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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】測位装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/14 20060101AFI20231114BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20231114BHJP
【FI】
G01S5/14
G01S5/02 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020158028
(22)【出願日】2020-09-22
(65)【公開番号】P2022051622
(43)【公開日】2022-04-01
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】青山 雅之
(72)【発明者】
【氏名】肥後 徳仁
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/106747(WO,A1)
【文献】特表2021-517643(JP,A)
【文献】特表2018-531372(JP,A)
【文献】特表2017-529528(JP,A)
【文献】特開2011-058928(JP,A)
【文献】特表2007-519920(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0047886(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0092448(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00- 5/14
G01S 7/00- 7/42
G01S13/00-13/95
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を用いて測位対象物の位置を測定する測位装置であって、
前記測位対象物である移動端末(30、30A)と、
互いに異なる既知の位置に設置され、前記移動端末との間での双方向通信が可能な3つ以上の複数の固定端末(40A、40B、40C、40D、40E)と、
前記移動端末の位置測定を行う制御装置(50)と、を備え、
前記固定端末は、前記固定端末と前記移動端末との間の双方向通信により前記移動端末との距離を第1端末間距離として算出可能であって、前記移動端末から前記固定端末への単方向通信により前記移動端末との距離を第2端末間距離として算出可能になっており、
前記制御装置は、複数の前記固定端末の位置および複数の前記固定端末で算出した前記第2端末間距離に基づいて前記移動端末の位置を測定する測位処理を行うとともに、所定の許容精度条件が成立する際に算出された前記第1端末間距離と前記第2端末間距離とを比較し、前記第1端末間距離と前記第2端末間距離との差分に基づいて前記固定端末それぞれの時刻または時刻に準ずる物理量を同期させる同期処理を行い、
前記許容精度条件は、複数の前記固定端末を中心とし前記第1端末間距離を半径とする仮想円が3つ以上の交点で交差するとともに、前記交点同士の距離である交点間距離のうち小さいものから3つ目までが所定の基準値以下となる際に成立する条件となっている測位装置。
【請求項2】
前記移動端末は、前記電磁波を送受信する移動用アンテナ(31A)を含み、
前記制御装置は、前記移動用アンテナの向きが異なる状態における前記交点間距離を算出して前記交点間距離が小さくなる前記移動用アンテナの向きを特定し、特定した前記移動用アンテナの向きで前記同期処理を行う請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記移動端末の床からの高さが所定高さに維持される条件下で前記同期処理を行う請求項1または2に記載の測位装置。
【請求項4】
前記制御装置は、複数の前記移動端末を所定箇所に集めた状態で前記同期処理を行う請求項1ないし3のいずれか1つに記載の測位装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
複数の前記移動端末のうちの1つを基準端末とし、
前記基準端末については前記第1端末間距離と前記第2端末間距離との差分に基づいて前記固定端末それぞれの時刻または時刻に準ずる物理量を同期させ、
複数の前記移動端末のうち、前記基準端末以外の他の端末については、前記基準端末の前記同期処理に用いた前記第1端末間距離、前記第2端末間距離、および前記基準端末に対する前記他の端末の相対位置に基づいて前記固定端末それぞれの時刻または時刻に準ずる物理量を同期させる請求項4に記載の測位装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記許容精度条件を満たす際の前記移動端末の位置を特定位置として記憶し、
前記移動端末が前記特定位置を通過すると、過去に前記移動端末が前記特定位置を通過した際に算出された前記第1端末間距離と改めて算出されて前記第2端末間距離に基づいて前記固定端末それぞれの時刻または時刻に準ずる物理量を同期させる請求項1ないし5のいずれか1つに記載の測位装置。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記許容精度条件を満たす場合において前記交点間距離が前記基準値以下に設定される閾値以下となる際の前記移動端末の位置を特定位置として記憶し、
前記同期処理が行われてから所定期間が経過した後に前記移動端末が前記特定位置を通過すると、過去に前記移動端末が前記特定位置を通過した際に算出された前記第1端末間距離と改めて算出されて前記第2端末間距離に基づいて前記固定端末それぞれの時刻または時刻に準ずる物理量を同期させる請求項1ないし5のいずれか1つに記載の測位装置。
【請求項8】
前記移動端末の位置を測定する測位空間のうち、前記移動端末を持つ人または前記移動端末が設置された移動体(AGV)が入退場する際に必ず通過する基準箇所に前記固定端末(40E)が設置され、
前記制御装置は、前記移動端末が前記基準箇所を通過する際に前記同期処理を行う請求項1ないし7のいずれか1つに記載の測位装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記移動端末が前記基準箇所を通過したか否かを検知する通過検知装置(70)によって前記移動端末が前記基準箇所を通過したことが検知されたことをトリガとして前記同期処理を行う請求項8に記載の測位装置。
【請求項10】
前記通過検知装置は、前記測位空間への人または前記移動体の入退場を検知する入退場管理装置の一部を構成している請求項9に記載の測位装置。
【請求項11】
前記固定端末には、前記移動端末との間で前記双方向通信による測距を開始するための第1トリガ信号を送信する固定送受信機(42)が搭載され、前記第1トリガ信号の送信時刻または前記第1トリガ信号の送信時刻に準ずるデータを記憶するメモリ(431)が含まれており、
前記移動端末には、前記単方向通信による測距を開始するための第2トリガ信号に加えて前記第2トリガ信号の送信時刻または前記第2トリガ信号の送信時刻に準ずる時刻データを送信する移動送受信機(32)が搭載され、
前記移動送受信機は、前記第1トリガ信号を受信すると前記第1トリガ信号に対する応答信号および前記第1トリガ信号の受信時刻と前記応答信号の送信時刻との時刻差または前記時刻差に準ずる時刻差データを送信するように構成され、
前記固定端末は、前記応答信号を受信すると、前記第1トリガ信号の送信から前記応答信号の受信までの時間から前記第1トリガ信号の受信から前記応答信号の送信までの時間を除いた時間に基づいて前記第1端末間距離を算出し、
