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特許7384290アンテナモジュール、接続部材、およびそれを搭載した通信装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】アンテナモジュール、接続部材、およびそれを搭載した通信装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/50 20060101AFI20231114BHJP
   H04B 1/3827 20150101ALI20231114BHJP
   H05K 1/14 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H01Q1/50
H04B1/3827 110
H05K1/14 G
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022533725
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(86)【国際出願番号】 JP2021018983
(87)【国際公開番号】W WO2022004169
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2020114822
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020173344
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾仲 健吾
(72)【発明者】
【氏名】森 弘嗣
(72)【発明者】
【氏名】山田 良樹
(72)【発明者】
【氏名】須藤 薫
(72)【発明者】
【氏名】泉谷 寛
(72)【発明者】
【氏名】上田 英樹
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-238903(JP,A)
【文献】特開2004-095995(JP,A)
【文献】特開2000-221536(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008573(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/50
H04B 1/3827
H05K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々に放射素子が配置された第1基板および第2基板と、
前記第1基板および前記第2基板に高周波信号を供給するための給電回路が配置された第3基板と、
前記給電回路と前記第1基板上の放射素子との間の接続、および、前記給電回路と前記第2基板上の放射素子との間の接続を切換えるように構成された切換回路とを備える、アンテナモジュール。
【請求項2】
前記第1基板、前記第2基板および前記第3基板に接続され、前記給電回路と前記第1基板に配置された放射素子との間、および、前記給電回路と前記第2基板に配置された放射素子との間で高周波信号を伝達する接続部材をさらに備える、請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項3】
前記接続部材に配置され、前記第1基板に配置された放射素子と前記給電回路との間で伝達される高周波信号を増幅するように構成された第1増幅回路と、
前記接続部材に配置され、前記第2基板に配置された放射素子と前記給電回路との間で伝達される高周波信号を増幅するように構成された第2増幅回路とをさらに備える、請求項2に記載のアンテナモジュール。
【請求項4】
前記第1増幅回路および前記第2増幅回路の少なくとも一方は、前記第3基板に接している、請求項3に記載のアンテナモジュール。
【請求項5】
前記切換回路は、前記第3基板に配置される、請求項2~4のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項6】
前記切換回路は、前記接続部材に配置される、請求項2~5のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項7】
前記接続部材は可撓性を有する、請求項2~6のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項8】
前記接続部材は、複数の誘電体層が積層された多層構造を有しており、互いに異なる層に形成された第1配線および第2配線を含む、請求項5~7のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項9】
前記第1基板と前記第3基板との間に接続され、前記給電回路と前記第1基板に配置された放射素子との間で高周波信号を伝達する第1接続部材と、
前記第2基板と前記第3基板との間に接続され、前記給電回路と前記第2基板に配置された放射素子との間で高周波信号を伝達する第2接続部材とをさらに備える、請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項10】
前記第1接続部材に配置され、前記第1基板に配置された放射素子と前記給電回路との間で伝達される高周波信号を増幅するように構成された第1増幅回路と、
前記第2接続部材に配置され、前記第2基板に配置された放射素子と前記給電回路との間で伝達される高周波信号を増幅するように構成された第2増幅回路とをさらに備える、請求項9に記載のアンテナモジュール。
【請求項11】
前記第1増幅回路および前記第2増幅回路の少なくとも一方は、前記第3基板に接している、請求項10に記載のアンテナモジュール。
【請求項12】
前記第1接続部材および前記第2接続部材の少なくとも一方は、複数の誘電体層が積層された多層構造を有しており、互いに異なる層に形成された第1配線および第2配線を含む、請求項9~11のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項13】
前記切換回路は、前記第3基板に配置される、請求項9~12のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項14】
前記放射素子は、第1周波数帯域の電波を放射可能な第1素子と、前記第1周波数帯域とは異なる第2周波数帯域の電波を放射可能な第2素子とを含み、
前記アンテナモジュールは、前記第1周波数帯域の信号を通過可能な第1フィルタと、前記第2周波数帯域の信号を通過可能な第2フィルタとを含む第1フィルタ装置をさらに備え、
前記第1フィルタ装置は、前記第3基板において、前記給電回路と前記切換回路との間の信号伝達経路に配置される、請求項1~13のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項15】
前記アンテナモジュールは、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタを含む第2フィルタ装置をさらに備え、
前記第2フィルタ装置は、前記第1基板および前記第2基板において、前記放射素子と前記接続部材との間の信号伝達経路に配置される、請求項14に記載のアンテナモジュール。
【請求項16】
前記給電回路をさらに備える、請求項1~15のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載のアンテナモジュールを搭載した、通信装置。
【請求項18】
請求項3または10に記載のアンテナモジュールと、
前記アンテナモジュールを収納するための筐体とを備え、
前記第1増幅回路および前記第2増幅回路は、前記筐体から離間して配置される、通信装置。
【請求項19】
各々に放射素子が配置された第1基板および第2基板と、前記第1基板および前記第2基板に高周波信号を供給するための給電回路が配置された第3基板とを接続するための接続部材であって、
前記給電回路と各放射素子との間で高周波信号を伝達するための給電配線が内部に形成された誘電体基板と、
前記誘電体基板に配置され、前記給電回路と前記第1基板上の放射素子との間の接続、および、前記給電回路と前記第2基板上の放射素子との間の接続を切換えるように構成された切換回路とを備える、接続部材。
【請求項20】
前記誘電体基板に配置され、前記第1基板に配置された放射素子と前記給電回路との間で伝達される高周波信号を増幅するように構成された第1増幅回路と、
前記誘電体基板に配置され、前記第2基板に配置された放射素子と前記給電回路との間で伝達される高周波信号を増幅するように構成された第2増幅回路とをさらに備える、請求項19に記載の接続部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナモジュール、接続部材、およびそれを搭載した通信装置に関し、より特定的には、通信装置内におけるアンテナモジュールの配置の自由度を向上するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話あるいはスマートフォンに代表される携帯通信機器には、電波の送受信を行なうためのアンテナモジュールが一般的に用いられている。このような携帯通信機器においては、小型化,薄型化のニーズが依然として高く、それに伴って、アンテナモジュールなどの装置内部に搭載される機器についても、さらなる小型化,低背化が求められている。
【0003】
また、近年では、通信機器における表示領域(ディスプレイ)の拡大に伴って、通信機器における放射素子(給電素子)の配置可能な位置が大きく制限される場合がある。この場合、高周波信号を処理するための回路(IC:Integrated Circuit)が配置されるマザーボードと給電素子とを近接して配置することが困難となったり、マザーボード上における回路の配置に制約が課せられたりする状態が生じ得る。
【0004】
特表2010-538542号公報(特許文献1)には、プリント回路基板に配置された無線機から、フレキシブルインターコネクトを介して接続されたアンテナアレイを含む移動無線通信装置が開示されている。特表2010-538542号公報(特許文献1)に記載の通信装置においては、柔軟性を有するフレキシブルインターコネクトによって、アンテナアレイを回路基板から離れてマウントすることができるため、無線装置の筐体内における機器の配置の自由度を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2010-538542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特表2010-538542号公報(特許文献1)においては、無線機には、複数のアンテナアレイの各々に対応した個別のRFフロントエンドが含まれている。すなわち、無線機に搭載されるアンテナアレイと同じ数のRFフロントエンドが必要となる。この場合、アンテナアレイの数が多くなると、回路基板に配置すべきRFフロントエンドの数も増加する。そのため、回路基板においては広い実装面積が必要となり、結果として無線装置の小型化を妨げる要因となり得る。
