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  • 特許-巻き取り装置および巻き取り方法 図1A
  • 特許-巻き取り装置および巻き取り方法 図1B
  • 特許-巻き取り装置および巻き取り方法 図2A
  • 特許-巻き取り装置および巻き取り方法 図2B
  • 特許-巻き取り装置および巻き取り方法 図3
  • 特許-巻き取り装置および巻き取り方法 図4
  • 特許-巻き取り装置および巻き取り方法 図5
  • 特許-巻き取り装置および巻き取り方法 図6
  • 特許-巻き取り装置および巻き取り方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】巻き取り装置および巻き取り方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 57/14 20060101AFI20231114BHJP
   B65H 54/28 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B65H57/14
B65H54/28 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020566430
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2020001071
(87)【国際公開番号】W WO2020149303
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2019004634
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 崇広
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 巌
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】森本 仁広
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠幸
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-071051(JP,U)
【文献】特公昭48-031313(JP,B1)
【文献】特公昭48-031314(JP,B1)
【文献】特開平06-051134(JP,A)
【文献】特開昭55-080654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 57/14
B65H 54/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを巻き取るボビンと、
該ボビンを覆い、前記光ファイバを挿通するために前記ボビンの軸方向に平行なスリットを設けたカバーと、
前記ボビンに直接前記光ファイバを導くローラと、
を備えた巻き取り装置であって、
前記光ファイバの巻き取り時に、前記ボビンの前記光ファイバのボビン巻胴径に応じて、前記ローラを前記ボビンに対し相対的に移動させるか、または、前記カバーのスリットの位置を周方向に移動させて、前記カバーと前記光ファイバとの接触を防止する機構を設けた巻き取り装置。
【請求項2】
前記ボビンと前記ローラとの相対移動の方向は、巻き始めの前記光ファイバの方向と前記ローラの軸とに直交する成分を含む方向である、請求項1に記載の巻き取り装置。
【請求項3】
前記ボビン巻胴径は前記光ファイバの巻き取り長から算出する、請求項1または2に記載の巻き取り装置。
【請求項4】
前記ボビン巻胴径は前記ボビンにまかれた前記光ファイバの重量から算出する、請求項1または2に記載の巻き取り装置。
【請求項5】
光ファイバを巻き取るボビンと、
該ボビンを覆い、前記光ファイバを挿通するために前記ボビンの軸方向に平行なスリットを設けたカバーと、
前記ボビンに直接前記光ファイバを導くローラと、
を備えた巻き取り装置の巻き取り方法であって、
前記光ファイバの巻き取り時に、前記ボビンの前記光ファイバのボビン巻胴径に応じて、前記ローラを前記ボビンに対し相対的に移動させるか、または、前記カバーのスリットの位置を周方向に移動させて、前記カバーと前記光ファイバとの接触を防止する巻き取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、巻き取り装置および巻き取り方法に関する。
