(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】牽引車両
(51)【国際特許分類】
B60D 1/32 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
B60D1/32
(21)【出願番号】P 2020201401
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】柳町 修平
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-269698(JP,A)
【文献】特開2016-120755(JP,A)
【文献】実開昭50-108202(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第19953768(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60D 1/32
B60D 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体の後部に設けられ、台車との連結を可能とする台車連結装置と、を備えた牽引車両において、
前記台車連結装置は、
前記台車と連結可能であり、伸縮可能なサスペンション部と、
前記サスペンション部の伸縮を規制する伸縮規制部と、
前記伸縮規制部を制御する制御部と、を備え、
走行時の前記サスペンション部の長さを検出又は推定し、前記サスペンション部の長さが予め設定された設定長さ以上のとき、前記制御部は、前記サスペンション部の伸縮を規制するように前記伸縮規制部を制御することを特徴とする牽引車両。
【請求項2】
前記制御部は、停車直前に前記サスペンション部の伸縮の規制を解除するように前記伸縮規制部を制御することを特徴とする請求項1記載の牽引車両。
【請求項3】
前記サスペンション部の長さを検出する測距センサを備えることを特徴とする請求項1又は2記載の牽引車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、牽引車両に関する。
【背景技術】
【0002】
牽引車両に関する従来技術として、例えば、特許文献1に開示されたトーイングトラクタの牽引装置が知られている。特許文献1に開示されたトーイングトラクタの牽引装置では、車体に固着したドローバーブラケットに対してドローバーピンが昇降可能に設けられ、このドローバーピンの頭部はドローバーリンクを介してドローバーレバーに連結されている。ドローバーレバーは車体に固着したレバーブラケットに枢着されると共に操作レバーにより回動される。ドローバーピンは,台車側のドローバーと連結され、トーイングトラクタは台車を牽引する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された牽引車両(トーイングトラクタ)では、台車を牽引している状態で牽引車両を停車させると、停車した牽引車両は台車の慣性力を受けるので、停止した牽引車が台車に押されて前に移動するという問題がある。特に、牽引車両が自動運転される場合、牽引車両の停車精度が低下することになる。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、停車時に台車の慣性力を受けても、停車位置に対する高い停車精度を可能とする牽引車両の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、車体と、前記車体の後部に設けられ、台車との連結を可能とする台車連結装置と、を備えた牽引車両において、前記台車連結装置は、前記台車と連結可能であり、伸縮可能なサスペンション部と、前記サスペンション部の伸縮を規制する伸縮規制部と、前記伸縮規制部を制御する制御部と、を備え、走行時の前記サスペンション部の長さを検出又は推定し、前記サスペンション部の長さが予め設定された設定長さ以上のとき、前記制御部は、前記サスペンション部の伸縮を規制するように前記伸縮規制部を制御することを特徴とする。
【0007】