【0007】
本開示は上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、アンテナモジュールを小型化することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある局面に従うアンテナモジュールは、各々に放射素子が配置された第1基板および第2基板と、第3基板と、切換回路とを備える。第3基板は、第1基板および第2基板に高周波信号を供給するための給電回路が配置されている。切換回路は、給電回路と第1基板上の放射素子との間の接続、および、給電回路と第2基板上の放射素子との間の接続を切換えるように構成される。
【0009】
本開示の他の局面に従う接続部材は、第1基板および第2基板と、第3基板とを接続するための部材であり、誘電体基板と、誘電体基板に配置された切換回路とを備える。第1基板および第2基板の各々には、放射素子が配置されている。第3基板には、第1基板および第2基板に高周波信号を供給するための給電回路が配置されている。誘電体基板は、給電回路と各放射素子との間で高周波信号を伝達するための給電配線が内部に形成されている。切換回路は、給電回路と第1基板上の放射素子との間の接続、および、給電回路と第2基板上の放射素子との間の接続を切換えるように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係るアンテナモジュールによれば、放射素子が配置された2つの基板(第1基板,第2基板)に対して共通の給電回路が第3基板に設けられる。そして、給電回路からの高周波信号が当該切換回路によって切換えられて、第1基板の放射素子、あるいは、第2基板の放射素子に供給される。すなわち、複数のアンテナ装置(放射素子+基板)に対して1つの給電回路が共有されるため、アンテナ装置の数に対して給電回路の数を低減することができる。したがって、アンテナモジュールを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係るアンテナモジュールが適用される通信装置のブロック図である。
図2】実施の形態1に係るアンテナモジュールの側面図である。
図3】変形例1に係るアンテナモジュールの側面図である。
図4図3のアンテナモジュールの斜視図である。
図5】実施の形態2に係るアンテナモジュールが適用される通信装置のブロック図である。
図6図5におけるフロントエンドモジュールの詳細を示す図である。
図7】実施の形態2に係るアンテナモジュールの側面図である。
図8】接続部材の内部構造の一例を示す図である。
図9】変形例2に係るアンテナモジュールの側面図である。
図10】変形例3に係るアンテナモジュールの側面図である。
図11】変形例4に係るアンテナモジュールの側面図である。
図12】変形例5に係るアンテナモジュールの平面図である。
図13】通信装置におけるアンテナ装置の配置例を示す図である。
図14】接続端子の第1変形例を示す図である。
図15図14における接続端子の一例を示す図である。
図16】接続端子の第2変形例を示す図である。
図17】実施の形態3に係るアンテナモジュールが適用される通信装置のブロック図である。
図18】フロントエンドモジュールの変形例を示す図である。
図19】実施の形態3に係るアンテナモジュールの側面図である。
図20】アンテナ装置の部分断面図である。
図21】ダイプレクサの構成を説明するための図である。
図22】マザーボードにおけるフィルタ装置の配置例を示す図である。
図23】アンテナ装置におけるフィルタ装置の配置例を示す図である。
図24】変形例6に係るアンテナモジュールが適用される通信装置のブロック図である。
図25】アンテナ装置における給電配線の接続状態を説明するための断面図である。
図26】実施の形態4に係るアンテナモジュールが適用される通信装置のブロック図である。
図27図26におけるフロントエンドモジュールの詳細を説明するための図である。
図28】実施の形態4に係るアンテナモジュールの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
[実施の形態1]
(通信装置の基本構成)
図1は、本実施の形態1に係るアンテナモジュール100が適用される通信装置10のブロック図の一例である。通信装置10は、たとえば、携帯電話、スマートフォンあるいはタブレットなどの携帯端末、通信機能を備えたパーソナルコンピュータ、または基地局などである。本実施の形態に係るアンテナモジュール100に用いられる電波の周波数帯域の一例は、たとえば28GHz、39GHzおよび60GHzなどを中心周波数とするミリ波帯の電波であるが、上記以外の周波数帯域の電波についても適用可能である。
【0014】
図1を参照して、通信装置10は、アンテナモジュール100と、ベースバンド信号処理回路を構成するBBIC200とを備える。アンテナモジュール100は、給電回路の一例であるRFIC110と、アンテナ装置120A,120Bと、切換回路130とを備える。通信装置10は、BBIC200からアンテナモジュール100へ伝達された信号を高周波信号にアップコンバートしてアンテナ装置120から放射するとともに、アンテナ装置120で受信した高周波信号をダウンコンバートしてBBIC200にて信号を処理する。
【0015】
図1の例においては、説明を容易にするために、アンテナ装置120A,120B(以下、包括して「アンテナ装置120」とも称する。)の各々が、4つの給電素子(放射素子)を含む場合を示している。具体的には、アンテナ装置120Aは給電素子121A1~121A4を含んでおり、アンテナ装置120Bは給電素子121B1~121B4を含んでいる。
【0016】
なお、給電素子121A1~121A4を包括して「給電素子121A」とも称する。また、121B1~121B4を包括して「給電素子121B」とも称する。さらに、給電素子121A,121Bを包括して「給電素子121」とも称する。
【0017】
図1においては、アンテナ装置120は、4つの給電素子121が一列に配置された一次元のアンテナアレイである。なお、給電素子121は必ずしも複数である必要はなく、1つの給電素子121でアンテナ装置120が形成される場合であってもよい。また、複数の給電素子121が二次元に配置されたアレイアンテナであってもよい。本実施の形態においては、各給電素子121は、略正方形の平板形状を有するパッチアンテナである。
【0018】
RFIC110は、スイッチ111A~111D,113A~113D,117と、パワーアンプ112AT~112DTと、ローノイズアンプ112AR~112DRと、減衰器114A~114Dと、移相器115A~115Dと、信号合成/分波器116と、ミキサ118と、増幅回路119とを備える。
【0019】
高周波信号を送信する場合には、スイッチ111A~111D,113A~113Dがパワーアンプ112AT~112DT側へ切換えられるとともに、スイッチ117が増幅回路119の送信側アンプに接続される。高周波信号を受信する場合には、スイッチ111A~111D,113A~113Dがローノイズアンプ112AR~112DR側へ切換えられるとともに、スイッチ117が増幅回路119の受信側アンプに接続される。
【0020】
切換回路130は、単極多投型(Single-pole Multiple Throw)スイッチであるスイッチ130A~130Dを含む。スイッチ130A~130Dは、RFIC110におけるスイッチ111A~111Dにそれぞれ接続される。切換回路130は、たとえばRFIC110によって制御され、RFIC110とアンテナ装置120Aの給電素子121Aとの間の接続、および、RFIC110とアンテナ装置120Bの給電素子121Bとの間の接続を切換えるように構成されている。
【0021】
スイッチ130Aは、第1端子T1Aと、第2端子T2Aと、第3端子T3Aとを含む。第1端子T1Aは、スイッチ111Aの共通端子に接続される。第2端子T2Aは、アンテナ装置120Aの給電素子121A1に接続される。第3端子T3Aは、アンテナ装置120Bの給電素子121B1に接続される。
【0022】
同様に、スイッチ130Bについては、第1端子T1Bがスイッチ111Bの共通端子に接続され、第2端子T2Bがアンテナ装置120Aの給電素子121A2に接続され、第3端子T3Bがアンテナ装置120Bの給電素子121B2に接続される。スイッチ130Cについては、第1端子T1Cがスイッチ111Cの共通端子に接続され、第2端子T2Cがアンテナ装置120Aの給電素子121A3に接続され、第3端子T3Cがアンテナ装置120Bの給電素子121B3に接続される。スイッチ130Dについては、第1端子T1Dがスイッチ111Dの共通端子に接続され、第2端子T2Dがアンテナ装置120Aの給電素子121A4に接続され、第3端子T3Dがアンテナ装置120Bの給電素子121B4に接続される。
【0023】
アンテナ装置120Aにおいて高周波信号を送受信する場合には、スイッチ130A~130Dの各々が第2端子T2A~T2Dにそれぞれ切換えられる。アンテナ装置120Bにおいて高周波信号を送受信する場合には、スイッチ130A~130Dの各々が第3端子T3A~T3Dにそれぞれ切換えられる。
【0024】
BBIC200から伝達された信号は、増幅回路119で増幅され、ミキサ118でアップコンバートされる。アップコンバートされた高周波信号である送信信号は、信号合成/分波器116で4分波され、4つの信号経路を通過して、それぞれ異なる給電素子121に給電される。このとき、各信号経路に配置された移相器115A~115Dの移相度が個別に調整されることにより、アンテナ装置120の指向性を調整することができる。
【0025】
各給電素子121で受信された高周波信号である受信信号は、それぞれ、異なる4つの信号経路を経由し、信号合成/分波器116で合波される。合波された受信信号は、ミキサ118でダウンコンバートされ、増幅回路119で増幅されてBBIC200へ伝達される。
【0026】
(アンテナモジュールの構成)
図2は、実施の形態1に係るアンテナモジュール100の側面図である。アンテナモジュール100は、RFIC110と、誘電体基板122Aに給電素子121Aが形成されたアンテナ装置120Aと、誘電体基板122Bに給電素子121Bが形成されたアンテナ装置120Bと、切換回路130とを含む。なお、誘電体基板122Aおよび誘電体基板122Bを包括して「誘電体基板122」とも称する。
【0027】
RFIC110および切換回路130は、マザーボード250に配置されている。RFIC110は、同じくマザーボード250に配置されるBBIC200と接続配線260により電気的に接続されている。また、RFIC110は、接続配線170により切換回路130と接続されている。なお、図2および以降の説明において、マザーボード250の法線方向をZ軸方向とし、それに直交する方向(マザーボード250の面内方向)をX軸およびY軸方向とする。
【0028】
アンテナ装置120Aは、接続端子150Aによってマザーボード250に接続されている。また、アンテナ装置120Bは、接続端子150Bによってマザーボード250に接続されている。接続端子150A,150Bは、たとえば、着脱可能構成されたコネクタである。なお、接続端子150A,150Bは、はんだバンプにより形成されていてもよい。
