(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】リフレクトアレイ、リフレクトアレイ装置およびリフレクトアレイの設計方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 15/14 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
(21)【出願番号】P 2023032783
(22)【出願日】2023-03-03
【審査請求日】2023-07-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 順平
(72)【発明者】
【氏名】西山 碩芳
(72)【発明者】
【氏名】近藤 慎平
(72)【発明者】
【氏名】西村 大輝
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-374121(JP,A)
【文献】特開2022-072812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも素子パターン、誘電体層、グランド層をこの順に積層したリフレクトアレイであって、
前記リフレクトアレイは少なくとも1つの反射制御領域を含み、
前記反射制御領域は少なくとも2つの単位セルを有し、
前記単位セルには前記素子パターンが1つ配置され、
前記素子パターンは、xy平面において2つの方形パッチが直交したクロスパッチを含み、
前記反射制御領域内において、前記素子パターンのx軸方向の幅である第一素子幅wxまたは/かつy軸方向の幅である第二素子幅wyは、前記少なくとも2つの単位セルそれぞれに配置される素子パターン毎に異なることを特徴とするリフレクトアレイ。
【請求項2】
前記素子パターンにおいて、前記クロスパッチは前記2つの方形パッチは重心を共通にして直交しており、前記素子パターンの前記xy平面における形状がx軸およびy軸に対して線対称であることを特徴とする請求項1に記載のリフレクトアレイ。
【請求項3】
前記xy平面において、前記素子パターンの重心と前記単位セルの重心が同じことを特徴とする請求項1に記載のリフレクトアレイ。
【請求項4】
x軸方向の前記素子パターン間のギャップgxが等しいことを特徴とする請求項1に記載のリフレクトアレイ。
【請求項5】
y軸方向の前記素子パターン間のギャップgyが等しいことを特徴とする請求項1に記載のリフレクトアレイ。
【請求項6】
x軸方向の前記素子パターン間のギャップgxが等しく、かつy軸方向の前記素子パターン間のギャップgyが等しく、かつgyとgyが等しいことを特徴とする請求項1に記載のリフレクトアレイ。
【請求項7】
x軸方向の前記素子パターン間のギャップgxが等しく、かつy軸方向の前記素子パターン間のギャップgyが等しく、かつgyとgyが異なることを特徴とする請求項1に記載のリフレクトアレイ。
【請求項8】
前記素子パターンはクロスパッチによって構成される、請求項1に記載のリフレクトアレイ。
【請求項9】
前記素子パターンが前記xy平面において前記クロスパッチおよび、その周りを囲む円環からなる請求項1に記載のリフレクトアレイ。
【請求項10】
前記素子パターンが前記xy平面においてエルサレムクロス形状からなる請求項1に記載のリフレクトアレイ。
【請求項11】
意匠層を備える請求項1に記載のリフレクトアレイ。
【請求項12】
保護層を備える請求項1に記載のリフレクトアレイ。
【請求項13】
支持体に、請求項1に記載のリフレクトアレイを設けたリフレクトアレイ装置。
【請求項14】
少なくとも素子パターン、誘電体層、グランド層をこの順に積層したリフレクトアレイの設計方法であって、
前記リフレクトアレイは少なくとも1つの反射制御領域を含み、
前記反射制御領域は少なくとも2つの単位セルを有し、
前記単位セルには前記素子パターンが1つ配置され、
前記素子パターンは、xy平面において2つの方形パッチが直交したクロスパッチを含み、
前記素子パターンのx軸方向の幅である第一素子幅wxまたは/かつy軸方向の幅である第二素子幅wyは、前記素子パターンの反射特性のシミュレーションにおいて、前記第一素子幅wxおよび前記第二素子幅wyを設計パラメータとして導出した反射位相に基づいて設定される、
ることを特徴とするリフレクトアレイの設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフレクトアレイ、リフレクトアレイ装置およびリフレクトアレイの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
社会におけるデジタル化の進展により、無線通信におけるデータ通信速度が飛躍的に向上し、それに伴う電磁波の高周波化が進んでいる。しかし、電磁波は周波数が高くなるにつれて直進性が高くなるため、建物の影等に電磁波が回り込まず、通信ができない領域である不感地帯が生じやすい。
これらの理由から、広範囲における5G・6G通信を実現するためには、基地局数を増やす必要がある。しかし、基地局を増やすためには多額のコストを要するため、基地局の数を早急に増やすのは難しい状況にある。近年これらの課題を解決すべく、電磁波の方向を制御する技術が注目を集めている。
【0003】
このような技術のなかで、十字型の反射素子を用いた反射板が開発されている。特許文献1には、以下の点が開示されている。
メタサーフェス反射板は、誘電体基板、誘電体基板の底面に設けられ、全ての向きの偏波に対しメタサーフェス反射板を透過させない金属グラウンド層、および、アーム長の異なる2種以上の十字型の金属共振器を有する複数のスーパーセルを備える。金属共振器を有するスーパーセルは、誘電体基板の上面に形成され、入射波の垂直偏波および水平偏波を反射させ、所定周波数での電磁波を要求される位相で異常波反射させる回折格子の周期で配列されている。
【0004】
また、特許文献2には、以下の点が開示されている。
複数の反射素子が基板上に配置され、基板の表面に平行な電界成分を有する第1の偏波及び前記表面に垂直な電界成分を有する第2の偏波を、第1及び第2の所望方向にそれぞれ反射するリフレクトアレーは、複数の反射素子の各々は地板から隔てて設けられたパッチを有し、第1の軸方向に隣接する反射素子のパッチ間のギャップは、第1の偏波が所定の反射位相で反射されるようにギャップの場所に応じた値に設定され、第1の軸に垂直な第2の軸方向に隣接する反射素子のパッチ間のギャップは、第2の偏波が所定の反射位相で反射されるようにギャップの場所に応じた値に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-48465号公報
【文献】特許第5469724号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
十字形状を含む素子パターンを備えるリフレクトアレイは、素子パターンに寸法誤差が生じると、各領域における反射位相が設計値から大きく変化する傾向があり、所望方向の反射強度が低下することがある。
このため、リフレクトアレイについて良品率を高めることが難しいといった課題がある。
また、特許文献1および2のいずれにおいても、設計パラメータの設定方法については十分な検討が行われていない。
そこで、本発明では、リフレクトアレイの良品率を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明のリフレクトアレイの一つは、少なくとも素子パターン、誘電体層、グランド層をこの順に積層したリフレクトアレイであって、前記リフレクトアレイは少なくとも1つの反射制御領域を含み、前記反射制御領域は少なくとも2つの単位セルを有し、前記単位セルには前記素子パターンが1つ配置され、前記素子パターンは、xy平面において2つの方形パッチが直交したクロスパッチを含み、前記反射制御領域内において、前記素子パターンのx軸方向の幅である第一素子幅wxまたは/かつy軸方向の幅である第二素子幅wyは、前記少なくとも2つの単位セルそれぞれに配置される素子パターン毎に異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リフレクトアレイの良品率を向上させる技術を提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、リフレクトアレイの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、機能層の配置の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、機能層の配置の他の例を示す図である。
【
図4】
図4は、非対称反射を発生させる方向に応じた、単位セルの配置の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、非対称反射を発生させる方向に応じた、単位セルの配置の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、非対称反射を発生させる方向に応じた、単位セルの配置の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、素子パターンの構成を示す図である。
【
図8】
図8は、反射制御領域の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、反射制御領域内においてx軸方向の素子長およびy軸方向の素子長を変更した場合を示す図である。
【
図10】
図10は、素子パターン形状の例および各素子パターンの幅を示す図である。
【
図11】
図11は、エッチング後の素子パターンの形状の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施例1に記載のリフレクトアレイのxy平面における構造を示す図である。
【
図13】
図13は、比較例1の設計過程における単位セルの解析結果であり、素子パターンの素子幅をwx=wy=9.000mmとし素子長lを変化させた場合の反射位相を示す図である。
【
図14】
図14は、比較例1において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、xz平面における、寸法誤差有/無のリフレクトアレイの反射特性を示す図である。
【
図15】
図15は、実施例1の設計過程における単位セルの解析結果であり、素子パターンの素子長をlx=ly=15.000mmとし素子幅wを変化させた場合の反射位相を示す図である。
【
図16】
図16は、実施例1において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、xz平面における、寸法誤差有/無のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である。
【
図17】
図17は、比較例2の設計過程における単位セルの解析結果であり、素子パターンの素子幅をwx=wy=1.000mmとし素子長lを変化させた場合の反射位相を示す図である。
【
図18】
