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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】水電解システム及び電流制御装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/023 20210101AFI20231114BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20231114BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20231114BHJP
【FI】
C25B15/023
C25B1/04
C25B9/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022522111
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2020018857
(87)【国際公開番号】W WO2021229652
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】米澤 遊
(72)【発明者】
【氏名】中島 善康
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-085602(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1926010(KR,B1)
【文献】特開2018-178175(JP,A)
【文献】特開平07-233493(JP,A)
【文献】特開2004-244653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 15/02~15/033
C25B 1/04
C25B 9/00
C25B 9/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電装置が生成する第1の電力を複数の第2の電力にそれぞれ変換する複数の変換回路と、
前記複数の変換回路のうちの駆動する変換回路の数を少なくとも制御する制御回路と、
前記複数の変換回路から前記複数の第2の電力をそれぞれ受け取る複数の水電解セルと、
を含み、前記制御回路は前記第1の電力における所定時間あたり所定量を超える増加または減少の発生を検出する検出器を含み、前記検出器が前記増加または減少の発生を検出すると、前記制御回路は前記駆動する変換回路の数を増加させる、水電解システム。
【請求項2】
前記制御回路は、前記太陽光発電装置が生成する前記第1の電力を最大化するよう前記複数の変換回路の動作を制御するために用いられる制御信号を生成する最大電力点追従制御回路を含み、前記検出器は前記制御信号を入力とするハイパスフィルタである、請求項1記載の水電解システム。
【請求項3】
前記変換回路は、供給されるデューティー比に応じたPWM動作により出力電圧及び出力電流を制御するDC/DCコンバータであり、
前記制御回路は、
前記制御信号に基づいて前記複数の変換回路にそれぞれ供給する複数のデューティー比を生成するセル選択器と、
前記複数の変換回路のうちで前記セル選択器が駆動していない変換回路に対して、前記ハイパスフィルタの出力に応じた信号が示すデューティー比を供給する信号供給回路と
を含む、請求項2記載の水電解システム。
【請求項4】
前記信号供給回路は、
前記複数の変換回路に一対一に対応して設けられ、導通状態又は非導通状態のいずれかに設定可能な複数のスイッチ回路と、
前記ハイパスフィルタの出力に応じた信号を前記複数のスイッチ回路を介してそれぞれ受け取り、前記セル選択器から受け取る前記複数のデューティー比のそれぞれに加算する複数の加算器と、
を含み、前記複数のスイッチ回路のうち、前記セル選択器が駆動していない変換回路に対応するスイッチ回路のみが導通状態とされる、請求項3記載の水電解システム。
【請求項5】
前記信号供給回路は、前記複数の変換回路のうちで前記セル選択器が駆動していない変換回路のうちの一部の変換回路に対してのみ、前記ハイパスフィルタの出力に応じた信号が示すデューティー比を供給する、請求項3又は4記載の水電解システム。
【請求項6】
前記ハイパスフィルタのカットオフ周波数は最大電力点追従制御による変動の周波数よりも高い、請求項2乃至5いずれか一項記載の水電解システム。
【請求項7】
発電装置が生成する第1の電力を複数の第2の電力にそれぞれ変換し、前記複数の第2の電力を複数の電解セルにそれぞれ供給する複数の変換回路と、
前記複数の変換回路のうちの駆動する変換回路の数を少なくとも制御する制御回路と、
を含み、前記制御回路は前記第1の電力における所定時間あたり所定量を超える増加または減少の発生を検出する検出器を含み、前記検出器が前記増加または減少の発生を検出すると、前記制御回路は前記駆動する変換回路の数を増加させることにより前記複数の電解セルの各々に供給する電流量を制御する、電流制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願開示は、水電解システム及び電流制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水電解システムを用いることにより、太陽光発電により得られた電力を水電解セルに供給し、水を電気分解して水素を発生することができる。このようにして太陽光エネルギーから生成した水素を蓄積し、燃料として活用することにより、様々な分野において二酸化炭素の排出量を低減することが可能となる。
