(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】濃縮装置及び濃縮方法
(51)【国際特許分類】
C12M 3/06 20060101AFI20231114BHJP
C12M 1/12 20060101ALI20231114BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20231114BHJP
C12M 1/02 20060101ALI20231114BHJP
B01D 33/00 20060101ALI20231114BHJP
B01D 33/15 20060101ALI20231114BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
C12M3/06
C12M1/12
C12M1/26
C12M1/02 A
B01D33/00 Z
B01D33/22
B01D39/20 A
B01D39/20 Z
(21)【出願番号】P 2021545140
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(86)【国際出願番号】 JP2020027448
(87)【国際公開番号】W WO2021049163
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2019163759
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 孝志
(72)【発明者】
【氏名】北村 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】仕子 正倫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝
(72)【発明者】
【氏名】村田 諭
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/037461(WO,A1)
【文献】特開2010-172251(JP,A)
【文献】国際公開第2017/191768(WO,A1)
【文献】特開2016-220590(JP,A)
【文献】国際公開第2019/059279(WO,A1)
【文献】特開2019-092393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
B01D 33/
B01D 39/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を含む液体を濃縮する濃縮装置であって、
底部、および前記底部の外周から上方へ突設する側壁を有し、前記対象物を含む前記液体を貯留する容器と、
前記底部に面する
第1主面、および前記第1主面に対向する第2主面を有する板状のフィルタであって、前記第1主面と前記第2主面とが前記容器の前記側壁に対して交差するように前記容器内に配置されるフィルタと、
前記フィルタの位置を制御する位置制御部と、
前記フィルタの前記第1主面よりも下方において前記容器の前記側壁に設けられ、且つ前記容器の内部に連通する1つ又は複数の供給流路と、
前記フィルタの前記第2主面よりも上方において前記容器の
前記側壁に設けられ、且つ前記容器の内部と外部とを連通する1つ又は複数の排出流路と、
を備え、
前記1つ又は複数の供給流路は、前記フィルタの前記第1主面より下方で前記対象物を含む前記液体を前記容器の内部に供給し、
前記1つ又は複数の排出流路は、前記フィルタ
の前記第2主面より上方で前記容器の内部の前記液体を前記容器の外部に排出する、
濃縮装置。
【請求項2】
さらに、
前記フィルタと前記容器の内壁との間をシールするシール部、
を備える、請求項1に記載の濃縮装置。
【請求項3】
さらに、
前記フィルタを保持する枠体を備え、
前記枠体は、第1ハウジングと、前記第1ハウジングと勘合する第2ハウジングと、を有し、
前記フィルタは、前記第1ハウジングと、前記第2ハウジングとによって挟持される、
請求項1又は2に記載の濃縮装置。
【請求項4】
前記第1ハウジングの内壁には、第1ねじ部が設けられており、
前記第2ハウジングの外壁には、前記第1ねじ部に螺合する第2ねじ部が設けられており、
前記第1ねじ部と前記第2ねじ部とが締結することによって、前記フィルタが前記第1
ハウジングと前記第2ハウジングとによって挟持される、
請求項3に記載の濃縮装置。
【請求項5】
さらに、
前記位置制御部が取り付けられる取り付け部材を備え、
前記シール部は、前記フィルタの外周部及び前記取り付け部材の外周部を挟持するガスケットである、
請求項2に記載の濃縮装置。
【請求項6】
さらに、
前記フィルタを保持する枠体を備え、
前記フィルタは、金属及び金属酸化物のうち少なくともいずれかを主成分とし、
前記枠体は、前記フィルタを磁力で保持する磁石を有する、
請求項1又は2に記載の濃縮装置。
【請求項7】
さらに、
前記フィルタを保持する枠体を備え、
前記フィルタは、接着剤によって前記枠体に固定されている、
請求項1又は2に記載の濃縮装置。
【請求項8】
前記容器に前記液体が貯留されている状態において、前記フィルタの下部に気体層を有する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の濃縮装置。
【請求項9】
前記位置制御部は、前記フィルタを上下移動させる、及び/又は前記フィルタを回転させる、
請求項1~8のいずれか一項に記載の濃縮装置。
【請求項10】
さらに、
前記位置制御部に取り付けられる撹拌器を備える、
請求項1~9のいずれか一項に記載の濃縮装置。
【請求項11】
前記位置制御部は、アクチュエータと、前記アクチュエータと前記フィルタとを接続するシャフトと、前記シャフトのうち前記容器から露出する部分を覆うカバーと、を備える、
請求項1~10のいずれか一項に記載の濃縮装置。
【請求項12】
前記供給流路に接続される供給タンクと、
前記供給タンクに接続され、前記供給タンクに洗浄液を供給する洗浄水流路と、
を備える、請求項
1~11のいずれか一項に記載の濃縮装置。
【請求項13】
前記洗浄水流路は、前記容器の側壁に接続される、
請求項
12に記載の濃縮装置。
【請求項14】
前記容器の下部に設けられ、且つ前記容器の内部と連通する回収流路を備え、
前記回収流路は、前記容器の内部の前記対象物を含む前記液体を回収する、
請求項1~
13のいずれか一項に記載の濃縮装置。
【請求項15】
前記回収流路は、前記容器の底部に設けられ、
前記容器の底部には、前記回収流路に向かって傾斜する傾斜部が設けられている、
請求項
14に記載の濃縮装置。
【請求項16】
さらに、
前記容器に設けられ、且つ前記容器の内部の液量を示す目盛りを備える、
請求項1~
15のいずれか一項に記載の濃縮装置。
【請求項17】
請求項1~
16のいずれかに記載の濃縮装置のうち2つ以上の濃縮装置と、
前記2つ以上の濃縮装置を接続する1つ又は複数の接続流路と、
を備える、濃縮システム。
【請求項18】
濃縮装置によって対象物を含む液体を濃縮する濃縮方法であって、
前記濃縮装置は、底部、および前記底部の外周から上方へ突設する側壁を有し、前記対象物を含む前記液体を貯留する容器と、前記液体に含まれる前記対象物を捕捉する第1主面、および前記第1主面に対向する第2主面を有する板状のフィルタであって、前記第1主面と前記第2主面とが前記容器の前記側壁に対して交差するように前記容器内に配置されるフィルタと、前記フィルタの位置を制御する位置制御部と、前記フィルタの前記第1主面よりも下方において前記容器の前記側壁に設けられ、且つ前記容器の内部に連通する1つ又は複数の供給流路と、前記フィルタの前記第2主面よりも上方において前記容器の前記側壁に設けられ、且つ前記容器の内部と外部とを連通する1つ又は複数の排出流路と、を備え、
前記濃縮方法は、
前記フィルタの前記第1主面より下方において、前記1つ又は複数の供給流路から前記容器
の内
部に前記対象物を含む
前記液体を
供給するステップ、
前記対象物を含む前記液体内において下方に向かって
前記フィルタを移動させるステップ、
前記フィルタを前記容器の上方に向かって移動させるステップ、
前記フィルタ
の前記第2主面より
上方において、前記1つ又は複数の排出流路から前記容器の外部に前記容器内の前記液体を排出するステップ、
前記容器内の前記対象物と前記液体とを回収するステップ、
を含む、濃縮方法。
【請求項19】
濃縮装置によって対象物を含む液体を濃縮する濃縮方法であって、
前記濃縮装置は、底部、および前記底部の外周から上方へ突設する側壁を有し、前記対象物を含む前記液体を貯留する容器と、前記液体に含まれる前記対象物を捕捉する第1主面、および前記第1主面に対向する第2主面を有する板状のフィルタであって、前記第1主面と前記第2主面とが前記容器の前記側壁に対して交差するように前記容器内に配置されるフィルタと、前記フィルタの位置を制御する位置制御部と、前記フィルタの前記第1主面よりも下方において前記容器の前記側壁に設けられ、且つ前記容器の内部に連通する1つ又は複数の供給流路と、前記フィルタの前記第2主面よりも上方において前記容器の前記側壁に設けられ、且つ前記容器の内部と外部とを連通する1つ又は複数の排出流路と、を備え、
前記濃縮方法は、
前記フィルタの前記第1主面より下方において、前記1つ又は複数の供給流路から前記容器
の内
部に前記対象物を含む
前記液体を
供給するステップ、
前記対象物を含む前記液体内において
前記フィルタを速度1mm/分以上で移動させるステップ、
前記フィルタ
の前記第2主面より
上方において、前記1つ又は複数の排出流路から前記容器内の前記液体を排出するステップ、
前記容器内の前記対象物と前記液体とを回収するステップ、
を含む、濃縮方法。
【請求項20】
濃縮装置によって対象物を含む液体を濃縮する濃縮方法であって、
前記濃縮装置は、底部、および前記底部の外周から上方へ突設する側壁を有し、前記対象物を含む前記液体を貯留する容器と、前記液体に含まれる前記対象物を捕捉する第1主面、および前記第1主面に対向する第2主面を有する板状のフィルタであって、前記第1主面と前記第2主面とが前記容器の前記側壁に対して交差するように前記容器内に配置されるフィルタと、前記フィルタの位置を制御する位置制御部と、前記フィルタの前記第1主面よりも下方において前記容器の前記側壁に設けられ、且つ前記容器の内部に連通する1つ又は複数の供給流路と、前記フィルタの前記第2主面よりも上方において前記容器の前記側壁に設けられ、且つ前記容器の内部と外部とを連通する1つ又は複数の排出流路と、を備え、
前記濃縮方法は、
前記フィルタの前記第1主面より下方において、前記1つ又は複数の供給流路から前記容器
の内
部に前記対象物を含む
前記液体を
供給するステップ、
前記対象物を含む前記液体内において
前記フィルタを速度1,000mm/分以下で移動させるステップ、
前記フィルタ
の前記第2主面より
上方において、前記1つ又は複数の排出流路から前記容器内の前記液体を排出するステップ、
前記容器内の前記対象物と前記液体とを回収するステップ、
を含む、濃縮方法。
【請求項21】
さらに、
前記液体内において、前記フィルタの
前記第1主面の下側に気体層を形成するステップ、
を含む、
請求項
18~
20のいずれか一項に記載の濃縮方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃縮装置及び濃縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、中空糸型分離膜が充填された細胞懸濁液処理器に、細胞懸濁液を通液させて、細胞濃縮液を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の濃縮方法では、対象物にかかる負担を軽減するという点で未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、対象物にかかる負担を軽減することができる濃縮装置及び濃縮方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の濃縮装置は、
対象物を含む液体を濃縮する濃縮装置であって、
前記対象物を含む前記液体を貯留する容器と、
前記容器内に配置されるフィルタと、
前記フィルタの位置を制御する位置制御部と、
を備える。
【0007】
本発明の一態様の濃縮方法は、
対象物を含む液体を濃縮する濃縮方法であって、
容器内に前記対象物を含む液体を導入するステップ、
前記対象物を含む前記液体内においてフィルタを移動させるステップ、
前記フィルタより上側に位置する前記容器内の前記液体を排出するステップ、
前記容器内の前記対象物と前記液体とを回収するステップ、
を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、対象物にかかる負担を軽減することができる濃縮装置及び濃縮方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る実施の形態1の濃縮装置の概念を説明する概略断面図である。
【
図2】本発明に係る実施の形態1の濃縮装置の一例の概略断面図である。
【
図3】本発明に係る実施の形態1のフィルタの一例の一部の概略斜視図である。
【
図4】
図3のフィルタの一部を厚み方向から見た概略図である。
【
図5】本発明に係る実施の形態1の濃縮方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明に係る実施の形態2の濃縮装置の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図7】本発明に係る実施の形態2の変形例の濃縮装置の構成を示す概略断面図である。
