沿って流れた後、吹出口27から吹き出す。
【0068】
また、図示はしないが、両ダンパプレート61,71は、全閉位置と全開位置との中間の傾動角度に保持可能である。この場合、空調用空気A1の一部は、ダンパプレート61,71と外筒部14の内壁面との間を通って、同ダンパプレート61,71よりも下流側へ流れる。空調用空気A1は、上記と同様に、バレル41の各部に沿って流れた後に、吹出口27から吹き出す。
【0069】
図9及び
図11に示すように、荷重発生機構100では、ばね106によって径方向における外方(受圧面102に接近する側)へ付勢された各押圧部材103が、受圧部101の受圧面102に押付けられる。各押圧部材103と受圧面102との間には、摩擦による荷重が発生する。
【0070】
リテーナ11に供給された空調用空気A1は、両ダンパプレート61,71を傾動させようとする。この際、空調用空気A1から両ダンパプレート61,71に対し加えられる力が上記摩擦に打ち勝たないと、同ダンパプレート61,71は傾動されず、そのときの傾動角度に保持される。操作ノブ81に対し、これを回転させようとする力が加えられ、その力が、上記摩擦に打ち勝たない場合も上記同様である。操作ノブ81は回転されない。
【0071】
シャットダンパ60の傾動角度の変更は、
図3及び
図4に示すように、操作ノブ81の回転操作を通じて行なわれる。この変更には、全閉位置から全開位置への切替え、及び全開位置から全閉位置への切替えも含まれる。
【0072】
操作ノブ81に対し回転させようとする力が加えられ、その力が、上記摩擦に打ち勝つと、操作ノブ81が回転するとともに、押圧部材103が受圧面102に対し押付けられた状態で回転(摺動)する。この回転時には、押圧部材103と受圧面102との間に発生する荷重により、操作ノブ81に操作荷重が付与される。
【0073】
また、上記操作ノブ81の回転は、伝達機構85を介してダンパプレート61,71に伝達され、これらが傾動させられる。より詳しくは、ノブ本体82の回転は、シャフト48(外シャフト部55、内シャフト部49)を介してダンパドライブ86に伝達される。内シャフト部49とダンパドライブ86との間では、回転の伝達は、係合溝部52及び伝達ピン92を介して行なわれる。ダンパドライブ86がカム部88を伴ってダンパベース16内で回転する。
【0074】
カム部88の回転に伴い、アーム部95,96における摺動端部95a,96aのカム溝88aに係合する位置がそれぞれ変化する。係合位置の変化に伴い、各ダンパプレート61,71がダンパ軸、すなわち、両外ダンパ軸63,73及び両内ダンパ軸66,76を支点として、互いに反対方向へそれぞれ傾動させられる。操作ノブ81と両ダンパプレート61,71とでは、回転方向及び傾動方向が互いに異なるが、上記のように伝達機構85を経ることで、操作ノブ81の回転の方向が変更されて各ダンパプレート61,71に伝達されて、同ダンパプレート61,71がそれぞれ傾動される。これらの傾動により、通風路12の開度が変化する。通風路12においてシャットダンパ60を通過する空調用空気A1の量を調整することができる。これらの傾動時には、押圧部材103と受圧面102との間に発生する荷重により、ダンパプレート61,71に傾動負荷(トルク)が付与される。
【0075】
ここで、本実施形態では、押圧部材103及び受圧部101が、それぞれ硬質の樹脂材料により形成され、押圧部材103が受圧面102に対し直接接触している。押圧部材103及び受圧部101は、それらの間に弾性体が介在された場合(特許文献1がこれに該当する)に比べ、気温の影響を受けにくい。そのため、空調用レジスタ10が、気温の異なる時期に使用されても、また、気温の異なる地域で使用されても、荷重発生機構100で発生する荷重が安定する。その結果、操作ノブ81を回転させるときの上記操作荷重が安定し、操作フィーリングが向上する。また、傾動負荷(トルク)が適正値よりも小さくなることが起こりにくい。通風路12を流れる空調用空気A1によってダンパプレート61,71が、操作ノブ81の操作によって設定した傾動角度とは異なる傾動角度に傾動されるのを抑制することができる。
【0076】
