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特許7384188液体またはスラリーの塗布装置、液体またはスラリーの塗布方法および塗装金属帯の製造方法
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  • 特許-液体またはスラリーの塗布装置、液体またはスラリーの塗布方法および塗装金属帯の製造方法 図1
  • 特許-液体またはスラリーの塗布装置、液体またはスラリーの塗布方法および塗装金属帯の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】液体またはスラリーの塗布装置、液体またはスラリーの塗布方法および塗装金属帯の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/08 20060101AFI20231114BHJP
   B05C 11/02 20060101ALI20231114BHJP
   B05C 11/06 20060101ALI20231114BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20231114BHJP
   B05D 3/04 20060101ALI20231114BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20231114BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B05C1/08
B05C11/02
B05C11/06
B05D1/28
B05D3/04 Z
B05D7/14 G
B05D7/24 301E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021068518
(22)【出願日】2021-04-14
(65)【公開番号】P2022163524
(43)【公開日】2022-10-26
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】吉本 宗司
(72)【発明者】
【氏名】井上 陽介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 秀行
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-180270(JP,A)
【文献】国際公開第2020/196773(WO,A1)
【文献】特開平07-062445(JP,A)
【文献】特開2016-055223(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0282206(US,A1)
【文献】特開2003-010770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0221449(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-3/20
7/00-21/00
B05D 1/00-7/26
C23C 22/00-22/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して通板される金属帯に液体またはスラリーを供給する液体またはスラリー噴出ノズルと、
前記金属帯に供給された液体またはスラリーを前記金属帯に塗布するロールを有するロールコーターと、
前記ロールの出側における前記ロールと前記金属帯とに挟まれる空間に気体を噴出する気体噴出ノズルと、を有し、
前記気体噴出ノズルの気体噴出方向と前記金属帯の塗布面とがなす鋭角は10°以上45°以下の範囲内である、液体またはスラリー塗布装置。
【請求項2】
前記気体噴出ノズルは、前記ロールと前記金属帯とに挟まれる空間における前記金属帯に向けて気体を噴出する、請求項1に記載の液体またはスラリー塗布装置。
【請求項3】
前記気体噴出ノズルの気体噴出方向における前記気体噴出ノズル先端から前記金属帯までの距離は、10mm以上45mm以下の範囲内である、請求項1または請求項2に記載の液体またはスラリー塗布装置。
【請求項4】
連続して通板される金属帯にロールコーターを用いて液体またはスラリーを塗布する液体またはスラリーの塗布方法であって、
前記ロールコーターのロールの出側における前記ロールと前記金属帯とに挟まれる空間に気体を噴射し、
前記気体の噴射方向と前記金属帯の塗布面とがなす鋭角は10°以上45°以下の範囲内である、液体またはスラリーの塗布方法。
【請求項5】