前記第2トリガ信号を受信すると前記第2トリガ信号の送信から前記第2トリガ信号の受信までの時間に基づいて前記第2端末間距離を算出する請求項1ないし10のいずれか1つに記載の測位装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁波による無線通信を用いて移動端末の位置を測定する測位装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固定端末である位置検出ユニットのローカルクロックを同期させる無線通信システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、通信機と位置検出ユニットとの距離から予測される予測TDOAと、位置検出ユニットにおける通信機からのRF信号の計測値および信号受信時刻に基づく実測TDOAとの差に基づいて、ローカルクロックを同期させるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-53753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、既知の位置に配置された通信機ではなく、位置が既知でない移動端末を用いて固定端末それぞれの時刻または当該時刻に準ずる物理量を同期させることを検討している。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムは、通信機および位置検出ユニットそれぞれの位置が既知であることが前提となっているので、位置が既知でない移動端末を用いて固定端末を同期させることができない。
【0006】
また、特許文献1に記載のシステムは、電磁波を遮蔽する遮蔽物の影響について何ら考慮されておらず、固定端末それぞれの時刻または当該時刻に準ずる物理量を同期させる際の精度(以下、時刻同期の精度とも呼ぶ)を確保することが困難である。
【0007】
本開示は、移動端末を用いて固定端末の時刻同期を行うとともに、当該時刻同期の精度を確保可能な測位装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、
電磁波を用いて測位対象物の位置を測定する測位装置であって、
測位対象物である移動端末(30、30A)と、
互いに異なる既知の位置に設置され、移動端末との間での双方向通信が可能な3つ以上の複数の固定端末(40A、40B、40C、40D、40E)と、
移動端末の位置測定を行う制御装置(50)と、を備え、
固定端末は、固定端末と移動端末との間の双方向通信により移動端末との距離を第1端末間距離として算出可能であって、移動端末から固定端末への単方向通信により移動端末との距離を第2端末間距離として算出可能になっており、
制御装置は、複数の固定端末の位置および複数の固定端末で算出した第2端末間距離に基づいて移動端末の位置を測定する測位処理を行うとともに、所定の許容精度条件が成立する際に算出された第1端末間距離と第2端末間距離とを比較し、第1端末間距離と第2端末間距離との差分に基づいて固定端末それぞれの時刻または当該時刻に準ずる物理量を同期させる同期処理を行い、
許容精度条件は、複数の固定端末を中心とし第1端末間距離を半径とする仮想円が3つ以上の交点で交差するとともに、交点同士の距離である交点間距離のうち小さいものから3つ目までが所定の基準値以下となる際に成立する条件となっている。
【0009】
これによると、複数の固定端末の位置および複数の固定端末で算出した第2端末間距離に基づいて位置が既知でない移動端末の位置を測定することができる。また、双方向通信によって算出した移動端末と複数の固定端末との間の正確な距離と単方向通信によって算出した移動端末と複数の固定端末との間の距離とを比較することで、複数の固定端末それぞれの時刻同期を行うことができる。
【0010】
ここで、移動端末と固定端末との間に電磁波の遮蔽物がある場合、移動端末と固定端末との間での電磁波の伝搬時間が変化することで、第1端末間距離の精度が低下してしまう。第1端末間距離の精度低下は、時刻同期の精度が低下する要因となることから好ましくない。
【0011】
本発明者らは、移動端末と固定端末との間に電磁波の遮蔽物がある場合の傾向について鋭意検討した。この検討によれば、複数の固定端末を中心とし第1端末間距離を半径とする仮想円同士が重なり合わなくなったり、仮想円の交点同士の距離が大きくなったりすることが判った。
【0012】
これらを加味して、本開示の測位装置では、前述の仮想円が3つ以上の交点で交差するとともに、交点同士の距離である交点間距離のうち小さいものから3つ目までが所定の基準値以下となる際に算出された第1端末間距離を用いて同期処理を行う。これによると、電磁波の遮蔽物による影響が小さいと想定される条件下で同期処理を実施することになるので、電磁波の遮蔽物による時刻同期の精度低下を抑制することができる。
【0013】
したがって、本開示の測位装置によれば、移動端末の位置を測定可能としつつ、時刻同期の精度を確保することができる。
【0014】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る測位装置の概略構成図である。
図2】第1実施形態に係る測位装置の移動端末が設置された無人搬送車の概略構成図である。
図3】第1実施形態に係る測位装置の固定端末の概略構成図である。
図4】双方向通信による移動端末の測距を説明するための説明図である。
図5】単方向通信による移動端末の測距を説明するための説明図である。
図6】固定端末側の双方向測距処理の流れを示すフローチャートである。
図7】移動端末側の双方向測距処理の流れを示すフローチャートである。
図8】双方向通信による移動端末の測距を説明するためのタイムチャートである。
図9】移動端末側の単方向測距処理の流れを示すフローチャートである。
図10】固定端末側の単方向測距処理の流れを示すフローチャートである。
図11】単方向通信による移動端末の測距を説明するためのタイムチャートである。
図12】制御装置が実行する測位処理の流れを示すフローチャートである。
図13】双方向通信による移動端末の測距を行う際の電磁波の遮蔽物の影響を説明するための説明図である。
図14】双方向通信による移動端末の測距の精度を説明するための説明図である。
図15】電磁波の遮蔽物の影響が大きい場合の双方向通信による移動端末の測距の精度を説明するための説明図である。
図16】電磁波の遮蔽物の影響が小さい場合の双方向通信による移動端末の測距の精度を説明するための説明図である。
図17】第1実施形態に係る測位装置の制御装置が実行する同期処理の流れを示すフローチャートである。
図18】第2実施形態に係る測位装置の移動端末が設置された無人搬送車の概略構成図である。
図19】第2実施形態に係る測位装置の制御装置が行う交点間算出の流れを示すフローチャートである。
図20】第2実施形態に係る測位装置の移動端末の変形例を示す概略構成図である。
図21】第3実施形態に係る測位装置の移動端末が設置された無人搬送車の概略構成図である。
図22】複数の携帯型移動端末を互いの位置関係を特定可能な状態で収容可能な収容箱を示す概略構成図である。
図23】第3実施形態に係る測位装置の制御装置が行う基準端末以外の他の端末での同期処理の流れを示すフローチャートである。
図24】第4実施形態に係る測位装置の制御装置が行う同期処理の流れを示すフローチャートである。
図25】入退場管理装置を説明するための説明図である。
図26】第5実施形態に係る測位装置の制御装置を説明するための説明図である。
図27】第5実施形態に係る測位装置の制御装置が行う同期処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0017】
(第1実施形態)
本実施形態について、図1図17を参照して説明する。本実施形態では、本開示の測位装置10を、無人搬送車AGV(Automated Guided Vehicleの略)によってワーク等を自動的に搬送する工場や倉庫のFA(Factory Automationの略)システムに適用した例について説明する。
【0018】
