(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20231114BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 D
(21)【出願番号】P 2022164715
(22)【出願日】2022-10-13
(62)【分割の表示】P 2019145553の分割
【原出願日】2019-08-07
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 泰成
(72)【発明者】
【氏名】田島 慎也
(72)【発明者】
【氏名】下田 悠太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 大輔
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-046936(JP,A)
【文献】特開2002-252124(JP,A)
【文献】特開2009-206110(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116665(WO,A1)
【文献】特開2012-156477(JP,A)
【文献】特開2017-174970(JP,A)
【文献】特開2015-109415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00 - 5/06
H01F 17/00 -21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26 -27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 38/42 -41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
H01G 4/00 - 4/10
H01G 4/14 - 4/22
H01G 4/224- 4/40
H01G 13/00 -17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体内に設けられたコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続された外部電極と
を備え、
前記外部電極は、
前記素体に埋め込まれた下地層と、
前記下地層の前記素体から露出している部分を覆う被覆膜と
を有し、
前記素体は、実装時において実装基板側に向けられる底面を含み、
前記素体の前記底面側からみて、前記被覆膜の外周縁は、凸曲面に形成され
、前記下地層と前記素体との界面の全体が前記被覆膜で覆われている、インダクタ部品。
【請求項2】
素体と、
前記素体内に設けられたコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続された外部電極と
を備え、
前記外部電極は、
前記素体の表面から一部が突出するように前記素体に埋め込まれた下地層と、
前記下地層の前記素体から露出している部分を覆う被覆膜と
を有し、
前記素体の表面から突出する前記下地層の一部は、前記素体の表面上に張り出した張出部を有し、
前記被覆膜の前記張出部を覆う部分は、凹部を有する、インダクタ部品。
【請求項3】
前記素体は、実装時において実装基板側に向けられる底面を含み、
前記下地層の一部は、前記底面から突出する、請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記下地層は、前記素体の底面以外の表面から突出していない、請求項3に記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記素体は、前記素体の底面に交差する端面を含み、
前記下地層は、前記端面から突出しておらず露出している、請求項1、3または4に記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記外部電極の前記端面からの突出量は、前記外部電極の前記素体の底面からの突出量よりも小さい、請求項5に記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記下地層の前記底面側の厚みは、前記下地層の前記端面側の厚みと同じである、請求項5または6に記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ部品としては、特開2015-15297号公報(特許文献1)に記載されたものがある。このインダクタ部品は、素体と、素体内に設けられたコイルと、素体に設けられ、コイルに電気的に接続された外部電極とを備える。外部電極は、素体内に埋め込まれた下地層と、下地層を覆う被覆膜とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のインダクタ部品では、製造段階において、カットライン上に下地層が位置するため、個片化により、下地層における素体から露出する露出面は、素体の表面と同一平面上に位置することになる。その後、被覆膜は、めっき処理により、下地層の露出面に形成される。このように、被覆膜は、素体の表面と同一平面上に位置する下地層の露出面に形成されている。
