(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】トリアリールメタン化合物
(51)【国際特許分類】
C07C 43/23 20060101AFI20231114BHJP
C08G 63/672 20060101ALI20231114BHJP
C08G 64/02 20060101ALI20231114BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
C07C43/23 D CSP
C08G63/672
C08G64/02
G02B1/04
(21)【出願番号】P 2020542810
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2019052506
(87)【国際公開番号】W WO2019154730
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-12-07
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【氏名又は名称】潮 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ロイター,カール
(72)【発明者】
【氏名】アンドルシュコ,ファシィル
(72)【発明者】
【氏名】カントル,マルク
(72)【発明者】
【氏名】シュトルツ,フローリアン
(72)【発明者】
【氏名】白武 宗憲
(72)【発明者】
【氏名】石原 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 晃司
(72)【発明者】
【氏名】池田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宣之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 光輝
(72)【発明者】
【氏名】村田(鈴木) 章子
(72)【発明者】
【氏名】大島 健輔
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-077672(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016615(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/016648(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 43/00
C08G 63/00
C08G 64/00
G02B 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】
(式中、
R
1およびR
2は、互いに独立して、水素およびR
a
基から選択され、またはR
1およびR
2基は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、置換されていないか、または1個のR
a基で置換されている縮合ベンゼン環を形成してもよく、
Yは、2、3または4個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、
Arは、合計5~26個の原子(環員であり、これらの原子のうちの1、2、3または4個は窒素、硫黄および酸素から選択され、これらの原子の残りは炭素原子である)を有する単環式または多環式ヘタリールからなる群から選択され、
単環式または多環式ヘタリールは、置換されていないか、または1個のR
Ar基を有し、
X
1、X
2、X
3、X
4は、CH、C-R
xまたはNであるが、ただし、各環においてX
1、X
2、X
3、X
4のうちの最大2つがNであるものとし、
R
aは、フッ素、シクロプロピル、シクロブチル、CN、R、OR、CH
nR
3-n、NR
2、C(O)R、C(O)NH
2、CH=CH
2、CH=CHR’、CH
2-CH=CH
2、CH
2-CH=CHR’、CH
2-C≡CHおよびCH
2-C≡CR’からなる群から選択され、
R
Arは、フッ素、シクロプロピル、シクロブチル、CN、R、OR、CH
nR
3-n、NR
2、C(O)R、C(O)NH
2、CH=CH
2、CH=CHR’、CH
2-CH=CH
2、CH
2-CH=CHR’、CH
2-C≡CHおよびCH
2-C≡CR’からなる群から選択され、
R
xは、ハロゲン、シクロプロピル、シクロブチル、CN、R、OR、CH
nR
3-n、NR
2、C(O)R、CH=CH
2、CH=CHR’、CH
2-CH=CH
2、CH
2-CH=CHR’、CH
2-C≡CHおよびCH
2-C≡CR’からなる群から選択され、1個より多くが各環上に存在する場合、R
xは同じまたは異なることが可能であり、
Rは、メチル、6~26個の炭素原子を有する単環式または多環式アリール、ならびに合計5~26個の原子(環員であり、ヘタリールの環原子のうちの1、2、3または4個は窒素および酸素から選択され、これらの原子の残りは炭素原子である)を有する単環式または多環式ヘタリールから選択され、単環式または多環式アリールは、置換されていないか、または1、2、3もしくは4個の同じもしくは異なるR”基で置換されており、 R’は、メチル、6~26個の炭素原子を有する単環式または多環式アリール、ならびに合計5~26個の原子(環員であり、ヘタリールの環原子のうちの1、2、3または4個は窒素および酸素から選択され、これらの原子の残りは炭素原子である)を有する単環式または多環式ヘタリールから選択され、単環式または多環式アリールは、置換されていないか、または1、2、3もしくは4個の同じもしくは異なるR”基で置換されており、
R”は、フッ素、シクロプロピル、シクロブチル、フェニル、CN、OCH
3、CH
3、N(CH
3)
2、C(O)CH
3、CH=CH
2、CH=CHCH
3、CH
2-CH=CH
2、CH
2-CH=CH-CH
3、CH
2-C≡CHおよびCH
2-C≡C-CH
3から選択され、
前記Arが、
フリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ナフトフリル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、9H-キサンテニル、2H-クロメニル、4H-クロメニル、2H-ベンゾ[g]クロメニル、4H-ベンゾ[g]クロメニル、3H-ベンゾ[f]クロメニル、1H-ベンゾ[f]クロメニル、フロ[3,2-b]フラニル、フロ[2,3-b]フラニル、フロ[3,4-b]フラニル、2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシニル、オキサントレニル、フロ[3,2-f][1]ベンゾフラニル、フロ[2,3-f][1]ベンゾフラニル、ピロリル、インドリル、イソインドリル、カルバゾリル、インドリジニル、ベンゾ[cd]インドリル、1H-ベンゾ[g]インドリル、3H-ベンゾ[e]インドリル、1H-ベンゾ[f]インドリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、フェナントリジニル、ベンゾ[f]イソキノリニル、ベンゾ[h]イソキノリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ベンゾピラゾリル、ベンズイミダゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニル、1,5-ナフチリジニル、1,8-ナフチリジニル、ジピリジル、ピリド[4,3-b]インドリル、ピリド[3,2-b]インドリル、ピロロ[3,2-b]ピリジニル、フェナジニル、ベンゾ[b][1,5]ナフチリジニル、フェナントロリニル、ベンゾ[b][1,8]ナフチリジン-3-イル、ピリド[2,3-g]キノリニル、ピリド[3,2-g]キノリニル、ベンゾ[g]キノキサリニル、ベンゾ[f]キノキサリニル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、トリアジニル、ピリド[2,3-b][1,8]ナフチリジニル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、ベンズオキサゾリル、フェノキサジニル、フロ[3,2-g]キノリニル、フロ[2,3-g]キノリニルおよびフロ[2,3-g]キノキサリニルからなる群から選択される単環式または多環式ヘタリールであり、 単環式または多環式ヘタリールが、置換されていないか、または1個のR
Ar基で置換されていて、
存在するそれぞれのnは0、1、2または3である。)。
【請求項2】
前記可変基Yが2、3または4個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Arが、ジベンゾ[b,d]フラニル、ジベンゾ[b,d]チエニル、ピロリル、インドリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニルおよびピリミジニルからなる群から選択される単環式または多環式ヘタリールであり、単環式または多環式ヘタリールが置換されていないか、または1個のR
Ar基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
CN、CH=CH
2、フェニルおよびフェノキシから選択される、少なくとも1個のR
Ar、R
x、R
1またはR
2基を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
Arが、式Ar-5、Ar-7、Ar-9、Ar-10、Ar-15~Ar-17及びAr-19の基からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【化2】
(式中、*は結合点を示す。)
【請求項6】
式(I)が、式(Ia)で表される、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【化3】
(式中、qは0または1であり、qが1である場合、R
xはナフチル環の6,6’または7,7’位に位置する。)
【請求項7】
qが0である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
qが1であり、R
xが、Br、CN、フェニル、ナフチル、フェナントリル、ビフェニリル、ジベンゾ[b,d]フラニル、ジベンゾ[b,d]チエニル、ピロリル、インドリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニルおよびピリミジニルからなる群から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
式(I)が、式(Ib)で表される、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【化4】
(式中、qは0または1であり、pは0または1であり、qが1である場合、R
xは、フェナントリル環の6,6’または7,7’位に位置する。)
【請求項10】
pが0であり、qが0である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
式(I)が、式(Ic)、(Id)、(Ie)または(If)のうちの1つで表される、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【化5】
【請求項12】
R
x1、R
x2およびArが表Aの1つの行に定義されている通りである、式(Ia’)の化合物からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【化6】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【請求項13】
以下の式(II)で表される構造単位を含む熱可塑性樹脂。
【化7】
(式中、
#は隣接する構造単位への接続点を表し、
R
1およびR
2は、互いに独立して、水素およびR
a基から選択され、またはR
1およびR
2基は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、置換されていないか、または1個のR
a基で置換されている縮合ベンゼン環を形成してもよく、
Yは、2、3または4個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、
Arは、6~26個の炭素原子を有する単環式または多環式アリール、ならびに合計5~26個の原子(環員であり、これらの原子のうちの1、2、3または4個は窒素、硫黄および酸素から選択され、これらの原子の残りは炭素原子である)を有する単環式または多環式ヘタリールからなる群から選択され、
単環式または多環式アリールおよび単環式または多環式ヘタリールは、置換されていないか、または1、2、3もしくは4個のR
Ar基を有し、
X
1、X
2、X
3、X
4は、CH、C-RxまたはNであるが、ただし、各環においてX
1、X
2、X
3、X
4のうちの最大2つがNであるものとし、
R
aは、フッ素、シクロプロピル、シクロブチル、CN、R、OR、CH
nR
3-n、NR
2、C(O)R、C(O)NH
2、CH=CH
2、CH=CHR’、CH
2-CH=CH
2、CH
2-CH=CHR’、CH
2-C≡CHおよびCH
2-C≡CR’からなる群から選択され、
R
Arは、フッ素、シクロプロピル、シクロブチル、CN、R、OR、CH
nR
3-n、NR
2、C(O)R、C(O)NH
2、CH=CH
2、CH=CHR’、CH
2-CH=CH
2、CH
2-CH=CHR’、CH
2-C≡CHおよびCH
2-C≡CR’からなる群から選択され、1個より多くが各環上に存在する場合、R
Arは同じまたは異なることが可能であり、
R
xは、ハロゲン、シクロプロピル、シクロブチル、CN、R、OR、CH
nR
3-n、NR
2、C(O)R、CH=CH
2、CH=CHR’、CH
2-CH=CH
2、CH
2-CH=CHR’、CH
2-C≡CHおよびCH
2-C≡CR’からなる群から選択され、1個より多くが各環上に存在する場合、R
xは同じまたは異なることが可能であり、 Rは、メチル、6~26個の炭素原子を有する単環式または多環式アリール、ならびに合計5~26個の原子(環員であり、ヘタリールの環原子のうちの1、2、3または4個は窒素および酸素から選択され、これらの原子の残りは炭素原子である)を有する単環式または多環式ヘタリールから選択され、単環式または多環式アリールは、置換されていないか、または1、2、3もしくは4個の同じもしくは異なるR”基で置換されており、 R’は、メチル、6~26個の炭素原子を有する単環式または多環式アリール、ならびに合計5~26個の原子(環員であり、ヘタリールの環原子のうちの1、2、3または4個は窒素および酸素から選択され、これらの原子の残りは炭素原子である)を有する単環式または多環式ヘタリールから選択され、単環式または多環式アリールは、置換されていないか、または1、2、3もしくは4個の同じもしくは異なるR”基で置換されており、
R”は、フッ素、シクロプロピル、シクロブチル、フェニル、CN、OCH
3、CH
3、N(CH
3)
2、C(O)CH
3、CH=CH
2、CH=CHCH
3、CH
2-CH=CH
2、CH
2-CH=CH-CH
3、CH
2-C≡CHおよびCH
2-C≡C-CH
3から選択され、
存在するそれぞれのnは0、1、2または3である。)
【請求項14】
前記構造単位が、以下の式(III-1)~(III-5)で表される構造のうちの1つに連結している、請求項13に記載の熱可塑性樹脂。
【化8】
(式中、#は隣接する構造単位への接続点を表す。)
【請求項15】
コポリカーボネート樹脂、コポリエステルカーボネート樹脂およびコポリエステル樹脂から選択され、式(II)で表される構造単位に加えて、式(V)の構造単位を含む、請求項13または14のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
#-O-R
z-A
3-R
z-O-#- (V)
(式中、
#は、隣接する構造単位への接続点を表し、
A
3は、少なくとも2個のベンゼン環を有する多環式基であり、前記ベンゼン環は、A’で連結されていてもよく、および/または互いに直接縮合されていてもよく、および/または非ベンゼン炭素環で縮合されていてもよく、A
3は、置換されていないか、またはハロゲン、C
1~C
6-アルキル、C
5~C
6-シクロアルキルおよびフェニルからなる群から選択される1、2または3個のR
aa基で置換されており、
A’は、単結合、O、C=O、S、SO
2、CH
2、CH-Ar”、CAr”
2、CH(CH
3)、C(CH
3)
2および式(A”)の基
【化9】
(式中、
Q’は、単結合、O、NH、C=O、CH
2またはCH=CHを表し、
R
10a、R
10bは、互いに独立して、水素、フッ素、CN、R、OR、CH
kR
3-k、NR
2、C(O)RおよびC(O)NH
2からなる群から選択される)からなる群から選択され、
Ar”は、6~26個の炭素原子を有する単環式または多環式アリール、ならびに合計5~26個の原子(環員であり、これらの原子のうちの1、2、3または4個は窒素、硫黄および酸素から選択され、これらの原子の残りは炭素原子である)を有する単環式または多環式ヘタリールからなる群から選択され、Ar”は、置換されていないか、またはハロゲン、フェニルおよびC
1~C
4-アルキルからなる群から選択される1、2もしくは3個のR
ab基で置換されており、
R
zは、単結合、Alk
1、またはO-Alk
2-であり、OはA
3に結合しており、
Alk
1はC
2~C
4-アルカンジイルであり
Alk
2はC
2~C
4-アルカンジイルである。)
【請求項16】
前記式Vの前記構造単位が以下の式V-1~V-8のうちの1つで表される、請求項15に記載の熱可塑性樹脂。
【化10】
【請求項17】
請求項13から16のいずれか一項で定義されている熱可塑性樹脂で作製された光学デバイス。
【請求項18】
前記光学デバイスが光学レンズまたは光学フィルムである、請求項17に記載の光学デバイス。
【請求項19】
請求項13から16のいずれか一項に定義されている熱可塑性樹脂のモノマーとしての、請求項1から12のいずれか一項に定義されている化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有益な光学特性を有し、光学デバイスを生成するために使用することができる、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂の調製にモノマーとして適しているトリアリールメタン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種カメラのいずれかの光学系の光学レンズの材料として、光学ガラスまたは光学用樹脂が頻繁に使用されている。光学ガラスは、耐熱性、透明性、寸法安定性、耐薬品性等において有益であるが、その材料コストは高い。さらに、成形加工性が悪く、よって大量生産が困難である。
【0003】
光学ガラスではなく光学用樹脂で作製された光学レンズ等の光学デバイスは、これらが射出成形により大量生産が可能であるという点で有利である。今日では、光学用樹脂、特に、透明ポリカーボネート樹脂がカメラレンズの製造に頻繁に使用されている。この関連で、より高い屈折率を有する樹脂が極めて望ましい。これは、これらの樹脂が最終生成物の縮小化および軽量化を可能にするからである。一般的に、使用する光学材料の屈折率が高いと、同一の屈折力を有するレンズエレメントを、より曲率の小さい面で実現できるため、この面で発生する収差量を小さくできる。その結果、レンズの枚数を減らしたり、レンズの偏心感度を低減したり、および/またはレンズ厚みを薄くして軽量化することが可能になる。
【0004】
カメラの光学系では、普通、複数枚の凹レンズとおよび凸レンズを組み合わせることで収差補正を行っている。より具体的には、ある色収差を有する凸レンズに、凸レンズと反対の符号の色収差を有する凹レンズを組み合わせることにより、凸レンズの色収差を合成的に打ち消している。このとき、凹レンズは高分散であることが要求される、すなわち、低アッベ数を有さなければならない。
【0005】
欧州特許出願公開第2034337号明細書は、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンから誘導される99~51モル%の繰返し単位およびビスフェノールAから誘導される1~49モル%の繰返し単位を含むコポリカーボネート樹脂について記載している。樹脂は、低アッベ数23~26および屈折率1.62~1.64を有する光学レンズを調製するのに適している。
【0006】
特開平6-25398号公報は、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンから誘導される繰返し単位およびビスフェノールAから誘導される繰返し単位を含むコポリカーボネート樹脂を開示している。この文献の実施例には、屈折率1.616~1.636を達成したことが記載されている。
【0007】
米国特許第9,360,593号明細書は、式(A)のビナフチルモノマーから誘導される繰返し単位を有するポリカーボネート樹脂について記載している。
【0008】
【化1】
(式中、Yは、C
1~C
4-アルカンジイル、特に1,2-エタンジイルである)ポリカーボネート樹脂は、高屈折率、低いアッベ数、高度の透明性、低い複屈折性、および射出成形に適したガラス転移温度という点で有益な光学特性を有すると言われている。
【0009】
10,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-アントロンモノマーを有する式Aのコポリカーボネートのモノマーおよび光学レンズを調製するためのこれらの使用が米国特許出願公開第2016/0319069号明細書に記載されている。このコポリカーボネートは良好な耐水性を有することが報告されている。約1.662~1.667の屈折率が報告されている。しかし、樹脂の熱可塑加工性、例えば、成形加工性等は弱い。
【0010】
今までのところ、高い屈折率および低アッベ数および良好な熱可塑加工性を有するポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂は未だ提供されていなかった。さらに、各種電子機器は、高い耐水性および耐熱性を有するべきである。そのような電子機器の耐水性および耐熱性を評価するために「PCT試験」(プレッシャークッカー試験)が確立されている。この試験では、試料内部への水分の浸透をある特定の期間増加させて、耐水性および耐熱性を評価する。したがって、電子機器に使用可能な光学用樹脂で形成された光学レンズは、高い屈折率および低いアッベ数を有する必要があり、PCT試験後も高い光学特性を維持することも求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
