(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】ナノインプリント用テンプレート及びその製造方法、並びに、2段メサブランクス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20231114BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 B
(21)【出願番号】P 2020513257
(86)(22)【出願日】2019-04-08
(86)【国際出願番号】 JP2019015332
(87)【国際公開番号】W WO2019198668
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2018074947
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】長 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】長井 隆治
(72)【発明者】
【氏名】市村 公二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝敏
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-200505(JP,A)
【文献】特開2018-056545(JP,A)
【文献】特開2015-065443(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057263(WO,A1)
【文献】特開2017-022417(JP,A)
【文献】特開2015-012034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部および前記基部の主面に設けられたメサ構造を有する光透過性基材を備え、
前記メサ構造の主面に、凹凸構造の転写パターンおよび凹凸構造のマーク用パターンが設けられ、
前記マーク用パターンの凹部の底面に高コントラスト膜が設けられ、
前記高コントラスト膜を覆うように前記高コントラスト膜の表面に酸化タンタル膜が設けられ、
前記酸化タンタル膜が、前記高コントラスト膜の表面および前記マーク用パターンの凸部の上面に設けられており、
前記メサ構造の主面に前記酸化タンタル膜に沿って溝が設けられたことを特徴とするナノインプリント用テンプレート。
【請求項2】
前記メサ構造は、前記基部の主面に設けられた第1段差構造および前記第1段差構造の主面に設けられた第2段差構造を含み、
前記転写パターンおよび前記マーク用パターンが前記第2段差構造の主面に設けられ、
前記第1段差構造の主面における前記第2段差構造の周囲の領域に遮光部が設けられ、
前記酸化タンタル膜が、前記遮光部の主面を覆うように前記遮光部の主面に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のナノインプリント用テンプレート。
【請求項3】
前記遮光部が、遮光性膜および前記高コントラスト膜がこの順に積層された多層構造を有することを特徴とする請求項2に記載のナノインプリント用テンプレート。
【請求項4】
前記基部の主面とは反対側の面に、平面視して前記第2段差構造を包含する窪みが設けられたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のナノインプリント用テンプレート。
【請求項5】
基部および前記基部の主面に設けられたメサ構造を有し、前記メサ構造の主面に、凹凸構造の転写パターンおよび凹凸構造のマーク用パターンが設けられた光透過性基材と、前記光透過性基材の主面側全面に設けられた高コントラスト膜と、を備えるテンプレート形成用部材を準備する準備工程と、
前記マーク用パターンが設けられたマーク用パターン領域が薄膜となり、かつ前記転写パターンが設けられた転写パターン領域が厚膜となるように、前記マーク用パターンおよび前記転写パターン上に第1樹脂層を形成する第1樹脂層形成工程と、
前記第1樹脂層が形成された前記テンプレート形成用部材に対してエッチングを行うことにより、少なくとも前記マーク用パターンの凹部の底面および前記転写パターン領域に前記高コントラスト膜を残して、前記高コントラスト膜の他の部分を除去する第1エッチング工程と、
前記第1エッチング工程が行われた前記テンプレート形成用部材の主面側全面に酸化タンタル膜を形成する酸化タンタル膜形成工程と、
前記マーク用パターン領域が厚膜となり、かつ前記転写パターン領域が薄膜となるように、前記マーク用パターン領域および前記転写パターン領域に形成された前記酸化タンタル膜上に第2樹脂層を形成する第2樹脂層形成工程と、
前記第2樹脂層が形成された前記テンプレート形成用部材に対してエッチングを行うことにより、少なくとも前記高コントラスト膜の表面に形成された前記酸化タンタル膜を残して、前記酸化タンタル膜の他の部分を除去する第2エッチング工程と、
残存する前記酸化タンタル膜をマスクに用いたエッチングを行うことにより、前記転写パターン領域に設けられた高コントラスト膜を除去する第3エッチング工程と、
を備えることを特徴とするナノインプリント用テンプレートの製造方法。
【請求項6】
前記第1エッチング工程において、前記マーク用パターンでは、前記凹部の底面のみに前記高コントラスト膜を残して、前記高コントラスト膜の他の部分を除去し、
前記第2エッチング工程において、前記高コントラスト膜の表面および前記マーク用パターンの凸部の上面に形成された前記酸化タンタル膜を残すことを特徴とする請求項5に記載のナノインプリント用テンプレートの製造方法。
【請求項7】
前記第2樹脂層形成工程において、前記第2樹脂層の厚膜となる領域を平面視して前記第1樹脂層の薄膜となる領域よりも内側とし、
前記第2エッチング工程において、前記エッチングを行うことにより、前記メサ構造の主面に、前記第2樹脂層の厚膜となる領域に沿って溝を形成することを特徴とする請求項6に記載のナノインプリント用テンプレートの製造方法。
【請求項8】
前記準備工程において、前記メサ構造が、前記基部の主面に設けられた第1段差構造および前記第1段差構造の主面に設けられた第2段差構造を有し、前記転写パターンおよび前記マーク用パターンが前記第2段差構造の主面に設けられ、前記第1段差構造の主面における前記第2段差構造の周囲の領域に設けられた遮光部をさらに有する前記テンプレート形成用部材を準備し、
前記第1樹脂層形成工程において、前記遮光部上にも前記第1樹脂層を形成し、
前記第1エッチング工程において、前記遮光部を残し、
前記酸化タンタル膜形成工程において、前記遮光部の主面に前記酸化タンタル膜を形成し、
前記第2樹脂層形成工程において、前記遮光部の主面に形成された前記酸化タンタル膜上にも前記厚膜の第2樹脂層を形成し、
前記第2エッチング工程において、前記遮光部の主面に形成された前記酸化タンタル膜を残すことを特徴とする請求項5から請求項7までのいずれかに記載のナノインプリント用テンプレートの製造方法。
【請求項9】
基部および前記基部の主面に設けられたメサ構造を有する光透過性基材を備え、
前記メサ構造の主面に、凹凸構造の転写パターンおよび凹凸構造のマーク用パターンが設けられ、
前記マーク用パターンの凹部の底面に高コントラスト膜が設けられ、
前記高コントラスト膜の端部が露出しないように、前記高コントラスト膜の表面と前記マーク用パターンの凸部の側面と、前記マーク用パターンの凸部の上面とを連続して覆う、前記高コントラスト膜とは異なる材料からなる保護膜が設けられ、
前記保護膜は、端部が前記マーク用パターンの凸部の上面にあるように設けられ、
前記メサ構造の主面に前記保護膜に沿って溝が設けられたことを特徴とする、ナノインプリント用テンプレート。
【請求項10】
前記保護膜が、平面視において、前記高コントラスト膜が設けられた前記マーク用パターンの凹部、及び凸部が複数連続して配列されたアライメントマーク領域を内側に包含するように、前記アライメントマーク領域よりも広い領域に設けられることを特徴とする請求項9に記載のナノインプリント用テンプレート。
【請求項11】
前記保護膜が、平面視において、複数の前記アライメントマーク領域を包含するように、前記複数の前記アライメントマーク領域より広い領域に設けられることを特徴とす
る請求項10に記載のナノインプリント用テンプレート。
【請求項12】
前記保護膜が、平面視において矩形状に設けられることを特徴とする請求項9から請求項11までのいずれかに記載のナノインプリント用テンプレート。
【請求項13】
前記保護膜が、酸化タンタル膜であることを特徴とする、請求項9から請求項12までのいずれかに記載のナノインプリント用テンプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリント用テンプレートおよびその製造方法、並びに、2段メサブランクス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリントリソグラフィは、ナノインプリント用テンプレートに設けられた所望の転写パターンを、被転写体の表面に塗布した硬化性樹脂層に密着させ、熱や光等の外部刺激を与えることによって硬化性樹脂層にパターンを転写する工程を介して、被転写体にパターンを転写する方法である。ナノインプリントリソグラフィは、単純な方法によってパターンを形成することができるため、LSI製造用の次世代リソグラフィ技術として期待されている。さらに、光学部品、発光素子、光電変換素子、バイオセンサー、装飾品、飲料品容器、食品容器等の加工用の技術としても期待されている。このため、ナノインプリント用テンプレートの開発が進められている。
【0003】
ナノインプリントリソグラフィでは、ナノインプリント用テンプレートの転写パターンを被転写体に転写する際に、ナノインプリント用テンプレートと被転写体との位置合わせを行う必要がある。このような位置合わせを行うために、ナノインプリント用テンプレートの光透過可能な基材にアライメントマークを設け、被転写体にも対応するアライメントマークを設けることがある。また、ナノインプリント用テンプレートには、そのテンプレート自身の種別等を識別するための識別用マークを設けることがある。
【0004】
アライメントマークや識別用マークは、例えば、ナノインプリント用テンプレートの基材の主面における凹凸構造のパターンおよび当該パターンに設けられた高コントラスト膜から構成される。このような高コントラスト膜は、ナノインプリント用テンプレートの洗浄時等に膜減りすることにより、必要なコントラストが得られなくなることがある。このため、このような高コントラスト膜の膜減りを抑制できるような種々の構造が採用されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、テンプレートの基材の主面における凹凸構造のパターンに高コントラスト膜を設けた上で、基材の主面の全体に高コントラスト膜を保護する保護膜を設けた構造が記載されている。しかしながら、このような構造では、主面の全体に保護膜が設けられているので、主面に設けられた転写パターンが微細になる場合に、保護膜の厚さが原因となって転写パターンの均一性が損なわれることがある。
【0006】
また、特許文献2には、テンプレートの基材の主面における凹凸構造のパターンの凸部上に高コントラスト膜を設け、凹凸構造のパターンの凹部を含む領域に高コントラスト膜を覆うように保護膜を設けた構造が記載されている。しかしながら、このような構造では、特に、凸部上に高コントラスト膜が設けられているので、高コントラスト膜の端部における保護膜の成膜状態次第で、高コントラスト膜に洗浄液等が浸み込むことがある。このため、高コントラスト膜の膜減りを十分に抑制できなかった。
【0007】
さらに、特許文献3には、テンプレートの基材の主面の位置合わせ領域における凹凸構造のパターンの凹部内に高コントラスト膜を設け、高コントラスト膜上に保護膜を設けた構造が記載されている。しかしながら、このような構造でも、高コントラスト膜の端部における保護膜の成膜状態次第で、高コントラスト膜の保護が十分とはならないことがあった。
【0008】
したがって、従来の保護膜の構造や材料では、高コントラスト膜の膜減りや消失を十分に抑制することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-200505号公報
【文献】特開2013-30522号公報
【文献】特表2013-519236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高コントラスト膜の膜減りや消失を十分に抑制できるナノインプリント用テンプレートおよびその製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、基部および上記基部の主面に設けられたメサ構造を有する光透過性基材を備え、上記メサ構造の主面に、凹凸構造の転写パターンおよび凹凸構造のマーク用パターンが設けられ、上記マーク用パターンの凹部の底面に高コントラスト膜が設けられ、上記高コントラスト膜を覆うように上記高コントラスト膜の表面に酸化タンタル膜が設けられたことを特徴とするナノインプリント用テンプレートを提供する。
【0012】
本発明によれば、高コントラスト膜の膜減りや消失を十分に抑制できる。
【0013】
上記発明においては、上記酸化タンタル膜が、上記高コントラスト膜の表面および上記マーク用パターンの凸部の上面に設けられたことが好ましい。上記高コントラスト膜を効果的に露出させずに覆うことができるからである。
【0014】