図18は、比較例2において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、xz平面における、寸法誤差有/無のリフレクトアレイの反射特性を示す図である。
【
図19】
図19は、実施例2の設計過程における単位セルの解析結果であり、素子パターンの素子長をlx=ly=3.250mmとし素子幅wを変化させた場合の反射位相を示す図である。
【
図20】
図20は、実施例2において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、xz平面における、寸法誤差有/無のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である。
【
図21】
図21は、比較例3の設計過程における単位セルの解析結果であり、素子パターンの素子幅をwx=wy=0.500mmとし素子長lを変化させた場合の反射位相を示す図である。
【
図22】
図22は、比較例3において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、xz平面における、寸法誤差有/無のリフレクトアレイの反射特性を示す図である。
【
図23】
図23は、実施例3の設計過程における単位セルの解析結果であり、素子パターンの素子長をlx=ly=1.700mmとし素子幅wを変化させた場合の反射位相を示す図である。
【
図24】
図24は、実施例3において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、xz平面における、寸法誤差有/無のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である。
【
図25】
図25は、比較例4の設計過程のおける単位セルの解析結果であり、素子パターンの素子幅をwx=wy=0.400mmとし素子幅lを変化させた場合の反射位相を示す図である。
【
図26】
図26は、比較例4において得られたリフレクトアレイ6の解析結果であり、xz平面における、寸法誤差有/無のリフレクトアレイの反射特性を示す図である。
【
図27】
図27は、実施例4の設計過程における単位セルの解析結果であり、素子パターンの素子長をlx=ly=0.900mmとし素子幅wを変化させた場合の反射位相を示す図である。
【
図28】
図28は、実施例4において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、xz平面における、寸法誤差有/無のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である。
【
図29】
図29は、実施例5において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、xz平面における、リフレクトアレイの反射特性を示す図である。
【
図30】
図30は、実施例6において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、xz平面における、リフレクトアレイの反射特性を示す図である。
【
図31】
図31は、実施例7において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、xz平面における、リフレクトアレイの反射特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本開示は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0011】
(用語の説明)
本開示において、「リフレクトアレイ(電磁波反射板)」とは、電磁波を反射させる部材である。入射角度と反射角度が等しい対称反射をさせるものに限らず、入射角度と反射角度が異なる非対称反射をさせるものや、複数の方向に電磁波を散乱させるものや、特定の箇所に電磁波を集めるものを含む。以下の説明において、xyz座標系を適用し、xy平面上にリフレクトアレイが配置されるとする。
また、「反射制御領域」とは、リフレクトアレイを構成する領域の一部を指す。反射制御領域は、その領域に入射した電磁波を所定の方向へ反射させることができる最小の領域である。
そして、リフレクトアレイは、反射制御領域を1つ以上組み合わせて構成される。反射制御領域という場合、電磁波が入射領域に平行な方向にある2次元の領域に加えて、領域に垂直な方向に形成される層構造をも含むものとする。
また、「単位セル」とは、反射制御領域を区分した領域を指す。単位セルには1つの素子パターンが含まれる。
また、「θi」は入射波の入射角度を示す。x軸方向の入射角度をθix、y軸方向の入射角度をθiyとする。また、「θr」は反射波の反射角度を示す。x軸方向の反射角度をθrx、y軸方向の反射角度をθryとする。
また、x軸方向の角度θxは、+z軸方向から+x軸方向に向かう方向に広がる場合を正の角度(0°から180°)によって表し、+z軸方向から-x軸方向に向かう方向に広がる場合を負の角度(0°から-180°)によって表す。同様に、y軸方向の角度θyは、+z軸方向から+y軸方向に向かう方向に広がる場合を正の角度(0°から180
°)によって表し、+z軸方向から-y軸方向に向かう方向に広がる場合を負の角度(0°から-180°)によって表す。
また、素子長については、x軸方向の素子長はlxと表記され、y軸方向の素子長はlyと表記される。また、素子幅については、x軸方向の素子幅はwx、y軸方向の素子幅はwyと表記される。
【0012】
[第1実施形態]
(リフレクトアレイの構成)
図1を参照して、リフレクトアレイの構成および素子パターンの構成を説明する。
図1は、リフレクトアレイ6の構成を示す図である。リフレクトアレイ6は、複数の素子パターンを平面に周期的に配置し、反射波の方向を所望の値にすることができる。リフレクトアレイ6は、素子パターン(素子)1、誘電体層2、グランド層(地板)3を少なくとも含む。以下の説明において、xyz座標系を適用し、xy平面上にリフレクトアレイ6が配置される。
【0013】
図1のリフレクトアレイ6は、x軸に沿って電磁波の所定の非対称反射を生じさせるものである。
図1のリフレクトアレイ6は反射制御領域5と同一の反射制御領域がx軸方向およびy軸方向に複数並べられた構成を有しているところ、
図1において、リフレクトアレイ6に含まれる反射制御領域を代表して反射制御領域5を実線で示している。反射制御領域5には、単位セル4
1、4
2、4
3、…4
n(以下、単位セルを特定せずに言う場合には「単位セル4」ともいう。nは2以上の正の整数。)が含まれる。単位セル4は、反射制御領域5をx軸方向に沿って等間隔に分割した部分である。nは、x軸方向において反射制御領域を単位セルに分割する場合の分割数である。単位セル4のx軸方向のサイズ(長さ)をsx、y軸方向のサイズをsyとし、反射制御領域5のx軸方向のサイズをLx、y軸方向のサイズをLyとする場合、sx=Lx/n、sy=Lyである。なお、
図1において、反射制御領域5はx軸方向に並んだn個の単位セル4によって構成され、リフレクトアレイ6には複数の反射制御領域5が含まれる構成が示されているが、本開示はこのような構成に限定されない。反射制御領域はy軸に並ぶ単位セルによって構成されてもよいし、x軸およびy軸に並ぶ単位セルを含む構成であってもよい。反射制御領域の構成については後述する。
【0014】
(素子パターンの構成)
単位セル4の+z軸方向を向く面には、素子パターンが形成されている。分割数nを用いて、単位セル4
1、単位セル4
2、…単位セル4
nと表す。単位セル4
1には素子パターン1
1が形成される。単位セル4
2には素子パターン1
2が形成される。単位セル4
3には素子パターン1
3が形成される。単位セル4
nには素子パターン1
nが形成される。
また、反射制御領域の領域内および同一の反射制御領域が隣接する領域間において、素子パターンは均等な間隔をおいて配置される。具体的には、反射制御領域5の領域内の各素子パターンについて、x軸方向において隣り合う素子パターン同士の最近接間隔の大きさ(以下、「ギャップ」ともいう。)をgxとする場合、反射制御領域5の領域内において、素子パターン1
1から1
nは、gxの等間隔に配置される。また、反射制御領域5の素子パターン1
nとx軸方向において反射制御領域5に隣接する反射制御領域5x(破線表示、素子パターン1
x
1が形成された単位セル4
x
1、素子パターン1
x
2が形成された単位セル4
x
2、…素子パターン1
x
nが形成された単位セル4
x
nを含む。)の素子パターン1
x
1の間のギャップをGxとする場合、
図1においてはGxとgxは等しい。
なお、反射制御領域5の素子パターンとy軸方向において反射制御領域5に隣接する反射制御領域5y(破線表示、素子パターン1
y
1が形成された単位セル4
y
1、素子パターン1
y
2が形成された単位セル4
y
2、…素子パターン1
y
nが形成された単位セル4
y
nを含む。)の素子パターンの間のギャップは、
図1においては均一でGyとして示される。
【0015】
反射制御領域内において、各素子パターンは、ほかの素子パターンとはわずかずつ異なる形状を有している。ここで、素子パターン11から素子パターン1nに示された素子パターンの形状を、クロスパッチということがある。クロスパッチとは、xy平面において、2つの方形パッチが直交した形状を指す。素子パターン11は、x軸方向のサイズである素子長lx1とy軸方向のサイズである素子幅wy1を有する方形パッチと、y軸方向のサイズである素子長ly1とx軸方向のサイズである素子幅wx1を有する方形パッチが、重心の位置を共通として直交した形状を有する。同様に、素子パターン1nは、素子長lxnと素子幅wynを有する方形パッチと、素子長lynと素子幅wxnを有する方形パッチが、重心の位置を共通として直交した形状を有する。素子長および素子幅の設定方法については後述する。
【0016】
(各構成の説明、設計方法)
(層の構成)
図2および
図3を参照して、リフレクトアレイ6の層構成を説明する。
図2および
図3は、リフレクトアレイ6の層構成の一例を示す図である。リフレクトアレイ6は、少なくとも素子パターン1、誘電体層2、グランド層3が+z軸方向から-z軸方向に向かう向きに積層された構成を有している。以下の説明において、素子パターン1、誘電体層2、グランド層3の3層からなる構成を「基本構成」という。実用上、リフレクトアレイ6は基本構成の素子パターン1側あるいはグランド層3側、もしくは両方に各種機能性を有する層(以下、「機能層」ともいう)を単数あるいは複数積層させることが好ましい。以下の説明において、素子パターン1と誘電体層2とグランド層3以外のリフレクトアレイに含まれる層について、層の種類を特定せずに示す場合、「機能層」ということがある。
【0017】
必要に応じて、素子パターン1と誘電体層2の間、またはグランド層3と誘電体層2の間に、それぞれの密着力を向上させるための層が形成されていてもよい。また、密着力を向上させる用途の他の用途に用いられる層が形成されていてもよい。なお、リフレクトアレイ6の製造過程において生じた中間生成物が層状に形成され、リフレクトアレイ6に残る場合もある。
【0018】