光学用樹脂の分野における進歩にもかかわらず、光学用樹脂を調製するためのモノマーに対する、特に、高屈折率をもたらすモノマーであるポリカーボネート樹脂に対する必要性が依然として継続している。これとは別に、モノマーは、光学用樹脂の他の光学特性を妨げるべきではなく、以下の物性、すなわち低いアッベ数、高度の透明性および低い複屈折性のうちの少なくとも1つを提供すべきである。さらに、モノマーは調製が簡単であるべきである。これらのモノマーから得た樹脂はまた良好な耐水性および耐熱性を有するべきであり、射出成形に適したガラス転移温度を有するべきである。特に、これらは、良好な熱可塑加工性、例えば、成形加工性を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くことに、本明細書に記載されている式(I)の化合物は、高い透明性および高い屈折率の光学用樹脂を調製するのに適していることが判明した。特に、光学用樹脂の調製においてモノマーとして使用した場合、式(I)の化合物は、式(A)のモノマーより高い屈折率をもたらす。
【0013】
したがって、本発明は、式(I)の化合物に関する。
【0014】
【化2】
(式中、R
1
およびR
2は
、互いに独立して、水素
およびR
a
基から選択され、またはR
1およびR
2基は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、置換されていないか、または1個のR
a基で置換されている縮合ベンゼン環
を形成してもよく、
Yは、2、3または4個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、
Arは、6~26個の炭素原子を有する単環式または多環式アリール、ならびに合計5~26個の原子(環員であり、これらの原子のうちの1、2、3または4個は窒素、硫黄および酸素から選択され、これらの原子の残りは炭素原子である)を有する単環式または多環式ヘタリールからなる群から選択され、
単環式または多環式アリールおよび単環式または多環式ヘタリールは、置換されていないか、または1、2、3もしくは4個のR
Ar基を有し、
X
1、X
2、X
3、X
4は、CH、C-R
xまたはNであるが、ただし、各環においてX
1、X
2、X
3、X
4のうちの最大2つがNであるものとし、
R
aは、フッ素、シクロプロピル、シクロブチル、CN、R、OR、CH
nR
3-n、NR
2、C(O)R、C(O)NH
2、CH=CH
2、CH=CHR、CH
2-CH=CH
2、CH
2-CH=CHR’、CH
2-C≡CHおよびCH
2-C≡CR’からなる群から選択され、
R
Arは、フッ素、シクロプロピル、シクロブチル、CN、R、OR、CH
nR
3-n、NR
2、C(O)R、C(O)NH
2、CH=CH
2、CH=CHR’、CH
2-CH=CH
2、CH
2-CH=CHR’、CH
2-C≡CHおよびCH
2-C≡CR’からなる群から選択され、1個より多くが各環上に存在する場合、R
Arは同じまたは異なることが可能であり、
R
xは、ハロゲン、シクロプロピル、シクロブチル、CN、R、OR、CH
nR
3-n、NR
2、C(O)R、CH=CH
2、CH=CHR’、CH
2-CH=CH
2、CH
2-CH=CHR’、CH
2-C≡CHおよびCH
2-C≡CR’からなる群から選択され、1個より多くが各環上に存在する場合、R
xは同じまたは異なることが可能であり、
Rは、メチル、6~26個の炭素原子を有する単環式または多環式アリール、ならびに合計5~26個の原子(環員であり、ヘタリールの環原子のうちの1、2、3または4個は窒素および酸素から選択され、これらの原子の残りは炭素原子である)を有する単環式または多環式ヘタリールから選択され、単環式または多環式アリールは、置換されていないか、または1、2、3もしくは4個の同じもしくは異なるR”基で置換されており、
R’は、メチル、6~26個の炭素原子を有する単環式または多環式アリール、ならびに合計5~26個の原子(環員であり、ヘタリールの環原子のうちの1、2、3または4個は窒素および酸素から選択され、これらの原子の残りは炭素原子である)を有する単環式または多環式ヘタリールから選択され、単環式または多環式アリールは、置換されていないか、または1、2、3もしくは4個の同じもしくは異なるR”基で置換されており、
R”は、フッ素、シクロプロピル、シクロブチル、フェニル、CN、OCH
3、CH
3、N(CH
3)
2、C(O)CH
3、CH=CH
2、CH=CHCH
3、CH
2-CH=CH
2、CH
2-CH=CH-CH
3、CH
2-C≡CHおよびCH
2-C≡C-CH
3から選択され、
存在するそれぞれのnは0、1、2または3である。)
【0015】
上記化合物は、熱可塑性樹脂、特に本明細書で定義された光学用樹脂のための、特にポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂またはポリエステル樹脂のための、特にポリカーボネート樹脂のための調製に特に有用である。
【0016】
光学用樹脂、特にポリカーボネート樹脂の調製のためのモノマーとして使用される場合、式(I)の化合物は、式(A)のモノマーより高い屈折率の樹脂を提供する。さらに、式(I)の化合物は樹脂の高い透明性を提供し、これらは樹脂の他の光学特性および機械的特性を有意に妨げない。特に、これらの樹脂は、光学用樹脂の他の必要条件、例えば、低いアッベ数、高度の透明性および低い複屈折性を満たしている。それとは別に、式(I)のモノマーは簡単に調製し、高収率、高純度で得ることができる。特に、式(I)の化合物は結晶形態で得ることができ、これにより光学用樹脂の調製に必要とされる程度までの効率的な精製が可能になる。特に、式(I)の化合物は、低い濁度をもたらす純度で得ることができ、これは、光学用樹脂の調製における使用に対しては特に重要である。Ar、RおよびR’基のいくつか等の色供与性基を有さない式(I)の化合物はまた、ASTM E313で決定した場合、低い黄色度指数Y.I.をもたらす純度で得ることもでき、これもまた、光学用樹脂の調製における使用に対して重要となり得る。
【0017】
本発明はまた、式(I)の化合物の重合単位を含む熱可塑性樹脂、すなわち以下の式(II)で表される構造単位を含む熱可塑性樹脂に関する。
【0018】
【化3】
(式中、#は、隣接する構造単位との接続点を表し、
R
1、R
2、Ar、X
1、X
2、X
3、X
4およびYは本明細書で定義された通りである。)
【0019】
本発明は、コポリカーボネート樹脂、コポリエステルカーボネート樹脂およびコポリエステル樹脂から選択される熱可塑性樹脂にさらに関し、この熱可塑性樹脂は、式(II)の構造単位に加えて、他の構造単位、特に式(V)の構造単位もまた含む。
#-O-Rz-A3-Rz-O-#- (V)
(式中、#は、隣接する構造単位への接続点を表し、
A3は、少なくとも2個のベンゼン環を有する多環式基であり、前記ベンゼン環は、A’で連結されていてもよく、および/または互いに直接縮合されていてもよく、および/または非ベンゼン炭素環で縮合されていてもよく、A3は、置換されていないか、またはハロゲン、C1~C6-アルキル、C5~C6-シクロアルキルおよびフェニルからなる群から選択される1、2または3個のRaa基で置換されており、
A’は、単結合、O、C=O、S、SO2、CH2、CH-Ar”、CHAr”2、CH(CH3)、C(CH3)2およびA”基
【0020】
【化4】
(式中、Q’は、単結合、O、NH、C=O、CH
2またはCH=CHを表し、
R
10a、R
10bは、互いに独立して、水素、フッ素、CN、R、OR、CH
kR
3-k、NR
2、C(O)RおよびC(O)NH
2からなる群から選択される)からなる群から選択され、
Ar”は、6~26個の炭素原子を有する単環式または多環式アリール、ならびに合計5~26個の原子(環員であり、これらの原子のうちの1、2、3または4個は窒素、硫黄および酸素から選択され、これらの原子の残りは炭素原子である)を有する単環式または多環式ヘタリールからなる群から選択され、Ar”は、置換されていないか、またはハロゲン、フェニルおよびC
1~C
4-アルキルからなる群から選択される1、2もしくは3個のR
ab基で置換されており、
R
zは、単結合、Alk
1またはO-Alk
2-であり、OはA
3に結合しており、
Alk
1はC
2~C
4-アルカンジイルであり、
Alk
2はC
2~C
4-アルカンジイルである。)
【0021】
本発明は、上で定義された熱可塑性樹脂で作製された光学デバイスにさらに関する。
【0022】
本発明は、本明細書で定義された熱可塑性樹脂の生成におけるモノマーとしての、特に、本明細書で定義されたコポリカーボネート樹脂、コポリエステルカーボネート樹脂またはコポリエステル樹脂の生成におけるモノマーとしての、本明細書で定義された式(I)の化合物の使用にさらに関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
式(I)の化合物は、部分Arが結合している炭素原子と、2個の二環式単位との間の結合に沿って、回転が限定されていることにより軸性キラリティーを有している可能性があり、したがって式(I)の化合物は、3種の立体配置異性体のジアステレオマー混合物の形態で、2種のエナンチオマーの混合物として、または1種の純粋なジアステレオマーの形態で、すなわち、2種のエナンチオマーのうちの1種の形態またはメソ形態で存在し得る。本発明は、式(I)の化合物のジアステレオマー混合物、エナンチオマー混合物ならびに純粋ジアステレオマーに関する。
【0024】
本発明に関して、「1、2、3または4個の炭素原子を有するアルキレン基」という用語は、代わりに「C1~C4-アルカンジイル基」とも命名される、1、2、3または4個の炭素原子を有する二価の飽和脂肪族炭化水素基を指す。C1~C4-アルカンジイルの例は、特に直鎖アルカンジイル、例えば、メタンジイル(=CH2),1,2-エタンジイル(=CH2CH2)、1,3-プロパンジイル(=CH2CH2CH2)および1,4-ブタンジイル(=CH2CH2CH2CH2)、また分枝アルカンジイル、例えば、1-メチル-1,2-エタンジイル、1-メチル-1,2-プロパンジイル、2-メチル-1,2-プロパンジイル、2-メチルプロパンジイルおよび1,3-ブタンジイル等である。
【0025】
本発明に関して、「単環式アリール」という用語はフェニルを指す。
【0026】
本発明に関して、「多環式アリール」という用語は、以下を指す
(i)芳香族多環式炭化水素基、すなわち完全に不飽和の多環式炭化水素基であり、炭素原子のそれぞれはコンジュゲートπ電子系の一部である、
(ii)飽和または不飽和の4~10員の単環式または二環式炭化水素環に縮合された1個のフェニル環を有する多環式炭化水素基、
(iii)共有結合で互いに結合されているか、あるいは互いに直接縮合されている、および/または飽和もしくは不飽和の4~10員の単環式もしくは二環式炭化水素環に縮合されている少なくとも2個のフェニル環を有する多環式炭化水素基。
【0027】
普通、多環式アリールは、9~26個、例えば、9、10、12、13、14、16、17、18、19、20、22、24、25または26個の炭素原子、特に10~20個の炭素原子、特に10、12、13、14または16個の炭素原子を有する。
【0028】
この文脈において、単結合を介して互いに結合されている2、3または4個のフェニル環を有する多環式アリールとしては、例えばビフェニリルおよびテルフェニリル(terphenylyl)が挙げられる。直接互いに縮合されている2、3または4個のフェニル環を有する多環式アリールとしては、例えばナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、ピレニルおよびトリフェニレニルが挙げられる。飽和または不飽和の4~10員の単環式または二環式炭化水素環に縮合された2、3または4個のフェニル環を有する多環式アリールとしては、例えば、9H-フルオレニル、ビフェニレニル、テトラフェニレニル、アセナフテニル(1,2-ジヒドロアセナフチレニル)、アセナフチレニル、9,10-ジヒドロアントラセン-1-イル、1,2,3,4-テトラヒドロフェナントレニル、5,6,7,8-テトラヒドロフェナントレニル、シクロペンタ[fg]アセナフチレニル、フェナレニル、フルオランテニル、ベンゾ[k]フルオランテニル、ペリレニル、9,10-ジヒドロ-9,10[1’,2’]-ベンゼノアントラセニル、ジベンゾ[a,e][8]アンヌレニル、9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]イルおよびスピロ[1H-シクロブタ[de]ナフタレン-1,9’-[9H]フルオレン]イルが挙げられる。
【0029】
多環式アリールは、例として、ナフチル、9H-フルオレニル、フェナントリル、アントラセニル、ピレニル、アセナフテニル、アセナフチレニル、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル、5,6,7,8-テトラヒドロ-ナフタレニル、シクロペンタ[fg]アセナフチレニル、2,3-ジヒドロフェナレニル、9,10-ジヒドロアントラセン-1-イル、1,2,3,4-テトラヒドロフェナントレニル、5,6,7,8-テトラヒドロフェナントレニル、フルオランテニル、ベンゾ[k]フルオランテニル、ビフェニレニル、トリフェニレニル、テトラフェニレニル、1,2-ジヒドロアセナフチレニル、ジベンゾ[a,e][8]アンヌレニル、ペリレニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチルエンフェニル、フェナントリルフェニル、アントラセニルフェニル、ピレニルフェニル、9H-フルオレニルフェニル、ジ(ナフチレン)フェニル、ナフチレンビフェニル、トリ(フェニル)フェニル、テトラ(フェニル)フェニル、ペンタフェニル(フェニル)、フェニルナフチル、ビナフチル、フェナントリルナフチル、ピレニルナフチル、フェニルアントラセニル、ビフェニルアントラセニル、ナフタレニルアントラセニル、フェナントリルアントラセニル、ジベンゾ[a,e][8]アンヌレニル、9,10-ジヒドロ-9,10[1’,2’]ベンゾアントラセニル、9,9’-スピロビ-9H-フルオレニルおよびスピロ[1H-シクロブタ[de]ナフタレン-1,9’-[9H]フルオレン]イルが挙げられる。
【0030】
本発明に関して、「単環式ヘタリール」という用語は、環員原子がコンジュゲートπ電子系の一部であるヘテロ芳香族単環式を指し、このヘテロ芳香族単環式は、1、2、3もしくは4個の窒素原子または1個の酸素原子および0、1、2もしくは3個の窒素原子、または1個の硫黄原子および0、1、2もしくは3個の窒素原子を含み、残りの環原子は炭素原子である、5または6個の環原子を有する。例としては、フリル(=フラニル)、ピロリル(=1H-ピロリル)、チエニル(=チオフェニル)、イミダゾリル(=1H-イミダゾリル)、ピラゾリル(=1H-ピラゾリル)、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、ピリジル(=ピリジニル)、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニルおよびトリアジニルが挙げられる。
【0031】
本発明に関して、「多環式ヘタリール」という用語は、上で定義された単環式ヘタリール環およびフェニルおよび上で定義されたヘテロ芳香族単環式から選択される、少なくとも1個の、例えば1、2、3、4または5個のさらなる芳香族環を有するヘテロ芳香族多環式基を指し、多環式ヘタリールの芳香族環は、互いに共有結合で結合されている、および/または互いに直接縮合されている、および/または飽和もしくは不飽和の4~10員の単環式もしくは二環式炭化水素環に縮合されている。「多環式ヘタリール」という用語はまた、環原子として酸素、硫黄および窒素から選択される1または2個のヘテロ原子を有する少なくとも1個の飽和または部分的に不飽和の5または6員の複素環、例えば、2H-ピラン、4H-ピラン、チオピラン、1,4-ジヒドロピリジン、4H-1,4-オキサジン4H-1,4-チアジンまたは1,4-ジオキシン、ならびにフェニル、およびヘテロ芳香族単環式から選択される、少なくとも1個の、例えば1、2、3、4または5個の、さらなる芳香族環を有するヘテロ芳香族多環式基を指し、さらなる芳香族環の少なくとも1個は、飽和または部分的に不飽和の5または6員のヘテロ環式基に直接縮合されており、多環式ヘタリールのさらなる芳香族環の残りは、共有結合により互いに結合されている、または互いに直接縮合されている、および/または飽和もしくは不飽和の4~10員の単環式もしくは二環式炭化水素環に縮合されている。普通、多環式ヘタリールは9~26個の環原子、特に9~20個の環原子を有し、窒素原子および酸素原子から選択される1、2、3または4個の原子を含み、環原子の残りは炭素原子である。
【0032】
多環式ヘタリールの例として、これらに限定されないが、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ジベンゾフラニル(=ジベンゾ[b,d]フラニル)、ジベンゾチエニル(=ジベンゾ[b,d]チエニル)、ナフトフリル、フロ[3,2-b]フラニル、フロ[2,3-b]フラニル、フロ[3,4-b]フラニル、オキサトレニル、インドリル(=1H-インドリル)、イソインドリル(=2H-イソインドリル)、カルバゾリル、インドリジニル、ベンゾピラゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンゾ[cd]インドリル、1H-ベンゾ[g]インドリル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、フェナジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フェノキサジニル、ベンゾ[b][1,5]ナフチリジニル、シンノリニル、1,5-ナフチリジニル、1,8-ナフチリジニル、フェニルピロリル、ナフチルピロリル、ジピリジル、フェニルピリジル、ナフチルピリジル、ピリド[4,3-b]インドリル、ピリド[3,2-b]インドリル、ピリド[3,2-g]キノリニル、ピリド[2,3-b][1,8]ナフチリジニル、ピロロ[3,2-b]ピリジニル、プテリジニル、プリル、9H-キサンテニル、2H-クロメニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フロ[3,2-f][1]ベンゾフラニル、フロ[2,3-f][1]ベンゾフラニル、フロ[3,2-g]キノリニル、フロ[2,3-g]キノリニル、フロ[2,3-g]キノキサリニル、ベンゾ[g]クロメニル、ピロロ[3,2,1-hi]インドリル、ベンゾ[g]キノキサリニル、ベンゾ[f]キノキサリニル、およびベンゾ[h]イソキノリニルが挙げられる。
【0033】
本発明に関して、「光学デバイス」という用語は、可視光に対して透過性があり、特に屈折により光ビームを操作する機器を指す。光学デバイスとして、これらに限定されないが、プリズム、レンズ、光学フィルムおよびこれらの組合せ、特にレンズ、例えば、カメラ用レンズおよびガラス用レンズ、ならびに光学フィルムが挙げられる。
【0034】
式(I)の化合物の可変基(置換基)および式(II)の構造単位の好ましい実施形態について以下に述べられた所見は、これら自体でおよび好ましくは互いに組み合わせて、ならびにその立体異性体と組み合わせて有効である。
【0035】
可変基の好ましい実施形態について以下に述べられた所見はさらに、該当する場合は式(I)の化合物および式(II)の構造単位に関して、ならびに本発明による使用および方法および本発明による組成物に関して、これら自体でおよび好ましくは互いに組み合わせて有効である。
【0036】
式(I)においておよび同様に式(II)において、可変基Y、R1、R2、Ar、X1、X2、X3およびX4は、これら自体でまたは好ましくはいずれかの組合せで、好ましくは以下の意味を有する:
【0037】
式(I)および(II)の可変基Yは、特に、2、3または4個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基、例えば、1,2-エタンジイル(CH2-CH2)、1,3-プロパンジイルまたは1,4-ブタンジイルである。特に、可変基Yは1,2-エタンジイルである。
【0038】
実施形態の第1のグループ(1)によると、R1およびR2基は、互いに独立して水素およびRa基から選択される。好ましくは、R1基およびR2基は両方とも水素である。しかし、R1またはR2のいずれかがRa基であることが好ましいこともある。この文脈において、Ra基は、好ましくはフッ素、シクロプロピル、シクロブチル、CN、OCH3、CH3、N(CH3)2、C(O)CH3、CH=CH2、CH=CHCH3、CH2-CH=CH2、CH2-CH=CH-CH3、CH2-C≡CHおよびCH2-C≡C-CH3からなる群から選択される。特に、Raは、存在する場合、フッ素、CN、OCH3、CH3およびCH=CH2からなる群から、特にフッ素、CH=CH2およびCNからなる群から、特にCH=CH2およびCNから選択される。
【0039】
実施形態の第2のグループ(2)によると、R1およびR2は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、置換されていないか、または1個のRa基で置換されている縮合ベンゼン環を形成し、Raは、本明細書で定義された意味のうちの1つ、特に好ましい意味のうちの1つを有する。実施形態のこの第2のグループでは、R1およびR2は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、置換されていない縮合ベンゼン環を形成することが好ましい。
【0040】
特に、R1基およびR2基は両方とも水素である。
【0041】
Ar基の基本構造、すなわち単環式/多環式アリールまたは単環式/多環式ヘタリール基は、置換されていないか、または1、2もしくは3個、特に1もしくは2個、特に1個のRAr基を有することが好ましい。各RAr基は通常、Ar基の基本構造の任意の位置で炭素原子に結合している。例えば、Arの基本構造がフェニルまたは1-ナフチルである場合、RAr基は、2、3または4位および2、3、4、5、6、7または8位にそれぞれ結合していてもよい。
【0042】
本発明の実施形態の特定のグループ(3)において、Ar基は、合計6~26個の原子、特に合計6~20個の炭素原子を有する単環式および多環式アリールからなる群から選択され、単環式および多環式アリールは、置換されていないか、または1、2、3もしくは4個のRAr基を有し、RArは、本明細書で定義された意味のうちの1つ、特に好ましい意味のうちの1つを有する。
【0043】
実施形態のグループ(3)において、Ar基として適切な単環式または多環式アリール部分は特に、
フェニル、ナフチル、フェナントリル、ビフェニリル、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル、1H-インデニル、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレニル、1,2-ジヒドロアセナフチレニル、アセナフチレニル、9,10-ジヒドロアントラセン-1-イル、1,2,3,4-テトラヒドロフェナントレニル、5,6,7,8-テトラヒドロフェナントレニル、フルオレニル、アントラセニル、ピレニル、ビフェニレニル、トリフェニレニル、テトラフェニレニル、5H-ジベンゾ[a,d][7]アンヌレニル、ペリレニル、9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]イルおよび10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d][7]アンヌレニル、ジベンゾ[a,e][8]アンヌレニルからなる群から選択され、単環式または多環式アリールは、置換されていないか、または1個のRAr基で置換されている。