本出願は、2019年1月15日出願の日本国特許出願2019-004634号に基づく優先権を主張し、当該出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ボビンの外周にカバーを付け、フリー状態となった切断端末線が、巻取られた巻線体に跳ね返らないようにした光ファイバの巻き取り装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2005-200114号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る巻き取り装置は、光ファイバを巻き取るボビンと、
該ボビンを覆い、前記光ファイバを挿通するために前記ボビンの軸方向に平行なスリットを設けたカバーと、
前記ボビンに直接前記光ファイバを導くローラと、
を備えた巻き取り装置であって、
前記光ファイバの巻き取り時に、前記ボビンの前記光ファイバのボビン巻胴径に応じて、前記ローラを前記ボビンに対し相対的に移動させるか、または、前記カバーのスリットの位置を周方向に移動させて、前記カバーと前記光ファイバとの接触を防止する機構を設けたものである。
【0005】
また、本開示の一態様に係る巻き取り方法は、光ファイバを巻き取るボビンと、
該ボビンを覆い、前記光ファイバを挿通するために前記ボビンの軸方向に平行なスリットを設けたカバーと、
前記ボビンに直接前記光ファイバを導くローラと、
を備えた巻き取り装置の巻き取り方法であって、
前記光ファイバの巻き取り時に、前記ボビンの前記光ファイバのボビン巻胴径に応じて、前記ローラを前記ボビンに対し相対的に移動させるか、または、前記カバーのスリットの位置を周方向に移動させて、前記カバーと前記光ファイバとの接触を防止するものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】本開示の第1の実施形態に係る巻き取り装置の構成例を示す図である。
図1B図1Aの矢視B―Bの断面図である。
図2A】本開示の第1の実施形態に係る巻き取り装置における、光ファイバの巻き始め時点でのボビンとローラとの位置を示す図である。
図2B図2Aの巻き取り装置において、光ファイバを巻き取ることによりボビン巻胴径が大きくなった時点でのボビンとローラとの位置を示す図である。
図3】ボビンに巻き取った光ファイバの長さとボビン巻胴径の関係について説明するための図である。
図4】ボビンに巻き取った光ファイバの巻き取り長とボビン巻胴径の関係について、計算値と実測値の関係を示す図である。
図5】ボビン巻胴径と光ファイバの巻取りの角度を示す図である。
図6】ボビンに巻き取った光ファイバの巻き取り長に対するローラの移動量の計算値と、実際のローラを移動させた実測値の関係を示す図である。
図7】本開示の第5の実施形態に係る巻き取り装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
巻き取り装置は、連続的に送られてくる電線、光ファイバ等の線条体をボビンに高速で巻取る場合、線条体が途中で断線すると、すぐに停止できないため、切断端末線がフリー状態となってボビンの回転と共に周りを振れ回る。このため、切断端末線は周囲の障害物や突起物に当たって、巻取られた巻線体に跳ね返り、巻線体の表面を叩く線叩きと言われている状態が生じる。この線叩きは、高速巻取りではその影響が顕著で、巻取られた線条体に傷をつける。特に線条体が光ファイバである場合は、巻取られた光ファイバが低強度となるかもしくは破断する。このような線叩きが生じると、巻取られた光ファイバを廃棄しなければならず、歩留まり低下の原因となっていた。
特許文献1に開示された光ファイバの巻き取り装置では、ボビンの外周に設けたカバーによって、線叩きによる影響を軽減することができる。しかしながら、ボビンに巻かれる光ファイバの量が増えるほど、ボビン巻胴径が大きくなり、ローラからボビンに導入する光ファイバとボビン外周に設けたカバーが当たってしまうことがあった。これを防ぐためにはカバーの開口を大きくすればよいが、開口が大きくなると、断線時にたわんだ光ファイバがボビン表面の光ファイバを傷つけやすくなる。このため、開口の大きさはできるだけ小さくすることが好ましい。
【0008】
本開示は、これらの実情に鑑みてなされたものであり、ボビンを覆うカバーとボビンに巻き取られる光ファイバとが接触するのを防止し、光ファイバの円滑な巻き取りが可能な巻き取り装置および巻き取り方法を提供することをその目的とする。
【0009】
[本開示の効果]
本開示によれば、ボビンを覆うカバーとボビンに巻き取られる光ファイバとが接触するのを防止し、光ファイバの円滑な巻き取りが可能な巻き取り装置および巻き取り方法を得ることができる。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。本開示の一態様に係る巻き取り装置は、(1)光ファイバを巻き取るボビンと、