前記空間に形成される液体またはスラリーのメニスカスが前記ロール側に飛散するように前記気体を噴射する、請求項4に記載の液体またはスラリーの塗布方法。
【請求項6】
前記空間に噴射する気体の噴射圧力は、3kPa以上9kPa以下の範囲内である、請求項4または請求項5に記載の液体またはスラリーの塗布方法。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の液体またはスラリーの塗布方法で液体またはスラリーが塗布された、塗装金属帯の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連続して通板される金属帯にロールコーターを用いて液体またはスラリーを塗布する液体またはスラリーの塗布装置、液体またはスラリーの塗布方法および塗装金属帯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、連続して通板される鋼板等の金属帯の表面に、様々な物性を有する塗布液を塗布して塗膜を形成し、耐食性、加工性、美観性、絶縁性等の性能を金属帯に付与する処理が行われている。この処理方法を施すコーティング装置としては、ロールコーターが一般的に用いられている。ロールコーターを用いた金属帯に液体またはスラリーを塗布する方式では、金属帯に予め余剰に供給された液体またはスラリーのうちの余剰分を、ロールの押し付け荷重によって金属帯から絞り出し、金属帯上の液体またはスラリーの付着量が調整される。
【0003】
このようなロールコーター方式では、金属帯上に必要な液体またはスラリーの付着量を確保するために、ロールコーターのロールとして、外周面に溝が彫刻されたゴムロールを使用する場合がある。また、金属帯に対する液体またはスラリーの供給方法としては、スプレーノズルやスリットノズルが一般的に使用される。
【0004】
ロールコーター方式による液体またはスラリーの塗布処理における代表的な塗布欠陥として、リビングと称されるロールコーターのロール外周方向に発生するスジ状の模様が金属帯に転写される外観欠陥がある。リビングは、ロールコーターのロールと金属帯との間に形成される液メニスカスの流体圧力の変動が表面張力の安定化の効果を上回った際に発生する欠陥として知られている。
【0005】
リビングを防止する技術として、特許文献1には、スラリーの膜厚をロールコーターによって調整した後、ガスワイピング装置により、スラリーに気体を吹き付けることでスラリーの膜厚を再度調整する技術が開示されている。また、特許文献2には、ロールコーターを用いて液体もしくはスラリーを金属帯に塗布するに当たり、ロールコーター出側の不均一な液溜まり部に板幅方向に張った線材を接触させ、これにより、ロールコーターで生じる縞模様の発生を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-62445号公報
【文献】特開2003-320290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、エアーワイパーを鋼板に吹き付ける時に、MgOスラリーが飛散し、飛散したスラリーが鋼板に再付着することで斑点と称される外観欠陥が発生するという問題がある。また、特許文献2に記載された技術では、鋼板が振動した場合に、鋼板と線材とが接触したり、線材の振動に起因した線材模様と称される外観欠陥が発生するという問題がある。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、連続して通板する金属帯にロールコーターを用いて液体またはスラリーを塗布する場合に、液体またはスラリーの飛散や外観欠陥を抑制できる液体またはスラリーの塗布装置、塗布方法および塗装金属帯の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
(1)連続して通板される金属帯に液体またはスラリーを供給する液体またはスラリー噴出ノズルと、前記金属帯に供給された液体またはスラリーを前記金属帯に塗布するロールを有するロールコーターと、前記ロールの出側における前記ロールと前記金属帯とに挟まれる空間に気体を噴出する気体噴出ノズルと、を有する、液体またはスラリー塗布装置。
(2)前記気体噴出ノズルは、前記ロールと前記金属帯とに挟まれる空間における前記金属帯に向けて気体を噴出する、(1)に記載の液体またはスラリー塗布装置。
(3)前記気体噴出ノズルの気体噴出方向と前記金属帯の塗布面とがなす鋭角は10°以上45°以下の範囲内である、(1)または(2)に記載の液体またはスラリー塗布装置。
(4)前記気体噴出ノズルの気体噴出方向における前記気体噴出ノズル先端から前記金属帯までの距離は、10mm以上45mm以下の範囲内である、(1)から(3)のいずれか1つに記載の液体またはスラリー塗布装置。
