(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】インダクタ
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20231114BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H01F27/29 Q
H01F27/29 V
H01F17/04 F
(21)【出願番号】P 2020171236
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】水越 泰孝
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-177492(JP,A)
【文献】特開2019-153644(JP,A)
【文献】特開2016-092422(JP,A)
【文献】特開2014-017314(JP,A)
【文献】特開2013-211333(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0307693(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0090800(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-19/08、27/02、
H01F 27/28-27/29、30/10、37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの幅面を有する導体を巻回してなる巻回部、および前記巻回部から引き出される1対の引き出し部を含むコイルと、
磁性粉を含み、前記コイルを埋設する磁性部と、を含む素体と、
前記素体の表面に配置され、前記引き出し部に接続される外部電極と、を備え、
前記素体は、互いに対向する1対の第1側面を有し、
前記引き出し部は、前記第1側面と略平行に配置され、前記第1側面から露
出して前記外部電極と接続する第1領域を前記導体の幅面の一方に有し、
前記引き出し部は、前記第1領域と鈍角で交差して引き出し部の末端まで延在
して前記導体の厚みが単調に減少する平面部を有
し、
前記平面部の一部は、前記磁性部に埋設されているインダクタ。
【請求項2】
前記引き出し部は、延伸方向に沿って、互いに逆向きに湾曲する2つの湾曲部を有する請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
前記平面部は、前記外部電極と接続する第2領域と、引き出し部の末端側で前記磁性部に埋設される第3領域と、を有する請求項1または2に記載のインダクタ。
【請求項4】
前記第1側面の幅方向の長さに対する前記第1領域の延在方向の長さの比が、1/3以上である請求項1から3のいずれかに記載のインダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コイルと、コイルを内蔵し、樹脂と磁性材料を含む封止材を用いて形成された成形体とを備える表面実装インダクタであって、コイルの引き出し端末を構成する導体の表面を成形体の表面に露出させ、導電ペーストによって形成された外部端子と接続してなる表面実装インダクタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インダクタでは、直流抵抗を低減するために厚みのある導体でコイルが形成される場合がある。このとき巻回された導体のスプリングバックにより、素体の成形時に素体から露出する引き出し部の一部が素体から剥離して、外部電極との接続に不具合が生じる場合があった。本発明は、コイルの引き出し部と外部電極との接続信頼性に優れるインダクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様は、対向する2つの幅面を有する導体を巻回してなる巻回部、および巻回部から引き出される1対の引き出し部を含むコイル、ならびに磁性粉を含み、コイルを埋設する磁性部を含む素体と、素体の表面に配置され、引き出し部に接続される外部電極と、を備えるインダクタである。引き出し部は、素体の対向する第1側面と略平行に配置され、第1側面から露出して外部電極と接続する第1領域を導体の幅面の一方に有する。さらに引き出し部は、第1領域と鈍角で交差して引き出し部の末端まで延在する平面部を有する。
【0006】
第2態様は、対向する2つの幅面を有する導体を巻回してなる巻回部、および巻回部から引き出される1対の引き出し部を含むコイル、ならびに磁性粉を含み、コイルを埋設する磁性部を含む素体と、素体の表面に配置され、引き出し部に接続される外部電極とを備えるインダクタである。素体は互いに対向する1対の第1側面を有する。引き出し部は、第1側面と略平行に配置され、第1側面から露出して外部電極と接続する第1領域を導体の幅面の一方に有する。さらに引き出し部は、延伸方向に沿って互いに逆向きに湾曲する2つの湾曲部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コイルの引き出し部と外部電極との接続信頼性に優れるインダクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1のインダクタを第2主面側からみた部分透過斜視図である。
