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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/008 20060101AFI20231114BHJP
   H01G 9/012 20060101ALI20231114BHJP
   H01G 9/048 20060101ALI20231114BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H01G9/008 303
H01G9/012 303
H01G9/012 309
H01G9/048 A
H01G9/048 F
H01G9/15
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022138201
(22)【出願日】2022-08-31
(62)【分割の表示】P 2022522066の分割
【原出願日】2021-05-18
(65)【公開番号】P2022172255
(43)【公開日】2022-11-15
【審査請求日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2020093536
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】大谷 慎士
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 章友
(72)【発明者】
【氏名】坂井 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】古川 剛史
(72)【発明者】
【氏名】北村 達矢
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/130746(WO,A1)
【文献】特開2008-78301(JP,A)
【文献】特開2007-173439(JP,A)
【文献】特開2005-183548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/38
H01G 9/00-9/18
H01G 9/21-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサを形成するコンデンサ部を少なくとも1つ含むコンデンサ層と、
接続端子と、
前記コンデンサ層の厚さ方向に前記コンデンサ部を貫通するように形成されたスルーホール導体と、を備え、
前記スルーホール導体は、前記コンデンサ部を前記厚さ方向に貫通する第1の貫通孔の少なくとも内壁面に形成された第1のスルーホール導体を含み、
前記第1のスルーホール導体は、前記コンデンサ部の陽極と電気的に接続され、
前記コンデンサ部は、金属からなる陽極板を含み、
前記第1のスルーホール導体は、前記陽極板の端面と接続され、
前記第1のスルーホール導体と前記陽極板の端面との間に設けられた陽極接続層をさらに備え、
前記陽極接続層を介して、前記第1のスルーホール導体が前記陽極板の端面と接続され、
前記厚さ方向に直交する方向から断面視したとき、前記陽極接続層が存在する部分の前記第1のスルーホール導体は、前記陽極接続層が存在しない部分の前記第1のスルーホール導体に比べて、前記第1の貫通孔の内側に盛り上がる、モジュール。
【請求項2】
前記厚さ方向から平面視したとき、前記第1のスルーホール導体は、前記第1の貫通孔の全周にわたり、前記陽極板の端面と接続されている、請求項1に記載のモジュール。
【請求項3】
前記陽極板は、芯部と、前記芯部の少なくとも一方の主面に設けられた多孔質部と、を有し、
前記第1のスルーホール導体と接続される前記陽極板の端面に、前記芯部および前記多孔質部が露出している、請求項1または2に記載のモジュール。
【請求項4】
前記多孔質部に位置する前記第1のスルーホール導体の外周長が、前記芯部に位置する前記第1のスルーホール導体の外周長よりも長い、請求項3に記載のモジュール。
【請求項5】
前記多孔質部の空洞部分に絶縁材料が存在する、請求項3または4に記載のモジュール。
【請求項6】
前記厚さ方向に直交する方向から断面視したとき、前記第1のスルーホール導体が延びる方向における前記陽極接続層の長さは、前記第1のスルーホール導体が延びる方向における前記陽極板の長さよりも長い、請求項1~5のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項7】
前記陽極接続層が、Niを主たる材料とする層を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項8】
前記コンデンサ層は、前記コンデンサ部の表面に積層された第1の絶縁部と、前記第1の絶縁部の表面に積層された第2の絶縁部と、をさらに含み、
前記第2の絶縁部に穿たれた前記第1の貫通孔の内壁面と前記陽極板の主面の延長面とが成す角度が、90°以上であり、かつ、前記陽極板の芯部に穿たれた前記第1の貫通孔の内壁面と前記陽極板の主面の延長面とが成す角度よりも大きい、請求項1~7のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項9】
前記第1の絶縁部に穿たれた前記第1の貫通孔の内壁面と前記陽極板の主面の延長面とが成す角度が、90°以上であり、かつ、前記陽極板の芯部に穿たれた前記第1の貫通孔の内壁面と前記陽極板の主面の延長面とが成す角度よりも大きく、
前記第2の絶縁部に穿たれた前記第1の貫通孔の内壁面と前記陽極板の主面の延長面とが成す角度が、前記第1の絶縁部に穿たれた前記第1の貫通孔の内壁面と前記陽極板の主面の延長面とが成す角度の大きさ以上である、請求項8に記載のモジュール。
【請求項10】
前記第1の貫通孔には樹脂を含む材料が充填されている、請求項1~9のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項11】
前記第1の貫通孔に充填される前記材料は、前記第1のスルーホール導体を構成する材料よりも熱膨張率が大きい、請求項10に記載のモジュール。
【請求項12】
前記スルーホール導体は、前記第1のスルーホール導体が形成された前記コンデンサ部を前記厚さ方向に貫通する第2の貫通孔の少なくとも内壁面に形成された第2のスルーホール導体をさらに含み、
前記第2のスルーホール導体は、前記コンデンサ部の陰極と電気的に接続されている、請求項1~11のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項13】
コンデンサを形成するコンデンサ部を少なくとも1つ含むコンデンサ層と、
接続端子と、
前記コンデンサ層の厚さ方向に前記コンデンサ部を貫通するように形成されたスルーホール導体と、を備え、
前記スルーホール導体は、前記コンデンサ部を前記厚さ方向に貫通する第1の貫通孔の少なくとも内壁面に形成された第1のスルーホール導体を含み、
前記第1のスルーホール導体は、前記コンデンサ部の陽極と電気的に接続され、
前記スルーホール導体は、前記第1のスルーホール導体が形成された前記コンデンサ部を前記厚さ方向に貫通する第2の貫通孔の少なくとも内壁面に形成された第2のスルーホール導体をさらに含み、
前記第2のスルーホール導体は、前記コンデンサ部の陰極と電気的に接続され、
前記コンデンサ層は、前記コンデンサ部の表面に積層された第1の絶縁部と、前記第1の絶縁部の表面に積層された第2の絶縁部と、をさらに含み、
前記コンデンサ部は、金属からなる陽極板を含み、
前記第2のスルーホール導体と前記陽極板との間に、前記第2の絶縁部が延在し、
前記陽極板は、芯部と、前記芯部の少なくとも一方の主面に設けられた多孔質部と、を有し、
前記第2の絶縁部を構成する絶縁材料が前記多孔質部の空洞部分に入り込んでいる、モジュール。
【請求項14】
第2の絶縁部を構成する絶縁材料は、前記第2のスルーホール導体を構成する材料よりも熱膨張率が大きい、請求項13に記載のモジュール。
【請求項15】
コンデンサを形成するコンデンサ部を少なくとも1つ含むコンデンサ層と、
接続端子と、
前記コンデンサ層の厚さ方向に前記コンデンサ部を貫通するように形成されたスルーホール導体と、を備え、
前記スルーホール導体は、前記コンデンサ部を前記厚さ方向に貫通する第1の貫通孔の少なくとも内壁面に形成された第1のスルーホール導体を含み、
前記第1のスルーホール導体は、前記コンデンサ部の陽極と電気的に接続され、
前記スルーホール導体は、前記第1のスルーホール導体が形成された前記コンデンサ部を前記厚さ方向に貫通する第2の貫通孔の少なくとも内壁面に形成された第2のスルーホール導体をさらに含み、
前記第2のスルーホール導体は、前記コンデンサ部の陰極と電気的に接続され、
前記コンデンサ層は、前記コンデンサ部の表面に積層された第1の絶縁部と、前記第1の絶縁部の表面に積層された第2の絶縁部と、をさらに含み、
前記コンデンサ部は、金属からなる陽極板を含み、
前記第2のスルーホール導体と前記陽極板との間に、前記第2の絶縁部が延在し、
前記第2の絶縁部に穿たれた前記第2の貫通孔の内壁面と前記陽極板の主面の延長面とが成す角度が、90°以上であり、かつ、前記陽極板の芯部に接した前記第2の絶縁部に穿たれた前記第2の貫通孔の内壁面と前記陽極板の主面の延長面とが成す角度よりも大きい、モジュール。
【請求項16】
前記第1の絶縁部に穿たれた前記第2の貫通孔の内壁面と前記陽極板の主面の延長面とが成す角度が、90°以上であり、かつ、前記陽極板の芯部に接した前記第2の絶縁部に穿たれた前記第2の貫通孔の内壁面と前記陽極板の主面の延長面とが成す角度よりも大きく、
前記第2の絶縁部に穿たれた前記第2の貫通孔の内壁面と前記陽極板の主面の延長面とが成す角度が、前記第1の絶縁部に穿たれた前記第2の貫通孔の内壁面と前記陽極板の主面の延長面とが成す角度の大きさ以上である、請求項15に記載のモジュール。
【請求項17】
前記第2の貫通孔には樹脂を含む材料が充填されている、請求項12~16のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項18】
前記第2の貫通孔に充填される前記材料は、前記第2のスルーホール導体を構成する材料よりも熱膨張率が大きい、請求項17に記載のモジュール。
【請求項19】
前記スルーホール導体は、前記コンデンサ部の陽極および陰極のいずれにも接続されていない第3のスルーホール導体を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項20】
前記コンデンサ層は、平面配置された複数の前記コンデンサ部を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項21】
前記コンデンサ層は、1枚のコンデンサシートが分割された複数の前記コンデンサ部を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載のモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュール、例えば、パッケージ基板に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2011/0050334号明細書(特許文献1)は、インダクタあるいはコンデンサのような受動素子(パッシブ素子)の一部または全部が埋め込まれたパッケージ基板、および、スイッチング素子のような能動素子(アクティブ素子)を含む電圧制御装置(以下、「ボルテージレギュレータ」とも称する。)を有する半導体装置を開示する。特許文献1に記載の半導体装置においては、ボルテージレギュレータ、および、電源電圧を供給すべき負荷が、パッケージ基板上に実装されている。電圧調整部で調整された直流電圧は、パッケージ基板内の受動素子で平滑化されて負荷に供給される。