【0003】
水電解システムにおいて、太陽光からの電力を複数のDC/DC変換器を介してそれぞれ対応する複数の水電解セルに供給し、複数の水電解セルを並列に駆動する構成が知られている。このような水電解システムにおいては、太陽光の照射量に応じて駆動する水電解セルの個数を変化させることにより、システム全体の電力水素変換効率を向上させることができる(例えば特許文献1)。
【0004】
一方、太陽光の照射量が変動する時に発生する急激な発電電力の変化により、水電解セルを流れる電流量が急激に変化し、水電解セルが劣化してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-85602号公報
【文献】特開2019-99905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上を鑑みると、複数の水電解セルを並列駆動するシステムにおいて水電解セルの劣化を低減することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
水電解システムは、太陽光発電装置が生成する第1の電力を複数の第2の電力にそれぞれ変換する複数の変換回路と、前記複数の変換回路のうちの駆動する変換回路の数を少なくとも制御する制御回路と、前記複数の変換回路から前記複数の第2の電力をそれぞれ受け取る複数の水電解セルとを含み、前記制御回路は前記第1の電力における所定時間あたり所定量を超える増加または減少の発生を検出する検出器を含み、前記検出器が前記増加または減少の発生を検出すると、前記制御回路は前記駆動する変換回路の数を増加させる。

【発明の効果】
【0008】
少なくとも1つの実施例によれば、複数の水電解セルを並列駆動するシステムにおいて水電解セルの劣化を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】水電解セルの構成の一例を示す図である。
図2】水電解セルの等価回路の一例を示す図である。
図3】水電解セルに印可される電圧と流れる電流とを示す図である。
図4】水電解システムの構成の一例を示す図である。
図5】MPPT制御器の構成の一例を示す図である。
図6】太陽光照射量の急激な変動に応答して各水電解セルに流れる電流量が変化する様子を模式的に示す図である。
図7】駆動対象であるDC/DCコンバータ個数を増加することにより各水電解セルに流れる電流量が削減する構成を説明する図である。
図8】太陽光照射量の急激な変動に応答して一部のDC/DCコンバータのみを駆動する構成を説明するための図である。
図9】従来技術のシステム構成における太陽光照射量の急激な変動に対する応答を示す図である。
図10】本願開示の水電解システムにおける太陽光照射量の急激な変動に対する応答を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施例を添付の図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
図1は、水電解セルの構成の一例を示す図である。水電解セルは、アノード電極1、カソード電極2、及び隔膜3を含む。アルカリ水電解の場合には、水素と酸素とを分離するために隔膜3が必要であり、アノード電極1、カソード電極2、及び隔膜3が、20%~30%程度のKOH水溶液を満たした電解槽の中に設けられる。アルカリ水電解の場合の隔膜3としては、例えば石綿膜又は多孔性PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)膜等が用いられる。固体高分子型水電解の場合には、パーフルオロエチレンスルホン酸系カチオン交換膜等の隔膜3が電解質を兼ねる。直流電圧をアノード電極1とカソード電極2との間に印可することにより、水を電気分解して水素を生成することができる。
【0012】
図2は、水電解セルの等価回路の一例を示す図である。水電解セルの等価回路は、抵抗R1乃至R3、ダイオードD1、及び容量C1を含む。水電解セルに流れる電流Icellは、ダイオードD1部分に流れる電流Idと容量C1部分に流れる電流Icapとの和となる。容量C1はアノード電極1とカソード電極2との間の容量成分であり、数F(ファラッド)の大きな値を有する。従って、アノード電極1とカソード電極2との間に印可される電圧が変動すると、大きな容量値を有する容量C1が充放電され、その結果、突入電流が瞬間的に大量に流れることになる。
【0013】
図3は、水電解セルに印可される電圧と流れる電流とを示す図である。水電解セルに印可される電圧が等価回路中のダイオードD1の閾値電圧Vthよりも低い状態においては、図2に示すセル電流Icellは容量C1部分に流れる電流Icapと等しくなる。即ち時間T1より前及び時間T2より後においては、水電解セルに流れる全ての電流が容量成分に流れる電流となる。従って、電圧が上昇する際には、図3に電流Icapとして示されるように、大きな突入電流(充電電流)が流れることになる。また電圧が下降する際にも、逆方向に大きな放電電流が瞬間的に流れることになる。
【0014】
以上説明したような大きな電流が瞬間的に水電解セルに流れると、水電解セルが劣化してしまう。本願開示の技術では、複数の水電解セルを並列駆動するシステムにおいて水電解セルの劣化を低減する仕組みを提供する。