【
図8】本発明に係る実施の形態3の濃縮方法の一例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明に係る実施の形態3の濃縮装置において気体層を形成するステップの一例を示す概略断面図である。
【
図10】本発明に係る実施の形態4の濃縮方法の一例を示すフローチャートである。
【
図11】本発明に係る実施の形態4の濃縮装置においてフィルタを上下移動及び/又は回転させるステップの一例を示す概略図である。
【
図12】本発明に係る実施の形態5の濃縮装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図13】本発明に係る実施の形態6の濃縮装置の構成の一例の一部を示す概略断面図である。
【
図14】本発明に係る実施の形態6の濃縮装置の構成の一例の一部を下方向から見た概略図である。
【
図15】本発明に係る実施の形態7の濃縮装置の構成の一例の一部を示す概略断面図である。
【
図16】本発明に係る実施の形態7の濃縮装置の構成の一例の一部を分解した概略分解断面図である。
【
図17】本発明に係る実施の形態8の濃縮装置の構成の一例の一部を示す概略断面図である。
【
図18】本発明に係る実施の形態9の濃縮装置の構成の一例の一部を示す概略断面図である。
【
図19】本発明に係る実施の形態10の濃縮装置の構成の一例の一部を示す概略断面図である。
【
図20】本発明に係る実施の形態10の濃縮装置の構成の一例の一部を下方向から見た概略図である。
【
図21】本発明に係る実施の形態11の濃縮装置の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図22】本発明に係る実施の形態12の濃縮装置の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図23】本発明に係る実施の形態12の変形例の濃縮装置の構成を示す概略断面図である。
【
図24】本発明に係る実施の形態13の濃縮装置の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図25】本発明に係る実施の形態14の濃縮装置の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図26】本発明に係る実施の形態14の変形例の濃縮装置の構成を示す概略断面図である。
【
図27】本発明に係る実施の形態15の濃縮装置の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図28】本発明に係る実施の形態16の濃縮装置の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図31】本発明に係る実施の形態17の濃縮装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図32】本発明に係る実施の形態18の濃縮装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図33】本発明に係る実施の形態18の濃縮方法の一例を示すフローチャートである。
【
図34】本発明に係る実施の形態19の濃縮システムの構成の一例を示す概略図である。
【
図35】実施例1における濃縮処理後のフィルタの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明に至った経緯)
特許文献1に記載の細胞濃縮液の製造方法では、中空糸型分離膜が充填された細胞懸濁液処理器に対し、細胞懸濁液を導入口より通液し、濾過液を排出しながら細胞懸濁液を濃縮している。
【0011】
しかしながら、細胞懸濁液処理器に対して細胞懸濁液を通液させるために、対象物である細胞に強い力が加わる。また、細胞懸濁液を通液させるために、ポンプなどの加圧機構又は引圧機構が必要である。また、細胞懸濁液の濃縮倍率を調整することができない。
【0012】
本発明者らは、鋭意検討した結果、容器内に貯留された対象物を含む液体に対してフィルタを移動させることによって、対象物を含む液体を濃縮することを見出し、以下の発明に至った。
【0013】
本発明の一態様の濃縮装置は、
対象物を含む液体を濃縮する濃縮装置であって、
前記対象物を含む前記液体を貯留する容器と、
前記容器内に配置されるフィルタと、
前記フィルタの位置を制御する位置制御部と、
を備える。
【0014】
このような構成により、対象物にかかる負担を低減することができる。
【0015】
前記濃縮装置において、前記フィルタと前記容器の内壁との間をシールするシール部を備えてもよい。
【0016】
このような構成により、フィルタと容器の内壁との間を、対象物が通過することを抑制することができる。
【0017】
前記濃縮装置において、前記フィルタを保持する枠体を備え、
前記枠体は、第1ハウジングと、前記第1ハウジングと勘合する第2ハウジングと、を有し、
前記フィルタは、前記第1ハウジングと、前記第2ハウジングとによって挟持されてもよい。
【0018】
このような構成により、フィルタの撓み及び/又は皺が生じることを抑制することができる。
【0019】
前記濃縮装置において、前記第1ハウジングの内壁には、第1ねじ部が設けられており、
前記第2ハウジングの外壁には、前記第1ねじ部に螺合する第2ねじ部が設けられており、
前記第1ねじ部と前記第2ねじ部とが締結することによって、前記フィルタが前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとによって挟持されてもよい。
【0020】
このような構成により、フィルタへの負担を低減すると共に、フィルタの交換が容易となる。
【0021】
前記濃縮装置において、前記位置制御部が取り付けられる取り付け部材を備え、
前記シール部は、前記フィルタの外周部及び前記取り付け部材の外周部を挟持するガスケットであってもよい。
【0022】
このような構成により、装置の構成要素を減らしつつ、フィルタと容器の内壁との間のシール性を向上させることができる。
【0023】
前記濃縮装置において、前記フィルタを保持する枠体を備え、
前記フィルタは、金属及び金属酸化物のうち少なくともいずれかを主成分とし、
前記枠体は、前記フィルタを磁力で保持する磁石を有していてもよい。
【0024】
このような構成により、フィルタの交換をより容易にすることができる。
【0025】
前記濃縮装置において、前記フィルタを保持する枠体を備え、
前記フィルタは、接着剤によって前記枠体に固定されていてもよい。
【0026】
このような構成により、装置の構成要素を減らしつつ、フィルタを枠体に強固に固定することができる。
【0027】
前記濃縮装置において、前記容器に前記液体が貯留されている状態において、前記フィルタの下部に気体層を有していてもよい。
【0028】
このような構成により、フィルタと容器の内壁との間から対象物が漏れることを抑制することができる。
【0029】
前記濃縮装置において、前記位置制御部は、前記フィルタを上下移動させる、及び/又は前記フィルタを回転させてもよい。
【0030】
このような構成により、フィルタに付着した対象物を剥離させることができ、対象物の回収率を向上させることができる。
【0031】
前記濃縮装置において、前記位置制御部に取り付けられる撹拌器を備えていてもよい。
【0032】
このような構成により、フィルタの目詰まりを低減し、対象物の回収率を向上させることができる。
【0033】
前記濃縮装置において、前記位置制御部は、アクチュエータと、前記アクチュエータと前記フィルタとを接続するシャフトと、前記シャフトのうち前記容器から露出する部分を覆うカバーと、を備えていてもよい。
【0034】
このような構成により、無菌閉鎖系を構成することができる。
【0035】
前記濃縮装置において、前記容器の側壁に設けられ、且つ前記容器の内部と外部とを連通する1つ又は複数の排出流路を備え、
前記1つ又は複数の排出流路は、前記容器の内部の前記液体を前記容器の外部に排出してもよい。
【0036】
このような構成により、容器内から液体を容易に排出することができる。
【0037】
前記濃縮装置において、前記容器の側壁に設けられ、且つ前記1つ又は複数のいずれの排出流路より下方で、前記容器の内部に連通する1つ又は複数の供給流路を備え、
前記1つ又は複数の供給流路は、前記対象物を含む前記液体を前記容器の内部に供給してもよい。
【0038】
このような構成により、容器内へ液体を容易に供給することができる。
【0039】
前記濃縮装置において、前記供給流路に接続される供給タンクと、
前記供給タンクに接続され、前記供給タンクに洗浄液を供給する洗浄水流路と、
を備えていてもよい。
【0040】
このような構成により、供給タンク及び供給流路の残液を低減することができる。
【0041】
前記濃縮装置において、前記洗浄水流路は、前記容器の側壁に接続されていてもよい。
【0042】
このような構成により、容器の内壁などに付着した対象物を剥離させることができ、回収率を向上させることができる。
【0043】
前記濃縮装置において、前記容器の下部に設けられ、且つ前記容器の内部と連通する回収流路を備え、
前記回収流路は、前記容器の内部の前記対象物を含む前記液体を回収してもよい。
【0044】
このような構成により、容器内の対象物を含む液体を容易に回収することができる。
【0045】
前記濃縮装置において、前記回収流路は、前記容器の底部に設けられ、
前記容器の底部には、前記回収流路に向かって傾斜する傾斜部が設けられていてもよい。
【0046】
このような構成により、回収率を向上させることができる。
【0047】
前記濃縮装置において、前記容器に設けられ、且つ前記容器の内部の液量を示す目盛りを備えていてもよい。
【0048】
このような構成により、容器内の液体の液量を容易に知ることができる。
【0049】
本発明の一態様の濃縮システムは、
前記態様の濃縮装置のうち2つ以上の濃縮装置と、
前記2つ以上の濃縮装置を接続する1つ又は複数の接続流路と、
を備える。
【0050】
このような構成により、対象物にかかる負担を低減しつつ、対象物を分画回収することができる。
【0051】
本発明の一態様の濃縮方法は、
対象物を含む液体を濃縮する濃縮方法であって、
容器内に前記対象物を含む液体を導入するステップ、
前記対象物を含む前記液体内においてフィルタを移動させるステップ、
前記フィルタより上側に位置する前記容器内の前記液体を排出するステップ、
前記容器内の前記対象物と前記液体とを回収するステップ、
を含む。
【0052】
このような構成により、対象物にかかる負担を低減することができる。
【0053】
前記濃縮方法において、前記液体内において、前記フィルタの下側に気体層を形成するステップを含んでいてもよい。
【0054】
このような構成により、フィルタと容器の内壁との間から対象物が漏れることを抑制することができる。
【0055】
以下、本発明に係る実施の形態1について、添付の図面を参照しながら説明する。また、各図においては、説明を容易なものとするため、各要素を誇張して示している。
【0056】
(実施の形態1)
[概念]
まず、本発明を説明する前に、本発明の概念について説明する。
【0057】
図1は、本発明に係る実施の形態1の濃縮装置1の概念を説明する概略断面図である。図中のX、Y、Z方向は、それぞれ濃縮装置1の縦方向、横方向、高さ方向を示している。
図1に示すように、濃縮装置1は、容器10と、フィルタ20と、を備える。
【0058】
容器10には、対象物2を含む液体3が貯留されている。フィルタ20は、容器10の液体3内に配置されている。濃縮装置1においては、フィルタ20を液体3中を下方向に移動させることによって、対象物2を含む液体を濃縮する。
【0059】
これにより、ポンプなどの液体に直接的に力を加えずに濃縮することができる。また、フィルタ20を下方向に移動させる場合、フィルタ20に設けられた貫通孔から液体3が上方向に移動するため、対象物2に加わる力が低減される。即ち、対象物にかかる負担を軽減することができる。
【0060】
また、ポンプなどの加圧機構又は引圧機構を使用しなくても、濃縮することができるため、小型化を実現することができる。また、フィルタ20の位置を制御することによって、濃縮倍率を容易に調整することができる。
【0061】
なお、本明細書において、「対象物」とは、濃縮される液体に含まれる対象物を意味している。例えば、対象物は、液体に含まれる生物由来物質であってもよい。「生物由来物質」とは、細胞(真核生物)、細菌(真性細菌)、ウィルス等の生物に由来する物質を意味する。細胞(真核生物)としては、例えば、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、ES細胞、幹細胞、間葉系幹細胞、単核球細胞、単細胞、細胞塊、浮遊性細胞、接着性細胞、神経細胞、白血球、再生医療用細胞、自己細胞、がん細胞、血中循環がん細胞(CTC)、HL-60、HELA、菌類を含む。細菌(真性細菌)としては、例えば、大腸菌、結核菌を含む。「液体」とは、例えば、電解質溶液、細胞懸濁液、細胞培養培地、などである。
【0062】
次に、本発明に係る実施の形態1の濃縮装置の一例について説明する。
【0063】
[全体構成]
図2は、本発明に係る実施の形態1の濃縮装置1Aの一例の概略断面図である。