近年、インダクタ部品の小型化が図られており、インダクタ部品の小型化を考慮すると、本願発明者らは、従来の被覆膜の下地層への固着力では不十分となる可能性があることを見出した。
【0005】
そこで、本開示は、被覆膜の下地層への固着力を向上できるインダクタ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるインダクタ部品は、
素体と、
前記素体内に設けられたコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続された外部電極と
を備え、
前記外部電極は、
前記素体の表面から一部が突出するように前記素体に埋め込まれた下地層と、
前記下地層の前記素体から露出している部分を覆う被覆膜と
を有する。
【0007】
前記態様によれば、下地層の一部は、素体の表面から突出し、被覆膜は、突出した下地層を覆うので、被覆膜が下地層に接触する面積を増加でき、被覆膜の下地層への固着力が向上する。また、インダクタ部品を実装基板に実装する場合、被覆膜の表面積が増えるため、はんだとの接触面積を増加でき、インダクタ部品の実装基板への固着力が向上する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様であるインダクタ部品によれば、被覆膜の下地層への固着力を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】インダクタ部品の第1実施形態を示す斜視図である。
【
図3B】下地層の他の実施形態を示す断面図である。
【
図4】インダクタ部品を実装基板に実装した状態を示す断面図である。
【
図5】インダクタ部品の第2実施形態を示す底面図である。
【
図6】インダクタ部品の第3実施形態を示す断面図である。
【
図7】インダクタ部品の第4実施形態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一態様であるインダクタ部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0011】
(第1実施形態)
(構造)
図1は、インダクタ部品の第1実施形態を示す斜視図である。
図2は、インダクタ部品の分解斜視図である。
図3Aは、
図1のX-X断面図である。
図4は、インダクタ部品を実装基板に実装した状態を示す断面図である。
図1と
図2と
図3Aに示すように、インダクタ部品1は、素体10と、素体10の内部に設けられた螺旋状のコイル20と、素体10に設けられコイル20に電気的に接続された第1外部電極30および第2外部電極40とを有する。
図3Aでは、コイル20を省略して描いている。
【0012】
図4に示すように、インダクタ部品1(第1外部電極30および第2外部電極40)は、はんだ52を介して、実装基板51の配線51aに電気的に接続される。インダクタ部品1は、例えば、高周波回路のインピーダンス整合用コイル(マッチングコイル)として用いられ、パソコン、DVDプレーヤー、デジカメ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクス、医療用・産業用機械などの電子機器に用いられる。ただし、インダクタ部品1の用途はこれに限られず、例えば、同調回路、フィルタ回路や整流平滑回路などにも用いることもできる。
【0013】
素体10は、複数の絶縁層11を積層方向Aに積層して構成される。絶縁層11は、例えば、硼珪酸ガラスを主成分とする材料や、フェライト、樹脂などの材料からなる。なお、素体10は、焼成などによって、複数の絶縁層11同士の界面が明確となっていない場合がある。素体10は、略直方体状に形成されている。素体10の表面は、直方体の長手方向に対向する第1端面15および第2端面16と、第1端面15および第2端面16に交差し、直方体の高さ方向に対向する2面のうちの一方の面に相当する底面17とを有する。第1端面15と第2端面16は、絶縁層11の積層方向Aに直交する方向に対向している。第1端面15は、第1外部電極30の一部が設けられた面であり、第2端面16は、第2外部電極40の一部が設けられた面である。底面17は、実装時において実装基板51側に向けられる面である。底面17は、第1外部電極30の他部および第1外部電極30の他部の両方が設けられた面である。
【0014】
第1外部電極30は、第1端面15と底面17に跨がって設けられたL字形状である。第2外部電極40は、第2端面16と底面17に跨がって設けられたL字形状である。第1外部電極30は、素体10に埋め込まれた複数の外部電極導体層33を含む。第2外部電極40は、素体10に埋め込まれた複数の外部電極導体層43を含む。
【0015】