機能層としては例えば、リフレクトアレイ6が設置される場所の景観に配慮した意匠を施した意匠層や、リフレクトアレイ6を壁や天井等の支持体に容易に設置できるようにするための設置層や、基本構成を保護するための保護層や、各層を積層させるための接着層が挙げられる。
【0019】
図2は、機能層7の配置の一例を示す図である。素子パターン1側への積層方式は、リフレクトアレイ6aのように複数の素子パターン1同士の間の空隙を埋めるよう機能層7を積層してもよいし(
図2(a))、リフレクトアレイ6bのように複数の素子パターン1同士の間の空隙を維持したまま素子パターン1の上面に接するよう機能層7を積層してもよいし(
図2(b))、リフレクトアレイ6cのように素子パターン1の上面と接しないよう機能層7を積層してもよい(
図2(c))。なお、リフレクトアレイ6aから6cにおいて機能層7を除いた構成を共通とした場合、リフレクトアレイ6aから6cはそれぞれ異なる反射特性を有する。このため、機能層7の積層方式を変更することによって、リフレクトアレイの特性を変更することも可能である。
【0020】
図3は、機能層の配置の他の例を示す図である。
図3においては、機能層として保護層8、接着層9、意匠層10、設置層11の配置例を示す。
図3(a)は、素子パターン1およびグランド層3を覆うように保護層8が積層され、さらに素子パターン1側には接着層9を介して意匠層10を、グランド層側には接着層9を介して設置層11を備えるリフレクトアレイ6dを示す。
図3(b)は、グランド層側に接着層9を介して設置層11を備え、素子パターン1側には空隙を隔てて意匠層10を備えるリフレクトアレイ6eを示す。
【0021】
(反射制御領域)
リフレクトアレイ6は少なくとも1つの反射制御領域を含む。反射制御領域の配置の仕方によって、リフレクトアレイの性質を変更することが可能である。例えば、ある波長の電磁波がある入射角度で入射した場合に、反射方向が共通である反射制御領域を周期的に配置することにより、リフレクトアレイに、単一方向への反射を行う特性を付与することが可能である。また、ある波長の電磁波がある入射角度で入射した場合に、反射方向がそれぞれ異なる反射制御領域を含むリフレクトアレイを構成することにより、複数の方向へ電磁波を散乱させる特性を付与することも可能である。また、反射制御領域ごとに反射方向を所定の角度ずつずらす構成とすることによって、特定の箇所へ電磁波を集める特性を付与することも可能である。設計時に、リフレクトアレイに適用が予定される周波数を、以下「動作周波数」とする。
【0022】
反射制御領域のx軸方向のサイズLxは、動作周波数の波長をλ、反射制御領域に入射する電磁波の入射角度のx軸成分をθix、反射制御領域から反射する電磁波の反射角度のx軸成分をθrxとし、θix≠-θrxの場合、例えば式(1)によって決定される。
【数1】
【0023】
また、反射制御領域のy軸方向のサイズLyは、反射制御領域に入射する電磁波の入射角度のy軸成分をθiy、反射制御領域から反射する電磁波の反射角度のy軸成分をθryとし、θiy≠-θryの場合、例えば式(2)によって決定される。
【数2】
【0024】
(単位セルと反射位相の関係)
図4から
図6を参照して、単位セルと反射位相の関係を説明する。
図4から
図6は、非対称反射を発生させる方向に応じた、単位セルの配置の一例を示す図である。反射制御領域5は少なくとも2つの単位セルを有する。ここで、
図4(a)はリフレクトアレイ6fに入射する電磁波(入射波)の方向およびリフレクトアレイ6fから反射する電磁波(反射波)の方向を示す。別の言い方をすると、太い実線で描かれた矢印が波面の進行方向を示しており、リフレクトアレイ6に向かう矢印が入射波の波面の進行方向を示し、リフレクトアレイ6fから離れる方向の矢印が反射波の波面の進行方向を示す。また、
図4(b)はリフレクトアレイ6fをz軸方向から見た平面図を示す。
図5および
図6における(a)および(b)も、
図4における(a)および(b)の関係と同様である。
【0025】
単位セルは、入射した電磁波を所定の位相差で反射させる作用を有する。反射制御領域内において、それぞれの単位セルが異なる反射位相を示すことから、反射制御領域から発生する反射波の波面である反射波面が入射角度と反射角度が等しくなる場合の反射角度から傾き、入射角度と反射角度が等しくなる対称反射とは異なる反射である非対称反射が実現する。
【0026】
リフレクトアレイ6fにx軸方向に沿ってのみ非対称反射を行わせようとする場合(
図4(a)に示されるようにθix≠-θrx)には、反射制御領域5a内のx軸方向に沿って異なる反射位相を示す単位セルが配置される(
図4(b))。反射制御領域5aは、分割数n=3とし、x軸方向に配置された3つの単位セルを有している。反射制御領域5aのx軸方向のサイズLxは式(1)によって決定され、単位セルのx軸方向のサイズはLx/3である。この例に代表されるような、反射角のy軸成分が対称反射(θiy=-θry)の場合、Lyは式(2)によって決定される必要がなく、任意の値をとり得る。しかし、設計のしやすさから、便宜的にLxおよび分割数nからサイズが決定された正方形の単位セルを用いることとし、LyはLx/3と等しくされる。
【0027】
同様に、リフレクトアレイ6gにy軸方向に沿ってのみ非対称反射を行わせようとする場合(
図5(a)に示されるようにθiy≠-θry)には、反射制御領域5b内のy軸方向に沿って異なる反射位相を示す単位セルを配置する(
図5(b))。ここで、m(mは2以上の正の整数)は、y軸方向において反射制御領域を単位セルに分割する場合の分割数とする。反射制御領域5bは、分割数m=3とし、y軸方向に配置された3つの単位セルを有している。反射制御領域5bのy軸方向のサイズLyは式(2)によって決定され、単位セルのy軸方向のサイズはLy/3である。反射角度のx軸成分は対称反射であるため、Lxは式(1)によって決定される必要はなく、任意の値をとり得る。しかし、設計のしやすさから、便宜的にLyおよび分割数mからサイズが決定された正方形の単位セルを用いることとし、LxはLy/3と等しくされる。
【0028】
図6(a)はリフレクトアレイと電磁波の関係を示し、
図6(a1)は電磁波をzx面に射影した場合を示し、
図6(a2)は電磁波をzy面に射影した場合を示す。リフレクトアレイ6hにx軸方向およびy軸方向のいずれの方向にも非対称反射を行わせようとする場合(
図6(a1)に示されるようにθix≠-θrxかつ
図6(a2)に示されるようにθiy≠-θry)には、反射制御領域5c内において、x軸方向には反射位相が異なる単位セルを配置し、また、y軸方向においても反射位相が異なる単位セルを配置する(
図6(b))。反射制御領域5cは、x軸方向に3つの単位セルを配置しy軸方向に3つの単位セルを配置した9つの単位セルを含む。反射制御領域5cにおける分割数は、x軸方向の分割数n=3とy軸方向の分割数m=3を用いて、3×3=9と表すことも可能である。反射制御領域5cのx軸方向のサイズLxは式(1)によって決定され、y軸方向のサイズLyは式(2)によって決定される。単位セルのx軸方向のサイズは、Lxとnから決定され、Lx/3である。単位セルのy軸方向のサイズは、Lyとmから決定され、Ly/3である。入射波のx軸方向成分およびy軸方向成分のいずれも非対称反射する。このため、反射波面の進行方向のx軸方向成分は入射波面の進行方向のx軸方向成分は異なり、かつ反射波面の進行方向のy軸方向成分は入射波面の進行方向のy軸方向成分と異なる(
図6(a))。
なお、gxは、反射制御領域5cの領域内における素子パターン間のx軸方向のギャップを示す。gyは、反射制御領域5cの領域内における素子パターン間のy軸方向のギャップを示す。x軸方向において素子パターン間の間隔gxは等しく、また、y軸方向において素子パターン間の間隔gyは等しい。gxとgyは異なる場合が示されているが、gxとgyは等しくともよい。
また、Gxは、反射制御領域5cの素子パターンとx軸方向において反射制御領域5cに隣接する反射制御領域の素子パターンの間のギャップを示す。Gyは、反射制御領域5cの素子パターンとy軸方向において反射制御領域5cに隣接する反射制御領域の素子パターンの間のギャップを示す。反射制御領域5cと同一の反射制御領域がx軸方向(またはy軸方向)の位置を変えずにy軸方向(またはx軸方向)に隣接する場合、gxとGxは等しく、またgyとGyは等しい。
【0029】
(反射制御領域内の反射位相の分布、表面インピーダンスの分布)
反射制御領域内における反射位相の分布は、例えば式(3)、(4)に従うように決定される。ここで、動作周波数の波長をλ(m)、反射制御領域に入射する電磁波の入射角度のx軸成分をθix、y軸成分をθiy、反射制御領域から反射する電磁波の反射角度のx軸成分をθrx、y軸成分をθry、反射制御領域内のx軸と平行な任意の座標x1、x2における反射位相をそれぞれφx1、φx2とし、座標x1、x2の距離をdx、Φx1、Φx2の反射位相差をΔΦxとする。また、y軸と平行な任意の座標y1、y2における反射位相をそれぞれφy1、φy2とする。反射制御領域にx軸方向に沿って非対称反射を行わせようとする場合、式(3)を満たしていることが好ましく、反射制御領域にy軸方向に沿って非対称反射を行わせようとする場合、式(4)を満たしていることが好ましい。また、反射制御領域がx軸方向およびy軸方向のいずれの方向にも非対称反射を行わせようとする場合、式(3)および式(4)のいずれをも満たしていることが好ましい。
【数3】
【数4】
【0030】
また、反射位相ではなく、表面インピーダンスの分布を反射制御領域内に適用することもできる。その場合、表面インピーダンスの分布は例えば式(5)、および式(6)により表される。ここで、Zsxは反射制御領域のx軸方向と平行な表面インピーダンス分布、Zsyは反射制御領域のy軸方向と平行な表面インピーダンス分布、η
1は入射波のインピーダンスとする。また、反射制御領域に入射する電磁波の入射角度のx軸成分をθix、y軸成分をθiy、反射制御領域から反射する電磁波の反射角度のx軸成分をθrx、y軸成分をθryとする。
なお、x1およびx2は反射制御領域内の相対座標としてのx座標を示し、反射制御領域における任意の座標において基準x=0をとり得る。同様に、y1およびy2は反射制御領域内の相対座標としてのy座標を示し、反射制御領域における任意の座標において基準y=0をとり得る。
また、k
1は反射波の波数である。jは虚数単位を示す。反射制御領域にx軸方向に沿って非対称反射を行わせようとする場合、式(5)を満たしていることが好ましく、反射制御領域にy軸方向に沿って非対称反射を行わせようとする場合、式(6)を満たしていることが好ましい。また、反射制御領域がx軸方向およびy軸方向のいずれの方向にも非対称反射を行わせようとする場合、式(5)および式(6)のいずれをも満たしていることが好ましい。
【数5】
【数6】
【0031】
その他の表面インピーダンスの分布としては、例えば式(7)、および式(8)により表される。反射制御領域がx軸方向に沿ってのみ非対称反射を行わせようとする場合、式(7)を満たしていることが好ましく、反射制御領域がy軸方向に沿ってのみ非対称反射を行わせようとする場合、式(8)を満たしていることが好ましい。また、反射制御領域がx軸方向およびy軸方向のいずれの方向にも非対称反射を行わせようとする場合、式(7)、式(8)を同時に満たしていることが好ましい。