【0015】
図4は、水電解システムの構成の一例を示す図である。図4に示す水電解システムは、制御回路10、太陽光パネル11、DC/DCコンバータ12-1乃至12-4、水電解セル13-1乃至13-4、及び水素格納装置14を含む。
【0016】
太陽光パネル11は、パネル面に配列された複数の太陽電池を有する。太陽光パネル11は、光起電力効果を利用し、太陽光の光エネルギーを直流電力に変換して出力する発電装置である。DC/DCコンバータ12-1乃至12-4は、発電装置が生成する第1の電力(直流電力)を複数の第2の電力(直流電力)にそれぞれ変換する複数の変換回路である。水電解セル13-1乃至13-4は、複数のDC/DCコンバータ12-1乃至12-4から上記複数の第2の電力をそれぞれ受け取る。水電解セル13-1乃至13-4は、太陽光パネル11から受け取る第2の電力により水を電気分解して水素を生成する。水電解セル13-1乃至13-4が生成した水素は、水素格納装置14(例えば水素タンク)に格納される。
【0017】
図4に示す例に示されるDC/DCコンバータ12-1乃至12-4及び水電解セル13-1乃至13-4の個数は一例にすぎない。後述するように、水電解セルの個数(=DC/DCコンバータの個数)は、個々の水電解セルへの突入電流を許容範囲内に抑えることができる任意の個数であってよく、好ましくは、許容範囲内に抑えることができる必要最小限の個数であってよい。
【0018】
制御回路10は、複数のDC/DCコンバータ12-1乃至12-4のうちの駆動するDC/DCコンバータの数を少なくとも制御する。より具体的には、制御回路10は、DC/DCコンバータ12-1乃至12-4のうちで選択したDC/DCコンバータを指定したデューティー比で駆動する。例えば2個のDC/DCコンバータ12-1及び12-2のみをデューティー比0.5で駆動する場合、制御回路10は、DC/DCコンバータ12-1及び12-2にデューティー比0.5を供給し、残りのDC/DCコンバータ12-3及び12-4にデューティー比0を供給してよい。或いは制御回路10は、4個のデューティー比を示す信号に加え4個の選択信号を出力し、駆動対象のDC/DCコンバータ12-1及び12-2に対する選択信号を1に設定し、残りのDC/DCコンバータに対する選択信号を0に設定してもよい。
【0019】
制御回路10の基本的な機能の1つは、太陽光パネル11が最大電力で発電することができる電圧値及び電流値にて、太陽光パネル11から電力を引き出すことである。言葉を換えて言えば、制御回路10の基本的な機能の1つは、太陽光パネル11が生成する第1の電力において直流電圧値と直流電流値とを調整することで、太陽光パネル11が生成する電力が最大となるような状態に設定することである。
【0020】
太陽電池は、出力電流値が大きくなれば出力電圧値が減少する特性を有し、出力電流値と出力電圧値との積で求まる出力電圧が最大となるような、出力電流値と出力電圧値との最適な組み合わせが存在する。その最適な組み合わせの出力電流値よりも、出力電流値が増加すると、出力電圧値が減少し、両者の積で求まる出力電力が減少してしまう。またその最適な組み合わせの出力電流値よりも、出力電流値が減少すると、出力電圧値が増加するが、両者の積で求まる出力電力は減少してしまう。従って、最適な組み合わせの出力電流値と出力電圧値とに維持できるように、太陽電池の出力電流値と出力電圧値とを制御することが必要となる。
【0021】
上記の制御の概要を説明するために、太陽光パネル11からの電力が1つの水電解セルに供給される構成を考える。このような構成の場合、太陽光パネル11と水電解セルとの間には1つのDC/DCコンバータを設ければよい。DC/DCコンバータは、デューティー比に応じたPWM動作によりコンバータからの出力電圧を制御する。デューティー比が大きくなればコンバータ出力電圧が増大すると共にコンバータ出力電流が減少し、デューティー比が小さくなればコンバータ出力電圧が減少すると共にコンバータ出力電流が増大する。このDC/DCコンバータが理想的な特性を有する場合、太陽光パネル11の出力電力(DC/DCコンバータの入力電力)と水電解セルの入力電力(DC/DCコンバータの出力電力)とは等しくなる。DC/DCコンバータのデューティー比を調整することにより、DC/DCコンバータの出力電圧及び出力電流ひいてはDC/DCコンバータの入力電力を調整して、太陽電池の出力電力が最大となるように制御することができる。
【0022】
太陽電池の出力電力が最大とするような制御としてMPPT(Maximum Power Point Tracking:最大電力点追従)制御が一般に行われる。このMPPT制御では、例えば初期状態のデューティー比D1からΔD増加させて新たなデューティー比をD2=D1+ΔDとする。この変化により太陽光パネル11の出力電力Pが増加したとき、即ちP(D2)>P(D1)であるときには、デューティー比を更にΔD増加させる。逆にこの変化により太陽光パネル11の出力電力が減少したとき、即ちP(D2)<P(D1)であるときには、デューティー比を逆にΔD減少させ、更に続けてΔD減少させる。このような制御を行うことにより、山登り法により、出力電力が最大となる点に到達することができる。
【0023】