測位装置10は、電磁波による無線通信を用いて測位対象物の位置を測定する装置である。本実施形態の測位装置10は、無人搬送車AGVに設置される移動端末30等の位置を測定する。具体的には、測位装置10は、広帯域の周波数を使用し、短いパルス状の電磁波により高精度な位置測定を行うUWB(Ultra-Wide Bandの略)通信を用いて移動端末30の位置を測定する。なお、測位装置10は、無人搬送車AGVの移動端末30に限らず、例えば、工場や倉庫の室内にいる人に携帯される携帯型移動端末30Aの位置を測定可能である。
【0019】
[測位装置10の概略構成]
以下、測位装置10の概略構成を説明する。図1に示すように、測位装置10は、室内の所定エリアPAにおいて移動端末30の位置を測定する。本実施形態では、所定エリアPAが移動端末30の位置を測定する測位空間である。測位装置10は、トリガ用無線機20、移動端末30、複数の固定端末40A、40B、40C、40D、制御装置50等を備えている。
【0020】
トリガ用無線機20は、室内に設置されている。トリガ用無線機20は、移動端末30の位置の測定等を開始するためのトリガ信号を移動端末30および固定端末40A、40B、40C、40Dに送信するための無線端末である。トリガ用無線機20は、制御装置50に接続されており、制御装置50からの要求に基づいてトリガ信号を送信する。
【0021】
移動端末30は、図2に示す無人搬送車AGVの位置を特定するための無線端末である。移動端末30は、工場内における無人搬送車AGVの位置を特定可能なように無人搬送車AGVに対して設置されている。
【0022】
ここで、無人搬送車AGVは、図示しない走行用の駆動装置および制御装置が収容される筐体61、駆動装置からの駆動力によって回転する車輪62、ワークの搬送に使用する通い箱63を備える。無人搬送車AGVの筐体61の上部に移動端末30が設定されている。無人搬送車AGVは、測位装置10から自身の位置情報を取得し、取得した位置情報に基づいて事前に設定された搬送経路を走行する。
【0023】
移動端末30は、測位対象物であって、移動端末30の床からの高さが所定の高さに維持されるように無人搬送車AGVに設置されている。移動端末30は、人が携帯する機器や移動体等に搭載可能な電子タグとして構成されている。具体的には、移動端末30は、移動用アンテナ31、移動送受信機32、メモリを含むICチップ33を備える。
【0024】
移動用アンテナ31は、電磁波を送受信するアンテナである。移動用アンテナ31は、その向きが一定となるように設定されている。
【0025】
移動送受信機32は、固定端末40A、40B、40C、40Dからの第1トリガ信号を受信すると第1トリガ信号に対する応答信号を送信する無線機である。移動送受信機32は、応答信号を送信する際に、第1トリガ信号の受信時刻と応答信号の送信時刻との時刻差を時刻差データΔTbとして送信するように構成されている。なお、時刻差データΔTbは、第1トリガ信号の受信時刻と応答信号の送信時刻との時刻差に限らず、当該時刻差に準ずるデータ(例えば、カウンタ値)であってもよい。
【0026】
加えて、移動送受信機32は、単方向通信による測距を開始するための第2トリガ信号を送信するトリガ用無線機としての機能も果たす。移動送受信機32は、第2トリガ信号を送信する際に、第2トリガ信号の送信時刻を時刻データΔTcとして送信するように構成されている。なお、時刻データΔTcは、第2トリガ信号の送信時刻そのものではなく、第2トリガ信号の送信時刻に準ずるデータであってもよい。
【0027】
ICチップ33は、内部クロックまたはカウンタを有する集積回路である。ICチップ33は、例えば、第1トリガ信号を受信すると応答信号とともに時刻差データΔTbを生成し、第2トリガ信号を送信する際に時刻データΔTcを生成する。
【0028】
固定端末40A、40B、40C、40Dは、室内に3つ以上設置されている。本実施形態では、説明の便宜上、室内に4つの固定端末40A、40B、40C、40Dが設置されている例について説明する。なお、工場内に設置する固定端末40A、40B、40C、40Dの数は、4つ限定されず、3つまたは5つ以上であってもよい。
【0029】
固定端末40A、40B、40C、40Dは、室内においてスクエア形状に設定された所定エリアPAの4隅に配置されている。固定端末40A、40B、40C、40Dは、実質的に同様に構成されている。このため、以下では、固定端末40Aの構成を代表して説明し、固定端末40B、40C、40Dの構成の説明を省略する。
【0030】
固定端末40Aは、図3に示すように、室内において間隔をあけて配置された金属製の支柱PLに設置されている。具体的には、固定端末40Aは、支柱PLにおける室内の床からの高さが所定高さLhとなる位置に設置されている。なお、固定端末40Aは、支柱PLに限らず、例えば、室内の壁面に固定されていてもよい。
【0031】
固定端末40Aは、移動端末30等の双方向通信可能に構成されている。また、固定端末40Aは、制御装置50に接続されており、制御装置50からの要求に基づいて各種信号や各種データを送信可能になっている。具体的には、固定端末40Aは、固定用アンテナ41、固定送受信機42、メモリ431を含むICチップ43を備える。
【0032】
固定用アンテナ41は、電磁波を送受信するアンテナである。固定用アンテナ41は、その向きが一定となるように設定されている。
【0033】
固定送受信機42は、双方向通信による測距を開始するための第1トリガ信号を送信するトリガ用無線機として機能する。加えて、固定送受信機42は、移動端末30からの応答信号や第2トリガ信号を受信する受信機としての機能を有する。
【0034】
ICチップ43は、制御処理および演算処理を実行するプロセッサ、プログラムやデータ等を記憶するメモリ431、内部クロックまたはカウンタ等を有する集積回路である。ICチップ43は、第1トリガ信号の送信時刻または第1トリガ信号の送信時刻に準ずるデータをメモリ431に記憶する。
【0035】
このように構成される各固定端末40A、40B、40C、40Dは、図4に示す各固定端末40A、40B、40C、40Dと移動端末30との間の双方向通信によって、移動端末30との距離を第1端末間距離D1として算出可能になっている。
【0036】
また、各固定端末40A、40B、40C、40Dは、図5に示す移動端末30から各固定端末40A、40B、40C、40Dへの単方向通信によって、移動端末30との距離を第2端末間距離D2として算出可能になっている。
【0037】
[第1端末間距離D1の算出手法]
以下、第1端末間距離D1を算出するための双方向測距処理について図6図7図8を参照しつつ説明する。図6は、固定端末40A、40B、40C、40DのICチップ43が実行する双方向測距処理の流れを示すフローチャートである。図6に示す処理は、所定エリアPAに移動端末30が位置する場合に、周期的または不定期に固定端末40A、40B、40C、40Dによって実行される。
【0038】
図6に示すように、各固定端末40A、40B、40C、40Dは、ステップS100Aにて、双方向測距処理を開始するか否かを判定する。例えば、各固定端末40A、40B、40C、40Dは、トリガ用無線機20からの送信される双方向測距処理の要求を指示するトリガ信号を受信した際に双方向測距処理を開始すると判定する。
【0039】
双方向測距処理を開始する場合、各固定端末40A、40B、40C、40Dは、ステップS110Aにて第1トリガ信号を送信し、ステップS120Aにて、第1トリガ信号の送信時刻Ts1をメモリ431に記憶する。
【0040】
一方、図7に示すように、移動端末30は、ステップS100Bにて、各固定端末40A、40B、40C、40Dの第1トリガ信号を受信したか否かを判定し、この結果、第1トリガ信号を受信している場合に、ステップS110Bに移行する。
【0041】
移動端末30は、ステップS110Bにて、第1トリガ信号の受信時刻から第1トリガ信号に対する応答信号の送信時刻との時刻差を示す時刻差データΔTbを作成する。そして、移動端末30は、ステップS120Bにて、第1トリガ信号に対する応答信号および時刻差データΔTbを送信する。なお、時刻差データΔTbは、実際の時刻差を示すデータに限らず、カウンタ値等の時刻差に準ずるデータであってもよい。
【0042】