【数7】
【数8】
【0032】
なお、上述の式(3)から式(8)は、反射位相の分布および表面インピーダンスの分布を設計する場合に用いられる設計式の一例を示すものである。本開示はこれら式(3)から式(8)を用いる場合に限定されるものではなく、他の設計式を適宜選択することが可能である。
【0033】
(素子パターン)
図1、
図7から
図10を参照して、素子パターンの詳細を説明する。一般的にリフレクトアレイは、素子パターンによる共振を利用して反射特性を変化させる。ここで、線状または長方形の素子パターン(方形パッチ)は、その長軸に沿った方向の偏波を主に共振させるため、これらを直交させた形状の素子パターンを用いた場合、TE、TM両偏波に対応できることが知られている。
【0034】
本開示のリフレクトアレイにおいて、反射制御領域の分割数n、mを増加させるにつれて各単位セルのサイズおよび素子パターンのサイズは小さくなる。共振は、周波数に対して一定の素子パターンのサイズが満たされた場合にのみ生じるため、n、mを一定以上増加させた場合、動作周波数における非対称反射の実現が困難になる。一方、n、mを増加させるほど、より微小な領域ごとに反射特性を制御できるため、リフレクトアレイの反射特性は理論的な特性に近づく。
【0035】
本開示のリフレクトアレイにおける素子パターンは、xy平面において、2つの方形パッチが直交した形状のクロスパッチをその形状に含む。ここで、
図1に示されるように、クロスパッチを構成するx軸方向に長辺を有する方形パッチは長辺のサイズである素子長lxと短辺のサイズである素子幅wyを有し、y軸方向に長辺を有する方形パッチは長辺のサイズである素子長lyおよび短辺のサイズである素子幅wxを有する。したがって、単位セル4nにおける素子パターンは、素子長としてlxn、lynを有し、素子幅としてwxn、wynを有する、と表示することが可能である。
【0036】
図7は、素子パターンの構成を示す図である。単位セルには素子パターンが1つ配置される。単位セル4の素子パターンを構成するクロスパッチは、2つの方形パッチが交差する位置が単位セルの重心と同じであっても良いし(
図7(a)の単位セル4a)、異なっていても良い(
図7(b)の単位セル4b、
図7(c)の単位セル4c)。これらのクロスパッチの変形は適宜選択することが可能であり、設計の柔軟性や拡張性を高めることができる。
【0037】
本開示では、素子幅wx、wyを設計パラメータとして取り扱うこととし、反射制御領域に含まれる各素子パターンは互いに異なる素子幅を有するように設計する。素子幅wxは、最大で素子長lxと等しい値をとるまでの範囲内で変化し、素子幅wyは、最大で素子長lyと等しい値をとるまでの範囲内で変化させることができる。同一素子パターン内の素子幅wxと素子幅wyは、等しい値であっても異なる値であってもよい。異なる値とする場合、TE、TM偏波に対する特性をそれぞれ個別に制御することができる。
【0038】
図8は、反射制御領域の一例を示す図である。
図8(a)では、同一素子パターン内の素子幅wxとwyが等しいケース、
図8(b)では素子幅wxとwyが異なるケース、の例を示す。この例では、n=3とし、素子パターン形状は2つの方形パッチが直交した形状のみからなり、lxとlyが等しい場合が示されている。一方、反射制御領域内において、素子パターンのx軸方向の幅である第一素子幅wxおよび/またはy軸方向の幅である第二素子幅wyは、単位セルそれぞれに配置される素子パターン毎に異なる。
図8について詳述すると、
図8(a)の反射制御領域5dにおいて、素子パターン1d
1のx軸方向の素子幅wx1はy軸方向の素子幅wy1と等しい。素子パターン1d
2のx軸方向の素子幅wx2はy軸方向の素子幅wy2と等しい。素子パターン1d
3のx軸方向の素子幅wx3はy軸方向の素子幅wy3と等しい。一方、
図8(b)の反射制御領域5eにおいて、素子パターン1e
1のx軸方向の素子幅wx1はy軸方向の素子幅wy1よりも小さい。素子パターン1e
2のx軸方向の素子幅wx2はy軸方向の素子幅wy2より大きい。素子パターン1e
3のx軸方向の素子幅wx3はy軸方向の素子幅wy3よりも大きい。
【0039】
これまで説明してきた反射制御領域において、x軸方向の素子長lxは素子パターン毎に等しく、また、y軸方向の素子長lyは素子パターン毎に等しいものであった。ここで、lxとlyは等しいものあっても異なっていてもよい。lxとlyが異なる場合には、TE、TM偏波に対する特性を、素子パターンそれぞれ個別に付与することができる。
【0040】
図9は、反射制御領域内においてx軸方向の素子長およびy軸方向の素子長を変更した場合を示す図である。
図9(a)ではlxとlyが等しいケース、
図9(b)ではlx>lyのケース、
図9(c)ではlx<lyのケースの例を示す。この例ではn=3とし、素子パターン形状は2つの方形パッチが直交した形状のみからなり、同一素子パターン内のwxとwyは等しいものとする。具体的には、
図9(a)の反射制御領域5fにおいて、いずれの素子パターンもx軸方向の素子長lxを有し、y軸方向の素子長lyを有する。
図9(b)の反射制御領域5gおよび
図9(c)の反射制御領域5hにおいても、素子パターン間の素子長lxおよびlyは共通である。
【0041】
ギャップについては、gxのみが反射制御領域内の素子パターン間において等しいケース、gyのみが反射制御領域内の素子パターン間において等しいケース、反射制御領域内の素子パターン間においてgx、gyがそれぞれ等しく、かつgx≠gyのケース、反射制御領域内の素子パターン間においてgx、gyがそれぞれ等しく、かつgx=gyのケースが挙げられる。
【0042】
図10は、素子パターン形状の例および各素子パターンの幅を示す図である。
図10(a)は、方形パッチが直交した形状の素子パターン1aであり、
図10(b)は、一般的にエルサレムクロスと呼ばれる形状の素子パターン1bである。
図10(c)は、
図10(a)の形状を囲むように円環を配置した素子パターン1cである。素子パターン1aから1cにおいて示されるように、2つの方形パッチは重心を共通にして直交しており、素子パターンのxy平面における形状がx軸およびy軸に対して線対称である。なお、ここでは素子パターンが重心を共通にして直交する場合を示すが、本開示はこれに限定されない。2つの方形パッチは重心を共通とせずに直交していてもよい。
【0043】
(製造方法)
リフレクトアレイの基本構成の主な製造方法としては、プリント基板等に用いられる銅張積層板または、誘電体層の片面もしくは両面に蒸着法やスパッタ法のドライコーティング、めっき処理やウェットコーティング等により金属膜を形成した誘電体層に対し、切削またはエッチング等を施すことにより素子パターンを形成する。
具体的には、銅張積層板は、例えば、エポキシ等の樹脂をガラスクロス等の基材に含侵させた絶縁体に銅箔を張り合わせたものである。銅張積層板は板状の形状を有しており、板状の形状の絶縁体の両面に銅箔が張り合わされている。一方の面の銅箔を素子パターン1とし、他方の面の銅箔はグランド層3に適用する。絶縁体は誘電体層2に該当する。
誘電体の両面に金属膜を形成する場合、一方の金属膜から素子パターン1を形成し、他方の金属膜はグランド層3に適用する。誘電体は、誘電体層2となる。
【0044】
図11は、エッチング後の素子パターンの形状の一例を示す図である。
図11(a)は素子パターン1の平面図を示し、
図11(b)から
図11(d)は素子パターン1の断面図を示す。
図11(a)に示されるように、素子パターン1は、素子長lxと素子幅wyを有する方形パッチと、素子長lyと素子幅wxを有する方形パッチが直交して形成される。エッチング法には、ドライエッチングやウェットエッチングのいずれの方式を用いてよい。エッチング法を用いた場合、素子パターン1にコーナーラウンディング(
図11(a))や、ピンホールが生じることがある。また、素子パターン1の断面視において順テーパー(
図11(b))や逆テーパー(
図11(c))、ラウンディング(
図11(d))が形成されることが想定される。
図11中において素子パターン1の厚みをtとする。エッチング法を用いた場合、素子パターンの断面形状は、-z軸方向に裾が広がるような形状である順テーパー形状であることが好ましい。順テーパー形状であることにより、素子パターンの表面積が大きくなり、後述する機能層の積層時に機能層との密着力を大きくすることが可能となる。
【0045】
また、材料や製造工程に起因し、最終製品であるリフレクトアレイに曲率半径R=10m程度の反りが生じることがある。
【0046】
上記の形状変化が生じた場合においても、メインビームの方向が±5゜変化する程度であれば、リフレクトアレイの反射特性として許容されるものとする。
【0047】
なお、一般的に切削の場合、素子パターンの寸法誤差は±100μm程度であり、エッチングの場合、素子パターンの寸法誤差は±50μm程度である。
【0048】
その他の製造方法としては、誘電体層上に素子パターンやグランド層を直接形成する方法があげられる。凸版印刷、平版印刷、凹版印刷、孔版印刷、転写印刷などを用いて印刷する方法や、誘電体層にマスキングテープやマスキング剤等で素子パターン部分以外をマスキング処理し、素子パターンをドライコーティングやめっき処理、塗装やスプレー法を用いることで、形成することもできる。
【0049】
基本構成への他層(保護層8、接着層9、意匠層10、設置層11等の機能層7)の積層では、貼り合わせや印刷・コーティング、押出成型が挙げられ、貼り合わせには例えば、ドライラミネートやウェットラミネート、熱ラミネート、押出ラミネートを用いることが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0050】
大型サイズのリフレクトアレイが求められる場合、複数枚のリフレクトアレイを並べて一つのリフレクトアレイを構成しても良い。その場合、設置作業を行う場合に、リフレクトアレイ間のx軸方向のずれ、y軸方向のずれ、リフレクトアレイ同士の隙間が5mm程度生じることが想定される。また、個々のリフレクトアレイがxy平面上で5゜程度回転する方向にずれることが想定される。
【0051】
上記の変化が生じた場合においても、メインビームの方向が±5゜変化する程度であれば、リフレクトアレイの反射特性として許容されるものとする。
【0052】
(素子パターン)
素子パターンは、表面抵抗値が100Ω/□以下であることが好ましい。素子パターンに用いる材料としては、無機酸化物材料、金属材料や導電性を有する有機材料など、導電性を有する材料が用いられる。例えば、無機酸化物材料および金属材料としては、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛アルミニウム(AZO)、酸化ガリウム亜鉛(GZO)、酸化スズアンチモン、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、In、Ag-Cu、Cu-AuおよびNiなどが用いられる。また、これらの材料のうちの少なくとも1つを含むナノ粒子、またはナノワイヤーを用いてもよい。導電性を有する有機材料としては、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが挙げられる。特に材料コスト、導電性、製膜性の観点から、CuやAlが好ましい。また、ITOやポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)との混合物(PEDOT/PSS)などを用いることにより、透明性を有するリフレクトアレイを作製することもできる。素子パターンの厚みは、例えば、10nm以上18μm以下である。柔軟性、成膜性、安定性、シート抵抗値および低コストの観点から、蒸着法により成膜されたものを素子パターンとして用いることが好ましい。
