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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】電気泳動装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/447 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
G01N27/447 301C
G01N27/447 331E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020165201
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057110
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 博幸
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 弘貴
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/148193(WO,A1)
【文献】特開2013-130437(JP,A)
【文献】特開2012-229932(JP,A)
【文献】特表2019-504898(JP,A)
【文献】特開2007-107915(JP,A)
【文献】特開平11-230936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/447
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気泳動によりサンプルを分離するための分離流路を有するマイクロチップを保持可能なチップ保持部と、
前記マイクロチップを覆うように前記チップ保持部に接続可能なカバーと、を備え、
前記チップ保持部は、
前記マイクロチップが載置されるチップ載置部と、
前記チップ載置部を取り囲むように環状に形成された溝、及び、前記カバーの開閉を検出するセンサを操作するシャフトを挿通させるための挿通孔の少なくとも一方と、を有する、電気泳動装置。
【請求項2】
前記シャフトと、
前記センサと、をさらに備え、
前記チップ保持部は、前記挿通孔を有し、
前記シャフトは、前記挿通孔に挿通されており、
前記センサは、当該センサの少なくとも一部が上下方向に前記チップ保持部の下方に重なる位置に配置されている、請求項1に記載の電気泳動装置。
【請求項3】
前記シャフトは、前記センサを押圧する押圧部を有し、
前記センサは、
センサ本体と、
前記センサ本体に接続されており、前記押圧部による押圧を受けるレバーと、を有し、
前記センサ本体は、前記挿通孔と上下方向に重なる領域から離間した位置に配置されており、かつ、前記レバーが前記押圧部による押圧を受けていない状態において当該レバーが前記センサ本体から前記シャフトに向かうにしたがって下方に向かうように傾斜する姿勢で保持されている、請求項2に記載の電気泳動装置。
【請求項4】
前記チップ保持部は、前記溝を有し、
前記挿通孔は、前記溝、あるいは、前記チップ保持部のうち前記溝の内側の部位に形成されている、請求項2又は3に記載の電気泳動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気泳動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2012-229932号公報には、移動ステージと、移動ステージ上に設置されたマイクロチップと、マイクロチップに対して上面側から嵌め込むことによって装着されたフレームと、を備える電気泳動装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-229932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2012-229932号公報に記載されるような電気泳動装置において、マイクロチップを覆うように移動ステージ(以下、「チップ保持部」と表記する。)にカバーが設けられ、このカバーの開閉がセンサで検出される場合がある。カバーは、例えば、マイクロチップをチップ保持部に押し付けることによってチップ保持部からマイクロチップが浮き上がるのを規制する目的で設けられる。
【0005】
この場合、図6及び図7に示されるように、センサ300は、マイクロチップCを保持するチップ保持部100の側方でかつカバー200の縁部により押圧される位置に配置されることが考えられる。これは、チップ保持部100から漏れた液がセンサ300に至るのを抑制するためである。このため、チップ保持部100、カバー200及びセンサ300を含むユニットの平面視におけるサイズが大型化する。
【0006】
一方、マイクロチップに過剰に液が供給された場合、チップ保持部の縁部から液が落下するため、その液を受けるパンをチップ保持部の下方に設けることが考えられるが、この場合も、チップ保持部及びパンを含むユニットの平面視におけるサイズが大型化する。
【0007】
本発明の目的は、大型化とセンサの液漏れとを回避しつつカバーの開閉を検知すること、及び、大型化を回避しつつチップ保持部からの液の落下によりチップ保持部より下方に配置されている部品が濡れるのを抑制することの少なくとも一方を達成可能な電気泳動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様は、電気泳動によりサンプルを分離するための分離流路を有するマイクロチップを保持可能なチップ保持部と、前記マイクロチップを覆うように前記チップ保持部に接続可能なカバーと、を備え、前記チップ保持部は、前記マイクロチップが載置されるチップ載置部と、前記チップ載置部を取り囲むように環状に形成された溝、及び、前記カバーの開閉を検出するセンサを操作するシャフトを挿通させるための挿通孔の少なくとも一方と、を有する、電気泳動装置に関する。