該ボビンを覆い、前記光ファイバを挿通するために前記ボビンの軸方向に平行なスリットを設けたカバーと、
前記ボビンに直接前記光ファイバを導くローラと、
を備えた巻き取り装置であって、
前記光ファイバの巻き取り時に、前記ボビンの前記光ファイバのボビン巻胴径に応じて、前記ローラを前記ボビンに対し相対的に移動させるか、または、前記カバーのスリットの位置を周方向に移動させて、前記カバーと前記光ファイバとの接触を防止する機構を設けたものである。
これにより、ボビンの外周を覆うカバーとボビンに巻き取られる光ファイバとが接触するのを防止し、光ファイバの円滑な巻き取りが可能となる。
【0011】
(2)前記ボビンと前記ローラとの相対移動の方向は、巻き始めの前記光ファイバの方向と前記ローラの軸方向とに直交する成分を含む方向であってよい。
これにより、必要なボビンまたはローラの移動距離の算出を簡単に行うことができる。
【0012】
(3)前記ボビン巻胴径は前記光ファイバの巻き取り長から算出してもよく、また、(4)前記ボビンに巻かれた前記光ファイバの重量から算出してもよい。
これにより、種々の方法でボビンに巻かれる光ファイバのボビン巻胴径を算出することができる。
【0013】
また、本開示の一態様に係る巻き取り方法は、(5)光ファイバを巻き取るボビンと、
該ボビンを覆い、前記光ファイバを挿通するために前記ボビンの軸方向に平行なスリットを設けたカバーと、
前記ボビンに直接前記光ファイバを導くローラと、
を備えた巻き取り装置の巻き取り方法であって、
前記光ファイバの巻き取り時に、前記ボビンの前記光ファイバのボビン巻胴径に応じて、前記ローラを前記ボビンに対し相対的に移動させるか、または、前記カバーのスリットの位置を周方向に移動させて、前記カバーと前記光ファイバとの接触を防止するものである。
これにより、ボビンの外周を覆うカバーとボビンに巻き取られる光ファイバとが接触するのを防止し、線条体の円滑な巻き取りが可能となる。
【0014】
(本開示の実施形態の詳細)
以下、図面を参照しながら、本開示の巻き取り装置および巻き取り方法に係る好適な実施形態について説明する。また、以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。また、複数の実施形態について組み合わせが可能である限り、本開示は任意の実施形態を組み合わせたものを含む。
なお、本発明の範囲は、本開示の例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本開示の一実施形態に係る巻き取り装置の構成例を示す図である。図1Aは、ボビンとローラの配置を側面から見た図であり、図1Bは、図1Aの矢視B―Bの断面図である。
巻き取り装置1は、ボビン10と、線叩き防止用のカバー13と、ローラ20と、を備えている。
ボビン10は、胴部11と胴部11の両端に設けた鍔部12を有する。ローラ20は、ボビン10の上流側直前に配置されている。カバー13は、ボビン10の径方向外側に当たる外周を覆う。また、カバー13は、略円筒形状をしており、光ファイバ30が挿通するボビン10の軸方向に平行なスリット14を有している。ボビン10は図示しない駆動装置によって、図1Aで反時計方向に回転され、例えば、線引き後の光ファイバ30を巻き取っている。
なお、上記の「上流側直前」というのは、ローラ20とボビン10との位置が近いという意味ではなく、図1Aに示すように、ボビン10の上流側にあるローラ20からボビン10の間に、光ファイバ30に接触する他のローラ等の部材が無いということを意味する。すなわち、ローラ20は、ボビン10に光ファイバ30を直接導くローラである。光ファイバ30を直接導くローラであれば、例えばローラ20はボビン10からある程度離れた位置にあってもよい。
【0016】
次に、本実施形態におけるボビンとローラとの位置関係について説明する。図2Aは、巻き取り装置1における、ボビンとローラとの位置関係を説明するための図であり、光ファイバ30の巻き始め時点でのボビンとローラとの位置を示している。図2Bは、図2Aの巻き取り装置1において、所定の長さの光ファイバ30を巻き取ることにより、ボビン巻胴径が大きくなった時点でのボビンとローラとの位置を示している。
【0017】
図2Aに示すように、ローラ20に案内された光ファイバ30は、ボビン10の胴部11の外周に巻き回される。巻き取り装置1は、巻き始めにおいて光ファイバ30がカバー13に設けたスリット14の中心位置を通過するように、ボビン10とローラ20の位置が調整されている。巻き始めにおける光ファイバ30のパス(移動経路)はX軸方向に一致するものとする。ボビン10に巻き取られる光ファイバ30の巻き取り量(長さ)が増えるにしたがって、ボビン巻胴径Dnは大きくなる。ボビン巻胴径Dnが大きくなった際に、ローラ20の位置が巻き始めの位置から動かなければ、光ファイバ30のパスは図2Bの二点鎖線で示す位置になり、カバー13に接触する。