制御回路10は上記のようなMPPT制御を基本とし、更に、図4に示すように複数個のDC/DCコンバータ12-1乃至12-4を制御対象とする構成においては、各DC/DCコンバータを変換効率が高い条件にて駆動するような制御動作も行ってよい。この制御動作では、太陽光の照射量が少ないときには少数のDC/DCコンバータを駆動して少数の水電解セルにより水素を生成し、太陽光の照射量が多いときには多数のDC/DCコンバータを駆動して多数の水電解セルにより水素を生成する。これにより、水電解システム全体として、効率が高い太陽光水素変換を実現することができる。そのような技術の詳細は、例えば前述の特許文献1に開示されている。
【0024】
本願開示の技術では、制御回路10は更に、太陽光パネル11の出力電力が急激に変化した場合、駆動するDC/DCコンバータ12-1乃至12-4の個数を増加するような制御を実行する。より具体的には、制御回路10は、第1の電力における所定時間あたり所定量を超える変化の発生を検出する検出器23を含み、検出器23がそのような変化の発生を検出すると、制御回路10は駆動するDC/DCコンバータ12-1乃至12-4の数を増加させる。これにより、駆動される水電解セル13-1乃至13-4の個数が増加するので、水電解セル1つあたりに流れる突入電流の電流量が減少し、水電解セルの劣化を防ぐことが可能となる。
【0025】
制御回路10は、MPPT制御器20、セル選択器21、SW制御部22、検出器(HPF)23、ゲイン調整器24、スイッチ回路SW1乃至SW4、及び加算器25-1乃至25-4を含む。図4において、各ボックスで示される各回路又は機能ブロックと他の回路又は機能ブロックとの境界は、基本的には機能的な境界を示すものであり、物理的な位置の分離、電気的な信号の分離、制御論理的な分離等に対応するとは限らない。各回路又は機能ブロックは、他のブロックと物理的にある程度分離された1つのハードウェアモジュールであってもよいし、或いは他のブロックと物理的に一体となったハードウェアモジュール中の1つの機能を示したものであってもよい。
【0026】
MPPT制御器20は、上述のMPPT制御を行い、太陽光パネル11の出力電圧が最大となるような制御信号を出力する。即ちMPPT制御器20は、太陽光パネル11が生成する第1の電力を最大化するようDC/DCコンバータ12-1乃至12-4を制御するために用いられる制御信号(各DC/DCコンバータを制御する信号を生成するための制御信号)を生成する。この制御信号は、デューティー比に相当する0から1の範囲の値を示すアナログ信号であってよい。或いはこの制御信号は、デューティー比に相当する0から1の範囲の値を示す複数ビットからなるデジタル信号であってよい。
【0027】
図5は、MPPT制御器20の構成の一例を示す図である。MPPT制御器20は、タイマー202、クロックジェネレータ203、アンプ221及び222、乗算器204、サンプルアンドホールド回路205乃至207、及び比較器208を含む。MPPT制御器20は更に、制御目標値生成部210(以下、「生成部210」とも称する)、インターフェイス回路211、差分器212、絶対値回路215、比較器213、及び停止信号生成器216を含む。
【0028】
電流計102は、太陽光パネル11の出力電流(出力ライン101に流れる電流)を測定し、電圧計103は、太陽光パネル11の出力電圧(出力ライン101に印加される電圧)を測定する。測定された電圧値Vを表す電圧信号及び測定された電流値Iを表す電流信号は、振幅調整用のアンプ221及び222を通じて、MPPT制御器20に入力される。電圧値Vは、太陽光パネル11の直流の出力電力の電圧値を表す。電流値Iは、太陽光パネル11の直流の出力電力の電流値を表す。
【0029】
タイマー202は、MPPT制御器20の動作を開始させるインターバルタイマーである。タイマー202は、一定時間(例えば10秒周期)に一度、クロックジェネレータ203に1パルスのスタート信号(Start)を送信する。クロックジェネレータ203は、スタート信号を受信すると一定周期(例えば100ミリ秒周期)の1パルスのクロック203aを生成して出力し、クロック203aに同期して動作する回路(細点線の内部の回路203b)を起動させる。
【0030】
クロック203aが回路203bに供給されると、電圧信号及び電流信号は、乗算器204によって、電力値を表す電力信号に変換される。電力信号が表す電力値は、サンプルアンドホールド回路205に格納される。サンプルアンドホールド部は、カスケード接続された3段のサンプルアンドホールド回路205乃至207を有する。サンプルアンドホールド回路205乃至207は、それぞれ、今回のクロック203aに対応する電力値Pnew、前回のクロック203aに対応する電力値Pold、前々回のクロック203aに対応する電力値Pooldを保持する。
【0031】
比較器208は、今回のクロック203aに対応する電力値Pnewと前回のクロック203aに対応する電力値Poldとの大小を比較し、その比較結果を生成部210に出力する。
【0032】
今回の電力値Pnewが前回の電力値Poldよりも大きいとき、MPPT制御器20の出力である制御信号(デューティー比)は、前回の電力値Poldの計測から今回の電力値Pnewの計測迄の間に、太陽光パネル11の出力電力を上昇させる方向に変化したと推定される。したがって、生成部210は、今回の電力値Pnewが前回の電力値Poldよりも大きいと比較器208により検出されるとき、デューティー比を前回変化させた方向と同じ方向に変化させる。これにより、太陽光パネル11の出力電力を更に上昇させて最大電力Psolar_maxに更に近づけることができる。