図2に示すように、濃縮装置1Aは、容器10、フィルタ20、及び位置制御部30を備える。
【0064】
<容器>
容器10は、対象物2を含む液体3を貯留する容器である。実施の形態1では、容器10は、有底の円筒形状を有している。具体的には、容器10は、円板状の底部と、底部の外周から上方に突設する側壁と、を有する。また、容器10の上部には、開口11が設けられている。開口11は、対象物2を含む液体3が導入される導入口として機能する。また、開口11は、液体4を排出する排出口としても機能する。なお、液体4は、フィルタ20を通過し、フィルタ20よりも上側に位置する液体である。
【0065】
実施の形態1では、対象物2は細胞であり、液体3は細胞懸濁液である。
【0066】
<フィルタ>
フィルタ20は、液体3に含まれる対象物2が捕捉される第1主面PS1と、第1主面PS1に対向する第2主面PS2とを有する板状構造体である。フィルタ20は、金属製フィルタである。具体的には、フィルタ20は、金属及び金属酸化物のうち少なくともいずれかを主成分とする。フィルタ20は、例えば、円板形状を有する。
【0067】
フィルタ20は、容器10の内部に配置される。フィルタ20は、フィルタ20の厚み方向が容器10の高さ方向と等しくなるように、配置されている。言い換えると、フィルタ20の第1主面PS1及び第2主面PS2は、容器10の内壁に対して交差するように配置されている。
【0068】
フィルタ20の外径は、容器10の内径と略等しい。ここで、「略等しい」とは、フィルタ20が容器10の内部を移動可能な隙間を有していてもよいことを意味する。当該隙間は、対象物2が通過できない程度の大きさである。この様な当該隙間を設けることで、フィルタ20が移動する際の容器10との摩擦を低減し、かつ、細胞懸濁液へ加わる力も低減できるため細胞への負担が低減される。
【0069】
図3は、本発明に係る実施の形態1のフィルタ20の一例の一部の概略斜視図である。
図4は、
図3のフィルタ20の一部を厚み方向から見た概略図である。なお、
図3及び
図4は、フィルタ20の一部を拡大して示している。
図3及び
図4に示すように、フィルタ20は、複数の貫通孔21を有するフィルタ基体部22を備える。
【0070】
複数の貫通孔21は、フィルタ基体部22において、フィルタ20の第1主面PS1及び第2主面PS2上に周期的に配置されている。具体的には、複数の貫通孔21は、フィルタ基体部22においてマトリクス状に等間隔で設けられている。
【0071】
実施の形態1では、貫通孔21は、フィルタ20の第1主面PS1側、即ちZ方向から見て、正方形の形状を有する。なお、貫通孔21は、フィルタ20の厚み方向(Z方向)から見た形状が正方形に限定されず、例えば長方形、多角形、円形、又は楕円などの形状であってもよい。
【0072】
実施の形態1では、フィルタ20の第1主面PS1に対して垂直な面に投影した貫通孔21の形状(断面形状)は、長方形である。具体的には、フィルタ20の縦方向(X方向)及び横方向(Y方向の)における貫通孔21の一辺の長さは、フィルタ20の厚み方向(Z方向)における貫通孔21の深さよりも長い。なお、貫通孔21の断面形状は、長方形に限定されず、例えば、平行四辺形又は台形等のテーパー形状であってもよいし、対称形状であってもよいし、非対称形状であってもよい。
【0073】
実施の形態1では、複数の貫通孔21は、フィルタ20の第1主面PS1側(Z方向)から見て正方形の各辺と平行な2つの配列方向、即ち
図3中のX方向とY方向に等しい間隔で設けられている。このように、複数の貫通孔21を正方格子配列で設けることによって、開口率を高めることが可能であり、フィルタ20に対する液体の通過抵抗を低減することができる。このような構成により、濃縮の時間を短くし、対象物2へのストレスを低減することができる。
【0074】
なお、複数の貫通孔21の配列は、正方格子配列に限定されず、例えば、準周期配列、又は周期配列であってもよい。周期配列の例としては、方形配列であれば、2つの配列方向の間隔が等しくない長方形配列でもよく、三角格子配列又は正三角格子配列などであってもよい。なお、貫通孔21は、フィルタ基体部22に複数設けられていればよく、配列は限定されない。
【0075】
複数の貫通孔21の間隔bは、対象物2である細胞の種類(大きさ、形態、性質、弾性)又は量に応じて適宜設計されるものである。ここで、貫通孔21の間隔bとは、
図4に示すように、貫通孔21をフィルタ20の第1主面PS1側から見て、任意の貫通孔21の中心と隣接する貫通孔21の中心との距離を意味する。周期配列の構造体の場合、貫通孔21の間隔bは、例えば、貫通孔21の一辺dの1倍より大きく10倍以下であり、好ましくは貫通孔21の一辺dの3倍以下である。あるいは、例えば、フィルタ20の開口率は、10%以上であり、好ましくは開口率は、25%以上である。このような構成により、フィルタ20に対する液体の通過抵抗を低減することができる。そのため、処理時間を短くすることができ、細胞へのストレスを低減することができる。なお、開口率とは、(貫通孔21が占める面積)/(貫通孔21が空いていないと仮定したときの第1主面PS1の投影面積)で計算される。
【0076】
フィルタ20の外径は、容器10の内径に応じて設計される。実施の形態1では、容器10の内径は20.00mmであるのに対し、フィルタ20の外径は、例えば、19.95mmである。
【0077】
フィルタ20の厚みは、貫通孔21の大きさ(一辺d)の0.1倍より大きく100倍以下が好ましい。より好ましくは、フィルタ20の厚みは、貫通孔21の大きさ(一辺d)の0.5倍より大きく10倍以下である。このような構成により、液体に対するフィルタ20の抵抗を低減することができ、濃縮の時間を短くすることができる。その結果、対象物2へのストレスを低減することができる。
【0078】
フィルタ20において、対象物2と接触する第1主面PS1は、フラットである。具体的には、第1主面PS1の表面粗さが小さいことが好ましい。ここで、表面粗さとは、第1主面PS1の任意の5箇所において触針式段差計で測定された最大値と最小値の差の平均値を意味する。実施の形態1では、表面粗さは、対象物2の大きさより小さいことが好ましく、対象物2の大きさの半分より小さいことがより好ましい。言い換えると、フィルタ20の第1主面PS1上の複数の貫通孔21の開口が同一平面(XY平面)上に形成されている。また、貫通孔21が形成されていない部分であるフィルタ基体部22は、繋がっており、一体に形成されている。このような構成により、フィルタ20の表面(第1主面PS1)への対象物2の付着が低減され、液体3の抵抗を低減することができる。
【0079】
貫通孔21は、第1主面PS1側の開口と第2主面PS2側の開口とが連続した壁面を通じて連通している。具体的には、貫通孔21は、第1主面PS1側の開口が第2主面PS2側の開口に投影可能に設けられている。即ち、フィルタ20を第1主面PS1側から見た場合に、貫通孔21は、第1主面PS1側の開口が第2主面PS2側の開口と重なるように設けられている。実施の形態1において、貫通孔21は、その内壁が第1主面PS1及び第2主面PS2に対して垂直となるように設けられている。
【0080】
<位置制御部>
位置制御部30は、フィルタ20の位置を制御する。具体的には、位置制御部30は、容器10内に配置されたフィルタ20を容器10の底部に向かって移動させる。実施の形態1では、位置制御部30は、フィルタ20に接続されるシャフトである。具体的には、位置制御部30であるシャフトの一端が、フィルタ20の第2主面PS2側の中央に接続されている。シャフトの他端は、容器10の開口11から突出している。位置制御部30は、シャフトを容器10の底部に向かって移動させることによって、フィルタ20を下方向に移動させることができる。
【0081】
[動作]
濃縮装置1Aの動作(濃縮方法)の一例について
図5を用いて説明する。
図5は、本発明に係る実施の形態1の濃縮方法の一例を示すフローチャートである。
【0082】
図5に示すように、ステップST11において、容器10に対象物2を含む液体3を導入する。具体的には、容器10の開口11から対象物2を含む液体3を導入する。
【0083】
ステップST12において、フィルタ20を容器10内に配置する。具体的には、位置制御部30に接続されたフィルタ20を容器10内に配置する。
【0084】
ステップST13において、容器10内において、フィルタ20を移動させる。具体的には、位置制御部30がフィルタ20を容器10の底部に向かって移動させる。即ち、フィルタ20が容器10内の液体3中を下方向に移動する。フィルタ20が液体3内を下方向に移動することによって、フィルタ20の第1主面PS1側に対象物2が捕捉される。一方、液体3は、フィルタ20の貫通孔21を通過する。これにより、フィルタ20の第1主面PS1側には、対象物2を含む液体3が位置し、第2主面PS2側には、対象物2を含まない液体4が位置する。
【0085】
ステップST14において、フィルタ20より上側に位置する液体4を排出する。具体的には、容器10の開口11からピペットなどを用いて、フィルタ20の第2主面PS2より上側に位置する液体4を排出する。このように、フィルタ20の位置を制御し、フィルタ20の第2主面PS2より上側に位置する液体4を排出することによって、容器10内部に残る対象物2を含む液体3の液量を制御することができる。即ち、フィルタ20の位置を制御し、フィルタ20の第2主面PS2より上側に位置する液体4を排出することによって、濃縮倍率を制御することができる。また、吸引ポンプなどに比べて吸引圧力が小さなピペットを用いることができるため、液体3や液体4に加わる力を低減し、細胞への負担を低減できる。
【0086】
ステップST15において、容器10内の対象物2を含む液体3を回収する。具体的には、容器10内部からフィルタ20を取り出し、ピペットなどを用いて開口11から対象物2を含む液体3を回収する。
【0087】
このように、実施の形態1では、ステップST11~ST15を実施することによって、対象物2を含む液体3を濃縮することができる。
【0088】
[効果]
実施の形態1に係る濃縮装置1Aによれば、以下の効果を奏することができる。
【0089】
濃縮装置1Aは、対象物2を含む液体3を濃縮する濃縮装置であって、容器10、フィルタ20、及び位置制御部30を備える。容器10は、対象物2を含む液体3を貯留する。フィルタ20は、容器10内に配置される。位置制御部30は、フィルタ20の位置を制御する。このような構成により、対象物2にかかる負担を軽減しつつ、対象物2を含む液体3を濃縮することができる。具体的には、濃縮装置1Aでは、液体3に直接力を加えることなく、フィルタ20の移動によって液体3をフィルタ20に通液させている。このため、対象物2に加わる力が低減される。さらに、フィルタ20に対して通液を高めるための前処理を行っておくことにより、ステップST13における通液をさらに早く行うことができる。前処理方法としては、例えば、エタノール溶液にフィルタ20を浸漬して親水化した後、PBSで洗浄する方法がある。
【0090】
また、濃縮装置1Aは、ポンプなどの加圧機構又は引圧機構を備えなくても、対象物2を含む液体3を濃縮することができるため、装置の小型化が可能となる。
【0091】
また、濃縮装置1Aは、フィルタ20の位置を制御することによって、対象物2を含む液体3の濃縮倍率を容易に制御することができる。
【0092】
駆動方法に関わらず、フィルタ20の移動速度は制御されていることが好ましい。繰り返し操作を行っても、濃縮倍率などの結果を一定の水準に保つことができるからである。特に対象物2が生物由来物質の様に活性に関わる場合、操作時間を短縮して活性を維持するため、フィルタ20の移動速度は速い方が好ましい場合がある。この場合、フィルタ20の移動速度は、1mm/分以上が好ましい。液体3が6ウェルプレートで扱う液量2mlであっても、活性を維持しやすい60分以内で操作できるからである。さらに活性を維持しやすくするためには、より好ましくは、フィルタ20の移動速度は2mm/分以上である。
【0093】
一方、容器10内の圧力を高めないため、フィルタ20の移動速度は遅い方が好ましい場合がある。この場合、フィルタ20の移動速度は1,000mm/分以下が好ましい。容器10内の圧力が瞬間的に上昇せず、対象物2が生物由来物質の様に活性に関わる場合、活性に対する内圧上昇の影響を排除できるためである。さらには、貫通孔21の大きさが30μm以下のとき、フィルタ20の移動速度は500mm/分以下が好ましい。貫通孔21の大きさが小さいフィルタの圧力損失は高いため、貫通孔21が30μm以下のときには容器10内の圧力上昇が大きくなってしまうことがある。貫通孔21の大きさが30μm以下のとき、フィルタ20の移動速度を500mm/分以下とすれば、容器10内の瞬間的な圧力上昇を低減でき、さらに活性を維持しやすくなる。
【0094】
なお、実施の形態1では、対象物2を含む液体3を濃縮する例について説明したが、これに限定されない。例えば、液体3には2種類以上の対象物が含まれており、フィルタ20によって大きさをふるい分けてもよい。濃縮装置1Aを使用することで、分画と濃縮とをおこなうことができる。
【0095】
実施の形態1では、容器10が有底の円筒形状を有している例について説明したが、これに限定されない。容器10の形状は、有底の筒形状であればよい。例えば、容器10は、多角形、楕円形、ひし形などの形状であってもよい。
【0096】
実施の形態1では、開口11が対象物2を含む液体3が導入される導入口として機能すると共に、液体4を排出する排出口として機能する例について説明したが、これに限定されない。例えば、導入口及び排出口は、容器10の側壁に設けられてもよい。この場合、開口11は設けられなくてもよい。