【0044】
実施形態のグループ(3)において、式(I)および(II)のAr基は、より好ましくは、フェニル、ナフチルからなる群から選択される単環式または多環式アリールであり、具体的には1-または2-ナフチル、フェナントリル、具体的には9-フェナントリル、1,2-ジヒドロアセナフチレニル、具体的には1,2-ジヒドロアセナフチレン-5-イル、アントラセニル、具体的には9-アントラセニル、9H-フルオレニル、具体的には9H-フルオレン-2-イル、ピレニル、具体的には3-ピレニル、およびビフェニリル、具体的には3-または4-ビフェニリルであり、これらは置換されていなくても、または1個のRAr基で置換されていてもよく、RArは、本明細書で定義された意味のうちの1つ、特に好ましい意味のうちの1つを有する。
【0045】
実施形態のグループ(3)において、式(I)および(II)のAr基は、特にフェニル、ナフチル、具体的には1-または2-ナフチル、フェナントリル、具体的には9-フェナントリル、1,2-ジヒドロアセナフチレニル、具体的には1,2-ジヒドロアセナフチレン-5-イル、9H-フルオレニル、具体的には9H-フルオレン-2-イル、ビフェニレニルおよびビフェニリル、具体的には3-または4-ビフェニリルからなる群から選択される単環式または多環式アリールであり、これらは置換されていなくても、または1個のRAr基で置換されていてもよく、RArは、本明細書で定義された意味のうちの1つ、特に好ましい意味のうちの1つを有する。
【0046】
実施形態のグループ(3)において、式(I)および(II)のAr基は、特にフェニル、ナフチル、具体的に1-または2-ナフチル、フェナントリル、具体的には9-フェナントリル、1,2-ジヒドロアセナフチレニル、具体的には1,2-ジヒドロアセナフチレン-5-イル、ビフェニレニルおよびビフェニリル、具体的には3-または4-ビフェニリルからなる群から選択される単環式または多環式アリールであり、これらは置換されていなくても、または1個のRAr基で置換されていてもよく、RArは、本明細書で定義された意味のうちの1つ、特に好ましい意味のうちの1つを有する。
【0047】
本発明の実施形態の別の特定のグループ(4)において、式(I)および(II)のAr基は、合計5~26個の原子(環員であり、これらの原子のうちの1、2、3または4個は窒素、硫黄および酸素から選択され、これらの原子の残りは炭素原子である)を有する単環式または多環式ヘタリールからなる群から選択され、単環式または多環式ヘタリールは、置換されていないか、または1、2、3または4個のRAr基を有し、RArは、本明細書で定義された意味のうちの1つ、特に好ましい意味のうちの1つを有する。
【0048】
このような基の例として、これらに限定されないが:
フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、トリアジニル、ベンゾフリル、ジベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ジベンゾチエニル、ナフトフリル、フロ[3,2-b]フラニル、フロ[2,3-b]フラニル、フロ[3,4-b]フラニル、オキサントレニル、インドリル、イソインドリル、カルバゾリル、インドリジニル、ベンゾピラゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンゾ[cd]インドリル、1H-ベンゾ[g]インドリル、3H-ベンゾ[e]インドリル、1H-ベンゾ[f]インドリル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、フェナジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フェノキサジニル、ベンゾ[b][1,5]ナフチリジニル、ベンゾ[b][1,8]ナフチリジン-3-イル、シンノリニル、1,5-ナフチリジニル、1,8-ナフチリジニル、フェニルピロリル、ナフチルピロリル、ジピリジル、フェニルピリジル、ナフチルピリジル、ピリド[4,3-b]インドリル、ピリド[3,2-b]インドリル、ピリド[2,3-g]キノリニル、ピリド[3,2-g]キノリニル、ピリド[2,3-b][1,8]ナフチリジニル、ピロロ[3,2-b]ピリジニル、プテリジニル、プリル、9H-キサンテニル、2H-クロメニル、4H-クロメニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フロ[3,2-f][1]ベンゾフラニル、フロ[2,3-f][1]ベンゾフラニル、フロ[3,2-g]キノリニル、フロ[2,3-g]キノリニル、フロ[2,3-g]キノキサリニル、2H-ベンゾ[g]クロメニル、4H-ベンゾ[g]クロメニル、3H-ベンゾ[f]クロメニル、1H-ベンゾ[f]クロメニル、ピロロ[3,2,1-hi]インドリル、ベンゾ[g]キノキサリニル、ベンゾ[f]キノキサリニル、およびベンゾ[h]イソキノリニルが挙げられる。
【0049】
実施形態のグループ(4)において、式(I)および(II)のAr基は、好ましくはフリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ナフトフリル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、9H-キサンテニル、2H-クロメニル、4H-クロメニル、2H-ベンゾ[g]クロメニル、4H-ベンゾ[g]クロメニル、3H-ベンゾ[f]クロメニル、1H-ベンゾ[f]クロメニル、フロ[3,2-b]フラニル、フロ[2,3-b]フラニル、フロ[3,4-b]フラニル、2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシニル、オキサントレニル、フロ[3,2-f][1]ベンゾフラニル、フロ[2,3-f][1]ベンゾフラニル、ピロリル、インドリル、イソインドリル、カルバゾリル、インドリジニル、ベンゾ[cd]インドリル、1H-ベンゾ[g]インドリル、3H-ベンゾ[e]インドリル、1H-ベンゾ[f]インドリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、フェナントリジニル、ベンゾ[f]イソキノリニル、ベンゾ[h]イソキノリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ベンゾピラゾリル、ベンズイミダゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニル、1,5-ナフチリジニル、1,8-ナフチリジニル、ジピリジル、ピリド[4,3-b]インドリル、ピリド[3,2-b]インドリル、ピロロ[3,2-b]ピリジニル、フェナジニル、ベンゾ[b][1,5]ナフチリジニル、フェナントロリニル、ベンゾ[b][1,8]ナフチリジン-3-イル、ピリド[2,3-g]キノリニル、ピリド[3,2-g]キノリニル、ベンゾ[g]キノキサリニル、ベンゾ[f]キノキサリニル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、トリアジニル、ピリド[2,3-b][1,8]ナフチリジニル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、ベンズオキサゾリル、フェノキサジニル、フロ[3,2-g]キノリニル、フロ[2,3-g]キノリニルおよびフロ[2,3-g]キノキサリニルからなる群から選択される単環式または多環式ヘタリールであり、単環式または多環式ヘタリールは、置換されていないか、または1個のRAr基で置換されており、RArは、本明細書で定義された意味のうちの1つ、特に好ましい意味のうちの1つを有する。
【0050】
実施形態のグループ(4)において、式(I)および(II)のAr基は、特にジベンゾ[b,d]フラニル、具体的には2-、3または4-ジベンゾ[b,d]フラニル、ジベンゾ[b,d]チエニル、具体的には2-、3-または4-ジベンゾ[b,d]チエニル、ピロリル、具体的には2-または3-ピロリル、インドリル、具体的には3-インドリル、ピリジル、具体的には2-、3-または4-ピリジル、キノリニル、具体的には2-、3-または4-キノリニル、イソキノリニル、具体的には1-または4-イソキノリニル、およびピリミジニル、具体的には5-ピリミジニルからなる群から選択される単環式または多環式ヘタリールであり、これらは置換されていなくても、または1個のRAr基で置換されていてもよく、RArは、本明細書で定義された意味のうちの1つ、特に好ましい意味のうちの1つを有する。
【0051】
Ar基との関連で、RAr基は、存在する場合、好ましくは独立して、フッ素、シクロプロピル、シクロブチル、CN、R、OR、CHnR3-n、NR2、C(O)R、C(O)NH2、CH=CH2、CH=CHR’、CH2-CH=CH2、CH2-CH=CHR’、CH2-C≡CHおよびCH2-C≡CR’からなる群から選択され、可変基RおよびR’は、本明細書で定義された意味、特に好ましい意味を有する。
【0052】
好ましくは、RAr基は、存在する場合、独立して、フッ素、シクロプロピル、シクロブチル、CN、CH3、OCH3、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、9H-フルオレニル、ビフェニリル、ジベンゾ[b,d]フラニル、ピロリル、インドリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、ピリミジニル、フェノキシ、ナフチルオキシ、N(CH3)2、C(O)CH3、CH=CH2、CH=CHCH3、CH2-CH=CH2、CH2-CH=CH-CH3、CH2-C≡CH、CH2-C≡C-CH3からなる群から選択される。この文脈において、R’は、好ましくは、メチル、フェニル、ナフチル、フェナントリル、ビフェニリル、ジベンゾ[b,d]フラニル、ピロリル、インドリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニルおよびピリミジニルからなる群から選択される。
【0053】
より好ましくは、RAr基は、存在する場合、フッ素、シクロプロピル、シクロブチル、CN、CH3、OCH3、フェニル、フェノキシ、ナフチルオキシ、N(CH3)2、C(O)CH3、CH=CH2、CH=CHCH3、CH2-CH=CH2、CH2-CH=CH-CH3、CH2-C≡CHおよびCH2-C≡C-CH3、特にCN、CH3、OCH3、CH=CH2およびフェニル、特にCN、CH=CH2およびフェニルからなる群から選択される。
【0054】
特に、RAr基は、存在する場合、CN、CH3、OCH3、フェニルおよびフェノキシからなる群から、特にCNおよびフェノキシからなる群から選択される。
【0055】
特に、Ar基は、式Ar-1~Ar-18の基からなる群から選択される。
【0056】
【化5】
(式中、*は式(I)の分子の残りへの結合点を示す。)
【0057】
式Ar-1~Ar-19のAr基の特定の例は、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、9-フェナントリル、4-フェニルフェニル(=4-ビフェニリル)、3-フェニルフェニル(=3-ビフェニリル)、4-フェノキシルフェニル、9H-フルオレン-2-イル、1,2-ジヒドロアセナフチレン-5-イル、ジベンゾフラン-2-イル、ジベンゾフラン-3-イル、ジベンゾフラン-1-イル、ジベンゾフラン-4-イル、ジベンゾチエン-2-イル、ジベンゾチエン-3-イル、ジベンゾチエン-1-イル、ジベンゾチエン-4-イル、4-キノリニル、2-キノリニル、3-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニル、8-キノリニル、1-イソキノリニル、4-イソキノリニル、3-イソキノリニル、5-イソキノリニル、6-イソキノリニル、7-イソキノリニル、8-イソキノリニル、1H-インドール-3-イル、1H-ピロール-2-イル、1H-ピロール-3-イル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、5-ピリミジニル、2-シアノフェニル、3-シアノフェニル、4-シアノフェニル、4-シアノ-1-ナフチル、5-シアノ-1-ナフチル、3-シアノ-1-ナフチル、6-シアノ-1-ナフチル、4-シアノ-2-ナフチル、6-シアノ-2-ナフチル、5-シアノ-2-ナフチル、7-シアノ-2-ナフチル、8-シアノ-2-ナフチル、2-シアノ-9-フェナントリル、3-シアノ-9-フェナントリル、4-シアノ-9-フェナントリル、5-シアノ-9-フェナントリル、6-シアノ-9-フェナントリルおよび7-シアノ-9-フェナントリルである。
【0058】
式Ar-1~Ar-19の特に好ましいAr基は、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、9-フェナントリル、4-フェニルフェニル(=4-ビフェニリル)、3-フェニルフェニル(=3-ビフェニリル)、4-フェノキシルフェニル、9H-フルオレン-2-イル、1,2-ジヒドロアセナフチレン-5-イル、ジベンゾフラン-2-イル、ジベンゾフラン-3-イル、ジベンゾフラン-4-イル、ジベンゾ[b,d]チエン-2-イル、ジベンゾ[b,d]チエン-3-イル、ジベンゾ[b,d]チエン-4-イル、4-キノリニル、2-キノリニル、3-キノリニル、1-イソキノリニル、4-イソキノリニル、1H-インドール-3-イル、1H-ピロール-2-イル、1H-ピロール-3-イル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、5-ピリミジニル、2-シアノフェニル、3-シアノフェニル、4-シアノフェニル、4-シアノ-1-ナフチル、5-シアノ-1-ナフチル、4-シアノ-2-ナフチルおよび6-シアノ-2-ナフチルからなる群から選択される。
【0059】
可変基X1、X2、X3、X4のすべてがCHもしくはC-Rxであるか、または各環においてX1、X2、X3およびX4のうちの最大1つがNであり、その他がCHおよびC-Rxから選択される、式(I)の化合物および同様に式(II)の単位が好ましい。
【0060】
本発明の実施形態の特定のグループ(5)において、可変基X1、X2、X3およびX4はCHまたはC-Rxであり、Rx基は、本明細書で定義された意味のうちの1つ、特に好ましい意味のうちの1つを有する。好ましくは、すべての可変基X1、X2、X3またはX4はCHであるか、または可変基X1、X2、X3およびX4のうちの1つがC-Rxであり、3つの残りの可変基はCHである。特に、可変基X1およびX4は両方ともCHであり、X2およびX3のうちの一方はCHであり、他方はCHまたはC-Rxである。
【0061】
本発明の実施形態の別の特定のグループ(6)では、4つの可変基X1、X2、X3またはX4のうちの1つはNであり、3つの残りの可変基はCHまたはC-Rxであり、特にすべて3つはCHであり、Rx基は、本明細書で定義された意味のうちの1つ、特に好ましい意味のうちの1つを有する。
【0062】
当業者であれば、実施形態のグループ(1)のR1およびR2の意味は、実施形態のグループ(3)またはグループ(4)のうちの1つのArの意味、およびまた実施形態のグループ(5)またはグループ(6)のうちの1つのX1、X2、X3またはX4の意味と組み合わせることができることを容易に認識されよう。当業者であればまた、実施形態のグループ(2)のR1およびR2の意味は、実施形態のグループ(3)またはグループ(4)のうちの1つのArの意味、およびまた実施形態のグループ(5)またはグループ(6)のうちの1つのX1、X2、X3またはX4の意味と組み合わせることができることも認識されよう。
【0063】
これとは別におよび別に述べられていない場合、Ra、Rx、R、R’およびR”基は、単独でまたは好ましくは組み合わせて以下の意味を有する。
【0064】
Raは、特に、フッ素、シクロプロピル、シクロブチル、CN、CH3、OCH3、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ビフェニリル、ジベンゾ[b,d]フラニル、ピロリル、インドリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、ピリミジニル、フェノキシ、ナフチルオキシ、N(CH3)2、C(O)CH3、CH=CH2、CH=CHCH3、CH2-CH=CH2、CH2-CH=CH-CH3、CH2-C≡CHおよびCH2-C≡C-CH3からなる群から選択される。より好ましくは、Ra基は、フッ素、シクロプロピル、シクロブチル、CN、CH3、OCH3、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、ピリジル、フェノキシ、ナフチルオキシ、N(CH3)2、C(O)CH3、CH=CH2、CH=CHCH3、CH2-CH=CH2、CH2-CH=CH-CH3、CH2-C≡CHおよびCH2-C≡C-CH3からなる群から選択される。特に、Ra基は、フッ素、シクロプロピル、CN、OCH3、CH=CH2、フェニルおよびフェノキシ、より具体的にはCN、CH=CH2およびフェニルからなる群から選択され、特にCNである。
【0065】
好ましくは、Rx基は、臭素、フッ素、シクロプロピル、シクロブチル、CN、CH3、OCH3、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ビフェニリル、ジベンゾ[b,d]フラニル、ピロリル、インドリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、ピリミジニル、フェノキシ、ナフチルオキシ、N(CH3)2、C(O)CH3、CH=CH2、CH=CHCH3、CH2-CH=CH2、CH2-CH=CH-CH3、CH2-C≡CHおよびCH2-C≡C-CH3からなる群から選択される。より好ましくは、Rx基は、臭素、CN、CH3、OCH3、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ピリジル、フェノキシ、ナフチルオキシ、N(CH3)2、C(O)CH3、CH=CH2、CH2-C≡CHおよびCH2-C≡C-CH3からなる群から選択される。特に、Rx基は、臭素、CN、OCH3、CH=CH2、フェニル、ナフチル、フェナントリルおよびフェノキシ、より具体的には臭素、CN、CH=CH2およびフェニル、特に臭素、CNおよびフェニルからなる群から選択される。
【0066】
好ましくは、RおよびR’基として適切な単環式または多環式アリール部分は、フェニル、ナフチル、フェナントリル、ビフェニリル、ジベンゾ[b,d]フラニル、ピロリル、インドリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニルおよびピリミジニルからなる群から選択される。特に、RまたはR’基は、フェニル、ナフチル、具体的には1-または2-ナフチルおよびフェナントリル、具体的には9-フェナントリルからなる群から選択される。
【0067】
好ましくは、1つまたは複数のR”基は、独立して、フッ素、フェニル、CN、OCH3、CH3、CH=CH2およびCH=CHCH3から、特にフッ素、フェニルおよびCNから選択される。
【0068】
本発明の好ましい実施形態の特定のグループ(7)において、式(I)の化合物および同様に式(II)の構造単位は、CN、CH=CH2、フェニルまたはフェノキシから選択され、特にCNである、少なくとも1個のRAr、Rx、R1またはR2基を有する。
【0069】
当業者であれば、実施形態の特定のグループ(7)は、実施形態のグループ(1)またはグループ(2)のうちの1つのR1およびR2の意味を、実施形態のグループ(3)またはグループ(4)のうちの1つのArの意味、およびまた実施形態のグループ(5)またはグループ(6)のうちの1つのX1、X2、X3またはX4の意味と組み合わせることができることを容易に認識されよう。
【0070】
本発明の実施形態のグループ(7)において、実施形態の特定のサブグループ(7a)は、CNまたはCH=CH2であり、特にCNである、少なくとも1個のRArまたはRx基を有する式(I)の化合物および式(II)の構造単位に関する。
【0071】
本発明の実施形態のまたさらなるグループ(8)において、式(I)の化合物および同様に式(II)の構造単位は、いかなるRAr基もRx基も有さない。
【0072】
当業者であれば、実施形態の特定のグループ(8)は、実施形態のグループ(1)またはグループ(2)のうちの1つのR1およびR2の意味を、実施形態のグループ(3)またはグループ(4)のうちの1つのArの意味、およびまた実施形態のグループ(5)またはグループ(6)のうちの1つのX1、X2、X3またはX4の意味と組み合わせることができることを容易に認識されよう。
【0073】
実施形態のグループ(1)および(5)の特定のサブグループ(1a)において、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物である。
【0074】
【化6】
(式中、Ar基は、本明細書で定義された意味のうちの1つ、特に好ましい意味のうちの1つを有し、変数qは0または1であり、qが1である場合、R
x基はナフチル環の6,6’または7,7’位に位置し、R
xは、本明細書で定義された意味のうちの1つ、特に好ましい意味のうちの1つを有する。)
【0075】
実施形態のグループ(1)および(5)のこのサブグループ(1a)において、式(II)の構造単位は、式(IIa)の構造単位である。
【0076】
【化7】
(式中、#は、隣接する構造単位への接続点を表し、Ar基は、本明細書で定義された意味のうちの1つ、特に好ましい意味のうちの1つを有し、変数qは0または1であり、qが1である場合、R
x基は、ナフチル環の6,6’または7,7’位に位置し、R
xは、本明細書で定義された意味のうちの1つ、特に好ましい意味のうちの1つを有する。)
【0077】
実施形態のグループ(1a)の特定のサブグループ(1a.1)において、式(Ia)および(IIa)の変数qは0である。
【0078】
実施形態の別の特定のサブグループ(1a.2)において、式(Ia)および(IIa)の変数qはそれぞれ1である。このサブグループ(1a.2)において、Rx基は、好ましくは、臭素、CN、フェニル、ナフチル、フェナントリル、ビフェニリル、ジベンゾ[b,d]フラニル、ピロリル、インドリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニルおよびピリミジニルからなる群から選択される。実施形態のこの特定のサブグループ(1a.2)において、Rx基は、臭素、CN、フェニル、ナフチルおよびピリジルから特に選択される。実施形態のこの特定のサブグループ(1a.2)において、Rx基は、特に臭素、CN、フェニルおよびナフチルから、より具体的には臭素、CNおよびフェニルから選択される。
【0079】
本発明の実施形態のグループ(2)および(5)の特定のサブグループ(2a)において、式(I)の化合物は、式(Ib)の化合物である。
【0080】
【化8】
(式中、Ar基は、本明細書で定義された意味のうちの1つ、特に好ましい意味のうちの1つを有し、変数qは0または1であり、変数pは0または1であり、qが1である場合、R
x基はフェナントリル環の6,6’または7,7’位に位置し、R