本発明では、台車を牽引する牽引車両が停車している状態から走行し始めると、サスペンション部が伸長する。走行時のサスペンション部の長さが検出又は推定され、サスペンション部の長さが予め設定された設定長さ以上のとき、制御部は伸縮規制部を制御して、サスペンション部の伸縮が規制される。このため、サスペンション部では設置長さ以上の長さが保持され、サスペンション部に牽引車両の停車時に台車の慣性力を吸収する縮み代を確保することができ、停止時において台車の慣性力を受けても牽引車が停車位置から移動することはない。また、牽引車両が台車を牽引して走行するとき、サスペンション部の長さが変更されないため、牽引車両および牽引される台車を含む車両群の内輪差が定まり、台車の走行軌跡は安定する。
【0008】
また、上記の牽引車両において、前記制御部は、停車直前に前記サスペンション部の伸縮の規制を解除するように前記伸縮規制を制御する構成としてもよい。
この場合、牽引台車の停車直前にサスペンション部の伸縮の規制が解除されるので、牽引台車が停車するときに台車の慣性力を受けても、サスペンション部が台車の慣性力を吸収することができる。
【0009】
また、上記の牽引車両において、前記サスペンション部の長さを検出する測距センサを備える構成としてもよい。
この場合、測距センサがサスペンション部の長さを実際に測定して検出するので、サスペンション部の長さを推定する場合と比較して正確である。その結果、サスペンション部では予め設定された設定長さ以上の長さが保持され、サスペンション部に牽引車両の停車時に台車の慣性力を吸収する縮み代を確実に確保することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、停車時に台車の慣性力を受けても、停車位置に対する高い停車精度を可能とする牽引車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る牽引車および台車を示す側面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る牽引車の概略構成を示す概略構成図である。
【
図3】第1の実施形態に係るサスペンション部の伸縮の規制および解除の制御を示すフロー図である。
【
図4】第2の実施形態に係る牽引車および台車を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る牽引車両について図面を参照して説明する。本実施形態の牽引車両は、自動運転による無人での走行が可能な自動運転タイプの小型牽引車であり、荷を載置可能とする複数の台車を自動運転により牽引して走行する。
【0013】
図1に示すように、小型牽引車(以下、単に「牽引車」と表記する)10の車体11の前部には、前輪としての操舵輪12を備えている。車体11の後部には後輪としての左右一対の駆動輪13を備えている。車体11には、駆動輪13を駆動する駆動モータ14と、駆動モータ14を駆動するための電力を蓄えるバッテリ15と、牽引車10の各部を制御する制御装置16と、を備えている。
【0014】
牽引車10は、操舵輪12を自動的に操舵する自動操舵機構17を有している。自動操舵機構17は、牽引車10が予め設定された目的地までの走行経路を走行するように操舵輪12を操舵するため制御装置16により制御される。なお、
図1に示す牽引車10は、運転席を備えるが自動運転による無人走行を行う。駆動輪13は駆動モータ14によって駆動される。駆動モータ14はバッテリ15からの電力の供給を受けて駆動され、制御装置16により制御される。バッテリ15は充放電可能であるほか、駆動モータ14の回生時に生じる電力を蓄電する機能を有する。
【0015】
図2に示すように、制御装置16は、中央演算処理部(CPU)18と、記憶部19と、モータ駆動部20と、を有する。中央演算処理部18は、各種プログラムを実行し、牽引車10の自動運転に必要な処理を行う。記憶部19は各種プログラムや各種データを記憶する。モータ駆動部20は、駆動モータ14を制御するためのドライブ回路(図示せず)を有している。制御装置16は、駆動輪13に備えられた車速センサ21と接続されており、車速センサ21により検出された車速を示す信号は制御装置16に伝達される。制御装置16は、後述するロックシリンダ32を制御する制御部に相当する。
【0016】