図6に戻り、各固定端末40A、40B、40C、40Dは、ステップS130Aにて、移動端末30からの応答信号および時刻差データΔTbを受信したか否かを判定し、この結果、応答信号等を受信している場合に、ステップS140Aに移行する。
【0043】
各固定端末40A、40B、40C、40Dは、ステップS140Aにて、応答信号の受信時刻Tr1をメモリ431に記憶する。そして、各固定端末40A、40B、40C、40Dは、ステップS150Aにて、第1端末間距離D1を算出し、本処理を抜ける。
【0044】
ここで、図8に示すように、固定端末40A、40B、40C、40Dが第1トリガ信号を送信してから移動端末30から応答信号を受信するまでのトータル時間ΔTaは、第1トリガ信号の送信時刻Ts1および応答信号の受信時刻Tr1から求めることができる。そして、各固定端末40A、40B、40C、40Dと移動端末30との間の距離は、トータル時間ΔTaから時刻差データΔTbに示される時刻差を減算したものに光速LSを乗じた値の半分となる。なお、距離1mあたり3.3nsの遅延が生ずる。
【0045】
これらを加味して、本実施形態の各固定端末40A、40B、40C、40Dは、以下の数式F1に基づいて第1端末間距離D1を算出する。
【0046】
D1={(Tr1-Ts1)-ΔTb}×LS/2…(F1)
上述の数式F1では、光速をLSと表記している。なお、上記の数式F1に示す「Tr1-Ts1」は、図8に示すトータル時間ΔTaに相当する。
【0047】
以上の如く、双方向測距処理では、固定端末40A、40B、40C、40Dで計測される時刻同士の差分および移動端末30で計測される時刻同士の差分に基づいて第1端末間距離D1を算出している。これによると、仮に固定端末40A、40B、40C、40Dの時刻にズレがあっても固定端末40A、40B、40C、40Dと移動端末30との間の距離を精度よく算出することができる。
【0048】
しかし、双方向測距処理は、第1端末間距離D1の算出に長時間を要するといった背反がある。具体的には、双方向測距処理は、単方向測距処理の2倍以上の時間を要することから単方向測距処理に比べて応答性に欠ける。
【0049】
[第2端末間距離D2の算出手法]
次に、第2端末間距離D2を算出するための単方向測距処理について図9図10図11を参照しつつ説明する。図9は、移動端末30が実行する単方向測距処理の流れを示すフローチャートである。図9に示す処理は、所定エリアPAに移動端末30が位置する場合に、周期的または不定期に移動端末30によって実行される。
【0050】
図9に示すように、移動端末30は、ステップS200Aにて、単方向測距処理を開始するか否かを判定する。例えば、各移動端末30は、トリガ用無線機20からの送信される単方向測距処理の要求を指示するトリガ信号を受信した際に単方向測距処理を開始すると判定する。
【0051】
単方向測距処理を開始する場合、移動端末30は、ステップS210Aにて第2トリガ信号および第2トリガ信号の送信時刻Ts2を時刻データΔTcとして送信する。時刻データΔTcは、実際の時刻を示すデータに限らず、カウンタ値等の時刻に準ずるデータであってもよい。
【0052】
一方、図10に示すように、固定端末40A、40B、40C、40Dは、ステップS200Bにて、第2トリガ信号および時刻データΔTcを受信したか否かを判定し、この結果、第2トリガ信号を受信している場合に、ステップS210Bに移行する。
【0053】
固定端末40A、40B、40C、40Dは、ステップS210Bにて、第2トリガ信号の受信時刻Tr2をメモリ431に記憶する。そして、各固定端末40A、40B、40C、40Dは、ステップS220Bにて、第2端末間距離D2を算出し、本処理を抜ける。
【0054】
ここで、図11に示すように、移動端末30が第2トリガ信号を送信してから固定端末40A、40B、40C、40Dが第1トリガ信号を受信するまでの時間は、第2トリガ信号の送信時刻Ts2および第2トリガ信号の受信時刻Tr2から求めることができる。そして、各固定端末40A、40B、40C、40Dと移動端末30との間の距離は、第2トリガ信号の受信時刻Tr2から第2トリガ信号の送信時刻Ts2を減算したものに光速LSを乗じた値となる。なお、距離1mあたり3.3nsの遅延が生ずる。
【0055】
これらを加味して、本実施形態の各固定端末40A、40B、40C、40Dは、以下の数式F2に基づいて第1端末間距離D1を算出する。
【0056】
D2=(Tr2-ΔTc)×LS…(F2)
上述の数式F2では、光速をLSと表記している。なお、上記の数式F1に示す「ΔTc」は、第2トリガ信号の送信時刻Ts2の時刻である。
【0057】
以上の如く、単方向測距処理では、双方向測距処理に比べて、第2端末間距離D2を短時間で算出できる。しかし、固定端末40A、40B、40C、40Dで計測される時刻と移動端末30で計測される時刻の差分に基づいて第2端末間距離D2を算出している。このため、仮に固定端末40A、40B、40C、40Dの時刻にズレがあると、固定端末40A、40B、40C、40Dと移動端末30との間の距離を精度よく算出することができない。
【0058】
次に、測位装置10の電子制御部である制御装置50について説明する。制御装置50は、プロセッサ、メモリを有するマイクロコンピュータとその周辺回路で構成されている。制御装置50は、メモリに記憶されたプログラムに基づいて、各種制御処理および演算処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。なお、制御装置50のメモリには、各固定端末40A、40B、40C、40Dの室内における位置情報等が予め記憶されている。
【0059】
[測位処理]
制御装置50は、移動端末30の位置を測定する測位処理を実行する。この測位処理については、図12を参照しつつ説明する。図12に示す測位処理は、制御装置50によって周期的または不定期に実行される。
【0060】
図12に示すように、制御装置50は、ステップS300にて、測位処理を開始するか否かを判定する。例えば、制御装置50は、所定エリアPAに移動端末30が検知された場合に測位処理を開始すると判定する。
【0061】
測位処理を開始する場合、制御装置50は、ステップS310にて、移動端末30に対して単方向測距処理を要求する。具体的には、制御装置50は、トリガ用無線機20を介して移動端末30に対して単方向測距処理を指示するトリガ信号を送信する。これにより、移動端末30から第2トリガ信号が各固定端末40A、40B、40C、40Dに送信され、各固定端末40A、40B、40C、40Dで第2端末間距離D2が算出される。
【0062】
続いて、制御装置50は、ステップS320にて、各固定端末40A、40B、40C、40Dから第2端末間距離D2を取得する。そして、制御装置50は、ステップS330にて、移動端末30の位置を特定し、処理を抜ける。具体的には、制御装置50は、ステップS320で取得した第2端末間距離D2および予めメモリに記憶された各固定端末40A、40B、40C、40Dの位置情報から移動端末30の位置を特定する。
【0063】
しかし、前述したように、単方向測距処理によって移動端末30の位置を特定する場合、固定端末40A、40B、40C、40Dの時刻にズレがあると、固定端末40A、40B、40C、40Dと移動端末30との間の距離を精度よく算出することができない。
【0064】
そこで、制御装置50は、第1端末間距離D1と第2端末間距離D2とを比較し、第1端末間距離D1と第2端末間距離D2との差分に基づいて固定端末40A、40B、40C、40Dそれぞれの時刻を同期させる同期処理を行う。この同期処理では、双方向通信によって第1端末間距離D1を精度よく算出することが重要となる。
【0065】
ところが、例えば、図13に示すように、移動端末30と固定端末40A、40B、40C、40Dとの間に電磁波の遮蔽物がある場合、電磁波の伝搬時間が変化して、第1端末間距離D1の算出精度が低下してしまう。
【0066】