xおよびR
aは、本明細書で定義された意味、特に好ましいものを有する。)
【0081】
実施形態のグループ(2)および(5)のこのサブグループ(2a)において、式(II)の構造単位は、式(IIb)の構造単位である。
【0082】
【化9】
(式中、#は、隣接する構造単位への接続点を表し、Ar基は、本明細書で定義された意味のうちの1つ、特に好ましい意味のうちの1つを有し、変数qは0または1であり、変数pは0または1であり、qが1である場合,R
x基は、フェナントリル環の6,6’または7,7’位に位置し、R
xおよびR
aは、本明細書で定義された意味、特に好ましいものを有する。)
【0083】
実施形態のサブグループ(2a)の特定のサブグループ(2a.1)において、式(Ib)および(IIb)の変数qおよびpはそれぞれ両方とも0である。
【0084】
実施形態のサブグループ(2a)の別の特定のサブグループ(2a.2)において、式(Ib)および(IIb)の変数qはそれぞれ1であり、式(Ib)および(IIb)の変数pは0である。
【0085】
実施形態のサブグループ(2a)のさらなる特定のサブグループ(2a.3)において、式(Ib)および(IIb)の変数qはそれぞれ0であり、式(Ib)および(IIb)のpはそれぞれ1である。
【0086】
実施形態のサブグループ(2a)のまたさらなる特定のサブグループ(2a.4)において、式(Ib)および(IIb)の変数qおよびpはそれぞれ両方とも1である。
【0087】
式(Ib)および(IIb)の変数qがそれぞれ1である場合、Rx基は、好ましくは、臭素、CN、フェニル、ナフチル、フェナントリル、ビフェニリル、ジベンゾ[b,d]フラニル、ジベンゾ[b,d]チエニル、ピロリル、インドリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニルおよびピリミジニルからなる群から選択される。この文脈において、Rx基は、好ましくは、臭素、CN、フェニル、ナフチルおよびピリジルからなる群から選択される。この文脈において、Rx基は特に、臭素、CN、フェニル、およびナフチルから、より具体的には臭素、CNおよびフェニルからなる群から選択される。
【0088】
式(Ib)および(IIb)の変数pがそれぞれ1である場合、Ra基は、好ましくは、フッ素、CN、CH3、OCH3、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ビフェニリル、ジベンゾ[b,d]フラニル、ジベンゾ[b,d]チエニル、ピロリル、インドリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、ピリミジニル、フェノキシ、ナフチルオキシ、N(CH3)2、C(O)CH3、CH=CH2、CH2-C≡CHおよびCH2-C≡C-CH3からなる群から選択される。この文脈においてRa基は、より好ましくは、フッ素、CN、CH3、OCH3、フェニル、ナフチルおよびピリジルから選択される。この文脈においてRa基は特に、CN、フェニルおよびナフチルから、より具体的にはCNおよびフェニルから選択される。
【0089】
実施形態のグループ(1)および(6)の別の特定のサブグループ(1b)において、式(I)の化合物は、式(Ic)、(Id)、(Ie)または(If)のうちの1つの化合物である。
【0090】
【化10】
(式中、Ar基は、本明細書で定義された意味のうちの1つ、特に好ましい意味のうちの1つを有し、可変基Yは本明細書で定義された通りであり、好ましくは2、3または4個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基、特に1,2-エタンジイルである。)
【0091】
実施形態のグループ(1)および(6)のこのサブグループ(1b)において、式(II)の構造単位は、式(IIc)、(IId)、(IIe)または(IIf)の構造単位である。
【0092】
【化11】
(式中、#は、隣接する構造単位への接続点を表し、Ar基は、本明細書で定義された意味のうちの1つ、特に好ましい意味のうちの1つを有し、可変基Yは本明細書で定義された通りであり、好ましくは2、3または4個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基、特に1,2-エタンジイルである。)
【0093】
実施形態のグループ(1)および(5)の特定のサブグループ(1c)において、式(I)の化合物は、式(Ia’)の化合物である。(式中、Rx1およびRx2は水素であるか、または意味のうちの1つ、特に本明細書で定義されたRxに対して付与された好ましい意味を有し、Arは本明細書で定義された通りであり、特に好ましい意味のうちの1つを有する。)
【0094】
【0095】
特定のサブグループ(1c)の化合物の例は、Ar、Rx1およびRx2の組合せが以下の表Aの1つの行に定義されている通りである、式(Ia’)の化合物である。以下の表Aではまた、波長589nmにおける式(Ia’)のいくつかの化合物の屈折率nDが要約されている。式(Ia’)の化合物の屈折率は、コンピューターソフトウエアACD/ChemSketch 2012(Advanced Chemistry Development、Inc.)を使用して計算した。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
実施形態のグループ(1)および(5)のこのサブグループ(1c)において、式(II)の構造単位は、式(IIa’)の構造単位である。
【0100】
【化13】
(式中、#は、隣接する構造単位への接続点を表し、R
x1およびR
x2は、水素であるか、または意味のうちの1つ、特に本明細書で定義されたR
xに対して付与された好ましい意味を有し、Arは本明細書で定義された通りであり、特に好ましい意味のうちの1つを有する。)。このような構造単位(IIa’)の例は、Ar、R
x1およびR
x2の組合せが表Aの1つの行に定義されている通りである構造単位である。
【0101】
式(I)の化合物ならびにその前駆体は、例えば、式(VI)のフェノール誘導体および式(VII)のアリールアルデヒドから出発して、以下の反応スキーム1に示されているプロセスにより調製することができる(例えば、以下と比較:J. P. Poupelin et al., Eur. J. Med. Chem. 1978, 13(1), 67-71;A. Alizadeh et al., J. Iran. Chem. Soc., 2010, 7(2), 351-358;および J. P. Poupelin et al., Eur. J. Med. Chem. 1978, 13(4), 381-71):
【0102】
【0103】
スキーム1において、可変基R1、R2、Ar、X1、X2、X3およびX4は、本明細書で定義された通りである。
【0104】
スキーム1によるプロセスの工程i)において、フェノール誘導体(VI)およびアリールアルデヒド(VII)は、酸触媒の存在下で縮合反応を受けて、式(VIII)のジオールを生成する。工程i)の反応を触媒するための適切な酸は、一般的に強酸、例えば、硫酸、メタンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸、特にメタンスルホン酸である。反応は通常、極性有機溶媒、例えば、C2~C6-アルカノール、例えば、イソプロパノール、およびハロゲン化C1~C4-アルカン、例えば、ジクロロメタン中で、普通0~60℃の範囲、特に10~40℃の範囲の反応温度で行う。
【0105】
スキーム1の工程ii)において、式(VIII)のジオールを式(IX)
【0106】
【化15】
(式中、Yは上で定義された通りである)の環状カーボネート,特に1,2-エタンジイルと反応させて、式(I)の化合物を生成する。したがって、式(IX)の化合物の適切な例は炭酸エチレンである。式(IX)の化合物は普通所望の化学量論を超えて適用される、すなわち、化合物(IX)のジオール(VIII)に対するモル比は2:1を超え、特に2.2:1~5:1の範囲である。スキーム1の工程ii)による反応は普通、塩基、特にオキソ塩基、特にアルカリ性カーボネート、例えば、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムの存在下で実施される。塩基は普通、触媒量、例えば、ジオール(VIII)1モル当たり0.1~0.5モルの量で使用される。頻繁に、式(VIII)のジオールの式(IX)の化合物との反応は、非プロトン性有機溶媒、特に芳香族炭化水素溶媒、例えば、トルエンまたはキシレンおよびこれらの混合物中で行う。スキーム1の工程ii)による反応は普通、50~150℃の範囲の温度で行う。
【0107】
式(I)の化合物の可変基X1、X2、X3およびX4が臭素である置換基Rxを含む場合、さらなる工程iii)をスキーム1の反応順序に加えて、臭素原子を、上で定義された通りであり、アルキル、アルケニルまたは(het)アリール基を介して分子の残りに結合している置換基Rxで置き換えることができる。このような置換基Rxの例はCH3、CH=CH2、フェニル、ナフチルまたはピリジルである。工程iii)において、式(I)の化合物を、式(X)のホウ素化合物、
Rx-B(OH)2(X)
(式中、Rxは上で定義された通りであるが、ただし、それは、アルキル、アルケニルもしくは(het)アリール基を介して分子の残りに結合しているものとする)と反応させるか、または、代わりに、(X)のエステルもしくは無水物、特に(X)のC1~C4-アルキルエステルと、遷移金属触媒の存在下、特にパラジウム触媒の存在下で反応させる。頻繁に、工程iii)は、いわゆる「Suzuki反応」または「Suzukiカップリング」の条件下で行う(例えば、A. Suzuki et al., Chem. Rev. 1995, 95, 2457-2483;N. Zhe et al., J. Med. Chem. 2005, 48 (5), 1569-1609;Young et al., J. Med. Chem. 2004, 47 (6), 1547-1552;C. Slee et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 2001, 9, 3243-3253;T. Zhang et al., Tetrahedron Lett., 52 (2011), 311-313, S. Bourrain et al., Synlett. 5 (2004), 795-798;B. Li et al., Europ. J. Org. Chem. 2011 3932-3937を参照されたい)。適切な遷移金属触媒は、特に、少なくとも1個のパラジウム原子および少なくとも1個の三置換ホスフィン配位子を有するパラジウム化合物である。パラジウム触媒の例はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリトリルホスフィン)パラジウムおよび[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(PdCl2(dppf))である。頻繁に、パラジウム触媒は、適切なパラジウム前駆体および適切なホスフィン配位子からインサイチュで調製する。適切なパラジウム前駆体は、パラジウム化合物、例えば、トリス-(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3)または酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc)2)である。適切なホスフィン配位子は、特にトリ(置換)ホスフィン、例えばトリアリールホスフィン、例えば、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィンまたは2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフタレン(BINAP)、トリ(シクロ)アルキルホスフィン、例えば、トリス-n-ブチルホスフィン、トリス(tert-ブチル)ホスフィンまたはトリス(シクロヘキシルホスフィン)、またはジシクロヘキシル-(2’,4’,6’-トリ-イソ-プロピル-ビフェニル-2-イル)-ホスファン(X-Phos)である。普通、反応は、塩基、特にオキソ塩基、例えば、アルカリ性アルコキシド、土類アルカリアルコキシド、アルカリ性水酸化物、土類アルカリ性水酸化物、アルカリ性リン酸塩、土類アルカリ性リン酸塩、アルカリ性炭酸塩または土類アルカリ性炭酸塩、例えばナトリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、水酸化リチウム、水酸化バリウム、リン酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、または炭酸セシウムの存在下で行われる。頻繁に、工程iii)による反応は、有機溶媒または水とそれらの混合物中で行われる。反応が有機溶媒と水の混合物中で行われる場合、反応混合物は単相性または二相性であってよい。適切な有機溶媒としては、これらに限定されないが、芳香族炭化水素、例えば、トルエンまたはキシレン、非環状および環状エーテル、例えば、メチルtert-ブチルエーテル、エチルtert-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサンまたはテトラヒドロフラン、ケトン、例えば、2-ブタノン、および1~4個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、例えば、メタノール、エタノールまたはイソプロパノール、ならびにこれらの混合物が挙げられる。工程iii)による反応は普通、50~150℃の範囲の温度で行われる。
【0108】
工程iii)による変換は、工程ii)の後よりも、代わりにスキーム1で示されている反応順序の工程i)の後および工程ii)の前に行うことができ、すなわち、工程i)、工程ii)、工程iii)の順序の代わりに、代替順序工程i)、工程iii)、工程ii)に従う。臭素を含有するナフトールタイプの式(VI)の化合物から開始することも可能であり、この化合物を、工程iii)による変換の対象とし、次いで上記に概説されているように工程i)およびii)を実施する。
【0109】
代替順序工程i)、工程iii)、工程ii)で行う場合、工程i)、ii)およびiii)の個々の反応に対する反応条件は、工程i)、工程ii)、工程iii)の順序に対して上に記載されているものと同一またはほとんど同一である。
【0110】
個々の工程i)~iii)で得た反応混合物は、従来の方式で、例えば、水を混合する、相を分離するおよび、適切な場合には、洗浄、クロマトグラフィーまたは結晶化により粗生成物を精製することによりワークアップを行う。中間体は、場合によっては、無色または薄茶色の、粘性の油の形態を形成し、これを、揮発物を遊離させるか、または減圧下でおよび適度に高温で精製する。中間体を固体として得た場合、精製は、再結晶化または洗浄の手順、例えば、スラリー洗浄により達成することができる。
【0111】
式(VI)、(VII)、(IX)および(X)の化合物は市販のものであるか、またはその分野で公知の方法により調製することができる。
【0112】
上に述べられているように、本発明の化合物は、高い純度で得ることができ、これは、揮発物を除いて、式(I)の化合物とは異なる著しい量の有機不純物を含有しない生成物が得られることを意味する。普通、式(I)の化合物の純度は、非揮発性有機物質に基づき、少なくとも95%、特に少なくとも98%、特に少なくとも99%、すなわち、生成物は、式(I)の化合物とは異なる非揮発性不純物を、最大でも5%、特に最大でも2%、特に最大でも1%含有する。
【0113】
「揮発物」という用語は、標準圧力(105Pa)で200℃未満の沸点を有する有機化合物を指す。結果的に、非揮発性有機物質は、標準圧力で200℃を超える沸点を有する化合物を意味すると考えられている。
【0114】
式(I)、(Ia)、(Ia’)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)および(If)の化合物、ならびに同様にこれらの溶媒和物は多くの場合結晶形態で得ることができることが本発明の特定のメリットである。結晶形態の式(I)の化合物は、純粋な形態で、または、水もしくは有機溶媒との溶媒和物の形態で存在し得る。したがって、本発明の特定の態様は、結晶形態で本質的に存在する式(I)の化合物に関する。特に、本発明は、式(I)の化合物が溶媒無しで存在する結晶形態および結晶が組み込まれた溶媒を含有する式(I)の化合物の結晶性溶媒和物に関する。
【0115】
式(I)、(Ia)、(Ia’)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)および(If)の化合物、ならびに同様にこれらの溶媒和物は、多くの場合従来の有機溶媒から簡単に結晶化することができることが本発明の特定のメリットである。これは、式(I)の化合物の効率的精製を可能にする。式(I)の化合物またはこれらの溶媒和物を結晶化するために適切な有機溶媒としては、これらに限定されないが、芳香族炭化水素、例えば、トルエンまたはキシレン、脂肪族ケトン、特に3~6個の炭素原子を有するケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトンまたはジエチルケトン、脂肪族および脂環式エーテル、例えば、ジエチルエステル、ジプロピルエーテル、メチルイソブチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、エチルtert-ブチルエーテル、ジオキサンまたはテトラヒドロフラン、および1~4個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、例えば、メタノール、エタノールまたはイソプロパノール、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0116】
代わりに、式(I)、(Ia)、(Ia’)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)および(If)の化合物、ならびに同様にこれらの溶媒和物は、式(I)の化合物の未処理生成物を精製するための他の単純なおよび効率的方法、例えば、特に式(I)の化合物を調製するための変換後に直接得た未処理の固体を、スラリー洗浄を利用することにより、精製された形態で得ることができる。スラリー洗浄は通常、周辺温度または普通、約30~90℃、特に40~80℃の高温で行う。ここで適切な有機溶媒は、原則として、式(I)の化合物を結晶化するのに適した、上記に列挙されたものと同一のもの、例えば、特に記述された芳香族炭化水素、脂肪族ケトンおよび脂肪族エーテル、例えばトルエン、メチルエチルケトンおよびメチルtert-ブチルエーテルである。
【0117】
したがって、熱可塑性ポリマー、特に本明細書で定義されたポリカーボネートの調製にそれぞれ,使用されている、式(I)、(Ia)、(Ia’)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)および(If)の化合物は、簡単に調製でき、高収率および高純度で得ることができる。特に、式(I)、(Ia)、(Ia’)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)および(If)の化合物は、それぞれ、光学用樹脂の調製に必要とされる程度までの効率的精製を可能にする結晶形態で得ることができる。特に、これらの化合物は、高い屈折率インデックスおよびまた低い濁度をもたらす純度で得ることができ、これは、光学デバイスの作製に用いられる光学用樹脂の調製に使用するのに特に重要である。結論として、式(I)、(Ia)、(Ia’)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)および(If)の化合物はそれぞれ光学用樹脂の調製におけるモノマーとして特に有用である。
【0118】
当業者であれば、使用されている式(I)のモノマーは、熱可塑性樹脂に含まれる式(II)の構造単位に対応することを容易に認識されよう。同様に,使用されている式(Ia)、(Ia’)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)および(If)のモノマーはそれぞれ、熱可塑性樹脂に含まれる式(IIa)、(IIa’)、(IIb)、(IIc)、(IId)、(IIe)および(IIf)の構造単位にそれぞれ対応する。
【0119】
当業者であればまた、式(II)、(IIa)、(IIa’)、(IIb)、(IIc)、(IId)、(IIe)および(IIf)の構造単位は、熱可塑性樹脂のポリマー鎖内の繰返し単位であることを認識されよう。
【0120】
式(II)、(IIa)、(IIa’)、(IIb)、(IIc)、(IId)、(IIe)および(IIf)の構造単位にそれぞれ加えて、熱可塑性樹脂は、これらとは異なる構造単位を有することもできる。好ましい実施形態では、これらのさらなる構造単位は、式(V)の構造単位をもたらす式(IV)の芳香族モノマーから誘導される。
HO-Rz-A3-Rz-OH (IV)
#-O-Rz-A3-Rz-O-# (V)
(式中、
A3は、少なくとも2個のベンゼン環を有する多環式基であり、前記ベンゼン環は、A’で連結されていてもよく、および/または互いに直接縮合されていてもよく、および/または非ベンゼン炭素環で縮合されていてもよく、A3は、置換されていないか、またはハロゲン、C1~C6-アルキル、C5~C6-シクロアルキルおよびフェニル、特にフェニルおよびメチルからなる群から選択される1、2または3個のRaa基で置換されており、
A’は、単結合、O、C=O、S、SO2、CH2、CH-Ar”、CHAr”2、CH(CH3)、C(CH3)2およびA”基
【0121】
【化16】
(式中、Q’は、単結合、O、NH、C=O、CH
2またはCH=CH、特に単結合またはC=Oを表し、
R
10a、R
10bは、互いに独立して、水素、フッ素、CN、R、OR、CH
kR
3-k、NR
2、C(O)RおよびC(O)NH
2からなる群から選択され、R
10a、R
10bは特に水素である)からなる群から選択され、
Ar”は、6~26個の炭素原子を有する単環式または多環式アリール、および合計5~26個の原子(環員であり、これらの原子のうちの1、2、3または4個は窒素、硫黄および酸素から選択され、これらの原子の残りは炭素原子である)を有する単環式または多環式ヘタリール、特にフェニルまたはナフチルからなる群から選択され、Ar”は、置換されていないか、またはハロゲン、C
1~C
6-アルキル、C
5~C
6-シクロアルキルおよびフェニル、特にフェニルおよびメチルからなる群から選択される、1、2または3個のR
ab基で置換されており、
R
zは、単結合、Alk
1、またはO-Alk
2-であり、OはA
3に結合しており、
Alk
1はC
2~C
4-アルカンジイルであり、
Alk
2はC
2~C
4-アルカンジイル、特に2~4個の炭素原子を有する直鎖アルカンジイル、特にCH
2CH
2であり、
#は隣接する構造単位への接続点を表す。)
【0122】
式(IV)および(V)との関連で、A3は特に2個のベンゼンまたはナフタリン環を有する多環式基であり、このベンゼン環はA’で連結されている。この文脈においてA’は特に、単結合、CH-Ar”、CHAr”2、およびA”基からなる群から選択される。