図1に示すように、車体11の後部には、次に説明する台車25を牽引するための台車連結装置22が備えられている。台車連結装置22は、台車25との連結や台車25との連結を解除し易くするように構成されている。台車連結装置22による牽引車10と台車25との連結作業や解除作業は、作業者が台車連結装置22を操作することにより行われる。台車連結装置22の詳細については後述する。
【0017】
次に、台車25について説明する。本実施形態では、
図1に示すように、複数の台車25が牽引車10に連結されている。本実施形態における複数の台車25は、いずれも同じ構成であるが、連結可能であれば異なる種類の台車を牽引するようにしてもよい。台車本体26の前後には左右一対の車輪27が備えられている。台車本体26の上面は荷Wを載置するための荷台である。台車本体26の前部には、他の台車25の後部との連結を可能とする連結器28が備えられている。また、連結器28は牽引車10の台車連結装置22との連結が可能である。連結器28による台車25の連結および連結器28の連結の解除は、作業者によって行われる。
【0018】
ところで、本実施形態では、牽引車10の台車連結装置22は、走行中の牽引車10が停車するときに、後方から受ける台車25の慣性力を吸収するための構成を具備している。具体的には、台車連結装置22は、弾性変形可能なサスペンション部31と、サスペンション部31の伸縮を規制する伸縮規制部としてのロックシリンダ32と、サスペンション部31の長さを計測する測距センサ33と、を有している。
【0019】
サスペンション部31は、長手方向に伸縮可能なコイルばね34を備えており、コイルばね34の一方の端部は、車体11に固定されており固定部材35、コイルばね34の他方の端部は、台車25の連結器28と連結可能な可動部材36に固定されている。コイルばね34の伸縮により、固定部材35と可動部材36との距離が変化する。なお、
図1では、説明の便宜上、サスペンション部31を模式的に示している。また、コイルばね34に代えてオイルダンパーを用いてもよい。
【0020】
ロックシリンダ32は、シリンダ本体38とシリンダ本体38に対して伸縮するピストンロッド39を備えたエアシリンダであり、ピストンロッド39を任意のストロークで固定(ロック)することが可能である。ロックシリンダ32は制御装置16により制御される。ロックシリンダ32が固定状態では、コイルばね34は伸縮が規制された状態となり、固定部材35と可動部材36との距離は変化しない。ロックシリンダ32が固定状態を解放した状態(以後、「解放状態」と表記する)では、コイルばね34は伸縮が規制されない状態となる。
【0021】
測距センサ33は、サスペンション部31の長さをレーザーにより計測することが可能な光学式の測距センサである。なお、測距センサ33に代えて、荷重センサを用いてフックの法則に基づきサスペンション部31の長さを推定するようにしてもよい。荷重センサを用いる場合、サスペンション部31の長さは、サスペンション部31のコイルばね34のばね定数と、荷重センサによって検出された荷重と、から推定される。
【0022】
制御装置16によるロックシリンダ32の固定状態と解放状態との切り換えの制御は、
図3に示すフロー図に従う。
図3に示すように、制御装置16は、牽引車10の停車時はロックシリンダ32を解放状態とする(ステップS01)。このとき、サスペンション部31のコイルばね34は台車25によって押されている状態で縮み代がほぼ存在しないことを前提とする。
【0023】
次に、制御装置16は牽引車10の走行を開始させる(ステップS02)。牽引車10が走行開始すると、サスペンション部31が加速に伴い伸長を開始する(ステップS03)。制御装置16は車速Vが予め設定された第1設定車速V1以上であって、かつ、サスペンション部31の長さLが予め設定された設定長さLt以上に伸長されたか否かを判別する(ステップS04)。設定長さLtは台車25の数や荷Wの重量に応じて変動するが、記憶部19には予め牽引する台車25の数や荷Wの重量が記憶されている。なお、サスペンション部31の長さLは、コイルばね34の伸縮により定まるが、設定長さLt以上に伸長されても、コイルばね34の自然長は超えない。つまり、設定長さLtはコイルばね34が自然長の状態でのサスペンション部31の長さ未満である。
【0024】