例えば、図13のP1で示す位置を移動端末30が通過するには、電磁波の遮蔽物によって2つ以上の固定端末40C、40Dからの信号が遮蔽されてしまう。この場合、固定端末40C、40Dと移動端末30との間の第1端末間距離D1を精度よく算出することが困難となる。
【0067】
一方、例えば、図13のP2で示す位置を移動端末30が通過するには、3つの固定端末40A、40B、40Dが電磁波の遮蔽物による影響を殆ど受けないので、移動端末30がP1を通過する際に比べて第1端末間距離D1を精度よく算出可能と考えられる。
【0068】
さらに、本発明者らは、移動端末30と固定端末40A、40B、40C、40Dとの間に電磁波の遮蔽物がある場合の傾向について鋭意検討した。この検討によれば、複数の固定端末40A、40B、40C、40Dを中心とし第1端末間距離D1を半径とする仮想円VC同士が重なり合わなくなったり、仮想円VCの交点X同士の距離が大きくなったりすることが判った。
【0069】
ここで、図14では、固定端末40Aを中心とする仮想円VCa、固定端末40Bを中心とする仮想円VCb、固定端末40Dを中心とする仮想円VCdを図示している。仮想円VCaは、固定端末40Aと移動端末30との間の距離として算出される第1端末間距離D1aを半径とする円である。仮想円VCbは、固定端末40Bと移動端末30との間の距離として算出される第1端末間距離D1bを半径とする円である。仮想円VCdは、固定端末40Dと移動端末30との間の距離として算出される第1端末間距離D1dを半径とする円である。図14に示すように各仮想円VCa、VCb、VCd同士の交点Xは6つ存在する。
【0070】
例えば、電磁波の遮蔽物の影響が大きい場合、第1端末間距離D1を精度よく算出できず、各仮想円VCa、VCb、VCd同士の交点Xが存在しなかったり、3つ未満となったりすることがある。また、電磁波の遮蔽物の影響が大きい場合、図15に示すように、各仮想円VCa、VCb、VCdの交点Xのうち小さいものから三つ目の交点X1、X2、X3の交点間距離LX1、LX2、LX3が大きくなってしまう。
【0071】
一方、電磁波の遮蔽物の影響が小さい場合、第1端末間距離D1を精度よく算出できるので、図16に示すように、各仮想円VCa、VCb、VCdの交点Xのうち小さいものから三つ目の交点X1、X2、X3の交点間距離LX1、LX2、LX3が小さくなる。
【0072】
これらを加味して、測位装置10は、前述の仮想円VCが3つ以上の交点Xで交差するとともに、交点X同士の距離である交点間距離LXのうち小さいものから3つ目までが所定の基準値以下となる際に算出された第1端末間距離D1を用いて同期処理を行う。
【0073】
[同期処理]
以下、制御装置50が実行する同期処理について図17を参照して説明する。図17に示す同期処理は、制御装置50によって周期的または不定期に実行される。
【0074】
図17に示すように、制御装置50は、ステップS400にて、前回の同期処理から所定期間が経過したか否かを判定する。
【0075】
この所定期間は、例えば、各固定端末40A、40B、40C、40Dの時刻ズレが生じると予想される期間に設定される。所定期間は、固定値でもよいが、可変値であってもよい。所定期間を可変値とする場合、各固定端末40A、40B、40C、40Dの時刻ズレが大きいほど、所定期間を短くし、時刻ズレが小さいほど、所定期間を長くすることが望ましい。
【0076】
前回の同期処理から所定期間が経過すると、制御装置50は、ステップS410にて、各固定端末40A、40B、40C、40Dに対して双方向測距処理を要求する。具体的には、制御装置50は、トリガ用無線機20を介して各固定端末40A、40B、40C、40Dに対して双方向測距処理を指示するトリガ信号を送信する。
【0077】
これにより、各固定端末40A、40B、40C、40Dから第1トリガ信号が移動端末30に送信される。その後、移動端末30から第1トリガ信号に対する応答信号等が各固定端末40A、40B、40C、40Dに送信され、各固定端末40A、40B、40C、40Dで第1端末間距離D1が算出される。
【0078】
続いて、制御装置50は、ステップS420にて、各固定端末40A、40B、40C、40Dから第1端末間距離D1を取得する。そして、制御装置50は、ステップS430にて、各固定端末40A、40B、40C、40Dを中心とし第1端末間距離D1を半径とする仮想円VC、仮想円VCの交点X同士の間隔である交点間距離LXを算出する。
【0079】
続いて、制御装置50は、ステップS440にて、所定の許容精度条件が成立するか否かを判定する。この許容精度条件は、仮想円VCが3つ以上の交点Xで交差するとともに、交点X同士の距離である交点間距離LXのうち小さいものから3つ目までが所定の基準値以下となる際に成立する条件となっている。
【0080】
具体的には、制御装置50は、ステップS440Aにて、仮想円VCの交点Xが3つ以上あるか否かを判定する。具体的には、制御装置50は、ステップS420で取得した第1端末間距離D1および予めメモリに記憶された各固定端末40A、40B、40C、40Dの位置情報から仮想円VCの交点Xを特定し、交点Xの数をカウントする。その後、交点Xの数が3つ以上であるか否かを判定する。
【0081】
交点Xの数が3つ以上である場合、制御装置50は、ステップS440Bにて、交点X同士の距離である交点間距離LXのうち小さいものから3つ目までが所定の基準値以下となっているか否かを判定する。
【0082】
許容精度条件が成立すると、制御装置50は、ステップS450に移行し、移動端末30に対して単方向測距処理を要求する。具体的には、制御装置50は、トリガ用無線機20を介して移動端末30に対して単方向測距処理を指示するトリガ信号を送信する。これにより、移動端末30から第2トリガ信号が各固定端末40A、40B、40C、40Dに送信され、各固定端末40A、40B、40C、40Dで第2端末間距離D2が算出される。
【0083】
続いて、制御装置50は、ステップS460にて、各固定端末40A、40B、40C、40Dから第2端末間距離D2を取得する。そして、制御装置50は、ステップS470にて、第1端末間距離D1と第2端末間距離D2との差分ΔDに基づいて各固定端末40A、40B、40C、40Dの時刻または時刻に準ずる物理量を補正して、本処理を抜ける。制御装置50は、例えば、各端末間距離D1、D2の差分ΔDと時刻の補正値との関係を規定した制御マップを参照して、各固定端末40A、40B、40C、40Dの時刻等を補正する。
【0084】
以上説明した測位装置10によれば、各固定端末40A、40B、40C、40Dの位置および第2端末間距離D2に基づいて位置が既知でない移動端末30の位置を測定することができる。加えて、双方向通信によって算出した第1端末間距離D1と単方向通信によって算出した第2端末間距離D2とを比較することで、各固定端末40A、40B、40C、40Dそれぞれの時刻同期を行うことができる。特に、本実施形態の測位装置10では、仮想円VCが3つ以上の交点Xで交差するとともに、交点X同士の距離である交点間距離LXのうち小さいものから3つ目までが所定の基準値以下となる際に算出された第1端末間距離D1を用いて同期処理を行う。これによると、電磁波の遮蔽物による影響が小さいと想定される条件下で同期処理を実施することになるので、電磁波の遮蔽物による時刻同期の精度低下を抑制することができる。
【0085】
(1)上記実施形態では、移動端末30の床からの高さが所定高さに維持されるように移動端末30が無人搬送車AGVに設置されている。このため、本実施形態の制御装置50は、移動端末30の床からの高さが所定高さに維持される条件下で同期処理を行う。これによれば、高さ方向における電磁波の伝搬速度のバラツキが抑制される。このことは、時刻同期の精度の向上に寄与する。
【0086】