【0003】
特開2004-281750号公報(特許文献2)は、複数のコンデンサ素子からなるコンデンサ素子群と、このコンデンサ素子群の上記コンデンサ素子の1または2以上の陽極導出線のそれぞれに接続されて引き出された1または2以上の陽極端子と、上記コンデンサ素子の陰極層に接続されて引き出された1または2以上の陰極端子と、上記コンデンサ素子を被覆する外装樹脂層と、を備え、上記陽極端子および上記陰極端子を外部端子として構成したことを特徴とする固体電解コンデンサアレイを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2011/0050334号明細書
【文献】特開2004-281750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているようなボルテージレギュレータを有する半導体装置は、例えば、携帯電話またはスマートフォンなどの電子機器に適用される。近年、電子機器の小型化および薄型化が進められており、それに伴って半導体装置自体の小型化が望まれている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の半導体装置において、ボルテージレギュレータと負荷との間の接続距離が長くなると、配線によるロスが大きくなる。
【0007】
特に、特許文献2に記載されているような方法を用いて複数のコンデンサをアレイ状にする場合、ボルテージレギュレータおよび負荷と各コンデンサとの間の接続距離を短くすることが困難となる。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、配線によるロスを低減できるモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のモジュールは、コンデンサを形成するコンデンサ部を少なくとも1つ含むコンデンサ層と、接続端子と、上記コンデンサ層の厚さ方向に上記コンデンサ部を貫通するように形成されたスルーホール導体と、を備える。上記スルーホール導体は、上記コンデンサ部を上記厚さ方向に貫通する第1の貫通孔の少なくとも内壁面に形成された第1のスルーホール導体を含む。上記第1のスルーホール導体は、上記コンデンサ部の陽極と電気的に接続される。上記コンデンサ部は、金属からなる陽極板を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、配線によるロスを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明に用いられる半導体複合装置の一例を示すブロック図である。
図2図2は、本発明に用いられる半導体複合装置の別の一例を示すブロック図である。
図3図3は、図1に示す半導体複合装置10を模式的に示すパッケージ基板200の実装面から見た平面図である。
図4図4は、図3に示す半導体複合装置10のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図5は、図3に示す半導体複合装置10のV-V線に沿った断面図である。
図6図6は、コンデンサCP1を形成するコンデンサ層210の部分の平面図である。
図7図7は、インダクタL1を形成するインダクタ層250の部分の平面図である。
図8図8は、図1に示す半導体複合装置10の第1変形例を模式的に示す断面図である。
図9図9は、図1に示す半導体複合装置10の第2変形例を模式的に示す断面図である。
図10図10は、図1に示す半導体複合装置10の製造プロセスの概要を説明するためのフローチャートである。
図11図11A図11Bおよび図11Cは、ステップS100におけるコンデンサ層210の形成プロセスを説明するための図である。
図12図12A図12B図12Cおよび図12Dは、ステップS110におけるインダクタ層250の形成プロセスを説明するための図である。
図13図13Aおよび図13Bは、ステップS120におけるコンデンサ層210とインダクタ層250との接合プロセスを説明するための図である。
図14図14Aおよび図14Bは、ステップS130におけるスルーホール導体の形成プロセスを説明するための図である。
図15図15は、ステップS140における電極パターンおよび配線パターンの形成プロセスを説明するための図である。
図16図16は、ステップS150における機器の実装プロセスを説明するための図である。
図17図17は、本発明の第1実施形態に係るパッケージ基板の一例について、第1のスルーホール導体およびその周辺を模式的に示す断面図である。
図18図18は、図17のXVIII-XVIII線に沿った投影断面図である。
図19図19は、図17に示すパッケージ基板について、第2のスルーホール導体およびその周辺を模式的に示す断面図である。
図20図20は、図19のXX-XX線に沿った投影断面図である。
図21図21は、複数のコンデンサ部が平面配置されたコンデンサ層の一例を模式的に示す平面図である。
図22図22は、本発明の第2実施形態に係るパッケージ基板の一例について、第1のスルーホール導体およびその周辺を模式的に示す断面図である。
図23図23は、本発明の第3実施形態に係るパッケージ基板の一例について、第1のスルーホール導体およびその周辺を模式的に示す断面図である。
図24図24は、本発明の第4実施形態に係るパッケージ基板の一例について、第1のスルーホール導体およびその周辺を模式的に示す断面図である。
図25図25は、本発明の第5実施形態に係るパッケージ基板の一例について、第2のスルーホール導体およびその周辺を模式的に示す断面図である。
図26図26は、本発明のモジュールの一例を模式的に示す断面図である。
図27図27は、本発明のモジュールの第1変形例を模式的に示す断面図である。
図28図28は、本発明のモジュールの第2変形例を模式的に示す断面図である。
図29図29は、本発明のモジュールの第3変形例を模式的に示す断面図である。
図30図30は、本発明のモジュールの第4変形例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のモジュールについて説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0013】
本発明のモジュールは、一実施形態において、半導体アクティブ素子を含むボルテージレギュレータによって調整された直流電圧を負荷に供給する半導体複合装置に用いられる。
【0014】
本発明のモジュールは、一実施形態において、コンデンサを形成するコンデンサ部を少なくとも1つ含むコンデンサ層と、ボルテージレギュレータおよび負荷との電気的接続に用いられる接続端子と、コンデンサ層の厚さ方向にコンデンサ部を貫通するように形成されたスルーホール導体と、を備える。その場合、コンデンサは、スルーホール導体を介して負荷およびボルテージレギュレータと電気的に接続される。
【0015】
以下、本発明のモジュールの一実施形態として、パッケージ基板を例にとって説明する。
【0016】
本発明のモジュールの一実施形態であるパッケージ基板においては、ボルテージレギュレータと負荷との間を、コンデンサ部を貫通するスルーホール導体を介して電気的に接続している。これによって、ボルテージレギュレータと負荷との間の接続距離を短くすることができ、その結果、配線によるロスを低減することができる。
【0017】
さらに、パッケージ基板上に形成された配線の短縮化により配線部のインダクタ成分を小さくすることで、スイッチングの高速化が可能となり、半導体複合装置の小型化を図ることができる。
【0018】
また、信号ラインなど、パッケージ基板上に形成された配線と、電圧レギュレーションされた電源ラインとの間隔が広がるため、配線間の容量結合などにより生じるノイズ伝搬を低減でき、システムの安定動作を確保できる。
【0019】
[半導体複合装置]
図1は、本発明に用いられる半導体複合装置の一例を示すブロック図である。
図1に示す半導体複合装置10は、ボルテージレギュレータ(Voltage Regulator:VR)100と、パッケージ基板200と、負荷(Load)300と、を備える。負荷300は、例えば、論理演算回路あるいは記憶回路などの半導体集積回路(Integrated Circuit:IC)である。
【0020】
ボルテージレギュレータ100は、半導体スイッチング素子のようなアクティブ素子(図示せず)を含んでおり、当該アクティブ素子のデューティを制御することによって、外部から供給される直流電圧を負荷300に適した電圧レベルに調整する。
【0021】
パッケージ基板200は、その表面にボルテージレギュレータ100および負荷300を実装し、半導体複合装置10を1つのパッケージ部品として構成する。図1に示す半導体複合装置10では、パッケージ基板200の内部には、インダクタL1およびコンデンサCP1が形成される。
【0022】
図1に示す半導体複合装置10において、インダクタL1は、パッケージ基板200の入力端子INと出力端子OUTとの間に接続される。インダクタL1は、入力端子INにおいてボルテージレギュレータ100に接続され、出力端子OUTにおいて負荷300に接続される。コンデンサCP1は、出力端子OUTと接地端子GNDとの間に接続される。ボルテージレギュレータ100と、パッケージ基板200内のインダクタL1およびコンデンサCP1とで、チョッパ型の降圧スイッチングレギュレータが形成される。インダクタL1およびコンデンサCP1は、降圧スイッチングレギュレータのリップルフィルタとして機能する。当該スイッチングレギュレータによって、例えば、外部から入力される5Vの直流電圧が1Vに降圧されて、負荷300に供給される。
【0023】
図2は、本発明に用いられる半導体複合装置の別の一例を示すブロック図である。
図2に示す半導体複合装置10Aでは、パッケージ基板200Aの内部には、コンデンサCP1が形成される。図2に示されるように、インダクタL1がパッケージ部品として構成されず、ボルテージレギュレータ100とパッケージ部品との間に配置されてもよい。
【0024】
図2に示す半導体複合装置10Aにおいて、インダクタL1は、パッケージ基板200の入力端子INとボルテージレギュレータ100との間に配置される。コンデンサCP1は、出力端子OUT-入力端子IN間と接地端子GNDとの間に接続される。ボルテージレギュレータ100と、インダクタL1と、パッケージ基板200内のコンデンサCP1とで、チョッパ型の降圧スイッチングレギュレータが形成される。インダクタL1およびコンデンサCP1は、降圧スイッチングレギュレータのリップルフィルタとして機能する。当該スイッチングレギュレータによって、例えば、外部から入力される5Vの直流電圧が1Vに降圧されて、負荷300に供給される。
【0025】
なお、パッケージ基板200または200Aには、ボルテージレギュレータ100および負荷300に加えて、ノイズ対策のためのデカップリング用コンデンサ、チョークインダクタ、サージ保護用のダイオード素子、および分圧用の抵抗素子などの電子機器が実装されてもよい。
【0026】
以下、図1に示す半導体複合装置10の詳細な構成について説明する。