また、上記発明においては、上記メサ構造の主面に上記酸化タンタル膜に沿って溝が設けられたことが好ましい。上記酸化タンタル膜の有無を容易に判断できるからである。
【0015】
上記発明においては、上記メサ構造は、上記基部の主面に設けられた第1段差構造および上記第1段差構造の主面に設けられた第2段差構造を含み、上記転写パターンおよび上記マーク用パターンが上記第2段差構造の主面に設けられ、上記第1段差構造の主面における上記第2段差構造の周囲の領域に遮光部が設けられ、上記酸化タンタル膜が、上記遮光部の主面を覆うように上記遮光部の主面に設けられたことが好ましい。上記遮光部により光インプリント時に露光光が意図しない領域に照射されることを抑制できる上、上記酸化タンタル膜により上記遮光部の膜減りや消失を抑制できるからである。
【0016】
上記発明においては、上記遮光部が、遮光性膜および上記高コントラスト膜がこの順に積層された多層構造を有することが好ましい。光インプリント時に露光光が意図しない領域に照射されることを効果的に抑制できるからである。
【0017】
上記発明においては、上記基部の主面とは反対側の面に、平面視して上記第2段差構造を包含する窪みが設けられたことが好ましい。転写パターンと被転写体の表面に塗布した硬化性樹脂層との間に空気が封入されることを抑制できるからである。
【0018】
また、本発明は、基部および上記基部の主面に設けられたメサ構造を有し、上記メサ構造の主面に、凹凸構造の転写パターンおよび凹凸構造のマーク用パターンが設けられた光透過性基材と、上記光透過性基材の主面側全面に設けられた高コントラスト膜と、を備えるテンプレート形成用部材を準備する準備工程と、上記マーク用パターンが設けられたマーク用パターン領域が薄膜となり、かつ上記転写パターンが設けられた転写パターン領域が厚膜となるように、上記マーク用パターンおよび上記転写パターン上に第1樹脂層を形成する第1樹脂層形成工程と、上記第1樹脂層が形成された上記テンプレート形成用部材に対してエッチングを行うことにより、少なくとも上記マーク用パターンの凹部の底面および上記転写パターン領域に上記高コントラスト膜を残して、上記高コントラスト膜の他の部分を除去する第1エッチング工程と、上記第1エッチング工程が行われた上記テンプレート形成用部材の主面側全面に酸化タンタル膜を形成する酸化タンタル膜形成工程と、上記マーク用パターン領域が厚膜となり、かつ上記転写パターン領域が薄膜となるように、上記マーク用パターン領域および上記転写パターン領域に形成された上記酸化タンタル膜上に第2樹脂層を形成する第2樹脂層形成工程と、上記第2樹脂層が形成された上記テンプレート形成用部材に対してエッチングを行うことにより、少なくとも上記高コントラスト膜の表面に形成された上記酸化タンタル膜を残して、上記酸化タンタル膜の他の部分を除去する第2エッチング工程と、残存する上記酸化タンタル膜をマスクに用いたエッチングを行うことにより、上記転写パターン領域に設けられた高コントラスト膜を除去する第3エッチング工程と、を備えることを特徴とするナノインプリント用テンプレートの製造方法を提供する。
【0019】
本発明によれば、高コントラスト膜の膜減りや消失を十分に抑制できるナノインプリント用テンプレートを製造することができる。
【0020】
上記発明においては、上記第1エッチング工程において、上記マーク用パターンでは、上記凹部の底面のみに上記高コントラスト膜を残して、上記高コントラスト膜の他の部分を除去し、上記第2エッチング工程において、上記高コントラスト膜の表面および上記マーク用パターンの凸部の上面に形成された上記酸化タンタル膜を残すことが好ましい。上記酸化タンタル膜が上記高コントラスト膜の表面および上記マーク用パターンの凸部の上面に設けられた上記ナノインプリント用テンプレートを製造できるからである。
【0021】
上記発明においては、上記第2樹脂層形成工程において、上記第2樹脂層の厚膜となる領域を平面視して上記第1樹脂層の薄膜となる領域よりも内側とし、上記第2エッチング工程において、上記エッチングを行うことにより、上記メサ構造の主面に、上記第2樹脂層の厚膜となる領域に沿って溝を形成することが好ましい。上記酸化タンタル膜の有無を上記溝の有無を認識することにより判断できる上記ナノインプリント用テンプレートを製造できるからである。
【0022】
上記発明においては、上記準備工程において、上記メサ構造が、上記基部の主面に設けられた第1段差構造および上記第1段差構造の主面に設けられた第2段差構造を有し、上記転写パターンおよび上記マーク用パターンが上記第2段差構造の主面に設けられ、上記第1段差構造の主面における上記第2段差構造の周囲の領域に設けられた遮光部をさらに有する上記テンプレート形成用部材を準備し、上記第1樹脂層形成工程において、上記遮光部上にも上記第1樹脂層を形成し、上記第1エッチング工程において、上記遮光部を残し、上記酸化タンタル膜形成工程において、上記遮光部の主面に上記酸化タンタル膜を形成し、上記第2樹脂層形成工程において、上記遮光部の主面に形成された上記酸化タンタル膜上にも上記厚膜の第2樹脂層を形成し、上記第2エッチング工程において、上記遮光部の主面に形成された上記酸化タンタル膜を残すことが好ましい。上記遮光部により光インプリント時に露光光が意図しない領域に照射されることを抑制できる上、上記酸化タンタル膜により上記遮光部の膜減りや消失を抑制できるナノインプリント用テンプレートを製造することができるからである。
【0023】
また、本発明では、基部および上記基部の主面に設けられたメサ構造を有する光透過性基材を備え、上記メサ構造の主面に、凹凸構造の転写パターンおよび凹凸構造のマーク用パターンが設けられ、上記マーク用パターンの凹部の底面に高コントラスト膜が設けられ、上記高コントラスト膜の端部が露出しないように、上記高コントラスト膜の表面と上記マーク用パターンの凸部の側面と、上記マーク用パターンの凸部の上面とを連続して覆う、上記高コントラスト膜とは異なる材料からなる保護膜が設けられ、上記保護膜は、端部が上記マーク用パターンの凸部の上面にあるように設けられることを特徴とする、ナノインプリント用テンプレートを提供する。
【0024】
本発明によれば、高コントラスト膜の膜減りを十分に抑制できるナノインプリント用テンプレートを製造することができる。
【0025】
また、上記発明においては、上記保護膜が、平面視において、上記高コントラスト膜が設けられた上記マーク用パターンの凹部、及び凸部が複数連続して配列されたアライメントマーク領域を内側に包含するように、上記アライメントマーク領域よりも広い領域に設けられることが好ましい。保護膜によって薬液の侵入を確実に抑制することができ、高コントラスト膜の膜減りを抑制することができるからである。
【0026】
また、本発明によれば、上記保護膜が、複数の上記アライメントマーク領域を包含するように、上記複数の上記アライメントマーク領域より広い領域に設けられていてもよい。
【0027】
また、本発明によれば、上記保護膜が、平面視において矩形状に設けらていることが好ましい。
【0028】
また、本発明によれば、上記メサ構造の主面に上記保護膜に沿って溝が設けられたことが好ましい。上記保護膜の有無を容易に判断できるからである。
【0029】
また、本発明によれば、上記保護膜が、酸化タンタル膜であることが好ましい。酸化タンタル膜は、ナノインプリントリソグラフィで用いるレジスト等の異物を除去する硫酸洗浄やアルカリ洗浄に対する耐性が十分に高い上、これらの洗浄では除去できずに残存する異物を除去する酸素含有ガスを用いたプラズマアッシングに対する耐性も十分に高いからである。
【0030】
また、本発明では、ナノインプリント用テンプレートを製造するための2段メサブランクスであって、基部および上記基部の主面に設けられたメサ構造を有し、上記メサ構造は、上記基部の主面に設けられた第1段差構造および上記第1段差構造の主面に設けられた第2段差構造を含む光透過性2段メサブランクス形成用部材を有し、少なくとも、上記第1段差構造の主面における上記第2段差構造の周囲の領域に遮光部が設けられ、保護膜が、上記遮光部の主面を覆うように上記遮光部の主面に設けられたことを特徴とする2段メサブランクス2段メサブランクスを提供する。
【0031】
このような2段メサブランクスであれば、容易に、上述した本発明のナノインプリント用テンプレートを得ることができる。さらに、上記遮光部により光インプリント時に露光光が意図しない領域に照射されることを抑制できる上、上記保護膜により上記遮光部の膜減りや消失を抑制できるナノインプリント用テンプレートを製造することができるからである。
【0032】
また、本発明においては、上記遮光部は、上記第1段差構造の主面から上記基部の主面にかけて設けられていてもよい。
【0033】
また、本発明では、上述の2段メサブランクスの製造方法であって、基部および上記基部の主面に設けられたメサ構造を有し、上記メサ構造は、上記基部の主面に設けられた第1段差構造および上記第1段差構造の主面に設けられた第2段差構造を含む光透過性2段メサブランクス形成用部材を準備し、上記光透過性2段メサブランクス形成用部材の上記第1段差構造および上記第2段差構造が配置された側の主面に遮光部形成用膜を形成し、上記遮光部形成用膜上に保護膜形成用膜を形成し、硬化性樹脂層を第1段差構造の主面上および上記第2段差構造の主面上に形成し、上記硬化性樹脂層に対し、上記第1段差構造の主面に形成された硬化性樹脂層の膜厚が、上記第2段差構造の主面形成された硬化性樹脂層の膜厚より厚膜となるようにインプリント成形し、上記第1段差構造の主面のみに遮光部形成用膜及び保護膜が残存するようにエッチングを行うことにより、上記光透過性2段メサブランクス形成用部材の上記第1段差構造の主面における上記第2段差構造の周囲の領域に、遮光部および保護膜がこの順に設けられた、2段メサブランクスを製造することを特徴とする、2段メサブランクスの製造方法を提供する。
【0034】
また、本発明では、上述の2段メサブランクスの製造方法であって、基部および上記基部の主面に設けられたメサ構造を有し、上記メサ構造は、上記基部の主面に設けられた第1段差構造および上記第1段差構造の主面に設けられた第2段差構造を含む光透過性2段メサブランクス形成用部材を準備し、上記光透過性2段メサブランクス形成用部材の表面に遮光部形成用膜を形成し、上記遮光部形成用膜上に保護膜形成用膜を形成し、上記保護膜形成用膜上にレジスト組成物を塗布してレジスト層を形成し、上記レジスト層をマスクを介して露光、現像することにより、上記第2段差構造の主面上のレジスト層を除去し、露出した上記第2段差構造の主面に形成された遮光部形成用膜及び保護膜形成用膜をエッチングにより除去することで、上記遮光部及び保護膜がこの順で積層された積層物が、上記光透過性2段メサブランクス形成用部材の上記第1段差構造の主面から上記基部の主面にかけて設けられた、2段メサブランクスを製造することを特徴とする、2段メサブランクスの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0035】
本発明においては、高コントラスト膜の膜減りや消失を十分に抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明のナノインプリント用テンプレートの一例を示す概略図である。
【
図2】本発明のナノインプリント用テンプレートの他の例を示す概略図である。
【
図3】本発明のナノインプリント用テンプレートの他の例を示す概略図である。
【
図4】本発明のナノインプリント用テンプレートの他の例を示す概略図である。
【
図5】本発明のナノインプリント用テンプレートの他の例を示す概略図である。
【
図6】本発明のナノインプリント用テンプレートの他の例を示す概略断面図である。
【
図7】本発明のナノインプリント用テンプレートの製造方法の一例を示す概略工程断面図である。
【
図8】本発明のナノインプリント用テンプレートの製造方法の一例を示す概略工程断面図である。
【
図9】本発明のナノインプリント用テンプレートの製造方法の一例を示す概略工程断面図である。
【
図10】本発明のナノインプリント用テンプレートの製造方法の他の例を示す概略工程断面図である。
【
図11】本発明のナノインプリント用テンプレートの製造方法の他の例を示す概略工程断面図である。
【
図12】本発明のナノインプリント用テンプレートの製造方法の他の例を示す概略工程断面図である。
【
図13】本発明のナノインプリント用テンプレートの他の例を示す概略図である。
【
図14】本発明のナノインプリント用テンプレートのメサ構造主面に形成された複数のアライメントマーク領域および保護膜形成領域を示す上面図である。
【
図15】本発明の2段メサブランクスの一例を示す概略断面図である。
【
図16】本発明の2段メサブランクスの他の例を示す概略断面図である。
【
図17】本発明の2段メサブランクスの製造方法を示す概略工程断面図である。
【
図18】本発明の2段メサブランクスの製造方法の他の例を示す概略工程断面図である。
【
図19】本発明の2段メサブランクスの製造方法の他の例を示す概略工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明のナノインプリント用テンプレートおよびその製造方法について詳細に説明する。
【0038】
A.ナノインプリント用テンプレート(第一実施態様)
本発明の第一実施態様のナノインプリント用テンプレートは、基部および上記基部の主面に設けられたメサ構造を有する光透過性基材を備え、上記メサ構造の主面に、凹凸構造の転写パターンおよび凹凸構造のマーク用パターンが設けられ、上記マーク用パターンの凹部の底面に高コントラスト膜が設けられ、上記高コントラスト膜を覆うように上記高コントラスト膜の表面に酸化タンタル膜が設けられたことを特徴とする。