サスペンション部31が設定長さLt以上に伸長されると、制御装置16はロックシリンダ32を固定状態とし、サスペンション部31の伸縮を規制する(ステップS05)。ステップS04において、例えば、車速Vが第1設定車速V1以上であっても、サスペンション部31が設定長さLt未満の場合は、ロックシリンダ32は解放状態のままである。サスペンション部31の長さLが設定長さ以上Ltに伸長されることにより、牽引車10の停車時に、停車時の台車25の慣性力を吸収する縮み代がサスペンション部31に確保される。また、サスペンション部31の長さがロックシリンダ32により変更されないため、牽引車10および牽引される台車25を含む車両群の内輪差が定まる。
【0025】
次に、制御装置16は、停車のために牽引車10の減速を開始する(ステップS06)。停車のために牽引車10の減速を開始すると、制御装置16は車速Vが予め設定された設定車速以下であるか否かを判別する(ステップS07)。牽引車10の車速Vが第2設定車速V2以下であると、ロックシリンダ32を解放状態としてサスペンション部31の伸縮の規制を解除する(ステップS08)。なお、牽引車10の車速Vが第2設定車速V2未満である場合、ロックシリンダ32によるサスペンション部31の伸縮の規制が維持される。そして、牽引車10は停車される(ステップS09)。
【0026】
ロックシリンダ32を解放状態としてサスペンション部31の伸縮の規制が解除されることで、サスペンション部31における縮み代が、停車した牽引車10を前方へ押し出そうとする台車25の慣性力を吸収する。牽引車10の停車後はステップS2へ戻る。
図3に示す一連のステップS01~S09の制御を行うプログラムは、制御装置16の記憶部19に記憶されている。なお、制御装置16は、台車25が牽引車10に連結されていないときは
図3に示すフローの制御を行わない。
【0027】
次に、本実施形態の牽引車10の作用について説明する。牽引車10には複数(2台)の台車25が連結されている場合であり、路面は平坦路とする。また、牽引車10および台車25が停車している状態では、サスペンション部31のコイルばね34は台車25によって押されている状態で縮み代がほぼ存在しないとする。牽引車10および台車25が共に停車している状態から、牽引車10が走行開始する。牽引車10の車速Vは車速センサ21により常に検出され、サスペンション部31の長さLは測距センサ33により常に検出される。
【0028】
牽引車10が走行開始すると、牽引車10が加速する一方、台車25は留まろうとし、サスペンション部31が伸長する。車速Vが第1設定車速V1以上であって、サスペンション部31の長さが設定長さLt以上になると、ロックシリンダ32が作動されて、サスペンション部31の伸縮がロックシリンダ32により規制される。サスペンション部31の長さがロックシリンダ32により設定長さLt以上で固定されるので、牽引車10の停車時に必要となる縮み代がサスペンション部31に確保される。なお、牽引車10の車速Vが第1設定車速V1以上に達するまでは、牽引車10は直線走行する。
【0029】
サスペンション部31の伸縮がロックシリンダ32により規制されると、牽引車10が減速しても牽引車10の車速Vが第2設定車速V2以下でない場合には、ロックシリンダ32によるサスペンション部31の伸縮の規制が維持される。
【0030】
牽引車10が停車するために減速し、車速Vが第2設定車速V2以下になると、ロックシリンダ32がサスペンション部31の伸縮の規制を解除する。つまり、牽引車10の停車直前にサスペンション部31の伸縮の規制が解除される。このため、サスペンション部31は伸縮が可能となる。牽引車10がさらに減速して停車しても、台車25は走行しようとし、台車25は慣性力によって牽引車10を前に押し出そうとする。しかし、サスペンション部31のコイルばね34が台車25の慣性力を吸収する。つまり、コイルばね34の縮み代が台車25の慣性力を受けて縮むことで、台車25の慣性力が減衰される。したがって、停車した牽引車10は、台車25によって停車位置から前方へ移動することはない。なお、牽引車10の車速Vが第2設定車速V2以下となり、停車するまでは、牽引車10は直線走行する。
【0031】
本実施形態の牽引車10は以下の効果を奏する。