(5)連続して通板される金属帯にロールコーターを用いて液体またはスラリーを塗布する液体またはスラリーの塗布方法であって、前記ロールコーターのロールの出側における前記ロールと前記金属帯とに挟まれる空間に気体を噴射する、液体またはスラリーの塗布方法。
(6)前記空間に形成される液体またはスラリーのメニスカスが前記ロール側に飛散するように前記気体を噴射する、(5)に記載の液体またはスラリーの塗布方法。
(7)前記空間に噴射する気体の噴射圧力は、3kPa以上9kPa以下の範囲内である、(5)または(6)に記載の液体またはスラリーの塗布方法。
(8)(5)から(7)のいずれか1つに記載の液体またはスラリーの塗布方法で液体またはスラリーが塗布された、塗装金属帯の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る液体またはスラリーの塗布装置および液体またはスラリーの塗布方法を用いることで、液体またはスラリーの外観欠陥を抑制でき、良好な塗布外観の塗装金属帯の製造が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る液体等塗布装置10を示す模式図である。
図2図1におけるA部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、斑点や線材模様を発生させることなくリビングの発生を抑制するべく検討を重ねた結果、ロールコーターのロール出側で、当該ロールから離れた位置で金属帯の塗膜に気体を噴射すると液体またはスラリーが飛散するが、ロールのすぐ近くのロールと金属帯とに挟まれる空間に形成される液体またはスラリーのメニスカスに気体を噴射すると、液体またはスラリーを金属帯に飛散させることなくリビングの発生を抑制できることを見出して本発明を完成させた。以下、本発明の実施形態を通じて本発明を説明する。なお、以後の説明において、液体またはスラリーを「液体等」と記載する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る液体等塗布装置10を示す模式図である。また、図2は、図1におけるA部の拡大図である。図1および図2を用いて、本実施形態に係る液体等塗布装置10を説明する。
【0014】
本実施形態に係る液体等塗布装置10は、上部液体等噴出ノズル12と、下部液体等噴出ノズル14と、ロールコーター装置16と、上部気体噴出ノズル18と、下部気体噴出ノズル20とを有する。上部液体等噴出ノズル12は、連続的に水平方向(以下、「長手方向」と記載する場合もある)に通板される金属帯24の上面側から液体等22を噴射し、金属帯24の上面側に液体等を供給するスプレーノズルである。下部液体等噴出ノズル14は、金属帯24の下面側から液体等22を噴射し、金属帯24の下面側に液体等22を供給するスプレーノズルである。上部液体等噴出ノズル12および下部液体等噴出ノズル14は、スプレーノズルに限定するものではなく、スリットノズルであってもよく、金属帯24に液体等が供給可能なものであればどのような構造のノズルを用いてもよい。
【0015】
ロールコーター装置16は、上部ロール26と下部ロール28とを有する。上部ロール26は、表面に溝が設けられた溝付きロールであって、金属帯24の上面側における液体等22の付着量を調整する。下部ロール28は、上部ロール26と同じく表面に溝が設けられた溝付きロールであって、金属帯24の下面側における液体等22の付着量を調整する。上部ロール26および下部ロール28の材質はゴムであることが好ましく、特に、耐摩耗性に優れるウレタンゴム、ニトリルゴム、ハイパロンゴムから選ばれるゴムを用いることが好ましい。また、上部ロール26および下部ロール28のロール径は50~400mmであることが好ましく、ニップ圧は1~10kg/cmであることが好ましい。さらに、上部ロール26および下部ロール28の回転方向は、金属帯24の走行方向と同一方向であることが好ましい。上部ロール26および下部ロール28の回転方向を金属帯24の走行方向と同一方向にすることで、上部ロール26および下部ロール28の摩耗を抑制できる。
【0016】