【0029】
アンテナ装置120において給電素子121が形成される誘電体基板122は、たとえば、低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)多層基板、エポキシ、ポリイミドなどの樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、より低い誘電率を有する液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、フッ素系樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、あるいは、LTCC以外のセラミックス多層基板である。なお、誘電体基板122は必ずしも多層構造でなくてもよく、単層の基板であってもよい。
【0030】
給電素子121は、平板形状を有する、銅あるいはアルミニウムなどの導電体で形成されている。給電素子121の形状は、図1で示したような矩形に限られず、多角形、円形、楕円、あるいは十字形状であってもよい。給電素子121は、誘電体基板122の表面あるいは内部の層に形成される。図2の例においては、4つの給電素子121が一方向に配列されたアレイアンテナが示されているが、給電素子121が単独で形成されてもよいし、複数の給電素子121が一次元あるいは二次元に配列された構成であってもよい。なお、図2には示されていないが、誘電体基板122において、給電素子121に対向して接地電極が配置される。
【0031】
切換回路130は、接続端子150Aを介して、給電配線160Aによりアンテナ装置120Aに接続されている。また、切換回路130は、接続端子150Bを介して、給電配線160Bによりアンテナ装置120Bに接続されている。RFIC110からの高周波信号は、切換回路130によって切換えられて、アンテナ装置120Aの給電素子121A、あるいは、アンテナ装置120Bの給電素子121Bに供給される。アンテナ装置120Aに高周波信号が供給されているときには、給電素子121Aから電波が放射され、給電素子121Bからは電波は放射されない。逆に、アンテナ装置120Bに高周波信号が供給されているときには、給電素子121Bから電波が放射され、給電素子121Aからは電波は放射されない。
【0032】
アンテナモジュールに複数のアンテナ装置が設けられる場合、一般的には各アンテナ装置ごとにRFICが個別に配置される。この場合、RFICが配置される基板(たとえば、マザーボード)には、すべてのRFICを配置するための実装面積が必要となる。携帯端末などの通信装置においては、基地局との接続を確保するために、複数のアンテナ装置を設け、異なる方向への電波の放射および異なる方向からの電波の受信を可能とする構成が採用されつつあるが、アンテナ装置の増加によって基板面積が増加すると、かえってアンテナモジュールおよび無線装置の小型化を妨げる要因となり得る。
【0033】
しかしながら、実施の形態1のように、複数のアンテナ装置に対してRFICを共通化し、切換回路によってアンテナ装置を切換えて使用する構成とすることによって、アンテナ装置の数に対してRFICの数を削減することができるため、無線装置の小型を妨げる要因を低減することができる。また、RFICは他の部品よりも比較的高価な部品であるため、RFICを削減することによって、コストの削減にも寄与することができる。
【0034】
なお、上記の説明においては、1つのRFICに切換回路を介して2つアンテナ装置を接続する例について説明したが、RFICに対して3つ以上のアンテナ装置を接続する構成としてもよい。
【0035】
実施の形態1における「誘電体基板122A」、「誘電体基板122B」および「マザーボード250」は、本開示における「第1基板」、「第2基板」および「第3基板」にそれぞれ対応する。
【0036】
(変形例1)
実施の形態1においては、アンテナ装置120Aおよびアンテナ装置120Bが、マザーボード250に個別に接続された構成について説明した。変形例1においては、アンテナ装置120Aおよびアンテナ装置120Bが、互いに接続された構成について説明する。図3は、変形例1に係るアンテナモジュール100Xの側面図である。また、図4はアンテナモジュール100Xの斜視図である。なお、図3および図4の説明において、実施の形態1のアンテナモジュール100と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0037】
図3および図4を参照して、アンテナモジュール100Xにおいては、アンテナ装置120Aは、実施の形態1のアンテナモジュール100と同様に、接続端子150Aによってマザーボード250に接続されている。しかしながら、アンテナ装置120Bは、屈曲した接続部材123によってアンテナ装置120Aに接続されている。
【0038】
アンテナ装置120A,120Bおよび接続部材123は、図3に示されるように、Y軸方向から平面視した場合に略L字形状を有している。アンテナ装置120Aの給電素子121AからはZ軸方向に電波が放射される。また、アンテナ装置120Bの給電素子121BからはX軸方向に電波が放射される。
【0039】
図4に示されるように、アンテナモジュール100Xにおいては、アンテナ装置120A,120BはY軸方向に延在している。アンテナ装置120Aの給電素子121Aは、誘電体基板122AにおいてY軸方向に配列されている。また、アンテナ装置120Bの給電素子121Bは、誘電体基板122BにおいてY軸方向に配列されている。
【0040】
給電配線160Bは、接続端子150Aから誘電体基板122Aおよび接続部材123を通って誘電体基板122Bに至り、誘電体基板122B上の給電素子121Bに高周波信号を伝達する。
【0041】
なお、変形例1のアンテナモジュール100Xのアンテナ装置120A,120Bにおいては、各給電素子から放射される電波の偏波方向が給電素子の配列方向(すなわち、Y軸方向)に対してθだけ傾斜するように、給電素子が配置されている。θの大きさは、0°より大きく90°よりも小さく、一例においてはθ=45°である。給電素子をこのように傾斜して配置することによって、偏波方向の誘電体基板の寸法が制限されるような場合であっても、給電素子から誘電体基板(接地電極)端部までの距離を拡大して周波数帯域幅の悪化を抑制することができる。
【0042】
また、変形例1のアンテナモジュール100Xのように、アンテナ装置120Aとアンテナ装置120Bとが、接続部材123で接続された構成においても、複数のアンテナ装置に対してRFIC110を共通化し、切換回路130によってアンテナ装置を切換えて使用する構成とすることによって、無線装置の小型を妨げる要因を低減することができる。
【0043】
なお、図3においては、アンテナ装置120Aにおける誘電体基板122Aと、アンテナ装置120Bにおける誘電体基板122Bとが個別の基板として形成され、接続部材123によって接続される構成について示したが、誘電体基板122A,122Bおよび接続部材123が1つの基板として一体的に形成され、接続部材123の部分において屈曲するように構成されていてもよい。
【0044】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、複数のアンテナ装置がマザーボードに直接接続される構成の例について説明した。
【0045】
しかしながら、近年では、通信機器における表示領域(ディスプレイ)の拡大に伴って、通信機器内でアンテナ装置を配置することが可能な場所が大きく制限される場合があり、アンテナ装置をマザーボードに近接して配置できない状態となる可能性がある。
【0046】
そこで、実施の形態2においては、マザーボードとアンテナ装置との間に接続部材を配置し、マザーボードからアンテナ装置までの信号伝達経路を延長することによって、通信装置内におけるアンテナ装置のレイアウトの自由度を向上させる構成を採用する。また、実施の形態2においては、接続部材上に増幅回路をさらに配置して、信号伝達経路の延長に伴う信号減衰による損失の低下を抑制する。
【0047】
(通信装置の基本構成)
図5は、実施の形態2に係るアンテナモジュール100Aが適用される通信装置10Aのブロック図である。アンテナモジュール100Aにおいては、図1で示した実施の形態1のアンテナモジュール100に、フロントエンドモジュール(以下、「FEM(Front End Module)」とも称する。)180A,180Bが追加された構成となっている。図5のアンテナモジュール100Aにおいて、図1のアンテナモジュール100と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0048】
図5を参照して、アンテナモジュール100Aにおいては、切換回路130とアンテナ装置120Aとの間の信号伝達経路にFEM180Aが配置され、切換回路130とアンテナ装置120Bとの間の信号伝達経路にFEM180Bが配置されている。
【0049】
FEM180Aは、FEM180A1~FEM180A4を含んでいる。FEM180A1は、スイッチ130Aの第2端子T2Aと給電素子121A1との間に接続される。FEM180A2は、スイッチ130Bの第2端子T2Bと給電素子121A2との間に接続される。FEM180A3は、スイッチ130Cの第2端子T2Cと給電素子121A3との間に接続される。FEM180A4は、スイッチ130Dの第2端子T2Dと給電素子121A4との間に接続される。
【0050】
また、FEM180BはFEM180B1~FEM180B4を含んでいる。FEM180B1は、スイッチ130Aの第3端子T3Aと給電素子121B1との間に接続される。FEM180B2は、スイッチ130Bの第3端子T3Bと給電素子121B2との間に接続される。FEM180B3は、スイッチ130Cの第3端子T3Cと給電素子121B3との間に接続される。FEM180B4は、スイッチ130Dの第3端子T3Dと給電素子121B4との間に接続される。なお、以下の説明において、FEM180A,180B(および、各々に含まれるFEM)を包括して「FEM180」とも称する。
【0051】
FEM180は、図6に示されるように、スイッチ181,182と、パワーアンプ183と、ローノイズアンプ184とを含む。FEM180においては、RFIC110の内部に設けられるスイッチ111A~111D,113A~113D、パワーアンプ112AT~112DT、ローノイズアンプ112AR~112DRと同様に、高周波信号を送信する場合にはスイッチ181,182がパワーアンプ183側に切換えられ、高周波信号を受信する場合にはスイッチ181,182がローノイズアンプ184側に切換えられる。
【0052】