【0097】
実施の形態1では、フィルタ20が円板形状を有する例について説明したが、これに限定されない。フィルタ20は、容器10の内部を移動可能な形状を有していればよい。また、フィルタ20の形状は、容器10の内部の形状と略等しければよい。例えば、容器10の内部の形状が多角形である場合、フィルタ20の形状も多角形であればよい。
【0098】
実施の形態1では、濃縮装置1Aが1つのフィルタ20を備える例について説明したが、これに限定されない。濃縮装置1Aは、複数のフィルタ20を備えていてもよい。例えば、濃縮装置1Aは、容器10の高さ方向に並べて配置される複数のフィルタ20を備えていてもよい。この場合、複数のフィルタ20の貫通孔21の大きさは、それぞれ異なっていてもよい。例えば、複数のフィルタの貫通孔の大きさが異なり、液体3には2種類以上の対象物が含まれている場合、対象物の大きさを段階的にふるい分けることができる。あるいは、複数のフィルタ20は、同一平面に並べて配置されてもよい。
【0099】
実施の形態1では、フィルタ20の第1主面PS1がフラットである例について説明したが、これに限定されない。例えば、フィルタ20の第1主面PS1は、撓んでいてもよいし、波形状を有していてもよい。このような構成により、液体3の圧力を逃がすことができる。
【0100】
実施の形態1では、位置制御部30が1つのシャフトである例について説明したが、これに限定されない。位置制御部30は、フィルタ20を移動させる機構を有していればよい。例えば、位置制御部30は、複数のシャフトを備えていてもよい。この場合、複数のシャフトでフィルタ20の第2主面PS2を支持することができるため、フィルタ20の撓みを低減することができる。あるいは、位置制御部30は、筒状の部材を備えてもよい。例えば、筒状の部材は、フィルタ20の外周に接続されることによって、フィルタ20の端部を支持することができる。これにより、フィルタ20の撓みをより低減することができる。あるいは、位置制御部30は、ばねを備えていてもよい。
【0101】
実施の形態1では、フィルタ20の主面の中心にシャフトが接続された例について説明したが、これに限定されない。シャフトはフィルタ20と直接的または間接的に接続されていれば良い。例えば、シャフトはフィルタ20の主面の中心からずれた位置に接続されても良い。フィルタ20の中心部は最も通液量が多いため、シャフトの接続位置をフィルタ20の主面の中心からずらすことによって、通液への阻害を低減し、結果として作業時間を短くすることができる。その場合、フィルタ20の主面の中心から等距離の円周上に等間隔で複数のシャフトが設置されることが好ましい。
【0102】
あるいは、フィルタ20を移動させる機構は、アクチュエータ、容器10の外部からの磁力、圧力ガス(マイクロポンプ)などで実現してもよい。
【0103】
実施の形態1では、濃縮装置1Aは、フィルタ20の位置を検知する位置センサ、容器10内の流量を検知する流量センサ、及び/又は容器10内部の圧力を検知する圧力センサを備えていてもよい。これらのセンサの検知結果に基づいて、位置制御部30を制御することによって、対象物2に加わる力をより低減すること、及び濃縮倍率を精度高く制御することができる。
【0104】
実施の形態1では、ステップST13においてフィルタ20が容器10の底部に向かって移動する例について説明したが、これに限定されない。フィルタ20は容器10の上方に向かって一時的に移動してもよい。フィルタ20を容器10の上方に向かって移動させることで、貫通孔21を通じて液体4がフィルタ20の下方へ移動する。このとき、フィルタ20に付着した対象物を液体3へ離すことができる。従って、ステップST15での回収において、多くの対象物2を回収することができる。より好ましくは、ステップST13における最終作業において、フィルタ20を容器10の上方に向かって僅かに移動させるのがよい。ステップST15での回収において、さらに多くの対象物2を回収することができる。このとき、上方に向かって移動させる距離は、回収量を向上させるためにフィルタ20の厚み以上がよく、また、排出液量を大幅に減少させないために数cm以下が好ましい。具体的には、フィルタ20を容器10の上方に向かって僅かに移動させるときの移動量は、0.02mm以上30mm以下がよい。また、フィルタ20の上下移動は、非等速(例えば、脈動)であってもよい。これにより、フィルタ20の目詰まりをさらに低減することができる。
【0105】
(実施の形態2)
本発明に係る実施の形態2の濃縮装置について説明する。
【0106】
実施の形態2では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態2においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0107】
実施の形態2では、シール部を備える点で、実施の形態1と異なる。
【0108】
図6は、本発明に係る実施の形態2の濃縮装置1Bの構成の一例の一部を示す概略断面図である。
図6に示すように、濃縮装置1Bは、シール部40を備える。
【0109】
<シール部>
シール部40は、フィルタ20と容器10の内壁との間をシールする。具体的には、シール部40は、フィルタ20の外周部に取り付けられている。シール部40は、可塑性材料又は中空材で形成されている。シール部40は、例えば、パッキン、ガスケットなどである。
【0110】
このような構成により、フィルタ20と容器10の内壁との間を、対象物2が通過することを抑制することができる。シール部40が可塑性材料(例えば、ゴムなどの弾性体)で形成されている場合、フィルタ20と容器10の内壁との間のシール性を高くすることができ、対象物2が漏れることをより低減することができる。シール部40が中空材で形成されている場合、フィルタ20の移動の際に、フィルタ20と容器10の内壁との間の距離が変化しても、シール部40がフィットし易い。このため、フィルタ20を移動させやすくすると共に、対象物2の漏れを抑制することができる。
【0111】
なお、実施の形態2では、濃縮装置1Bが1つのフィルタ20を備える例について説明したが、これに限定されない。例えば、濃縮装置1Bは、複数のフィルタ20を備え、複数のフィルタ20のそれぞれにシール部40を配置してもよい。
【0112】
図7は、本発明に係る実施の形態2の変形例の濃縮装置1BAの構成を示す概略断面図である。
図7に示すように、濃縮装置1BAは、複数のフィルタ20A,20Bを備える。また、複数のフィルタ20A,20Bの外周には、それぞれ、シール部40が配置されている。これにより、複数のフィルタ20A,20Bと容器10の内壁との間のシール性を高めると共に、複数のフィルタ20A,20Bの移動を安定させることができる。その結果、対象物2の漏れをさらに抑制することができる。
【0113】
なお、濃縮装置1BAにおいて、複数のフィルタ20A,20Bは、同じ構成を有していてもよいし、異なる構成を有していてもよい。例えば、フィルタ20Aとフィルタ20Bの貫通孔の大きさが異なり、液体3には2種類以上の対象物が含まれている場合、フィルタ20Aとフィルタ20Bによって対象物の大きさをふるい分けることができる。フィルタ20Aの貫通孔の大きさが、フィルタ20Bの貫通孔の大きさより小さい場合、3つの領域に対象物を分画することができる。また、フィルタ20Bは厚み方向に通液可能な孔を1つ以上有する板材であってもよい。
【0114】
(実施の形態3)
本発明に係る実施の形態3の濃縮装置について説明する。
【0115】
実施の形態3では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態3においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態3では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0116】
実施の形態3では、気体層を形成する点で、実施の形態1と異なる。
【0117】
図8は、本発明に係る実施の形態3の濃縮方法の一例を示すフローチャートである。
図9は、本発明に係る実施の形態3の濃縮装置1Cにおいて気体層5を形成するステップST22の一例を示す概略図である。なお、
図8に示すステップST21,ST23~ST25は、それぞれ、
図5に示すステップST11,ST13~ST15と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0118】
図8に示すように、ステップST21において、対象物2を含む液体3を容器10に導入する。
【0119】
ステップST22において、液体3内において、フィルタ20の下側に気体層5を形成する。実施の形態3では、気体層5は、空気で形成されている。
【0120】
図9に示すように、濃縮装置1Cにおいて、フィルタ20を容器10の内部に配置するとき、フィルタ20の第1主面PS1側に空気が入るように、フィルタ20を開口11から容器10の内部へ挿入する。より具体的には、例えば、フィルタ20の第2主面PS2の一部を液体膜で覆い、貫通孔21の内部に空気を保持させてから、容器10の内部へ挿入する。あるいは、容器10の下部に気体流入路を設け、気体流入路から気体を導入しても良い。あるいは、ステップST21において、気体を含ませた液体3を容器10に導入してもよい。これにより、フィルタ20が容器10内の液体3に入った状態で、フィルタ20の第1主面PS1側に気体層5を形成する。
【0121】
ステップST23において、フィルタ20を位置制御部30によって移動させる。
【0122】
ステップST24において、フィルタ20より上側に位置する液体4を排出する。
【0123】
ステップST25において、容器10内の対象物2を含む液体3を回収する。
【0124】
このように、実施の形態3では、ステップST21~ST25を実施することによって、対象物2を含む液体3を濃縮することができる。
【0125】
実施の形態3では、ステップST22において、フィルタ20の下側に気体層5を形成している。気体層5を形成することにより、対象物2がフィルタ20と容器10の内壁との間から漏れることを抑制することができる。また、フィルタ20の移動によってフィルタ20の端部が第2主面PS2側に撓んだとき、気体層5が浮力により撓んだ部分に移動する。このように、フィルタ20と容器10の内壁との間の距離が大きくなりそうな箇所に、気体層5が移動するため、対象物2がフィルタ20と容器10の内壁との間から漏れることを低減することができる。実施の形態3において、シール部40を設けない場合、フィルタ20が移動する際の容器10との摩擦を低減し、かつ、細胞懸濁液へ加わる力も低減できるため細胞への負担が低減される。
【0126】
なお、実施の形態3では、気体層5が空気である例について説明したが、これに限定されない。例えば、気体層5は、二酸化炭素を含んでいてもよい。気体層5が二酸化炭素を含む場合、対象物2である細胞の活性を長時間維持することができる。
【0127】
また、気体層5を形成する空気は、滅菌されていてもよい。あるいは、容器10を閉鎖系で構成した場合、気体層5を形成する空気は、菌を通さないフィルタ6を通過した空気であってもよい。これにより、滅菌操作が可能となる。
【0128】
(実施の形態4)
本発明に係る実施の形態4の濃縮装置について説明する。
【0129】
実施の形態4では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態4においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態4では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0130】
実施の形態4では、フィルタを上下移動させると共に回転させる点で、実施の形態1と異なる。
【0131】
図10は、本発明に係る実施の形態4の濃縮方法の一例を示すフローチャートである。
図11は、本発明に係る実施の形態4の濃縮装置1Dにおいてフィルタ20を上下移動及び/又は回転させるステップST34の一例を示す概略図である。なお、
図10に示すステップST31~ST33,ST35~ST36は、それぞれ、
図5に示すステップST11~ST15と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0132】
図10に示すように、ステップST31において、対象物2を含む液体3を容器10に導入する。
【0133】
ステップST32において、フィルタ20を容器10の内部に配置する。
【0134】
ステップST33において、フィルタ20を位置制御部30によって移動させる。
【0135】
ステップST34において、フィルタ20を位置制御部30によって上下移動させると共に回転させる。
【0136】
図11に示すように、位置制御部30は、シャフトを上下方向に移動させることによって、フィルタ20を上下方向に移動させる。例えば、位置制御部30は、フィルタ20を上下方向(Z方向)に振動させる。シャフトの上下方向の移動は、例えば、シリンダ、ピストンなどのアクチュエータにより実現できる。
【0137】
また、位置制御部30は、シャフトの軸方向(Z方向)を中心に回転させることによって、シャフトの一端に取り付けられたフィルタ20を回転させる。これにより、フィルタ20の第1主面PS1に付着した対象物2を剥離させる。シャフトの回転は、例えば、シャフトの他端に取り付けたモータなどのアクチュエータにより実現できる。