【0033】
一方、今回の電力値Pnewが前回の電力値Poldよりも小さいとき、MPPT制御器20の出力である制御信号(デューティー比)は、電力値Poldの計測から電力値Pnewの計測迄の間に、太陽光パネル11の出力電力を下降させる方向に変化したと推定される。したがって、生成部210は、今回の電力値Pnewが前回の電力値Pold以下であると比較器208により検出されるとき、デューティー比を前回変化させた方向と逆の方向に変化させる。これにより、太陽光パネル11の出力電力を上昇させて最大電力Psolar_maxに近づけることができる。
【0034】
インターフェイス回路211は、例えば、デジタル通信の場合、デューティー比をデジタル通信信号に変換する通信ポートであり、アナログ電圧信号による伝送の場合、デューティー比をアナログ電圧に変換するデジタルアナログコンバータである。
【0035】
差分器212は、今回のクロック203aに対応する電力値Pnewと前々回のクロック203aに対応する電力値Poold(サンプルアンドホールド回路207からの値)との差分を出力する。絶対値回路215は、その差分の絶対値をとって出力する。比較器213は、絶対値回路215によって得られた差分の絶対値があらかじめ決められた閾値214よりも小さくなった時、クロック停止信号(Stop)を停止信号生成器216に生成させる。クロックジェネレータ203は、停止信号生成器216により生成されたクロック停止信号を受信したとき、スタート信号を受信しているときかどうかにかかわらず、クロック203aの出力を停止する。生成部210は、MPPT制御が停止している期間において、MPPT制御器20の停止直前のデューティー比を出力し続けてよい。これにより、太陽光パネル11の出力電力が最大電力点に到達した時点で、MPPT制御器20のMPPT制御を停止し、出力電力最大の状態を維持することができる。なおこのようにMPPT制御を停止するのではなく、常時MPPT制御を実行する状態にしておいてもよい。
【0036】
図4に戻り、セル選択器21は、MPPT制御器20が出力する制御信号(デューティー比)に基づいて、DC/DCコンバータ12-1乃至12-4にそれぞれ供給する複数のデューティー比を生成する。セル選択器21は、例えばCPU(Central Processing Unit)とメモリとを有し、メモリに格納された制御プログラムをCPUが実行することにより、複数のデューティー比を計算してよい。より具体的には、セル選択器21は、MPPT制御器20が出力する1つのデューティー比に基づいて、1つ以上駆動されるDC/DCコンバータによる各電力変換動作が最も効率が高い状態で実行されるように、複数のデューティー比を制御してよい。
【0037】
検出器23は、MPPT制御器20が出力する制御信号(デューティー比)を入力とするハイパスフィルタであってよい。ハイパスフィルタは、アナログ信号であるデューティー比を入力とするアナログフィルタであってよく、或いはデジタル信号であるデューティー比を入力とするアナログフィルタであってよい。ハイパスフィルタは、デューティー比における所定時間あたり所定量を超える変化の発生を検出することにより、太陽光パネル11が出力する第1の電力における所定時間あたり所定量を超える変化の発生を検出してよい。このようにハイパスフィルタを検出器23として用いることで、単純な回路構成により、所定時間あたり所定量を超える変化の発生を適切なタイミングで検出することができる。
【0038】
スイッチ回路SW1乃至SW4は、DC/DCコンバータ12-1乃至12-4に一対一に対応して設けられ、導通状態又は非導通状態のいずれかに設定可能である。スイッチ回路SW1乃至SW4は、導通状態となったときに、検出器23の出力に応じた信号(検出器23をゲイン調整器24により調整した信号)を、加算器25-1乃至25-4にそれぞれ供給する。加算器25-1乃至25-4は、検出器23の出力に応じた信号をスイッチ回路SW1乃至SW4を介してそれぞれ受け取り、セル選択器21から受け取る複数のデューティー比のそれぞれに加算する。
【0039】
SW制御部22は、セル選択器21が生成する複数のデューティー比に基づいて(或いは駆動対象のDC/DCコンバータを選択する選択信号に基づいて)、スイッチ回路SW1乃至SW4の導通又は非導通を設定するスイッチ回路制御信号を生成する。具体的には、SW制御部22は、セル選択器21が駆動していないDC/DCコンバータに対応するスイッチ回路SW1乃至SW4のみが導通状態となるように、スイッチ回路制御信号を生成する。例えば導通状態となるスイッチ回路に供給されるスイッチ回路制御信号は値が1(ハイ)となり、非導通状態となるスイッチ回路に供給されるスイッチ回路制御信号は値が0(ロー)となってよい。
【0040】
このようにして、制御回路10は、セル選択器21の駆動対象でないDC/DCコンバータに対して、検出器23であるハイパスフィルタの出力に応じた信号が示すデューティー比を供給することができる。これにより、第1の電力の変化量に応じたデューティー比で、それらのDC/DCコンバータを駆動することができる。突入電流の量は、第1の電力の変化量が急峻であるほど大きくなり、且つ第1の電力の変化量が大きいほど大きくなる。一方、検出器23であるハイパスフィルタの出力も、第1の電力の変化量が急峻であるほど大きくなり、且つ第1の電力の変化量が大きいほど大きくなる。従って、ハイパスフィルタの出力に応じた信号が示すデューティー比をDC/DCコンバータに供給することで、突入電流の大きさに応じたデューティー比の大きさで、DC/DCコンバータを駆動することができる。これにより、突入電流の大きさに応じた変換比でDC/DCコンバータから電流を出力することで、水電解セルに流れる電流量を適切に削減し、水電解セルの劣化を確実に防ぐことが可能となる。