なお、操作ノブ81に対し、上下方向、左右方向、さらには斜め上方や斜め下方へ向かう力が加えられると、その動きが内バレル部46を介してバレル41の他の箇所に伝達されるとともにシャフト48に伝達される。
図3及び
図4においてそれぞれ二点鎖線で示すように、バレル41が、シャフト48の内軸支部51において係合したダンパドライブ86の球状部91を支点として、操作ノブ81の操作された側へ傾動する。
【0077】
操作ノブ81及びバレル41の各部は、中心軸線CL1に対し傾斜した状態となる。空調用空気A1は、上記のように傾斜したバレル41の各部に沿って流れることで、向きを変えられて吹出口27から吹き出す。
【0078】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・本実施形態では、
図8及び
図9に示すように、収容部93内に配置された2つの押圧部材103がばね106によって互いに遠ざかる側へ付勢される。各押圧部材103が収容部93の開放端94から露出して、受圧面102に押付けられる。
【0079】
そのため、円筒状の受圧面102であって、ダンパドライブ86を挟んで上記径方向に互いに反対側に位置する2箇所において、摩擦による荷重をそれぞれ発生させることができる。
【0080】
・操作ノブ81の回転に応じて荷重を発生させるために、金属板をプレス加工することによって形成された押圧部材をばねの両端に装着することが考えられる。この場合、プレス加工では、金属板を複雑な形状に加工することが難しい。そのため、押圧部材は上記押圧本体部のみからなり、その押圧本体部がキャップ状に加工される。この金属製の押圧部材をばねの端部に装着するためには、押圧部材の周壁部の複数箇所に対し、径方向における内方へ向かう力を加えて、同箇所を変形させてばねに係止させる工程、いわゆるかしめ工程が必要となる。
【0081】
しかし、かしめ工程に手間がかかり、その分、荷重発生機構の製造コストが高くなる。しかも、押圧部材の周壁部の複数箇所をそれぞれ均等にかしめる加工が難しい。また、押圧部材の周壁部のうち、かしめた各箇所とばねとの間の隙間が、箇所間でばらつく。このばらつきが原因で、押圧部材と受圧面との間に発生する荷重のばらつきが大きくなるおそれもある。
【0082】
この点、本実施形態では、各押圧部材103が樹脂材料によって形成されている。この押圧部材103の樹脂化により製造コストを低減することができる。
また、各押圧部材103を樹脂成形する場合には、上記のようにプレス加工する場合よりも複雑な形状であっても成形が可能である。押圧本体部104及び挿入部105をプレス加工によって形成することは難しいが、樹脂成形であれば成形可能である。従って、荷重発生機構100の製造コストをさらに下げることが可能である。
【0083】
また、本実施形態では、押圧部材103を、受圧面102に押し当てて荷重を発生させる押圧本体部104と、ばね106の端部に係止するための挿入部105とによって構成している。そのため、ばね106の端部に挿入部105を差し込むだけで、押圧部材103をばね106に装着することができる。
【0084】
本実施形態では、ばね106の端部に挿入部105を差し込んだいるだけで、かしめていない。そのため、かしめによる上記問題が解消される。すなわち、押圧本体部104と受圧面102との間に発生する荷重のばらつきを小さくすることができる。
【0085】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0086】
<荷重発生機構100について>
・
図13に示すように、押圧部材103は、収容部93内に1つのみ配置されてもよい。この場合、ばね106は、押圧部材103を付勢して、押圧本体部104の一部を収容部93の一方(
図13では右方)の開放端94から露出させて受圧面102に押付ける。受圧面102と押圧部材103との間で、摩擦による荷重が発生する。ばね106の押圧部材103とは反対側の端部は、収容部93の他方(
図13では左方)の開放端94から露出して、受圧面102に接触する。
【0087】
ところで、押圧部材103を2つ用いた上記実施形態では、荷重発生機構100の製造に際し、ばね106の弾性力に抗し、両押圧部材103を互いに近づく側へ押して収容部93内に没入させ、この状態で、ダンパドライブ86をダンパベース16に挿入する必要がある。