(1)台車25を牽引する牽引車10が停止している状態から走行し始めると、サスペンション部31が伸長する。走行時のサスペンション部31の長さが検出又は推定され、サスペンション部31の長さLが閾値Lt以上のとき、制御装置16はロックシリンダ32を制御して、サスペンション部31の伸縮を規制する。このため、サスペンション部31では閾値Lt以上の長さが保持され、サスペンション部31に牽引車10の停車時に台車25の慣性力を吸収する縮み代を確保することができ、停車時において台車25の慣性力を受けても牽引車10が停車位置から移動することはない。また、牽引車10が台車25を牽引して走行するとき、サスペンション部31の長さがロックシリンダ32により変更されないため、牽引車10および牽引される台車25を含む車両群の内輪差が定まり、台車25の走行軌跡は安定する。
【0032】
(2)制御装置16は、牽引車10の停止直前にサスペンション部31の伸縮の規制を解除するようにロックシリンダ32を制御する。このため、牽引車10が停車するときに台車25の慣性力を受けても、サスペンション部31が台車25の慣性力を吸収することができる。
【0033】
(3)サスペンション部31の長さを検出する測距センサ33が備えられる。測距センサ33がサスペンション部31の長さを実際に測定して検出できるので、サスペンション部31の長さを推定する場合と比較して正確である。その結果、サスペンション部31では閾値Lt以上の長さが保持され、サスペンション部31に牽引車10の停車時に台車25の慣性力を吸収する縮み代を確実に確保することができる。
【0034】
(4)牽引車10の走行が開始された後、ロックシリンダ32がサスペンション部31の伸縮を規制する条件として、サスペンション部31の長さLが設定長さLt以上であるだけでなく、車速Vが第1設定車速V1以上であることを条件としている。このため、例えば、牽引する台車25の数が変更されることによって牽引車10が牽引する重量が変更されても、サスペンション部31に適切な縮み代を確保することができる。具体的には、牽引車10が牽引する重量が大きいほど、サスペンション部31の長さLは設定長さLt以上でより大きくなる。
【0035】
(5)台車連結装置22が備えるロックシリンダ32がサスペンション部31の伸縮を規制したり、サスペンション部31の伸縮の規制を解除したりする。このため、停車するときの牽引車10に対する台車25の慣性力を吸収するための手段を台車25に設ける必要がない。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態の牽引車両は、上位システムからの指令に基づいて自動運転を行い、牽引車両の走行経路において予め停止位置が定められており、走行経路における牽引車両の位置に基づいてサスペンション部の長さを推定する点、第1の実施形態と相違する。本実施形態では、第1の実施形態と同じ構成については第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0037】
図4に示すように、本実施形態の牽引車40は、上位システム41と通信可能である点と、測距センサ33を備えない点を除き、第1の実施形態の牽引車10と同じ構成である。上位システム41は、牽引車40の自動運転のために各種の指令を出すほか、走行経路42における牽引車40の位置を把握するシステムである。
【0038】
本実施形態では、牽引車40の走行経路42が予め定められている。また、牽引車40が牽引する台車25の数は決まっている。さらに、本実施形態では、各台車25に載置される荷Wの重量は同じとしている。そして、本実施形態では、牽引車40が、各台車25の全てに荷Wが搭載されている状態で台車25を牽引するか、もしくは、各台車25の全てに荷Wが搭載されていない状態で、台車25を牽引するかのいずれかの状態での牽引となる。
【0039】
図4では停車位置Pは一箇所のみ示すが、走行経路42には複数の停車位置Pが設定されている。
図4に示す停車位置Pは、牽引車40が牽引した台車25上の荷Wを積み降ろす位置である。停車位置Pの前方には、第1位置Qが設定され、停車位置Pの後方には第2位置Rが設定されている。
図4に示す停車位置Pから第1位置Qへ牽引車40が移動するとき、台車25上に荷Wは無く、牽引車40は空の台車25を牽引するとする。
【0040】
第1位置Qは、牽引車40が停車位置Pから走行を開始して加速して通過する位置であって、牽引車40の台車連結装置22におけるサスペンション部31の長さLが設定長さLt以上となる位置である。つまり、空の台車25を牽引する牽引車40の車速Vが第1設定車速V1以上となる位置であるとも言える。