【0123】
式(IV)および(V)との関連で、Rzは特にO-Alk2-であり、Alk2は特に2~4個の炭素原子を有する直鎖アルカンジイル、特にCH2CH2である。
【0124】
式(IV)のモノマーの中でも、RzおよびRaaが本明細書で定義された通りであり、Rzが特に単結合、CH2およびOCH2CH2から選択される一般式(IV-1)~(IV-8)のモノマーが好ましい。
【0125】
【0126】
式(IV-1)~(IV-8)の化合物の例は、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert.-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)フルオレン、10,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アントラセン-9-オン、10,10-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)アントラセン-9-オン、4,4’-ジヒドロキシ-テトラフェニルメタン、4,4’-ジ-(2-ヒドロキシエトキシ)-テトラフェニルメタン、3,3’-ジフェニル-4,4’-ジヒドロキシ-テトラフェニルメタン、ジ-(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-ジフェニルメタン、2,2’-[1,1’-ビナフタレン-2,2’-ジイルビス(オキシ)]ジエタノール、これは、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチルとも呼ばれる、2,2’-ビス(1-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(3-ヒドロキシプロピルオキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(4-ヒドロキシブトキシ)-1,1’-ビナフチル等である。一般式(IV)または式(IV-1)~(IV-8)のモノマーの中でも、式(IV-1)、(IV-2)、(IV-3)および(IV-8)のモノマーが特に好ましく、特に、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)フルオレンおよび9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレンが好ましい。
【0127】
したがって、熱可塑性樹脂中に含まれ得る式(V)の構造単位の中でも、Rzが本明細書で定義された通りであり、特に単結合、およびOCH2CH2から選択される、一般式(V-1)~(V-8)のモノマーが好ましい。
【0128】
【0129】
熱可塑性樹脂を生成するために使用される式(I)のモノマーは、これらの調製物から生成されるある特定の不純物、例えば-O-Y-OH基の代わりにOH基を有するヒドロキシ化合物を含有し得る。このようなヒドロキシ化合物の総量は、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらにより好ましくは200ppm以下、特に好ましくは100ppm以下である。熱可塑性樹脂を調製するために使用されるモノマー中の不純物の全含有量は、好ましくは1000ppm以下である。
【0130】
レンズおよび光学フィルム等の光学デバイスの調製に適した熱可塑性樹脂は特にポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステルである。レンズおよび光学フィルム等の光学デバイスの調製に好ましい熱可塑性樹脂は特にポリカーボネートである。
【0131】
前記ポリカーボネートは、構造的に、それぞれ式(II)、(IIa)、(IIa’)、(IIb)、(IIc)、(IId)、(IIe)および(IIf)のうちの少なくとも1つの構造単位、任意選択で式(I)のモノマー化合物とは異なるジオールモノマーから誘導される構造単位、例えば、式(V)の構造単位、
#-O-Rz-A3-Rz-O-# (V)
(式中、#、RzおよびA3は本明細書で上記に定義された通りである)
およびカーボネート形成成分から生じる式(III-1)の構造単位:
【0132】
【化19】
(式中、各#は隣接する構造単位への接続点を表し、すなわち式(II)の構造単位の接続点においてOへの、存在する場合、式(V)の構造単位の接続点においてOへの接続点を表す)を有することを特徴とする。
【0133】
前記ポリエステルは、構造的に、それぞれ式(II)、(IIa)、(IIa’)、(IIb)、(IIc)、(IId)、(IIe)および(IIf)のうちの少なくとも1つの構造単位、任意選択で式(I)のモノマー化合物とは異なるジオールモノマーから誘導される構造単位、例えば、式(V)の構造単位、ならびにジカルボン酸から誘導される構造単位、例えば、ベンゼンジカルボン酸の場合は式(III-2)、ナフタレンカルボン酸の場合は式(III-3)、シュウ酸の場合は式(III-4)、マロン酸の場合は式(III-5)、およびビナフチルジカルボン酸の場合は式III-6、例えば、2,2’-ビス(ヒドロキシカルボニルメトキシ)-1、1’ビナフチル:
【0134】
【0135】
式(III-2)~(III-6)において、各可変部#は、隣接する構造単位への接続点を表し、すなわち、式(II)の構造単位の接続点のOへの、存在する場合、式(V)の構造単位の接続点のOへの接続点を表す。式(III-6)において、可変基Avは、単結合、C1~C4-アルキレンまたはC1~C4-アルキレン-O、例えば、CH2Oであってよい。
【0136】
前記ポリエステルカーボネートは、構造的に、それぞれ式(II)、(IIa)、(IIa’)、(IIb)、(IIc)、(IId)、(IIe)および(IIf)のうちの少なくとも1つの構造単位、任意選択で式(I)のモノマー化合物とは異なるジオールモノマーから誘導される構造単位、例えば、式(V)の構造単位、カーボネート形成成分から生じる式(III-1)の構造単位、ならびにジカルボン酸から誘導される構造単位、例えば、ベンゼンジカルボン酸の場合は式(III-2)、ナフタレンカルボン酸の場合は式(III-3)、シュウ酸の場合は式(III-4)およびマロン酸の場合は式(III-5)を有することを特徴とする。
【0137】
実施形態の特定のグループは、式(II)の構造単位と、式(V)の1つまたは複数の構造単位の両方を有する、熱可塑性コポリマー樹脂、特にポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステル、すなわち、式(I)の少なくとも1つのモノマーを、式(IV)の1つまたは複数のモノマーと反応させることにより入手可能な樹脂、特にポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステルに関する。この場合、式(I)のモノマーの、式(IV)のモノマーに対するモル比および同様に式(II)の構造単位の、式(V)の構造単位に対するモル比は、5:95~80:20の範囲、特に10:90~70:30の範囲、特に15:85~60:40の範囲である。
【0138】
本発明の熱可塑性コポリマー樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂は、ランダムコポリマー構造、ブロックコポリマー構造、および交互コポリマー構造のうちのいずれか1種を含んでいてもよい。本発明による熱可塑性樹脂は、構造単位(II)のすべておよび1つまたは複数の異なる構造単位(V)を1個の同一ポリマー分子内に含む必要がない。すなわち、本発明による熱可塑性コポリマー樹脂は、上に記載された構造が複数のポリマー分子のいずれかの中にそれぞれ含まれている限りブレンド樹脂であってよい。例えば、上に記載されている構造単位(II)および構造単位(V)のすべてを含む熱可塑性樹脂は、構造単位(II)および構造単位(V)のすべてを含むコポリマーであってもよく、少なくとも1つの構造単位(II)を含むホモポリマーもしくはコポリマーと、少なくとも1つの構造単位(V)を含むホモポリマーもしくはコポリマーとの混合物であってもよく、または少なくとも1つの構造単位(II)および第1の構造単位(V)を含むコポリマーと、少なくとも1つの構造単位(II)および第1の構造単位(V)とは異なる少なくとも1つの他の構造単位(V)を含むコポリマーとのブレンド樹脂等であってもよい。
【0139】
熱可塑性ポリカーボネートは、ジオール成分およびカーボネート形成成分の重縮合により入手可能である。同様に、熱可塑性ポリエステルおよびポリエステルカーボネートは、ジオール成分およびジカルボン酸、またはエステルを形成するその誘導体、ならびに任意選択でカーボネート形成成分の重縮合により入手可能である。
【0140】
ポリカーボネート樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物は、不純物として、ポリカーボネート樹脂の生成中に生成されるフェノール、または反応せずに残っているカーボネートジエステルもしくは材料モノマーを含有してもよい。熱可塑性樹脂組成物中のフェノールの濃度は、一般的に3000ppm、特に2000ppm、特に1000ppmを超えず、頻繁に0.1~3000ppm、特に0.1~2000ppm、さらにより好ましくは0.1~1000ppm、0.1~800ppm、0.1~500ppmまたは0.1~300ppmの範囲である。熱可塑性樹脂組成物中のカーボネートジエステルの濃度は、一般的に1000ppm、特に500ppm、特に100ppmを超えず、頻繁に0.1~1000ppm、特に0.1~500ppm、特に0.1~100ppmの範囲である。材料モノマー、すなわち式(I)のモノマーおよび任意選択で(V)のモノマーの熱可塑性樹脂組成物中の濃度は、一般的に3000ppm、特に2000ppm、特に1000ppmを超えず、頻繁に0.1~3000ppm、より好ましくは0.1~2000ppm、特に好ましくは1~1000ppmの範囲である。
【0141】
熱可塑性樹脂組成物中のフェノールおよびカーボネートジエステルの濃度は、その使用に適した物性を有する樹脂を得るために調整することができる。フェノール、カーボネートジエステル、および材料モノマーの濃度は、重縮合の条件または機器を変化させることにより適切に調整することができる。代わりに、フェノールおよびカーボネートジエステルの濃度は、重縮合後の押出工程の条件を変化させることにより調整することができる。
【0142】
フェノールまたはカーボネートジエステルの濃度が上に記載された範囲より高い場合、例えば、生成した樹脂成形体の強度が低減するまたは匂いが生じるという問題が生じ得る。対照的に、フェノール、カーボネートジエステル、または材料モノマーの濃度がある特定の可塑性に役立つことができる場合。その結果、それらの濃度が上に記載された範囲よりも低い場合、樹脂が溶融された際の樹脂の可塑性は低減し得るが、これは必ずしも不本意に低減されるものではない。
【0143】
本発明による熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、以下に記載のGPCで決定した場合、好ましくは5000~100000ダルトン、より好ましくは7500~80000ダルトン、さらにより好ましくは10000~70000ダルトンの範囲である。本発明による熱可塑性樹脂の数平均分子量(Mn)は好ましくは2000~20000、より好ましくは2500~15000、さらにより好ましくは3000~14000である。
【0144】
本発明による熱可塑性樹脂の分子量分布(Mw/Mn)の値は、好ましくは1.0~15.0、より好ましくは1.5~12.0、さらにより好ましくは2.0~9.5である。
【0145】
上述のポリカーボネート樹脂は高屈折率(nDまたはnd)を有し、よって光学レンズに適している。本明細書で参照された屈折率の値は厚さ0.1mmを有するフィルムの値であり、JIS-K-7142の方法により、アッベ屈折率メーターを用いて測定することができる。23℃、波長589nmでの、本発明によるポリカーボネート樹脂の屈折率は、樹脂が構造単位(II)を含む場合、好ましくは1.640以上、より好ましくは1.650以上、さらにより好ましくは1.660以上である。例えば、本発明による構造単位(II)および構造単位(V)を含むコポリカーボネート樹脂の屈折率は、好ましくは1.640~1.690、好ましくは1.650~1.690、さらにより好ましくは1.660~1.690である。
【0146】
ポリカーボネート樹脂のアッベ数(ν)は、好ましくは25以下、より好ましくは23以下、さらにより好ましくは21以下である。アッベ数は、波長487nm、589nmおよび656nm、23℃での屈折率に基づき、以下の方程式を用いて計算することができる。
【0147】
ν=(nD-1)/(nF-nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nC:波長656nmでの屈折率
nF:波長486nmでの屈折率
【0148】
本発明による熱可塑性樹脂の一例として、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、ポリカーボネートが射出成形に使用可能であることを考慮に入れて、好ましくは95~190℃、より好ましくは130~180℃、さらにより好ましくは145~170℃である。成形流動度および成形耐熱性に関して、Tgの下限は好ましくは135℃、より好ましくは140℃であり、Tgの上限は好ましくは190℃、より好ましくは180℃である。上記に付与された範囲でのガラス転移温度(Tg)は、使用可能な温度の有意な範囲を提供し、樹脂の溶融温度が高すぎることによって、樹脂が不本意に分解または着色され得るという危険を回避する。さらには、これによって高い表面精度を有する型を調製することが可能になる。
【0149】
光学成形体、例えば、本発明のポリカーボネート樹脂を用いて得られる光学素子は、好ましくは85%以上、より好ましくは87%以上、特に好ましくは88%以上高い全光線透過率を有する。好ましくは85%以上の全光線透過率は、ビスフェノールAタイプのポリカーボネート樹脂等により提供されるものと同じ位良好である。
【0150】
本発明による熱可塑性樹脂は高い耐水性および耐熱性を有する。耐水性および耐熱性は、熱可塑性樹脂を用いて得られる光学素子等の成形体に対して「PCT試験」(プレッシャークッカー試験)を行い、次いでPCT試験後の成形体の全光線透過率を測定することで評価することができる。PCT試験では、第1に、直径50mmおよび厚さ3mmの射出成形体を、120℃、0.2MPa、100%RH、20時間の条件下でHIRAYAMA Corporation製PC305S IIIで20時間保持する。次いで、射出成形体の試料を機器から取り出し、JIS-K-7361-1の方法に従い、Nippon Denshoku Industries Co.,Ltd製のSE2000型分光視差測定装置を用いて全光線透過率を測定する。
【0151】
本発明による熱可塑性樹脂、60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらにより好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上のPCT試験後の全光線透過率を有する。全光線透過率が60%以上である限り、熱可塑性樹脂は、従来の熱可塑性樹脂に対して高い耐水性および耐熱性を有すると言える。
【0152】
本発明による熱可塑性樹脂の色相を示すb値は、好ましくは5以下である。b値が小さいほど、黄色味が弱いことを示し、色相が良好となる。
【0153】
本発明によると、ポリカーボネートまたはポリエステルの調製に使用されるジオール成分は、式(I)のモノマー化合物とは異なる、例えば、1つまたは複数の式(IV)のモノマーである1つまたは複数のジオールモノマーをさらに含んでいてもよい。
【0154】
式(I)のモノマー化合物とは異なる適切なジオールモノマーは、ポリカーボネートの調製に慣例的に使用されている、例えば、
-脂肪族ジオール、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオールおよびヘキサンジオール;
-脂環式ジオール、例えば、ジオールの例にも含まれているが、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、デカリン-2,6-ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、シクロペンタン-1,3-ジメタノール、スピログリコール、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトール、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-マンニトールおよび1,4:3,6-ジアンヒドロ-L-イジトール、ならびに
-芳香族ジオール、特に式(IV)の芳香族ジオール、例えば、ビス(4-ヒドロフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロ-プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、α,ω-ビス[2-(p-ヒドロキシフェニル)エチル]ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス[3-(o-ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)ヒドロキシフェニル]-1-フェニルエタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル]フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)フルオレン、10,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アントラセン-9-オン、10,10-ビス(4-(2-ヒドロキエトキシ)フェニル)アントラセン-9-オンおよび2,2’-[1,1’-ビナフタレン-2,2’-ジイルビス(オキシ)]ジエタノール、これは、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチルまたは2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン(BNE)とも呼ばれる。
【0155】
好ましくは、ジオール成分は、式(I)のモノマーに加えて、少なくとも1つの式(IV)のモノマーを含む。特に、式(I)および(IV)のモノマーの総量は、ジオール成分の総重量に基づき、少なくとも90重量%、またはジオール成分のジオールモノマーの総モル量に基づき、少なくとも90モル%がジオール成分に寄与する。特に、ジオール成分は、式(I)のモノマーに加えて、式(IV-1)~(IV-8)のモノマーから選択される少なくとも1種のモノマーを含む。より具体的には、ジオール成分は、式(I)のモノマーに加えて、式(IV-1)、(IV-2)、(IV-3)および(IV-8)のモノマーから選択される少なくとも1種のモノマーを含む。特に、ジオール成分は、式(I)のモノマーに加えて、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)フルオレン9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレンおよび9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレンならびにこれらの組合せから選択される少なくとも1種のモノマーを含む。
【0156】
頻繁に、ジオール成分の総重量に基づく式(I)のモノマー化合物の相対量は、少なくとも5重量%、特に少なくとも10重量%、特に少なくとも15重量%、好ましくは5~90重量%の範囲、特に10~80重量%の範囲、特に15~70重量%の範囲であるが、また100重量%まで高くてもよい。
【0157】
頻繁に、ジオール成分の全モルに基づく式(I)のモノマー化合物の相対モル量は、少なくとも5モル%、特に少なくとも10モル%、特に少なくとも15モル%であり、好ましくは5~80モル%の範囲、特に10~70モル%の範囲、特に15~60モル%の範囲であるが、また100モル%まで高くてもよい。
【0158】
結果的に、ジオール成分の全モルに基づく式(IV)のモノマー化合物の相対モル量は通常、95モル%を超えず、特に90モル%を超えず、特に85モル%を超えず、好ましくは20~95モル%の範囲、特に30~90モル%の範囲、特に40~85モル%の範囲であるが、また99.9モル%まで高くてもよい。
【0159】
頻繁に、式(I)のモノマーおよび式(IV)のモノマーの総モル量は、ジオール成分中のジオールモノマーの総モル量に基づき、少なくとも80モル%、特に少なくとも90モル%、特に少なくとも95モル%または100モル%までである。
【0160】
式(I)のモノマーおよび任意選択で式(IV)のモノマーに加えて使用することができるさらなる好ましい芳香族ジヒドロキシ化合物の例としては、これらに限定されないが、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZ等が挙げられる。
【0161】
分子量および溶融粘度を調整するための熱可塑性ポリマー形成モノマーとしてはまた、単官能化合物、ポリカーボネートの場合には単官能アルコール、およびポリエステルの場合には、単官能アルコールまたは単官能カルボン酸を挙げることができる。適切なモノアルコールはブタノール、ヘキサノールおよびオクタノールである。適切なモノカルボン酸としては、例えば、安息香酸、プロピオン酸および酪酸が挙げられる。分子量および溶融粘度を増加させるための熱可塑性ポリマー形成モノマーとしてはまた、多官能性化合物、ポリカーボネートの場合には3つ以上のヒドロキシル基を有する多官能性アルコールおよびポリエステルの場合には3つ以上のヒドロキシル基を有する多官能性アルコール、または3つ以上のカルボキシル基を有する多官能性カルボン酸を挙げることができる。適切な多官能性アルコールは、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリットおよび1,3,5-トリヒドロキシペンタンである。3つ以上のカルボキシル基を有する適切な多官能性カルボン酸は、例えば、トリメリト酸およびピロメリット酸である。これらの化合物の総量は、頻繁に、ジオール成分のモル量に基づき、10モル%を超えない。
【0162】
ポリカーボネートの調製においてカーボネート形成モノマーとして、慣例的に用いられる適切なカーボネート形成モノマーとしては、これらに限定されないが、ホスゲン、ジホスゲンおよびジエステルカーボネート、例えば、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジ-p-トリルカーボネート、フェニル-p-トリルカーボネート、ジ-p-クロロフェニルカーボネートおよびジナフチルカーボネートが挙げられる。これらのうちジフェニルカーボネートが特に好ましい。カーボネート形成モノマーは、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、0.97~1.20モルの比率、およびより好ましくは0.98~1.10モルの比率で頻繁に用いられる。
【0163】