FEM180は増幅回路であり、RFIC110とアンテナ装置120との間で伝達される高周波信号を増幅して、RFIC110とアンテナ装置120との間で生じる減衰を補償する。特に、RFIC110から各アンテナ装置までの信号伝達経路の長さが比較的長く、RFIC110内のパワーアンプ,ローノイズアンプでは増幅率が不足する場合に有効である。なお、図6においては、FEM180がパワーアンプ183およびローノイズアンプ184の双方を含む場合について説明したが、FEM180はパワーアンプ183およびローノイズアンプ184の少なくとも一方を含んでいればよく、パワーアンプ183またはローノイズアンプ184のいずれか一方を含む構成であってもよい。
【0053】
なお、「FEM180A」および「FEM180B」は、本開示における「第1増幅回路」および「第2増幅回路」にそれぞれ対応する。
【0054】
(アンテナモジュールの構成)
図7は、実施の形態2に係るアンテナモジュール100Aの側面図である。アンテナモジュール100Aは、実施の形態1と同様にマザーボード250に配置されたRFIC110および切換回路130、ならびにアンテナ装置120A、120Bに加えて、接続部材140と、FEM180A、180Bとを備える。なお、アンテナモジュール100Aにおいて、アンテナモジュール100と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0055】
図7を参照して、接続部材140は、マザーボード250に配置されたRFIC110からの高周波信号をアンテナ装置120A,120Bに伝達するための部材であり、図8で後述するように、その内部に複数の給電配線が形成されている。接続部材140は、通信装置10において、マザーボード250から離れた位置にアンテナ装置120A,120Bを配置する際の信号伝達経路として用いられる。
【0056】
接続部材140は、アンテナ装置を形成する誘電体基板122と同様に、LTCCなどのセラミックスあるいは樹脂によって形成された誘電体基板143(図8)を有している。誘電体基板143は、複数の誘電体層が積層された多層構造を有している。接続部材140は、変形しないリジッドな材料で形成されてもよいし、図11および図12で後述するような可撓性を有する材料で形成されていてもよい。
【0057】
接続部材140は、接続部材140の表面141において、接続端子150A,150Bによってアンテナ装置120A,120Bにそれぞれ接続されている。また、接続部材140は、接続部材140の裏面142において接続端子155によってマザーボード250に接続されている。接続端子150A,150B,155は、着脱可能構成されたコネクタ、あるいは、はんだバンプにより形成される。
【0058】
FEM180Aは、接続部材140において、アンテナ装置120Aの誘電体基板122Aとの接続箇所(すなわち、接続端子150A)と、マザーボード250との接続箇所(すなわち、接続端子155)との間の位置に配置されている。また、FEM180Bは、接続部材140において、アンテナ装置120Bの誘電体基板122Bとの接続箇所(すなわち、接続端子150B)と、マザーボード250との接続箇所(すなわち、接続端子155)との間の位置に配置されている。
【0059】
図7の例においては、FEM180は、接続部材140の裏面142に配置されている。図6で説明したように、FEM180は、パワーアンプ183および/またはローノイズアンプ184を含む増幅回路であるため、信号増幅の際に発熱が生じ得る。アンテナ装置120は通信装置10Aの筐体50に収容されており、図7に示されるように、アンテナ装置120は接続部材140の表面141側に筐体50に面して配置されている。そのため、FEM180を接続部材140の表面141側に配置した場合には、FEM180と筐体50とが近接し、FEM180からの熱によって筐体50の温度が部分的に高くなる場合が生じ得る。FEM180を接続部材140の裏面142に配置してFEM180と筐体50との離間距離を確保することによって、筐体50への熱の伝達を抑制することができる。
【0060】
なお、図7のFEM180Bのように、FEM180は、その少なくとも一部がマザーボード250に接触するように配置されていてもよい。このような構成とすることで、FEM180で発生した熱をマザーボード250に直接伝達することができるため、放熱効率をさらに向上させることができる。また、FEM180の筐体をマザーボード250に直接接触させてもよいし、FEM180とマザーボード250との間に伝熱効率の高い部材(たとえば、銅などの金属)を配置して接触させてもよい。
【0061】
なお、FEM180と筐体50との間の距離が十分に確保できる場合、あるいは、FEM180と筐体50との間に断熱部材または他の機器などの遮熱部材が設けられる場合には、FEM180を接続部材140の表面141に配置してもよい。
【0062】
FEM180は、はんだバンプあるいはコネクタなどを用いて接続部材140に直接接続されてもよいし、インターポーザなどの中間基板を介して接続されてもよい。また、低背化を行なうために、接続部材140において、FEM180が配置される部分の厚みを他の部分よりも薄くしてもよい。
【0063】
RFIC110からの高周波信号は、切換回路130を経由して、給電配線160Aによってアンテナ装置120Aに供給される。また、RFIC110からの高周波信号は、切換回路130を経由して、給電配線160Bによってアンテナ装置120Bに供給される。
【0064】
図8は、接続部材140の内部構造の一例を示す図である。図8においては、説明を容易にするために、アンテナ装置120Aに対する2つの信号伝達経路について説明する。図8の例においては、接続部材140の表面141にFEM180A1が配置されており、接続部材140の裏面142にFEM180A2が配置されている。接続部材140においては、給電配線161,162および接地電極GNDが形成されている。給電配線161は、FEM180A1を介してアンテナ装置120Aの給電素子121Aに高周波信号を伝達する。また、給電配線162は、FEM180A2を介して別の給電素子121Aに高周波信号を伝達する。
【0065】
なお、図8においては、同一のアンテナ装置における異なる放射素子に対応するFEMおよび給電配線を、接続部材の表裏に分離して配置する構成について説明したが、異なるアンテナ装置に対応するFEMおよび給電配線を接続部材の表裏に分離して配置する構成としてもよい。たとえば、第1アンテナ装置に対応するFEMおよび給電配線を接続部材の表面に配置し、第2アンテナ装置に対応するFEMおよび給電配線を接続部材の裏面に配置するようにしてもよい。また、第1アンテナ装置および第2アンテナ装置の一部の放射素子に対応するFEMおよび給電配線を接続部材の表面に配置し、残りの放射素子に対応するFEMおよび給電配線を接続部材の裏面に配置するようにしてもよい。
【0066】
給電配線161および給電配線162は、誘電体基板143において互いに異なる層に形成されている。接地電極GNDは、給電配線161が形成される層と、給電配線162が形成される層との間に形成されており、接続端子155を経由してマザーボード250に形成された基準電位(図示せず)に接続される。また、接地電極GNDは、接続端子150Aを経由して、アンテナ装置120Aの誘電体基板122Aに形成された接地電極(図示せず)に接続される。
【0067】
なお、「給電配線161」および「給電配線162」は、本開示の「第1配線」および「第2配線」にそれぞれ対応する。
【0068】
このように、アンテナ装置120に対して複数の給電配線によって高周波信号を供給する場合に、接続部材140における異なる層に給電配線を形成することによって、すべての給電配線を同じ層に形成する場合に比べて接続部材140の主面方向(XY平面)の面積を低減することができる。また、接地電極を挟んで給電配線を配置することによって、給電配線間のアイソレーションを確保することができる。
【0069】
なお、図8には示されていないが、アンテナ装置120Bへの信号伝達経路についても同様の構成を採用することができる。また、図8においては、異なる2つの層に給電配線を形成する構成について説明したが、3層以上の異なる層に給電配線を形成してもよい。この場合においても、給電配線が形成される誘電体層間に接地電極を配置することが好ましい。
【0070】
以上のように、マザーボードとアンテナ装置との間に接続部材を配置し、マザーボードからアンテナ装置までの信号伝達経路を延長することによって、通信装置内におけるアンテナ装置のレイアウトの自由度を向上させることが可能となる。また、接続部材上に増幅回路を配置することによって、信号伝達経路の延長に伴う信号減衰による損失の低下を抑制することができる。
【0071】
(変形例2)
図7の実施の形態2のアンテナモジュール100Aにおいては、切換回路がマザーボードに配置される構成について説明した。変形例2においては、切換回路が接続部材上に配置される構成について説明する。
【0072】
図9は、変形例2に係るアンテナモジュール100Bの側面図である。アンテナモジュール100Bにおいては、図7で示したアンテナモジュール100Aにおける切換回路の位置が、接続部材140上に変更された構成となっている。アンテナモジュール100Bにおいて、アンテナモジュール100Aと重複する要素の説明は繰り返さない。
【0073】
図9を参照して、アンテナモジュール100Bにおいても、接続部材140が接続端子155を介してマザーボード250に接続されている。そして、アンテナ装置120A、120Bが、それぞれ接続端子150A、150Bを介して接続部材140に接続されている。
【0074】
切換回路130Xは、接続部材140の表面141に配置されており、接続端子155を経由して接続配線171によりRFIC110と接続されている。なお、図9には示されていないが、切換回路130Xは、接続部材140の内部に形成された給電配線によって、RFIC110からの高周波信号をFEM180を介してアンテナ装置120に供給する。また、切換回路130Xは接続部材140の裏面142に配置されていてもよい。
【0075】
このように、切換回路を接続部材に配置することによって、マザーボードに配置される部品数を低減し、マザーボードの小型化を図ることができる。特に、通信装置内に多数のアンテナ装置が配置される場合には、切換回路の数も増加するため、小型化への効果がより顕著になる。
【0076】
(変形例3)
図7の実施の形態2のアンテナモジュール100Aにおいては、複数のアンテナ装置が共通の接続部材に接続される構成について説明した。しかしながら、たとえば2つのアンテナ装置が互いに遠く離れて配置される場合に、共通の接続部材を用いると、接続部材の長さが長くなってしまい、通信装置へのアンテナ装置の実装が困難となる可能性がある。
【0077】
そこで、変形例3においては、共通の切換回路から高周波信号が供給される複数のアンテナ装置について、マザーボードと接続するための接続部材を個別に設ける構成について説明する。
【0078】
図10は、変形例3に係るアンテナモジュール100Cの側面図である。アンテナモジュール100Cにおいては、図7で示したアンテナモジュール100Aにおける接続部材140に代えて、接続部材140A,140Bが用いられている。なお、アンテナモジュール100Cにおいて、アンテナモジュール100Aと重複する要素の説明は繰り返さない。