塗装金属帯の製造時において、上部ロール26と金属帯24とに挟まれる空間には表面張力により液体等22のメニスカスが形成される。上部気体噴出ノズル18は、金属帯24の幅方向に延在したスリットノズル30が設けられており、当該スリットノズル30から上部ロール26の出側における上部ロール26と金属帯24とに挟まれる空間に空気や窒素等の気体を噴出し、当該空間の液体等22のメニスカスを上部ロール26側に飛散させる。また、下部ロール28と金属帯24とに挟まれる空間にも液体等22のメニスカスが形成されるので、下部気体噴出ノズル20も同様に、下部ロール28の出側における下部ロール28と金属帯24とに挟まれる空間に気体を噴出し、当該空間の液体等22のメニスカスを下部ロール28側に飛散させる。なお、各ロール26、28と金属帯24とに挟まれる空間における金属帯24に気体を噴射させることが好ましい。これにより、より確実に当該空間の液体等22のメニスカスを各ロール26、28側に飛散させることができる。
【0017】
このように、各気体噴出ノズルから各ロールと金属帯24とに挟まれる空間に気体を吹き付け、メニスカスを形成する液体等22を各ロール26、28側に飛散させることでメニスカスを小さくできる。これにより、当該メニスカスの流体圧力の変動を小さくできるので、この結果、リビングの発生が抑制される。さらに、飛散された液体やスラリーは各ロール26、28に衝突し、飛散した液体等22が再び金属帯24に付着することも抑制されるので、外観不良(斑点)の発生も抑制できる。
【0018】
上部気体噴出ノズル18の気体噴出方向は、図1に示すように金属帯24の進行方向の逆方向であって斜め下方向とすることが好ましい。これにより、上部ロール26と金属帯24とに挟まれる空間に気体を噴出させやすくなる。同様に、下部気体噴出ノズル20の気体噴出方向は、図1に示すように金属帯1の進行方向の逆方向であって斜め上方向とすることが好ましい。これにより、下部ロール28と金属帯24とに挟まれる空間に気体を噴出させやすくなる。
【0019】
図2に示した上部気体噴出ノズル18における気体噴出方向と金属帯24の塗布面とがなす鋭角θは、10°以上45°以下の範囲内であることが好ましい。同様に、下部気体噴出ノズル20おける気体噴出方向と金属帯24の塗布面とがなす鋭角も同じ範囲内であることが好ましい。このような角度となるように上部気体噴出ノズル18および下部気体噴出ノズル20を設けることで、金属帯24から各気体噴出ノズルが離れるので、金属帯24が振動した場合に当該振動の影響を受けづらくなるとともに、各ロールと金属帯24とに挟まれる空間に気体を噴射させやすくなる。なお、各気体噴出ノズル18、20における気体噴出方向と金属帯24の塗布面とがなす鋭角θは15°以上30°以下の範囲内であることがより好ましい。一方、各気体噴出ノズル18、20における気体噴出方向と金属帯24の塗布面とがなす角度を90°とすると、液体等22が飛散し、これらが金属帯24に再付着することによる外観不良(斑点)が発生する。したがって、気体噴出方向が金属帯24の方向となる気体噴出ノズルは設けない方が好ましい。各気体噴出ノズル18、20は、気体噴出方向を10°以上45°以下の範囲内で定め、当該角度で噴出される気体が上部ロール26または下部ロール28に直接衝突しない位置に設けられる。
【0020】
また、上部気体噴出ノズル18および下部気体噴出ノズル20から噴射する気体の噴射圧力は3kPa以上9kPa以下の範囲内であることが好ましい。噴射圧力を3kPa以上9kPa以下の範囲内とすることで、液体等22の飛散を抑制しながらリビングの発生を抑制できる。一方、噴射圧力が3kPa未満になると、リビングの抑制効果が低下するので好ましくない。また、噴射圧力が9kPaより大きくなると、液体等22の飛散が発生しやすくなるので好ましくない。各気体噴出ノズルの噴射圧力は、5kPa以上7kPa以下の範囲内であることがより好ましい。
【0021】
さらに、上部気体噴出ノズル18の先端から気体の衝突点までの距離Lは、10mm以上45mm以下の範囲内であることが好ましい。同様に、下部気体噴出ノズル20の先端から気体の衝突点までの距離も同じ範囲内であることが好ましい。各ノズル先端から気体の衝突点までの距離Lを10mm以上45mm以下の範囲内とすることで、金属帯24から各気体噴出ノズルが離れるので、金属帯24の振動の影響を受けづらくなるとともに、各ロールと金属帯24とに挟まれる空間に気体を噴射させやすくなる。なお、各ノズル先端と気体の衝突点までの距離Lは、15mm以上30mm以下の範囲内であることがより好ましい。上部気体噴出ノズル18の先端から気体の衝突点までの距離Lは、各気体噴出ノズル18、20における気体噴出方向におけるスリットノズル30の先端から金属帯24までの距離である。
【0022】
以上、説明したように本実施形態に係る液体等塗布装置10は、上部気体噴出ノズル18と、下部気体噴出ノズル20と、を有し、塗装金属帯の製造時において、上部気体噴出ノズル18および下部気体噴出ノズル20から各ロールと金属帯24とに挟まれる空間に空気を噴出させて、当該空間のメニスカスを各ロール26、28側に飛散させる。このように、メニスカスを各ロール26、28側に飛散させることで、金属帯24に斑点や線材模様といった外観不良が生じさせることなくリビングの発生を抑制でき、これにより、良好な塗布外観の金属帯24の製造が実現できる。