適切なジカルボン酸として、これらに限定されないが
-脂肪族ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸;
-脂環式ジカルボン酸、例えば、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、デカリン-2,6-ジカルボン酸、およびノルボルナンジカルボン酸;ならびに
-芳香族ジカルボン酸、例えば、ベンゼンジカルボン酸、具体的にはフタル酸、イソフタル酸、2-メチルテレフタル酸またはテレフタル酸、およびナフタレンジカルボン酸、具体的にはナフタレン-1,3-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-1,6-ジカルボン酸、ナフタレン-1,7-ジカルボン酸、ナフタレン-2,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、ならびにビナフチルジカルボン酸、例えば、2,2’-ビス(ヒドロキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチルが挙げられる。
【0164】
ジカルボン酸の適切なエステル形成誘導体として、これらに限定されないがジアルキルエステル、ジフェニルエステルおよびジトリルエステルが挙げられる。
【0165】
ポリエステルの場合、エステル形成モノマーは、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、0.97~1.20モルの比率で、より好ましくは0.98~1.10モルの比率で頻繁に用いられる。
【0166】
本発明のポリカーボネートは、例えば、完全な参照がなされている、米国特許第9,360,593号明細書、米国特許出願公開第2016/0319069号明細書および米国特許出願公開第2017/0276837号明細書に記載されているポリカーボネートの周知の調製と同様に、式(I)のモノマーおよび任意選択でさらなるジオールモノマー、例えば、式(IV)のモノマーを含むジオール成分と、カーボネート形成モノマーとを反応させることにより調製することができる。
【0167】
本発明のポリエステルは、例えば、完全な参照がなされている、米国特許出願公開第2017/044311号明細書およびその中に引用された参考文献に記載されているポリエステルの周知の調製と同様に、式(I)のモノマーおよび任意選択でさらなるジオールモノマー、例えば、式(IV)のモノマーを含むジオール成分と、ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体とを反応させることにより調製することができる。
【0168】
本発明のポリエステルカーボネートは、当技術分野で記載されているようなポリエステルカーボネートの周知の調製と同様に、式(I)のモノマーおよび任意選択でさらなるジオールモノマー、例えば、式(IV)のモノマーを含むジオール成分と、カーボネート形成モノマーおよびジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体とを反応させることにより調製することができる。
【0169】
ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリエステルカーボネートは普通、カーボネート形成モノマーまたはポリカルボン酸のエステル形成誘導体が使用される場合、ジオール成分のモノマーを、カーボネート形成モノマーおよび/またはエステル形成モノマー、すなわちジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体と、エステル化触媒、特にエステル交換触媒の存在下で反応させることにより調製する。
【0170】
適切なエステル交換触媒は塩基性化合物であり、具体的には、これらに限定されないがアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、窒素含有化合物等が挙げられる。同様に、適切なエステル交換触媒は酸性化合物であり、具体的には、これらに限定されないが、亜鉛、スズ、チタニウム、ジルコニウム、鉛等の化合物を含めた多価金属のルイス酸化合物が挙げられる。
【0171】
適切なアルカリ金属化合物の例としては、有機酸のアルカリ金属塩、例えば、酢酸、ステアリン酸、安息香酸、またはフェニルリン酸、アルカリ金属フェノレート、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属ホウ化水素、アルカリ金属水素炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属リン酸水素塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属アルコキシド等が挙げられる。それらの具体的な例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、セシウム水酸化物、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、およびフェニルリン酸2ナトリウムが挙げられ、またビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩およびリチウム塩等が挙げられる。
【0172】
アルカリ土類金属化合物の例としては、有機酸のアルカリ土類金属塩、例えば、酢酸、ステアリン酸、安息香酸、またはフェニルリン酸、アルカリ土類金属フェノレート、アルカリ土類金属土類酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属ホウ化水素、アルカリ土類金属水素炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ土類金属アルコキシド等が挙げられる。それらの具体的な例としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0173】
窒素含有化合物の例としては、4級アンモニウムヒドロキシド、それらの塩、アミン類等が挙げられる。それらの具体的な例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル基、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド;トリフェニルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類;ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類;プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類;アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基または塩基性塩等が挙げられる。
【0174】
エステル交換触媒の好ましい例としては、亜鉛、スズ、チタニウム、ジルコニウム、鉛等、特に塩化物、アルコキシド、アルカン酸塩、安息香酸塩、アセチルアセトネート等の多価金属類の塩が挙げられる。これらは、独立してまたは2種以上の組合せで使用することができる。具体的には、このようなエステル交換触媒としては、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズラウレート、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、オキシ酢酸ジルコニウム、テトラブトキシドジルコニウム、酢酸鉛(II),酢酸鉛(IV)等が挙げられる。
【0175】
エステル交換触媒は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、10-9~10-3モルの比率で、好ましくは10-7~10-4モルの比率で頻繁に用いられる。
【0176】
頻繁に、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリエステルカーボネートは、溶融重縮合方法により調製する。溶融重縮合において、モノマーは、追加の不活性溶媒の非存在下で反応させる。反応が行われている間、エステル交換反応において形成されたあらゆる副生成物は大気圧または減圧で反応混合物を加熱することにより除去される。
【0177】
溶融重縮合反応は、好ましくはモノマーおよび触媒を反応装置に装入し、反応混合物を、モノマー間の反応および副生成物の形成が起きる条件下におくことを含む。副生成物が少なくともしばらくの間重縮合反応に滞留すれば利点がある。しかし、重縮合反応を生成物側へと推進させるために、重縮合反応中または好ましくは反応の終わりに形成された副生成物の少なくとも一部分を除去することが有益である。反応混合物中の副生成物を許容するためには、反応装置を閉じる、または圧力を増減させることにより圧力を制御することができる。この工程に対する反応時間は、20分以上240分以下であり、好ましくは40分以上180分以下、特に好ましくは60分間以上150分以下である。この工程では、副生成物を生成後すぐに留去すると、最終的に得られる熱可塑性樹脂は高分子量樹脂分子の含有量が低い。対照的に、副生成物を反応装置中に一定時間滞留させると、最終的に得られる熱可塑性樹脂は高い分子量の樹脂分子の含有量が多い。
【0178】
溶融重縮合反応は、連続系で行ってもよくまたバッチ系で行ってもよい。反応を行うに際して用いられる反応装置は、錨型攪拌翼、Maxblend(登録商標)攪拌翼、ヘリカルリボン型攪拌ブレード等を装備した縦型であっても、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型であっても、スクリューを装備した押出機型であってもよい。重合物の粘度を勘案してこれらの反応装置を組み合わせた反応装置が好適に使用可能である。
【0179】
ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂の製造方法では、重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去または失活させてもよい。触媒失活させる好ましい方法は酸性物質の添加である。酸性物質の具体的な例としては、安息香酸ブチル等のエステル類、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、p-トルエンスルホン酸ブチル、p-トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類、亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn-プロピル、亜リン酸ジn-ブチル、亜リン酸ジn-ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類、ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類、フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類、トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類、ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p-トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物、ジメチルスルホン酸等のアルキルスルホン酸、塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が挙げられる。これらの失活剤は頻繁に、触媒に対して0.01~50倍モル、好ましくは0.3~20倍モル使用される。触媒失活後、蒸留により低沸点化合物をポリマーから除去する工程を設けてもよい。蒸留は好ましくは、減圧、例えば、0.1~1mmHgの圧力、200~350℃の温度で行われる。この工程には、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新能の優れた攪拌翼を備えた横型装置、または薄膜蒸発器が好適に用いられる。
【0180】
ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂は、異物含有量が極力少ないことが望まれる。したがって、溶融生成物は好ましくは濾過して、溶融物から固体を除去する。フィルターのメッシュは5μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下である。生成するポリマーのポリマーフィルターによる濾過が好適に実施される。ポリマーフィルターのメッシュは、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下である。樹脂ペレットを採取する工程は当然低ダスト環境でなければならない。ダスト環境は、クラス6以下であることが好ましく、より好ましくはクラス5以下である。
【0181】
熱可塑性樹脂は、光学素子を生成するための任意の従来の成形手順で成形することができる。適切な成形手順として、これらに限定されないが、射出成形、圧縮成形、注型、ロール加工、押出成形、延長等が挙げられる。
【0182】
本発明の熱可塑性樹脂をそのまま成型することは可能であるが、本発明の少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含有し、少なくとも1種の添加物および/またはさらなる樹脂をさらに含有する樹脂組成物を成型することも可能である。適切な添加剤として、酸化防止剤、加工安定剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、離型剤、紫外線吸収剤、可塑剤、相溶化剤等が挙げられる。適切なさらなる樹脂は、例えば、式(I)の繰返し単位を含有しない別のポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂等である。
【0183】
酸化防止剤の例としては、これらに限定されないが、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマイド、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスホネート-ジエチルエステル、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、および3,9-ビス{1,1-ジメチル-2-[β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。熱可塑性樹脂中の酸化防止剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.001~0.3重量部であることが好ましい。
【0184】
加工安定剤の例としては、これらに限定されないがリン系加工熱安定剤、硫黄系加工熱安定剤等が挙げられる。リン系加工熱安定剤の例としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸、これらのエステル等が挙げられる。具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等が挙げられる。熱可塑性樹脂組成物中のリン系加工熱安定剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.001~0.2重量部が好ましい。
【0185】
硫黄系加工熱安定剤の例としては、これらに限定されないがペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ステアリルチオプロピオネート)、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。熱可塑性樹脂組成物中の硫黄系加工熱安定剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.001~0.2重量部が好ましい。
【0186】
好ましい離型剤は、少なくとも90%重量のアルコールと脂肪酸とのエステルを含有する。具体的には、アルコールと脂肪酸とのエステルとして、一価アルコールと脂肪酸とのエステル、および多価アルコールと脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが挙げられる。アルコールと脂肪酸との上に記載されたエステルとしては、炭素数1~20の一価アルコールと炭素数10~30との飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。多価アルコールと脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、炭素数2~25の多価アルコールと炭素数10~30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。具体的には、一価アルコールおよび脂肪酸のエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等が挙げられる。具体的には、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、カプリン酸モノグリセリド、ラウリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ-ト、ソルビタンモノステアレート、2-エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスリトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。樹脂組成物中の離型剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.005~2.0重量部が好ましく、0.01~0.6重量部がより好ましく、0.02~0.5重量部がさらにより好ましい。
【0187】
好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤、およびシアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群から選択される。すなわち、以下に挙げる紫外線吸収剤は、いずれかを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0188】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール)]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0189】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸水和物、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-ナトリウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0190】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-([(オクチル)オキシ]-フェノール等が挙げられる。
【0191】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、2,2’-ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-m-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(4,4’ジフェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2,6-ナフタレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(1,5-ナフタレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2-メチル-p-フェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2-ニトロ-p-フェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2-クロロ-p-フェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)等が挙げられる。
【0192】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼン等が挙げられる。
【0193】
樹脂組成物中の紫外線吸収剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01~3.0重量部であり、より好ましくは0.02~1.0重量部であり、さらにより好ましくは0.05~0.8重量部である。含有された紫外線吸収剤は、かかる含有量の範囲であれば、用途に応じ、熱可塑性樹脂に十分な耐候性を付与することが可能である。
【0194】
上述されている通り、それぞれ、本明細書に記載の式(II)、(IIa)、(IIa’)、(IIb)、(IIc)、(IId)、(IIe)および(IIf)の繰返し単位を含む、熱可塑性ポリマー樹脂、特にポリカーボネート樹脂は、高い透明性および高屈折率を熱可塑性樹脂に提供し、したがって高い透明性および高屈折率が必要とされる光学デバイスを調製するのに適している。より正確には,式(II)、(IIa)、(IIa’)、(IIb)、(IIc)、(IId)、(IIe)および(IIf)の構造単位をそれぞれ有する熱可塑性ポリカーボネートは、好ましくは少なくとも1.660、より好ましくは少なくとも1.680、特に少なくとも1.690である高屈折率を有することを特徴とする。
【0195】
熱可塑性樹脂、特にポリカーボネート樹脂の屈折率に対する、式(I)、(Ia)、(Ia’)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)および(If)のモノマーの寄与率は、それぞれ、前記モノマーの屈折率および熱可塑性樹脂中の前記モノマーの相対量に依存することになる。一般的に、熱可塑性樹脂中に含有されるモノマーの屈折率が高いほど、生成される熱可塑性樹脂の屈折率はより高い。それとは別に、式(II)の構造単位を含む熱可塑性樹脂の屈折率は、モノマーの屈折率から、または最初から、例えば、コンピューターソフトウエアACD/ChemSketch 2012(Advanced Chemistry Development、Inc.)を使用することによって、熱可塑性樹脂の調製に使用されるモノマーの屈折率から計算することができる。
【0196】
以下の表Bに、式(IIa’)および(III-1)の構造単位からなるいくつかのホモポリカーボネートに対して計算した屈折率を示す:
【0197】
【0198】
熱可塑性コポリマー樹脂の場合、熱可塑性樹脂、特にポリカーボネート樹脂の屈折率は、コポリマー樹脂を形成するそれぞれのモノマーのホモポリマー屈折率から、以下のいわゆる「Fox方程式」により計算することができる:
1/nD=x1/nD1+x2/nD2+...xn/nDn、
(式中、nDはコポリマーの屈折率であり、x1、x2、....