【0041】
牽引車40が停車位置Pから走行し始めて加速中に第1位置Qに到達するまでに、サスペンション部31のコイルばね34が伸長し、牽引車40が第1位置Qに到達すると、コイルばね34の長さLが設定長さLt以上となる。このとき、制御装置16はロックシリンダ32を制御して固定状態とし、サスペンション部31のコイルばね34の伸縮は規制される。台車25は、サスペンション部31の伸縮が規制された状態で牽引車40によって牽引される。
【0042】
次に、第2位置Rについて説明すると、第2位置Rは、牽引車40が停車位置Pに停車するために減速して通過する位置であって、ロックシリンダ32による牽引車40のサスペンション部31の伸縮の規制が解除される位置である。つまり、荷Wを載置した台車25を牽引する牽引車40の車速Vが第2設定車速V2以下となる位置であるとも言える。
【0043】
第2設定車速V2を超える車速Vで走行し、かつ、荷Wを載置した台車25を牽引する牽引車40は、停車位置Pに停車するために減速する。減速開始のとき、ロックシリンダ32は固定状態で、サスペンション部31の伸縮は規制されている。牽引車40が減速中に第2位置Rに到達すると、制御装置16は、ロックシリンダ32の固定状態を解放し、サスペンション部31の伸縮の規制を解除する。つまり、牽引車40の停車直前にサスペンション部31の伸縮の規制が解除される。このため、サスペンション部31のコイルばね34は減速に応じて収縮する。したがって、牽引車40が第2位置Rを通過して停車位置Pで停車したとき、荷Wが載置された台車25の慣性力はサスペンション部31のコイルばね34が収縮することで吸収される。
【0044】
このように、本実施形態では、走行経路42における第1位置Qおよび第2位置Rのように停車位置Pを基準とした位置によって、サスペンション部31のコイルばね34の長さを推定している。そして、サスペンション部31のコイルばね34の長さを推定することによって、制御装置16は、ロックシリンダ32を制御してコイルばね34の伸縮を規制したり、コイルばね34の伸縮の規制を解除したりする。
【0045】
なお、本実施形態では、
図4に示す停車位置Pを荷Wの積み降ろしの位置としたが、図示されないその他の停車位置Pは、荷Wの積み込みの位置としてもよく、あるいは、荷Wの積み込みと荷Wの積み降ろしの両方を行う位置としてもよい。
【0046】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0047】
○ 上記の実施形態では、牽引車両として小型牽引車を例示して説明したが、牽引車両は小型牽引車に限定されない。牽引車両は、例えば、トーイングトラクタ、牽引可能なフォークリフト、牽引可能な自動車等、台車や車両を牽引することができる牽引車両であればよい。
○ 上記の実施形態では、無人で走行可能な自動運転タイプの牽引車両について例示したが、これに限らない。牽引車両は、自動運転タイプのほか、運転者が運転する搭乗タイプの牽引車両や、遠隔操作により運転可能な牽引車両であってもよい。
○ 上記の実施形態では、伸縮規制部としてロックシリンダを例示して説明したが、伸縮規制部はロックシリンダに限定されない。伸縮規制部は、サスペンション部の伸縮を規制することができる手段であればよく、特に構成は制限されない。
○ 上記の実施形態では、台車連結装置が備えるサスペンション部および伸縮規制部は単一としたが、サスペンション部および伸縮規制部の数は自由である。例えば、サスペンション部および伸縮規制部を牽引車両の幅方向に一対設けるようにしてもよい。この場合、牽引車両が停車するとき、台車から受ける慣性力を一対のサスペンション部に分散して吸収できる。
【符号の説明】
【0048】
10、40 牽引車
11 車体
16 制御装置
17 自動操舵機構
21 車速センサ
22 台車連結装置
25 台車
28 連結器
31 サスペンション部
32 ロックシリンダ
33 測距センサ
34 コイルばね
41 上位システム
42 走行経路
L サスペンション部(コイルばね)の長さ
Lt 設定長さ
V 車速
V1 第1設定車速
V2 第2設定車速
P 停車位置
Q 第1位置
R 第2位置
S01~S09 ステップ