【0027】
図3は、図1に示す半導体複合装置10を模式的に示すパッケージ基板200の実装面から見た平面図である。図4は、図3に示す半導体複合装置10のIV-IV線に沿った断面図である。図5は、図3に示す半導体複合装置10のV-V線に沿った断面図である。図6は、コンデンサCP1を形成するコンデンサ層210の部分の平面図である。図7は、インダクタL1を形成するインダクタ層250の部分の平面図である。
【0028】
図3に示されるように、パッケージ基板200の実装面の3つの角には、入力端子INに対応するスルーホール導体260、出力端子OUTに対応するスルーホール導体262、および、接地端子GNDに対応するスルーホール導体264が形成される。
【0029】
ボルテージレギュレータ100はスルーホール導体260と重なる位置に配置され、負荷300はスルーホール導体262と重なる位置に配置される。すなわち、スルーホール導体260はボルテージレギュレータ100の直下となる位置に形成されており、スルーホール導体262は負荷300の直下となる位置に形成されている。また、上述のように、パッケージ基板200の実装面には、ボルテージレギュレータ100および負荷300以外の他の電子機器350が実装される。
【0030】
図4図7に示されるように、パッケージ基板200は、コンデンサCP1を形成するコンデンサ層210と、インダクタL1を形成するインダクタ層250と、樹脂層226、227および228と、を含む。
【0031】
樹脂層226、227および228は、各層を互いに接合するための接合材料として使用されるとともに、コンデンサ層210およびインダクタ層250の露出面を絶縁するための絶縁層として用いられる。コンデンサ層210とインダクタ層250とは、樹脂層227によって接合されている。コンデンサ層210の表面には樹脂層226が形成されており、インダクタ層250の底面には樹脂層228が形成されている。樹脂層226、227および228は、例えば、エポキシ、ポリイミドまたはフェノールなどの樹脂、あるいは、エポキシ、ポリイミドまたはフェノールなどの樹脂とシリカまたはアルミナなどの無機フィラーとの混合材料のような絶縁材料で形成される。スルーホール導体との密着性を確保するために、樹脂層としてエポキシを主体とする材料を用いることが好ましい。
【0032】
樹脂層226の表面には、ボルテージレギュレータ100などの機器を実装するためのランドおよびそれらを接続するための配線を含む回路層205が形成されている。パッケージ基板200に実装される機器は、はんだバンプ120を介して、回路層205のランドあるいは端子と電気的に接続される。
【0033】
回路層205は、銅(Cu)、金(Au)または銀(Ag)などの低抵抗の金属材料で形成される。なお、回路層205は、樹脂層226の表面のみに形成される場合には限られず、例えば樹脂層226の内部に複数層にわたって形成されるものであってもよい。なお、回路層205の実装面に形成されるランドあるいは端子の表面は、機器の実装を容易にするために、ニッケル/金(Ni/Au)めっき、ニッケル/鉛/金(Ni/Pb/Au)めっき、あるいはプリフラックス処理などの表面処理が施されていることが好ましい。また、機器の表面実装時のはんだ流れを防止するために、回路層205の最表層部分にソルダーレジスト層が形成されてもよい。
【0034】
コンデンサ層210は、コンデンサCP1を形成するコンデンサ部230と、出力端子OUTのスルーホール導体262に電気的に接続される導電部220と、接地端子GNDのスルーホール導体264に電気的に接続される導電部240と、これらの周囲に設けられた絶縁部225と、を含む。
【0035】
本実施形態では、コンデンサ部230は、金属からなる陽極板231を含む。例えば、陽極板231は、弁作用金属からなる芯部232を有する。陽極板231は、芯部232の少なくとも一方の主面に設けられた多孔質部234を有することが好ましい。多孔質部234の表面には誘電体層(図示せず)が設けられており、誘電体層の表面に陰極層236が設けられている。これにより、本実施形態では、コンデンサ部230は、電解コンデンサを形成している。
【0036】
コンデンサ部230が電解コンデンサを形成している場合、陽極板231は、いわゆる弁作用を示す弁作用金属からなる。弁作用金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウムなどの金属単体、または、これらの金属を少なくとも1種含む合金などが挙げられる。これらの中では、アルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましい。
【0037】
陽極板231の形状は、平板状であることが好ましく、箔状であることがより好ましい。陽極板231は、芯部232の少なくとも一方の主面に多孔質部234を有していればよく、芯部232の両方の主面に多孔質部234を有していてもよい。多孔質部234は、芯部232の表面に形成された多孔質層であることが好ましく、エッチング層であることがより好ましい。
【0038】
多孔質部234の表面に設けられる誘電体層は、多孔質部234の表面状態を反映して多孔質になっており、微細な凹凸状の表面形状を有している。誘電体層は、上記弁作用金属の酸化皮膜からなることが好ましい。例えば、陽極板231としてアルミニウム箔が用いられる場合、アジピン酸アンモニウムなどを含む水溶液中でアルミニウム箔の表面に対して陽極酸化処理(化成処理ともいう)を行うことにより、酸化皮膜からなる誘電体層を形成することができる。
【0039】
誘電体層の表面に設けられる陰極層236は、例えば、誘電体層の表面に設けられた固体電解質層を含む。陰極層236は、さらに、固体電解質層の表面に設けられた導電体層を含むことが好ましい。
【0040】
固体電解質層を構成する材料としては、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類などの導電性高分子などが挙げられる。これらの中では、ポリチオフェン類が好ましく、PEDOTと呼ばれるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。また、上記導電性高分子は、ポリスチレンスルホン酸(PSS)などのドーパントを含んでいてもよい。なお、固体電解質層は、誘電体層の細孔(凹部)を充填する内層と、誘電体層を被覆する外層とを含むことが好ましい。
【0041】
導電体層は、導電性樹脂層および金属層のうち、少なくとも1層を含む。導電体層は、導電性樹脂層のみでもよく、金属層のみでもよい。導電体層は、固体電解質層の全面を被覆することが好ましい。
【0042】
導電性樹脂層としては、例えば、銀フィラー、銅フィラー、ニッケルフィラーおよびカーボンフィラーからなる群より選択される少なくとも1種の導電性フィラーを含む導電性接着剤層などが挙げられる。
【0043】
金属層としては、例えば、金属めっき膜、金属箔などが挙げられる。金属層は、ニッケル、銅、銀およびこれらの金属を主成分とする合金からなる群より選択される少なくとも一種の金属からなることが好ましい。なお、「主成分」とは、元素の重量比率が最も大きい元素成分をいう。
【0044】
導電体層は、例えば、固体電解質層の表面に設けられたカーボン層と、カーボン層の表面に設けられた銅層とを含む。
【0045】
カーボン層は、固体電解質層と銅層とを電気的および機械的に接続させるために設けられている。カーボン層は、カーボンペーストをスポンジ転写、スクリーン印刷、ディスペンサ、インクジェット印刷などによって固体電解質層上に塗布することにより、所定の領域に形成することができる。
【0046】
銅層は、銅ペーストをスポンジ転写、スクリーン印刷、スプレー塗布、ディスペンサ、インクジェット印刷などによってカーボン層上に印刷することにより形成することができる。
【0047】
導電部220および240は、例えばAg、AuまたはCuのような低抵抗の金属を主体として構成される。層間の密着力向上を目的として、上記導電性フィラーと樹脂とを混合した導電性密着材を導電部として設けてもよい。
【0048】
絶縁部225は、エポキシ、フェノールまたはポリイミドなどの樹脂、あるいは、エポキシ、フェノールまたはポリイミドなどの樹脂とシリカまたはアルミナなどの無機フィラーとの混合材料のような絶縁材料で構成される。
【0049】
図4および図6に示されるように、機器の実装面側の多孔質部234は、一部が切欠かれて芯部232が露出した切欠部235とされている。当該切欠部235において、コンデンサ部230の陽極である芯部232は、ビア導体222を介して導電部220およびスルーホール導体262と電気的に接続されている。なお、コンデンサ部230の陽極である芯部232は、ビア導体222および導電部220を介さずに、陽極板231の端面において、スルーホール導体262と直接接続されていてもよい。
【0050】
また、図5および図6に示されるように、コンデンサ部230の陰極である陰極層236は、ビア導体242を介して導電部240およびスルーホール導体264と電気的に接続されている。
【0051】
なお、コンデンサ部230として、チタン酸バリウムを用いたセラミックコンデンサ、あるいは、窒化ケイ素(SiN)、二酸化ケイ素(SiO)、フッ化水素(HF)などを用いた薄膜コンデンサを用いることも可能である。しかしながら、より薄型で比較的大きな面積のコンデンサ部230を形成できること、および、パッケージ基板200の剛性および柔軟性のような機械特性の観点から、コンデンサ部230は、アルミニウムなどの金属を基材とするコンデンサであることが好ましく、アルミニウムなどの金属を基材とする電解コンデンサであることがより好ましい。
【0052】
スルーホール導体260、262および264は、コンデンサ層210の厚さ方向にコンデンサ部230を貫通するように形成されている。本実施形態では、スルーホール導体260、262および264は、パッケージ基板200の厚さ方向の表面から底面まで貫通する貫通孔261、263および265の少なくとも内壁面にそれぞれ形成されている。これらの貫通孔の内壁面は、Cu、AuまたはAgなどの低抵抗の金属によってメタライズされる。加工の容易さから、例えば、無電解Cuめっき、電解Cuめっきによりメタライズすることができる。なお、スルーホール導体のメタライズについては、貫通孔の内壁面のみをメタライズする場合に限られず、金属あるいは金属と樹脂との複合材料などを充填してもよい。
【0053】
ここで、スルーホール導体は、A.コンデンサの陽極用のもの、B.コンデンサの陰極およびグランド用のもの、C.I/Oライン用のもの、に分類される。A.コンデンサの陽極用のものはコンデンサ部230の陽極に接続されており、B.コンデンサの陰極およびグランド用のものはコンデンサ部230の陰極に接続されており、C.I/Oライン用のものはコンデンサ部230の陽極および陰極のいずれにも接続されていない。
【0054】
スルーホール導体のうち、A.コンデンサの陽極用のものは、コンデンサ部230を貫通する貫通孔とスルーホール導体との間に絶縁材料が充填されていてもよく、充填されていなくてもよい。後者の場合、コンデンサ部230の陽極である陽極板231の芯部232とスルーホール導体とが直接接続される構造となる。B.コンデンサの陰極およびグランド用のもの、および、C.I/Oライン用のものは、コンデンサ部230を貫通する貫通孔とスルーホール導体との間に絶縁材料が充填されている。
【0055】