【0018】
本実施形態では、ボビン巻胴径Dnが大きくなるにしたがって、ローラ20の位置をY軸方向に移動させている。これにより、光ファイバ30は、巻き取り量が増加しても、カバー13のスリット14の中心位置を通過し、光ファイバ30がカバーに接触することがない。
本実施形態では、光ファイバ30のボビン巻胴径Dnに応じてローラ20の移動量aを制御する。この制御のために、予め線引きした光ファイバ30の巻き取り長(線引長)とボビン10のボビン巻胴径Dnの関係を調べておく。そして、この関係を基に、光ファイバ30の巻き取り長に対して、ローラ20の相対位置をどの程度動かせばよいか求めて、フィードフォワード制御すればよい。なお、実際のローラ20の移動方向はY軸方向に一致している必要はない。この場合、ローラ20の移動方向はY軸成分を含む方向であればよい。その際のY軸方向成分の移動量が移動量aであればよい。
【0019】
ボビン10のボビン巻胴径Dnと光ファイバ30の巻き取り長(線引長)との関係については、実験によって求めてもよく、或いは、数値計算で求めてもよい。本実施形態では、数値計算によって光ファイバ30の長さからボビン10のボビン巻胴径Dnを求め、このボビン巻胴径Dnからローラ20の移動量を下記のように決定している。なお、光ファイバ30の巻き取り長は、別途計測しておけばよい。図3は、ボビンに巻き取った光ファイバの長さとボビン巻胴径の関係について説明するための図である。
【0020】
ボビン10の胴部11の直径をR、軸方向長さをL、光ファイバ30の直径をr、第n層目のボビン巻胴径をDn(nは整数)とする。光ファイバ30はボビン10の胴部11に隙間なく密に引きつめられていくと仮定する。こうすると、第1層目のボビン巻胴径D1、第2層目のボビン巻胴径D2、および、第n層目のボビン巻胴径Dnは次の式1で表せる。なお、ボビン巻胴径Dnは、ボビン10に巻き取った最外周に位置する光ファイバ30の中心とボビン10の中心に対して反対側にある最外周の光ファイバ30の中心までの距離に相当する。光ファイバ30としては、例えば、直径125μmのガラスファイバに紫外線硬化型樹脂による1次被覆層および2次被覆層をそれぞれ被覆し、さらに最外周に紫外線硬化型インクによる着色層を被覆して直径rを250μmとしたものが適用できる。
【数1】
1層当たりの光ファイバ30の巻き数をkとする。第1層目の光ファイバの巻き取り長A1、第2層目の光ファイバの巻き取り長A2、および、第n層目の光ファイバの巻き取り長An(nは整数)は、次の式2で表せる。
【数2】
【0021】
光ファイバ30の巻き取り長から、光ファイバ30がボビン10の第何層(第n層)目に巻かれているかを式2から計算し、その層数nを式1に当てはめることによってボビン巻胴径Dnを求めることができる。図4は、ボビンに巻き取った光ファイバの巻き取り長(線引長)とボビン巻胴径の関係について、計算値と実測値の関係を示す図である。破線が式2で求めた計算値を示し、◇印が実測値を示している。図4では、ボビン巻胴径は比率(巻き始めの胴径と第n層目の胴径との比)で示しているが、計算値と実測値とは概ね一致しており、光ファイバの巻き取り長からボビン巻胴径Dnを知ることができる。
【0022】
ボビン巻胴径Dnの変化に応じて、光ファイバ30がカバー13に接触しないようにローラ20をY軸方向に移動させる移動量aを求める。図2Aに示すように、ボビン10の中心とローラ20の中心のX軸方向の距離をLx、巻き始め時における光ファイバ30のボビン10の接触点Sからカバー13のスリット14の中点Pまでの距離をLa、カバー13の直径をLb(詳細には、カバー13の厚さの中間点どうしの直径)とすると、カバー13のスリット14の中点Pからローラ20の接触点までの距離Lyは、次の式3で表せる。
【数3】
【0023】
そして、図2Bに示すように、ボビン巻胴径Dnが大きくなった場合にローラ20を移動量aだけY軸方向に移動させるものとすると、光ファイバ30のパスはX軸に対して角度θだけ傾く。この時の傾きの角度θを用いると移動量aは次の式4で求まる。
【数4】
ボビン10の中心とローラ20の中心のX軸方向の距離をLxとすると、カバー13の直径Lb、ボビンの直径Rは既知であるから、式4から移動量aを求めるためには、角度θを求めればよい。
【0024】