【0138】
ステップST35において、フィルタ20より上側に位置する液体4を排出する。
【0139】
ステップST36において、容器10内の対象物2を含む液体3を回収する。
【0140】
このように、実施の形態4では、ステップST31~ST36を実施することによって、対象物2を含む液体3を濃縮することができる。
【0141】
実施の形態4では、ステップST34において、フィルタ20を上下移動させると共に回転させている。これにより、フィルタ20の目詰まりを低減し、対象物2の回収率を向上させることができる。
【0142】
なお、実施の形態4では、ステップST34では、フィルタ20を上下移動させると共に回転させる例について説明したが、これに限定されない。ステップST34は、フィルタ20の上下移動と回転とのうち少なくとも一方を実施すればよい。
【0143】
また、フィルタ20の上下移動及び回転は、非等速(例えば、脈動)であってもよい。これにより、フィルタ20の目詰まりをさらに低減することができる。
【0144】
また、フィルタ20の上下移動及び回転は、例えば、超音波による振動又は回転カムなどの回転機構によって実現されてもよい。
【0145】
(実施の形態5)
本発明に係る実施の形態5の濃縮装置について説明する。
【0146】
実施の形態5では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態5においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態5では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0147】
実施の形態5では、撹拌器を備える点で、実施の形態4と異なる。
【0148】
図12は、本発明に係る実施の形態5の濃縮装置1Eの構成の一例を示す概略断面図である。
図12に示すように、濃縮装置1Eは、位置制御部30に取り付けられる撹拌器31を備える。実施の形態5では、濃縮装置1Eは、2つの撹拌器31を備える。具体的には、濃縮装置1Eは、フィルタ20の第1主面PS1側と、第2主面PS2側にそれぞれ撹拌器31を備えている。
【0149】
<撹拌器>
撹拌器31は、位置制御部30に取り付けられている、具体的には、位置制御部30において、回転可能なシャフトに取り付けられている。撹拌器31は、複数のフィンを有する。位置制御部30のシャフトが回転することによって、撹拌器31の複数のフィンが回転する。撹拌器31の複数のフィンが回転することによって、容器10の内部の液体3、4内が撹拌される。これにより、フィルタ20の目詰まりを低減し、対象物2の回収率を向上させることができる。
【0150】
なお、実施の形態5では、濃縮装置1Eが複数の撹拌器を備える例について説明したが、これに限定されない。濃縮装置1Eは、1つ以上の撹拌器を備えていればよい。
【0151】
(実施の形態6)
本発明に係る実施の形態6の濃縮装置について説明する。
【0152】
実施の形態6では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態6においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態6では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0153】
実施の形態6では、フィルタを保持する枠体を備える点で、実施の形態1と異なる。
【0154】
図13は、本発明に係る実施の形態6の濃縮装置1Fの構成の一例の一部を示す概略断面図である。
図14は、本発明に係る実施の形態6の濃縮装置1Fの構成の一例の一部を下方向から見た概略図である。なお、
図13及び
図14においては、フィルタ20を枠体50Aで保持する構成以外は、
図2に示す構成と同様であるため、図示を省略している。
【0155】
図13及び
図14に示すように、濃縮装置1Fは、フィルタ20を保持する枠体50Aを備える。
【0156】
<枠体>
枠体50Aは、円筒形状を有し、内部にフィルタ20を保持する。枠体50Aは、第1ハウジング51Aと、第1ハウジング51Aに勘合する第2ハウジング51Bと、を備える。
【0157】
第1ハウジング51Aは、円筒形状を有する。第1ハウジング51Aの内壁には、第1ハウジング51Aの径方向内側に向かって突設される第1突設部52が設けられている。
図14に示すように、枠体50Aを下方向から見て、第1突設部52は、環状に形成されている。このため、第1ハウジング51Aは、YZ平面で切断した断面において、L字形状を有している。
【0158】
第1突設部52において、第2ハウジング51Bと勘合する側には、フィルタ20を載置する載置面SA1が形成されている。載置面SA1は、フラットに形成されている。載置面SA1には、フィルタ20の端部が載置される。
【0159】
第2ハウジング51Bは、円筒形状を有する。第2ハウジング51Bの外壁には、第2ハウジング51Bの径方向外側に向かって突設される第2突設部53が設けられている。枠体50Aを上方向から見て、第2突設部53は、環状に形成されている。このため、第2ハウジング51Bは、YZ平面で切断した断面において、逆L字形状を有している。
【0160】
第2ハウジング51Bは、第1ハウジング51Aの内側に配置される。第2ハウジング51Bの下面SA2は、フィルタ20を介して第1ハウジング51Aの第1突設部52に接触する。このため、フィルタ20は、第1ハウジング51Aの載置面SA1と、第2ハウジング51Bの下面SA2との間で挟まれる。これにより、フィルタ20は、枠体50Aによって保持される。また、第1ハウジング51Aと第2ハウジング51Bとは、例えば、ねじによって締結される。
【0161】
第1ハウジング51A及び第2ハウジング51Bは、例えば、樹脂部材で形成されている。
【0162】
実施の形態6では、位置制御部30は、取り付け部材32を介して枠体50Aに取り付けられている。例えば、取り付け部材32は、環状部材と、環状部材の中央に配置されるねじ部と、環状部材とねじ部とを支持する複数の支持部材と、を含む。取り付け部材32は、ねじ60によって、第2ハウジング51Bに締結されている。具体的には、取り付け部材32の環状部材にねじ60が挿入される挿入孔が設けられている。ねじ60が第1ハウジング51Aと第2ハウジング51Bとを締結すると共に、挿入孔に挿入されることによって、取り付け部材32を第2ハウジング51Bに取り付けることができる。
【0163】
また、位置制御部30と取り付け部材32の接続は、例えば、ねじによって行われる。例えば、位置制御部30のシャフトの一端にねじ部を設ける。シャフトの一端のねじ部と、取り付け部材32のねじ部とを締結することによって、位置制御部30と取り付け部材32を接続する。
【0164】
このように、濃縮装置1Fは、フィルタ20を保持する枠体50Aを備える。枠体50Aは、第1ハウジング51Aと、第1ハウジング51Aと勘合する第2ハウジング51Bと、を有する。フィルタ20は、第1ハウジング51Aと、第2ハウジング51Bとによって挟持される。このような構成により、フィルタ20を強固に固定することができ、フィルタ20の移動で撓み及び皺が発生することを抑制することができる。また、フィルタ20の交換が容易となる。
【0165】
なお、実施の形態6では、第1ハウジング51Aと第2ハウジング51Bとをねじ60によって締結する例について説明したが、これ限定されない。第1ハウジング51Aと第2ハウジング51Bとは、勘合されていればよく、これらの固定方法については任意の方法を採用することができる。
【0166】
実施の形態6では、位置制御部30は、取り付け部材32を介して枠体50Aに取り付けられる例について説明したが、これ限定されない。例えば、位置制御部30は、枠体50Aに直接取り付けられてもよい。
【0167】
実施の形態6では、枠体50Aは円筒形状である例について説明したが、これに限定されない。枠体50Aの形状は、フィルタ20及び容器10の形状に応じて変更されてもよい。
【0168】
(実施の形態7)
本発明に係る実施の形態7の濃縮装置について説明する。
【0169】
実施の形態7では、主に実施の形態6と異なる点について説明する。実施の形態7においては、実施の形態6と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態7では、実施の形態6と重複する記載は省略する。
【0170】
実施の形態7では、第1ハウジングと第2ハウジングとにねじ部が設けられている点で、実施の形態6と異なる。
【0171】
図15は、本発明に係る実施の形態7の濃縮装置1Gの構成の一例の一部を示す概略断面図である。
図16は、本発明に係る実施の形態7の濃縮装置1Gの構成の一例の一部を分解した概略分解図である。なお、
図15及び
図16においては、フィルタ20を枠体50Bで保持する構成以外は、
図2に示す構成と同様であるため、図示を省略している。
【0172】
図15及び
図16に示すように、枠体50Bは、第1ハウジング51Cと、第2ハウジング51Dと、を備える。第1ハウジング51Cは、実施の形態6の第1ハウジング51Aの構成に加えて、内壁に第1ねじ部61が設けられている。第2ハウジング51Dは、実施の形態6の第2ハウジング51Bの構成に加えて、外壁に第1ねじ部61と螺合する第2ねじ部62が設けられている。
【0173】
枠体50Bでは、第1ねじ部61と第2ねじ部62とが締結することによって、フィルタ20が第1ハウジング51Cと第2ハウジング51Dとによって挟持される。
【0174】
実施の形態7では、第1ハウジング51Cと第2ハウジング51Dの外壁には、シール部として、ガスケット41が配置されている。また、位置制御部30は、第2ハウジング51Dに直接接続されている。
【0175】
また、実施の形態7では、第2ハウジング51Dの上面は、凹状に形成されている。具体的には、第2ハウジング51の内部の内壁は、第2ハウジング51Dの上面に向かって傾斜する傾斜面を有する。傾斜面は、第2ハウジング51Dの外周方向に向かって傾斜している。これにより、第2ハウジング51Dの上面に凹状に窪んだ開口を形成している。このような構成により、装置を使用した後の容器10内の残渣を低減することができる。
【0176】
このように、濃縮装置1Gでは、第1ハウジング51Cの内壁には、第1ねじ部61が設けられている。第2ハウジング51Dの外壁には、第1ねじ部61に螺合する第2ねじ部62が設けられている。第1ねじ部61と第2ねじ部62とが締結することによって、フィルタ20が第1ハウジング51Cと第2ハウジング51Dとによって挟持される。このような構成により、濃縮装置1Gの構成部材を減らすと共に、フィルタ20の交換を容易にすることができる。また、フィルタ20への負荷を低減することができる。さらに、枠体50Bを備えることによって、例えば、枠体50Bと容器10の内壁との間にガスケット41を配置した場合、ガスケット41と容器10の内壁との間に隙間が生じることを抑制することができる。このため、ガスケット41と容器10の内壁との間から対象物2が漏れることを抑制することができる。
【0177】
(実施の形態8)
本発明に係る実施の形態8の濃縮装置について説明する。
【0178】
実施の形態8では、主に実施の形態6と異なる点について説明する。実施の形態8においては、実施の形態6と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態8では、実施の形態6と重複する記載は省略する。
【0179】
実施の形態8では、枠体がガスケットで形成されている点で、実施の形態6と異なる。
【0180】
図17は、本発明に係る実施の形態8の濃縮装置1Hの構成の一例の一部を示す概略断面図である。なお、
図17においては、フィルタ20を枠体50Cで保持する構成以外は、
図2に示す構成と同様であるため、図示を省略している。
【0181】
図17に示すように、濃縮装置1Hは、フィルタ20の外周部と取り付け部材32の外周部とを挟持する枠体50Cを備える。
【0182】
枠体50Cは、ガスケットで形成されている。枠体50Cは、環状に形成されている。枠体50Cの内壁には、凹部54が設けられている。凹部54には、フィルタ20の外周部と、取り付け部材32の外周部とが配置される。
【0183】
枠体50Cは、実施の形態2のシール部40としても機能する。このため、枠体50Cは、フィルタ20と容器10の内壁との間をシールする。
【0184】
このように、濃縮装置1Hは、位置制御部30が取り付けられる取り付け部材32とフィルタ20の外周部とを挟持する枠体50C(シール部)を備える。このような構成により、構成部材を減らし、フィルタ20への負荷を小さくしつつ、フィルタ20と容器10の内壁との間から対象物2が漏れることを抑制することができる。また、フィルタ20の交換を容易にすることができる。
【0185】
(実施の形態9)
本発明に係る実施の形態9の濃縮装置について説明する。
【0186】
実施の形態9では、主に実施の形態6と異なる点について説明する。実施の形態9においては、実施の形態6と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態9では、実施の形態6と重複する記載は省略する。
【0187】
実施の形態9では、枠体が磁石を備え、磁石の磁力によってフィルタを保持する点で、実施の形態6と異なる。
【0188】
図18は、本発明に係る実施の形態9の濃縮装置1Iの構成の一例の一部を示す概略断面図である。なお、