【0079】
図10を参照して、接続部材140Aは、接続端子155Aによってマザーボード250に接続されており、接続端子150Aによってアンテナ装置120Aに接続されている。接続部材140A上には、FEM180Aが配置されている。マザーボード250に配置された切換回路130からの高周波信号は、給電配線160Aによって、接続部材140Aを通ってアンテナ装置120Aの給電素子121Aに供給される。
【0080】
同様に、接続部材140Bは、接続端子155Bによってマザーボード250に接続されており、接続端子150Bによってアンテナ装置120Bに接続されている。接続部材140B上には、FEM180Bが配置されている。マザーボード250に配置された切換回路130からの高周波信号は、給電配線160Bによって、接続部材140Bを通ってアンテナ装置120Bの給電素子121Bに供給される。
【0081】
なお、図10においては、FEM180Aは接続部材140Aの裏面142Aに配置されているが、接続部材140Aの表面141Aに配置されていてもよい。また、FEM180Bについても、接続部材140Bの裏面142Bに代えて、接続部材140Bの表面141Bに配置されていてもよい。
【0082】
なお、「接続部材140A」および「接続部材140B」は、本開示における「第1接続部材」および「第2接続部材」にそれぞれ対応する。また、「FEM180A」および「FEM180B」は、本開示における「第1増幅回路」および「第2増幅回路」にそれぞれ対応する。
【0083】
このように、複数のアンテナ装置に対して、接続部材を個別に設けることによって、共通の接続部材を用いる場合に比べて、接続部材のトータルサイズを小さくすることができる。これにより、通信装置へのアンテナ装置の実装を容易にすることができる。
【0084】
(変形例4)
変形例4および後述する変形例5においては、可撓性を有する接続部材を用いる場合について説明する。
【0085】
図11は、変形例4に係るアンテナモジュール100Dの側面図である。アンテナモジュール100Dにおいては、図7で示したアンテナモジュール100Aの接続部材140が、接続部材140Cに置き換わったものとなっている。なお、アンテナモジュール100Dにおいて、アンテナモジュール100Aと重複する要素の説明は繰り返さない。
【0086】
図11を参照して、接続部材140Cは、可撓性を有する材料で形成されたフレキシブル基板であり、厚み方向に屈曲させることが可能に構成されている。図11の例においては、接続部材140Cは、第1部分145から第2部分146が分岐した構成を有している。第2部分146は、第1部分145から分岐後に屈曲し、第1部分145と反対方向に延在している。
【0087】
接続部材140Cは、第1部分145において接続端子155によってマザーボード250に接続されている。アンテナ装置120Aは、接続端子150Aによって接続部材140Cの第1部分145に接続されている。また、アンテナ装置120Bは、接続端子150Bによって接続部材140Cの第2部分146に接続されている。第1部分145および第2部分146には、FEM180A、180Bがそれぞれ配置されている。
【0088】
また、接続部材140Cにおいて、第2部分146の分岐よりも接続端子155に近い位置に切換回路130Xが配置されている。図9で示したアンテナモジュール100Bと同様に、切換回路130Xは接続配線171によって、マザーボード250に配置されたRFIC110に接続されている。RFIC110からの高周波信号は、切換回路130Xによって、アンテナ装置120Aまたはアンテナ装置120Bへ供給される。
【0089】
なお、図11においては、複数のアンテナ装置で共用される接続部材を可撓性を有する材料で形成し、接続部材の一部を分岐および屈曲させる構成について説明したが、接続部材は途中で分岐する構成でなくてもよい。また、図10の変形例3で示したような、アンテナ装置に対して個別の接続部材が設けられる構成において、一部または全部の接続部材を可撓性を有する材料で形成してもよい。
【0090】
このように、可撓性を有する接続部材を用いてアンテナ装置とマザーボードとを接続することによって、通信装置の筐体内におけるアンテナ装置のレイアウトの自由度を向上させることが可能となる。さらに、接続部材上にFEMを配置することによって、信号伝達経路の延長に伴うアンテナ特性の低下を抑制することができる。
【0091】
(変形例5)
図11の変形例4においては、接続部材を厚み方向に屈曲させて分岐させた構成の例について説明した。変形例5においては、接続部材を主面の面内方向に屈曲させて分岐させた構成について説明する。
【0092】
図12は、変形例5に係るアンテナモジュール100Eの平面図である。アンテナモジュール100Eにおいては、図7で示したアンテナモジュール100Aの接続部材140が、接続部材140Dに置き換わったものとなっている。なお、アンテナモジュール100Eにおいて、アンテナモジュール100Aと重複する要素の説明は繰り返さない。
【0093】
図12を参照して、接続部材140Dは、可撓性を有する材料で形成されたフレキシブル基板であり、接続部材140Dの主面の面内方向(すなわち、XY平面内)に屈曲させることが可能に構成されている。接続部材140Dは、第1部分145Aおよび第2部分146Aを含んで構成される。第1部分145Aは、図12において、マザーボード250との接続部分からX軸方向に延在して、アンテナ装置120Aに接続されている。第2部分146Aは、第1部分145AからY軸方向に屈曲して分岐し、さらにX軸方向に再び屈曲してアンテナ装置120Bに接続されている。なお、接続部材140Dの第1部分145Aおよび第2部分146Aの各々は、変形例4と同様に、厚み方向にも屈曲することが可能に構成されていてもよい。また、接続部材140Dは、延在方向の軸周りにねじる方向に屈曲することが可能に構成されていてもよい。接続部材140Dの表面および/または裏面にFEM180が配置される。
【0094】
このように、可撓性を有する接続部材を用いてアンテナ装置とマザーボードとを接続することによって、通信装置の筐体内におけるアンテナ装置のレイアウトの自由度を向上させることが可能となる。さらに、接続部材上にFEMを配置することによって、信号伝達経路の延長に伴うアンテナ特性の低下を抑制することができる。
【0095】
[アンテナ装置の配置例]
図13において、上述の各実施の形態で示したアンテナモジュールを適用した場合の、通信装置におけるアンテナ装置の配置例について説明する。
【0096】
通信装置10の筐体50は略直方体の形状を有しており、Z軸方向を法線方向とする主面51,52と、X軸方向を法線方向とする側面55,56と、Y軸方向を法線方向とする側面57,58とを含んでいる。
【0097】
図13(a)の第1例においては、アンテナ装置120Aが側面55に配置され、アンテナ装置120Bが側面57に配置されている。第1例においては、X軸の負方向およびY軸の正方向に電波を放射することができる。
【0098】
図13(b)の第2例においては、アンテナ装置120Aが主面51に配置され、アンテナ装置120Bが側面57に配置されている。第2例においては、Y軸の正方向およびZ軸の正方向に電波を放射することができる。
【0099】
図13(c)の第3例においては、アンテナ装置120Aが側面55に配置され、アンテナ装置120Bが側面56に配置されている。第3例においては、X軸の正方向および負方向に電波を放射することができる。
【0100】
図13(d)の第4例においては、アンテナ装置120Aが側面55に配置され、アンテナ装置120Bが側面57に配置され、アンテナ装置120Cが主面51に配置されている。第4例においては、X軸の負方向、Y軸の正方向およびZ軸の正方向の3方向に電波を放射することができる。
【0101】
なお、図13に示した配置は一例であり、アンテナ装置を配置する面を図13以外の組み合わせとしてもよい。たとえば、同じ側面に複数のアンテナ装置を離間して配置してもよい。図13の各配置例においては、アンテナ装置が端部に配置されているが、各面の中央付近にアンテナ装置を配置してもよい。また、通信装置内に配置されるアンテナ装置の数は4以上であってもよい。
【0102】
通信装置からX軸、Y軸およびZ軸の全方向に電波を放射する場合、少なくとも6つのアンテナ装置が必要となる。このような場合に、各アンテナ装置ごとにRFICを配置すると、マザーボードには6つのRFICを配置するスペースが必要となる。上述した本実施の形態のように、切換回路を用いて複数のアンテナ装置でRFICを共用することによって、マザーボードに配置すべきRFICの数を低減することができるので、マザーボードならびに通信装置を小型化することが可能となる。
【0103】
<接続端子の変形例>
上述の実施の形態において、接続部材あるいはマザーボードとアンテナ装置との接続に用いられる接続端子150A,150B、および、マザーボードと接続部材との接続に用いられる接続端子155,155A,155Bは、接続すべき部材の互いに対向する面の間に形成される例について説明した。しかしながら、これらの接続端子は他の接続態様としてもよい。
【0104】
たとえば、図2におけるマザーボード250とアンテナ装置120Aとの間の接続を例として説明すると、図14のように、マザーボード250の端部とアンテナ装置120Aの端部とが対向するように配置され、接続端子150Xによって、マザーボード250およびアンテナ装置120Aの表面同士(あるいは裏面同士)を接続するような構成であってもよい。なお、接続端子150Xは、図15に示されるように、各々が導体ピンおよび/またはソケットを有する複数のコネクタ150X1,150X2の組み合わせであってもよい。
【0105】
また、図16のように、アンテナ装置120Aの端部に端子部が形成されており、マザーボード250の表面に実装された接続端子150Yに、アンテナ装置120Aを嵌合させて接続するような構成であってもよい。
【0106】
なお、図14図16の接続態様は、アンテナ装置120Bとマザーボード250との間の接続についても適用することが可能である。さらに、当該接続態様は、アンテナ装置と接続部材との間の接続、ならびに、マザーボードと接続部材との間の接続にも適用することができる。
【0107】
[実施の形態3]
(通信装置の構成)
実施の形態3においては、アンテナ装置から異なる2つの周波数帯域の電波を放射することが可能な、いわゆるデュアルバンドタイプのアンテナモジュールの場合の例について説明する。
【0108】
図17は、実施の形態3に係るアンテナモジュール100Fが適用される通信装置10Fのブロック図である。図17を参照して、通信装置10Fは、アンテナモジュール100Fと、BBIC200とを備える。アンテナモジュール100Fは、RFIC110Fと、アンテナ装置120F,120Gと、切換回路130と、FEM180A,180Bと、フィルタ装置190,195A,195Bとを含む。
【0109】