例えば、A.コンデンサの陽極用のものとしてはスルーホール導体262が該当し、B.コンデンサの陰極およびグランド用のものとしてはスルーホール導体264が該当し、C.I/Oライン用のものとしてはスルーホール導体260が該当する。また、C.I/Oライン用のものとしては、例えば、以下のスルーホール導体266および267も該当する。
【0056】
図8は、図1に示す半導体複合装置10の第1変形例を模式的に示す断面図である。図8では、マザー基板400上に半導体複合装置10Bが実装された状態を示している。
【0057】
図8に示す半導体複合装置10Bに含まれるパッケージ基板200Bには、負荷300を基板上に実装した場合に、負荷300の信号用のグランドラインの端子に接続されるスルーホール導体266が設けられる。スルーホール導体266は、コンデンサ層210に含まれるコンデンサ部230およびインダクタ層250に含まれるコイル部252とは電気的に接続されない状態で、底面の端子層270まで貫通している。そして、はんだバンプ380を介して、マザー基板400のグランドラインに接続される端子410に電気的に接続される。
【0058】
なお、図8においては、負荷300のグランドラインのスルーホール導体について説明したが、他の実装機器のグランドラインについても同様の構成としてもよい。
【0059】
図9は、図1に示す半導体複合装置10の第2変形例を模式的に示す断面図である。図9では、マザー基板400上に半導体複合装置10Cが実装された状態を示している。
【0060】
図9に示す半導体複合装置10Cに含まれるパッケージ基板200Cには、実装面に配置された負荷300あるいはボルテージレギュレータ100の信号ラインの端子にされるスルーホール導体267が設けられる。スルーホール導体267は、図8に示す信号用のグランドライン用のスルーホール導体266と同様に、コンデンサ層210に含まれるコンデンサ部230およびインダクタ層250に含まれるコイル部252とは電気的に接続されない状態で、底面の端子層270まで貫通している。そして、スルーホール導体267は、はんだバンプ380および端子410を介して、マザー基板400の実装面に形成された機器(図示せず)のI/O端子に接続するための信号ラインに電気的に接続される。
【0061】
なお、図9には、信号ライン用のスルーホール導体267に加えて、図8で説明したグランドライン用のスルーホール導体266も示されているが、スルーホール導体266がなく信号ライン用のスルーホール導体267のみが設けられる構成であってもよい。
【0062】
一例として、陽極板231の芯部232および多孔質部234の厚みをそれぞれおよそ50μmとし、導電部220および240の厚みをそれぞれおよそ15μmとし、コンデンサ層210全体の厚みをおよそ200μmとする。
【0063】
インダクタ層250は、図7に示されるように、インダクタL1を形成するコイル部252と、当該コイル部252の周囲を樹脂でモールドした絶縁部254とを含む。
【0064】
コイル部252は、電鋳法あるいは圧延法によって100μm程度に形成されたCuのコア材(Cu箔)を、フォトレジストなどでコイル状にパターニングした後にエッチングすることによって形成される金属配線である。コイル部252は、その一方端がスルーホール導体260に電気的に接続され、他方端がスルーホール導体262に電気的に接続される。
【0065】
絶縁部254は、例えば、エポキシ、フェノールまたはポリイミドなどの樹脂、あるいは、エポキシ、フェノールまたはポリイミドなどの樹脂とフェライトもしくは珪素鋼などの無機磁性体フィラーとの混合材料のような絶縁材料で形成される。負荷300に直流電力を供給するための回路の場合、直流重畳特性の優れた珪素鋼などの金属系磁性材料のフィラーを用いることが好ましい。
【0066】
無機磁性体フィラーは、磁気特性を向上させるために、異なる平均粒径を有するフィラーを分散配置させたり、磁気飽和防止のために分散濃度に勾配を持たせるように配置させたりしてもよい。また、磁気特性に方向性を持たせるために、扁平状あるいは鱗片状のフィラーを用いてもよい。無機磁性体フィラーとして珪素鋼などの金属系材料を用いる場合には、絶縁性を高めるために、フィラーの周囲を無機系絶縁被膜、有機系絶縁被膜などにより表面絶縁膜を施すようにしてもよい。
【0067】
なお、コイル部252との線膨張係数差の低減、放熱性または絶縁性の向上などの目的のために、磁性材料以外の無機フィラー、有機フィラーが混在されてもよい。
【0068】
絶縁部254の厚みを調整することによってインダクタンスを調整することができる。一例として、100μmのコイル部252の上下の絶縁部254をそれぞれ100μmとし、インダクタ層250全体の厚みをおよそ300μmとする。
【0069】
インダクタ層250の底面に設けられる樹脂層228の表面には、当該半導体複合装置10をマザー基板(図示せず)に実装するための端子層270が形成される。端子層270には、上述の入力端子IN、出力端子OUT、および接地端子GNDが含まれる。また、端子層270は、コンデンサ層210に形成される回路層205と同様に、端子の他に回路を構成する配線を含んでもよく、さらに複数の層で構成されてもよい。
【0070】
パッケージ基板200は、システムの薄層化、および負荷300の放熱性などの観点から、一般的には2mm以下の厚みが要求される。一例として、樹脂層226および回路層205を含む上部回路層を50μm、コンデンサ層210を200μm、樹脂層227を20μm、インダクタ層250を300μm、樹脂層228および端子層270を含む底部端子層を50μmとして、半導体複合装置10全体の厚みを0.6mm程度とする。
【0071】
以下、図1に示す半導体複合装置10の製造プロセスについて説明する。
【0072】
図10は、図1に示す半導体複合装置10の製造プロセスの概要を説明するためのフローチャートである。
【0073】
図10に示されるように、ステップS100およびステップS110において、コンデンサ層210およびインダクタ層250がそれぞれ個別に形成される。その後、ステップS120にて、形成されたコンデンサ層210およびインダクタ層250を、樹脂層226、227および228を用いて接合して一体化する。次に、ステップS130にて、一体化されたコンデンサ層210およびインダクタ層250にスルーホール導体を形成する。その後、ステップS140にて、実装面に電極パターンおよび配線パターンを形成し、ステップS150にて、完成したパッケージ基板200に、ボルテージレギュレータ100などの機器を実装する。
【0074】
図11A図11Bおよび図11Cは、ステップS100におけるコンデンサ層210の形成プロセスを説明するための図である。
【0075】
図11Aに示されるように、まず、陽極板231となるアルミニウム箔の両面をポーラス状に加工して、芯部232の表面に多孔質部234を形成する。多孔質部234の表面に酸化皮膜を施すことによって誘電体層(図示せず)を形成する。その後、誘電体層の表面に陰極層236を形成する。
【0076】
このとき、図4におけるコンデンサ層210のように、多孔質部234の一部を、例えばダイシングプロセスなどによって、芯部232が露出するまで削り出し、露出した芯部232にCuペーストを焼き付けてもよい。これによって、コンデンサ部230が形成される。
【0077】
その後、スルーホール導体が形成される部分に、ドリル加工あるいはレーザ加工などによって貫通孔を形成する。
【0078】
次に、図11Bに示されるように、エポキシ、ポリイミドまたはフェノールなどの樹脂、あるいは、エポキシ、ポリイミドまたはフェノールなどの樹脂とシリカまたはアルミナなどの無機フィラーとの混合材料をコンデンサ部230にラミネート加工し、さらに熱硬化させることによってコンデンサ部230を封止し、絶縁部225を形成する。封止処理後、スルーホール導体とコンデンサ部230の各電極とを接続するための導電部220および240を形成するための導電層212を、めっき配線加工などによって、絶縁部225の表面に形成する。なお、封止処理後に貫通孔を形成してもよい。
【0079】
その後、図11Cに示されるように、エッチングなどにより導電層212を加工して導電部220および240を形成する。そして、当該導電部220および240にレーザ加工などによって、陽極板231の芯部232および陰極層236まで到達する孔を開口し、そこにCuなどの導電体を充填することによって、陽極板231の芯部232と導電部220とを電気的に接続するとともに、陰極層236と導電部240とを電気的に接続する。これによって、コンデンサ層210が形成される。なお、陽極板231の端面において、陽極板231の芯部232とスルーホール導体262とを直接接続させてもよい。この場合、導電部220を形成する必要はない。
【0080】
図12A図12B図12Cおよび図12Dは、ステップS110におけるインダクタ層250の形成プロセスを説明するための図である。
【0081】
図12Aに示されるように、まず、コアとなる銅箔252#の両面に、フォトレジストなどによりパターニングを実施するとともに、フォトレジスト開口部をエッチングする。これによって、図12Bに示されるように、コイル部252を形成する。
【0082】
その後、フェライトや珪素鋼などの金属磁性体フィラーが分散されたエポキシコンポジットシートを、真空ラミネータなどを用いてコイル部252の表面にラミネート加工し、熱プレス機によって平坦化およびエポキシ層の熱硬化処理を行う。これによって、図12Cに示されるように、絶縁部254を形成する。
【0083】
そして、図12Dに示されるように、スルーホール導体が形成される部分にドリル加工あるいはレーザ加工などによって貫通孔を形成し、当該貫通孔を絶縁性の樹脂256を充填する。これによって、インダクタ層250が形成される。
【0084】
図13Aおよび図13Bは、ステップS120におけるコンデンサ層210とインダクタ層250との接合プロセスを説明するための図である。
【0085】
図13Aに示されるように、ステップS100およびステップS110で形成されたコンデンサ層210およびインダクタ層250の上下面および中間面に、エポキシ、ポリイミドまたはフェノールなどの樹脂、あるいは、エポキシ、ポリイミドまたはフェノールなどの樹脂と無機フィラーからなる混合材料をフィルム状にした樹脂層226、227および228を配置する。その後、図13Bに示されるように、積層されたこれらの層を、真空プレスなどによって接合および硬化させることによって一体化させる。
【0086】
図14Aおよび図14Bは、ステップS130におけるスルーホール導体の形成プロセスを説明するための図である。
【0087】
図14Aに示されるように、各層を一体化した後、ドリル加工あるいはレーザ加工によって、スルーホール導体が形成される部分に貫通孔を形成する。そして、図14Bに示されるように、無電解Cuめっきなどにより、貫通孔の内部の表面をメタライジングしてスルーホール導体を形成するとともに、樹脂層226および228の表面をメタライジングして金属層269を形成する。
【0088】
このとき、さらに電解Cuめっき処理を施して、樹脂層表面の金属層269の厚さを厚くしたり、スルーホール導体が形成された貫通孔内をCuで充填したりしてもよい。
【0089】
図15は、ステップS140における電極パターンおよび配線パターンの形成プロセスを説明するための図である。
【0090】