【0039】
本発明のナノインプリント用テンプレートの一例について図面を参照しながら説明する。
図1(a)は、本発明のナノインプリント用テンプレートの一例を示す概略断面図である。
図1(b)は、
図1(a)に示される破線枠内の拡大図である。
図1(c)は、
図1(b)に示されるメサ構造を主面側から平面視した図である。
【0040】
図1(a)~
図1(c)に示されるように、ナノインプリント用テンプレート10は、基部21および基部21の主面21aに設けられたメサ構造22を有する光透過性基材20を備えている。メサ構造22の主面22aに、凹凸構造の転写パターン30および凹凸構造のマーク用パターン40が設けられている。また、基部21の主面21aとは反対側の面に、平面視してメサ構造22を包含する窪み25が設けられている。そして、マーク用パターン40の凹部42の底面42aのみに、Crを含む高コントラスト膜50が設けられている。高コントラスト膜50はアライメントマークを構成する。酸化タンタルを含む酸化タンタル膜60が、高コントラスト膜50を露出させずに覆うように、高コントラスト膜50の表面ならびにマーク用パターン40の凸部44の側面44bおよび上面44aに連続するように設けられている。さらに、マーク用パターン40の凸部44の上面44aに、酸化タンタル膜60に沿って溝26が設けられている。
【0041】
近年、ナノインプリントリソグラフィに用いられるレジスト等が硫酸洗浄やアルカリ洗浄での洗浄ではテンプレートから除去できずに残存する場合に、酸素含有ガスを用いたプラズマアッシングにより除去することが行われていた。一方、上述した特許文献に記載された高コントラスト膜を保護する保護膜には、構成材料として、Cr系材料(Cr、CrN等)、Si系材料(SiO2、SiN2等)、およびTa系材料が用いられていた。しかしながら、これらを含む保護膜は、材料によってはプラズマアッシングの際に高コントラスト膜とともに消失してしまう問題があった。また、Ta系材料の中でも、特にTaNを含む保護膜については、上述したアライメントマークや識別用マークを構成する高コントラスト膜とエッチングガスが、例えば塩素系ガスで同一であるために、高コントラスト膜を加工する時のドライエッチングにより消失するおそれがあった。よって、高コントラスト膜を露出させずに覆うように設けることが困難であった。
【0042】
一方、本発明における酸化タンタルを含む酸化タンタル膜60は、ナノインプリントリソグラフィで用いるレジスト等の異物を除去する硫酸洗浄やアルカリ洗浄に対する耐性が十分に高い上、これらの洗浄では除去できずに残存する異物を除去する酸素含有ガスを用いたプラズマアッシングに対する耐性も十分に高い。このため、酸化タンタル膜60は、硫酸洗浄やアルカリ洗浄とともにプラズマアッシングを用いて行うテンプレートの洗浄時に消失するおそれがない。
【0043】
さらに、酸化タンタル膜60は、TaNを含む保護膜とは違い、高コントラスト膜50とはエッチングガスが異なるため、高コントラスト膜50を加工する時のドライエッチングにより消失するおそれがない。
【0044】
したがって、本発明によれば、酸化タンタル膜が高コントラスト膜を覆っていることにより、高コントラスト膜の膜減りや消失を十分に抑制できる。さらに、本発明のナノインプリント用テンプレートの製造方法において、高コントラスト膜を加工する時に酸化タンタル膜が消失するおそれがないので、高コントラスト膜を覆うように設けることが容易である。
【0045】
1.酸化タンタル膜
上記酸化タンタル膜は、上記高コントラスト膜を覆うように上記高コントラスト膜の表面に設けられた酸化タンタルを含む膜である。
ここで、上記酸化タンタルとは、例えば、TaO2、Ta2O5等のTaOxで表される化合物を意味する。
上記TaOxにおけるxは、2~5の範囲内であることが好ましい。
【0046】
上記酸化タンタルとしては、僅かであればOの一部がNに置き換わっているものでもよいが、Oを置き換えるNの割合は0.1at%以下が好ましく、特にOがNに置き換わっていないものが好ましい。上記Oを置き換えるNの割合が大きくなると、上記高コントラスト膜を加工する場合に用いられるドライエッチングにより、上記酸化タンタル膜が消失するおそれがあるからである。また、上記酸化タンタル膜をドライエッチングにより加工することが困難になるからである。
【0047】
ここで、
図2(a)は、本発明のナノインプリント用テンプレートの他の例を示す概略断面図であり、
図1(b)に示される領域に対応する領域を示す図である。
図2(b)は、
図2(a)に示されるメサ構造を主面側から平面視した図である。
図2に示されるナノインプリント用テンプレート10は、マーク用パターン40における隣接する複数の凹部42の底面42aに設けられた酸化タンタル膜60が互いに分離している点において、
図1に示されるナノインプリント用テンプレート10とは異なる。
【0048】
また、
図3(a)は、本発明のナノインプリント用テンプレートの他の例を示す概略断面図であり、
図1(b)に示される領域に対応する領域を示す図である。
図3(b)は、
図3(a)に示されるメサ構造を主面側から平面視した図である。
図3に示されるナノインプリント用テンプレート10は、酸化タンタル膜60が、マーク用パターン40の凹部42の底面42aに設けられた高コントラスト膜50の表面のみに設けられている点において、
図1に示されるナノインプリント用テンプレート10とは異なる。
【0049】
上記酸化タンタル膜としては、
図1~
図3に示されるように、上記高コントラスト膜を覆うように上記高コントラスト膜の表面に設けられたものであれば特に限定されないが、
図1および
図2に示されるように、上記高コントラスト膜の表面および上記マーク用パターンの凸部の上面に設けられたものが好ましく、中でも上記高コントラスト膜の表面ならびに上記マーク用パターンの凸部の側面および上面に設けられたものが好ましく、特に連続して設けられたものが好ましい。上記高コントラスト膜を効果的に露出させずに覆うことができるからである。具体的には、例えば、上記酸化タンタル膜が、
図1および
図2に示されるように、上記高コントラスト膜の表面ならびに上記マーク用パターンの凸部の側面および上面に連続するように設けられた場合には、上記高コントラスト膜が上記マーク用パターンの凸部の側面にまで突出するものであっても、上記高コントラスト膜を露出させずに覆うことができるからである。
【0050】
なお、上記酸化タンタル膜は、例えば、スパッタリング法等により、上記ナノインプリント用テンプレートの全面に渡って成膜されるものであるため、上記高コントラスト膜の表面および上記マーク用パターンの凸部の上面に設ける場合には、通常は、上記マーク用パターンの凸部の側面にも設けられることになる。
【0051】
上記酸化タンタル膜としては、
図2および
図3に示されるように、上記マーク用パターンにおける隣接する複数の凹部の底面に設けられた上記酸化タンタル膜が互いに分離したものが好ましい。上記隣接する複数の凹部の底面にそれぞれ設けられた上記高コントラスト膜ごとに、互いに分離した上記酸化タンタル膜で覆うことができる。これにより、上記高コントラスト膜の間に上記光透過性基材が露出するので上記高コントラスト膜を認識し易くなるからである。
【0052】
上記酸化タンタル膜の厚さとしては、上記高コントラスト膜の膜減りや消失を十分に抑制できれば特に限定されないが、1nm~10nmの範囲内が好ましく、中でも3nm~6nmの範囲内が好ましい。上記酸化タンタル膜が薄過ぎると、上記高コントラスト膜の膜減りや消失を十分に抑制できず、上記酸化タンタル膜が厚過ぎると、上記マーク用パターンの凸部の上面に設けられると、上記転写パターンを被転写体に転写する際に障害となるからである。
【0053】
2.高コントラスト膜
上記高コントラスト膜は、上記マーク用パターンの凹部の底面に設けられたものである。上記高コントラスト膜は、例えば、アライメントマークや識別用マーク等のようなマークを構成する。
【0054】
上記高コントラスト膜としては、上記マーク用パターンの凹部の底面に設けられたものであれば特に限定されず、上記マーク用パターンの凹部の底面および上記マーク用パターンの凸部の側面または上面に設けられたものでもよいが、
図1~
図3に示されるように、上記マーク用パターンの凹部の底面のみに設けられたものが好ましい。上記高コントラスト膜が上記マーク用パターンの凸部の側面または上面に設けられると、上記酸化タンタル膜により露出させずに覆うことが困難となるので、上記高コントラスト膜の膜減りや消失を抑制することが困難となるからである。また、上記高コントラスト膜は上記酸化タンタル膜と比べて厚いため、上記高コントラスト膜が上記マーク用パターンの凸部の上面に設けられると、上記転写パターンを被転写体に転写する際に障害となるからである。
【0055】
上記高コントラスト膜の材料としては、光学的に認識可能なマークを構成することができれば特に限定されず、例えば、上記光透過性基材の材料とは上記マークを認識する光に対する屈折率が異なるものを用いることができる。このような材料としては、例えば、金属、ならびにその酸化物、窒化物、および酸窒化物等を1種類または2種類以上含むものを挙げることができる。上記金属としては、例えば、Cr、Mo、Ta、W、Zr、Ti等を挙げることができる。このような材料としては、CrおよびCrを含有する化合物(窒化クロム、酸化クロム、炭化クロム、炭化窒化クロム等)が好ましい。酸素含有ガスを用いたプラズマアッシングに対する耐性が低いので、上記高コントラスト膜の膜減りや消失を抑制できる効果が顕著となるからである。
【0056】
上記高コントラスト膜の厚さとしては、光学的に認識可能なマークを構成することができれば特に限定されないが、波長365nmにおける光線の透過率が10%以下となるように設定することが好ましい。例えば、高コントラスト膜の材料にクロム(Cr)を用いる場合、波長365nmにおける光線の透過率を10%以下となるように設定するためには、高コントラスト膜の厚さを15nm以上にすればよい。
【0057】
3.光透過性基材
上記光透過性基材は、基部および上記基部の主面に設けられたメサ構造を有するものである。
【0058】
(1)メサ構造
上記メサ構造は、主面に凹凸構造の転写パターンおよび凹凸構造のマーク用パターンが設けられたものである。
【0059】
a.マーク用パターン
上記マーク用パターンは、上記光透過性基材を断面視して凹凸構造を有するパターンである。上記マーク用パターンは、上記高コントラスト膜とともに、例えば、アライメントマークや識別用マーク等のようなマークを構成する。
【0060】
上記マーク用パターンの形状としては特に限定されるものではなく、例えばラインアンドスペース等の凹凸構造のパターンを挙げることができる。
【0061】
上記マーク用パターンが、
図1に示されるようにラインアンドスペースである場合には、
図1(b)においてDで示されるような上記凹凸構造の凹部の深さは、特に限定されないが、例えば、上記転写パターンの凹部と同一の深さである。また、上記凹凸構造の凹部の幅および凸部の幅は、上記マーク用パターンの用途に応じて適宜設定される。
【0062】
b.転写パターン
上記転写パターンは、上記光透過性基材を断面視して凹凸構造を有するパターンである。上記転写パターンは、ナノインプリントリソグラフィを用いて上記ナノインプリント用テンプレートから被転写体に転写されるパターンである。
【0063】
上記転写パターンの形状としては特に限定されるものではなく、例えばラインアンドスペース、ドット、ホール、アイソレートスペース、アイソレートライン、ピラー、レンズ、段差等の凹凸構造のパターンを挙げることができる。
【0064】
上記転写パターンのサイズとしては、特に限定されるものではないが、上記転写パターンの形状が、
図1に示されるようにラインアンドスペースである場合には、例えば、ライン幅が30nm程度であり、上記凹凸構造の凸部の高さは60nm程度である。また、上記転写パターンの形状がピラー形状である場合には、例えば、直径が50nm程度であり、上記凹凸構造の凸部の高さは60nm程度である。
【0065】
c.メサ構造
ここで、
図4(a)は、本発明のナノインプリント用テンプレートの他の例を示す概略断面図であり、
図1(b)に示される領域に対応する領域を示す図である。
図4(b)は、
図4(a)に示されるメサ構造を主面側から平面視した図である。
図4に示されるナノインプリント用テンプレート10は、
図1に示されるナノインプリント用テンプレート10とは異なり、マーク用パターン40の凸部44の上面44aに、酸化タンタル膜60に沿って溝26が設けられていない。
【0066】
上記メサ構造としては、
図1に示されるように、上記メサ構造の主面に上記酸化タンタル膜に沿って溝が設けられたものでも、
図4に示されるように上記溝が設けられていないものでもよいが、上記溝が設けられたものが好ましい。上記酸化タンタル膜は透明性を有するために、上記酸化タンタル膜の有無を直接認識して判断することが困難であるのに対して、上記酸化タンタル膜の有無を上記溝の有無を認識することにより判断できるので、上記酸化タンタル膜の有無を容易に判断できるからである。さらに、上記溝の存在は、上記テンプレートの製造時に上記転写パターンの凸部の上面に設けられた上記高コントラスト膜が確実に除去されたことを示すため、上記溝の存在によって、上記高コントラスト膜が上記転写パターンを被転写体に転写する際に障害とならないことを判断できるからである。
【0067】