【0053】
素子パターンの材料は、グランド層と同一のものを用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。なお、例えば、グランド層または素子パターンの少なくとも一方の層がCuもしくはAlによって形成されることとすることも可能である。Cuは導電性に優れるため、導体損失を低減することができる。Alは密度が小さく軽量でありまたコストが低いため、軽量かつ安価なリフレクトアレイを形成できる。また、少なくとも一方の層の厚みは1μm以下とすることができる。1μm以下とすることによって可撓性が向上し、リフレクトアレイの曲面等への設置がしやすくなり、また軽量化を実現することが可能となる。
【0054】
上記材料を用いる形態としては連続膜、メッシュ状、パンチング形状が挙げられる。
【0055】
素子パターンがメッシュ状である場合、メッシュの線幅は、5μm以上30μm以下が好ましく、6μm以上15μm以下がより好ましい。メッシュの線間隔は、50μm以上500μm以下が好ましく、100μm以上300μm以下がより好ましい。また、メッシュの線間隔は、動作周波数における波長をλとしたとき、0.5×λ以下であることが好ましく、0.1×λ以下であることがより好ましく、0.01×λ以下であることがさらに好ましい。メッシュの線間隔が0.5×λ以下であれば性能を担保することができる。また、メッシュの線間隔は、0.001×λ以上であってもよい。
【0056】
素子パターンがメッシュ状である場合や、透明導電材料を使用した場合、リフレクトアレイが可視光透過性を示し、設置後の景観を保つことを可能にする。
【0057】
素子パターンの形態が薄膜の場合、リフレクトアレイの可撓性を向上させることが可能であり、それにより曲面での使用やロールtoロールでの生産プロセスを実施することが可能となる
【0058】
素子パターンを薄膜を用いて形成する場合、その厚みは式(9)から算出される表皮深さよりも大きいことが好ましい。ただし、dは表皮深さ、ωは角周波数、μは材料の透磁率、σは材料の導電率である。
【数9】
【0059】
また、電磁波の反射効率を高めるため、素子パターンによる損失を低減させることが挙げられる。そのため、素子パターンの表面粗さは小さいほうが好ましい。
【0060】
(誘電体層)
誘電体層には、単体の樹脂の他に、紙やガラス繊維や炭素繊維などに樹脂を含侵させた複合材料の使用が挙げられる。
【0061】
単体の樹脂には例えば、ポリエチレン(εr=2.2~2.4)、ポリプロピレン(εr=2.0~2.6)、ポリスチレン(εr=2.4~2.6)、ポリ塩化ビニル(εr=2.8~8.0)、AS樹脂(εr=2.6~3.1)、ABS樹脂(εr=2.4~4.1)、ポリエチレンテレフタレート(εr=2.9~3.0)、アクリル樹脂(εr=2.7~4.5)、ウレタン樹脂(εr=4.0~7.1)、エポキシ樹脂(εr=2.5~6.0)、ナイロン(εr=3.0~5.0)、ポリイミド(εr=2.4~2.7)、フッ素樹脂(εr=2.0~2.6)、ポリカーボネート(εr=2.9~8.9)、ポリフェニレンエーテル(εr=2.8~8.2)、ポリフェニレンサルファイド(εr=3.2~4.6)、ポリフッ化ビニリデン(εr=6.4~10.0)、ポリエチレンナフタレート(εr=2.9)、フェノール樹脂(εr=3.0~12.0)、シクロオレフィンポリマー(εr=2.3~2.5)等が挙げられる。ここで、εrは比誘電率を示す。とりわけ、安価で汎用性に優れている点から、ポリエチレンテレフタレ一卜(PET)を用いることが好ましい。また、誘電体層は、単層あるいは複層とすることもできる。また、誘電体層は、上記材料を発泡化した発泡体を使用してもよい。また、発泡体としては、柔軟性の高い発泡体が好ましく用いられる。
【0062】
複合材料には例えば、紙/フェノール樹脂、紙/エポキシ樹脂、ガラス/エポキシ樹脂、ガラス/フッ素樹脂の複合材料等が挙げられる。
【0063】
他にも、誘電率調整の観点から、樹脂成分同士、あるいは誘電性化合物と樹脂成分とを含有する混合物の使用が挙げられる。混合物における比誘電率は誘電性化合物の選択およびその含有量に応じて調整可能である。
【0064】
混合物の比誘電率は例えば、Maxwell-Garnett則を用いて予測可能である。比誘電率εaの誘電体Aと、比誘電率εbの誘電体Bの混合物において、Aの体積分率がδaである場合、混合物の比誘電率εmは式(10)の関係式によって示される。
【数10】
【0065】
誘電性化合物としては、例えばチタン酸バリウム(εr=250~20000)、酸化チタン(εr=83~183)、ジルコン酸チタン酸鉛、タンタル酸ビスマス酸ストロンチウム、ビスマスフェライト等が挙げられる。
【0066】
透明性を有する誘電体を使用した場合、リフレクトアレイが可視光透過性を示し、設置後の景観を保つことを可能にする。
【0067】
誘電体層の比誘電率は、1以上20以下の範囲にあることが好ましく、1以上10以下の範囲にあることがより好ましく、2以上4以下の範囲にあることがさらに好ましい。比誘電率が上記範囲内であると、リフレクトアレイ1において所望の反射位相特性を得やすい傾向にある。また、誘電正接は0.00005以上0.01以下の範囲にあることが好ましく、0.00005以上0.001以下の範囲にあることが好ましい。上記範囲内であると、誘電損失の少ないリフレクトアレイ1を作製できる。
【0068】
誘電体層は、例えば、ダイコーティングやコンマコーティング、グラビアコーティングなどのウェットコーティング、Tダイ法やインフレーション法などの溶融押出法、カレンダー製膜法、溶液流延法、熱プレス法などを用いて形成することができる。また、複数の樹脂を多層に押し出してフィルムを製膜する共押出法を用いてもよい。
【0069】
誘電体層の厚みは、設計周波数により適宜選択される。設計周波数を28GHzとした場合、40μm以上250μm以下であることが好ましく、50μm以上200μm以下であることがより好ましい。薄すぎると反射位相の確保が困難となり、リフレクトアレイ1の設計が難しくなる。一方で、厚すぎても、反射位相の確保が困難となる、可撓性がなくなる、リフレクトアレイの総厚が厚くなるなどの傾向があり、省スペース化が難しくなる。このため、誘電体層の厚みは、250μm以下が好ましい。設計周波数を60GHzとした場合、誘電体層の厚みは10μm以上250μm以下であることが好ましい。設計周波数が100GHz以上になる場合、誘電体層の厚みを数μm以上100μm以下程度にすると、リフレクトアレイを設計しやすい。
【0070】
(グランド層)
グランド層は、リフレクトアレイに到達する電磁波を反射させるために設けられる。また、誘電体層を支持および保護するために用いられる。グランド層の材料として、無機酸化物材料、金属材料や導電性を有する有機材料など、導電性を有する材料が用いられる。
【0071】
例えば、無機酸化物材料および金属材料としては、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛アルミニウム(AZO)、酸化ガリウム亜鉛(GZO)、酸化スズアンチモン、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、In、Ag-Cu、Cu-AuおよびNiなどが用いられる。また、これらの材料のうちの少なくとも1つを含むナノ粒子、またはナノワイヤーを用いてもよい。導電性を有する有機材料としては、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、カーボンナノチューブ、グラフェン等が挙げられる。特に材料コスト、導電性、製膜性の観点から、CuやAlが好ましい。また、電磁波を反射させるためにはグランド層の表面抵抗値が100Ω/□以下であることが望ましく、この条件を満たすことができればITOやポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)との混合物(PEDOT/PSS)などを用いることによって、透明性を有するリフレクトアレイを作製することもできる。
【0072】
上記材料を用いる形態としては連続膜、メッシュ状、パンチング形状、周期性構造が挙げられる。
【0073】
ここで、メッシュとは、導体の平面に網目状の透孔(開口)が空いた状態をいう。導体がメッシュ状に形成される場合、メッシュの目は方形であってもよく、菱形であってもよい。メッシュの目を方形に形成する場合、メッシュの目は正方形であることが好ましい。メッシュの目が正方形であれば、意匠性が良い。また、自己組織化法によるランダム形状でもよい。ランダム形状にすることでモアレを防ぐことができる。金属をメッシュ状に加工する場合、金属板のパンチング加工、金属板のエッチング等の方法を採用することが可能である。
【0074】
グランド層がメッシュ状である場合や、透明導電材料を使用した場合、リフレクトアレイが可視光透過性を示し、設置後の景観を保つことを可能にする。
【0075】
グランド層がメッシュ状である場合、メッシュの線幅は、5μm以上30μm以下が好ましく、6μm以上15μm以下がより好ましい。メッシュの線間隔は、50μm以上500μm以下が好ましく、100μm以上300μm以下がより好ましい。また、メッシュの線間隔は、動作周波数における波長をλとしたとき、0.5×λ以下であることが好ましく、0.1×λ以下であることがより好ましく、0.01×λ以下であることがさらに好ましい。メッシュの線間隔が0.5×λ以下であれば性能を担保することができる。また、メッシュの線間隔は、0.001×λ以上であってもよい。
【0076】
グランド層の形成方法として、金属材料を用いる場合であれば、スパッタ法や蒸着法などのドライコーティング、金属材料をインキ化することによりグラビアコーティング、ダイコーティングなどのウェットコーティング、めっき処理などの表面処理、等から選択することが可能である。または、グランド層として、金属板を圧延したものを用いてもよい。無機酸化物材料を用いる場合であれば、グランド層11の形成方法として、ドライコーティングを選択することができる。有機材料を用いる場合であれば、グランド層11の形成方法として、ウェットコーティングを選択することができる。また、塗装やスプレー法で形成してもよい。
【0077】
グランド層の形態がめっき処理や蒸着法等で形成された薄膜の場合、リフレクトアレイの可撓性を向上させることが可能であり、それにより曲面での使用やロールtoロールでの生産プロセスを実施することが可能となる。
【0078】