【0041】
ここでスイッチ回路SW1乃至SW4と加算器25-1乃至25-4とは、セル選択器21が駆動していないDC/DCコンバータに対して、検出器23であるハイパスフィルタの出力に応じた信号が示すデューティー比を供給する信号供給回路として機能する。このようにスイッチ回路と加算器とを用いることで、単純な回路構成により、突入電流の大きさに応じた変換比でDC/DCコンバータから電流を出力して、水電解セルの劣化を防ぐことが可能となる。
【0042】
前述のようにMPPT制御器20は、MPPT制御により最大電力点を追跡するためにMPPT制御器20が出力する制御信号(デューティー比)を連続的に変動させている。検出器23がMPPT制御による制御信号の変動を検出してしまったのでは、太陽光照射量の変動に関係のない変動を誤って検出してしまうことになる。従って、検出器23は、MPPT制御による変動の周波数fMPPTよりも高い周波数のみを検出する構成であることが好ましい。具体的には、検出器23を実現するハイパスフィルタのカットオフ周波数f(ハイパスフィルタの通過帯域の下限に相当する周波数)は、周波数fMPPTよりも高いことが好ましい。このようにハイパスフィルタのカットオフ周波数を設定することにより、MPPT制御のための意図的な信号変動に影響されることなく、所定時間あたり所定量を超える変化の発生を適切に検出することができる。
【0043】
上記のような構成により、検出器23が、太陽光パネル11の出力する第1の電力における所定時間あたり所定量を超える変化の発生を検出すると、制御回路10は、駆動するDC/DCコンバータ12-1乃至12-4の個数を増加させることになる。これにより、駆動される水電解セル13-1乃至13-4の個数が増加するので、水電解セル1つあたりに流れる突入電流の電流量が減少し、水電解セルの劣化を防ぐことが可能となる。
【0044】
図4に示す水電解システムにおいて、設置されているDC/DCコンバータ12-1乃至12-4及び水電解セル13-1乃至13-4の個数Nはそれぞれ4個である。この水電解セル13-1乃至13-4の個数Nは、突入電流により水電解セルが劣化しない個数に設定されることが好ましい。この個数は、以下のようにして計算することができる。
【0045】
DC/DCコンバータ12-1乃至12-4による入力電圧Vinと出力電圧Voutとの変換比をD(=Vout/Vin)とすると、DC/DCコンバータ12-1乃至12-4による出力電流は、入力電流の1/D倍となる。太陽光パネル11から出力される突入電流の最大値をISCとしたときに、DC/DCコンバータ12-1乃至12-4から出力される総電流量の最大値はISC/Dとなる。この総電流量がN個の水電解セル13-1乃至13-4により均等に分割されるとすると、各水電解セルに流れる電流の最大値はISC/(N・D)となる。各水電解セルの劣化を防ぐためには、この電流値が各水電解セルの定格値Imaxよりも小さいことが好ましい。従って、ISC/(N・D)>Imaxの条件を満たすことが好ましく、結果として個数Nは、
N>ISC/(Imax・D)
にて規定される条件を満たすことが好ましいことになる。
【0046】
また検出器23がハイパスフィルタである場合、ハイパスフィルタの出力値は、アナログフィルタであれば各受動素子のインピーダンス値等に応じた大きさとなり、デジタルフィルタであればフィルタ係数値等に応じた大きさとなる。従って、ハイパスフィルタの出力値の大きさは、DC/DCコンバータデューティー比として適切な値(0から1の範囲の値)に正規化される必要がある。また複数K個のDC/DCコンバータを駆動する場合には、1個のDC/DCコンバータを駆動する場合に用いるデューティー比に対して1/K倍のデューティー比を、各DC/DCコンバータに供給すればよい。ゲイン調整器24はそのようなゲイン調整を適宜実行すればよい。
【0047】
なおハイパスフィルタの入力が急激に減少する場合には、ハイパスフィルタの出力値は負の値を有することになる。このような場合でも、水電解セルには大きな放電電流が流れることになるので、本願開示の水電解システムにおいては、駆動するDC/DCコンバータ及び水電解セルの個数を増加することが好ましい。従って、検出器23であるバイパスフィルタの出力値は、入力に対してハイパスフィルタリングを施して得られる値に対する絶対値であることが好ましい。或いは、ハイパスフィルタの出力値は負の値のままとしておき、ゲイン調整器24により、ハイパスフィルタの出力値をその絶対値に変換するようにしてもよい。
【0048】
なおセル選択器21が全てのDC/DCコンバータ12-1乃至12-4を駆動するような状態である場合、SW制御部22は、全てのスイッチ回路SW1乃至SW4を非導通のままとしてよい。即ち、全てのDC/DCコンバータ12-1乃至12-4が駆動対象であるので、これ以上駆動対象のDC/DCコンバータの個数を増やすことはできず、突入電流対策として制御回路10は特に何もしない構成であってよい。或いは代替的に、SW制御部22は、全てのスイッチ回路SW1乃至SW4を導通状態として、ハイパスフィルタ出力に応じた信号が示すデューティー比を、全てのDC/DCコンバータに供給するデューティー比に加算する構成とすることも考えられる。この際、加算器出力は最大値が1となるような最大値制限機能を設けておけばよい。このような構成とすることにより、突入電流が存在する場合に、各水電解セルに流れる電流量を削減することが可能となる。