図15に示されるように、フォトレジストを用いて、樹脂層表面の金属層269をパターニングするとともに、エッチングを施して不要なCuを除去することによって、回路層205および端子層270を形成する配線、ランドおよび端子を樹脂層表面に形成する。このとき、機器の実装を容易にするために、ランドおよび端子などの金属表面には、Ni/Auめっき、Ni/Pb/Auめっき、あるいはプリフラックス処理などの表面処理が施されることが好ましい。また、機器の表面実装時のはんだ流れを防止するために、最表層部分にソルダーレジスト層を形成してもよい。以上により、パッケージ基板200が形成される。
【0091】
図16は、ステップS150における機器の実装プロセスを説明するための図である。
【0092】
図16に示されるように、上記により形成されたパッケージ基板200において、コンデンサ層210表面の回路層205に、ボルテージレギュレータ100(図4参照)、負荷300および他の電子機器350が実装されることによって、図1に示す半導体複合装置10が形成される。
【0093】
なお、半導体複合装置10においては、パッケージ基板200においてインダクタ層250の上部にコンデンサ層210が配置された構成であるが、電気的な接続を維持すればインダクタ層250とコンデンサ層210の順序が反対であってもよい。また、パッケージ基板内にコンデンサ層210が2層以上含まれる構成であってもよいし、インダクタ層250が2層以上含まれる構成であってもよい。あるいは、パッケージ基板内に複数のコンデンサ層が平面配置される構成であってもよいし、複数のインダクタ層が平面配置される構成であってもよい。さらに、パッケージ基板200Aのように、パッケージ基板内にインダクタ層250が配置されない構成であってもよい。
【0094】
また、上記では、チョッパ型の降圧スイッチングレギュレータに適用した例について説明したが、その他の昇降圧回路を含む電力送電ラインをシステム化した半導体複合装置についても適用可能である。
【0095】
[パッケージ基板]
以下、本発明のモジュールの一実施形態であるパッケージ基板について、実施形態毎に説明する。
【0096】
本発明のモジュールの一実施形態であるパッケージ基板は、例えば、コンデンサが形成されたコンデンサ層と、ボルテージレギュレータおよび負荷の少なくとも一方との電気的接続に用いられる接続端子と、上記コンデンサ層の厚さ方向に上記コンデンサ層を貫通するように形成されたスルーホール導体と、を備え、上記コンデンサは、上記スルーホール導体を介して上記負荷および上記ボルテージレギュレータの少なくとも一方と電気的に接続される。上記パッケージ基板は、インダクタが形成されたインダクタ層を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0097】
以下に示す各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。第2実施形態以降では、第1実施形態と共通の事項についての記述は省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎には逐次言及しない。
【0098】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るパッケージ基板では、スルーホール導体は、コンデンサ部を厚さ方向に貫通する第1の貫通孔の少なくとも内壁面に形成された第1のスルーホール導体を含み、第1のスルーホール導体は、コンデンサ部の陽極と電気的に接続されている。本発明の第1実施形態では、第1のスルーホール導体をコンデンサ部の陽極と電気的に接続することで、パッケージ基板の小型化を図ることができ、半導体複合装置の更なる小型化が可能となる。
【0099】
さらに、本発明の第1実施形態に係るパッケージ基板では、コンデンサ部は、金属からなる陽極板を含み、第1のスルーホール導体は、陽極板の端面と接続されている。これにより、第1のスルーホール導体を通じて、コンデンサ層の上下を接続する配線機能と、コンデンサ部の陽極と配線を接続する機能とを同時に実現することができるため、半導体複合装置の小型化を図ることができる。さらに、配線長が短くなることで、コンデンサのESRを低減でき、配線によるロスを低減できる。
【0100】
図17は、本発明の第1実施形態に係るパッケージ基板の一例について、第1のスルーホール導体およびその周辺を模式的に示す断面図である。図18は、図17のXVIII-XVIII線に沿った投影断面図である。
【0101】
図17に示すパッケージ基板200Dは、コンデンサ層210と、第1のスルーホール導体262Aと、を備える。コンデンサ層210は、コンデンサ部230と、第1のスルーホール導体262Aに電気的に接続される導電部220と、コンデンサ部230の表面に積層された絶縁部225と、を含む。導電部220は、第1のスルーホール導体262Aの表面に形成されており、接続端子として機能することができる。絶縁部225は、図17に示されるように、コンデンサ部230の表面に積層された第1の絶縁部225Aと、第1の絶縁部225Aの表面に積層された第2の絶縁部225Bと、を含むことが好ましい。
【0102】
本実施形態では、コンデンサ部230は、金属からなる陽極板231を含む。陽極板231は、弁作用金属からなる芯部232を有する。陽極板231は、芯部232の少なくとも一方の主面に設けられた多孔質部234を有することが好ましい。多孔質部234の表面には誘電体層(図示せず)が設けられており、誘電体層の表面に陰極層236が設けられている。これにより、本実施形態では、コンデンサ部230は、電解コンデンサを形成している。なお、図17には、陰極層236として、導電体層であるカーボン層236Aおよび銅層236Bが示されている。図17には示されていないが、陰極層236として、誘電体層の表面に固体電解質層が設けられており、固体電解質層の表面に導電体層が設けられている。
【0103】
第1のスルーホール導体262Aは、コンデンサ層210の厚さ方向にコンデンサ部230を貫通するように形成されている。具体的には、第1のスルーホール導体262Aは、コンデンサ部230を厚さ方向に貫通する第1の貫通孔263Aの少なくとも内壁面に形成されている。
【0104】
第1のスルーホール導体262Aは、図17および図18に示されるように、陽極板231の端面と接続されている。すなわち、第1のスルーホール導体262Aは、陽極板231の端面において、コンデンサ部230の陽極である芯部232と接続されている。
【0105】
第1のスルーホール導体262Aと接続される陽極板231の端面には、芯部232および多孔質部234が露出している。多孔質部234に絶縁材料が充填されることで、図17および図18に示されるように、第1のスルーホール導体262Aの周囲に第3の絶縁部225Cが設けられている。
【0106】
図17に示されるように、第1のスルーホール導体262Aと接続される陽極板231の端面に、芯部232および多孔質部234が露出していることが好ましい。この場合、第1のスルーホール導体262Aと多孔質部234との接触面積が大きくなるため、密着性が高くなり、第1のスルーホール導体262Aの剥がれ等の不具合が生じにくくなる。
【0107】
第1のスルーホール導体262Aと接続される陽極板231の端面に、芯部232および多孔質部234が露出している場合、多孔質部234の空洞部分に絶縁材料が存在していることが好ましい。すなわち、第1のスルーホール導体262Aの周囲に第3の絶縁部225Cが設けられていることが好ましい。第1のスルーホール導体262Aの一定周囲の多孔質部234に絶縁材料を充填することで、陽極板231の芯部232と陰極層236との間の絶縁性を確保でき、短絡を防止することができる。さらに、導電部220などを形成するための薬液処理時に生じる陽極板231の端面の溶解を抑制できるため、コンデンサ部230への薬液の侵入を防止でき、コンデンサの信頼性が向上する。
【0108】
上述した効果を高める観点から、第3の絶縁部225Cの厚さは、図17に示されるように、多孔質部234の厚さよりも厚いことが好ましい。
【0109】
なお、第1のスルーホール導体262Aと接続される陽極板231の端面に、芯部232および多孔質部234が露出している場合、多孔質部234の空洞部分に絶縁材料が存在しなくてもよい。この場合、陽極板231の端面には、多孔質部234の空洞部分が露出する。
【0110】
図17および図18に示されるように、第1のスルーホール導体262Aと陽極板231との間に陽極接続層268が設けられており、陽極接続層268を介して、第1のスルーホール導体262Aが陽極板231の端面と接続されていることが好ましい。第1のスルーホール導体262Aと陽極板231との間に陽極接続層268が設けられていることで、陽極接続層268が陽極板231の芯部232および多孔質部234に対するバリア層としての機能を果たす。その結果、導電部220などを形成するための薬液処理時に生じる陽極板231の溶解を抑制できるため、コンデンサ部230への薬液の侵入を防止でき、コンデンサの信頼性が向上する。
【0111】
第1のスルーホール導体262Aと陽極板231との間に陽極接続層268が設けられている場合、陽極接続層268は、例えば、図17および図18に示されるように、陽極板231から順に、Znを主たる材料とする第1の陽極接続層268Aと、NiまたはCuを主たる材料とする第2の陽極接続層268Bと、を含む。例えば、ジンケート処理によりZnを置換析出させて陽極板231の端面に第1の陽極接続層268Aを形成した後、無電解Niめっき処理または無電解Cuめっき処理により、第1の陽極接続層268A上に第2の陽極接続層268Bを形成する。なお、第1の陽極接続層268Aは消失する場合もあり、この場合、陽極接続層268は、第2の陽極接続層268Bのみを含んでもよい。
【0112】
中でも、陽極接続層268は、Niを主たる材料とする層を含むことが好ましい。陽極接続層268にNiを用いることで、陽極板231を構成するAlなどへのダメージを低減でき、バリア性を向上できる。
【0113】
第1のスルーホール導体262Aと陽極板231との間に陽極接続層268が設けられている場合、図17に示されるように厚さ方向に直交する方向から断面視したとき、第1のスルーホール導体262Aが延びる方向における陽極接続層268の長さは、第1のスルーホール導体262Aが延びる方向における陽極板231の長さよりも長いことが好ましい。この場合、陽極板231の端面に露出した芯部232および多孔質部234は、陽極接続層268に完全に被覆されるため、上述した陽極板231の溶解をさらに抑制できる。
【0114】
厚さ方向に直交する方向から断面視したとき、第1のスルーホール導体262Aが延びる方向における陽極接続層268の長さは、例えば、第1のスルーホール導体262Aが延びる方向における陽極板231の長さの100%以上、200%以下であることが好ましい。第1のスルーホール導体262Aが延びる方向における陽極接続層268の長さは、第1のスルーホール導体262Aが延びる方向における陽極板231の長さと同じであってもよく、第1のスルーホール導体262Aが延びる方向における陽極板231の長さよりも短くてもよい。
【0115】
図18に示されるように厚さ方向から平面視したとき、第1のスルーホール導体262Aは、第1の貫通孔263Aの全周にわたり、陽極板231の端面と接続されていることが好ましい。この場合、第1のスルーホール導体262Aと陽極板231との接触面積が大きくなるため、第1のスルーホール導体262Aとの接続抵抗が低減し、コンデンサのESRを低くすることができる。さらに、第1のスルーホール導体262Aと陽極板231との密着性が高くなり、熱応力による接続面での剥がれ等の不具合が生じにくくなる。