(2)上記実施形態では、固定端末40A、40B、40C、40Dに、移動端末30との間で双方向通信による測距を開始するための第1トリガ信号を送信する固定送受信機42が搭載される。また、固定端末40A、40B、40C、40Dには、第1トリガ信号の送信時刻または第1トリガ信号の送信時刻に準ずるデータを記憶するメモリ431が含まれている。移動端末30には、単方向通信による測距を開始するための第2トリガ信号に加えて第2トリガ信号の送信時刻または第2トリガ信号の送信時刻に準ずる時刻データΔTcを送信する移動送受信機32が搭載されている。この移動送受信機32は、第1トリガ信号を受信すると第1トリガ信号に対する応答信号および第1トリガ信号の受信時刻と応答信号の送信時刻との時刻差または当該時刻差に準ずる時刻差データΔTbを送信するように構成されている。固定端末40A、40B、40C、40Dは、応答信号を受信すると、第1トリガ信号の送信から応答信号の受信までの時間から第1トリガ信号の受信から応答信号の送信までの時間を除いた時間に基づいて第1端末間距離D1を算出する。また、固定端末40A、40B、40C、40Dは、第2トリガ信号を受信すると第2トリガ信号の送信から第2トリガ信号の受信までの時間に基づいて第2端末間距離D2を算出する。
【0087】
これによると、第1端末間距離D1を正確に算出することができるので、同期処理にて固定端末40A、40B、40C、40D間の時刻同期を精度良く実施することができる。また、第2端末間距離D2を短時間で簡易に算出することができるので、高応答、且つ、高精度に移動端末30の位置を測定することができる。
【0088】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図18図19を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0089】
図18に示すように、本実施形態の移動端末30は、互いに直交する3つの方向に向いた移動用アンテナ31Aが備えている。なお、移動用アンテナ31Aは、3つ以上の方向に向いていてもよい。
【0090】
また、本実施形態の制御装置50は、移動用アンテナ31Aの向きが異なる状態における交点間距離LXを算出して交点間距離LXが小さくなる移動用アンテナ31Aの向きを特定し、特定した移動用アンテナ31Aの向きで同期処理を行う。
【0091】
以下、本実施形態の制御装置50が実行する交点間距離LXの算出処理について図19を参照しつつ説明する。図19に示す処理は、図17のステップS430の処理に対応している。
【0092】
図19に示すように、制御装置50は、ステップS431にて、移動用アンテナ31Aの向き毎に交点間距離LXを算出する。そして、制御装置50は、ステップS432にて、ステップS431で算出した交点間距離LX同士を比較して、交点間距離LXが最も小さくなる移動用アンテナ31Aの向きを特定する。
【0093】
続いて、制御装置50は、ステップS432で特定した移動用アンテナ31Aの向きで算出された第1端末間距離D1を以降の処理で用いる。具体的には、制御装置50は、ステップS432で特定した移動用アンテナ31Aの向きで算出された第1端末間距離D1を用いて図17のステップS440の判定処理、ステップS470の時刻の補正処理等を実施する。
【0094】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の測位装置10は、第1実施形態で説明したものと共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0095】
特に、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0096】
(1)上記実施形態では、制御装置50は、交点間距離LXが小さくなる移動用アンテナ31Aの向きを特定し、特定した移動用アンテナ31Aの向きで同期処理を行う。これによると、移動用アンテナ31Aの向きによる電磁波の伝搬速度のバラツキを低減して、第1端末間距離D1を高精度に算出することができる。このことは、時刻同期の精度の向上に寄与する。
【0097】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態では、移動端末30の移動用アンテナ31Aとして互いに直交する3つの方向に向いたものを例示したが、移動端末30は、これに限定されない。移動端末30は、例えば、図20に示すように、互いに直交する3つの方向に姿勢を変化させることが可能な移動用アンテナ31Bを備えていてもよい。
【0098】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、図21図23を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0099】
本実施形態では、無人搬送車AGVに設置される移動端末30および人に携帯される複数の携帯型移動端末30Aを所定箇所に集めた状態で制御装置50によって同期処理を行う例について説明する。なお、複数の携帯型移動端末30Aには、それぞれ固有のIDが付与され、個々に識別可能になっている。
【0100】
具体的には、図21に示すように、複数の携帯型移動端末30Aを収容した収容箱BXを通い箱63に設置することで、移動端末30および複数の携帯型移動端末30Aを無人搬送車AGVに集めた状態で制御装置50によって同期処理を行う。図22に示すように、収容箱BXには、複数の携帯型移動端末30Aを所定の間隔をあけた状態で配置するための収容溝Gが複数形成されている。
【0101】
ここで、制御装置50は、無人搬送車AGVにおける移動端末30の位置から収容箱BXに収容された複数の携帯型移動端末30Aの位置が特定可能に構成されている。具体的には、制御装置50のメモリには、移動端末30と収容箱BXを配置する通い箱63との位置関係、および通い箱63と収容箱BXにおける収容溝Gとの位置関係が予め記憶されている。
【0102】
制御装置50は、移動端末30および複数の携帯型移動端末30Aのうち、移動端末30を基準端末とし、複数の携帯型移動端末30Aを基準端末以外の他の端末として区別する。
【0103】
制御装置50は、移動端末30については、第1実施形態と同様に固定端末40A、40B、40C、40Dの時刻同期を行う。また、制御装置50は、複数の携帯型移動端末30Aについては、移動端末30の時刻同期に用いたデータを利用して固定端末40A、40B、40C、40Dの時刻同期を行う。
【0104】
以下、他の端末である複数の携帯型移動端末30Aにおける同期処理について図23に示すフローチャートを参照しつつ説明する。図23に示す処理は、制御装置50によって周期的または不定期に実行される。
【0105】
図23に示すように、制御装置50は、ステップS500にて、基準端末である移動端末30の同期処理が完了したか否かを判定する。この結果、移動端末30の同期処理が完了している場合、制御装置50は、ステップS510にて、移動端末30の同期処理で用いた第1端末間距離D1および第2端末間距離D2を取得する。なお、第1端末間距離D1および第2端末間距離D2が制御装置50のメモリに記憶されている場合はメモリから取得し、メモリにない場合は各固定端末40A、40B、40C、40Dから取得する。
【0106】
続いて、制御装置50は、ステップS520にて、ステップS510で取得した第1端末間距離D1および第2端末間距離D2を移動端末30に対する携帯型移動端末30Aの相対位置で補正する。具体的には、制御装置50は、第1端末間距離D1および移動端末30に対する携帯型移動端末30Aの相対位置に基づいて、携帯型移動端末30Aと各固定端末40A、40B、40C、40Dとの間の距離を第1端末間距離D1として算出する。同様に、制御装置50は、第2端末間距離D2および移動端末30に対する携帯型移動端末30Aの相対位置に基づいて、携帯型移動端末30Aと各固定端末40A、40B、40C、40Dとの間の距離を第2端末間距離D2として算出する。
【0107】
続いて、制御装置50は、ステップS530にて、ステップS520で算出した第1端末間距離D1および第2端末間距離D2に基づいて各固定端末40A、40B、40C、40Dの時刻同期を実施する。なお、各固定端末40A、40B、40C、40Dでは、移動端末30および複数の携帯型移動端末30Aそれぞれに対応して時刻を管理する。例えば、各固定端末40A、40B、40C、40Dは、移動端末30に対応する時刻と携帯型移動端末30Aに対応する時刻とを別個に管理する。