なお、上記溝とは、後述する「B.ナノインプリント用テンプレートの製造方法 2.ナノインプリント用テンプレートの製造方法 (1)ナノインプリント用テンプレートの製造方法」の項目に記載された製造方法における第2エッチング工程においてエッチングを行う際に上記メサ構造の主面に形成されるものであれば特に限定されず、
図1に示されるような凹状の除去部に限られず、段差状の除去部でもよい。
【0068】
ここで、
図5(a)は、本発明のナノインプリント用テンプレートの他の例を示す概略断面図である。
図5(b)は、
図5(a)に示される破線枠内の拡大図である。
図5(c)は、
図5(b)に示されるメサ構造を主面側から平面視した図である。
【0069】
図5(a)および
図5(b)に示されるように、ナノインプリント用テンプレート10は、基部21および基部21の主面21aに設けられたメサ構造22を有する光透過性基材20を備えている。メサ構造22は、基部21の主面21aに設けられた第1段差構造27および第1段差構造27の主面27aに設けられた第2段差構造28を含んでいる。第2段差構造28の主面28aに、凹凸構造の転写パターン30および凹凸構造のマーク用パターン40が設けられている。また、基部21の主面21aとは反対側の面に、平面視して第2段差構造28および第1段差構造27を包含する窪み25が設けられている。そして、ナノインプリント用テンプレート10には、
図1に示されるテンプレートと同様に、高コントラスト膜50および酸化タンタル膜60が設けられている。
【0070】
上記メサ構造としては、
図1に示されるように単一の段差構造を有し、上記転写パターンおよび上記マーク用パターンが上記単一の段差構造の主面に設けられたものでもよいし、
図5に示されるように第1段差構造および上記第1段差構造の主面に設けられた第2段差構造を含み、上記転写パターンおよび上記マーク用パターンが上記第2段差構造の主面に設けられたものでもよい。
【0071】
上記メサ構造を平面視した形状は、特に限定されるものではなく、例えば、
図1(c)に示されるように矩形状でもよい。また、
図1(b)においてMで示されるような上記メサ構造の高さは、用途等に応じて異なるものであるが、例えば10μm~50μm程度である。さらに、平面視して矩形状の上記メサ構造の縦および横の長さは、用途等に応じて異なるものであるが、例えば20mm~35mmの範囲内である。
【0072】
また、上記第1段差構造および上記第2段差構造を含む上記メサ構造において、また、上記第1段差構造および上記第2段差構造を平面視した形状は、特に限定されるものではなく、例えば、
図5(c)に示されるように矩形状でもよい。また、
図5(b)においてM1で示されるような上記第1段差構造の高さは、用途等に応じて異なるものであるが、例えば10μm~50μmの範囲内であり、平面視して矩形状の上記第1段差構造の縦および横の長さは、上記メサ構造と同様である。
図5(b)においてM2で示されるような上記第2段差構造の高さは、用途等に応じて異なるものであるが、例えば1μm~5μmの範囲内である。さらに、平面視して矩形状の上記第2段差構造の縦および横の長さは、用途等に応じて異なるものであるが、例えば18mm~33mmの範囲内である。
【0073】
上記メサ構造ならびに上記第1段差構造および上記第2段差構造の形成方法としては、例えば、エッチングマスクを用いたウェットエッチング等が挙げられる。
【0074】
(2)基部
上記基部は、主面に上記メサ構造が設けられたものである。
【0075】
a.窪み
上記メサ構造が上記単一の段差構造を有する場合には、上記基部としては、
図1に示されるように、上記基部の主面とは反対側の面に、平面視して上記メサ構造を包含する窪みが設けられたものでもよいし、上記窪みが設けれられていないものでもよいが、上記窪みが設けられたものが好ましい。上記ナノインプリント用テンプレートの転写パターンを被転写体の表面に塗布した硬化性樹脂層に密着させる時に、上記窪み内の空気圧を高くしてナノインプリント用テンプレートを湾曲させることにより、転写パターンと硬化性樹脂層との間に空気が封入されることを抑制できるからである。
【0076】
また、上記メサ構造が上記第1段差構造および上記第2段差構造を含む場合には、上記基部としては、
図5に示されるように、上記基部の主面とは反対側の面に、平面視して上記第2段差構造を包含する窪みが設けられたものでもよいし、上記窪みが設けれられていないものでもよいが、上記窪みが設けられたものが好ましい。上記と同様に、転写パターンと硬化性樹脂層との間に空気が封入されることを抑制できるからである。さらに、上記窪みとしては、
図5に示されるように、平面視して上記第1段差構造を包含するものが好ましい。上記窪み内の空気圧を高くしてナノインプリント用テンプレートを湾曲させる時に、後述する上記第1段差構造の主面に設けられる遮光部および酸化タンタル膜がはがれたりする不具合を抑制できるからである。
【0077】
上記窪みを平面視した形状は、平面視して上記第2段差構造を包含するものであれば特に限定されず、例えば、円状でもよい。また、上記窪みの深さは、例えば4mm~5.5mmの範囲内であり、円状の上記窪みの直径は、例えば80mm程度である。
【0078】
上記窪みの形成方法としては、例えば、機械加工等が挙げられるが、上記窪みの形状およびサイズならびに上記光透過性基材の材料等に応じて適宜選択すればよい。
【0079】
b.基部
上記基部を平面視した形状は、特に限定されないが、通常、矩形状である。この場合、上記基部の縦および横の長さは、用途等に応じて異なるものであるが、例えば142mm~162mmの範囲内である。また、上記基部の厚さは、材料や用途等に応じて異なるものであるが、例えば0.5mm~10mmの範囲内である。
【0080】
(3)その他
上記光透過性基材を構成する材料としては、例えば、合成石英、ソーダガラス、蛍石、フッ化カルシウム等が挙げられる。中でも、ナノインプリント用テンプレート形成用基板での使用実績が高く品質が安定しており、高精度の微細な転写パターンを形成できるため、合成石英が好適に用いられる。上記光透過性基材の光透過性としては、波長300nm~450nmの範囲内における光線の透過率が85%以上であることが好ましい。
【0081】
4.その他
上記メサ構造が上記第1段差構造および上記第2段差構造を含む上記ナノインプリント用テンプレートとしては、
図5に示されるように、第1段差構造27の主面27aにおける第2段差構造28の周囲の領域に遮光部70が設けられ、酸化タンタル膜60が、遮光部70の主面70aを露出させずに覆うように遮光部70の主面70aに設けられたものが好ましい。上記遮光部により光インプリント時に露光光が意図しない領域に照射されることを抑制できる上、硫酸洗浄やアルカリ洗浄とともにプラズマアッシングを用いて行う洗浄時に、上記酸化タンタル膜により上記遮光部の膜減りや消失を十分に抑制できるからである。
【0082】
ここで、
図6は、本発明のナノインプリント用テンプレートの他の例を示す概略断面図であり、
図5(a)に示される領域に対応する領域を示す図である。
図6に示されるナノインプリント用テンプレート10では、遮光部70の主面70aおよび側面70bを露出させずに覆うように、遮光部70の主面70aおよび側面70bに連続するように設けられている。
【0083】
上記遮光部の主面に設けられた上記酸化タンタル膜としては、
図6に示されるように、上記遮光部の主面および側面を覆うように上記遮光部の主面および側面に設けられたものが好ましい。上記遮光部が硫酸洗浄やアルカリ洗浄およびプラズマアッシングの影響を側面から受けることを抑制できるので、上記遮光部の膜減りや消失を効果的に抑制できるからである。
【0084】
上記遮光部としては、光インプリント時に露光光が意図しない領域に照射されることを抑制できれば特に限定されず、遮光性膜のみを含む単層構造を有するものでもよいが、
図5および
図6に示されるように、遮光性膜80および高コントラスト膜50がこの順に積層された多層構造を有するものが好ましい。上記多層構造の遮光性は、上記単層構造と比較して高くなるので、光インプリント時に露光光が意図しない領域に照射されることを効果的に抑制できるからである。
【0085】
また、遮光部は、第1段差構造の主面における第2段差構造の周囲の領域だけでなく、第1段差構造の側面にも形成されることが好ましい。更にこの場合、第1段差構造の側面における遮光部上には、酸化タンタル膜が形成されていてもよい。
【0086】
上記遮光性膜の材料としては、例えば、Al、Ni、Co、Cr、Ti、Ta、W、Mo、Sn、Zn等の金属、Si等を挙げることができ、また、これらの酸化物、窒化物、合金等も用いることができる。上記遮光性膜の遮光性としては、波長365nmの範囲内における光線の透過率が1%以下であることが好ましく、中でも0.1%以下であることが好ましい。
【0087】
上記遮光性膜の厚さとしては、光インプリント時に露光光が意図しない領域に照射されることを抑制できれば特に限定されず、例えば、上記遮光性膜の材料にCrを用いる場合、15nm以上の範囲内であればよい。中でも35nm~1000nmの範囲内、特に55nm~1000nmの範囲内であることが好ましい。上記遮光性膜の厚さがこれらの範囲の下限以上であることにより、それぞれ波長365nmの範囲内における光線の透過率を1%以下および0.1%以下とすることができるからである。
【0088】
上記遮光性膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレーティング法等のPVD法(physical vapor deposition)、プラズマCVD法、熱CVD法、および光CVD法等のCVD法(chemical vapor deposition)等、ならびに塗料、染料、顔料の塗布等が挙げられる。
【0089】
上記多層構造における上記高コントラスト膜については、上記「2.高コントラスト膜」の項目に記載された高コントラスト膜と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0090】
B.ナノインプリント用テンプレートの製造方法
本発明のナノインプリント用テンプレートの製造方法は、基部および上記基部の主面に設けられたメサ構造を有し、上記メサ構造の主面に、凹凸構造の転写パターンおよび凹凸構造のマーク用パターンが設けられた光透過性基材と、上記光透過性基材の主面側全面に設けられた高コントラスト膜と、を備えるテンプレート形成用部材を準備する準備工程と、上記マーク用パターンが設けられたマーク用パターン領域が薄膜となり、かつ上記転写パターンが設けられた転写パターン領域が厚膜となるように、上記マーク用パターンおよび上記転写パターン上に第1樹脂層を形成する第1樹脂層形成工程と、上記第1樹脂層が形成された上記テンプレート形成用部材に対してエッチングを行うことにより、少なくとも上記マーク用パターンの凹部の底面および上記転写パターン領域に上記高コントラスト膜を残して、上記高コントラスト膜の他の部分を除去する第1エッチング工程と、上記第1エッチング工程が行われた上記テンプレート形成用部材の主面側全面に酸化タンタル膜を形成する酸化タンタル膜形成工程と、上記マーク用パターン領域が厚膜となり、かつ上記転写パターン領域が薄膜となるように、上記マーク用パターン領域および上記転写パターン領域に形成された上記酸化タンタル膜上に第2樹脂層を形成する第2樹脂層形成工程と、上記第2樹脂層が形成された上記テンプレート形成用部材に対してエッチングを行うことにより、少なくとも上記高コントラスト膜の表面に形成された上記酸化タンタル膜を残して、上記酸化タンタル膜の他の部分を除去する第2エッチング工程と、残存する上記酸化タンタル膜をマスクに用いたエッチングを行うことにより、上記転写パターン領域に設けられた高コントラスト膜を除去する第3エッチング工程と、を備えることを特徴とする。
【0091】
本発明のナノインプリント用テンプレートの製造方法の一例について図面を参照しながら説明する。
図7(a)~
図9(c)は、本発明のナノインプリント用テンプレートの製造方法の一例を示す概略工程断面図である。
【0092】
まず、
図7(a)に示されるように、基部21および基部21の主面21aに設けられたメサ構造22を有し、メサ構造22の主面22aに、凹凸構造の転写パターン30および凹凸構造のマーク用パターン40が設けられた光透過性基材20と、マーク用パターン40の凹部42の底面42aおよび凸部44の上面44aならびに転写パターン30の凹部32の底面32aおよび凸部34の上面34aに設けられた高コントラスト膜50と、を備えるテンプレート形成用部材1を準備する。
【0093】
次に、
図7(b)に示されるように、マーク用パターン40の凹部42の底面42aおよび凸部44の上面44aに設けられた高コントラスト膜50上に第1樹脂層91の薄膜91aを形成し、転写パターン30の凹部32の底面32aおよび凸部34の上面34aに設けられた高コントラスト膜50上に薄膜91aよりも厚い第1樹脂層91の厚膜91bを形成する。
【0094】
この場合には、まず、マーク用パターン40の凹部42の底面42aおよび凸部44の上面44aに設けられた高コントラスト膜50上、ならびに転写パターン30の凹部32の底面32aおよび凸部34の上面34aに設けられた高コントラスト膜50上に樹脂を滴下する。次に、樹脂層厚規定用テンプレート100を押し当てた状態で樹脂を硬化させた後、樹脂層厚規定用テンプレート100を離型する。これより、
図7(b)に示される薄膜91aの厚さH1および厚膜91bの厚さH2がH1>H2を満たすように規定された第1樹脂層91が形成される。
【0095】
次に、