【0049】
図6は、太陽光照射量の急激な変動に応答して各水電解セルに流れる電流量が変化する様子を模式的に示す図である。図6においては、便宜上、DC/DCコンバータ及び水電解セルの設置個数がそれぞれ2個である場合を例にとって、太陽光照射量の急激な変動に対する応答を示している。
【0050】
図6に示すように太陽光日射量が増加すると、太陽光パネルが出力するPV出力電圧が増加する。このPV出力電圧の増加に応答して、MPPT制御器が出力するデューティー比Dutyも増加する。図6に示す例では、増加後の太陽光照射量に対して、2個のDC/DCコンバータのうちで1個のDC/DCコンバータのみを駆動することが最適な効率である場合を示している。従って、セル選択器の出力値のうちで、第1のDC/DCコンバータに対する出力値DC/DC1が図示されるように増加し、第2のDC/DCコンバータに対する出力値DC/DC2はゼロのままに維持されている。
【0051】
検出器であるハイパスフィルタが出力するHPF出力値は、入力であるデューティー比Dutyの急峻な変化部分においてのみ値を有するので、図示のように、一瞬だけ値が増加して直ぐにゼロに戻る波形となる。
【0052】
SW制御部の出力により制御されるスイッチ回路SW1及びSW2の導通及び非導通状態が、図6においてSW1及びSW2(スイッチ回路制御信号)の信号値により示される。この信号がハイ(H)状態であるときに当該スイッチ回路は導通状態であり、この信号がロー(L)状態であるときに当該スイッチ回路は非導通状態である。
【0053】
加算器を介して第1のDC/DCコンバータに供給されるデューティー比Duty1は、図6においてDC/DC1として示される信号である。加算器を介して第2のDC/DCコンバータに供給されるデューティー比Duty2は、導通状態となるスイッチ回路を介して供給されるHPF出力値に対応するデューティー比である。第1の水電解セルEC1に流れる電流IEC1は、デューティー比Duty1に応じて駆動される第1のDC/DCコンバータから出力される電流である。第2の水電解セルEC2に流れる電流IEC2は、デューティー比Duty2に応じて駆動される第2のDC/DCコンバータから出力される電流である。
【0054】
従来の水電解システムであれば、第2の水電解セルEC2に流れる電流IEC2はゼロであり、第1の水電解セルEC1に流れる電流IEC1にはIとして示す突入電流が重畳されることになる。本願開示の水電解システムにおいては、HPF出力値に応じた電流量が第2の水電解セルEC2に流れるため、第1の水電解セルEC1に流れる電流IEC1が少なくなる。従って、水電解セルの劣化を避けることが可能となる。
【0055】
図7は、駆動対象であるDC/DCコンバータ個数を増加することにより各水電解セルに流れる電流量が削減する構成を説明する図である。図7において、回路30は、太陽光パネル及びDC/DCコンバータの等価回路である。この等価回路30から供給される電流Iが水電解セル13-1乃至13-4にそれぞれ電流IEC1、電流IEC2、電流IEC3、電流IEC4として分配される。これにより、電流Iが例えば1つの水電解セルに供給された場合と比較して、各水電解セルに流れる電流量を削減し、水電解セルの劣化を防ぐことが可能になる。
【0056】
上記説明した実施例においては、セル選択器21が駆動対象としていない全てのDC/DCコンバータに対して、検出器23からのデューティー比を供給することにより、設置されている全てのDC/DCコンバータを駆動している。突入電流を複数の水電解セルに分配することにより各水電解セルに流れる電流量を削減して劣化を防ぐという観点からすると、全てのDC/DCコンバータを駆動することが好ましい。しかしながら、突入電流量がそれほど大きくないような場合には、必ずしも設置されている全てのDC/DCコンバータを駆動する必要はない。
【0057】
図8は、太陽光照射量の急激な変動に応答して一部のDC/DCコンバータのみを駆動する動作を説明するための図である。図8においては、DC/DCコンバータ及び水電解セルの設置個数がそれぞれ4個である場合を例にとって、太陽光照射量の急激な変動に対する応答を示している。
【0058】
図8に示すように太陽光日射量が増加すると、太陽光パネルが出力するPV出力電圧が増加する。このPV出力電圧の増加に応答して、MPPT制御器が出力するデューティー比Dutyも増加する。図8に示す例では、増加後の太陽光照射量に対して、4個のDC/DCコンバータのうちで1個のDC/DCコンバータのみを駆動することが最適な効率である場合を示している。従って、セル選択器の出力値のうちで、第1のDC/DCコンバータに対する出力値DC/DC1が図示されるように増加し、第2乃至第4のDC/DCコンバータに対する出力値DC/DC2乃至DC/DC4はゼロのままに維持されている。
【0059】
検出器であるハイパスフィルタが出力するHPF出力値は、入力であるデューティー比Dutyの急峻な変化部分においてのみ値を有するので、図示のように、一瞬だけ値が増加して直ぐにゼロに戻る波形となる。
【0060】