図18においては、フィルタ20を枠体50Dで保持する構成以外は、
図2に示す構成と同様であるため、図示を省略している。
【0189】
図18に示すように、濃縮装置1Iにおいて、枠体50Dは、樹脂部材55と、磁石56と、を備える。
【0190】
樹脂部材55は、円筒形状を有する。樹脂部材55の上面には、取り付け部材32が接続されている。樹脂部材55の下面には、磁石56が設けられている。
【0191】
磁石56は、フィルタ20を磁力によって保持する。フィルタ20は、金属及び金属酸化物のうち少なくともいずれかを主成分としているため、磁石56の磁力によって保持することができる。磁石56は、環状に形成されている。これにより、フィルタ20の外周部が磁石56と接触し、磁力によってフィルタ20の外周部を保持する。
【0192】
このように、濃縮装置1Iにおいては、フィルタ20を保持する枠体50Dは、フィルタ20を磁力で保持する磁石56を有する。このような構成により、濃縮装置1Iを構成する構成部材を減らしつつ、フィルタ20の撓みなどを抑制することができる。また、フィルタ20の交換を容易にすることができる。
【0193】
なお、実施の形態9では、枠体50Dが樹脂部材55を有する例について説明したが、これに限定されない。枠体50は、樹脂部材55を有していなくてもよい。あるいは枠体50は、樹脂部材55の代わりに別の部材を有していてもよい。
【0194】
実施の形態9では、磁石56が樹脂部材55の下面に設けられている例について説明したが、これに限定されない。磁石56は、フィルタ20の外周部を磁力によって保持可能な位置で樹脂部材55に設けられていればよい。
【0195】
(実施の形態10)
本発明に係る実施の形態10の濃縮装置について説明する。
【0196】
実施の形態10では、主に実施の形態6と異なる点について説明する。実施の形態10においては、実施の形態6と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態10では、実施の形態6と重複する記載は省略する。
【0197】
実施の形態10では、フィルタが接着剤によって枠体に固定されている点で、実施の形態6と異なる。
【0198】
図19は、本発明に係る実施の形態10の濃縮装置1Jの構成の一例の一部を示す概略断面図である。
図20は、本発明に係る実施の形態10の濃縮装置1Jの構成の一例の一部を下方向から見た概略図である。なお、
図19及び
図20においては、フィルタ20を枠体50Eで保持する構成以外は、
図2に示す構成と同様であるため、図示を省略している。
【0199】
図19に示すように、濃縮装置1Jにおいて、枠体50Eは、接着剤63によってフィルタ20を固定している。枠体50Eは、金属のフレームで形成されている。具体的には、枠体50Eは、取り付け部材32と、環状部材57と、複数の接続部材58と、を有する。実施の形態10では、取り付け部材32、環状部材57及び複数の接続部材58は、一体で形成されている。
【0200】
取り付け部材32は、枠体50Eの上部を形成している。取り付け部材32には、位置制御部30が接続されている。環状部材57は、枠体50Eの下部を形成している。環状部材57は、取り付け部材32と対向して配置されている。複数の接続部材58は、取り付け部材32と環状部材57との間に設けられ、取り付け部材32と環状部材57とを接続する。複数の接続部材58は、互いに間隔を有して配置されている。
【0201】
環状部材57の底面には、接着剤63が複数個所に塗布されている、
図20に示すように、接着剤63は、環状部材57の下面に、間隔を有して塗布されている。接着剤63が塗布された複数の箇所は、環状部材57とフィルタ20の外周部とを接着する接着部として機能する。即ち、環状部材57とフィルタ20の外周部とは、複数の接着部によって固定されている。
【0202】
実施の形態10では、枠体50Eの外壁には、シール部として、2つのガスケット42が配置されている。
【0203】
このように、濃縮装置1Jにおいて、フィルタ20は、接着剤63によって枠体50Eに固定されている。このような構成により、フィルタ20が移動中に枠体50Eから外れることを抑制することができる。また、濃縮装置1Jを構成する構成部材の数を減らすことができる。
【0204】
なお、実施の形態10では、枠体50Eにおいて、取り付け部材32、環状部材57及び複数の接続部材58が一体で形成されている例について説明したが、これに限定されない。取り付け部材32、環状部材57及び複数の接続部材58は、別々の部材で形成されていてもよい。また、接着剤63は間隙を有さず一様に塗布されていてもよい。接着剤63による接着面積が増えることで、環状部材57とフィルタ20の外周部がより強固に固定できるからである。
【0205】
(実施の形態11)
本発明に係る実施の形態11の濃縮装置について説明する。
【0206】
実施の形態11では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態11においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態11では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0207】
実施の形態11では、位置制御部がアクチュエータとシャフトを覆うカバーとを備える点で、実施の形態1と異なる。
【0208】
図21は、本発明に係る実施の形態11の濃縮装置1Kの構成の一例の一部を示す概略断面図である。
図21に示すように、濃縮装置1Kにおいて、位置制御部30Aは、シャフト33に加えて、アクチュエータ34と、カバー35と、を備える。
【0209】
<アクチュエータ>
アクチュエータ34は、シャフト33の他端に接続され、シャフト33を移動させる。具体的には、アクチュエータ34は、シャフト33を上下方向に移動する。シャフト33の一端はフィルタ20に接続されているため、シャフト33が上下方向に移動することによって、フィルタ20が上下方向に移動する。アクチュエータ34は、例えば、シリンダで構成される。
【0210】
<カバー>
カバー35は、シャフト33のうち容器から露出する部分を覆う。カバー35は、伸縮可能な部材で形成されている。シャフト33を下方へ移動させたとき、シャフト33が液体4に接する部分よりも上方にカバー35が取り付けられている。また、カバー35はシャフト33の外周部を覆う様に取り付けられている。また、カバー35は、容器10の上端に取り付けられている。これにより、カバー35は、容器10の開口11を覆うと共に、開口11よりも上方に突出するシャフト33の部分を覆っている。アクチュエータ34がシャフト33を上下方向に移動させると、カバー35は、シャフト33のうち容器10から露出する部分を覆うように伸縮する。
【0211】
このように、濃縮装置1Kは、アクチュエータ34と、アクチュエータ34とフィルタ20とを接続するシャフト33と、シャフト33のうち容器10から露出する部分を覆うカバー35と、を備える。このような構成により、外気に触れたシャフト33が液体4に触れないため、無菌処理が可能となる。
【0212】
なお、実施の形態11では、アクチュエータ34がシリンダである例について説明したが、これ限定されない。アクチュエータ34は、シャフト33を移動可能な機構を有していればよい。
【0213】
(実施の形態12)
本発明に係る実施の形態12の濃縮装置について説明する。
【0214】
実施の形態12では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態12においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態12では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0215】
実施の形態12では、排出流路と排出液タンクとを備える点で、実施の形態1と異なる。
【0216】
図22は、本発明に係る実施の形態12の濃縮装置1Lの構成の一例の一部を示す概略断面図である。
図22に示すように、濃縮装置1Lは、排出流路70と、排出液タンク71と、を備える。
【0217】
<排出流路>
排出流路70は、容器10の側壁に設けられ、容器10の内部と外部とを連通する流路である。排出流路70は、容器10の内部の液体4を容器10の外部に排出する。実施の形態12では、排出流路70の一端は、容器10の側壁に接続されており、排出流路70の他端は、排出液タンク71に接続されている。排出流路70と容器10の側壁との接続位置は、容器10内部に残したい液体3の液量に応じて決定される。
【0218】
排出流路70の位置は、フィルタ20を下方へ移動させたときの第2主面PS2より、上方に位置するのが好ましい。液体4を容器10の外部に排出しても、フィルタ20の上部にわずかに液体を残しておくことで、対象物2の乾燥を防ぐことができるからである。対象物2が生体由来物質である場合、乾燥による生体由来物質の活性低下を防ぐことができる。
【0219】
排出流路70は、例えば、配管である。また、排出流路70には、バルブV1が配置されている。バルブV1は、排出流路70への液体の流入を制御する。
【0220】
<排出液タンク>
排出液タンク71は、排出流路70の他端に接続されており、排出流路70から送られてくる液体4を貯留する。
【0221】
濃縮装置1Lにおいては、例えば、液体3内においてフィルタ20を下方向に移動させて、フィルタ20を排出流路70と容器10との接続位置よりも下に位置させる。次に、バルブV1を開き、フィルタ20より上側に位置する液体4を排出流路70に流入させる。排出流路70に流入した液体4は、排出液タンク71に貯留される。
【0222】
このように、濃縮装置1Lは、容器10の側壁に設けられ、且つ容器10の内部と外部とを連通する排出流路70を備える。排出流路70は、容器10の内部の液体4を容器10の外部に排出する。このような構成により、容器10から液体4を容易に排出することができる。また、排出流路70と容器10の側壁との接続位置を変えることによって、液体4を排出する量を制御することができる。言い換えると、排出流路70と容器10の側壁との接続位置によって、容器10内部に残す液量を制御することができる。これにより、濃縮倍率を容易に制御することができる。
【0223】
なお、実施の形態12では、濃縮装置1LがバルブV1及び排出液タンク71を備える例について説明したが、これに限定されない。濃縮装置1Lは、排出流路70を備えていればよい。
【0224】
実施の形態12では、液体4を排出液タンク71に貯留する例について説明したが、これに限定されない。排出流路70に流入した液体4、あるいは、排出液タンク71に一旦貯留された液体4は、そのまま廃棄されるのではなく、再利用されても良い。例えば、液体3が生体由来物質を含んでいるとき、液体4を分析したり、液体4から有用な成分を抽出したり、液体4に含まれる生体由来物質を再び増殖させても良い。
【0225】
実施の形態12では、容器10の内径よりも排出流路70の内径の方が小さい方がよい。対象物が排出流路へ流出することを低減できるからである。また、排出流路70には、フィルタが配置されていてもよい。例えば、フィルタは、排出流路70と容器10の側壁との接続位置に配置されていてもよい。これにより、排出される液体4に対象物2が含まれている場合、フィルタによって液体4から対象物2を取り除くことができる。
【0226】
実施の形態12では、容器10と排出流路70とは、無菌コネクタで接続されていてもよい。これにより、無菌閉鎖系を構成することができる。
【0227】
実施の形態12では、濃縮装置1Lが1つの排出流路70を備える例について説明したが、これに限定されない。濃縮装置1Lは、1つ又は複数の排出流路70を備えていてもよい。
【0228】
図23は、本発明に係る実施の形態12の変形例の濃縮装置1LAの構成を示す概略図である。
図23に示すように、濃縮装置1LAは、第1排出流路70a,第2排出流路70b、第1排出液タンク71a及び第2排出液タンク71bを備えていてもよい。
【0229】
第1排出流路70aの一端は容器10の側壁に接続されており、第1排出流路70aの他端は第1排出液タンク71aに接続されている。また、第1排出流路70aには、バルブV1が配置されている。
【0230】
第2排出流路70bの一端は容器10の側壁に接続されており、第2排出流路70bの他端は第2排出液タンク71bに接続されている。また、第2排出流路70bには、バルブV2が配置されている。第2排出流路70bと容器10との接続位置は、第1排出流路70aと容器10との接続位置よりも高い位置にある。
【0231】
濃縮装置1LAにおいては、複数の排出流路を設けることによって、フィルタ20の位置の変化に応じて、排出流路を使い分けることができる、これにより、濃縮する液体3の液量に応じて、排出液量を制御することができる。即ち、濃縮する液体3の液量に応じて、複数の排出流路を使い分けることによって、濃縮倍率を容易に制御することができる。
【0232】
一例として、容器10内の液量が100mlとなる高さの位置で第1排出流路70aを容器10の側壁に接続されており、容器10内の液量が200mlとなる高さの位置で第2排出流路70bを容器10の側壁に接続されている例を説明する。
【0233】
300mlの液体3が容器10内に貯留されている場合、第1排出流路70aのバルブV1を開いて、第2排出流路70bのバルブV2を閉じる。これにより、第1排出流路70aから液体4を200ml排出し、容器10内部に100mlの液体3を残すことができる。即ち、濃縮倍率を3倍にすることができる。