図5は、ボビン巻胴径と光ファイバの巻取りの角度を示す図である。スリット14の中点Pからボビン10の胴部11への接線とボビン10の中心を結ぶ線とがなす角度をαとする。n層目のボビン巻胴径Dnは式1から求まる。また、ボビン10の中心から一番外側に巻かれた光ファイバ30の中心までの距離は、Dn/2となる。図5に示す三角形OPQ、および三角形OPSに関して、次の式5が成り立つ。ここで、Oはボビン10の中心点、Qはスリット14の中点Pからボビン10の最外周に巻かれた光ファイバ30の中心への接線の接点である。
【数5】
【0025】
よって、角度θは次の式6によって求まる。
【数6】
式6において、光ファイバ30の径r、ボビン10の胴部11の直径R、カバー13の直径Lbは既知であるため、式1から求めたボビン巻胴径Dnから角度θを得ることができる。そして、式6で求めた角度θを式4に代入することによって、ローラ20の移動量aを求めることができる。
【0026】
図6は、ボビンに巻き取った光ファイバの巻き取り長に対するローラの移動量の計算値と、実際のローラを移動させた実測値の関係を示す図である。図6において、破線は、線引中の光ファイバ30の巻き取り長に基づいて、式4から計算したローラ20の移動量をプロットしたものである。◇印は、実際の線引中において、光ファイバ30のいくつかの巻き取り長において、スリット14の中心を通るようにローラ20を移動させた際の、ローラ20の移動量の実測値を示したものである。図6に示すように、実測値と計算値はほぼ一致した。また、実際のローラ20の位置を計算値で算出した値の位置に置いた結果、全ての実測値の点において、光ファイバ30がカバー13に接触せずに巻き取り可能であることを確認した。
【0027】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、ボビン巻胴径Dnを光ファイバ30の巻き取り長から算出する方法について述べたが、ボビン巻胴径Dnは、ボビン10に巻き取った光ファイバ30の重量に応じて変化する。このため、ボビン巻胴径Dnを光ファイバ30の巻き取り長から算出する代わりに、ボビン10に巻かれた光ファイバ30の重量から算出してもよい。ボビン10に巻かれた光ファイバ30の重量を求めるには、光ファイバ30が巻かれた状態のボビン10の重量を計測し、予め計測しておいたボビン10単体の重量を引けばよい。このようにして求めた、ボビン10に巻かれた光ファイバ30の重量からボビン巻胴径Dnを算出するようにしてもよい。
【0028】
(第3の実施形態)
第1、第2の実施形態では、ボビン巻胴径Dnを光ファイバ30の巻き取り長やボビン10に巻かれた光ファイバ30の重量から求めたが、ボビン巻胴径Dnを直接求めるようにしてもよい。ボビン巻胴径Dnを求める方法としては、例えば、光学測距装置を用いて、カバー13のスリット14を通してボビン巻胴径Dnを得ることができる。
【0029】
(第4の実施形態)
第1の実施形態では、ボビン巻胴径Dnが大きくなるにしたがって、ローラ20をY軸方向に動かしたが、ローラ20を動かす代わりに、ボビン10とカバー13をY軸方向に動かしてもよい。さらに、ローラ20、および、ボビン10とカバー13の両者を動かしてもよい。このように、ローラ20、および、ボビン10とカバー13とは、相対的に移動するようにしておけばよい。
【0030】
(第5の実施形態)
図7は、本開示の第5の実施形態に係る巻き取り装置の構成例を示す図である。第1の実施形態では、ボビン巻胴径Dnが大きくなるにしたがって、ローラ20をY軸方向に動かしたが、本実施形態の巻き取り装置1’では、ボビン巻胴径Dnが大きくなるにしたがって、図示しない駆動装置によって、カバー13のスリット14の位置を周方向(矢印A方向)に移動させている。これによって、ボビン10の外周を覆うカバー13とボビン10に巻き取られる光ファイバ30とが接触するのを防止できる。
【0031】
上記実施形態のいずれの方法を用いる場合においても、巻き取り装置1(1’)は、下記の(a)、(b)、(c)を、巻き取り装置1(1’)内部、あるいは別装置として備えている。
(a)各構成要素の諸元として、例えば、光ファイバ30の径r、ボビン10の胴部の径R、ボビン10の中心とローラ20の中心のX軸方向の距離Lx、巻き始め時における光ファイバ30のボビン10の接触点Sからカバー13のスリット14の中点Pまでの距離La、カバー13の直径Lb等を記憶しておくためのメモリ。
(b)各演算を行うためのプログラムを格納したメモリ。
(c)光ファイバ30の巻き取り長やボビン重量、あるいは、光学測距装置からの計測信号を処理するための演算装置。
【符号の説明】
【0032】
1、1':巻き取り装置
10:ボビン
11:胴部
12:鍔部
13:カバー
14:スリット
20:ローラ
30:光ファイバ
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7