SW制御部の出力により制御されるスイッチ回路SW1乃至SW4の導通及び非導通状態が、図8においてSW1乃至SW4(スイッチ回路制御信号)の信号値により示される。この信号がハイ(H)状態であるときに当該スイッチ回路は導通状態であり、この信号がロー(L)状態であるときに当該スイッチ回路は非導通状態である。図8においてA1に示されるように、SW制御部は、第4のDC/DCコンバータについては、スイッチ回路制御信号SW4をロー(L)に設定している。
【0061】
加算器を介して第1のDC/DCコンバータに供給されるデューティー比Duty1は、図8においてDC/DC1として示される信号である。加算器を介して第2のDC/DCコンバータに供給されるデューティー比Duty2は、導通状態となるスイッチ回路を介して供給されるHPF出力値に対応するデューティー比である。同様に、加算器を介して第3のDC/DCコンバータに供給されるデューティー比Duty3は、導通状態となるスイッチ回路を介して供給されるHPF出力値に対応するデューティー比である。第4のDC/DCコンバータに供給されるデューティー比Duty4は、図8に示されるようにゼロとなっている。
【0062】
第1の水電解セルEC1に流れる電流IEC1は、デューティー比Duty1に応じて駆動される第1のDC/DCコンバータから出力される電流である。第2の水電解セルEC2に流れる電流IEC2は、デューティー比Duty2に応じて駆動される第2のDC/DCコンバータから出力される電流である。第3の水電解セルEC3に流れる電流IEC3は、デューティー比Duty3に応じて駆動される第3のDC/DCコンバータから出力される電流である。第4の水電解セルEC4に流れる電流IEC4は、デューティー比Duty4がゼロであることに対応して、図8においてA2に示されるようにゼロとなっている。
【0063】
上記動作例に示されるように、本願開示の水電解システムは、全てのDC/DCコンバータを駆動させる構成に限定されるものではない。各水電解セルに流れる電流量を定格電流以下にできるのであれば、設置されているDC/DCコンバータのうちの全てではない一部のDC/DCコンバータのみを駆動して、設置されている水電解セルのうちの全てではない一部のみに電流を流してよい。
【0064】
以上説明したように、本願開示の水電解システムにおいては、太陽光パネル11が生成する第1の電力における所定時間あたり所定量を超える変化の発生を検出すると、駆動するDC/DCコンバータ12-1乃至12-4の数を増加させる。これにより、駆動される水電解セル13-1乃至13-4の個数が増加するので、水電解セル1つあたりに流れる突入電流の電流量が減少し、水電解セルの劣化を防ぐことが可能となる。以下に、本願開示の水電解システムにより、水電解セルに流れる電流が削減されることを、計算機シミュレーションにより実証した結果を示す。
【0065】
図9は、従来技術のシステム構成における太陽光照射量の急激な変動に対する応答を示す図である。図10は、本願開示の水電解システムにおける太陽光照射量の急激な変動に対する応答を示す図である。これらの応答を計算するにあたり、セル閾値(図2に示すダイオードD1の閾値)を4.5V、セルスタック数を3、セル寄生容量を1F、各セルの定格電流を20Aとした。また従来技術の水電解システムは、図4に示す構成において、SW制御部22、検出器23、ゲイン調整器24、加算器25-1乃至25-4、及びスイッチ回路SW1乃至SW4が設けられていない構成である。
【0066】
図9に示されるように、従来の水電解システムにおいては、太陽光の照射量が増大すると、セル選択器が出力する複数のデューティー比Duty1乃至Duty4のうち、デューティー比Duty1のみがゼロから立ち上がり増加している。これに応じて、4個の水電解セルのうち第1の水電解セルにのみ電流Lout1が流れ、その電流量は一時的に定格電流20Aを超える量となっている。
【0067】
一方、図10に示されるように、本願開示の水電解システムにおいては、太陽光の照射量が増大すると、セル選択器21が出力する複数のデューティー比Duty1乃至Duty4の全てにおいてゼロより大きい値が現れている。具体的には、デューティー比Duty1がゼロから立ち上がり増加していくと共に、デューティー比Duty2乃至Duty4についてもゼロから立ち上がる一時的な値の増加が現れている。これに応じて、全ての水電解セル13-1乃至13-4に電流Lout1乃至Lout4が流れ、その電流量が定格電流20Aを超えることはない。
【0068】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で様々な変形が可能である。
【0069】
本願開示の電流制御装置(制御回路10及びDC/DCコンバータ12-1乃至12-4)は、太陽光発電以外の発電機構(例えば風力発電)に対して使用可能であるし、また水電解セル以外の電解セルに対しても使用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 アノード電極
2 カソード電極
3 隔膜
10 制御回路
11 太陽光パネル
12-1~12-4 DC/DCコンバータ
13-1~13-4 水電解セル
14 水素格納装置
20 MPPT制御器
21 セル選択器
22 SW制御部
23 検出器
24 ゲイン調整器
25-1~25-4 加算器
SW1~SW4 スイッチ回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10