【0116】
第1の貫通孔263Aには、樹脂を含む材料が充填されていることが好ましい。すなわち、図17および図18に示されるように、第1の貫通孔263A内に第1の樹脂充填部229Aが設けられていることが好ましい。第1の貫通孔263A内に樹脂材料を充填して空隙を解消することで、第1の貫通孔263Aの内壁面に形成された第1のスルーホール導体262Aのデラミネーションの発生を抑えることができる。
【0117】
第1の貫通孔263Aに充填される材料は、第1のスルーホール導体262Aを構成する材料(例えば銅)よりも熱膨張率が大きいことが好ましい。この場合、第1の貫通孔263Aに充填された材料が高温環境下で膨張することで、第1のスルーホール導体262Aを第1の貫通孔263Aの内側から外側へと押さえ付け、第1のスルーホール導体262Aのデラミネーションの発生をさらに抑えることができる。
【0118】
第1の貫通孔263Aに充填される材料の熱膨張率は、第1のスルーホール導体262Aを構成する材料の熱膨張率と同じであってもよく、第1のスルーホール導体262Aを構成する材料の熱膨張率よりも小さくてもよい。
【0119】
本発明の第1実施形態に係るパッケージ基板では、スルーホール導体は、第1のスルーホール導体が形成されたコンデンサ部を厚さ方向に貫通する第2の貫通孔の少なくとも内壁面に形成された第2のスルーホール導体をさらに含み、第2のスルーホール導体は、コンデンサ部の陰極と電気的に接続されていることが好ましい。この場合、第2のスルーホール導体をコンデンサ部の陰極と電気的に接続することで、パッケージ基板の小型化を図ることができ、半導体複合装置の更なる小型化が可能となる。
【0120】
図19は、図17に示すパッケージ基板について、第2のスルーホール導体およびその周辺を模式的に示す断面図である。図20は、図19のXX-XX線に沿った投影断面図である。
【0121】
図19に示すパッケージ基板200Dは、コンデンサ層210と、第2のスルーホール導体264Aと、を備える。コンデンサ層210は、コンデンサ部230と、第2のスルーホール導体264Aに電気的に接続される導電部240と、コンデンサ部230の表面に積層された絶縁部225と、を含む。導電部240は、第2のスルーホール導体264Aの表面に形成されており、接続端子として機能することができる。絶縁部225は、図19に示されるように、コンデンサ部230の表面に積層された第1の絶縁部225Aと、第1の絶縁部225Aの表面に積層された第2の絶縁部225Bと、を含むことが好ましい。
【0122】
図17において説明したように、コンデンサ部230は、金属からなる陽極板231を含む。例えば、陽極板231は、弁作用金属からなる芯部232を有する。陽極板231は、芯部232の少なくとも一方の主面に設けられた多孔質部234を有することが好ましい。多孔質部234の表面には誘電体層(図示せず)が設けられており、誘電体層の表面に陰極層236が設けられている。これにより、本実施形態では、コンデンサ部230は、電解コンデンサを形成している。
【0123】
第2のスルーホール導体264Aは、コンデンサ層210の厚さ方向にコンデンサ部230を貫通するように形成されている。具体的には、第2のスルーホール導体264Aは、コンデンサ部230を厚さ方向に貫通する第2の貫通孔265Aの少なくとも内壁面に形成されている。
【0124】
第2のスルーホール導体264Aは、図19に示されるように、導電部240およびビア導体242を介して陰極層236と電気的に接続されている。
【0125】
絶縁部225が第1の絶縁部225Aと第2の絶縁部225Bとを含む場合、図19および図20に示されるように、第2のスルーホール導体264Aと陽極板231との間に、第2の絶縁部225Bが延在することが好ましい。第2のスルーホール導体264Aと陽極板231との間に第2の絶縁部225Bが存在することで、第2のスルーホール導体264Aと陽極板231の芯部232との間の絶縁性を確保することができる。
【0126】
第2の絶縁部225Bに接する陽極板231の端面には、芯部232および多孔質部234が露出している。多孔質部234に絶縁材料が充填されることで、図19および図20に示されるように、第2のスルーホール導体264Aの周囲に第4の絶縁部225Dが設けられている。
【0127】
第2のスルーホール導体264Aと陽極板231との間に第2の絶縁部225Bが延在する場合、図19に示されるように、第2の絶縁部225Bに接する陽極板231の端面に、芯部232および多孔質部234が露出していることが好ましい。この場合、第2の絶縁部225Bと多孔質部234との接触面積が大きくなるため、密着性が高くなり、剥がれ等の不具合が生じにくくなる。
【0128】
第2の絶縁部225Bに接する陽極板231の端面に、芯部232および多孔質部234が露出している場合、多孔質部234の空洞部分に絶縁材料が存在することが好ましい。すなわち、図19および図20に示されるように、第2のスルーホール導体264Aの周囲に第4の絶縁部225Dが設けられていることが好ましい。第2のスルーホール導体264Aの一定周囲の多孔質部234に絶縁材料を充填することで、第2のスルーホール導体264Aと陽極板231の芯部232との間の絶縁性を確保でき、短絡を防止することができる。
【0129】
上述した効果を高める観点から、第4の絶縁部225Dの厚さは、図19に示されるように、多孔質部234の厚さよりも厚いことが好ましい。
【0130】
なお、第2の絶縁部225Bに接する陽極板231の端面に、芯部232および多孔質部234が露出している場合、多孔質部234の空洞部分に絶縁材料が存在しなくてもよい。この場合、陽極板231の端面には、多孔質部234の空洞部分が露出する。
【0131】
第2のスルーホール導体264Aと陽極板231との間に第2の絶縁部225Bが延在する場合、第2の絶縁部225Bを構成する絶縁材料が多孔質部234の空洞部分に入り込んでいることが好ましい。これにより、多孔質部234の機械的強度を向上させることができる。また、多孔質部234の空隙に起因するデラミネーションの発生を抑えることができる。
【0132】
第2の絶縁部225Bを構成する絶縁材料は、第2のスルーホール導体264Aを構成する材料(例えば銅)よりも熱膨張率が大きいことが好ましい。この場合、第2の絶縁部225Bを構成する絶縁材料が高温環境下で膨張することで、多孔質部234および第2のスルーホール導体264Aを押さえ付け、デラミネーションの発生をさらに抑えることができる。
【0133】
第2の絶縁部225Bを構成する絶縁材料の熱膨張率は、第2のスルーホール導体264Aを構成する材料の熱膨張率と同じであってもよく、第1のスルーホール導体262Aを構成する材料の熱膨張率よりも小さくてもよい。
【0134】
第2の貫通孔265Aには、樹脂を含む材料が充填されていることが好ましい。すなわち、図19および図20に示されるように、第2の貫通孔265A内に第2の樹脂充填部229Bが設けられていることが好ましい。第2の貫通孔265A内に樹脂材料を充填して空隙を解消することで、第2の貫通孔265Aの内壁面に形成された第2のスルーホール導体264Aのデラミネーションの発生を抑えることができる。
【0135】
第2の貫通孔265Aに充填される材料は、第2のスルーホール導体264Aを構成する材料(例えば銅)よりも熱膨張率が大きいことが好ましい。この場合、第2の貫通孔265Aに充填された材料が高温環境下で膨張することで、第2のスルーホール導体264Aを第2の貫通孔265Aの内側から外側へと押さえ付け、第2のスルーホール導体264Aのデラミネーションの発生をさらに抑えることができる。
【0136】
第2の貫通孔265Aに充填される材料の熱膨張率は、第2のスルーホール導体264Aを構成する材料の熱膨張率と同じであってもよく、第2のスルーホール導体264Aを構成する材料の熱膨張率よりも小さくてもよい。
【0137】
本発明の第1実施形態に係るパッケージ基板では、スルーホール導体は、コンデンサ部の陽極および陰極のいずれにも接続されていない第3のスルーホール導体を含んでもよい。第1のスルーホール導体および第2のスルーホール導体に加えて、グランドに接続するラインなどを同じくスルーホール導体を介してパッケージ基板の上下に接続することで、パッケージ基板の設計自由度が向上し、半導体複合装置の更なる小型化を図ることができる。第3のスルーホール導体としては、例えば、図4に示すスルーホール導体260、図8に示すスルーホール導体266、図9に示すスルーホール導体267などが挙げられる。
【0138】
上述のとおり、スルーホール導体は、A.コンデンサの陽極用のもの、B.コンデンサの陰極およびグランド用のもの、C.I/Oライン用のもの、に分類される。A.コンデンサの陽極用のものとしては第1のスルーホール導体が該当し、B.コンデンサの陰極およびグランド用のものとしては第2のスルーホール導体が該当し、C.I/Oライン用のものとしては第3のスルーホール導体が該当する。
【0139】
A.コンデンサの陽極用の第1のスルーホール導体のうち、陽極板の端面と直接接続される第1のスルーホール導体は、例えば、以下の方法により形成することができる。
1.第1のスルーホール導体が形成される部分に、ドリル加工あるいはレーザ加工などによって、貫通孔1を形成する。
2.貫通孔1の内壁面に対して、めっきなどでメタライジングすることで、第1のスルーホール導体を形成する。
【0140】
B.コンデンサの陰極およびグランド用の第2のスルーホール導体、および、C.I/Oライン用の第3のスルーホール導体は、例えば、以下の方法により形成することができる。
1.第2のスルーホール導体または第3のスルーホール導体が形成される部分に、ドリル加工あるいはレーザ加工などによって、貫通孔1を形成する。
2.貫通孔1を樹脂で充填する。
3.貫通孔1に充填された樹脂に対して、ドリル加工あるいはレーザ加工などによって、貫通孔2を形成する。この際、樹脂の直径に対して貫通孔2の直径を小さくすることで、貫通孔1と貫通孔2との間に樹脂が存在する状態にする。
4.貫通孔2の内壁面に対して、めっきなどでメタライジングすることで、第2のスルーホール導体または第3のスルーホール導体を形成する。
【0141】
本発明の第1実施形態に係るパッケージ基板において、コンデンサ層は、平面配置された複数のコンデンサ部を含んでもよい。複数のコンデンサ部を平面配置した場合においても、各々のコンデンサ部に接続される配線に対して、これまで説明した効果と同じ効果が得られる。
【0142】
図21は、複数のコンデンサ部が平面配置されたコンデンサ層の一例を模式的に示す平面図である。
【0143】
図21に示すコンデンサ層210Aは、平面配置された複数のコンデンサ部230を含む。各々のコンデンサ部230において、陽極Xは図17および図18に示す構造を有し、陰極Yは図19および図20に示す構造を有する。すなわち、コンデンサ部230の陽極Xでは、第1のスルーホール導体262Aは、陽極板231の端面において、コンデンサ部230の陽極である芯部232と接続されており、第2のスルーホール導体264Aは、導電部240およびビア導体242を介して陰極層236と電気的に接続されている。
【0144】