【
図2】実施例1のインダクタを構成する素体を第2主面側からみた部分透過平面図である。
【
図3】実施例1のインダクタを構成するコイルの製造方法の一例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1態様のインダクタは、対向する2つの幅面を有する導体を巻回してなる巻回部、および巻回部から引き出される1対の引き出し部を含むコイル、ならびに磁性粉を含み、コイルを埋設する磁性部を含む素体と、素体の表面に配置され、引き出し部に接続される外部電極とを備える。素体は互いに対向する1対の第1側面を有する。引き出し部は、第1側面と略平行に配置され、第1側面から露出して外部電極と接続する第1領域を導体の幅面の一方に有する。さらに引き出し部は、第1領域と鈍角で交差して引き出し部の末端まで延在する平面部を有する。また、引き出し部は、延伸方向に沿って互いに逆向きに湾曲する2つの湾曲部を有していてよい。
【0010】
第2態様のインダクタは、対向する2つの幅面を有する導体を巻回してなる巻回部、および巻回部から引き出される1対の引き出し部を含むコイル、ならびに磁性粉を含み、コイルを埋設する磁性部を含む素体と、素体の表面に配置され、引き出し部に接続される外部電極とを備える。素体は互いに対向する1対の第1側面を有する。引き出し部は、第1側面と略平行に配置され、第1側面から露出して外部電極と接続する第1領域を導体の幅面の一方に有する。さらに引き出し部は、延伸方向に沿って互いに逆向きに湾曲する2つの湾曲部を有する。また、引き出し部は、第1領域と鈍角で交差して引き出し部の末端まで延在する平面部を有していてよい。
【0011】
引き出し部が、第1領域と鈍角で交差して引き出し部の末端まで延在する平面部を有する、すなわち、引き出し部の末端にかけて導体の厚みが薄くなっていることで、素体の成形時に磁性部が引き出し部の末端部分の平面部の少なくとも一部を被覆することになり、引き出し部と素体との接着性が向上して、引き出し部の素体からの剥離が抑制される。これにより、引き出し部と外部電極との接続信頼性が向上する。また、引き出し部が第1領域と平面部とを有することで外部電極との接続面積が大きくなり、インダクタの直流抵抗を低減できる。また、引き出し部が2つの湾曲部を有していることで、第1側面から露出する引き出し部の面積をより大きくできる。これにより、引き出し部と外部電極との接続信頼性が向上するとともに、インダクタの直流抵抗をより効果的に低減できる。
【0012】
平面部は、外部電極と接続する第2領域と、引き出し部の末端側で磁性部に埋設される第3領域と、を有していてよい。引き出し部の末端が磁性部に埋設されることで、引き出し部の素体からの剥離がより効果的に抑制されて、引き出し部と外部電極との接続信頼性がより向上する。
【0013】
第1側面の幅方向の長さに対する第1領域の延在方向の長さの比が、1/3以上であってよい。第1側面から露出する引き出し部の面積が大きくなることで、引き出し部と外部電極との接続面積がより大きくなり、接続信頼性が向上するとともに、インダクタの直流抵抗をより効果的に低減できる。
【0014】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、インダクタを例示するものであって、本発明は、以下に示すインダクタに限定されない。なお特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に限定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0016】
実施例1
実施例1のインダクタを
図1から
図3を参照して説明する。
図1はインダクタ100を第2主面側からみた部分透過斜視図である。
図2は、インダクタ100を構成する素体10を第2主面側からみた部分透過平面図である。
図3は、インダクタ100を構成するコイル30の製造方法の一例を説明する概略図である。
図1では、曲面を表すための補助線として破線を用いている部分がある。
【0017】
図1および
図2に示されるように、インダクタ100は、コイル30と、磁性粉および樹脂を含みコイル30を埋設する磁性部とを含む素体10と、素体10の表面に配置されてコイル30と電気的に接続される1対の外部電極40とを備える。素体10は略直方体形状を有し、実装面側の第1主面12と、第1主面12に対して高さ方向(T方向)で対向する第2主面14と、第1主面12および第2主面14に隣接して略直交し、互いに長さ方向(L方向)で対向する2つの第1側面16と、第1主面12および第1側面16に隣接して略直交し、互いに幅方向(W方向)で対向する2つの第2側面18とを有する。コイル30を形成する導体は、導体の厚み方向に対向する2つの幅面を有し、延伸方向に直交する断面が、導体の幅と厚みで規定される略矩形状になっており、表面に被覆層を有している。コイル30は、対向する2つの幅面を有する導体が、巻軸Nの周りに幅面を巻軸Nに略平行にして上下2段に巻回されてなる巻回部32および巻回部32の最外周から引き出される1対の引き出し部を有する。