【0108】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の測位装置10は、第1実施形態で説明したものと共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0109】
特に、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0110】
(1)上記実施形態では、移動端末30および複数の携帯型移動端末30Aを所定箇所に集めた状態で同期処理を行う。これによれば、移動端末30および複数の携帯型移動端末30Aで同時に許容精度条件が成立し易くなるので、同期処理を効率よく行うことが可能となる。
【0111】
(2)上記実施形態では、基準端末である移動端末30の同期処理に用いた第1端末間距離D1、第2端末間距離D2、および移動端末30に対する携帯型移動端末30Aの相対位置に基づいて固定端末40A、40B、40C、40Dの時刻同期を実施する。これによると、移動端末30以外の携帯型移動端末30Aでは、第1端末間距離D1を算出する必要がなくなることで、同期処理に要する時間を短縮させることが可能となる。
【0112】
(第3実施形態の変形例)
第3実施形態では、移動端末30および複数の携帯型移動端末30Aのうち、移動端末30を基準端末としたものを例示したが、基準端末は、移動端末30に限らず、複数の携帯型移動端末30Aの1つであってもよい。
【0113】
第3実施形態では、基準端末の同期処理に用いた第1端末間距離D1、第2端末間距離D2、および基準端末に対する他の端末の相対位置に基づいて固定端末40A、40B、40C、40Dの時刻同期を実施するものを例示したが、これに限定されない。他の端末についても基準端末と同様の処理によって固定端末40A、40B、40C、40Dの時刻同期を実施するようになっていてもよい。
【0114】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、図24を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0115】
本実施形態では、許容精度条件を満たす際の移動端末30の位置を特定位置として記憶し、移動端末30が特定位置を通過すると、過去に移動端末30が特定位置を通過した際の第1端末間距離D1を用いて固定端末40A、40B、40C、40Dの時刻同期を行う。
【0116】
以下、本実施形態の制御装置50が実行する同期処理について図24を参照して説明する。図24に示す同期処理は、制御装置50によって周期的または不定期に実行される。なお、図24に示す同期処理のうち、ステップS600、S610、S620、S630、S640、S650、S670は、図17のステップS400、S410、S420、S430、S440、S450、S470と同様の処理である。
【0117】
図24に示すように、制御装置50は、ステップS600にて、前回の同期処理から所定期間が経過したか否かを判定する。前回の同期処理から所定期間が経過すると、制御装置50は、ステップS605にて、移動端末30が特定位置を通過したか否かを判定する。この特定位置は、許容精度条件を満たす際の移動端末30の位置であり、許容精度条件が成立した後に設定される。
【0118】
移動端末30が特定位置を通過していない場合、制御装置50は、ステップS610にて、各固定端末40A、40B、40C、40Dに対して双方向測距処理を要求する。これにより、各固定端末40A、40B、40C、40Dで第1端末間距離D1が算出される。
【0119】
続いて、制御装置50は、ステップS620にて、各固定端末40A、40B、40C、40Dから第1端末間距離D1を取得する。そして、制御装置50は、ステップS630にて、仮想円VCおよび交点間距離LXを算出する。
【0120】
続いて、制御装置50は、ステップS640にて、所定の許容精度条件が成立するか否かを判定する。許容精度条件が成立すると、制御装置50は、ステップS645に移行し、この時の移動端末30の位置を特定位置としてメモリに記憶するとともに、特定位置での第1端末間距離D1を特定距離としてメモリに記憶する。
【0121】
続いて、制御装置50は、ステップS650にて、移動端末30に対して単方向測距処理を要求する。これにより、各固定端末40A、40B、40C、40Dで第2端末間距離D2が算出される。
【0122】
続いて、制御装置50は、ステップS660にて、各固定端末40A、40B、40C、40Dから第2端末間距離D2を取得する。そして、制御装置50は、ステップS670にて、第1端末間距離D1と第2端末間距離D2との差分ΔDに基づいて各固定端末40A、40B、40C、40Dの時刻または時刻に準ずる物理量を補正して、本処理を抜ける。
【0123】
一方、移動端末30が特定位置を通過している場合、制御装置50は、ステップS680にて、ステップS645でメモリに記憶した特定距離を第1端末間距離D1に設定する。そして、制御装置50は、ステップS690にて、移動端末30に対して単方向測距処理を要求し、ステップS700にて、各固定端末40A、40B、40C、40Dから第2端末間距離D2を取得する。
【0124】
続いて、制御装置50は、ステップS710にて、第1端末間距離D1と第2端末間距離D2との差分ΔDに基づいて各固定端末40A、40B、40C、40Dの時刻または時刻に準ずる物理量を補正して、本処理を抜ける。
【0125】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の測位装置10は、第1実施形態で説明したものと共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0126】
特に、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0127】
(1)上記実施形態では、同期処理が行われてから所定期間が経過した後に移動端末30が特定位置を通過したか否かを判定する。この結果、移動端末30が特定位置を通過している場合、過去に移動端末30が特定位置を通過した際に算出された第1端末間距離Dと改めて算出される第2端末間距離D2に基づいて固定端末40A、40B,40C、40D1の時刻等を同期させる。これによると、第1端末間距離D1の算出を繰り返す必要がないので、同期処理に要する時間を短縮させることが可能となる。加えて、同期処理が所定期間をあけて行われることになるので、同期処理の実施によって測位処理の実施が制限される期間を短くすることが可能となる。
【0128】
(第4実施形態の変形例)
第4実施形態では、同期処理が行われてから所定期間が経過した後に移動端末30が特定位置を通過したか否かを判定するものを例示したが、これに限定されない。制御装置50は、例えば、同期処理が行われてから所定期間が経過したか否かを判定することなく、移動端末30が特定位置を通過したか否かを判定するようになっていてもよい。すなわち、図24の同期処理において、ステップS600の処理は必須ではなく省略されていてもよい。この場合であっても、第1端末間距離D1の算出を繰り返す必要がないので、同期処理に要する時間を短縮させることができる。
【0129】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、図25図27を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0130】
本実施形態の測位装置10は、移動端末30の位置を測定する所定エリアPAのうち、携帯型移動端末30Aを持つ人または移動端末30が設置された無人搬送車AGVが入退場する際に必ず通過する基準箇所に固定端末40Eが設置されている。
【0131】