第1外部電極30に含まれる外部電極導体層33は、第1端面15および底面17に沿って延在する部分を有するL字形状であり、第2外部電極40に含まれる外部電極導体層43は、第2端面16および底面17に沿って延在する部分を有するL字形状である。これにより、素体10内に第1外部電極30および第2外部電極40を埋め込むことができるため、素体10に外部電極を外付けする構成に比べて、インダクタ部品の小型化を図ることができる。また、コイル20と第1外部電極30および第2外部電極40を同一工程で形成することができ、コイル20と第1外部電極30および第2外部電極40との間の位置関係のばらつきを低減することで、インダクタ部品1の電気的特性のばらつきを低減することができる。
【0016】
コイル20は、例えば、第1外部電極30の外部電極導体層33および第2外部電極40の外部電極導体層43と同様の導電性材料から構成される。コイル20は、絶縁層11の積層方向Aに沿って、螺旋状に巻き回されている。つまり、コイル20の軸は、積層方向Aに平行な底面17と平行となり、コイル20は、実装基板51に実装された際に、いわゆる横巻きとなる。コイル20の軸とは、コイル20の螺旋形状の中心軸を意味する。コイル20の一端は、第1外部電極30に接触し、コイル20の他端は、第2外部電極40に接触している。なお、本実施形態では、コイル20と第1、第2外部電極30,40とは一体化されており、明確な境界は存在しないが、これに限られず、コイルと外部電極とが異種材料や異種工法で形成されることにより、境界が存在していても良い。
【0017】
コイル20は、絶縁層11上に巻回された複数のコイル導体層21を含む。このように、コイル20が微細加工可能なコイル導体層21で構成されることによりインダクタ部品1の小型化、低背化を図れる。積層方向Aに隣り合うコイル導体層21は、絶縁層11を厚み方向に貫通するビア導体を介して、接続される。つまり、一方のコイル導体層21の一端が、他方のコイル導体層21の他端に接続される。このように、複数のコイル導体層21は、互いに接続されながら、螺旋を構成している。具体的には、コイル20は、互いに接続され、巻回数が1周未満の複数のコイル導体層21が積層された構成を有し、コイル20はヘリカル形状である。このとき、コイル導体層21内で発生する寄生容量やコイル導体層21間で発生する寄生容量を低減でき、インダクタ部品1のQ値を向上させることができる。なお、コイル導体層21の巻回数は、1周以上であってもよい。
【0018】
図3Aに示すように、第1外部電極30は、下地層31と被覆膜32とを有する。下地層31は、
図2の外部電極導体層33に相当し、
図2では、被覆膜32を省略して描いている。
【0019】
下地層31は、素体10の表面から一部が突出するように素体10に埋め込まれている。つまり、下地層31の一部(突出部31a)は、素体10の底面17から突出している。
【0020】
下地層31は、素体10の第1端面15から突出しておらず露出している。つまり、下地層31の一面31bは、素体10の第1端面15と同一平面上に位置する。要するに、下地層31は、素体10の底面17以外の表面から突出していない。下地層31の素体10からの露出とは、下地層31が素体10に覆われていない部分を有することを意味し、当該部分はインダクタ部品1の外部へ露出していてもよいし、他の部材へ露出していてもよい。
【0021】
下地層31の底面17側の厚みT1は、下地層31の第1端面15側の厚みT2よりも厚い。ここで、下地層31の底面17側の厚みT1とは、
図3Aの断面において、下地層31の底面17に位置する部分における底面17に直交する方向の厚みである。同様に、下地層31の第1端面15側の厚みT2とは、
図3Aの断面において、下地層31の第1端面15に位置する部分における第1端面15に直交する方向の厚みである。なお、
図3Bの断面に示すように、下地層31の底面17側の厚みT1は、下地層31の第1端面15側の厚みT2と同じであってもよい。ここで、同じとは、絶対に同じであることを意味するのではなく、例えば、製造誤差等を含む。
【0022】
被覆膜32は、下地層31の素体10から露出している部分を覆う。例えば、被覆膜32は、下地層31の突出部31aと下地層31の一面31bとの全てを覆う。そして、第1外部電極30の第1端面15からの突出量は、第1外部電極30の底面17からの突出量よりも小さい。
【0023】
下地層31は、例えば、Ag、Cu、Auやこれらを主成分とする合金などの導電性材料とガラス成分とを含む導電性ペーストを焼き付けることで形成される。被覆膜32は、例えば、めっき処理により、下地層31に形成される。被覆膜32は、例えば、Ni膜およびSn膜の2層から構成されるが、2層に限らず1層であってもよいし、3層以上であってもよい。Ni膜は、下地層31を覆い、下地層31のはんだ食われを防止する。Sn膜は、Ni膜を覆い、第1外部電極30のはんだ濡れ性を向上する。なお、被覆膜32は、めっき処理でなく、例えば、導電性樹脂ペーストを塗布して形成してもよく、または、スパッタ処理により形成してもよい。
【0024】