【発明の効果】
【0009】
この電気泳動装置では、チップ保持部が溝を有する場合、この溝によってマイクロチップから溢れた液が受けられるため、大型化を回避しつつチップ保持部からの液の落下を抑制することが可能となり、チップ保持部が挿通孔を有する場合、その挿通孔内にシャフトが挿通され、かつ、センサの少なくとも一部が上下方向にチップ保持部の下方に重なる位置に配置されることにより、大型化を回避しつつカバーの開閉を検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の電気泳動装置の構成を概略的に示す図である。
図2】チップ保持ユニットの斜視図である。
図3】チップ保持ユニットの分解斜視図である。
図4図3におけるIV-IV線での断面図である。
図5】チップ保持ユニットを下方から見上げる角度における斜視図である。
図6】比較例のチップ保持ユニットを概略的に示す平面図である。
図7図6に示されるチップ保持ユニットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態の電気泳動装置の構成を概略的に示す図である。電気泳動装置1は、サンプル(DNA、RNA、タンパク質等)の分析が可能である。図1に示されるように、電気泳動装置1は、分注プローブ2と、電圧印加部3と、検出部4と、制御部5と、チップ保持ユニット8と、を備えている。
【0013】
分注プローブ2は、サンプルの吸引及び分注、並びに、洗浄液の供給等を行う。電圧印加部3は、マイクロチップCに電圧を印加する。検出部4は、マイクロチップCの分離流路fで分離された試料成分を検出する。制御部5は、分注プローブ2、電圧印加部3、検出部4等を制御する。
【0014】
図2は、チップ保持ユニットの斜視図である。図3は、チップ保持ユニットの分解斜視図である。図2及び図3に示されるように、チップ保持ユニット8は、チップ保持部10と、カバー20と、センサ30と、シャフト40と、付勢部材50と、ブラケット60と、を備えている。
【0015】
チップ保持部10は、マイクロチップCを保持する。マイクロチップCは、電気泳動によりサンプルを分離するための分離流路fを有している。チップ保持部10は、チップ載置部12と、カバー受け面14と、溝16と、挿通孔18と、を有している。
【0016】
チップ載置部12は、マイクロチップCが載置される部位である。チップ載置部12は、マイクロチップCを収容する形状を有している。
【0017】
カバー受け面14は、チップ載置部12の周囲に形成されている。カバー受け面14は、平坦に形成されている。カバー受け面14は、カバー20の裏面を受ける。
【0018】
溝16は、チップ載置部12を取り囲むように環状に形成されている。溝16は、カバー受け面14の周囲に形成されている。換言すれば、チップ保持部10のうちチップ載置部12と溝16との間にカバー受け面14が形成されている。溝16は、カバー受け面14から窪んだ形状を有している。溝16は、マイクロチップCに規定量以上の液が流れた場合にチップ載置部12から流出した液を受ける。溝16に受けられた液は、ドレイン16a(図3を参照)を通じて排出される。
【0019】
挿通孔18は、シャフト40を挿通させる孔である。挿通孔18は、チップ保持部10をその厚み方向に貫通している。図3及び図4に示されるように、挿通孔18は、カバー受け面14に設けられている。シャフト40は、後述のようにセンサ30を操作する部材であるため、このシャフト40を挿通させる挿通孔18が溝16よりも内側のカバー受け面14に設けられることにより、チップ保持ユニット8が小型化される。
【0020】
カバー20は、マイクロチップCを覆うようにチップ保持部10に接続可能である。カバー20には、マイクロチップCに液を供給するための開口部20hが設けられている。カバー20は、締結部材71によってチップ保持部10に固定されている。
【0021】
シャフト40は、挿通孔18に挿通されている。シャフト40は、センサ30を操作する部材である。シャフト40は、軸部42と、押圧部44と、付勢部材保持部46と、を有している。
【0022】
軸部42は、挿通孔18に挿通されている。軸部42の先端部42aは、カバー受け面14から突出している。この先端部42aは、カバー20に押される部位である。
【0023】
押圧部44は、センサ30を押圧する部位である。押圧部44は、軸部42の下端部に接続されている。押圧部44は、軸部42から当該軸部42の軸方向と直交する方向に張り出す形状を有している。押圧部44の外形は、挿通孔18よりも大きい。本実施形態では、押圧部44は、円板状に形成されている。
【0024】
付勢部材保持部46は、付勢部材50を保持する部位である。付勢部材保持部46は、押圧部44から下方に向かって延びる形状を有している。付勢部材保持部46の外形は、押圧部44の外形よりも小さい。
【0025】
センサ30は、カバー20の開閉を検出する。本実施形態では、センサ30として、マイクロスイッチが採用されている。図4に示されるように、センサ30は、当該センサ30の少なくとも一部が上下方向にチップ保持部10の下方に重なる位置に配置されている。センサ30は、センサ本体32と、レバー34と、を有している。
【0026】
センサ本体32は、挿通孔18と上下方向に重なる領域から離間した位置に配置されている。図4に示されるように、センサ本体32は、溝16と上下方向に重なる位置に配置されている。
【0027】
レバー34は、センサ本体32に接続されている。レバー34は、押圧部44による押圧を受ける部位である。レバー34は、センサ本体32の接点を切り替える。レバー34は、平板状に形成されている。
【0028】