本発明の第1実施形態に係るパッケージ基板において、コンデンサ層は、1枚のコンデンサシートが分割された複数のコンデンサ部を含むことが好ましい。この場合、コンデンサ部の配置に対する自由度が向上するため、半導体複合装置の小型化などにおいて、より高い効果が得られる。
【0145】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態においては、第1のスルーホール導体の形状が、陽極板の芯部に位置する部分と多孔質部に位置する部分とで異なっている。
【0146】
図22は、本発明の第2実施形態に係るパッケージ基板の一例について、第1のスルーホール導体およびその周辺を模式的に示す断面図である。
【0147】
図22に示すパッケージ基板200Eにおいては、第1のスルーホール導体262Aが陽極板231の端面と接続されており、第1のスルーホール導体262Aと接続される陽極板231の端面に、芯部232および多孔質部234が露出している。さらに、多孔質部234に位置する第1のスルーホール導体262Aの外周長が、芯部232に位置する第1のスルーホール導体262Aの外周長よりも長い。
【0148】
多孔質部234に位置する第1のスルーホール導体262Aの外周長が、芯部232に位置する第1のスルーホール導体262Aの外周長よりも長いと、第1のスルーホール導体262Aと多孔質部234との接触面積が大きくなるため、密着性が高くなり、熱応力による第1のスルーホール導体262Aの剥がれ等を抑制することができる。さらに、第1のスルーホール導体262Aとの接続抵抗が低減し、コンデンサのESRを低くすることができる。
【0149】
なお、図22に示される形状には限定されず、多孔質部234に位置する第1のスルーホール導体262Aの少なくとも一部に、多孔質部234に位置する第1のスルーホール導体262Aの外周長が、芯部232に位置する第1のスルーホール導体262Aの外周長よりも長い部分が存在すればよい。また、芯部232に位置する第1のスルーホール導体262Aの外周長は、厚さ方向において一定でもよいし、一定でなくてもよい。同様に、多孔質部234に位置する第1のスルーホール導体262Aの外周長は、厚さ方向において一定でもよいし、一定でなくてもよい。
【0150】
多孔質部234に位置する第1のスルーホール導体262Aの最大外周長は、例えば、芯部232に位置する第1のスルーホール導体262Aの最大外周長の100%以上、150%以下であることが好ましい。
【0151】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態においては、第1のスルーホール導体の形状が、陽極接続層が存在する部分と陽極接続層が存在しない部分とで異なっている。
【0152】
図23は、本発明の第3実施形態に係るパッケージ基板の一例について、第1のスルーホール導体およびその周辺を模式的に示す断面図である。
【0153】
図23に示すパッケージ基板200Fにおいては、第1のスルーホール導体262Aと陽極板231との間に陽極接続層268が設けられており、陽極接続層268を介して、第1のスルーホール導体262Aが陽極板231の端面と接続されている。図23に示されるように厚さ方向に直交する方向から断面視したとき、陽極接続層268が存在する部分の第1のスルーホール導体262Aは、陽極接続層268が存在しない部分の第1のスルーホール導体262Aに比べて、第1の貫通孔263Aの内側に盛り上がっている。
【0154】
陽極接続層268が存在する部分において第1のスルーホール導体262Aが第1の貫通孔263Aの内側に盛り上がることで、第1のスルーホール導体262Aと陽極板231との接続抵抗が低減し、コンデンサのESRを低くすることができる。さらに、第1のスルーホール導体262Aと陽極接続層268との密着性が高くなり、熱応力による第1のスルーホール導体262Aの剥がれ等を抑制することができる。
【0155】
なお、図23に示される形状には限定されず、陽極接続層268が存在する部分の第1のスルーホール導体262Aの全体が第1の貫通孔263Aの内側に盛り上がっていてもよく、陽極接続層268が存在する部分の第1のスルーホール導体262Aの一部が第1の貫通孔263Aの内側に盛り上がっていてもよい。また、陽極接続層268が存在する部分において第1のスルーホール導体262Aが第1の貫通孔263Aの内側に盛り上がる量は、厚さ方向において一定でもよいし、一定でなくてもよい。
【0156】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態においては、第1のスルーホール導体が形成される第1の貫通孔の形状が、絶縁部に穿たれた部分とコンデンサ部に穿たれた部分とで異なっている。
【0157】
図24は、本発明の第4実施形態に係るパッケージ基板の一例について、第1のスルーホール導体およびその周辺を模式的に示す断面図である。
【0158】
図24に示すパッケージ基板200Gは、コンデンサ層210と、第1のスルーホール導体262Aと、を備える。コンデンサ層210は、コンデンサ部230と、導電部220と、絶縁部225と、を含む。絶縁部225は、第1の絶縁部225Aと、第2の絶縁部225Bと、を含む。
【0159】
図24に示すパッケージ基板200Gでは、第2の絶縁部225Bに穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度(図24中、θ12で示す角度)が、90°以上であり、かつ、陽極板231の芯部232に穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度(図24中、θ10で示す角度)よりも大きい。
【0160】
これにより、第1の貫通孔263A内の第1のスルーホール導体262Aの端部に集中する機械的な応力が分散されるため、第1の貫通孔263A内の第1のスルーホール導体262Aなどに生じうるクラックの発生を抑えることができる。さらに、第1のスルーホール導体262Aなどを形成するために用いるめっき薬液が第1の貫通孔263Aに侵入しやすくなるため、めっき薬液と第1の貫通孔263Aとの接触不足に起因するめっき不良の発生を抑えることができる。また、第1の貫通孔263A内に第1の樹脂充填部229Aが設けられる場合には、第1の樹脂充填部229Aを形成するために用いる充填材料が第1の貫通孔263Aに侵入しやすくなるため、第1の樹脂充填部229Aにおけるボイドの発生を抑えることができる。
【0161】
上述した効果を高める観点からは、第1の絶縁部225Aに穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度(図24中、θ11で示す角度)が、90°以上であり、かつ、陽極板231の芯部232に穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ10よりも大きく、第2の絶縁部225Bに穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ12が、第1の絶縁部225Aに穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ11の大きさ以上であることが好ましい。
【0162】
第2の絶縁部225Bに穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ12は、例えば、陽極板231の芯部232に穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ10の100%以上、500%以下であることが好ましい。
【0163】
第1の絶縁部225Aに穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ11は、例えば、陽極板231の芯部232に穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ10の100%以上、500%以下であることが好ましい。第1の絶縁部225Aに穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ11は、陽極板231の芯部232に穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ10と同じであってもよく、陽極板231の芯部232に穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ10よりも小さくてもよい。
【0164】
第2の絶縁部225Bに穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ12は、例えば、第1の絶縁部225Aに穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ11の100%以上、500%以下であることが好ましい。第2の絶縁部225Bに穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ12は、第1の絶縁部225Aに穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ11よりも小さくてもよい。
【0165】
陽極板231の芯部232に穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ10は、例えば、30°以上、150°以下の範囲にある。
【0166】
陽極板231の多孔質部234に穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度は、陽極板231の芯部232に穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ10の大きさ以上であり、かつ、第1の絶縁部225Aに穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ11よりも小さいことが好ましい。
【0167】
第1の絶縁部225Aに穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ11は、例えば、30°以上、150°以下の範囲にある。
【0168】
第2の絶縁部225Bに穿たれた第1の貫通孔263Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ12は、例えば、30°以上、150°以下の範囲にある。
【0169】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態においては、第2のスルーホール導体が形成される第2の貫通孔の形状が、絶縁部に穿たれた部分とコンデンサ部に穿たれた部分とで異なっている。
【0170】
図25は、本発明の第5実施形態に係るパッケージ基板の一例について、第2のスルーホール導体およびその周辺を模式的に示す断面図である。
【0171】
図25に示すパッケージ基板200Hは、コンデンサ層210と、第2のスルーホール導体264Aと、を備える。コンデンサ層210は、コンデンサ部230と、導電部240と、絶縁部225と、を含む。絶縁部225は、第1の絶縁部225Aと、第2の絶縁部225Bと、を含む。
【0172】