図7(c)に示されるように、酸素系ガスを使用したドライエッチングを行うことにより、エッチバック法を用いて、第1樹脂層91を部分的に除去する。この場合には、上述したように薄膜91aの厚さH1および厚膜91bの厚さH2がH1<H2を満たすように規定されていることにより、マーク用パターン40の凹部42の底面42aに設けられた高コントラスト膜50上に形成した薄膜91aの光透過性基材側、ならびに転写パターン30の凹部32の底面32aおよび凸部34の上面34aに設けられた高コントラスト膜50上に形成した厚膜91bの光透過性基材側を残し、第1樹脂層91の他の部分を除去することができる。
【0096】
次に、
図8(a)に示されるように、残存する第1樹脂層91の薄膜91aおよび厚膜91bをマスクに用いて、塩素系ガスを使用したドライエッチングを行うことにより、マーク用パターン40の凹部42の底面42aならびに転写パターン30の凹部32の底面32aおよび凸部34の上面34aに設けられた高コントラスト膜50を残して、マーク用パターン40の凸部44の上面44aに設けられた高コントラスト膜50を除去する。
【0097】
次に、
図8(b)に示されるように、ウェット洗浄または、酸素系ガスを使用したドライエッチングを行うことにより、残存する第1樹脂層91を除去した後に、マーク用パターン40の凹部42の底面42aに残存する高コントラスト膜50を露出させずに覆うように、当該高コントラスト膜50の表面ならびにマーク用パターン40の凸部44の側面44bおよび上面44aに連続するように酸化タンタル膜60を形成する。また、転写パターン30の凹部32の底面32aおよび凸部34の上面34aに残存する高コントラスト膜50の表面に酸化タンタル膜60を形成する。
【0098】
次に、
図8(c)に示されるように、マーク用パターン40の凹部42の底面42aに残存する高コントラスト膜50の表面およびマーク用パターン40の凸部44の上面44aに形成した酸化タンタル膜60上に第2樹脂層92の厚膜92aを形成し、転写パターン30の凹部32の底面32aおよび凸部34の上面34aに残存する高コントラスト膜50の表面に形成した酸化タンタル膜60上に厚膜92aよりも薄い第2樹脂層92の薄膜92bを形成する。また、このときには、第2樹脂層92の厚膜92aを、平面視して、
図7(b)に示した第1樹脂層91の薄膜91aの形成領域Rよりも内側の領域に形成する。
【0099】
この場合には、まず、マーク用パターン40の凹部42の底面42aに残存する高コントラスト膜50の表面およびマーク用パターン40の凸部44の上面44aに形成した酸化タンタル膜60上、ならびに転写パターン30の凹部32の底面32aおよび凸部34の上面34aに残存する高コントラスト膜50の表面に形成した酸化タンタル膜60上に樹脂を滴下する。次に、樹脂層厚規定用テンプレート100を押し当てた状態で樹脂を硬化させた後、樹脂層厚規定用テンプレート100を離型する。これより、
図8(c)に示される厚膜92aの厚さH3および薄膜92bの厚さH4がH3>H4を満たすように規定された第2樹脂層92が形成される。
【0100】
次に、
図9(a)に示されるように、酸素系ガスを使用したドライエッチングを行うことにより、エッチバック法を用いて、第2樹脂層92を部分的に除去する。この場合には、上述したように厚膜92aの厚さH3および薄膜92bの厚さH4がH3>H4を満たすように規定されていることにより、マーク用パターン40の凹部42の底面42aに残存する高コントラスト膜50の表面およびマーク用パターン40の凸部44の上面44aに形成された酸化タンタル膜60上に形成した厚膜92aの光透過性基材側を残し、厚膜92aの他の部分および薄膜92bを除去することができる。また、このときには、上述したように第2樹脂層92の厚膜92aが、平面視して、第1樹脂層91の薄膜91aの形成領域Rよりも内側の領域に形成されているために、マーク用パターン40の凸部44の上面44aに形成された酸化タンタル膜60の外周部61が第2樹脂層92の厚膜92aから露出する。
【0101】
次に、
図9(b)に示されるように、残存する第2樹脂層92の厚膜92aをマスクに用いて、フッ素系ガスを使用したドライエッチングを行うことにより、マーク用パターン40の凹部42の底面42aに残存する高コントラスト膜50の表面、ならびにマーク用パターン40の凸部44の側面44bおよび上面44aに連続するように形成された酸化タンタル膜60を残して、酸化タンタル膜60の他の部分を除去する。このときには、マーク用パターン40の凸部44の上面44aに形成された酸化タンタル膜60の外周部61が第2樹脂層92の厚膜92aから露出しているので、酸化タンタル膜60の外周部61が除去されるとともに、外周部61の領域においてマーク用パターン40の凸部44の上面44a側の部分が除去される。これにより、マーク用パターン40の凸部44の上面44aに、第2樹脂層92の厚膜92aとなる領域に沿って溝26が形成される。
【0102】
次に、
図9(c)に示されるように、ウェット洗浄または、酸素系ガスを使用したドライエッチングを行うことにより、残存する第2樹脂層92の厚膜92aを除去した後に、残存する酸化タンタル膜60をマスクに用いて、塩素系ガスを使用したドライエッチングを行うことにより、転写パターン30の凹部32の底面32aおよび凸部34の上面34aに設けられた高コントラスト膜50を除去する。これにより、
図1に示されるナノインプリント用テンプレート10を製造することができる。
【0103】
したがって、本発明によれば、高コントラスト膜の膜減りや消失を十分に抑制できるナノインプリント用テンプレートを製造することができる。さらに、高コントラスト膜を加工する時に酸化タンタル膜が消失するおそれがないので、高コントラスト膜を露出させずに覆うように設けることが容易である。
【0104】
1.ナノインプリント用テンプレートの製造方法の各工程
以下、ナノインプリント用テンプレートの製造方法の各工程について説明する。
(1)準備工程
上記準備工程においては、基部および上記基部の主面に設けられたメサ構造を有し、上記メサ構造の主面に、凹凸構造の転写パターンおよび凹凸構造のマーク用パターンが設けられた光透過性基材と、上記光透過性基材の主面側全面に設けられた高コントラスト膜と、を備えるテンプレート形成用部材を準備する。
【0105】
上記光透過性基材については、上記「A.ナノインプリント用テンプレート 3.光透過性基材」の項目に記載された光透過性基材と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0106】
上記高コントラスト膜については、上記マーク用パターンの凹部の底面および凸部の上面ならびに上記転写パターンの凹部の底面および凸部の上面に設けられている点を除いて、上記「A.ナノインプリント用テンプレート 2.高コントラスト膜」の項目に記載された高コントラスト膜と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0107】
(2)第1樹脂層形成工程
上記第1樹脂層形成工程においては、上記マーク用パターンが設けられたマーク用パターン領域が薄膜となり、かつ上記転写パターンが設けられた転写パターン領域が厚膜となるように、上記マーク用パターンおよび上記転写パターン上に第1樹脂層を形成する。
【0108】
ここで、上記第1樹脂層の薄膜の厚さとは、
図7(b)においてH1で示されるような上記マーク用パターンの凹部における上記第1樹脂層の薄膜の厚さを意味し、上記第1樹脂層の厚膜の厚さとは、
図7(b)においてH2で示されるような上記転写パターンの凹部における上記第1樹脂層の厚膜の厚さを意味する。
上記第1樹脂層の薄膜の厚さおよび上記第1樹脂層の厚膜の厚さは、エッチング条件に応じて適宜設定される。
【0109】
上記第1樹脂層の材料としては、ナノインプリントリソグラフィで用いられる硬化性樹脂であれば特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂が挙げられる。中でも光硬化性樹脂が好ましく、特に紫外線硬化性樹脂が好ましい。
【0110】
(3)第1エッチング工程
上記第1エッチング工程においては、上記第1樹脂層が形成された上記テンプレート形成用部材に対してエッチングを行うことにより、少なくとも上記マーク用パターンの凹部の底面および上記転写パターン領域に上記高コントラスト膜を残して、上記高コントラスト膜の他の部分を除去する。
【0111】
上記第1エッチング工程は、特に限定されないが、通常は、
図7(c)および
図8(a)に示されるように、上記マーク用パターンの凹部の底面に設けられた上記高コントラスト膜上に形成した上記第1樹脂層の薄膜の上記光透過性基材側、ならびに上記転写パターンの凹部の底面および凸部の上面に設けられた上記高コントラスト膜上に形成した上記第1樹脂層の厚膜の上記光透過性基材側を残し、上記第1樹脂層の他の部分を除去する第1樹脂層除去工程と、残存する上記第1樹脂層をマスクに用いたエッチングにより、上記マーク用パターンの凹部の底面ならびに上記転写パターンの凹部の底面および凸部の上面に設けられた上記高コントラスト膜を残して、上記高コントラスト膜の他の部分を除去する高コントラスト膜除去工程と、を含む。
【0112】
上記第1樹脂層を除去する方法としては、上記第1樹脂層の上記光透過性基材側を残し、上記第1樹脂層の他の部分を除去することができれば特に限定されないが、エッチバック法を用いたドライエッチング等が挙げられる。上記ドライエッチングに使用されるガスとしては、例えば、酸素系ガス等が挙げられる。
【0113】
上記高コントラスト膜のエッチングの方法としては、ドライエッチングでもよいし、ウェットエッチングでもよいが、ドライエッチングが好ましい。上記ドライエッチングに使用されるガスとしては、例えば、塩素系ガス等が挙げられる。
【0114】
(4)酸化タンタル膜形成工程
上記酸化タンタル膜形成工程においては、上記第1エッチング工程が行われた上記テンプレート形成用部材の主面側全面に酸化タンタル膜を形成する。
上記酸化タンタル膜については、上記「A.ナノインプリント用テンプレート 1.酸化タンタル膜」の項目に記載された酸化タンタル膜と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0115】
上記酸化タンタル膜を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレーティング法等のPVD法(physical
vapor deposition)、プラズマCVD法、熱CVD法、および光CVD法等のCVD法(chemical vapor deposition)等、ならびに塗料、染料、顔料の塗布等が挙げられる。
なお、上記酸化タンタル膜形成工程は、残存する上記第1樹脂層を除去した後に行う。
【0116】
(5)第2樹脂層形成工程
上記第2樹脂層形成工程においては、上記マーク用パターン領域が厚膜となり、かつ上記転写パターン領域が薄膜となるように、上記マーク用パターン領域および上記転写パターン領域に形成された上記酸化タンタル膜上に第2樹脂層を形成する。
【0117】
ここで、上記第2樹脂層の厚膜の厚さとは、
図8(c)においてH3で示されるような上記マーク用パターンの凹部における上記第2樹脂層の厚膜の厚さを意味し、上記第2樹脂層の薄膜の厚さとは、
図8(c)においてH4で示されるような上記転写パターンの凹部における上記第2樹脂層の薄膜の厚さを意味する。
【0118】
上記第2樹脂層の薄膜の厚さおよび上記第2樹脂層の厚膜の厚さは、エッチング条件に応じて適宜設定される。
上記第2樹脂層の材料については、上記第1樹脂層と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0119】
(6)第2エッチング工程
上記第2エッチング工程においては、上記第2樹脂層が形成された上記テンプレート形成用部材に対してエッチングを行うことにより、少なくとも上記高コントラスト膜の表面に形成された上記酸化タンタル膜を残して、上記酸化タンタル膜の他の部分を除去する。
【0120】
上記第2エッチング工程は、特に限定されないが、通常は、
図9(a)および
図9(b)に示されるように、上記マーク用パターンの凹部の底面に残存する上記高コントラスト膜の表面に形成された上記酸化タンタル膜上に形成した上記第2樹脂層の厚膜の上記光透過性基材側を残し、上記第2樹脂層の厚膜の他の部分および上記第2樹脂層の薄膜を除去する第2樹脂層除去工程と、残存する上記第2樹脂層の厚膜をマスクに用いたエッチングにより、上記マーク用パターンの凹部の底面に残存する上記高コントラスト膜の表面に形成された上記酸化タンタル膜を残して、上記酸化タンタル膜の他の部分を除去する酸化タンタル膜除去工程と、を含む。
【0121】
上記第2樹脂層を除去する方法としては、上記第2樹脂層の厚膜の上記光透過性基材側を残し、上記第2樹脂層の厚膜の他の部分および上記第2樹脂層の薄膜を除去することができれば特に限定されないが、エッチバック法を用いたドライエッチング等が挙げられる。上記ドライエッチングに使用されるガスとしては、例えば、酸素系ガス等が挙げられる。
【0122】
上記酸化タンタル膜のエッチングの方法としては、ドライエッチングでもよいし、ウェットエッチングでもよいが、ドライエッチングが好ましい。上記ドライエッチングに使用されるガスとしては、例えば、フッ素系ガス等が挙げられる。
【0123】
(7)第3エッチング工程
上記第3エッチング工程においては、残存する上記酸化タンタル膜をマスクに用いたエッチングを行うことにより、上記転写パターン領域に設けられた高コントラスト膜を除去する。