【0234】
あるいは、第1排出流路70aのバルブV1を閉じて、第2排出流路70bのバルブV2を開く。この場合、第2排出流路70bから液体4を100ml排出し、容器10内部に200mlの液体3を残すことができる。即ち、濃縮倍率を1.5倍にすることができる。
【0235】
(実施の形態13)
本発明に係る実施の形態13の濃縮装置について説明する。
【0236】
実施の形態13では、主に実施の形態12と異なる点について説明する。実施の形態13においては、実施の形態12と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態13では、実施の形態12と重複する記載は省略する。
【0237】
実施の形態13では、供給流路と供給タンクとを備える点で、実施の形態12と異なる。
【0238】
図24は、本発明に係る実施の形態13の濃縮装置1Mの構成の一例の一部を示す概略断面図である。
図24に示すように、濃縮装置1Mは、供給流路72と、供給タンク73と、を備える。
【0239】
<供給流路>
供給流路72は、容器10の側壁に設けられ、容器10の内部と連通する流路である。供給流路72は、排出流路70より下方で、容器10の内部に連通する。実施の形態13では、供給流路72の一端は、容器10の側壁に接続されており、供給流路72の他端は、供給タンク73に接続されている。供給流路72と容器10の側壁との接続位置は、排出流路70と容器10の側壁との接続位置よりも低い。実施の形態13では、供給流路72と容器10の側壁との接続位置は、容器10の底部付近である。供給流路72が底部付近にある場合、供給流路72を通じた液体の供給によって、フィルタ20の下部を撹拌する効果が得られる。
【0240】
供給流路72は、供給タンク73内に貯留される対象物2を含む液体3を容器10の内部に供給する。供給流路72は、例えば、配管である。また、供給流路72には、バルブV3が配置されている。バルブV3は、供給タンク73から供給流路72への液体の供給を制御する。
【0241】
<供給タンク>
供給タンク73は、対象物2を含む液体3を貯留するタンクである。供給タンク73は、供給流路72の他端に接続されている。
【0242】
濃縮装置1Mにおいては、例えば、フィルタ20が供給流路72よりも高い位置にあるときに、バルブV3を開き、供給タンク73に貯留された対象物2を含む液体3を供給流路72を通じて容器10の内部に供給する。
【0243】
このように、濃縮装置1Mは、容器10の側壁に設けられ、且つ排出流路70より下方で、容器10の内部に連通する供給流路72を備える。供給流路72は、対象物2を含む液体3を容器10の内部に供給する。このような構成により、対象物2を含む液体3を容器10の内部に容易に供給することができる。また、供給流路72を排出流路70よりも下方に設けることによって、対象物2が排出流路70から排出される液体4に混在することを抑制することができる。
【0244】
なお、実施の形態13では、濃縮装置1MがバルブV3及び供給タンク73を備える例について説明したが、これに限定されない。濃縮装置1Mは、供給流路72を備えていればよい。また、供給タンク73は容器10に対してなるべく鉛直上方に配置されていた方が良い。重力を使って供給タンク73内の液体を容器10へ供給できる。
【0245】
実施の形態13では、濃縮装置1Mが1つの供給流路72を備える例について説明したが、これに限定されない。濃縮装置1Mは、1つ又は複数の供給流路72を備えていてもよい。この場合、1つ又は複数の供給流路72は、1つ又は複数のいずれの排出流路70より下方に設けられる。
【0246】
実施の形態13では、容器10と供給流路72とは、無菌コネクタで接続されていてもよい。これにより、無菌閉鎖系を構成することができる。
【0247】
(実施の形態14)
本発明に係る実施の形態14の濃縮装置について説明する。
【0248】
実施の形態14では、主に実施の形態13と異なる点について説明する。実施の形態14においては、実施の形態13と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態14では、実施の形態13と重複する記載は省略する。
【0249】
実施の形態14では、洗浄水流路と洗浄水タンクとを備える点で、実施の形態13と異なる。
【0250】
図25は、本発明に係る実施の形態14の濃縮装置1Nの構成の一例の一部を示す概略断面図である。
図25に示すように、濃縮装置1Nは、洗浄水流路74と、洗浄水タンク75と、を備える。
【0251】
<洗浄水流路>
洗浄水流路74は、洗浄水タンク75に貯留される洗浄水7を供給タンク73に供給する流路である。実施の形態14では、洗浄水流路74の一端は、供給タンク73に接続されており、洗浄水流路74の他端は、洗浄水タンク75に接続されている。
【0252】
洗浄水流路74は、例えば、配管である。また、洗浄水流路74には、バルブV4が配置されている。バルブV4は、洗浄水タンク75から供給タンク73への洗浄水7の供給を制御する。
【0253】
<洗浄水タンク>
洗浄水タンク75は、洗浄水を貯留するタンクである。洗浄水タンク75は、洗浄水流路74の他端に接続されている。
【0254】
濃縮装置1Nにおいては、例えば、バルブV4を開き、洗浄水タンク75に貯留された洗浄水7を洗浄水流路74を通じて供給タンク73の内部に供給する。
【0255】
このように、濃縮装置1Nは、供給タンク73に接続される洗浄水流路74を備える。洗浄水流路74は、供給タンク73を通って供給流路72に洗浄水7を供給する。このような構成により、供給タンク73から供給流路72を通って容器10の内部へ供給される対象物2を含む液体3の残液を低減することができる。
【0256】
なお、実施の形態14では、濃縮装置1NがバルブV4及び洗浄水タンク75を備える例について説明したが、これに限定されない。濃縮装置1Nは、洗浄水流路74を備えていればよい。
【0257】
実施の形態14では、濃縮装置1Nが1つの洗浄水流路74を備える例について説明したが、これに限定されない。濃縮装置1Nは、1つ又は複数の洗浄水流路74を備えていてもよい。
【0258】
実施の形態14では、洗浄水流路74が供給タンク73に接続される例について説明したが、これに限定されない。例えば、洗浄水流路74は、供給流路72に接続されてもよい。洗浄水流路74が供給流路72に接続されることによって、供給流路72に残る液体3の残液をより低減することができる。
【0259】
図26は、本発明に係る実施の形態14の変形例の濃縮装置1NAの構成を示す概略断面図である。
図26に示すように、濃縮装置1NAは、第1洗浄水流路74aと、第2洗浄水流路74bと、洗浄水タンク75と、を備えてもよい。
【0260】
第1洗浄水流路74aの一端は供給タンク73に接続されており、第1洗浄水流路74aの他端は洗浄水タンク75に接続されている。また、第1洗浄水流路74aには、バルブV4が配置されている。
【0261】
第2洗浄水流路74bの一端は容器10の側壁に接続されており、第2洗浄水流路74bの他端は洗浄水タンク75に接続されている。また、第2洗浄水流路74bには、バルブV5が配置されている。第2洗浄水流路74bと容器10との接続位置は、排出流路70と容器10との接続位置及び供給流路72と容器10との接続位置よりも高い位置にある。
【0262】
濃縮装置1NAにおいては、洗浄水タンク75から第2洗浄水流路74bを通じて容器10内部に洗浄水7を供給することができる。このような構成により、容器10に付着した対象物2を洗浄水7によって容器10の底部に移動させることができる。これにより、対象物2の回収率が向上する。
【0263】
第2洗浄水流路74bの一端にシャワーヘッドを配置することによって、洗浄水7を拡散して容器10内部に供給することができる。これにより、対象物2の回収率をさらに向上させることができる。
【0264】
(実施の形態15)
本発明に係る実施の形態15の濃縮装置について説明する。
【0265】
実施の形態15では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態15においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態15では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0266】
実施の形態15では、回収流路と回収タンクとを備える点で、実施の形態1と異なる。
【0267】
図27は、本発明に係る実施の形態15の濃縮装置1Oの構成の一例の一部を示す概略断面図である。
図27に示すように、濃縮装置1Oは、回収流路76と、回収タンク77と、を備える。
【0268】
<回収流路>
回収流路76は、容器10の下部に設けられ、且つ容器10の内部と連通する流路である。容器10の下部とは、容器10の底部と、容器10の底部側に近い側壁とを含む。実施の形態15では、回収流路76の一端は、容器10の底部に接続されており、回収流路76の他端は、回収タンク77に接続されている。
【0269】
回収流路76は、例えば、配管である。また、回収流路76には、バルブV6が配置されている。バルブV6は、容器10から回収タンク77への対象物2を含む液体3の流入を制御する。即ち、バルブV6を開くことによって、容器10に貯留される対象物2を含む液体3を回収液として、回収流路76を通じて回収タンク77に回収する。
【0270】
<回収タンク>
回収タンク77は、容器10に貯留される対象物2を含む液体3を回収液として貯留するタンクである。回収タンク77は、回収流路76の他端に接続されている。
【0271】
濃縮装置1Oにおいては、例えば、バルブV6を開き、容器10に貯留される対象物2を含む液体3を回収液として、回収流路76を通じて回収タンク77に回収する。
【0272】
このように、濃縮装置1Oは、容器10の底部に設けられ、且つ容器10の内部と連通する回収流路76を備える。回収流路76は、容器10の内部の対象物2を含む液体3を回収する。このような構成により、容器10内部の対象物2を含む液体3を容易に回収することができる。
【0273】
なお、実施の形態15では、濃縮装置1OがバルブV6及び回収タンク77を備える例について説明したが、これに限定されない。濃縮装置1Oは、回収流路76を備えていればよい。あるいは、濃縮装置1Oは、回収タンク77の代わりに、例えば、回収器具としてシリンジなどを備えていてもよい。シリンジなどの回収器具を用いて、定量を回収することができる。
【0274】
実施の形態15では、濃縮装置1Oが1つの回収流路76を備える例について説明したが、これに限定されない。濃縮装置1Oは、1つ又は複数の回収流路76を備えていてもよい。
【0275】
実施の形態15では、回収流路76が容器10の底部に設けられる例について説明したが、これに限定されない。回収流路76は容器10の下部に設けられていればよい。例えば、回収流路76は、排出流路70より下方で、容器10の側壁に設けられていてもよい。
【0276】
(実施の形態16)
本発明に係る実施の形態16の濃縮装置について説明する。
【0277】
実施の形態16では、主に実施の形態15と異なる点について説明する。実施の形態16においては、実施の形態15と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態16では、実施の形態15と重複する記載は省略する。
【0278】
実施の形態16では、容器の底部に傾斜部が設けられている点、および排出流路及び排出液タンクを備える点で、実施の形態15と異なる。
【0279】
図28は、本発明に係る実施の形態16の濃縮装置1Pの構成の一例の一部を示す概略断面図である。
図28に示すように、濃縮装置1Pにおいては、容器10Aの底部に傾斜部12が設けられている。また、濃縮装置1Pは、排出流路70及び排出液タンク71を備える。なお、排出流路70及び排出液タンク71については、実施の形態12と同様であるため、説明を省略する。
【0280】
<傾斜部>
傾斜部12は、容器10Aの底部において、回収流路76に向かって傾斜する部分である。実施の形態16では、回収流路76の一端は、容器10Aの底部の中央に接続されている。このため、傾斜部12は、容器10Aの底部の中央が最も低くなるように傾斜している。即ち、傾斜部12は、容器10Aの側壁13から底部中央に向かって低くなっている。
【0281】
このように、濃縮装置1Pにおいて、容器10Aの底部には、回収流路76に向かって傾斜する傾斜部12が設けられている。このような構成により、容器10A内部の対象物2を含む液体3が傾斜部12に沿って回収流路76へ流れるため、対象物2を含む液体3容易に回収することができる。また、容器10A内部の対象物2の付着を低減することができる。
【0282】
図29は、
図28のZ1部分の概略拡大図である。
図29に示すように、容器10Aにおいて、側壁13を傾斜部12の接続部14は、連続した曲面で形成されている。「連続した曲面」とは、段差がなく、滑らかな面で徐々に変化していく面を意味する。このような構成により、接続部14において、対象物2及び液体3の付着を低減することができる。
【0283】
図30は、
図28のZ2部分の概略拡大図である。
図30に示すように、容器10Aの側壁13と排出流路70との接続部15は、連続した曲面で形成されている。このような構成により、接続部15において、対象物2及び液体3の付着を低減することができる。
【0284】