図25に示すパッケージ基板200Hでは、第2の絶縁部225Bに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度(図25中、θ22で示す角度)が、90°以上であり、かつ、陽極板231の芯部232に接した第2の絶縁部225Bに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度(図25中、θ20で示す角度)よりも大きい。
【0173】
これにより、第2の貫通孔265A内の第2のスルーホール導体264Aの端部に集中する機械的な応力が分散されるため、第2の貫通孔265A内の第2のスルーホール導体264Aなどに生じうるクラックの発生を抑えることができる。さらに、第2のスルーホール導体264Aを形成するために用いるめっき薬液が第2の貫通孔265Aに侵入しやすくなるため、めっき薬液と第2の貫通孔265Aとの接触不足に起因するめっき不良の発生を抑えることができる。また、第2の貫通孔265A内に第2の樹脂充填部229Bが設けられる場合には、第2の樹脂充填部229Bを形成するために用いる充填材料が第2の貫通孔265Aに侵入しやすくなるため、第2の樹脂充填部229Bにおけるボイドの発生を抑えることができる。
【0174】
上述した効果を高める観点からは、第1の絶縁部225Aに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度(図25中、θ21で示す角度)が、90°以上であり、かつ、陽極板231の芯部232に接した第2の絶縁部225Bに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ20よりも大きく、第2の絶縁部225Bに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ22が、第1の絶縁部225Aに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ21の大きさ以上であることが好ましい。
【0175】
第2の絶縁部225Bに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ22は、例えば、陽極板231の芯部232に接した第2の絶縁部225Bに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ20の100%以上、500%以下であることが好ましい。
【0176】
第1の絶縁部225Aに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ21は、例えば、陽極板231の芯部232に接した第2の絶縁部225Bに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ20の100%以上、500%以下であることが好ましい。第1の絶縁部225Aに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ21は、陽極板231の芯部232に接した第2の絶縁部225Bに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ20と同じであってもよく、陽極板231の芯部232に接した第2の絶縁部225Bに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ20よりも小さくてもよい。
【0177】
陽極板231の芯部232に接した第2の絶縁部225Bに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ20は、例えば、30°以上、150°以下の範囲にある。
【0178】
陽極板231の多孔質部234に接した第2の絶縁部225Bに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度は、陽極板231の芯部232に接した第2の絶縁部225Bに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ20の大きさ以上であり、かつ、第1の絶縁部225Aに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ21よりも小さいことが好ましい。
【0179】
第1の絶縁部225Aに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ21は、例えば、30°以上、150°以下の範囲にある。
【0180】
第2の絶縁部225Bに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ22は、例えば、30°以上、150°以下の範囲にある。
【0181】
第2の絶縁部225Bに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ22は、例えば、第1の絶縁部225Aに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ21の100%以上、500%以下であることが好ましい。第2の絶縁部225Bに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ22は、第1の絶縁部225Aに穿たれた第2の貫通孔265Aの内壁面と陽極板231の主面の延長面とが成す角度θ21よりも小さくてもよい。
【0182】
(その他の実施形態)
本発明のモジュールの一実施形態であるパッケージ基板は、上記実施形態に限定されるものではなく、パッケージ基板の構成、製造条件などに関し、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0183】
第1のスルーホール導体262Aが陽極板231の端面と接続されている場合、第1のスルーホール導体262Aと接続される陽極板231の端面に、多孔質部234が露出していなくてもよい。例えば、第1のスルーホール導体262Aと接続される陽極板231の端面において、多孔質部234の一部が切欠かれて芯部232が露出した状態であってもよい。この場合、多孔質部234が切欠かれた部分に絶縁材料が存在することが好ましい。
【0184】
第1のスルーホール導体262Aと接続される陽極板231の端面に多孔質部234が露出していない場合においても、第1のスルーホール導体262Aと陽極板231との間に陽極接続層268が設けられており、陽極接続層268を介して、第1のスルーホール導体262Aが陽極板231の端面と接続されていることが好ましい。また、厚さ方向に直交する方向から断面視したとき、第1のスルーホール導体262Aが延びる方向における陽極接続層268の長さは、第1のスルーホール導体262Aが延びる方向における陽極板231の長さよりも長いことが好ましい。
【0185】
以上、本発明のモジュールの一実施形態として、パッケージ基板について説明したが、本発明のモジュールはパッケージ基板に限定されるものではない。例えば、コンデンサ層と接続端子とスルーホール導体とを備えるモジュールが、スルーホール導体を介してボルテージレギュレータまたは負荷と接続された状態でマザー基板上に搭載された形態などであってもよい。
【0186】
図26は、本発明のモジュールの一例を模式的に示す断面図である。
図26に示すモジュール500は、スルーホール導体560、562および564を介して負荷300と電気的に接続された状態で、マザー基板400の第1主面に実装されている。一方、マザー基板400の第2主面には、ボルテージレギュレータ100およびインダクタL1が実装されている。
【0187】
図27は、本発明のモジュールの第1変形例を模式的に示す断面図である。
図27に示すモジュール500Aは、スルーホール導体560、562および564およびインターポーザ基板510を介して負荷300と電気的に接続された状態で、マザー基板400の第1主面に実装されている。一方、マザー基板400の第2主面には、ボルテージレギュレータ100およびインダクタL1が実装されている。
【0188】
図28は、本発明のモジュールの第2変形例を模式的に示す断面図である。
図28に示すモジュール500Bは、スルーホール導体560、562および564を介してボルテージレギュレータ100と電気的に接続された状態で、マザー基板400の第2主面に実装されている。マザー基板400の第2主面には、さらに、インダクタL1が実装されている。一方、マザー基板400の第1主面には、負荷300が搭載されたパッケージ基板520が実装されている。
【0189】
図29は、本発明のモジュールの第3変形例を模式的に示す断面図である。
図29に示すモジュール500Cは、スルーホール導体560、562および564を介して負荷300と電気的に接続された状態で、マザー基板400の第1主面に実装されている。マザー基板400の第1主面には、さらに、ボルテージレギュレータ100およびインダクタL1が実装されている。
【0190】
図30は、本発明のモジュールの第4変形例を模式的に示す断面図である。
図30に示すモジュール500Dは、スルーホール導体560、562および564を介してボルテージレギュレータ100と電気的に接続された状態で、マザー基板400の第1主面に実装されている。マザー基板400の第1主面には、さらに、負荷300が搭載されたパッケージ基板520が実装されている。一方、マザー基板400の第2主面には、インダクタL1が実装されている。
【0191】
図26図30に示されるように、本発明のモジュールは、スルーホール導体を介して負荷およびボルテージレギュレータのいずれか一方と少なくとも厚さ方向にスルーホール導体を介して接続された状態で、マザー基板上に搭載されていてもよい。マザー基板上に搭載される位置は、マザー基板上のどの位置でもよい。また、インダクタについては、本発明のモジュールに内蔵される形態に限定されず、本発明のモジュールとは別にマザー基板上に搭載されていてもよい。
【符号の説明】
【0192】
10、10A、10B、10C 半導体複合装置
100 ボルテージレギュレータ
120、380 はんだバンプ
200、200A、200B、200C、200D、200E、200F、200G、
200H、520 パッケージ基板
205 回路層
210、210A コンデンサ層
212 導電層
220、240 導電部
222、242 ビア導体
225 絶縁部
225A 第1の絶縁部
225B 第2の絶縁部
225C 第3の絶縁部
225D 第4の絶縁部
226、227、228 樹脂層
229A 第1の樹脂充填部
229B 第2の樹脂充填部
230 コンデンサ部
231 陽極板
232 芯部
234 多孔質部
235 切欠部
236 陰極層
236A カーボン層
236B 銅層
250 インダクタ層
252 コイル部
252♯ 銅箔
254 絶縁部
256 樹脂
260、262、264、266、267、560、562、564 スルーホール導体
261、263、265 貫通孔
262A 第1のスルーホール導体
263A 第1の貫通孔
264A 第2のスルーホール導体
265A 第2の貫通孔
268 陽極接続層
268A 第1の陽極接続層
268B 第2の陽極接続層
269 金属層
270 端子層
300 負荷
350 電子機器
400 マザー基板
410 端子
500、500A、500B、500C、500D モジュール
510 インターポーザ基板
CP1 コンデンサ
GND 接地端子
IN 入力端子
L1 インダクタ
OUT 出力端子
X 陽極
Y 陰極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図30