グランド層の形態が薄膜の場合、その厚みは素子パターンと同様に式(9)から算出される表皮深さよりも大きいことが好ましい。
【0079】
また、電磁波の反射効率を高めるため、グランド層による損失を低減させることが挙げられる。そのため、グランド層の表面粗さは小さいほうが好ましい。
【0080】
グランド層の形態が周期性構造である場合、特定の周波数を選択的に反射または透過させる機能が発現し得る。例えば、パッチ状の導電パターンが周期的に配置された構造をグランド層として使用した場合、特定の周波数のみを反射させることが可能となるため、動作周波数以外の周波数を透過させる機能を付与することができる。また、導電材料が存在しない箇所をホールとして周期的に設けた構造を使用した場合、動作周波数を非対称反射させつつ、特定の周波数のみを透過させるリフレクトアレイを設計することが可能である。
【0081】
(支持体)
リフレクトアレイは支持体に設置される。支持体としては、新規にパネルやポールを設置しても構わないし、既存の看板や壁、天井等を用いても構わない。支持体には、リフレクトアレイの角度を上下あるいは左右方向に調節することができる機構を有することが好ましく、さらに、リフレクトアレイの位置を上下左右に動かす機構を有することがより好ましい。支持体にリフレクトアレイを設置し、リフレクトアレイ装置として用いられる。
【0082】
(設置層)
設置層はリフレクトアレイを支持体と固定するための層である。例えば、接着層や粘着層、支持体が金属製の場合マグネットの使用が挙げられる。マグネットを使用した場合、リフレクトアレイの位置や角度を容易に変えることができる。
【0083】
(意匠層)
意匠層は、リフレクトアレイの表面に意匠性を付与するための層である。例えば、壁紙等の建装材に使用する場合では、空間との調和をとるためにさらに意匠層を設けても良い。また、ホワイトボードとして用いる場合には、機能性フィルムを意匠層として使用しても良い。後述の保護層の機能を意匠層に付与しても構わないとする。
【0084】
(保護層)
保護層には、素子パターンやグランド層の酸化劣化や物理的な傷や剥がれを防ぐため、ガスバリア性や水蒸気バリア性、耐水性、耐摩耗性、耐擦傷性を有するフィルムまたはシートの使用が挙げられる。
【0085】
リフレクトアレイの屋内での使用を想定した場合、抗菌性、抗ウイルス性、耐汚染性等を有する保護層の使用が好ましい。また、リフレクトアレイの屋外での使用を想定した場合、耐候性が求められるため、UVA(紫外線吸収剤)やHALS(光安定剤)を含む層を使用しても良い。
【0086】
[評価結果(実施例・比較例)]
実施例1-4、比較例1-4については表1、また、実施例5-7については、表2に結果をまとめた。
加えて、
図12は、実施例1のリフレクトアレイのxy平面における構造を示す図である。ただし、図中の寸法の単位はmmとする。
【表1】
【表2】
【0087】
(比較例1)
素子パターン1およびグランド層3に厚み0.018mmの銅を、誘電体層2に厚み1.564mmのガラス/エポキシ樹脂の複合材料を用いた基本構成のリフレクトアレイ6を構成した。ただし、銅の導電率は5.8×10^7siemens/mとし、誘電体層2の比誘電率の実部は4.5、tanδは0.014とした。
【0088】
動作周波数を4.85GHzとし、狙いの反射特性(目的とする反射特性)をθix=-60°、θrx=0°、θiy=θry=0°に設定し、式(1)を使用して反射制御領域5のx軸方向のサイズLxを71.376mmに決定した。
【0089】
反射制御領域5の分割数を3とし、単位セルのx軸方向およびy軸方向のサイズは23.792mmとした。素子パターンの形状は、xy平面において、2つの方形パッチが直交したクロスパッチとした。ここで、反射制御領域5内の各素子パターンにおいては素子長のみが異なるとし、具体的には素子長はlx1=ly1、lx2=ly2、lx3=ly3とし、素子幅はwx1=wx2=wx3=wy1=wy2=wy3=9.000mmとした。
なお、表1および表2、以降の説明における図および文章において、反射制御領域5内に含まれる単位セルを、単位セル1、単位セル2、…単位セルp(pは1以上分割数n以下の整数)と表し、単位セルpにおいて、x軸方向の素子長をlxp、y軸方向の素子長をlyp、x軸方向の素子幅をwxp、y軸方向の素子幅をwypとする。ただし、lxpとlypが等しい場合には添え字x、yを省略し、wxpとwypが等しい場合には添え字x、yを省略し、単位セルを特定しない場合には添え字pを省略することがある。
【0090】
はじめに、素子長lに対する単位セルの反射位相を、Ansys製の有限要素法解析ソフトウェア(HFSS)を用いて解析した。
図13は、比較例1の設計過程における単位セルの解析結果であり、素子パターンの素子幅をwx=wy=9.000mmとし素子長lを変化させた場合の反射位相を示す図である。素子長lが変化するにつれて反射位相が変化した。なお、
図13において、横軸の素子長lは、x軸方向の素子長lxかつy軸方向の素子長lyを示す。以降の説明においても、素子長lおよび反射位相の図は、
図13と同じ条件を示す。
【0091】
次に、単位セルの解析結果を踏まえ、式(7)のインピーダンス分布に従うよう各単位セルにおける素子長lを決定した。素子長lはそれぞれlx1=ly1=14.750mm、lx2=ly=11.412mm、lx3=ly3=15.237mmとした。ここで決定した各素子パターンの素子長lを寸法誤差無とした。
【0092】
リフレクトアレイ6は、単位セルをx軸方向およびy軸方向に12個×12個で配置しxy平面におけるサイズは285.504mm角とした。y軸と平行の偏波をθix=-60゜、θiy=0゜でリフレクトアレイ6に照射した際の反射特性について、HFSSを用いて解析した。
【0093】
寸法誤差による反射特性への影響を把握するため、切削加工による寸法誤差を想定し、リフレクトアレイ6の各素子パターンの素子長lをそれぞれ0.100mmずつ大きくした場合についても、同様に解析を行った。
【0094】
図14は、比較例1において得られたリフレクトアレイ6の解析結果であり、xz平面における、寸法誤差有/無のリフレクトアレイ6の反射特性を示す図である。ただし、
図14の横軸は反射角度θrx、縦軸はRCS(レーダー反射断面積)とした。RCSは実質的に反射波の強度に対応する値である。寸法誤差無のリフレクトアレイ6では、θix=-60゜で入射した電磁波が所望のθrx=0゜方向に反射し、そのRCSは7.06dBsmであった。一方、寸法誤差有のリフレクトアレイ6においては、θrx=0゜方向への反射が生じたものの、そのRCSは6.87dBsmであり、寸法誤差によるRCSの変化は-0.18dBsmであった。
【0095】
(実施例1)
素子パターン形状以外が比較例1に記載のリフレクトアレイと同様であるリフレクトアレイを用意した。素子パターン形状としては、反射制御領域5内の各素子パターンの素子幅のみが異なるとし、具体的には各素子パターンの素子長はlx1=lx2=lx3=ly1=ly2=ly3=15.000mmとし、同一素子パターン内の素子幅はwx1=wy1、wx2=wy2、wx3=wy3とした。素子幅wに対する単位セルの反射位相および、寸法誤差有/無のリフレクトアレイ6の反射特性をHFSSを使用して解析した。
【0096】
図15は、実施例1の設計過程における単位セルの解析結果であり、素子パターンの素子長をlx=ly=15.000mmとし素子幅wを変化させた場合の反射位相を示す図である。
図15において、横軸の素子幅wは、x軸方向の素子幅wxかつy軸方向の素子幅wyを示す。 以降の説明においても、素子幅wおよび反射位相の図は、
図15と同じ条件を示す。素子幅が変化するにつれて反射位相が変化した。また、素子幅に対する反射位相の傾きは、素子長を変化させた比較例1の
図13の場合と比較し、緩やかであった。例えば、反射位相を120°から-120°に変化するまでに、比較例1においては素子長lをおよそ13.5mmから16mmの間の2.5mmだけ変化させる必要があるのに対し、実施例1においては素子長wをおよそ5mmから11mmの間の6mmだけ変化させる必要がある。これはつまり、同程度の寸法誤差が生じた場合、素子幅を設計パラメータとして用いる本発明の方が、単位セルにおける反射位相の変化幅が少なく、結果としてリフレクトアレイ6としての反射特性の変化が小さくなる。
【0097】
素子幅wはそれぞれwx1=wy1=8.306mm、wx2=wy2=1.305mm、wx3=wy3=9.608mmと決定した。
図16は、実施例1において得られたリフレクトアレイ6の解析結果であり、xz平面における、寸法誤差有/無のリフレクトアレイ6の反射パターンを示す図である。寸法誤差無のリフレクトアレイ6では、θix=-60゜で入射した電磁波が所望のθrx=0゜方向に反射し、そのRCSは7.03dBsmであった。また、寸法誤差有のリフレクトアレイ6においても、θrx=0゜方向への反射が生じ、そのRCSは7.02dBsmであった。したがって、寸法誤差によるRCSの変化は-0.02dBsmであり、比較例1に記載した素子長を設計パラメータとしたリフレクトアレイ6と比較し、寸法誤差による反射強度の低下を抑えることができた。
【0098】
なお、設計方法について具体的に説明する。ここで説明するのは、同一の反射制御領域がx軸方向およびy軸方向に複数並べられたリフレクトアレイの設計方法である。
(ステップ1)まず、狙いとする反射特性(動作周波数、入射角度および反射角度)を設定する。
(ステップ2)続いて、式(1)および式(2)を用いて、反射制御領域のサイズLxおよびLyを決定する。x軸方向にのみ非対称反射をする場合は式(1)によってLxを決定し、Lyが任意のサイズとする。また、y軸方向にのみ非対称反射をする場合、式(2)によってLyを決定し、Lxは任意のサイズとする。
(ステップ3)続いて、反射制御領域のサイズLxをn分割、Lyをm分割する。単位セルのサイズが決定する。
(ステップ4)続いて、単位セルに収まる範囲で、素子パターンの素子長lxおよびlyを決定する。素子パターンは単位セル内に偏りなく均等に配置されるため、結果として、素子パターンの間のギャップgxおよびgyも決定される。
(ステップ5)続いて、素子幅wを設計パラメータとして単位セルの反射位相を解析する。
図15に示されるように、素子パターンの素子幅wxおよびwyを設計パラメータとして反射位相を導出し、単位セルにおける素子幅と反射位相の間の関係を示す解析結果を取得する。
(ステップ6)続いて、狙いとする反射制御領域の反射特性を実現するための理想的な反射位相またはインピーダンスを式(3)から式(8)を用いて算出し、上記解析結果に基づいて所望の反射位相またはインピーダンスを実現する素子幅wを選択する。実施例1の場合では3つの素子幅が選択され、3つの単位セルを含む反射制御領域が設定される。
(ステップ7)続いて、反射制御領域を少なくとも1つ含むよう、リフレクトアレイを形成する。リフレクトアレイについて反射特性を解析する。
(ステップ8)なお、ステップ7の解析結果を踏まえ、目的の反射角度のRCSがさらに高まるように、また、目的角度以外のRCSが小さくなるよう、最適化手法を用いて素子幅wx、wyをさらに微調整することも可能である。
【0099】
(比較例2)