第2外部電極40は、第1外部電極30と同様に、下地層41と被覆膜42とを有する。下地層41は、素体10の表面から一部が突出するように素体10に埋め込まれている。つまり、下地層41の一部(突出部41a)は、素体10の底面17から突出している。また、下地層41の一面41bは、素体10の第2端面16から露出している。被覆膜42は、下地層41の素体10から露出している部分を覆う。下地層41および被覆膜42は、第1外部電極30と同様の材料から構成される。
【0025】
前記インダクタ部品1によれば、下地層31,41の一部(突出部31a,41a)は、素体10の表面から突出し、被覆膜32,42は、下地層31,41を覆うので、被覆膜32,42が下地層31,41に接触する面積を増加でき、被覆膜32,42の下地層31,41への固着力が向上する。
【0026】
また、
図4に示すように、インダクタ部品1を実装基板51に実装する場合、つまり、インダクタ部品1を実装基板51の配線51aにはんだ52を介して接続して電子部品50を製造する場合、被覆膜32,42の表面積が増えるため、はんだ52との接触面積を増加でき、インダクタ部品1の実装基板51への固着力が向上する。
【0027】
また、下地層31,41の一部(突出部31a,41a)は、素体10の底面17から突出するので、素体10の底面17における被覆膜32,42の表面積を増加できる。このため、インダクタ部品1を実装基板51に実装する場合、実装基板51に対向する被覆膜32,42の表面積を大きくでき、はんだ52との接触面積を一層増加でき、インダクタ部品1の実装基板51への固着力が一層向上する。
【0028】
また、下地層31,41の一部(突出部31a,41a)は、素体10の底面17から突出するので、第1外部電極30および第2外部電極40を素体10の底面17側にずらす構成を採用することができる。これにより、コイル20の内径を素体10の底面17側に広く形成することができ、L値、Q値の取得効率を向上できる。
【0029】
また、下地層31,41の一部(突出部31a,41a)は、素体10の底面17から突出するので、素体10の底面17から突出する第1外部電極30および第2外部電極40の体積を増加できる。これにより、インダクタ部品1を実装基板51に実装する場合、インダクタ部品1が外部から衝撃を受けても、第1外部電極30および第2外部電極40は衝撃を分散でき、耐衝撃性を向上できる。また、底面17と、下地層31,41(下地層31,41と被覆膜32,42との界面)が面一ではないことにより、被覆膜32,42の界面からの剥離を抑制できる。
【0030】
また、下地層31,41の一部(突出部31a,41a)は、素体10の底面17から突出するので、下地層31,41に被覆膜32,42を形成する前に、下地層31,41の底面を研磨材により研磨しやすくなる。これにより、下地層31,41のバリ取りを容易に行うことができる。さらに、下地層31,41のバリ取りを確実に行うことができるので、被覆膜32,42のめっき膜厚の均一性を向上できる。仮に、下地層が素体の底面から突出していないと、研磨材は、素体の底面に接触して、下地層の底面を研磨できないおそれがある。
また、下地層31,41の一部(突出部31a,41a)は、素体10の底面17から突出するので、バレルめっき(めっき処理)時のメディアにも下地層31,41が当たりやすくなり、被覆膜32,42をめっき処理により容易に形成できる。
【0031】
また、下地層31,41の一部(突出部31a,41a)は、素体10の底面17から突出するので、素体10の底面17と実装基板51の実装面との間の距離Lを長くできる。これにより、インダクタ部品1を樹脂封止した際に、樹脂材料が、素体10の底面17と実装基板51の実装面との間の空間に入り込み易くなる。このように、樹脂の充填性が向上して、信頼性が向上する。さらに、上述のように、素体10の底面17と実装基板51の実装面との間の距離Lを長くできるので、実装基板51によるコイル20の磁束の遮りを抑制でき、インダクタ部品1の特性が向上する。
【0032】
また、下地層31,41は、素体10の底面17以外の表面から突出していないので、小型化と固着力の向上の両立を図ることができる。
また、下地層31は、素体10の第1端面15から突出しておらず露出しているので、小型化と固着力の向上の両立を図ることができる。なお、下地層41は、素体10の第2端面16から突出しておらず露出しているので、同様の効果を有する。
また、第1外部電極30の第1端面15からの突出量は、第1外部電極30の底面17からの突出量よりも小さいので、小型化と固着力の向上の両立を図ることができる。なお、第2外部電極40の第2端面16からの突出量は、第2外部電極40の底面17からの突出量よりも小さいので、同様の効果を有する。
【0033】
また、下地層31の底面17側の厚みT1は、下地層31の第1端面15側の厚みT2よりも厚いので、第1外部電極30および第2外部電極40を長手方向に大きくすることなく、第1外部電極30および第2外部電極40の体積を増加でき、小型化と耐衝撃性の向上の両立を図ることができる。また、下地層31の底面17側の厚みT1は、下地層31の第1端面15側の厚みT2と同じであってもよく、この場合、コイル20の内径を広く形成することができ、L値、Q値の取得効率を向上できる。