センサ本体32は、レバー34が押圧部44による押圧を受けていない状態(図4に示される状態)において当該レバー34がセンサ本体32からシャフト40に向かうにしたがって下方に向かうように傾斜する姿勢で保持されている。図2図3及び図5に示されるように、センサ本体32は、締結部材72によってブラケット60に固定されている。
【0029】
付勢部材50は、シャフト40をチップ保持部10に向けて付勢している。付勢部材50は、付勢部材保持部46に保持されている。本実施形態では、付勢部材50は、コイルバネで構成されている。付勢部材50は、押圧部44をチップ保持部10の裏面に向けて付勢するように圧縮された状態で付勢部材保持部46に保持されている。
【0030】
ブラケット60は、センサ30及びシャフト40を保持している。図5に示されるように、ブラケット60は、締結部材73によってチップ保持部10の裏面に固定されている。ブラケット60は、センサ保持部62と、シャフト保持部64と、を有している。
【0031】
センサ保持部62は、センサ本体32を保持している。センサ保持部62は、レバー34が押圧部44による押圧を受けていない状態において当該レバー34がセンサ本体32からシャフト40に向かうにしたがって下方に向かうように傾斜する姿勢となるようにセンサ本体32を保持している。このため、挿通孔18を通じて漏れた液がシャフト40及びレバー34を経由してセンサ本体32に至ることが抑制される。
【0032】
シャフト保持部64は、シャフト40の付勢部材保持部46を保持している。付勢部材50は、押圧部44とシャフト保持部64との間に圧縮された状態で配置されている。
【0033】
以上に説明したように、本実施形態の電気泳動装置1では、センサ30は、当該センサ30の少なくとも一部が上下方向にチップ保持部10の下方に重なる位置に配置されているため、大型化を回避しつつカバー20の開閉を検知することが可能である。
【0034】
さらに、チップ保持部10は、マイクロチップCから溢れた液を受ける溝16を有しているため、大型化を回避しつつチップ保持部10からの液の落下が抑制される。
【0035】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0036】
例えば、上記実施形態では、チップ保持部10が溝16及び挿通孔18の双方を有する例が示されたが、チップ保持部10は、溝16及び挿通孔18の少なくとも一方を有していればよい。例えば、液漏れの頻度や量が少ない場合、溝16は省略されてもよい。この場合、チップ保持部10の下方へのパンの設置は不要である。
【0037】
また、センサ30として、光学センサ等が用いられてもよい。この場合においても、センサ30は、当該センサ30の少なくとも一部が上下方向にチップ保持部10の下方に重なり、かつ、挿通孔18と上下方向に重なる領域から水平方向に離間した位置に配置される。
【0038】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0039】
(第1項)一態様に係る前記電気泳動装置は、電気泳動によりサンプルを分離するための分離流路を有するマイクロチップを保持可能なチップ保持部と、前記マイクロチップを覆うように前記チップ保持部に接続可能なカバーと、を備え、前記チップ保持部は、前記マイクロチップが載置されるチップ載置部と、前記チップ載置部を取り囲むように環状に形成された溝、及び、前記カバーの開閉を検出するセンサを操作するシャフトを挿通させるための挿通孔の少なくとも一方と、を有する。
【0040】
第1項に記載の電気泳動装置では、チップ保持部が溝を有する場合、この溝によってマイクロチップから溢れた液が受けられるため、大型化を回避しつつチップ保持部からの液の落下を抑制することが可能となり、チップ保持部が挿通孔を有する場合、その挿通孔内にシャフトが挿通され、かつ、センサの少なくとも一部が上下方向にチップ保持部の下方に重なる位置に配置されることにより、大型化を回避しつつカバーの開閉を検知することが可能となる。
【0041】
(第2項)第1項に記載の電気泳動装置において、前記シャフトと、前記センサと、をさらに備え、前記チップ保持部は、前記挿通孔を有し、前記シャフトは、前記挿通孔に挿通されており、前記センサは、当該センサの少なくとも一部が上下方向に前記チップ保持部の下方に重なる位置に配置されていることが好ましい。
【0042】
第2項に記載の電気泳動装置によれば、大型化が回避されつつカバーの開閉が検知される。
【0043】
(第3項)第2項に記載の電気泳動装置において、前記シャフトは、前記センサを押圧する押圧部を有し、前記センサは、センサ本体と、前記センサ本体に接続されており、前記押圧部による押圧を受けるレバーと、を有し、前記センサ本体は、前記挿通孔と上下方向に重なる領域から離間した位置に配置されており、かつ、前記レバーが前記押圧部による押圧を受けていない状態において当該レバーが前記センサ本体から前記シャフトに向かうにしたがって下方に向かうように傾斜する姿勢で保持されていることが好ましい。
【0044】
第3項に記載の電気泳動装置によれば、挿通孔を通じて漏れた液がシャフト及びレバーを経由してセンサ本体に至ることが抑制される。
【0045】
(第4項)第2項又は第3項に記載の電気泳動装置において、前記チップ保持部は、前記溝を有し、前記挿通孔は、前記溝、あるいは、前記チップ保持部のうち前記溝の内側の部位に形成されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0046】
1 電気泳動装置、10 チップ保持部、12 チップ載置部、14 カバー受け面、16 溝、18 挿通孔、20 カバー、20h 開口部、30 センサ、32 センサ本体、34 レバー、40 シャフト、42 軸部、42a 先端部、44 押圧部、46 付勢部材保持部、50 付勢部材、60 ブラケット、62 センサ保持部、64 シャフト保持部、C マイクロチップ、f 分離流路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7