上記高コントラスト膜のエッチングの方法としては、上記第1エッチング工程と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0124】
なお、上記高コントラスト膜の第2除去工程は、残存する上記第2樹脂層を除去した後に行ってもよいし、これらを除去する前に行ってもよいが、通常は、これらを除去した後に行う。
【0125】
2.ナノインプリント用テンプレートの製造方法
以下、本発明のナノインプリント用テンプレートの製造方法について説明する。
(1)ナノインプリント用テンプレートの製造方法
上記ナノインプリント用テンプレートの製造方法の好ましい態様について説明する。
【0126】
上記ナノインプリント用テンプレートの製造方法としては、
図7(c)および
図8(a)ならびに
図9(a)および
図9(b)に示されるように、上記第1エッチング工程において、上記マーク用パターンでは、上記凹部の底面のみに上記コントラスト膜を残して、上記コントラスト膜の他の部分を除去し、上記第2エッチング工程において、上記高コントラスト膜の表面および上記マーク用パターンの凸部の上面に形成された上記酸化タンタル膜を残す製造方法が好ましい。
図1および
図2に示されるように、上記マーク用パターンでは、上記凹部の底面のみに上記コントラスト膜が設けられ、上記酸化タンタル膜が上記高コントラスト膜の表面および上記マーク用パターンの凸部の上面に設けられた上記ナノインプリント用テンプレートを製造できるからである。
【0127】
さらに、このようなナノインプリント用テンプレートの製造方法としては、中でも、
図8(c)~
図9(b)に示されるように、上記第2樹脂層形成工程において、上記第2樹脂層の厚膜となる領域を平面視して上記第1樹脂層の薄膜となる領域よりも内側とし、上記第2エッチング工程において、上記エッチングを行うことにより、上記メサ構造の主面に、上記第2樹脂層の厚膜となる領域に沿って溝を形成する製造方法が好ましい。上記酸化タンタル膜の有無を上記溝の有無を認識することにより判断できる上記ナノインプリント用テンプレートを製造できるからである。
【0128】
(2)メサ構造が第1段差構造および第2段差構造を含むナノインプリント用テンプレートの製造方法
上記ナノインプリント用テンプレートの製造方法としては、上記準備工程において、上記メサ構造が、上記基部の主面に設けられた第1段差構造および上記第1段差構造の主面に設けられた第2段差構造を有し、上記転写パターンおよび上記マーク用パターンが上記第2段差構造の主面に設けられ、上記第1段差構造の主面における上記第2段差構造の周囲の領域に設けられた遮光部をさらに有する上記テンプレート形成用部材を準備し、上記第1樹脂層形成工程において、上記遮光部上にも上記第1樹脂層を形成し、上記第1エッチング工程において、上記遮光部を残し、上記酸化タンタル膜形成工程において、上記遮光部の主面に上記酸化タンタル膜を形成し、上記第2樹脂層形成工程において、上記遮光部の主面に形成された上記酸化タンタル膜上にも上記厚膜の第2樹脂層を形成し、上記第2エッチング工程において、上記遮光部の主面に形成された上記酸化タンタル膜を残す製造方法が好ましい。以下、当該製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0129】
図10(a)~
図12(c)は、本発明のナノインプリント用テンプレートの製造方法の他の例を示す概略工程断面図である。
【0130】
まず、
図10(a)に示されるように、メサ構造22が、基部21の主面21aに設けられた第1段差構造27および第1段差構造27の主面27aに設けられた第2段差構造28を有し、第2段差構造28の主面28aに、凹凸構造の転写パターン30および凹凸構造のマーク用パターン40が設けられ、第1段差構造27の主面27aにおける第2段差構造28の周囲の領域に設けられた遮光部70をさらに有する点を除いて、
図7(a)に示されるテンプレート形成用部材1と同様の構成を有するテンプレート形成用部材1を準備する。なお、遮光部70は、遮光性膜80および高コントラスト膜50がこの順に積層された多層構造を有している。
【0131】
次に、
図10(b)に示されるように、
図7(b)に示される工程と同様に第1樹脂層91の薄膜91aおよび厚膜91bを形成するとともに、遮光部70上に第1樹脂層91の遮光部用膜91cを形成する。
【0132】
この場合には、まず、
図7(b)に示される工程と同様にマーク用パターン40および転写パターン30の領域に樹脂を滴下するとともに、遮光部70の主面70aに樹脂を滴下する。次に、
図10(b)に示されるように、樹脂層厚規定用テンプレート100を押し当てた状態で樹脂を硬化させた後、樹脂層厚規定用テンプレート100を離型する。これより、第1樹脂層91の薄膜91a、厚膜91b、および遮光部用膜91cが形成される。
【0133】
次に、
図10(c)に示されるように、酸素系ガスを使用したドライエッチングを行うことにより、エッチバック法を用いて、第1樹脂層91を部分的に除去する。この場合には、
図7(c)に示される工程と同様に第1樹脂層91の薄膜91aおよび厚膜91bの光透過性基材側を残すとともに、第1樹脂層91の遮光部用膜91cの光透過性基材側を残し、樹脂層の他の部分を除去することができる。
【0134】
次に、
図11(a)に示されるように、残存する第1樹脂層91の薄膜91a、厚膜91b、および遮光部用膜91cをマスクに用いて、塩素系ガスを使用したドライエッチングを行うことにより、
図8(a)に示される工程と同様に高コントラスト膜50を残すとともに、遮光部70における高コントラスト膜50を残して、高コントラスト膜50の他の部分を除去する。
【0135】
次に、
図11(b)に示されるように、残存する第1樹脂層91を除去した後に、
図8(b)に示される工程と同様に酸化タンタル膜60を形成するとともに、遮光部70の主面70aおよび側面70bを露出させずに覆うように、遮光部70の主面70aおよび側面70bに連続するように酸化タンタル膜60を形成する。
【0136】
次に、
図11(c)に示されるように、
図8(c)に示される工程と同様に第2樹脂層92の厚膜92aおよび薄膜92bを形成するとともに、遮光部70の主面70aに形成した酸化タンタル膜60上に薄膜92bよりも厚い第2樹脂層92の遮光部用厚膜92cを形成する。
【0137】
この場合には、まず、
図8(c)に示される工程と同様にマーク用パターン40および転写パターン30の領域に樹脂を滴下するとともに、遮光部70の主面70aに形成した酸化タンタル膜60上に樹脂を滴下する。次に、樹脂層厚規定用テンプレート100を押し当てた状態で樹脂を硬化させた後、樹脂層厚規定用テンプレート100を離型する。これより、
図11(c)に示される厚膜92aの厚さH3、薄膜92bの厚さH4、および遮光部用厚膜92cの厚さH6が、H3>H4およびH6>H4を満たすように規定された第2樹脂層92が形成される。
【0138】
次に、
図12(a)に示されるように、酸素系ガスを使用したドライエッチングを行うことにより、エッチバック法を用いて、第2樹脂層92を部分的に除去する。この場合には、上述したように各樹脂層の厚さが、H3>H4およびH6>H4を満たすように規定されていることにより、
図9(a)に示される工程と同様に厚膜92aの光透過性基材側を残すとともに、遮光部用厚膜92cの光透過性基材側を残し、樹脂層の他の部分を除去することができる。
【0139】
次に、
図12(b)に示されるように、残存する第2樹脂層92の厚膜92aおよび遮光部用厚膜92cをマスクに用いて、フッ素系ガスを使用したドライエッチングを行うことにより、
図9(b)に示される工程と同様に酸化タンタル膜60を残すとともに、遮光部70の主面70aに形成された酸化タンタル膜60を残して、酸化タンタル膜60の他の部分を除去する。
【0140】
次に、
図12(c)に示されるように、残存する第2樹脂層92の厚膜92aおよび第2樹脂層92の遮光部用厚膜92cを除去した後に、
図9(b)に示される工程と同様に高コントラスト膜50を除去する。これにより、
図5に示されるナノインプリント用テンプレート10を製造する。なお、高コントラスト膜50の除去は、残存する第2樹脂層92の厚膜92a遮光部用厚膜92cを除去した後に行ってもよいが、通常は、これらを除去した後に行う。
【0141】
したがって、上記ナノインプリント用テンプレートの製造方法としては、上記メサ構造が第1段差構造および第2段差構造を含むナノインプリント用テンプレートの製造方法が好ましい。上記遮光部により光インプリント時に露光光が意図しない領域に照射されることを抑制できる上、上記酸化タンタル膜により上記遮光部の膜減りや消失を抑制できるナノインプリント用テンプレートを製造することができるからである。
【0142】
以下、上記メサ構造が第1段差構造および第2段差構造を含むナノインプリント用テンプレートの製造方法の各工程について説明する。
【0143】
a.準備工程
上記準備工程において、上記メサ構造が、上記基部の主面に設けられた第1段差構造および上記第1段差構造の主面に設けられた第2段差構造を有し、上記転写パターンおよび上記マーク用パターンが上記第2段差構造の主面に設けられ、上記第1段差構造の主面における上記第2段差構造の周囲の領域に設けられた遮光部をさらに有する上記テンプレート形成用部材を準備する。
【0144】
上記第1段差構造および上記第2段差構造を有する上記メサ構造については、上記「A.ナノインプリント用テンプレート 3.光透過性基材 (1)メサ構造 c.メサ構造」の項目に記載されたメサ構造と同様であるため、ここでの説明を省略する。
上記遮光部については、上記「A.ナノインプリント用テンプレート 4.その他」の項目に記載された遮光部にと同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0145】
b.第1樹脂層形成工程
上記第1樹脂層形成工程において、上記遮光部上にも上記第1樹脂層を形成する。
図10(b)においてH5で示されるような上記遮光部上に形成する上記第1樹脂層の厚さとしては、後述する第1エッチング工程における第1樹脂層除去工程において、上記遮光部上に形成する上記第1樹脂層の上記光透過性基材側を残すことができれば、特に限定されず、エッチング条件に応じて適宜設定される。
【0146】
c.第1エッチング工程
上記第1エッチング工程において、上記遮光部を残す。
上記第1エッチング工程は、特に限定されないが、通常は、
図10(c)および
図11(a)に示されるように、上記第1樹脂層除去工程において、上記遮光部上に形成された上記第1樹脂層の上記光透過性基材側を残して、上記第1樹脂層の他の部分を除去し、上記高コントラスト膜除去工程において、残存する上記第1樹脂層を上記マスクに用いた上記エッチングにより、上記遮光部を残す。
【0147】
d.酸化タンタル膜形成工程
上記酸化タンタル膜形成工程において、上記遮光部の主面に上記酸化タンタル膜を形成する。
上記酸化タンタル膜形成工程においては、
図11(b)に示されるように、上記遮光部の主面および側面を覆うように、上記遮光部の主面および側面に上記酸化タンタル膜を連続するように形成することが好ましい。上記遮光部が硫酸洗浄やアルカリ洗浄およびプラズマアッシングの影響を側面から受けることを抑制できるので、上記遮光部の膜減りや消失を効果的に抑制できる上記ナノインプリント用テンプレートを製造できるからである。
【0148】
e.第2樹脂層形成工程
上記第2樹脂層形成工程において、上記遮光部の主面に形成された上記酸化タンタル膜上にも上記厚膜の第2樹脂層を形成する。
ここで、上記遮光部の主面に形成された上記酸化タンタル膜上に形成する上記厚膜の厚さとは、
図11(c)においてH6で示されるような上記遮光部における上記第2樹脂層の厚膜の厚さを意味し、例えば、
図8(c)においてH3で示されるような上記マーク用パターンの凹部における上記第2樹脂層の厚膜の厚さと同様の範囲となる。
【0149】
f.第2エッチング工程
上記第2エッチング工程において、上記遮光部の主面に形成された上記酸化タンタル膜を残す。
上記第2エッチング工程は、特に限定されないが、通常は、
図12(a)および
図12(b)に示されるように、上記第2樹脂層除去工程において、上記遮光部の主面に形成された上記酸化タンタル膜上に形成する上記厚膜の第2樹脂層の光透過性基材側を残し、上記第2樹脂層の厚膜の他の部分を除去し、上記酸化タンタル膜除去工程において、残存する上記遮光部の主面に形成された上記酸化タンタル膜上に形成する上記厚膜の第2樹脂層を上記マスクに用いた上記エッチングにより、上記遮光部の主面に形成された上記酸化タンタル膜を残す。
【0150】
C.ナノインプリント用テンプレート(第二実施態様)
また、本発明では、第二実施態様として、基部および上記基部の主面に設けられたメサ構造を有する光透過性基材を備え、上記メサ構造の主面に、凹凸構造の転写パターンおよび凹凸構造のマーク用パターンが設けられ、上記マーク用パターンの凹部の底面に高コントラスト膜が設けられ、上記高コントラスト膜の端部が露出しないように、上記高コントラスト膜の表面と上記マーク用パターンの凸部の側面と、上記マーク用パターンの凸部の上面とを連続して覆う、上記高コントラスト膜とは異なる材料からなる保護膜が設けられ、上記保護膜は、端部が上記マーク用パターンの凸部の上面にあるように設けられることを特徴とする、ナノインプリント用テンプレートを提供する。
【0151】
本態様のナノインプリント用テンプレートについて図面を参照しながら説明する。
図13(a)は、本態様のナノインプリント用テンプレートの一例を示す概略断面図である。