アンテナ装置120F,120Gは、上述のようにデュアルバンドタイプのアンテナ装置であり、アンテナ装置120F,120Gの各々に配列された各放射素子は2つの給電素子を含んでいる。アンテナ装置120Fは給電素子121F,125Fを含み、アンテナ装置120Gは給電素子121G,125Gを含む。各給電素子には、RFIC110Fから高周波信号が個別に供給される。なお、実施の形態3における「給電素子121F」および「給電素子121G」は、本開示における「第1素子」に対応する。また、実施の形態3における「給電素子125F」および「給電素子125G」は、本開示における「第2素子」に対応する。
【0110】
RFIC110Fは、スイッチ111A~111H,113A~113H,117A,117Bと、パワーアンプ112AT~112HTと、ローノイズアンプ112AR~112HRと、減衰器114A~114Hと、移相器115A~115Hと、信号合成/分波器116A,116Bと、ミキサ118A,118Bと、増幅回路119A、119Bとを備える。
【0111】
このうち、スイッチ111A~111D,113A~113D,117A、パワーアンプ112AT~112DT、ローノイズアンプ112AR~112DR、減衰器114A~114D、移相器115A~115D、信号合成/分波器116A、ミキサ118A、および増幅回路119Aの構成が、高周波数側の給電素子121F,121Gのための回路である。また、スイッチ111E~111H,113E~113H,117B、パワーアンプ112ET~112HT、ローノイズアンプ112ER~112HR、減衰器114E~114H、移相器115E~115H、信号合成/分波器116B、ミキサ118B、および増幅回路119Bの構成が、低周波数側の給電素子125F,125Gのための回路である。
【0112】
高周波信号を送信する場合には、スイッチ111A~111H,113A~113Hがパワーアンプ112AT~112HT側へ切換えられるとともに、スイッチ117A,117Bが増幅回路119A,119Bの送信側アンプに接続される。高周波信号を受信する場合には、スイッチ111A~111H,113A~113Hがローノイズアンプ112AR~112HR側へ切換えられるとともに、スイッチ117A,117Bが増幅回路119A,119Bの受信側アンプに接続される。
【0113】
フィルタ装置190は、ダイプレクサ190A~190Dを含む。また、フィルタ装置195Aは、ダイプレクサ195A1~195A4を含む。フィルタ装置195Bは、ダイプレクサ195B1~195B4を含む。各ダイプレクサは、高い周波数帯域(第1周波数帯域)の高周波信号を通過させるハイパスフィルタ(第1フィルタ)、および、低い周波数帯域(第2周波数帯域)の高周波信号を通過させるローパスフィルタ(第2フィルタ)を含む。実施の形態3における「フィルタ装置190」は、本開示における「第1フィルタ装置」に対応する。また、実施の形態3における「フィルタ装置195A」および「フィルタ装置195B」は、本開示における「第2フィルタ装置」に対応する。
【0114】
ダイプレクサ190A~190Dにおけるハイパスフィルタは、RFIC110Fにおけるスイッチ111A~111Dにそれぞれ接続される。また、ダイプレクサ190A~190Dにおけるローパスフィルタは、RFIC110Fにおけるスイッチ111E~111Hにそれぞれ接続される。ダイプレクサ190A~190Dの共通端子は、切換回路130のスイッチ130A~130Dの第1端子T1A~T1Dにそれぞれ接続される。
【0115】
スイッチ130Aの第2端子T2Aは、FEM180A1を介してフィルタ装置195Aのダイプレクサ195A1に接続される。スイッチ130Aの第3端子T3Aは、FEM180B1を介してフィルタ装置195Bのダイプレクサ195B1に接続される。スイッチ130Bの第2端子T2Bは、FEM180A2を介してフィルタ装置195Aのダイプレクサ195A2に接続される。スイッチ130Bの第3端子T3Bは、FEM180B2を介してフィルタ装置195Bのダイプレクサ195B2に接続される。
【0116】
スイッチ130Cの第2端子T2Cは、FEM180A3を介してフィルタ装置195Aのダイプレクサ195A3に接続される。スイッチ130Cの第3端子T3Cは、FEM180B3を介してフィルタ装置195Bのダイプレクサ195B3に接続される。スイッチ130Dの第2端子T2Dは、FEM180A4を介してフィルタ装置195Aのダイプレクサ195A4に接続される。スイッチ130Dの第3端子T3Dは、FEM180B4を介してフィルタ装置195Bのダイプレクサ195B4に接続される。
【0117】
ダイプレクサ195A1~195A4におけるハイパスフィルタは、アンテナ装置120Fにおける給電素子121F1~121F4にそれぞれ接続される。ダイプレクサ195A1~195A4におけるローパスフィルタは、アンテナ装置120Fにおける給電素子125F1~125F4にそれぞれ接続される。
【0118】
ダイプレクサ195B1~195B4におけるハイパスフィルタは、アンテナ装置120Gにおける給電素子121G1~121G4にそれぞれ接続される。ダイプレクサ195B1~195B4におけるローパスフィルタは、アンテナ装置120Gにおける給電素子125G1~125G4にそれぞれ接続される。
【0119】
このように、各放射素子に高周波信号を伝達する経路は、フィルタ装置190と、フィルタ装置195Aまたはフィルタ装置195Bとの間において共通化されている。
【0120】
なお、FEM180A,180Bに含まれる各FEMについては、たとえば図6と同様の構成とすることができる。あるいは、図18に示されるFEM180Xのように、高周波数側の回路に対応したパワーアンプ183X1およびローノイズアンプ184X1と、低周波数側の回路に対応したパワーアンプ183X2およびローノイズアンプ184X2とが個別に設けられた構成としてもよい。各周波数に適合したパワーアンプおよびローノイズアンプを設けることによって、アンテナ特性を適切に調整することが可能となる。
【0121】
(アンテナモジュールの構成)
次に、図19図21を用いて、実施の形態3に係るアンテナモジュール100Fの詳細な構成について説明する。図19は、アンテナモジュール100Fの側面図である。図20は、アンテナ装置120Fの部分断面図である。また、図21は、ダイプレクサの構成の例を説明するための図である。
【0122】
図19においては、上述の図10で説明したアンテナモジュール100Cにおけるアンテナ装置120Aがアンテナ装置120Fに置き換えられており、アンテナ装置120Bがアンテナ装置120Gに置き換えられている。また、RFIC110がRFIC110Fに置き換えられている。図19においては、マザーボード250にフィルタ装置190が新たに設けられ、アンテナ装置120F,120Gにフィルタ装置195A,195Bがそれぞれ新たに設けられた構成となっている。図19において、図10と重複する要素の説明は繰り返さない。なお、図19においては、マザーボード250にBBIC200が実装されているが、BBIC200は図示しない別の基板に形成されていてもよい。
【0123】
図19図21を参照して、アンテナ装置120F,120Gの各々は、上述のように異なる2つの周波数帯域の電波が放射可能に構成されている。
【0124】
アンテナ装置120Fは、誘電体基板122Fに形成された給電素子121Fと給電素子125Fとを含む。給電素子121Fおよび給電素子125Fは、誘電体基板122Fを法線方向から平面視した場合に互いに重なって配置されており、給電素子121Fと接地電極GNDとの間に給電素子125Fが配置されている。給電素子121Fのサイズは、給電素子125Fのサイズよりも小さい。そのため、給電素子121Fからは、給電素子125Fよりも高い周波数帯域の電波が放射される。給電素子121Fおよび給電素子125Fの各々には、RFIC110Fからの高周波信号が個別に供給されている。より詳細には、図20に示されるように、給電素子125Fには給電配線191によって高周波数側の高周波信号(たとえば、39GHz帯)が供給され、給電素子121Fには給電配線192によって低周波数側の高周波信号(たとえば、28GHz帯)が供給される。給電配線191は、給電素子125Fを貫通して、給電素子121Fの給電点SP1に接続される。給電配線192は、給電素子125Fの給電点SP2に接続される。
【0125】
アンテナ装置120Gは、誘電体基板122Gに形成された給電素子121Gと給電素子125Gとを含む。アンテナ装置120Gの構成は、アンテナ装置120Fと同様である。
【0126】
フィルタ装置190,195A,195Bの各々は、図21に示されるように平板形状の電極とビアとを含んで構成されている。より詳細には、フィルタ装置190,195A,195Bの各々は、共通化された給電配線が接続される端子T1と、低周波数側の給電配線が接続される端子T2と、高周波数側の給電配線が接続される端子T3とを含む。端子T1と端子T2との間にはローパスフィルタ210が形成されており、端子T1と端子T3との間にはハイパスフィルタ220が形成されている。
【0127】
ローパスフィルタ210は、端子T1および端子T2に接続された直線状の平板電極211と、平板電極211から分岐し、所定の間隔をあけて対向して配置された平板電極212,213とを含む。平板電極212と平板電極213とは、基板の法線方向から平面視した場合に線対称に配置されており、互いに電磁界結合している。平板電極212および平板電極213の端部は、ビアV1およびビアV2によってそれぞれ接地電極GNDに接続されている。すなわち、ローパスフィルタ210は、端子T1と端子T2との間に形成された直列のインダクタ(平板電極211)と、そこから分岐する2つのシャントスタブ(平板電極212,213+ビアV1,V2)とを含む、いわゆるπ型回路のLC直列共振回路を構成している。
【0128】
ハイパスフィルタ220は、端子T1に一方端が接続された直線状の平板電極221と、平板電極222,223と、キャパシタ電極C1とを含む。平板電極222は、平板電極221から分岐しており、端部がビアV3によって接地電極GNDに接続されている。平板電極221の他方端は、異なる層に配置されたキャパシタ電極C1と対向している。平板電極221とキャパシタ電極C1とによってキャパシタが形成される。平板電極223の一方端はビアV4を介して接地電極GNDに接続されており、他方端はビアV5を介してキャパシタ電極C1に接続されている。また、平板電極223は、端子T3にも接続されている。すなわち、ハイパスフィルタ220は、端子T1と端子T3との間に形成された直列のキャパシタ(平板電極221,キャパシタ電極C1)と、当該キャパシタの両端からそれぞれ分岐する2つのシャントスタブ(平板電極222,223+ビアV3,V4)とを含む、いわゆるπ型回路のLC直列共振回路を構成している。
【0129】
なお、ローパスフィルタ210およびハイパスフィルタ220は、図21のように同一層内に配置されてもよいし、フィルタ装置が形成される基板の法線方向から平面視した場合に互いに一部が重なるように異なる層に配置されてもよい。ローパスフィルタ210とハイパスフィルタ220とを異なる層に形成する場合には、相互の結合を防止するために、ローパスフィルタ210とハイパスフィルタ220との間の層に接地電極GNDが配置される。