【0034】
また、電子部品50は、インダクタ部品1と、インダクタ部品1を実装する実装基板51とを備える。電子部品50によれば、インダクタ部品1の被覆膜32,42の表面積が増えるため、インダクタ部品1をはんだ52により実装基板51に実装するとき、はんだ52と被覆膜32,42の接触面積を増加でき、インダクタ部品1の実装基板51への固着力が向上する。
【0035】
なお、第1外部電極30および第2外部電極40の底面(被覆膜32,42)は、平坦面でもあってもよく、または、凹凸を有していてもよい。第1外部電極30および第2外部電極40の底面が凹凸を有する場合、第1外部電極30および第2外部電極40の底面(被覆膜32,42)の表面積が大きくなる。また、第1外部電極30および第2外部電極40の底面が凹を有する場合、はんだ溜まりとなり、また、姿勢が安定する。
【0036】
また、素体10の底面17側からみて、第1外部電極30および第2外部電極40の底面の形状は、矩形であるが、T形状であってもよく、または、第1外部電極30および第2外部電極40の底面の端縁が、連続した凹凸を有する櫛歯状であってもよい。
【0037】
(製造方法)
次に、インダクタ部品1の製造方法について、
図2を用いて説明する。
【0038】
まず、第1の絶縁層(
図2の所定の絶縁層11に相当)を形成する。具体的には、キャリアフィルム等の基材の上にガラス等の絶縁ペーストを印刷し、この絶縁ペーストを紫外線で全面露光する。なお、素体10の最下層または最上層に、マーカ層となる絶縁層11を設けてもよく、マーカ層は、実装時のインダクタ部品1の横転等の検出のため、マーカ層以外の絶縁層11と異なる色である事が望ましい。
【0039】
そして、第1の絶縁層上にコイル導体層21を形成する。具体的には、第1の絶縁層の上に感光性電極ペーストを印刷にて塗布し、フォトリソグラフィ法によりコイル導体層21を形成する。このとき、外部電極導体層33,43を同時に形成しておく。なお、コイル導体層21の層数、太さ、ターン数は、取得したいL値よって所望の値に設定する。
【0040】
その後、コイル導体層21上に第2の絶縁層(
図2の所定の絶縁層11に相当)を形成する。具体的には、コイル導体層21上に、ビアホールおよび外部電極溝を有した第2の絶縁層をフォトリソグラフィ法等で形成する。その後、再度、コイル導体層21および外部電極導体層33,43を第2の絶縁層上に形成することで、ビアホールおよび外部電極溝に電極ペーストが充填され、積層方向Aに隣り合うコイル導体層21が接続され、積層方向Aに隣り合う外部電極導体層33,43が接続される。なお、コイル導体層21の層数の設定により、絶縁層11にコイル導体層21を設けない場合があるが、その場合ビアホールの形成は行わず、外部電極形状に沿った形状での外部電極溝のみを形成しておく。
【0041】
また、少なくとも最下層および最上層のコイル導体層21に引出導体層を接続し、それぞれ対向する外部電極導体層33,43に接続する。コイル20の形状は、製品の方向性に影響されないように、180°回転対象の形状にすることが望ましい。
【0042】
そして、上記工程を繰り返して、複数の絶縁層11、複数のコイル導体層21および複数の外部電極導体層33,43を積層する。その後、積層体を、ダイシングまたはギロチン等でカットして、個片化する。個片化した積層体を、焼成して所望の大きさに形成する。ここで、外部電極導体層33,43の収縮率を絶縁層11の収縮率よりも小さくすることで、焼成により、素体10の収縮率が外部電極導体層33,43の収縮率よりも大きくなって、外部電極導体層33,43(下地層31,41)の一部が素体10の底面17から突出するように制御される。
【0043】
その後、外部電極導体層33,43の素体10からの露出部分に、Ni,Cu,Snなどをめっき処理して、被覆膜32,42を形成し、インダクタ部品1を製造する。なお、上記では、フォトリソグラフィ法を記載したが、積層工法およびセミアディティブ工法等でも可能であり、工法に限定されない。
【0044】
(第2実施形態)
図5は、インダクタ部品の第2実施形態を示す底面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、外部電極の構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0045】
図5に示すように、第2実施形態のインダクタ部品1Aでは、第1外部電極30Aにおいて、素体10の底面17側からみて、下地層31(突出部31a)と素体10との界面は、被覆膜32で覆われている。つまり、第1外部電極30Aにおいて、被覆膜32の外周縁は、素体10の底面17側からみて、下地層31(突出部31a)の外周縁よりも外側に位置する。
同様に、第2外部電極40Aにおいて、素体10の底面17側からみて、下地層41(突出部41a)と素体10との界面は、被覆膜42で覆われている。つまり、第2外部電極40Aにおいて、被覆膜42の外周縁は、素体10の底面17側からみて、下地層41(突出部41a)の外周縁よりも外側に位置する。