図13(b)は、
図13(a)に示される破線枠内の拡大図である。
図13(c)は、保護膜の形成領域を説明する図である。
【0152】
図13(a)~
図13(c)に示されるように、ナノインプリント用テンプレート10は、基部21および基部21の主面21aに設けられたメサ構造22を有する光透過性基材20を備えている。メサ構造22の主面22aに、凹凸構造の転写パターン30および凹凸構造のマーク用パターン40が設けられている。また、基部21の主面21aとは反対側の面に、平面視してメサ構造22を包含する窪み25が設けられている。そして、マーク用パターン40の凹部42の底面42aのみに、Crを含む高コントラスト膜50が設けられている。高コントラスト膜50はアライメントマークを構成する。高コントラスト膜とは異なる材料からなる保護膜600が、上記高コントラスト膜50の端部が露出しないように、上記高コントラスト膜50の表面とマーク用パターン40の凸部44の側面44bと、上記マーク用パターンの凸部の上面44aとを連続して覆うように形成されている。更に、保護膜600は、端部がマーク用パターンの凸部44の上面44aにあるように設けられている。
【0153】
このように高コントラスト膜とは異なる材料からなる保護膜が、高コントラスト膜の端部が露出しないように、高コントラスト膜の表面とマーク用パターンの凸部の側面と、マーク用パターンの凸部の上面とを連続して覆うように形成されており、かつ、端部がマーク用パターンの凸部の上面にあるように設けられていることで、高コントラスト膜の端部が上記保護膜により密封されているため、高コントラスト膜と接触するような薬液の侵入を確実に抑制することができ、高コントラスト膜の膜減りを抑制することができる。また、上記高コントラスト膜が上記マーク用パターンの凸部の側面にまで突出するものであっても、上記高コントラスト膜を露出させずに覆うことができる。
【0154】
1.保護膜
保護膜の構成する材料としては、高コントラスト膜とは異なる材料であれば特に限定されないが、例えば、酸化タンタル、シリコン(無定形;a-Si)、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、酸化窒化シリコン(SiON)、炭化シリコン(SiC)、モリブデンシリサイド(MoSi)、タンタルシリサイド(TaSi)、タングステンシリサイド(WSi)などが挙げられる。
【0155】
特には、保護膜は酸化タンタルを含む酸化タンタル膜であることが好ましい。酸化タンタル膜は、ナノインプリントリソグラフィで用いるレジスト等の異物を除去する硫酸洗浄やアルカリ洗浄に対する耐性が十分に高い上、これらの洗浄では除去できずに残存する異物を除去する酸素含有ガスを用いたプラズマアッシングに対する耐性も十分に高い。このため、酸化タンタル膜は、硫酸洗浄やアルカリ洗浄とともにプラズマアッシングを用いて行うテンプレートの洗浄時に消失するおそれがない。
さらに、酸化タンタル膜は、高コントラスト膜とはエッチングガスが異なるため、高コントラスト膜を加工する時のドライエッチングにより消失するおそれがない。
【0156】
本発明の保護膜は、高コントラスト膜の端部が露出しないように、高コントラスト膜の表面と、マーク用パターンの凸部の側面と、マーク用パターンの凸部の上面とを連続して覆うように形成されていることを特徴とするが、このように保護膜を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレーティング法等のPVD法(physical vapor deposition)、プラズマCVD法、熱CVD法、および光CVD法等のCVD法(chemical vapor deposition)等が挙げられる。
【0157】
本発明においては、特に、マーク用パターンの凸部の側面にも確実に形成されるよう、スパッタリング法において、マーク用パターン面と保護膜の材料であるターゲットの表面の位置を水平ではなく、1°~30°の角度を持たせた位置に設置する事で、凸部の側面にも保護膜を形成出来、基板を回転させる事で均等に形成するといった方法が用いられることが好ましい。
【0158】
また、
図13(c)に示されるように、保護膜600は、平面視において、高コントラスト膜が設けられたマーク用パターンの凹部、及び凸部が複数連続して配列されたアライメントマーク領域40Aを包含するように、アライメントマーク領域40Aよりも広い領域に設けられることが好ましい。
【0159】
また、この場合においては通常、アライメントマーク領域40Aは矩形状であり、保護膜600は、アライメントマーク領域40Aの各辺より50nm以上離れた位置に端部があることが好ましい。即ち、
図13(b)に示すように、マーク用パターン40の凹部42の底面42aのみに、Crを含む高コントラスト膜50が設けられている場合には、保護膜600は、凸部の上面における幅(
図13(c)のw3及びw4)が、50nm以上であることが好ましい。
【0160】
また、
図14(a)に示すように、上記アライメントマーク領域は、メサ構造の主面に複数設けられていてもよい。この場合には、例えば、各アライメントマーク領域における凹凸パターンは、互いに直交した向きとなっていてもよい。
このように複数のアライメントマーク領域がメサ構造主面に設けられている場合は、
図14(b)に示すように、保護膜600は、複数のアライメントマーク領域を包含するように、複数のアライメントマーク領域より広い領域に設けられることが好ましい。
また、この場合においても、保護膜は、アライメントマーク領域40Aの各辺より50nm以上離れた位置に端部があることが好ましい
【0161】
上記保護膜の凸部の上面における保護膜端部までの幅(
図13(c)のw3及びw4)としては、上述したように50nm以上であることが好ましいが、特に100nm以上、中でも500nm以上とすることが好ましい。保護膜による高コントラスト膜に対する密封性をより確実とするからである。なお、通常、上限は、マーク用パターン面に影響を及ぼさない範囲であれば良い。
【0162】
また、保護膜600の厚さは、通常、1nm~20nmであり、好ましくは、1nm ~ 10nmである。上記凸部の上面に形成される保護膜が薄過ぎると、上記高コントラスト膜の膜減りや消失を十分に抑制できず、上記保護膜が厚過ぎると、上記マーク用パターンの凸部の上面に設けられると、上記転写パターンを被転写体に転写する際に障害となるからである。
【0163】
さらに、凸部側面における保護膜の厚さとしては、好ましくは0.5nm~10nmの範囲内、中でも0.5nm~5nmの範囲内である。上記範囲より薄い場合は、高コントラスト膜の保護を十分に行うことが難しく、また上記範囲より厚く形成することは工程的に難しく、また時間がかかるためコスト面で不利となるからである。なお、凸部側面における保護膜の厚さは均一でなくてもよく、通常、凸部上面側が厚く、反対側(凹部底面側)が薄くなる。したがって、上記膜厚の厚さの値は、平均値を示すものである。
【0164】
また、本態様におけるナノインプリント用テンプレートは、マーク用パターンにおける隣接する複数の凹部の底面に設けられた保護膜が互いに分離していてもよい。
【0165】
2.高コントラスト膜
本態様における高コントラスト膜は、マーク用パターンの凹部の底面に設けられたものである。
図13(b)に示されるように、高コントラスト膜は、上記マーク用パターンの凹部42の底面42aのみに設けられたものが好ましい。
その他、上記高コントラスト膜については、上記「A.ナノインプリント用テンプレート 2.高コントラスト膜」の項目に記載された高コントラスト膜と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0166】
3.光透過性基材
本態様における光透過性基材は、基部および基部の主面に設けられたメサ構造を有するものである。光透過性基材については、上記「A.ナノインプリント用テンプレート 3.光透過性基材」の項目に記載された光透過性基材と同様であるため、ここでの説明を省略する。尚、本態様においても、第一実施態様と同様に、メサ構造の主面に保護膜に沿って溝が設けられることが好ましい。また、第一実施態様と同様に、メサ構造としては、単一の段差構造を有し、上記転写パターンおよび上記マーク用パターンが上記単一の段差構造の主面に設けられたものでもよいし、第1段差構造および上記第1段差構造の主面に設けられた第2段差構造を含み、上記転写パターンおよび上記マーク用パターンが上記第2段差構造の主面に設けられたものでもよい。
【0167】
D.2段メサブランクス
本発明では、ナノインプリント用テンプレートを製造するための2段メサブランクスであって、基部および上記基部の主面に設けられたメサ構造を有し、上記メサ構造は、上記基部の主面に設けられた第1段差構造および上記第1段差構造の主面に設けられた第2段差構造を含む光透過性2段メサブランクス形成用部材を有し、少なくとも、上記第1段差構造の主面における上記第2段差構造の周囲の領域に遮光部が設けられ、保護膜が、上記遮光部の主面を覆うように上記遮光部の主面に設けられたことを特徴とする2段メサブランクスを提供する。
【0168】
本発明の2段メサブランクスの一例について、図面を参照しながら説明する。
図15は、本発明の2段メサブランクスの一例を示す概略断面図である。
図15に示されるように、本発明の2段メサブランクス200は、光透過性2段メサブランクス形成用部材201を有し、光透過性2段メサブランクス形成用部材201は、基部210および基部の主面に設けられたメサ構造220を有する。メサ構造220は、基部210の主面に設けられた第1段差構造270および第1段差構造の主面に設けられた第2段差構造280を含む。また、基部210の主面210aとは反対側の面に、平面視して上記第2段差構造を包含する窪み250が設けられている。第1段差構造の主面における上記第2段差構造の周囲の領域に遮光部70が設けられ、保護膜600が、遮光部70の主面を覆うように遮光部の主面に設けられる。
【0169】
このような2段メサブランクスであれば、上記遮光部により光インプリント時に露光光が意図しない領域に照射されることを抑制できる上、上記保護層により上記遮光部の膜減りや消失を抑制できるナノインプリント用テンプレートを製造することができる。
【0170】
1.光透過性2段メサブランクス形成用部材
上記光透過性2段メサブランクス形成用部材は、基部および基部の主面に設けられたメサ構造を有するものである。
(1)メサ構造
本発明における光透過性2段メサブランクス形成用部材は、メサ構造の主面に凹凸構造が未だ形成されていないものである以外は、上記光透過性基材と同じである。即ち、マーク用パターン及び転写パターンが未だ形成されてないものである。メサ構造は、基部の主面に設けられた第1段差構造および第1段差構造の主面に設けられた第2段差構造を含む。第1段差構造および第2段差構造を平面視した形状や、第1段差構造および第2段差構造の高さ、平面視して矩形状の第1段差構造および第2段差構造の縦および横の長さは、上記「A.ナノインプリント用テンプレート 3.光透過性基材 (1)メサ構造」の項目に記載された内容と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0171】
上記メサ構造ならびに上記第1段差構造および上記第2段差構造の形成方法としては、例えば、エッチングマスクを用いたウェットエッチング等が挙げられる。
【0172】
(2)基部
上記基部については、上記「A.ナノインプリント用テンプレート3.光透過性基材 (2)基部」の項目に記載された内容と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0173】
2.遮光部
上記遮光部は、第1段差構造の主面における第2段差構造の周囲の領域に設けられている。遮光部は、光インプリント時に露光光が意図しない領域に照射されることを抑制できれば特に限定されず、遮光性膜のみを含む単層構造を有するものでもよいが、遮光性膜および高コントラスト膜がこの順に積層された多層構造を有するものであってもよい。上記多層構造の遮光性は、上記単層構造と比較して高くなるので、光インプリント時に露光光が意図しない領域に照射されることを効果的に抑制できるからである。
【0174】
遮光性膜の材料、遮光性、厚さ、透過性、形成方法、及び高コントラスト膜については、上記「A.ナノインプリント用テンプレート 4.その他」の項目に記載された内容と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0175】
また、上記遮光部は、
図15に示されるように、第1段差構造の主面における第2段差構造の周囲の領域のみに設けられていても良いが、
図16に示されるように、第1段差構造270の主面から基部210の主面にかけて設けられていても良い。
【0176】
3.保護膜
本発明の2段メサブランクスにおける保護膜は、遮光部の主面を露出させずに覆うように遮光部の主面に設けられる。上記保護膜により、遮光部の膜減りや消失を十分に抑制することができる。
図16に示されるように、遮光部70が、第1段差構造270の主面から基部210の主面にかけて設けられている場合には、保護膜600は少なくとも、第1段差構造270の主面から基部210の主面にかけて設けられる。
【0177】
上記保護膜の材料、膜厚としては、上記「C.ナノインプリント用テンプレート(第二実施態様) 1.保護膜」の項目に記載された内容と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0178】
E.2段メサブランクスの製造方法