具体的には、図25に示すように、携帯型移動端末30Aを持つ人または移動端末30が設置された無人搬送車AGVの入退場ゲートGTに固定端末40Eが設置されている。この入退場ゲートGTには、移動端末30が入退場ゲートGTを通過したか否かを検知する通過検知装置70が設けられている。この通過検知装置70は、所定エリアPAへの人または無人搬送車AGVの入退場を検知する入退場管理装置の一部を構成している。通過検知装置70は、IDカードリーダである。なお、通過検知装置70は、IDカードリーダに限らず、手動スイッチ、自動ドアセンサ、静電除去システムであってもよい。また、通過検知装置70は、トリガ用無線機20で構成されていてもよい。
【0132】
図26に示すように、制御装置50には、通過検知装置70が接続されている。これにより、制御装置50は、通過検知装置70から所定エリアPAへの人または無人搬送車AGVの入退場の検知信号が入力される。
【0133】
本実施形態の制御装置50は、移動端末30が入退場ゲートGTを通過する際に同期処理を行う。具体的には、制御装置50は、通過検知装置70によって移動端末30が入退場ゲートGTを通過したことが検知されたことをトリガとして同期処理を行う。
【0134】
以下、本実施形態の制御装置50が実行する同期処理について図27を参照して説明する。図27に示す同期処理は、制御装置50によって周期的または不定期に実行される。なお、図27に示す同期処理のうち、ステップS800、S810、S820、S830、S840、S850、S870は、図17のステップS400、S410、S420、S430、S440、S450、S470と同様の処理である。
【0135】
図27に示すように、制御装置50は、ステップS800にて、前回の同期処理から所定期間が経過したか否かを判定する。前回の同期処理から所定期間が経過すると、制御装置50は、ステップS805にて、移動端末30が入退場ゲートGTを通過したか否かを判定する。この判定処理は、通過検知装置70からの検知信号の有無に基づいて行われる。
【0136】
移動端末30が入退場ゲートGTを通過していない場合、制御装置50は、ステップS810にて、各固定端末40A、40B、40C、40D、40Eに対して双方向測距処理を要求する。これにより、各固定端末40A、40B、40C、40D、40Eで第1端末間距離D1が算出される。
【0137】
続いて、制御装置50は、ステップS820にて、各固定端末40A、40B、40C、40D、40Eから第1端末間距離D1を取得する。そして、制御装置50は、ステップS830にて、仮想円VCおよび交点間距離LXを算出する。
【0138】
続いて、制御装置50は、ステップS840にて、所定の許容精度条件が成立するか否かを判定する。許容精度条件が成立すると、制御装置50は、ステップS850にて、移動端末30に対して単方向測距処理を要求する。これにより、各固定端末40A、40B、40C、40D、40Eで第2端末間距離D2が算出される。
【0139】
続いて、制御装置50は、ステップS860にて、各固定端末40A、40B、40C、40D、40Eから第2端末間距離D2を取得する。そして、制御装置50は、ステップS870にて、第1端末間距離D1と第2端末間距離D2との差分ΔDに基づいて各固定端末40A、40B、40C、40D、40Eの時刻または時刻に準ずる物理量を補正して、本処理を抜ける。
【0140】
一方、移動端末30が入退場ゲートGTを通過している場合、制御装置50は、ステップS880にて、各固定端末40A、40B、40C、40D、40Eに対して双方向測距処理を要求する。これにより、各固定端末40A、40B、40C、40D、40Eで第1端末間距離D1が算出される。
【0141】
続いて、制御装置50は、ステップS890にて、各固定端末40A、40B、40C、40D、40Eから第1端末間距離D1を取得する。その後、制御装置50は、ステップS850に移行し、移動端末30に対して単方向測距処理を要求する。その後の処理は、移動端末30が入退場ゲートGTを通過していない場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0142】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の測位装置10は、第1実施形態で説明したものと共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0143】
特に、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0144】
(1)上記実施形態では、基準箇所である入退場ゲートGTに固定端末40Eが設置され、移動端末30が入退場ゲートGTを通過する際に制御装置50によって同期処理が実行される。このように、入退場ゲートGTを通過した際に同期処理を行う場合、複数の移動端末30を所定箇所に集めなくても、同期処理を効率よく行うことが可能となる。
【0145】
(2)上記実施形態では、制御装置50は、通過検知装置70によって移動端末30が入退場ゲートGTを通過したことが検知されたことをトリガとして同期処理を行う。これによると、各固定端末40A、40B、40C、40D、40Eの時刻同期を定期的に行うことができる。
【0146】
(3)上記実施形態では、通過検知装置70は、所定エリアPAへの人または移動体の入退場を検知する入退場管理装置の一部を構成している。これによれば、入退場管理装置の一部を利用して同期処理を行うので、測位装置10を簡素な構成で実現することができる。
【0147】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0148】
上述の実施形態では、固定端末40A、40B、40C、40Dが第2トリガ信号を受信すると第2トリガ信号の送信から第2トリガ信号の受信までの時間に基づいて第2端末間距離D2を算出するものを例示したが、これに限定されない。固定端末40A、40B、40C、40Dは、例えば、固定端末40A、40B、40C、40Dが応答信号を受信すると応答信号の送信から応答信号の受信までの時間に基づいて第2端末間距離D2を算出するようになっていてもよい。
【0149】
上述の実施形態で説明した同期処理は、前回同期処理が実行されてから所定期間が経過するまでは具体的な処理が開始されないものを例示したが、これに限定されない。同期処理は、所定期間が経過するか否かに関わらず、必要に応じて具体的な処理が開始されるようになっていることが望ましい。
【0150】
上述の実施形態では、UWB通信を用いて移動端末30の位置を測定する測位装置10を例示したが、測位装置10は、UWB通信以外の通信(例えば、BLE通信)を用いて移動端末30の位置を測定するようになっていてもよい。
【0151】
上述の実施形態では、移動端末30の床からの高さが所定高さになっている状態で同期処理が実行されるものを例示したが、これに限らず、制御装置50は、移動端末30の床からの高さが所定高さでない場合に同期処理が実行されるようになっていてもよい。また、制御装置50は、二次元平面での移動端末30の位置測定だけでなく、三次元空間での移動端末30の位置測定を行うようになっていてもよい。
【0152】
上述の実施形態では、本開示の測位装置10を工場や倉庫のFAシステムに適用した例について説明したが、測位装置10の適用対象は、これに限定されない。測位装置10は、FAシステム以外の他のシステムにも広く適用可能である。
【0153】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0154】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0155】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0156】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0157】
10 測位装置
30 移動端末
30A 携帯型移動端末
40A、40B、40C、40D、40E 固定端末
50 制御装置
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