【0018】
コイル30の巻回部32は、一本の導体が、両端が最外周部に位置し、導体の幅で規定される幅面の一方が外周側になり、他方の面が内周側になるようにし、導体の幅で規定される面を巻軸に対して略平行にして、導体の幅で規定される面の少なくとも一部が重なるように渦巻状に巻回されるとともに、最内周部で繋り、導体の厚みで規定される面を互いに対向させた上下2段に巻回されてなる(いわゆるα巻き)。すなわち、巻回部32の上段では導体が外周から内周に向かって渦巻状に巻回されて、最内周で下段に接続され、下段では内周から外周に向かって渦巻状に巻回されてなる。コイル30は、巻回部32の巻軸Nを素体10の第1主面12および第2主面14に略直交させて素体10に埋設される。
【0019】
コイル30の1対の引き出し部は、巻回部の上段の最外周から引き出される第1引き出し部と、巻回部の下段の最外周から引き出される第2引き出し部とからなる。コイル30のそれぞれの引き出し部は、その一部である第1領域34が素体10のそれぞれの第1側面16と略平行にして配置され、導体の巻回部において外周側になる幅面を第1側面16から露出して素体10に埋設される。それぞれの引き出し部は、その末端にかけて、第1領域34と鈍角で交差して引き出し部の末端まで延在する平面部36を有する。すなわち、引き出し部は、第1領域34と平面部36との交線から引き出し部の末端にかけて導体の厚みが単調に減少する領域を有している。素体10の第1側面16には、導体の厚みの減少に対応して磁性部が欠落し、平面部の一部である第2領域36Aが露出する凹部が設けられる。別の態様においては、第2領域36Aは、磁性部に埋設されていてもよい。
【0020】
図2に示されるように、第1領域34は、導体の幅面を素体10の第1側面16に略平行に配置される。第1領域34と連続して設けられる平面部36は、第1領域34と鈍角である角θで交差する。また平面部36は、第1領域34と連続し、第1側面16から露出して、外部電極と接続する第2領域36Aと、第2領域36Aと連続し、磁性部に埋設される第3領域36Bとを有する。すなわち、引き出し部は、その末端が磁性部に埋設されている。引き出し部の末端である第3領域36Bが磁性部に埋設されることで、引き出し部の素体からの剥離がより効果的に抑制される。剥離をより効果的に抑制するには角θは、100°以上であればよい。
【0021】
第1側面16から露出する第1領域34は、第1側面16に平行なW方向に長さE1を有し、外部電極(図示せず)と接続される。第1領域34の長さE1の第1側面16のW方向の長さに対する比は、例えば1/3以上であってよく、1/2以上であってもよい。第1領域の長さが所定値以上であることで、外部電極との接続抵抗をより低減できる。また、引き出し部は、素体10の第1側面16から露出して外部電極に接続する露出部として、第1領域34および第2領域36Aを有し、露出部は第1側面16に平行なW方向に長さE2を有している。長さE2の第1側面16のW方向の長さに対する比は、例えば1/3より大きく、1/2以上であってもよい。露出部の長さが所定値以上であることで、外部電極との接続抵抗をより低減できる。
【0022】
引き出し部は、巻回部32からの引き出し位置から第1領域34の間に、引き出し方向に沿って、互いに逆向きに湾曲する2つの湾曲部を有する。
図2に示されるように、巻回部32から引き出された導体は、延伸方向に沿って、巻回部において外周側となる幅面側に湾曲する第1湾曲部38Aと、巻回部において内周側となる幅面側に湾曲する第2湾曲部38Bとを有する。これにより、スプリングバックを抑制しつつ、第1領域の長さをより長くすることができ、コイルと外部電極との接続抵抗をより低減できる。
【0023】
インダクタ100では、
図1に示すように外部電極40は、素体10の第1主面12、第1側面16、第2側面18および第2主面14の5面に亘って配置され、第1側面16において露出するコイル30の引き出し部の第1領域34と接続される。また、第1側面16に設けられる凹部には外部電極を形成する導電性樹脂が充填され、平面部の第2領域36Aと外部電極40とを接続する。外部電極40は、銀粒子、銅粒子等の導電性粒子と結着樹脂とを含む導電性樹脂層であってよい。さらに、外部電極40は、導電性樹脂層上に形成されるめっき層を含んでいてよい。めっき層は、例えば、ニッケルから形成される層と、その上に形成され、スズから形成される層とを含んでいてよい。外部電極が形成される領域は、素体の表面から素体を構成する樹脂の一部、磁性粉の表面を被覆する絶縁層の一部が除去された磁性粉露出領域であってもよい。磁性粉露出領域では、一部の磁性粉が連結してネットワーク構造を形成し、表面粗さが大きくなっている。そのため、外部電極が、導電性樹脂層の場合は素体への接着性が向上し、めっき層の場合はめっきが成長し易くなる。
【0024】
素体10の大きさは、長さLが例えば1mm以上3.4mm以下、好ましくは1mm以上3mm以下であり、幅Wが例えば0.5mm以上2.7mm以下、好ましくは0.5mm以上2.5mm以下であり、高さTが例えば0.5mm以上2mm以下、好ましくは0.5mm以上1.5mm以下である。素体の大きさとして具体的には、L×W×Tが例えば、1mm×0.5mm×0.5mm、1.6mm×0.8mm×0.8mm、2mm×1.2mm×1mm、2.5mm×2mm×1.2mmであってよい。