素子パターン1およびグランド層3に厚み0.018mmの銅を、誘電体層2に厚み0.764mmのガラス/フッ素樹脂の複合材料を用いた基本構成のリフレクトアレイ6を構成した。ただし、銅の導電率は5.8×10^7siemens/mとし、誘電体層2の比誘電率の実部は2.6、tanδは0.0025とした。
【0100】
動作周波数を27.2GHzとし、狙いの反射特性をθix=33°、θrx=0°θiy=θry=0°に設定し、式(1)を使用して反射制御領域5のx軸方向のサイズLxを20.238mmに決定した。
【0101】
反射制御領域6の分割数を3とし、単位セルのx軸方向およびy軸方向のサイズは6.746mmとした。素子パターンの形状は、xy平面において、2つの方形パッチが直交したクロスパッチとした。ここで、反射制御領域5内の各素子パターンは素子長のみが異なるとし、具体的には素子長はlx1=ly1、lx2=ly2、lx3=ly3とし、素子幅はwx1=wx2=wx3=wy1=wy2=wy3=1.000mmとした。
【0102】
はじめに、素子長lに対する単位セルの反射位相を、HFSSを用いて解析した。
図17は、比較例2の設計過程における単位セルの解析結果であり、素子パターンの素子幅をwx=wy=1.000mmとし素子長lを変化させた場合の反射位相を示す図である。素子長が変化するにつれて反射位相が変化した。
【0103】
次に、単位セルの解析結果を踏まえ、式(7)のインピーダンス分布に従うよう各単位セルにおける素子長lを決定した。素子長lはそれぞれ、lx1=ly1=3.390mm、lx2=ly2=3.709mm、lx3=ly3=3.067mmとした。ここで決定した各素子パターンの素子長lを寸法誤差無とした。
【0104】
リフレクトアレイ6は、単位セルをx軸方向およびy軸方向に9個×9個で配置しxy平面におけるサイズは60.714mm角とした。y軸と平行の偏波をθix=33゜、θiy=0゜でリフレクトアレイ6に照射した際の反射特性について、HFSSを用いて解析した。
【0105】
寸法誤差による反射特性への影響を把握するため、切削加工による寸法誤差を想定し、リフレクトアレイ6の各素子パターンの素子長lをそれぞれ0.100mmずつ大きくした場合についても、同様に解析を行った。
【0106】
図18は、比較例2において得られたリフレクトアレイ6の解析結果であり、xz平面における、寸法誤差有/無のリフレクトアレイ6の反射特性を示す図である。寸法誤差無のリフレクトアレイ6では、θix=33゜で入射した電磁波が所望のθrx=0゜方向に反射し、そのRCSは0.22dBsmであった。一方、寸法誤差有のリフレクトアレイ6においては、θrx=0゜方向への反射が生じたものの、そのRCSは-0.71dBsmであり、寸法誤差によるRCSの変化は-0.94dBsmであった。
【0107】
(実施例2)
素子パターン形状以外が比較例2に記載のリフレクトアレイと同様であるリフレクトアレイを用意した。素子パターン形状としては、反射制御領域6内の各素子パターンの素子幅のみが異なるとし、具体的には各素子パターンの素子長はlx1=lx2=lx3=ly1=ly2=ly3=3.250mmとし、素子幅はwx1=wy1、wx2=wy2、wx3=wy3とした。素子幅wに対する単位セルの反射位相および、寸法誤差有/無のリフレクトアレイの反射特性をHFSSを使用して解析した。
【0108】
図19は、実施例2の設計過程における単位セルの解析結果であり、素子パターンの素子長をlx=ly=3.250mmとし素子幅wを変化させた場合の反射位相を示す図である。素子幅が変化するにつれて反射位相が変化した。また、素子幅に対する反射位相の傾きは、素子長を変化させた比較例2の
図17の場合と比較し、緩やかであった。例えば、反射位相を60°から-120°に変化するまでに、比較例2においては素子長lをおよそ3.2mmから3.5mmの間の0.3mmだけ変化させる必要があるのに対し、実施例2においては素子長wをおよそ0.6mmから2.4mmの間の1.8mmだけ変化させる必要がある。これはつまり、同程度の寸法誤差が生じた場合、素子幅を設計パラメータとして用いる実施例2の方が、単位セルにおける反射位相の変化幅が少なく、結果としてリフレクトアレイ6としての反射特性の変化が小さくなる。
【0109】
素子幅はそれぞれwx1=wy1=1.582mm、wx2=wy2=2.955mm、wx3=wy3=0.319mmと決定した。
図20は、実施例2において得られたリフレクトアレイ6の解析結果であり、xz平面における、寸法誤差有/無のリフレクトアレイ6の反射パターンを示す図である。寸法誤差無のリフレクトアレイ6では、θix=33゜で入射した電磁波が所望のθrx=0゜方向に反射し、そのRCSは0.26dBsmであった。また、寸法誤差有のリフレクトアレイ6においても、θrx=0゜方向への反射が生じ、そのRCSは0.18dBsmであった。したがって、寸法誤差によるRCSの変化は-0.08dBsmであり、比較例2に記載した素子長を設計パラメータとしたリフレクトアレイ6と比較し、寸法誤差による反射強度の低下を抑えることができた。
【0110】
(比較例3)
素子パターン1およびグランド層3に厚み0.018mmの銅を、誘電体層2に厚み0.200mmのPTFEを用いた基本構成のリフレクトアレイ6を構成した。ただし、銅の導電率は5.8×10^7siemens/mとし、誘電体層2の比誘電率の実部は2.06、tanδは0.0007とした。
【0111】
動作周波数を60GHzとし、狙いの反射特性をθix=0°、θrx=45°θiy=θry=0°に設定し、式1を使用して反射制御領域5のx軸方向のサイズLxを7.065mmに決定した。
【0112】
反射制御領域5の分割数を3とし、単位セルのx軸方向およびy軸方向のサイズは2.355mmとした。素子パターンの形状は、xy平面において、2つの方形パッチが直交したクロスパッチとした。ここで、反射制御領域5内の各素子パターンは素子幅のみが異なるとし、具体的には素子長はlx1=ly1、lx2=ly2、lx3=ly3とし、素子幅はwx1=wx2=wx3=wy1=wy2=wy3=0.500mmとした。
【0113】
はじめに、素子長lに対する単位セルの反射位相を、HFSSを用いて解析した。
図21は、比較例3の設計過程における単位セルの解析結果であり、素子パターンの素子幅をwx=wy=0.500mmとし素子長lを変化させた場合の反射位相を示す図である。素子長が変化するにつれて反射位相が変化した。
【0114】
次に、単位セルの解析結果を踏まえ、式(7)のインピーダンス分布に従うよう各単位セルにおける素子長lを決定した。素子長lはそれぞれlx1=ly1=1.844mm、lx2=ly2=1.581mm、lx3=ly3=1.753mmとした。ここで決定した各素子パターンの素子長lを寸法誤差無とした。
【0115】
リフレクトアレイ6は、単位セルをx軸方向およびy軸方向に27個×27個で配置しxy平面におけるサイズは63.585mm角とした。y軸と平行の偏波をθix=0゜、θiy=0゜でリフレクトアレイ6に照射した際の反射特性について、HFSSを用いて解析した。
【0116】
寸法誤差による反射特性への影響を把握するため、切削加工による寸法誤差を想定し、上記リフレクトアレイ6の各素子パターンの素子長lをそれぞれ0.100mmずつ大きくした場合についても、同様に解析を行った。
【0117】
図22は、比較例3において得られたリフレクトアレイ6の解析結果であり、xz平面における、寸法誤差有/無のリフレクトアレイ6の反射特性を示す図である。寸法誤差無のリフレクトアレイ6では、θix=0゜で入射した電磁波が所望のθrx=45゜方向に反射し、そのRCSは7.40dBsmであった。一方、寸法誤差有のリフレクトアレイにおいては、θrx=0゜方向への反射が生じたものの、そのRCSは5.12dBsmであり、寸法誤差によるRCSの変化は-2.28dBsmであった。
【0118】
(実施例3)
素子パターン形状以外が比較例3に記載のリフレクトアレイと同様であるリフレクトアレイを用意した。素子パターン形状としては、反射制御領域5内の各素子パターンの素子幅のみが異なるとし、具体的には各素子パターンの素子長はlx1=lx2=lx3=ly1=ly2=ly3=1.700mmとし、素子幅はwx1=wy1、wx2=wy2、wx3=wy3とした。素子幅wに対する単位セルの反射位相および、寸法誤差有/無のリフレクトアレイ6の反射特性をHFSSを使用して解析した。
【0119】
図23は、実施例3の設計過程における単位セルの解析結果であり、素子パターンの素子長をlx=ly=1.700mmとし素子幅wを変化させた場合の反射位相を示す図である。素子幅が変化するにつれて反射位相が変化した。また、素子幅に対する反射位相の傾きは、素子長を変化させた比較例3の
図21の場合と比較し、緩やかであった。例えば、反射位相を120°から-120°に変化するまでに、比較例3においては素子長lをおよそ1.5mmから1.8mmの間の0.3mmだけ変化させる必要があるのに対し、実施例3においては素子長wをおよそ0.1mmから1.5mmの間の1.4mmだけ変化させる必要がある。これはつまり、同程度の寸法誤差が生じた場合、素子幅を設計パラメータとして用いる実施例3の方が、単位セルにおける反射位相の変化幅が少なく、結果としてリフレクトアレイ6としての反射特性の変化が小さくなる。
【0120】
素子幅はwx1=wy1=1.362mm、wx2=wy2=0.142mm、wx3=wy3=0.857mmとした。
図24は、実施例3において得られたリフレクトアレイ6の解析結果であり、xz平面における、寸法誤差有/無のリフレクトアレイ6の反射パターンを示す図である。寸法誤差無のリフレクトアレイ6では、θix=0゜で入射した電磁波が所望のθrx=45゜方向に反射し、そのRCSは7.46dBsmであった。また、寸法誤差有のリフレクトアレイ6においても、θrx=0゜方向への反射が生じ、そのRCSは7.46dBsmであった。したがって、寸法誤差によるRCSの変化は0.00dBsmであり、比較例3に記載した素子長を設計パラメータとしたリフレクトアレイ6と比較し、寸法誤差による反射強度の低下を抑えることができた。
【0121】
(比較例4)
素子パターン1およびグランド層3に厚み0.002mmの銅を、誘電体層2に厚み0.050mmのPETを用いた基本構成のリフレクトアレイ6を構成した。ただし、銅の導電率は5.8×10^7siemens/mとし、誘電体層2の比誘電率の実部は3.03、tanδは0.00476とした。
【0122】
動作周波数を100GHzとし、狙いの反射特性をθix=0°、θrx=45°、θiy=θry=0°に設定し、式1を使用して反射制御領域5のx軸方向のサイズLxを4.240mmに決定した。
【0123】
反射制御領域5の分割数を4とし、単位セルのx軸方向およびy軸方向のサイズは1.060mmとした。素子パターンの形状は、xy平面において、2つの方形パッチが直交したクロスパッチとした。ここで、反射制御領域5内の各素子パターンは素子長のみが異なるとし、具体的には素子長はlx1=ly1、lx2=ly2、lx3=ly3、lx4=ly4とし、素子幅はwx1=wx2=wx3=wy1=wy2=wy3=0.400mmとした。
【0124】