【0130】
フィルタ装置190は、マザーボード250の内部に形成されている。フィルタ装置195Aは、アンテナ装置120Fの誘電体基板122Fの内部に形成されている。フィルタ装置195Bは、アンテナ装置120Gの誘電体基板122Gの内部に形成されている。
【0131】
RFIC110Fから個別に出力された異なる周波数帯域を有する2つの高周波信号は、フィルタ装置190を経由することによって、共通化された給電配線に伝達される。この共通化された給電配線は、切換回路130によって、アンテナ装置120Fへの信号伝達経路、または、アンテナ装置120Gへの信号伝達経路のいずれかに切換えられる。切換回路130からの給電配線は、接続端子155,接続部材140,接続端子150を経由して各アンテナ装置120F,120Gまで延伸する。
【0132】
各アンテナ装置に到達した共通化された給電配線は、アンテナ装置120F,120G内に形成されたフィルタ装置195A,195Bによって、高周波数側の経路と低周波数側の経路とに分岐される。高周波数側の経路は給電素子121F,121Gに接続され、低周波数側の経路は給電素子125F,125Gに接続される。
【0133】
各給電素子に対して個別給電するデュアルバンドタイプのアンテナモジュールの場合、基本的には、RFICから給電素子に至るまでに、給電素子の数と同じ数の給電配線が必要となる。特に、各給電素子から異なる2つの偏波方向に電波を放射可能な、いわゆるデュアル偏波タイプのアンテナ装置の場合には、給電素子の数の2倍の給電配線が必要となる。たとえば、図17および図19のように、各周波数帯域に対して4つの給電素子が設けられる場合(給電素子の総数は8)、デュアル偏波タイプのアンテナ装置であれば、各アンテナ装置に対して16本の給電配線が必要となる。そうすると、接続部材の幅あるいは厚みを増加させる必要があり、機器内での配置が困難になったり、接続部材の柔軟性が確保できなくなったりする可能性がある。また、接続端子150A,150B,155A,155Bについても、接続部材に配置される給電配線と同じ数の端子数が必要となるため、コネクタサイズが増加し、マザーボードおよびアンテナ装置におけるコネクタの配置面積が大きくなってしまう。
【0134】
これに対して、実施の形態3のアンテナモジュール100Fにおいては、マザーボード250およびアンテナ装置120F,120Gにフィルタ装置(ダイプレクサ)190,195A,195Bをそれぞれ配置することによって、給電配線を部分的に共通化し、接続部材140A,140Bに配置される給電配線の総数を削減することができる。これによって、接続部材140A,140Bのサイズ(幅,厚み)を小型化するとともに、マザーボード250およびアンテナ装置120F,120Gにおける実装面積を小さくすることができる。また、接続部材に配置されるFEMの端子数も低減することができる。
【0135】
次に、マザーボード250およびアンテナ装置におけるフィルタ装置の配置例について説明する。図22は、マザーボード250におけるフィルタ装置190の配置例を示す図である。また、図23は、アンテナ装置120Fにおけるフィルタ装置195Aの配置例を示す図である。なお、アンテナ装置120Gのフィルタ装置195Bについては、図23におけるフィルタ装置195Aと同様の配置とすることができる。
【0136】
図22を参照して、上述のように、フィルタ装置190に含まれる各ダイプレクサは、RFIC110Fと切換回路130とに接続されるため、フィルタ装置190は、マザーボード250を平面視した場合に、RFIC110Fと、切換回路130との間に配置される(図22(a))。
【0137】
なお、RFIC110および切換回路130はマザーボード250の外表面に実装されており、フィルタ装置190はマザーボード250の内部に形成されている。そのため、フィルタ装置190は、図22(b)のようにマザーボード250を平面視した場合に、RFIC110Fおよび/または切換回路130と部分的に重なる位置に配置されていてもよい。また、フィルタ装置190がチップ部品として形成される場合には、フィルタ装置190は、マザーボード250の外表面に配置されていてもよい。
【0138】
図23を参照して、フィルタ装置195Aに含まれる各ダイプレクサは、アンテナ装置120Fにおいて、接続端子150Aと各給電素子とを結ぶ経路に配置される。図23(a),(b)は、誘電体基板122Fにおいて接続部材140Aが接続される側の端部と、当該端部に最も近い放射素子との間のスペースにフィルタ装置195Aが配置された例である。図23(a)においては、各ダイプレクサの外形の長手方向が、放射素子の配列方向と直交する方向に向くように、ダイプレクサが2列に配置されている。図23(b)においては、各ダイプレクサの外形の長手方向が、放射素子の配列方向に向くように、ダイプレクサが配置されている。このような配置の場合、放射素子の配列方向の誘電体基板122Fのサイズがやや大きくなるが、後述する図23(d)の例のような厚み方向へのサイズの増加がないため、低背化する場合に適している。
【0139】
図23(c)は、各ダイプレクサが、対応する放射素子に対して、放射素子の配列方向に直交する方向に横並びに配列された配置例である。この配置例の場合、誘電体基板122Fにおいて接続部材140Aとの接続付近のスペースが確保できるため、誘電体基板122F内の配線レイアウトの設計が容易になる。また、各放射素子近傍まで共通化された給電配線で給電できるため、アンテナ装置120F内における給電配線の数を低減できる。また、この場合も、誘電体基板122Fを平面視した場合に、放射素子とダイプレクサとが重なっていないため、低背化する場合に適している。
【0140】
図23(d)の配置例においては、図23(c)と同様に、各放射素子の近傍にダイプレクサが配置されているが、誘電体基板122Fを平面視した場合に、ダイプレクサの一部が対応する放射素子と重なるように配置されている。すなわち、ダイプレクサは、誘電体基板122Fにおいて放射素子の下層に配置されている。このような配置の場合、誘電体基板122Fの厚み方向の寸法は増加する可能性があるが、誘電体基板122Fの幅方向(放射素子の配列方向と直交する方向)の寸法W1を小さくできるので、アンテナ装置120Fを小型化する場合に適している。
【0141】
以上のように、2つの異なる周波数帯域の電波を放射可能なデュアルバンドタイプのアンテナモジュールにおいて、接続部材の前後にダイプレクサを配置することによって、接続部材に配置される給電配線の数を低減することができる。その結果、アンテナモジュールにおいて、配線数増加に伴うサイズの増加を抑制することができる。
【0142】
なお、1つの周波数帯域の電波を放射する場合であっても、異なる2つの偏波方向の電波を放射可能なデュアル偏波タイプのアンテナモジュールについても、上記のようなフィルタ装置を用いることによって、接続部材に配置される給電配線の数を低減することができる。
【0143】
また、上記のアンテナ装置120F,120Gにおいては、誘電体基板の法線方向から平面視した場合に、給電素子121Fと給電素子125Fと重なるように配置された構成について説明したが、給電素子121Fと給電素子125Fとは互いに重ならない位置に配置されていてもよい。
【0144】
(変形例6)
実施の形態3においては、デュアルバンドタイプのアンテナモジュールにおいて放射素子へ個別給電を行なう構成について、ダイプレクサを用いる場合の例について説明した。
【0145】
変形例6においては、給電素子および無給電素子を放射素子として用いたデュアルバンドタイプのアンテナモジュールにダイプレクサを用いる場合の例について説明する。
【0146】
図24は、変形例6に係るアンテナモジュール100Hが適用される通信装置10Hのブロック図である。図24を参照して、通信装置10Hは、アンテナモジュール100Hと、BBIC200とを備える。アンテナモジュール100Hは、RFIC110Hと、アンテナ装置120H,120Jと、切換回路130と、FEM180A,180Bと、フィルタ装置190とを含む。実施の形態3のアンテナモジュール100Fと同様に、FEM180A,180Bは接続部材140に配置され、フィルタ装置190はマザーボード250に配置される。なお、RFIC110Hの構成は実施の形態3のRFIC110Fの構成と同じであるため、詳細な説明は繰り返さない。
【0147】
アンテナ装置120Hは、アンテナ装置120Fと同様にデュアルバンドタイプのアンテナ装置であるが、各放射素子として給電素子121H(121H1~121H4)および無給電素子126H(126H1~126H4)を含んでいる。図25のアンテナ装置120Hの部分断面図に示されるように、無給電素子126Hは、アンテナ装置120Hにおいて給電素子121Hと接地電極GNDとの間に配置される。なお、変形例6における「給電素子121H」および「給電素子121J」は、本開示における「第1素子」に対応する。また、変形例6における「無給電素子126H」および「無給電素子126J」は、本開示における「第2素子」に対応する。
【0148】
給電配線191は、無給電素子126Hを貫通して給電素子121Hの給電点SP1に接続される。給電配線191に、給電素子121Hに対応した高周波数側の高周波信号(たとえば、39GHz帯)が供給されると、給電素子121Hから電波が放射される。一方、給電配線191に、無給電素子126Hに対応した低周波数側の高周波信号(たとえば、28GHz帯)が供給されると、給電配線191の貫通部分において、給電配線191と無給電素子126Hとの電磁界結合によって無給電素子126Hに非接触で当該高周波信号が伝達される。これによって、無給電素子126Hから電波が放射される。
【0149】
アンテナ装置120Jは、各放射素子として給電素子121J(121J1~121J4)および無給電素子126J(126J1~126J4)を含んでいる。アンテナ装置120Jの構成は、アンテナ装置120Hと同様であるため、詳細な説明は繰り返さない。
【0150】
このように、給電素子および無給電素子を用いるデュアルバンドタイプのアンテナモジュールにおいても、RFIC110Hからは、各周波数帯域の高周波信号が個別に出力されるため、これらの信号を個別の給電配線を用いてアンテナ装置120H,120Jまで伝達すると、放射素子の数と同数の給電配線を接続部材140A,140Bに配置することが必要となる。しかしながら、変形例6のアンテナモジュール100Hにおいては、ダイプレクサを含むフィルタ装置190をマザーボード250に設けて、高周波数側の高周波信号を伝達する給電配線と、低周波数側の高周波信号を伝達する給電配線とを共通化することによって、接続部材140A,140Bに配置される給電配線の数を低減することができる。その結果、アンテナモジュールにおいて、配線数増加に伴うサイズの増加を抑制することができる。
【0151】