【0025】
素体10を構成する磁性部は、磁性粉と樹脂を含有する複合材料から形成される。磁性粉としては、Fe、Fe-Si、Fe-Ni、Fe-Si-Cr、Fe-Si-Al、Fe-Ni-Al、Fe-Ni-Mo、Fe-Cr-Al等の鉄系の金属磁性粉、他の組成系の金属磁性粉、アモルファス等の金属磁性粉、表面がガラス等の絶縁層で被覆された金属磁性粉、表面を改質した金属磁性粉、ナノレベルの微小な金属磁性粉末が用いられる。また、樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂が用いられる。磁性部における磁性粉の面積比率は、例えば50%以上85%以下、好ましくは60%以上85%以下または70%以上85%以下である。面積比率は、インダクタの中心を通り長手方向の断面の中央部の所定領域に存在する磁性粉の合計面積を、所定領域の面積で除して求めることができる。
【0026】
コイルを形成する導体の厚みは例えば0.01mm以上1mm以下であってよい。導体の幅は例えば0.1mm以上2mm以下であってよい。導体断面のアスペクト比(幅/厚み)は例えば1/1以上、または1/1以上30/1以下であってよい。また、導体を被覆する被覆層は、厚みが、例えば2μm以上20μm以下のポリイミド、ポリアミドイミド等の絶縁性樹脂で形成される。被覆層の表面には、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂等の自己融着成分を含む融着層が更に設けられていてもよく、その厚みが1μm以上8μm以下に形成されていてもよい。融着層が設けられることで、巻回部の巻き解けをより効果的に抑制することができる。
【0027】
素体10の表面には、保護層が配置されていてよい。保護層は外部電極が配置される領域以外の素体の表面に配置されてよいし、引き出し部の第1領域が露出する領域以外の素体の表面に配置されてもよい。保護層は例えば、樹脂を含んで構成されてよい。保護層を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂が用いられる。保護層はフィラーを含んでいてもよい。フィラーとしては酸化ケイ素、酸化チタン等の非導電性フィラーが用いられる。保護層は例えば、樹脂とフィラーを含む樹脂組成物を、素体の表面に塗布、ディップ等の手段により付与し、必要に応じて、付与された樹脂を硬化することにより形成される。保護層は、水ガラス等の無機材料から形成されてもよい。また、保護層は、磁性粉露出領域以外の領域に形成されていてもよい。
【0028】
素体にはマーカー(図示せず)が付与されていてもよい。マーカーは例えば、素体の第2主面の、巻回部の下段から引き出し部が引き出される側に付与され、インダクタの極性を示してよい。マーカーは例えば、印刷、レーザー刻印等で付与される。
【0029】
インダクタの製造方法
次にインダクタの製造方法について説明する。インダクタは、例えば、導体を巻回してコイルを形成するコイル形成工程と、形成されたコイルの引き出し部の末端部を切断して所定の長さに調整する切断工程と、形成されたコイルを、引き出し部の末端部(第1領域)を露出させて金属磁性粉と樹脂を含む複合材料に埋設し、金型等で加圧することにより、コイルとコイルを埋設する磁性部とからなる素体を成形する素体形成工程と、素体の表面に露出した引き出し部の末端部と接続する外部電極を形成する外部電極形成工程とを含む製造方法で製造することができる。
【0030】
コイルの引き出し部の末端部の切断は、例えば、
図3に示すようなカット刃220を備えるコイル保持部と、受け刃210とを用いて行う。具体的には、コイル30の巻回部をコイル保持部に収容し、受け刃210とカット刃220とでコイル30の引き出し部を導体の延伸方向に対して斜めに切断することで、引き出し部の末端に平面部が形成される。
【0031】
上述したインダクタでは、外部電極は、素体の第1主面の一部、第2主面の一部、第2側面の一部および第1側面の5面に亘って配置されている場合を説明したが、素体の第1主面の一部および第1側面の少なくとも一部に亘って形成されていてよい。一方の引き出し部のみが、第1領域と鈍角で交差して引き出し部の末端まで延在する平面部を有してもよく、また、一方の引き出し部のみが、延伸方向に沿って互いに逆向きに湾曲する2つの湾曲部を有していてよい。導体の延伸方向に直交する断面は矩形状としたが、矩形状にかぎらず、角部が面取りされていてもよく、辺が半円、半楕円等の曲線で構成されてもよい。コイルの巻回部を巻軸方向から見た形状は、長円形以外の形状、例えば、円形状、楕円形状、面取りされた多角形状等であってもよい。素体の第1主面の外部電極が配置されていない領域には凹部(スタンドオフ)が形成されていてよい。素体の第1主面に設けられる凹部は、幅W方向から見て高さT方向の形状が、半円形状であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 素体
30 コイル
40 外部電極
100 インダクタ