本発明では、上述した2段メサブランクスの製造方法であって、基部および上記基部の主面に設けられたメサ構造を有し、上記メサ構造は、上記基部の主面に設けられた第1段差構造および上記第1段差構造の主面に設けられた第2段差構造を含む光透過性2段メサブランクス形成用部材を準備し、上記光透過性2段メサブランクス形成用部材の上記第1段差構造および上記第2段差構造が配置された側の主面に遮光部形成用膜を形成し、上記遮光部形成用膜上に保護膜形成用膜を形成し、硬化性樹脂層を第1段差構造の主面上および上記第2段差構造の主面上に形成し、上記硬化性樹脂層に対し、上記第1段差構造の主面に形成された硬化性樹脂層の膜厚が、上記第2段差構造の主面形成された硬化性樹脂層の膜厚より厚膜となるようにインプリント成形し、上記第1段差構造の主面のみに遮光部形成用膜及び保護膜が残存するようにエッチングを行うことにより、上記光透過性2段メサブランクス形成用部材の上記第1段差構造の主面における上記第2段差構造の周囲の領域に、遮光部および保護膜がこの順に設けられた、2段メサブランクスを製造することを特徴とする2段メサブランクスの製造方法を提供する。
【0179】
本発明の2段メサブランクスの製造方法の一例について図面を参照しながら説明する。
図17(a)~
図17(c)は、本発明の2段メサブランクスの製造方法の一例を示す概略工程断面図である。
【0180】
まず、
図17(a)に示されるように、基部210および基部の主面に設けられたメサ構造220を有し、メサ構造220が、基部210の主面210aに設けられた第1段差構造270および第1段差構造270の主面270aに設けられた第2段差構造280を有する光透過性2段メサブランクス形成用部材201を準備する。
【0181】
次に、
図17(b)に示されるように、2段メサブランクス形成用部材201の表面に遮光部形成用膜70を形成する。次に、
図17(c)に示されるように、遮光部形成用膜70上に保護膜形成用膜610を形成する。
【0182】
次に、
図17(d)、(e)に示されるように、硬化性樹脂層17を第1段差構造の主面上において厚膜に、第2段差構造の主面上において薄膜となるように、樹脂層厚規定用テンプレート101を押し当てた状態で硬化させた後、樹脂層厚規定用テンプレート101を離型することによって、インプリント成形する。硬化性樹脂層の材料としては、ナノインプリントリソグラフィで用いられる硬化性樹脂であれば特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂が挙げられる。中でも光硬化性樹脂が好ましく、特に紫外線硬化性樹脂が好ましい。
【0183】
次に、
図17(f)に示されるように、硬化性樹脂層が厚膜で形成された第1段差構造の主面上を残し、保護膜及び遮光部形成用膜をエッチングにより除去する。これにより、光透過性2段メサブランクス形成用部材の上記第1段差構造の主面における上記第2段差構造の周囲の領域に遮光部70が設けられ、保護膜600が、遮光部70の主面を覆うように遮光部70の主面に設けられた2段メサブランクスを製造することができる。
【0184】
また、本発明では、上述の2段メサブランクスの製造方法であって、基部および上記基部の主面に設けられたメサ構造を有し、上記メサ構造は、上記基部の主面に設けられた第1段差構造および上記第1段差構造の主面に設けられた第2段差構造を含む光透過性2段メサブランクス形成用部材を準備し、上記光透過性2段メサブランクス形成用部材の表面に遮光部形成用膜を形成し、上記遮光部形成用膜上に保護膜形成用膜を形成し、上記保護膜形成用膜上にレジスト組成物を塗布してレジスト層を形成し、上記レジスト層をマスクを介して露光、現像することにより、上記第2段差構造の主面上のレジスト層を除去し、露出した上記第2段差構造の主面に形成された遮光部形成用膜及び保護膜形成用膜をエッチングにより除去することで、上記遮光部及び保護膜がこの順で積層された積層物が、上記光透過性2段メサブランクス形成用部材の上記第1段差構造の主面から上記基部の主面にかけて設けられた、2段メサブランクスを製造することを特徴とする、2段メサブランクスの製造方法を提供する。
【0185】
上記本発明の2段メサブランクスの製造方法の他の例について図面を参照しながら説明する。
図18(a)~
図19(c)は、本発明の2段メサブランクスの製造方法の一例を示す概略工程断面図である。
【0186】
まず、
図18(a)に示されるように、基部210および基部の主面に設けられたメサ構造220を有し、メサ構造220が、基部210の主面210aに設けられた第1段差構造270および第1段差構造270の主面270aに設けられた第2段差構造280を有する光透過性2段メサブランクス形成用部材201を準備する。
【0187】
次に、
図18(b)に示されるように、光透過性2段メサブランクス形成用部材の表面に遮光部形成用膜70を形成する。次に、
図18(c)に示されるように、遮光部形成用膜上に保護膜形成用膜610を形成する。
【0188】
次に、
図18(d)に示されるように、保護膜上にレジスト組成物を塗布し、レジスト層18を形成する。次に、
図18(e)、19(a)に示されるように、マスクを介して露光し、現像することで、第2段差構造の主面上のレジストを除去する。次いで、
図19(b)に示されるように、第2段差構造の主面に形成された遮光部形成用膜及び保護膜をエッチングで除去する。次に、
図19(c)に示されるように、最後にレジストを除去することにより、遮光部70及び保護膜600が、光透過性2段メサブランクスの第1段差構造の主面から基部の主面にかけて設けられた2段メサブランクスが製造される。
【0189】
上記2段メサブランクスの製造方法では、
図18(e)に示すレジスト層18に対する露光の際、基部210の主面に対しても露光し、現像することにより、
図15に示すような段メサブランクスを製造することも可能となる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0190】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
図1に示されるナノインプリント用テンプレート10と同様の構成を有するナノインプリント用テンプレートを、
図7(a)~
図9(c)に示される製造方法により製造した。この際、光透過性基材の材料は石英ガラスとし、高コントラスト膜の材料はCrとした。また、酸化タンタル膜はスパッタリング法により成膜し、酸化タンタル膜の厚さは、4nmとした。以下、実施例1における酸化タンタル膜を含め、高コントラスト膜を露出させずに覆うように設けられた膜を保護膜と呼ぶことにする。
【0191】
[実施例2]
保護膜として、実施例1の酸化タンタル膜と同一の厚さを有し、かつ酸窒化クロムを含む酸窒化クロム膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、ナノインプリント用テンプレートを製造した。
【0192】
[実施例3]
保護膜として、実施例1の酸化タンタル膜と同一の厚さを有し、かつSiO2を含む酸化珪素膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、ナノインプリント用テンプレートを製造した。
【0193】
[実施例4]
保護膜として、実施例1の酸化タンタル膜と同一の厚さを有し、かつTaNを含む窒化タンタル膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、ナノインプリント用テンプレートを製造した。
【0194】
[比較例1]
高コントラスト膜の表面に保護膜を形成しないこと以外は、実施例1と同様にして、ナノインプリント用テンプレートを製造した。
【0195】
[評価]
実施例1~4、および比較例1について、成膜性、加工性、コントラスト、酸耐性、アルカリ耐性、および酸素アッシング耐性について、以下のように評価を行った。
【0196】
ア.成膜性
高コントラスト膜の表面に各種の保護膜を成膜する時の成膜のし易さを評価した。評価条件および評価基準は以下の通りである。
(評価条件)
各種の保護膜は、スパッタリング法により成膜した。
(評価基準)
○:成膜が容易である。
×:成膜が困難である。
【0197】
イ.加工性
ナノインプリント用テンプレートの製造時における保護膜の加工のし易さを評価した。評価条件および評価基準は以下の通りである。
(評価条件)
各種の保護膜を、各種の保護膜の加工に適したエッチングガスを使用したドライエッチングにより加工した。
(評価基準)
○:加工が容易である。
×:加工が困難である。
【0198】
ウ.コントラスト
ナノインプリント用テンプレートにおける高コントラスト膜のコントラスト(反射率)を評価した。評価条件および評価基準は以下の通りである。
(評価条件)
インプリント装置において、高コントラスト膜から構成されるアライメントマークを用いてナノインプリント用テンプレートと被転写体との位置合わせを行った。
(評価基準)
○:位置合わせを行うのに十分なコントラストが得られる。
×:位置合わせを行うのに十分なコントラストが得られない。
【0199】
エ.酸耐性
SPM(硫酸と過酸化水素水の混合液)を用いてナノインプリント用テンプレートを洗浄した時の保護膜(比較例1については高コントラスト膜)の耐性を評価した。評価条件および評価基準は以下の通りである。
(評価条件)
ナノインプリント用テンプレートを、H2SO4:H2O2=3:1、100℃のSPMに40分浸漬させる。そして、浸漬前後の保護膜(比較例1については高コントラスト膜)の高さをAFMにて測定し、浸漬前の保護膜の高さに対する浸漬後の保護膜の高さの減少量を保護膜の消失量として求めた。
【0200】
(評価基準)
○:保護膜(比較例1については高コントラスト膜)が全く消失しない。
△:保護膜(比較例1については高コントラスト膜)が消失し、消失量が30%未満である。
×:保護膜(比較例1については高コントラスト膜)が消失し、消失量が30%以上である。
【0201】
オ.アルカリ耐性
SC1(アンモニア過酸化水素水を用いた洗浄処理)によりナノインプリント用テンプレートを洗浄した時の保護膜(比較例1については高コントラスト膜)の耐性を評価した。評価条件および評価基準は以下の通りである。
(評価条件)
・SC1
ナノインプリント用テンプレートを、NH4OH:H2O2:H2O=1:1:5、30℃のアンモニア過酸化水素水に40分浸漬させる。そして、浸漬前後の保護膜(比較例1については高コントラスト膜)の高さをAFMにて測定し、浸漬前の保護膜の高さに対する浸漬後の保護膜の高さの減少量を保護膜の消失量として求めた。
【0202】
(評価基準)
○:保護膜(比較例1については高コントラスト膜)が全く消失しない。
△:保護膜(比較例1については高コントラスト膜)が消失し、消失量が30%以下である。
×:保護膜(比較例1については高コントラスト膜)が消失し、消失量が30%以上である。
【0203】
カ.酸素アッシング耐性
酸素含有ガスを用いたプラズマアッシングで洗浄した時の保護膜(比較例1については高コントラスト膜)の耐性を評価した。評価条件および評価基準は以下の通りである。
(評価条件)
平行平板型のプラズマアッシング装置を用いて、ナノインプリント用テンプレートを酸素ガス雰囲気で10分間アッシングした。そして、アッシング前後の保護膜(比較例1については高コントラスト膜)の高さをAFMにて測定し、アッシング前の保護膜の高さに対するアッシング後の保護膜の高さの減少量を保護膜の消失量として求めた。
(評価基準)
○:保護膜(比較例1については高コントラスト膜)が全く消失しない。
△:保護膜(比較例1については高コントラスト膜)が消失し、消失量が30%未満である。
×:保護膜(比較例1については高コントラスト膜)が消失し、消失量が30%以上である。
【0204】
評価結果を、下記表1に示す。
【0205】
【0206】
上記表1に示されるように、実施例1の酸化タンタル膜は、成膜性、加工性、コントラストとともに、酸耐性、アルカリ耐性、および酸素アッシング耐性が良好となった。このため、高コントラスト膜の膜減りや消失を十分に抑制できる。
【0207】
一方、上記表1に示されるように、実施例2の酸窒化クロム膜は、酸耐性、アルカリ耐性が良好となったが、酸素アッシング耐性が悪かった。実施例3の酸化珪素膜は、酸耐性、アルカリ耐性が良好となったが、加工性が悪かった。具体的には、エッチングにより加工する時に酸化珪素膜および光透過性基材の境界でエッチングを停止させることができずに加工が困難になることがあった。また、実施例3の酸化珪素膜は、酸素アッシング耐性が十分ではなかったものの、酸耐性が良好であり、アルカリ耐性も高コントラストの膜減りを抑制するには十分であった。
【0208】
実施例4の窒化タンタル膜は、酸耐性、アルカリ耐性が良好となったが、成膜性および加工性が悪かった。具体的には、窒化タンタル膜は成膜時に酸素に触れることで酸化し易いので、成膜が困難になることがあった。また、窒化タンタル膜をドライエッチングにより加工する時には酸化して酸化タンタル膜が生じることがある。窒化タンタル膜および酸化タンタル膜はエッチングガスがそれぞれ塩素系ガスおよびフッ素系ガスで異なるため、窒化タンタル膜をドライエッチングにより加工する時には膜の加工が困難になることがあった。
【0209】
なお、上記表1に示される保護膜が設けられていない比較例1の結果から、高コントラスト膜の耐酸性および酸素アッシング耐性が悪いことがわかる。
【符号の説明】
【0210】
10…ナノインプリント用テンプレート
20…光透過性基材
22…メサ構造
40…マーク用パターン
50…高コントラスト膜
60…酸化タンタル膜