【0088】
これに対し、押圧部材103を1つのみ用いた上記変形例では、1つの押圧部材103を収容部93内に押し込むだけですむため、組み込み作業の向上を図ることができる。
・上記実施形態及び
図13の変形例とは異なり、収容部93は、必ずしもダンパドライブ86の回転支持部87を径方向に貫通しなくてもよい。この場合、収容部93は一方の端部においてのみ開放端94を有する。収容部93は他方の端部に底部を有する。収容部93毎に1つの押圧部材103が配置される。そして、収容部93の底部と押圧部材103との間にばね106が配置される。この変形例では、ばね106によって付勢された押圧部材103の一部が開放端94から露出して受圧面102に接触する。押圧部材103と受圧面102との接触部分には、摩擦による荷重が発生する。
【0089】
なお、上記一方の端部に開放端94を有し、かつ他方の端部に底部を有する収容部93は、回転支持部87の複数箇所に設けられ、収容部93毎に押圧部材103及びばね106が配置されてもよい。収容部93が複数設けられる場合、収容部93は回転支持部87の軸線から放射状に延びるように設けられてもよい。
【0090】
<操作ノブ81について>
・操作ノブ81は、少なくとも回転可能に設けられればよい。従って、操作ノブ81は、球状部91を支点として傾動せずに、回転のみするものであってもよい。
【0091】
・操作ノブ81の回転が伝達機構85を介して可動フィンに伝達されることを条件に、同操作ノブ81がリテーナの内部に代えて外部に配置されてもよい。
<バレル41について>
・バレル41として、少なくとも外バレル部42が円筒状とは異なる筒状、例えば四角筒状をなすものが用いられてもよい。
【0092】
・バレル41として、バレル軸によりリテーナに傾動可能に支持されるものが用いられてもよい。
<その他>
・上記空調用レジスタは、シャットダンパ60が1枚のダンパプレートによって構成され、そのダンパプレートが軸によりリテーナに傾動可能に支持されるタイプの空調用レジスタにも適用可能である。
【0093】
・上記空調用レジスタは、空調用空気A1の流れ方向を変更する可動フィンを有し、操作ノブ81の回転を上記可動フィンに伝達して傾動させるタイプの空調用レジスタにも適用可能である。
【0094】
対象となる空調用レジスタとしては、例えば、クロスフィンタイプの空調用レジスタが挙げられる。このタイプの空調用レジスタでは、空調用空気の流れ方向を変更する部材として、空調用空気の流れ方向に対し交差する方向へ延びる板状の上流フィンと、上記流れ方向に対し交差し、かつ上流フィンの延びる方向とは異なる方向へ延びる板状の下流フィンとを備える。例えば、上流フィンは左右方向(車幅)方向へ延び、下流フィンは上下方向へ延びる。上流フィンは、同上流フィンの延びる方向における両端部に設けられた上流フィン軸を支点として傾動する。下流フィンは、同下流フィンの延びる方向における両端部に設けられた下流フィン軸を支点として傾動する。上流フィン及び下流フィンのそれぞれの傾動により、空調用空気の流れ方向が変更される。
【0095】
こうした構成のクロスフィンタイプの空調用レジスタに、上記実施形態と同様の伝達機構85及び上記荷重発生機構100が設けられることで、上記実施形態と同様、荷重発生機構100で発生する荷重を安定させる効果を得ることができる。
【0096】
・上記空調用レジスタ10は、車室内においてインストルメントパネルとは異なる箇所に設けられる空調用レジスタにも適用可能である。
・上記空調用レジスタは、操作ノブの回転を伝達機構により可動フィンに伝達して同可動フィンを傾動させることのできるものであれば、車両に限らず広く適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
10…空調用レジスタ
11…リテーナ
12…通風路
17…内壁面
60…シャットダンパ(可動フィン)
61,71…ダンパプレート
63,73…外ダンパ軸(ダンパ軸)
66,76…内ダンパ軸(ダンパ軸)
81…操作ノブ
85…伝達機構
86…ダンパドライブ
93…収容部
94…開放端
100…荷重発生機構
101…受圧部
102…受圧面
103…押圧部材
104…押圧本体部
105…挿入部
106…ばね
A1…空調用空気
CL1…中心軸線