なお、実施の形態16では、回収流路76が容器10Aの底部中央に接続されており、傾斜部12が容器10Aの底部中央に向かって低くなるように傾斜する例について説明したが、これに限定されない。例えば、回収流路76は、容器10Aの側壁13近傍で容器10Aの底部に接続されてもよい。この場合、傾斜部12は、容器10Aの側壁13に向かって低くなるように傾斜していてもよい。
【0285】
(実施の形態17)
本発明に係る実施の形態17の濃縮装置について説明する。
【0286】
実施の形態17では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態17においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態17では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0287】
実施の形態17では、容器の側面に目盛りが設けられている点で、実施の形態1と異なる。
【0288】
図31は、本発明に係る実施の形態17の濃縮装置1Qの構成の一例の一部を示す概略図である。
図31に示すように、濃縮装置1Qにおいては、容器10Bの側面に目盛り16が設けられている。
【0289】
<目盛り>
目盛り16は、容器10Bの側面に設けられている。目盛り16は、容器10B内部の液量を示す。実施の形態17では、容器10Bは透明な部材で形成されている。これにより、容器10B内部の液体3を目視で確認することができる。
【0290】
このように、濃縮装置1Qは、容器10Bに設けられ、且つ容器10B内部の液量を示す目盛りを備える。このような構成により、容器10B内部に貯留される液体3の液量を容易に把握することができる。これにより、所望の液量に濃縮することが容易になる。
【0291】
(実施の形態18)
本発明に係る実施の形態18の濃縮装置について説明する。
【0292】
実施の形態18の濃縮装置は、実施の形態2の構成要素に加えて、実施の形態12,13,15及び16の構成要素を備える。実施の形態18においては、実施の形態2,12,13,15及び16と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態18では、実施の形態2,12,13,15及び16と重複する記載は省略する。
【0293】
図32は、本発明に係る実施の形態18の濃縮装置1Rの構成の一例を示す概略図である。
図32に示すように、濃縮装置1Rは、排出流路70、排出液タンク71、供給流路72、供給タンク73、回収流路76及び回収タンク77を備える。濃縮装置1Rにおいては、容器10Aの底部には、傾斜部12が設けられている。フィルタ20の外周部には、シール部40が設けられている。
【0294】
実施の形態18では、排出流路70には、フィルタ24が配置されている。フィルタ24は、対象物2を除去して、液体4を排出流路70に流入させる。
【0295】
次に、濃縮装置1Rの動作(濃縮方法)の一例について説明する。
図33は、本発明に係る実施の形態18の濃縮方法の一例を示すフローチャートである。
【0296】
図33に示すように、ステップST41において、対象物2を含む液体3を容器10A内に供給する。具体的には、バルブV3を開き、供給タンク73に貯留される対象物2を含む液体3を、供給流路72を通じて容器10A内に供給する。このとき、バルブV1,V6は閉じた状態であり、排出流路70及び回収流路76に液体3が流入しない状態である。
【0297】
ステップST42において、フィルタ20を移動させる。具体的には、バルブV3を閉じて対象物2を含む液体3の供給を停止した後、位置制御部30がフィルタ20を下方に移動させる。位置制御部30は、フィルタ20を排出流路70の入口より下方に移動させる。なお、位置制御部30は、フィルタ20を下方だけでなく、上方向移動させてもよいし、回転させてもよい。
【0298】
ステップST43において、フィルタ20より上側に位置する液体4を排出する。具体的には、バルブV1を開き、フィルタ20より上側に位置する液体4を排出流路70に流入させる。これにより、容器10A内の液体4が排出流路70を通って排出液タンク71に送られる。液体4の排出は、排出流路70に液体4が流れなくなるまで行う。これにより、容器10A内の液量を定量にすることができる。
【0299】
ステップST44において、容器10A内の対象物2を含む液体3を回収する。具体的には、バルブV6を開き、容器10Aに貯留される対象物2を含む液体3を回収液として、回収流路76を通じて回収タンク77に回収する。
【0300】
このように、実施の形態18では、ステップST41~ST44を実施することによって、対象物2を含む液体3を濃縮し、濃縮液を容易に回収することができる。
【0301】
濃縮装置1Rでは、対象物2を含む液体3の供給、液体4の排出及び濃縮液の回収を容易に行うことができる。また、無菌コネクタなどで各構成要素を接続するなどによって、無菌閉鎖系を容易に作ることができる。
【0302】
(実施の形態19)
本発明に係る実施の形態19の濃縮システムについて説明する。
【0303】
実施の形態19の濃縮システムは、複数の濃縮装置を備える。実施の形態19の濃縮システムでは、実施の形態16の変形例の濃縮装置を2つ備える例について説明する。なお、実施の形態19では、実施の形態16と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態19では、実施の形態16と重複する記載は省略する。
【0304】
図34は、本発明に係る実施の形態19の濃縮システム100の構成の一例を示す概略図である。
図34に示すように、濃縮システム100は、第1濃縮装置1PAと、第2濃縮装置1PBと、第1濃縮装置1PAと第2濃縮装置1PBとを接続する接続流路78と、を備える。
【0305】
<第1濃縮装置>
第1濃縮装置1PAは、容器10A、フィルタ20、位置制御部30、供給流路72、及び供給タンク73を備える。第1濃縮装置1PAにおいて、供給流路72の一端は、容器10Aの側壁13に接続されており、供給流路72の他端は、供給タンク73に接続されている。
【0306】
第1濃縮装置1PAの容器10Aの底部には、接続流路78が接続されている。実施の形態19では、接続流路78は、第1濃縮装置1PAの容器10Aの底部の中央に接続されている。また、第1濃縮装置1PAの容器10Aの底部には、接続流路78に向かって低くなるように傾斜する傾斜部12が設けられている。
【0307】
<第2濃縮装置>
第2濃縮装置1PBは、容器10A、フィルタ20、位置制御部30、回収流路76、及び回収タンク77を備える。第2濃縮装置1PBにおいて、回収流路76の一端は、容器10Aの底部中央に接続されており、回収流路76の他端は、回収タンク77に接続されている。
【0308】
第2濃縮装置1PBの容器10Aの側壁13には、接続流路78が接続されている。また、第2濃縮装置1PBの容器10Aの底部には、回収流路76に向かって低くなるように傾斜する傾斜部12が設けられている。
【0309】
<接続流路>
接続流路78は、第1濃縮装置1PAと第2濃縮装置1PBとを接続する流路である。実施の形態19では、接続流路78の一端は、第1濃縮装置1PAの容器10Aの底部に接続されており、接続流路78の他端は、第2濃縮装置1PBの容器10Aの側壁13に接続されている。
【0310】
接続流路78は、例えば、配管である。また、接続流路78には、バルブV7が配置されている。バルブV7は、第1濃縮装置1PAの容器10A内部の対象物2を含む液体3を、第2濃縮装置1PBの容器10A内部への移動を制御する。
【0311】
このように、濃縮システム100では、第1濃縮装置1PAと第2濃縮装置1PBとを接続流路78によって接続し、対象物2を含む液体3を段階的に濃縮することができる。これにより、対象物2を分画回収することができる。
【0312】
なお、実施の形態19では、濃縮システム100が2つの濃縮装置1PA,1PBを備える例について説明したが、これに限定されない。濃縮システム100は、2つ以上の濃縮装置を備えていてもよい。
【0313】
実施の形態19では、濃縮システム100が実施の形態16の変形例である第1濃縮装置1PA及び第2濃縮装置1PBを備える例について説明したが、これに限定されない。濃縮システム100は、実施の形態1~18の濃縮装置及び/又はこれらの実施形態の変形例の濃縮装置を備えていてもよい。
【0314】
実施の形態19では、濃縮システム100が1つの接続流路78を備える例について説明したが、これに限定されない。濃縮システム100は、1つ又は複数の接続流路78を備えていてもよい。
【実施例】
【0315】
(実施例1)
実施例1として、実施の形態1の濃縮装置1Aを用いて細胞懸濁液の濃縮を行った。実施例1に用いた細胞懸濁液の条件を表1に示す。
【0316】
【0317】
表1に示す条件の細胞懸濁液を濃縮装置1Aの容器10内に導入し、容器10内においてフィルタ20を下降させた。なお、フィルタ20の貫通孔21のサイズは、6μmである。また、フィルタ20の上側の液体を電動メスピペットで吸引して排出液とした。濃縮後、容器10内の液体を回収し、回収液とした。排出液と回収液のそれぞれに対して、生存している細胞の数を測定した。生存している細胞数の測定は、Countess II(Thrmo Fisher製)を使用し、トリパンブルー染色法で生存している細胞の数を測定した。表2及び表3にそれぞれ、排出液及び回収液の測定結果を示す。
【0318】
【0319】
【0320】
表2に示すように、排出液量は2mlであり、生細胞数は4.2×105個(細胞濃度2.2×105個/ml、生細胞濃度95%)であった。したがって、19%の細胞懸濁液が排出液に混在していた。表3に示すように、回収液量は2.8mlであり、生細胞数は10.6×105個(細胞濃度4.4×105個/ml、生細胞濃度86%)であった。したがって、回収率は47%であった。
【0321】
以上のように、排出液に比べて回収液の生細胞数および細胞濃度が高く、濃縮装置1Aを用いれば、溶媒の抽出および細胞懸濁液の濃縮回収を容易に達成することができる。
【0322】
図35は、実施例1における濃縮処理後のフィルタ20の写真である。
図35に示すように、濃縮装置1Aを用いて濃縮処理を行った後のフィルタを顕微鏡で観察した結果、
顕著な目詰まりを確認することができなかった。
【0323】
(実施例2)
表4に示す条件の細胞懸濁液を濃縮装置1Rの容器10A内に流路72を通じて導入し、容器10A内においてフィルタ20を下降させた。なお、容器の底部には傾斜部12が設けられており、容器の内径の最大値は40mm、容器底部の内径の最小値は10mmである。また、フィルタ20は図32に示したシャフトに保持した。また、フィルタ20の下降速度は300mm/分、フィルタ20の貫通孔21のサイズは6μmであった。フィルタ20を排出流路70より10mm下方まで移動させた後、上方へ5mm移動させて停止させた。その後、バルブV1を開放して排出液を排出液タンク71に得た。排出流路70へ流れ込む液体4の流量が無くなったことを確認後、バルブV6を開放して回収タンク77に回収液を得た。最後に、排出液と回収液のそれぞれに対して、生存している細胞の数を測定した。生存している細胞数の測定は、Countess II(Thrmo Fisher製)を使用し、トリパンブルー染色法で生存している細胞の数を測定した。表5及び表6にそれぞれ、排出液及び回収液の測定結果を示す。
【0324】
【0325】
【0326】
【0327】
表5に示すように、6.8%の細胞懸濁液が排出液に混在していた。表6に示すように、回収液量は18mlであり、回収率は88.5%であり、細胞濃度における濃縮率は2.95倍であった。尚、表4から表6の液量収支より、1mlの液体はデッドボリュームである。また、細胞懸濁液を濃縮装置1Rの容器10A内に導入してから、回収液を得るまでの作業時間は4分であった。
【0328】
以上のように、短時間に、且つ、簡便な方法によって、細胞懸濁液の濃縮回収を行うことができた。この様に短時間に作業を行うことにより、特に対象物が細胞の様な生体由来物質の場合、細胞へのストレスを低減することも効果となる。
【0329】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0330】
本発明の濃縮装置及び濃縮方法は、例えば、細胞懸濁液を濃縮する用途に有用である。
【符号の説明】
【0331】
1,1A,1B,1BA,1C,1D,1E,1F,1G,1H,1I,1J,1K,
1L,1LA,1M,1N,1O,1P,1PA,1PB,1Q,1R 濃縮装置
2 対象物
3 液体
4 液体
5 気体層
6 フィルタ
7 洗浄水
10,10A,10B 容器
11 開口
12 傾斜部
13 側壁
14 接続部
15 接続部
16 目盛り
20,20A,20B フィルタ
21 貫通孔
22 フィルタ基体部
30 位置制御部
31 撹拌器
32 取り付け部材
33 シャフト
34 アクチュエータ
35 カバー
40 シール部
41,42 ガスケット
50A,50B,50C,50D,50E 枠体
51A,51C 第1ハウジング
51B,51D 第2ハウジング
52 第1突設部
53 第2突設部
60 ねじ
61 第1ねじ部
62 第2ねじ部
63 接着剤
70,70a,70b 排出流路
71 排出液タンク
72 供給流路
73 供給タンク
74,74a,74b 洗浄水流路
75 洗浄水タンク
76 回収流路
77 回収タンク
78 接続流路
100 濃縮システム