xnはコポリマー中のモノマー1、2、....nの質量分率であり、nD1、nD2、....nDnはモノマー1、2、....nのうちの1つのみから一度に合成されるホモポリマーの屈折率である。)ポリカーボネートの場合、x1、x2、....xnは、OHモノマー総量に対する、OHモノマー1、2、....nの質量分率である。ホモポリマーの屈折率が高いほど、コポリマーの屈折率がより高いことが明らかである。
【0199】
熱可塑性樹脂の屈折率は、直接的または間接的に決定することができる。直接決定するためには、熱可塑性樹脂の屈折率nDは、アッベ屈折計を用い、熱可塑性樹脂の0.1mmフィルムを適用して、プロトコルJIS-K-7142に従い波長589nmで測定する。式(I)の化合物のホモポリカーボネートの屈折率の場合、屈折率はまた間接的に決定することもできる。このためには、式(I)のそれぞれのモノマーと、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンおよびジフェニルカーボネートとのコポリカーボネートを、米国特許第9,360,593号の第48欄の実施例1のプロトコルにより調製し、コポリカーボネートの屈折率nDを、アッベ屈折計を用い、コポリカーボネートの0.1mmフィルムを適用して、プロトコルJIS-K-7142に従い波長589nmで測定する。Fox方程式および9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(nD(589nm)=1.639)の公知の屈折率を適用することにより、こうして測定した屈折率nDから、それぞれのモノマーのホモポリカーボネートの屈折率を計算することができる。
【0200】
以前に記述されたように、Ar、RおよびR’基のうちのいくつか等の色供与性基を有さない式(I)の化合物はまた、ASTM E313に従い決定される低い黄色度指数Y.I.をもたらす純度で得ることができ、これもまた、光学用樹脂の調製における使用に対して重要となり得る。
【0201】
より正確には、ASTM E313に従い決定される式(I)の化合物の黄色度指数Y.I.は、好ましくは200を超えず、より好ましくは100を超えず、さらにより好ましくは50を超えず、特に20または10を超えない。
【0202】
本発明の別の態様は、熱可塑性樹脂が式(II)で表される構造単位、任意選択で式(V)の構造単位を含む、上で定義された熱可塑性樹脂で作製された光学デバイスに関する。式(II)および(V)の構造単位の好ましい意味および好ましい実施形態に関しては、上記に付与された記述を参照されたい。
【0203】
式(II)の繰返し単位および任意選択で、本明細書で定義された式(V)の繰返し単位を含む光学用樹脂で作製された光学デバイスは普通、光学成形品、例えば、光学レンズ、例えば、車のヘッドランプレンズ、フレネルレンズ、レーザープリンター用fθレンズ、カメラレンズ、ガラス用レンズおよびリアプロジェクションTV用投射レンズ、CD-ROMピックアップレンズ、さらに光ディスク、画像表示媒体用光学素子、光学的フィルム、フィルム基板、光学フィルターまたはプリズム、液晶パネル、光カード、光学シート、光ファイバー、光コネクター、蒸着プラスチック反射鏡等である。この光学デバイスはまた、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、太陽電池等のための透明導電性基板の構造材料または機能材料として適切な光学デバイスに使用可能な透明導電性基板を生成するのに有用である。
【0204】
本発明の熱可塑性樹脂から製造された光学レンズは高屈折率であり、低アッベ数であり、高耐湿熱性である。したがって、光学レンズは、望遠鏡、双眼鏡、TVプロジェクター等、従来、高屈折率を有する高価なガラスレンズが用いられていた分野に用いることができる。光学レンズは非球面レンズの形で用いることが好ましい。非球面レンズは1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせによって球面収差を取り除く必要がなく、球面収差を含むデバイスの軽量化および生産コストの低減化が可能になる。非球面レンズは、各種タイプの光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。本発明により、ガラスレンズでは技術的に加工の困難な高屈折率および低レベルの複屈折性を有する非球面レンズをより簡便に得ることができる。
【0205】
本発明の光学レンズは、例えば、射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法により、または式(II)の繰返し単位および任意選択で、本明細書で定義された式(V)の繰返し単位を含む樹脂をキャスティングすることにより形成することができる。
【0206】
本発明の光学レンズは小さな光学歪みを特徴とする。従来の光学用樹脂を含む光学レンズは大きな光学歪みを有する。成形条件により光学歪みの値を減少させることは不可能ではないが、条件幅は極小であり、よって、成形を極めて困難にする。式(II)の繰返し単位および任意選択で、本明細書で定義された式(V)の繰返し単位を有する樹脂は、樹脂の方向性および小さな成形歪みにより光学歪みが極めて小さいので、成形条件を厳密に設定することなく優れた光学素子を得ることができる。
【0207】
本発明の光学レンズを射出成形により製造するために、好ましくは、レンズはシリンダー温度260℃~320℃および金型温度100℃~140℃で成形されるべきである。
【0208】
本発明の光学レンズは必要に応じて非球面レンズとして有利に使用される。球面収差は単一の非球面レンズで実質的に無効にすることができるので、球面収差は球面レンズの組合せにより取り除く必要がなく、よって、重量化および生産コストの低減化が可能になる。したがって、非球面レンズは、光学レンズの中でも、カメラレンズとして特に有用である。
【0209】
式(II)の繰返し単位および任意選択で、本明細書で定義された式(V)の繰返し単位を有する樹脂は高い成形加工性を有するので、これらは薄い、小さなサイズの、複雑な形状を有する光学レンズの材料として特に有用である。レンズ寸法として、レンズの中心部分の厚さは0.05~3.0mm、好ましくは0.05~2.0mm、より好ましくは0.1~2.0mmである。レンズ直径は1.0~20.0mm、好ましくは1.0~10.0mm、より好ましくは3.0~10.0mmである。好ましくは、メニスカスレンズは片側が凸面で、他の側の凹面である。
【0210】
本発明の光学レンズの表面は、必要に応じ、反射防止層またはハードコート層といったコート層が設けられていてもよい。反射防止層は、単層であっても多層であってもよく、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。無機物の例としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウムおよびフッ化マグネシウム等の酸化物およびフッ化物が挙げられる。
【0211】
本発明の光学レンズは、任意の方法、例えば、金属成形、切断、研磨、レーザー機械加工、放電加工またはエッジングで形成することができる。金属成形が好ましい。
【0212】
本発明の熱可塑性樹脂を用いて生成された光学フィルムは、透明性および耐熱性が高く、したがって好ましくは液晶基板フィルム、光メモリーカード等に使用可能である。光学フィルムへの異物の混入を極力避けるため、成形は当然低ダスト環境で行わなければならない。ダスト環境はクラス6以下であることが好ましく、より好ましくはクラス5以下である。
【0213】
以下の実施例は、本発明のさらなる例示としての役目を果たす。
【0214】
I.略語:
DCM:ジクロロメタン
MEK:2-ブタノン
MeOH:メタノール
EtOH:エタノール
MTBE:メチルtert-ブチルエーテル
RT:室温
THF:テトラヒドロフラン
TLC:薄層クロマトグラフィー
BPEF:9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン
BNE:2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン
DPC:ジフェニルカーボネート
【0215】
II.式(I)の化合物の調製
II.1分析:
1H-NMRスペクトルは、Bruker BioSpin GmbH製の400MHz NMR-分光器Avance III 400HDを用いて23℃で決定した。特に述べられていない限り、溶媒はCDCl3であった。
【0216】
Shimadzu FTIR-8400S分光器(スキャン数45、解像度4cm-1;アポディゼーション:Happ-Genzel)を用いてATR FT-IRでIRスペクトルを記録した。
【0217】
化合物の融点をBuchi Melting Point B-545で決定した。
【0218】
UPLC(超高速液体クロマトグラフィー(Ultra Performance Liquid Chromatography))分析を以下のシステムおよび条件を用いて行った:
Waters Acquity UPLC H-Class Systems;カラム:Acquity UPLC BEH C18、1.7μm、2×100mm;カラム温度:40℃、グラジエント:アセトニトリル/水:アセトニトリル、0分、50%、4分、100%;5.8分、100%;6.0分、50%;8.0分、50%);注入量:0.4μl;作動時間:8分;210nmで検出。
【0219】
式(I)の化合物の黄色度指数YIは、以下のプロトコルを用いてASTN E313と同様に決定することができる:1gの式(I)の化合物を19gのMEK/水95:5(v/v)混合物に溶解する。溶液を50mmキュベットに移し、透過率を、Shimadzu UV-Visible分光光度計 UV-1650PCで300~800nmの範囲で決定する。MEK/水95:5(v/v)混合物を基準として使用する。黄色度指数は、Software「RCA-software UV2DAT」を用いて、ASTM E308(CIEシステムを使用してオブジェクトの色を計算するための標準プラクティス)およびASTM E 313(計測器で測定された色座標から黄色度と白色度を計算するための標準プラクティス)に従いスペクトルから計算することができる。
【0220】
濁度は、MEK/水95:5(v/v)の混合物中のそれぞれの化合物式(I)の5%溶液の860nmにおいて標準的な比濁計で透過率を測定することにより決定することができる。
【0221】
II.2 調製例:
[実施例1]
2-[[1-[[2-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]-フェニル-メチル]-2-ナフチル]オキシ]エタノール、式((Ia’.1)の化合物)の調製
1.1:1-[[2-ヒドロキシ-1-ナフチル]-フェニル-メチル]-2-ヒドロキシ-ナフタレン(R1およびR2が水素であり、ArがフェニルでありX1、X2、X3およびX4がCHである、式(VI)の化合物)
288.34g(2モル)の2-ナフトールを600g(約763mL)のイソプロパノールに室温で溶解した。この均一溶液に、111.43g(約106.1mL、1.05mol)のベンズアルデヒドおよび19.22g(12.987mL、200mmol)のメタンスルホン酸を室温で加えた。最初に均質な反応混合物を、厚いスラリーが形成されるまで室温で少なくとも1.5日間攪拌した。TLC(移動相:MeOH/水7:3(v/v))を介して反応を制御した。沈殿した固体を濾別し、40gのイソプロパノール、次いで50gのペンタンで続けて洗浄し、固体を真空下、最大30℃で、減圧下で(180mbar)乾燥させた。所望の生成物の第1の収穫は161.69g(約43%)であった。回転式エバポレーター(最高40℃)を用いて母液を濃縮し、厚いスラリーが再度形成されるまで、室温で数時間攪拌した。沈殿した固体を濾別し、20gのイソプロパノール、次いで25gのペンタンで洗浄し、真空下、最高30℃および5mbarで最終的に乾燥させた。所望の生成物の第2の収穫は143.76g(約38.2%)であった。最終的に、上記に記載されているものと同一の手順を用いて、さらに約57.36g(約15.2%)を表題化合物の第3の収穫物として単離し、表題化合物を全収量362.81g(約96.38%)で白色の結晶粉末として生成し、これを追加の精製をすることなく、次の工程の対象下においた。
m.p.=209~210℃
【0222】
1.2:2-[[1-[[2-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]-フェニル-メチル]-2-ナフチル]オキシ]エタノール(式(Ia’.1)の化合物)
還流冷却器を備えた1Lの三口丸底フラスコを、アルゴンまたは窒素でパージし、および50g(132.82mmol)の1-[[2-ヒドロキシ-1-ナフチル]-フェニル-メチル]-2-ヒドロキシ-ナフタレンを投入し、次いでこれを270mL(約234g)のトルエン中に懸濁させた。その後、35.1g(398.5mmol)の炭酸エチレンおよび5.51g(39.87mmol)の炭酸カリウムを懸濁液に加え、反応混合物を還流下で6~10時間攪拌した。TLC(移動相:MeOH/水7:3(v/v))を介して反応を制御した。TLC分析が変換の完了を示した後、反応混合物を70℃に冷却し、次いで65mLの水を混合物にゆっくりと加えた。気体発生および相分離の完了後、有機相を65mLの水酸化ナトリウムの10%水溶液で2回それぞれ洗浄し、水性洗浄液が中性になるまで(pH7)、水で2回以上洗浄した。次いで、ほとんど油性の生成物が形成されるまで有機相を回転式エバポレーターで濃縮し、400~500gのMTBEを加え、粗生成物を室温で結晶化させた。得た結晶性固体を濾別し、MTBEで洗浄し、乾燥させて、29.4gの表題化合物を生成した(収率:47.7%)。母液の濃縮後、さらに15.54g(約25.2%)の表題化合物を単離した。粗生成物2,2’-[(フェニルメチレン)ビス(1,2-ナフチレンオキシ)]ジエタノールの全収量は44.94g(約72.8%)であった。
【0223】
43.8gの粗生成物を650gのTHF中に溶解し、得た均一溶液を4.5gの活性炭で、50℃で処理し、セライト(登録商標)を介して濾過し、溶媒を回転式エバポレーターで完全に除去した。最終的に表題化合物をMTBEから結晶化することにより精製して、42.99gの純粋な表題化合物を無色の結晶として、化学純度97.8%で得た。MEKからの表題化合物の再結晶化後、化学純度>99%(UPLC)を達成した。
m.p.:162.8-163.8°C;
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 2.51 (br s, 2H), 3.28 (ddd, J = 12.54, 5.92, 2.66 Hz, 2H), 3.31 (ddd, J = 12.54, 5.92, 2.66 Hz, 2H), 3.68 (ddd, J = 9.78, 5.87, 2.57 Hz, 2H), 3.78 (ddd, J = 9.78, 5.87, 2.57 Hz, 2H), 7.04 (s, 1H), 7.35-7.58 (m, 12H), 7.93-8.10 (m, 5H) ppm;
IR[cm-1]:817.85(71.0);850.64(78.7);879.57(72.8);904.64(76.4);960.58(76.8);976.01(81.1);1031.95(65.4);1047.38(62.0);1062.81(58.5);1095.6(60.6);1145.75(75.7);1186.26(82.3);1215.19(65.8);1240.27(62.1);1261.49(58.6);1300.07(82.7);1317.43(76.8);1344.43(81.5);1369.5(81.5);1396.51(86.9);1411.94(83.5);1429.3(77.3);1450.52(76.8);1465.95(77.6);1491.02(78.8);1510.31(69.7);1597.11(70.9);1622.19(78.5);2868.24(86.5);2916.47(87.9);2928.04(87.4);3182.65(87.9);3282.95(86.0);3360.11(86.5);3458.48(87.4)cm-1。
【0224】
[実施例2]
2-[[1-[[2-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]-(1-ナフチル)メチル]-2-ナフチル]オキシ]エタノール(式(Ia’.2)の化合物)の調製
2.1:1-[[2-ヒドロキシ-1-ナフチル]-(1-ナフチル)メチル]-2-ヒドロキシ-ナフタレン(R1およびR2が水素であり、Arが1-ナフチルであり、X1、X2、X3およびX4がCHである、式(VI)の化合物)
57.67g(400mmol)の2-ナフトールを560mL(約744.8g)のDCMに溶解し、次いで35.35g(215mmol)の1-ナフトアルデヒドおよび3.84g(40mmol、10モル%)のメタンスルホン酸を室温で加えた。TLC分析(移動相:MeOH/水8:2(v/v))が2-ナフトールの消費の完了を示すまで、反応混合物を室温で攪拌した。炭酸ナトリウムの飽和水性溶液(50~60mL)で中和することにより反応混合物をクエンチした。相分離後、有機相を水(2×100mL)で洗浄し、収集した水性抽出物をDCM(3×50mL)で抽出した。最終的に、回転式エバポレーターを用いてDCMを収集した有機相から完全に蒸発させ、粗生成物をTBME(350mL)中に溶解させた。得た懸濁液を室温で1時間攪拌した。最終的に、固体を濾別し、TBME(3×20g)で洗浄し、乾燥させ、80.7g(ca。94.6%)の表題化合物を、オフホワイト色の結晶性固体として、化学純度99.26%(UPLC)で生成した。
m.p.:201.6℃。
【0225】
2.2:2-[[1-[[2-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]-(1-ナフチル)メチル]-2-ナフチル]オキシ]エタノール(式(Ia’.2)の化合物)