【実施例
【0023】
次に実施例を説明する。本発明例として、図1に示した液体等塗布装置10を用いて塗装金属帯を製造した。この製造方式を方式Aとする。これに対して、比較例として、特許文献1に開示された高速の気流を鋼板に垂直に吹き付けるエアーワイパーを有する塗布装置を用いて塗装金属帯を製造した。この製造方式を方式Bとする。さらに比較例として、特許文献2に開示されたロールコーター出側の液溜り部に接触する線材を有する塗布装置を用いて塗装金属帯を製造した。この製造方式を方式Cとする。
【0024】
これら3つの方式を用いて、板厚0.3mm、幅が1000mmの鋼板(金属帯)に水に酸化マグネシウム(MgO)の粉末を混合したスラリーを塗布した塗装金属帯を、搬送速度2500mm/sで製造した。スラリーの固形分濃度は10質量%である。ロールコーター装置の上部ロールおよび下部ロールのロール径は150mm、ニップ圧は3kg/cmである。また、ノズル先端と金属帯の衝突点までの距離が15mmとなる位置に上部気体噴出ノズルおよび下部気体噴出ノズルを設け、これらの気体噴射ノズルから空気を金属帯の塗膜に噴射させて塗装金属帯を製造した。上部気体噴出ノズルおよび下部気体噴出ノズルからの気体噴出条件と、製造された塗装金属帯における液体等の飛散状況および塗膜の外観評価の結果を下記表1、2に示す。表1は上部気体噴出ノズルの噴出条件と、製造された塗装鋼板の上面側の外観評価結果を示し、表2は、下部気体噴出ノズルの気体噴出条件と、製造された塗装金属帯の下面側の外観評価結果を示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
表1、2における「角度」の列に示した値は、各気体噴出ノズルの気体噴出方向と金属帯の塗布面とがなす鋭角である。「圧力」の列に示した値は、気体噴出ノズルから噴射する空気の噴射圧力である。また、表1、2における「飛散」の列に記載したのは、製造された塗装金属帯の飛散の評価結果であり、その評価基準は下記の通りである。
◎:液体等の飛散が全く発生していない。
○:液体等の飛散が僅かに発生しているが、飛散による凹凸が認識できない程度である。
×:液体等の飛散が僅かに発生しているが、飛散による凹凸が認識できる。
【0028】
さらに、表1、2における「外観」の「評価」の列に記載したのは、塗装鋼板の外観の評価結果である。「評価」の列に記載した評価基準は以下の通りである。
◎:外観欠陥が全く発生していない。
○:外観欠陥が僅かに発生しているが、欠陥による凹凸が認識できない程度である。
×:外観欠陥が発生しており、欠陥による凹凸が認識できる。
【0029】
表1、2に示すように、発明例1~30の塗装金属帯では、飛散が◎または○、外観も◎または○となり、飛散および外観において、凹凸が認識できる程度の飛散や欠陥は発生しなかった。一方、方式Bを用いた場合には、凹凸が認識できる程度の大きな飛散や外観欠陥が発生した。さらに、方式Cを用いた場合には、凹凸が認識できる程度の大きな外観欠陥が発生した。これらの結果から、本実施形態に係る液体等塗布装置10を用いることで、飛散を抑制しながら、良好な塗布外観の塗装金属帯の製造が実現できることが確認された。
【0030】
また、発明例2~4、7~9、12~14、17~19、22~24と、発明例27~29との比較から、上部気体噴出ノズルおよび下部気体噴出ノズルの気体噴出方向と金属帯の塗布面とがなす鋭角は5°以上40°以下の範囲内とすることが好ましいことがわかる。なお、上記鋭角を10°未満にすると、金属帯の振動の影響を受ける懸念があることから、上部気体噴出ノズルおよび下部気体噴出ノズルの気体噴出方向と鋼板の塗布面とがなす鋭角は10°以上40°以下の範囲内とすることがさらに好ましいことがわかる。
【0031】
さらに、気体噴出ノズルから噴射する気体の噴射圧力を2kPa以下とするとリビングの消失効果が低下する傾向が確認され、10kPa以上とすると外観欠陥(斑点)が発生する傾向が確認された。この結果から、気体噴出ノズルから噴射する気体の噴射圧力は3kPa以上9kPa以下とすることが好ましく、4kPa以上8kPa以下とすることがさらに好ましいことがわかる。
【符号の説明】
【0032】
10 液体等塗布装置
12 上部液体等噴出ノズル
14 下部液体等噴出ノズル
16 ロールコーター装置
18 上部気体噴出ノズル
20 下部気体噴出ノズル
22 液体等
24 金属帯
26 上部ロール
28 下部ロール
30 スリットノズル
図1
図2