【0046】
前記インダクタ部品1Aによれば、下地層31,41と素体10との界面は、被覆膜32,42で覆われているので、被覆膜32,42の表面積を大きくでき、素体10の撓みに対する強度を向上できる。また、素体10の外部から水分が下地層31,41と素体10の間に進入することを防止できる。また、はんだ52との接触面積を一層増加でき、インダクタ部品1Aの実装基板51への固着力を一層向上できる。
【0047】
(第3実施形態)
図6は、インダクタ部品の第3実施形態を示す断面図である。第3実施形態は、第1実施形態とは、外部電極の構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0048】
図6に示すように、第3実施形態のインダクタ部品1Bでは、第1外部電極30Bにおいて、素体10の底面17から突出する下地層31の一部(下地層31の突出部31a)は、素体10の底面17上に張り出して素体10の底面17を覆う張出部31cを有する。張出部31cは、第2外部電極40B側に向かって突出している。張出部31cは、コイル20の軸方向に沿って(紙面の手前から奥方向に沿って)、下地層31の全長に渡って設けられていてもよく、または、下地層31の全長に部分的に設けられていてもよい。同様に、第2外部電極40Bにおいて、下地層41の突出部41aは、素体10の底面17上に張り出して素体10の底面17を覆う張出部41cを有する。
【0049】
前記インダクタ部品1Bによれば、下地層31,41の突出部31a,41aは、張出部31c,41cを有するので、外部電極30B,40Bの素体10から突出する部分の体積を大きくでき、インダクタ部品1Bの撓みに対する強度を一層向上できる。
【0050】
(第4実施形態)
図7は、インダクタ部品の第4実施形態を示す分解斜視図である。第4実施形態は、第1実施形態とは、素体、外部電極およびコイルの構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
図7に示すように、第4実施形態のインダクタ部品1Cでは、素体10Cは、積層方向Aに積層された複数の絶縁層11を有し、
図7の最上層の絶縁層11が、素体10Cの底面17を構成する。所定の絶縁層11上に、コイル20Cを構成するコイル導体層21と、第1外部電極30Cを構成する外部電極導体層33と、第2外部電極40Cを構成する外部電極導体層43とを設けている。
【0052】
これにより、コイル20Cの軸は、素体10Cの底面17に直交し、コイル20Cは、いわゆる縦巻きとなる。第1外部電極30Cの下地層31の突出部31aは、最上層の絶縁層11上に形成され、素体10Cの底面17から突出する。第2外部電極40Cの下地層41の突出部41aは、最上層の絶縁層11上に形成され、素体10Cの底面17から突出する。
【0053】
このとき、突出部31a,41aを形成する方法として、突出部31a,41aを形成しない領域にシートなどでマスキングしてもよく、また、突出部31a,41aを形成する領域に、シード層を形成し、めっき成長により突出部31a,41aを形成してもよい。なお、突出部31a,41aを形成する方法は、これに限らず、その他の方法であってもよい。
【0054】
前記インダクタ部品1Cによれば、前記第1実施形態と同様に、下地層31,41の一部(突出部31a,41a)は、素体10の表面から突出し、被覆膜32,42は、突出した下地層31,41を覆うので、被覆膜32,42が下地層31,41に接触する面積を増加でき、被覆膜32,42の下地層31,41への固着力が向上する。
【0055】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第4実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0056】
前記実施形態では、外部電極の下地層は、素体の底面から突出しているが、素体の底面に代えて素体の端面から突出してもよく、または、素体の底面および端面から突出してもよい。
【0057】
前記実施形態では、素体の底面側からみて、被覆膜の外周縁は、下地層の外周縁と同一または下地層の外周縁よりも外側に位置しているが、被覆膜の外周縁の少なくとも一部は、下地層の外周縁よりも内側に位置してもよく、これにより、隣り合う外部電極の間の距離を十分に確保できる。
【符号の説明】
【0058】
1,1A,1B,1C インダクタ部品
10,10C 素体
11 絶縁層
15 第1端面
16 第2端面
17 底面
20,20C コイル
21 コイル導体層
30,30A,30B,30C 第1外部電極
31 下地層
31a 突出部
31b 一面
31c 張出部
32 被覆膜
33 外部電極導体層
40,40A,40B,40C 第2外部電極
41 下地層
41a 突出部
41b 一面
41c 張出部
42 被覆膜
43 外部電極導体層
50 電子部品
51 実装基板
52 はんだ
A 積層方向
L 距離