還流冷却器を備えた2Lの三口丸底フラスコを、アルゴンまたは窒素でパージし、200.46g(470mmol)の1-[[2-ヒドロキシ-1-ナフチル]-(1-ナフチル)メチル]-2-ヒドロキシ-ナフタレンを投入し、次いでこれを940mL(約815g)のトルエンに懸濁させた。その後、124.17g(1.41モル)の炭酸エチレンおよび19.5g(141mmol)の炭酸カリウムを懸濁液に加え、反応混合物を還流下で6~10時間攪拌した。TLC(移動相:MeOH/水8:2(v/v))を介して反応を制御した。反応中固体が沈殿した。TLC分析が変換の完了を示した後、反応混合物を70℃に冷却し、次いで65mLの水をゆっくりと混合物に加えた。気体発生の完了後、固体を濾別し、トルエン(2x100mL)および水(3×100mL)で洗浄した。固体をMEK中に懸濁させ、MEK/水共沸混合物の蒸留を介して水を除去した。最終的に、生成物を濾別し、MEKで洗浄して、124.68g(ca。55.2%)の表題化合物を白色の固体として得た。60℃でのMEK中でのスラリー洗浄を介した精製、濾過および乾燥後、表題化合物を収率118.15g(約52.3%)および化学純度96.48%(UPLC)で得た。
m.p.:259.4~259.8℃;
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 2.77-3.19 (m, 4H), 3.24-3.80 (m, 4H), 4.31 (br s, 1H), 4.50 (br s, 1H), 6.98 (s, 1H), 7.16-8.16 (m, 19H) ppm;
IR[cm-1]:812.06(51.0);856.42(69.5);893.07(73.7);929.72(85.9);958.65(77.2);1010.73(76.8);1026.16(63.2);1041.6(61.9);1060.88(58.2);1072.46(58.9);1091.75(70.2);1143.83(74.3);1186.26(83.5);1234.48(62.4);1259.56(61.3);1269.2(59.1);1336.71(75.2);1373.36(79.4);1394.58(80.2);1429.3(78.3);1448.59(76.5);1469.81(82.3);1506.46(70.0);1597.11(68.6);1620.26(76.6);2868.24(87.7);2935.76(85.9);3049.56(87.8);3360.11(84.3)cm-1。
【0226】
[実施例3]
2-[[1-[[2-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]-(2-ナフチル)メチル]-2-ナフチル]オキシ]エタノール(式(Ia’.3)の化合物)の調製
3.1:1-[[2-ヒドロキシ-1-ナフチル]-(2-ナフチル)メチル]-2-ヒドロキシ-ナフタレン(R1およびR2が水素であり、Arが2-ナフチルであり、X1、X2、X3およびX4がCHである、式(VI)の化合物)
72.085g(500mmol)の2-ナフトールを室温で150g(約191mL)のイソプロパノールに溶解した。この均一溶液に、40,639g(255モル)の2-ナフトアルデヒドおよび4,81g(50mmol)のメタンスルホン酸を室温で加えた。最初に、厚いスラリーが形成されるまで、均質な反応混合物を室温で24時間攪拌した。TLC(移動相:MeOH/水2:1(v/v))を介して反応を制御した。沈殿した固体を濾別し、イソプロパノール(3×20mL)およびペンタン(2×50mL)で続けて洗浄し、次いで固体を真空下で最高30℃および5mbarで乾燥させた。こうして得た所望の生成物の第1の収穫は27.0g(約25.3%)であり、化学純度>96%(UPLC)であった。回転式エバポレーター(最高40℃)を用いて母液を濃縮し、次いで、厚いスラリーが再度形成されるまで、室温で数時間攪拌した。沈殿した固体を濾別し、20gのイソプロパノール、次いで25gのペンタンで洗浄し、最終的に真空下で、最高30℃および180mbarで乾燥させた。こうして得た表題化合物の第2の収穫は70.0g(約65.6%)であり、純度>92%(UPLC)であった。表題化合物を、白色の結晶性粉末として、全収量約97.0g(約90.9%)で得て、これを、さらに精製せずに次の工程の対象下においた。
m.p.:177~179℃。
【0227】
3.2:2-[[1-[[2-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]-(2-ナフチル)メチル]-2-ナフチル]オキシ]エタノール(式(Ia’.3)の化合物)
還流冷却器を備えた2Lの三口丸底フラスコを、アルゴンまたは窒素でパージし、127.95g(300mmol)の1-[[2-ヒドロキシ-1-ナフチル]-(2-ナフチル)メチル]-2-ヒドロキシ-ナフタレンを投入し、次いでこれを600mL(約520g)のトルエンに懸濁させた。その後、79.3g(900mmol)の炭酸エチレンおよび12.11g(90mmol)の炭酸カリウムを懸濁液に加え、反応混合物を還流下で6~10時間攪拌した。TLC(移動相:MeOH/水7:3(v/v))を介して反応を制御した。反応中、固体が沈殿した。TLC分析が変換の完了を示した後、反応混合物を70℃に冷却し、次いで、170mLの水を混合物にゆっくりと加えた。気体発生および相分離の完了後、有機相を170mLの水酸化ナトリウムの10%水溶液で2回それぞれ洗浄し、次いで、水性の洗浄液が中性(pH7)になるまで、2回以上水で洗浄した。次いで、回転式エバポレーターを用いて有機相を濃縮し、粗生成物をトルエンから50℃で結晶化した。得た結晶性固体を濾別し、冷たいトルエン、次いでペンタンで洗浄し、乾燥させて、101.64g(約65.84%)の表題化合物を生成した。母液の濃縮後、さらに11.94g(約7.73%)の表題化合物を単離した。粗製の表題化合物の全収量は113.58g(約73.57%)であった。活性炭で、50℃で精製後、セライト(登録商標)を介して濾過し、MEKまたはトルエンから再結晶化して、純度99.76%(UPLC)の表題化合物を得た。
m.p。=164°C;
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 2.28 (br s, 2H), 2.93-3.03 (m, 1H), 3.10-3.26 (m, 3H), 3.47-3.55 (m, 1H), 3.65-3.79 (m, 3H), 7.15-7.44 (m, 10H), 7.558 (s, 1H), 7.60-7.91 (m, 9H) ppm;
IR[cm-1]:804.34(50.8);856.42(64.0);900.79(70.2);960.58(77.3);1030.02(61.8);1062.81(54.9);1093.67(66.8);1124.54(85.9);1149.61(76.0);1163.11(81.0);1207.48(68.0);1238.34(62.8);1259.56(56.8);1292.35(82.8);1334.78(75.9);1352.14(83.5);1371.43(79.3);1410.01(83.1);1429.3(77.4);1448.59(76.0);1469.81(78.4);1510.31(69.9);1573.97(87.5);1597.11(70.1);1620.26(76.4);2872.1(85.8);2935.76(84.9);3053.42(87.0);3383.26(84.8);3419.9(85.0);3564.57(86.5)cm-1。
【0228】
III.樹脂の調製
III.1分析:
III.1.1重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定方法:
Tosoh Corporation製のHLC-8320GPCデバイスをGPCデバイスとして、TSKguardcolumn SuperMPHZ-Moneをガードカラムとして、および直列に連結した3つのTSKgel SuperMultiporeHZ-Mを分析カラムとして用いて、重量平均分子量(Mw)を測定した。測定条件は以下の通りであった。
溶媒:HPLC等級クロロホルム
注入量:10μL
試料濃度:0.2w/v%のHPLC等級クロロホルム溶液
溶媒流速:0.35ml/分
測定温度:40℃
検出デバイス:RI
【0229】
以前に調製したポリスチレンの標準曲線を用いて、ポリスチレン変換した重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を計算する。具体的には、標準曲線は、分子量が公知の(「PStQuick MP-M」Tosoh Corporation製、分子量分布値1)標準的ポリスチレンを用いて調製した。さらに、標準的ポリスチレンの測定データに基づき、ピークのそれぞれの溶離時間および分子量値をプロットし、三次元近似値を行うことにより検量線を得た。MwおよびMnに対する値を以下の計算式に基づき計算する。
Mw=Σ(Wi×Mi)÷Σ(Wi)
Mn=Σ(Ni×Mi)÷Σ(Wi)
【0230】
計算式において、「i」は、「i」番目の分割点を表し,「Wi」は「i」番目の分割点でのポリマーの分子量(g)を表し、「Ni」は「i」番目の分割点でのポリマーの分子の数を表し、および「Mi」は「i」番目の分割点での分子質量を表す。分子質量(M)は、検量線における対応する溶離時間でのポリスチレンの分子質量の値を表す。
【0231】
III.1.2屈折率(nD):
実施例で生成したポリカーボネート樹脂からなる厚さ0.1mmのフィルムについて、アッベ屈折計を用い、波長589nmの屈折率を、JIS-K-7142の方法により測定した。
【0232】
III.1.3アッベ数(ν):
実施例で生成したポリカーボネート樹脂からなる厚さ0.1mmフィルムについて、アッベ屈折計を用い、23℃下での波長486nm、589nmおよび656nmの屈折率を測定した。次いで、下記式を用いてアッベ数を算出した:
ν=(nD-1)/(nF-nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nC:波長656nmでの屈折率
nF:波長486nmでの屈折率
【0233】
III.1.4ガラス転移温度(Tg):
JIS K7121-1987に従い、示差走査熱量測定(DSC)によりガラス転移温度を測定した。測定デバイスは、Hitachi High-Technologies製 X-DSC7000であった。
【0234】
III.1.5b値の測定:
それぞれの樹脂を120℃で4時間真空乾燥し、次いで射出成型機(FANUC ROBOSHOT α-S30iA)によりシリンダー温度270℃、金型温度Tg-10℃にて射出成形し、直径50mm、厚さ3mmの円盤状試験プレート片を得た。この試験プレート片を用いて、JIS-K7105による方法でb値を測定した。b値が小さいほど、プレートの黄色味が弱く、よって色相が良好となる。測定には、Nippon Denshoku Industries Co.、Ltd.製 SE2000型分光式色差計を用いた。
【0235】
III.1.6全光線透過率(TLT):
b値の測定についてのセクションIII.1.5に記載のプロトコルにより、厚さ3mmのプレートをそれぞれのポリカーボネート樹脂から製造した。Nippon Denshoku Industries Co.、Ltd.製 SE2000型分光式色差計を用い、JIS-K-7361-1の方法で全光線透過率を測定した。
【0236】
PCT処理の前と後にこれらのプレート全光線透過率を測定した。後者の値は表CのTLT-PCT欄に付与されている。
【0237】
III.1.7ビニル末端基量:
ビニル末端基量を、以下の条件下、1H-NMR測定で決定した。
装置:Bruker製、AVANZE III HD 500MHz
フリップ角:30度
待ち時間:1秒
積算回数:500回
測定温度:室温(298K)
濃度:5wt%
溶媒:重クロロホルム
内部標準物質:テトラメチルシラン(TMS) 0.05wt%
【0238】
III.1.8樹脂中の不純物の決定:
ポリカーボネート樹脂中のフェノール、ジフェニルカーボネート(DPC)およびモノマーの濃度を以下のプロトコルに従い測定した。
【0239】
樹脂試料0.5gをテトラヒドロフラン50mlに溶解し、樹脂溶液を得た。標品として各化合物の純品より検量線を作成した。試料溶液2μLをLC-MSにより以下の測定条件で定量分析した。なお、この測定条件での検出限界値は0.01ppmである。
【0240】
測定装置(LC部分):Agilent Infinity 1260 LC System
カラム:ZORBAX Eclipse XDB-18およびガードカートリッジ
移動相:
溶離液A:0.01mol/L--酢酸アンモニウム水溶液
溶離液B:0.01mol/L--酢酸アンモニウムのメタノール溶液
溶離液C:THF
移動相のグラジエントプログラム:
表1に示すように、溶離液A~Cの異なる混合物を移動相として使用した。移動相の組成を表1に示す時間(分)が経過したときに切り替えつつ、30分間カラムに移動相を流した。
【0241】
【表3】
流速:0.3ml/分
カラム温度:45℃
検出器:UV(225nm)
測定装置(MS部分):Agilent 6120 single quad LCMS System
イオン化ソース:ESI
極性:Positive(DPC)およびnegative(PhOH)
フラグメンタ:70V
ドライガス:10L/分、350℃
ネブライザ:50psi
キャピラリー電圧:3000V(positive)、2500V(negative)
測定イオン
【0242】
【0243】
III.1.9樹脂の成形加工性:
プロトコル3.1.5に記載の通りプレートを調製して、ポリカーボネート樹脂の成形加工性を評価し、プレートの品質を以下の等級A~Dに従い目視により評価した:
A:成形片には、空隙空間がなく、成形片の表面上にはいかなる波も見出されなかった。
B:成形片には空隙空間があったが、成形片の表面上にはいかなる波も見出されなかった。
C:成形片には空隙空間がなかったが、成形片の表面上には波が見出された。
D:成形片には空隙空間があり、成形片の表面上には波が見出された。
【0244】
III.2 調製例:
[実施例4-1]
7.70g(0.016モル)の2-[[1-[[2-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]-フェニル-メチル]-2-ナフチル]オキシ]エタノール(式(Ia’.1)の化合物)、28.19g(0.064モル)のBPEF、17.73g(0.083モル)のDPC、および32μl(8.0×10-7モル)の2.5×10-2モル/Lの炭酸水素ナトリウム水溶液を窒素大気内で300mlの四口フラスコ反応器に入れた。混合物を190℃に加熱して、反応を開始した。反応混合物を190℃で60分間攪拌し、次いで200℃に加熱した。この反応条件をさらに20分間維持した。次いで、圧力を200mmHgに調整し、この反応条件をさらに20分間維持した。この時点で、副生成物として生成したフェノールが留去し始めた。次いで、反応混合物を230℃に加熱し、この反応条件をさらに10分間維持した。次いで、圧力を150mmHgに調整し、この反応条件をさらに10分間維持した。圧力を1mmHg以下に調整しながら、反応混合物を240℃に加熱した。温度および圧力を維持しながら、反応混合物を30分間攪拌した。この反応が完了した後、窒素を反応器に導入することにより圧力均等化を達成し、生成したポリカーボネートを反応器から取り出し、分析した。結果は表Cに要約されている。
【0245】
実施例4-1で得たポリカーボネートにおいて、フェノールの含有量は300ppmであり、ジフェニルカーボネートの含有量は150ppmであった。
【0246】
[実施例4-2]
19.20g(0.0414モル)の式(Ia’.1)の化合物および17.60g(0.040モル)のBPEFをジヒドロキシ化合物として用いた以外は実施例4-1と実質的に同様の操作を行って、ポリカーボネート樹脂を得た。
【0247】
[実施例4-3]
8.30g(0.0161モル)の2-[[1-[[2-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]-(1-ナフチル)メチル]-2-ナフチル]オキシ]エタノール(式(Ia’.2)の化合物)および28.30g(0.0645モル)のBPEFをジヒドロキシ化合物として用いた以外は実施例4-1と実質的に同様の操作を行って、ポリカーボネート樹脂を得た。
【0248】
[実施例4-4]
21.30g(0.0414モル)の式(Ia’.2)の化合物および18.10g(0.0413モル)のBPEFをジヒドロキシ化合物として用いた以外は実施例4-1と実質的に同様の操作を行って、ポリカーボネート樹脂を得た。
【0249】
[実施例4-5]
8.30g(0.0161モル)の2-[[1-[[2-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]-(2-ナフチル)メチル]-2-ナフチル]オキシ]エタノール(式(Ia’.3)の化合物)および28.30g(0.0645モル)のBPEFをジヒドロキシ化合物として用いた以外は実施例4-1と実質的に同様の操作を行って、ポリカーボネート樹脂を得た。
【0250】
[実施例4-6]
21.30g(0.0414モル)の式(Ia’.3)の化合物および18.10g(0.0413モル)のBPEFをジヒドロキシ化合物として用いた以外は実施例4-1と実質的に同様の操作を行って、ポリカーボネート樹脂を得た。
【0251】
[参考実施例5]
6.20g(0.0166モル)のBNEおよび29.00g(0.0661モル)のBPEFをジヒドロキシ化合物として用いた以外は実施例4-1と実質的に同様の操作を行って、ポリカーボネート樹脂を得た。
【0252】
実施例4-1~4-6および参考例5で得られた樹脂の物性値を表Cに示す。
【0253】
【0254】