なお、実施の形態3および変形例6においては、デュアルバンドタイプのアンテナモジュールに対してダイプレクサを含むフィルタ装置を用いる構成について説明したが、3つ以上の異なる周波数帯域の電波を放射可能なアンテナモジュールにおいても、トリプレクサあるいはマルチプレクサを含むフィルタ装置を用いることによって、接続部材に配置される給電配線の数を低減することができる。
【0152】
[実施の形態4]
(通信装置の構成)
実施の形態4においては、実施の形態3と同様のデュアルバンドタイプのアンテナモジュールにおいて、ダイプレクサを用いない構成の例について説明する。
【0153】
図26は、実施の形態4に係るアンテナモジュール100Yが適用される通信装置10Yのブロック図である。図26を参照して、通信装置10Yは、アンテナモジュール100Yと、BBIC200とを備える。アンテナモジュール100Yは、RFIC110Yと、アンテナ装置120F,120Gと、切換回路130Yと、FEM180Yとを含む。
【0154】
アンテナ装置120F,120Gは、実施の形態3と同様であり、アンテナ装置120F,120Gの各々に配列された各放射素子は2つの給電素子を含んでいる。アンテナ装置120Fは給電素子121F,125Fを含み、アンテナ装置120Gは給電素子121G,125Gを含む。各給電素子には、RFIC110Yから高周波信号が個別に供給される。
【0155】
RFIC110Yは、図17で示したRFIC110Fにおけるスイッチ111A~111H、パワーアンプ112AT~112HT、および、ローノイズアンプ112AR~112HRが除かれた構成を有している。言い換えれば、RFIC110Yは、スイッチ113A~113H,117A,117Bと、減衰器114A~114Hと、移相器115A~115Hと、信号合成/分波器116A,116Bと、ミキサ118A,118Bと、増幅回路119A、119Bとを備えている。
【0156】
このうち、スイッチ113A~113D,117A、減衰器114A~114D、移相器115A~115D、信号合成/分波器116A、ミキサ118A、および増幅回路119Aの構成が、高周波数側の給電素子121F,121Gのための回路である。また、スイッチ113E~113H,117B、減衰器114E~114H、移相器115E~115H、信号合成/分波器116B、ミキサ118B、および増幅回路119Bの構成が、低周波数側の給電素子125F,125Gのための回路である。
【0157】
FEM180Yは、FEM180YA~FEM180YDを含む。FEM180YAには、スイッチ113Aおよびスイッチ113Eが接続されており、FEM180YBには、スイッチ113Bおよびスイッチ113Fが接続されている。同様に、FEM180YCには、スイッチ113Cおよびスイッチ113Gが接続されており、FEM180YDには、スイッチ113Dおよびスイッチ113Hが接続されている。
【0158】
切換回路130Yは、スイッチ130YA~スイッチ130YDを含む。スイッチ130YAは、スイッチ130YA1,130YA2を含んでおり、スイッチ130YBは、スイッチ130YB1,130YB2を含んでいる。同様に、スイッチ130YCは、スイッチ130YC1,130YC2を含んでおり、スイッチ130YDは、スイッチ130YD1,130YD2を含んでいる。
【0159】
図27は、図26におけるFEM180Yの詳細を説明するための図である。なお、図27においては、説明を容易にするために、スイッチ130YA~スイッチ130YDのうちの1つの構成、および、FEM180YA~FEM180YDのうちの1つの構成が代表的に示されている。
【0160】
図27を参照して、FEM180Yは、高周波数側の回路に対応するパワーアンプ183Y1およびローノイズアンプ184Y1と、低周波数側の回路に対応するパワーアンプ183Y2およびローノイズアンプ184Y2と、スイッチ182Yとを含む。
【0161】
スイッチ182Yには、2つのスイッチ回路を含んでいる。スイッチ182Yの一方のスイッチ回路は、高周波数側のパワーアンプ183Y1およびローノイズアンプ184Y1に接続されており、パワーアンプ183Y1およびローノイズアンプ184Y1のいずれか一方を、切換回路130Yのスイッチ130Y1の入力端子に接続する。スイッチ182Yの他方のスイッチ回路は、低周波数側のパワーアンプ183Y2およびローノイズアンプ184Y2に接続されており、パワーアンプ183Y2およびローノイズアンプ184Y2のいずれか一方を、切換回路130Yのスイッチ130Y2の入力端子に接続する。
【0162】
スイッチ182Yは、電波の送信および受信を切換えるためのスイッチであり、アンテナ装置120F、120Gから電波を放射する場合には、スイッチ182Yのスイッチ回路は、パワーアンプ183Y1,183Y2に接続される。一方、アンテナ装置120F、120Gで電波を受信する場合には、スイッチ182Yのスイッチ回路は、ローノイズアンプ184Y1,184Y2に接続される。
【0163】
切換回路130Yは、アンテナ装置120Fとアンテナ装置120Gとを切換えるための回路である。切換回路130Yに含まれるスイッチ130Y1,130Y2の各々は、2つの出力端子を有している。スイッチ130Y1の一方の出力端子はアンテナ装置120Fにおける給電素子121Fに接続される。スイッチ130Y1の他方の出力端子はアンテナ装置120Gにおける給電素子121Gに接続される。また、スイッチ130Y2の一方の出力端子はアンテナ装置120Fにおける給電素子125Fに接続される。スイッチ130Y2の他方の出力端子はアンテナ装置120Gにおける給電素子125Gに接続される。
【0164】
より詳細には、図26に示されるように、スイッチ130YAにおけるスイッチ130YA1は、給電素子121F1および給電素子121G1に接続される。スイッチ130YAにおけるスイッチ130YA2は、給電素子125F1および給電素子125G1に接続される。スイッチ130YBにおけるスイッチ130YB1は、給電素子121F2および給電素子121G2に接続される。スイッチ130YBにおけるスイッチ130YB2は、給電素子125F2および給電素子125G2に接続される。
【0165】
また、スイッチ130YCにおけるスイッチ130YC1は、給電素子121F3および給電素子121G3に接続される。スイッチ130YCにおけるスイッチ130YC2は、給電素子125F3および給電素子125G3に接続される。スイッチ130YDにおけるスイッチ130YD1は、給電素子121F4および給電素子121G4に接続される。スイッチ130YDにおけるスイッチ130YD2は、給電素子125F4および給電素子125G4に接続される。
【0166】
図28は、図26におけるアンテナモジュール100Yの側面図である。アンテナモジュール100Yは、図7で示した実施の形態2のアンテナモジュール100Aと同様に、共通の接続部材140Yに、アンテナ装置120Fおよびアンテナ装置120Gが配置された構成となっている。また、接続部材140Yの表面141Yには、切換回路130YおよびFEM180Yが配置されている。
【0167】
一方、マザーボード250上の切換回路130は除かれており、RFIC110Yからの信号は、接続配線170によって接続端子155を通ってFEM180Yに伝達される。上述したように、FEM180Yからの信号は切換回路130Yによって分岐されて、アンテナ装置120Fあるいはアンテナ装置120Gへと伝達される。
【0168】
このような構成とすることによって、実施の形態3のようなダイプレクサ190,195A,195Bを用いなくても、アンテナ装置120F,120Gから、高周波数側の電波および低周波数側の電波を切換えながら放射あるいは受信することが可能となる。また、FEM180Yに、高周波数側および低周波数側のパワーアンプとローノイズアンプとを設けることによって、各周波数におけるアンテナ特性を適切に調整することができるとともに、RFIC110Yの構成を簡略化することができる。
【0169】
なお、上述のアンテナモジュール100Yにおいては、パワーアンプおよびローノイズアンプがFEM180Yに配置され、RFIC110Yにはパワーアンプおよびローノイズアンプが設けられない構成について説明したが、パワーアンプおよびローノイズアンプがFEMおよびRFICの双方に設けられる構成であってもよい。この場合、パワーアンプおよびローノイズアンプの負荷を、FEMおよびRFICで分担することができる。そのため、RFICのサイズは、上記のアンテナモジュール100Yよりもやや大きくなるものの、フレキシブル基板(接続部材140Y)上に配置されるFEMのサイズを小型化することができる。
【0170】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0171】
10,10A,10F,10H,10Y 通信装置、50 筐体、51,52 主面、55~58 側面、100,100A~100F,100H,100X,100Y アンテナモジュール、110,110F,110H,110Y RFIC、111A~111H,113A~113H,117,117A,117B,130A~130D,130Y1,130Y2,130YA~130YD,181,181X,182,182X,182Y スイッチ、112AR~112HR,184,184X1,184X2,184Y1,184Y2 ローノイズアンプ、112AT~112HT,183,183X1,183X2,183Y1,183Y2 パワーアンプ、114A~114H 減衰器、115A~115H 移相器、116,116A,116B 信号合成/分波器、118,118A,118B ミキサ、119,119A,119B 増幅回路、120,120A~120C,120F~120H,120J アンテナ装置、121,121A,121A1~121A4,121B,121B1~121B4,121F,121F1~121F4,121G,121G1~121G4,121H,121H1~121H4,121J,121J1~121J4,125F,125F1~125F4,125G,125G1~125G4 給電素子、122,122A,122B,122F~122H,122J,143 誘電体基板、123,140,140A~140D,140Y 接続部材、126H,126H1~126H4,126J,126J1~126J4 無給電素子、130,130X,130Y 切換回路、150A,150B,150X,150Y,155,155A,155B 接続端子、160A,160B,161,162,191,192 給電配線、170,171,260 接続配線、180A,180A1~180A4,180B,180B1~180B4,180X,180Y,180YA~180YD FEM、190,195A,195B フィルタ装置、190A~190D,195A1~195A4,195B1~195B4 ダイプレクサ、200 BBIC、210 ローパスフィルタ、220 ハイパスフィルタ、211~213,221~223 平板電極、250 マザーボード、C1 キャパシタ電極、GND 接地電極、SP1,SP2 給電点、T1,T1A~T1D,T2,T2A~T2D,T3,T3A~T3D 端子、V1~V5 ビア。
図1
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