はじめに、素子長lに対する単位セルの反射位相を、HFSSを用いて解析した。
図25は、比較例4の設計過程のおける単位セルの解析結果であり、素子パターンの素子幅をwx=wy=0.400mmとし素子幅lを変化させた場合の反射位相を示す図である。素子長が変化するにつれて反射位相が変化した。
【0125】
次に、単位セルの解析結果を踏まえ、式(7)のインピーダンス分布に従うよう各単位セルにおける素子長lを決定した。素子長lはそれぞれ、lx1=ly1=0.929mm、lx2=ly2=0.959mm、lx3=ly3=0.862mm、lx4=ly4=0.910mmとした。ここで決定した各素子パターンの素子長lを寸法誤差無とした。
【0126】
リフレクトアレイ6は、単位セルをx軸方向およびy軸方向に12個×12個で配置しxy平面におけるサイズは12.720mm角とした。y軸と平行の偏波をθix=0゜、θiy=0゜でリフレクトアレイ6に照射した際の反射特性について、HFSSを用いて解析した。
【0127】
寸法誤差による反射特性への影響を把握するため、切削加工による寸法誤差を想定し、リフレクトアレイ6の各素子パターンの素子長lをそれぞれ0.100mmずつ大きくした場合についても、同様に解析を行った。
【0128】
図26は、比較例4において得られたリフレクトアレイ6の解析結果であり、xz平面における、寸法誤差有/無のリフレクトアレイ6の反射特性を示す図である。寸法誤差無のリフレクトアレイ6では、θix=0゜で入射した電磁波が所望のθrx=45゜方向に反射し、そのRCSは-17.5dBsmであった。一方、寸法誤差有のリフレクトアレイ6においては、θrx=0゜方向への反射が生じたものの、そのRCSは-29.9dBsmであり、寸法誤差によるRCSの変化は-12.34dBsmであった。
【0129】
(実施例4)
素子パターン形状以外が比較例4に記載のリフレクトアレイと同様であるリフレクトアレイを用意した。素子パターン形状としては、反射制御領域5内の各素子パターンの素子幅のみが異なるとし、具体的には各素子パターンの素子長はlx1=lx2=lx3=ly1=ly2=ly3=0.900mmとし、素子幅はwx1=wy1、wx2=wy2、wx3=wy3、wx4=wy4とした。素子幅wに対する単位セルの反射位相および、寸法誤差有/無のリフレクトアレイ6の反射特性をHFSSを使用して解析した。
【0130】
図27は、実施例4の設計過程における単位セルの解析結果であり、素子パターンの素子長をlx=ly=0.900mmとし素子幅wを変化させた場合の反射位相を示す図である。素子幅が変化するにつれて反射位相が変化した。また、素子幅に対する反射位相の傾きは、素子長を変化させた比較例4の
図25の場合と比較し、緩やかであった。例えば、反射位相を120°から-120°に変化するまでに、比較例4においては素子長lをおよそ0.85mmから0.95mmの間の0.1mmだけ変化させる必要があるのに対し、実施例4においては素子長wをおよそ0.2mmから0.65mmの間の0.45mmだけ変化させる必要がある。これはつまり、同程度の寸法誤差が生じた場合、素子幅を設計パラメータとして用いる実施例4の方が、単位セルにおける反射位相の変化幅が少なく、結果としてリフレクトアレイ6としての反射特性の変化が小さくなる。
【0131】
素子幅はwx1=wy1=0.532mm、wx2=wy2=0.656mm、wx3=wy3=0.173mm、wx4=wy4=0.456mmとした。
図28は、実施例4において得られたリフレクトアレイ6の解析結果であり、xz平面における、寸法誤差有/無のリフレクトアレイ6の反射パターンを示す図である。寸法誤差無のリフレクトアレイ6では、θix=0゜で入射した電磁波が所望のθrx=45゜方向に反射し、そのRCSは-17.4dBsmであった。また、寸法誤差有のリフレクトアレイにおいても、θrx=0゜方向への反射が生じ、そのRCSは-19.9dBsmであった。したがって、寸法誤差によるRCSの変化は-2.51dBsmであり、比較例4に記載した素子長を設計パラメータとしたリフレクトアレイと比較し、寸法誤差による反射強度の低下を抑えることができた。
【0132】
(実施例5)
素子パターン1およびグランド層3に厚み0.018mmの銅を、誘電体層2に厚み0.764mmのガラス/フッ素樹脂の複合材料を用いた基本構成に対し、素子パターン側に0.500mmの空隙を介して
図2(c)の方式で厚み0.098mmの意匠層10を積層し、リフレクトアレイ6cを構成した。ただし、銅の導電率は5.8×10^7siemens/mとし、誘電体層2の比誘電率の実部は2.6、tanδは0.0025とし、意匠層10の比誘電率の実部は2.70、tanδは0.0060とした。
【0133】
動作周波数を27.2GHzとし、狙いの反射特性をθix=33°、θrx=0°θiy=θry=0°に設定し、式1を使用して反射制御領域5のx軸方向のサイズLxを20.238mmに決定した。
【0134】
反射制御領域5の分割数を3とし、単位セルのx軸方向およびy軸方向のサイズは6.746mmとした。素子パターンの形状は、xy平面において、2つの方形パッチが直交したクロスパッチとした。ここで、反射制御領域5内の各素子パターンは素子幅のみが異なるとし、具体的には素子長はlx1=lx2=lx3=ly1=ly2=ly3=3.250mmとし、素子幅はwx1=wy1=1.582mm、wx2=wy2=2.955mm、wx3=wy3=0.319mmとした。
【0135】
リフレクトアレイ6cは、単位セルをx軸方向およびy軸方向に9個×9個で配置しxy平面におけるサイズは60.714mm角とした。y軸と平行の偏波をθix=33゜、θiy=0゜でリフレクトアレイ6cに照射した際の反射特性について、HFSSを用いて解析した。
【0136】
図29は、実施例5において得られたリフレクトアレイ6cの解析結果であり、xz平面における、リフレクトアレイ6cの反射特性を示す図である。θix=33゜で入射した電磁波が所望のθrx=0゜方向に反射し、そのRCSは0.23dBsmであった。
【0137】
(実施例6)
素子パターン1およびグランド層3に厚み0.018mmの銅を、誘電体層2に厚み0.764mmのガラス/フッ素樹脂の複合材料を用いた基本構成に対し、
図2(a)の方式で厚み0.060mmのポリイミド系の保護層8を積層し、リフレクトアレイ6aを構成した。ただし、銅の導電率は5.8×10^7siemens/mとし、誘電体層の比誘電率の実部は2.6、tanδは0.0025とし、保護層8の比誘電率の実部は3.23、tanδは0.0144とした。
【0138】
動作周波数を27.2GHzとし、狙いの反射特性をθix=33°、θrx=0°θiy=θry=0°に設定し、式1を使用して反射制御領域5のx軸方向のサイズLxを20.238mmに決定した。
【0139】
反射制御領域5の分割数を3とし、単位セルのx軸方向およびy軸方向のサイズは6.746mmとした。素子パターンの形状は、xy平面において、2つの方形パッチが直交したクロスパッチとした。ここで、反射制御領域5内の各素子パターンは素子幅のみが異なるとし、具体的には素子長はlx1=lx2=lx3=ly1=ly2=ly3=3.000mmとし、素子幅はwx1=wy1=1.703mm、wx2=wy2=2.986mm、wx3=wy3=0.075mmとした。
【0140】
リフレクトアレイ6aは、単位セルをx軸方向およびy軸方向に9個×9個で配置しxy平面におけるサイズは60.714mm角とした。y軸と平行の偏波をθix=33゜、θiy=0゜でリフレクトアレイに照射した際の反射特性について、HFSSを用いて解析した。
【0141】
図30は、実施例6において得られたリフレクトアレイ6aの解析結果であり、xz平面における、リフレクトアレイ6aの反射特性を示す図である。θix=33゜で入射した電磁波が所望のθrx=0゜方向に反射し、そのRCSは0.17dBsmであった。
【0142】
(実施例7)
素子パターンおよびグランド層に厚み0.002mmの銅を、誘電体層に厚み0.050mmのポリスチレンを用いた基本構成のリフレクトアレイ6を構成した。ただし、銅の導電率は5.8×10^7siemens/mとし、誘電体層の比誘電率の実部は2.47、tanδは0.000644とした。
【0143】
動作周波数を28GHzとし、狙いの反射特性をθix=0°、θrx=45°θiy=θry=0°に設定し、式(1)を使用して反射制御領域5のx軸方向のサイズLxを15.140mmに決定した。
【0144】
反射制御領域5の分割数を4とし、単位セルのx軸方向およびy軸方向のサイズは3.785mmとした。素子パターンの形状は、xy平面において、2つの方形パッチが直交したクロスパッチとした。ここで、反射制御領域5内の各素子パターンは素子幅のみが異なるとし、具体的には素子長はlx1=lx2=lx3=ly1=ly2=ly3=3.450mmとし、素子幅はwx1=wy1=2.697mm、wx2=wy2=2.892mm、wx3=wy3=2.460mm、wx4=wy4=2.639mmとした。
【0145】
リフレクトアレイ6は、単位セルをx軸方向およびy軸方向に16個×16個で配置しxy平面におけるサイズは60.560mm角とした。y軸と平行の偏波をθix=0゜、θiy=0゜でリフレクトアレイ6に照射した際の反射特性について、HFSSを用いて解析した。
【0146】
図31は、実施例7において得られたリフレクトアレイ6の解析結果であり、xz平面における、リフレクトアレイ6の反射特性を示す図である。θix=0゜で入射した電磁波が所望のθrx=45゜方向に反射し、そのRCSは-5.91dBsmであった。
【0147】
(作用・効果)
素子幅を設計パラメータとすることによって、設計パラメータに基づく位相変化を小さくすることができ、寸法誤差に対する反射特性の低下を抑制することができる。結果として、リフレクトアレイの良品率を向上させることができる。
【0148】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0149】
[その他の実施形態]
本発明の内容となり得る態様を以下に述べる、ただしこれに限られるものではない。
(態様1)
少なくとも素子パターン、誘電体層、グランド層をこの順に積層したリフレクトアレイであって、
前記リフレクトアレイは少なくとも1つの反射制御領域を含み、
前記反射制御領域は少なくとも2つの単位セルを有し、
前記単位セルには前記素子パターンが1つ配置され、
前記素子パターンは、xy平面において2つの方形パッチが直交したクロスパッチを含み、
前記反射制御領域内において、前記素子パターンのx軸方向の幅である第一素子幅wxまたは/かつy軸方向の幅である第二素子幅wyは、前記少なくとも2つの単位セルそれぞれに配置される素子パターン毎に異なることを特徴とするリフレクトアレイ。
(態様2)
前記素子パターンにおいて、前記クロスパッチは前記2つの方形パッチは重心を共通にして直交しており、前記素子パターンの前記xy平面における形状がx軸およびy軸に対して線対称であることを特徴とする態様1に記載のリフレクトアレイ。
(態様3)
前記xy平面において、前記素子パターンの重心と前記単位セルの重心が同じことを特徴とする態様1または2に記載のリフレクトアレイ。
(態様4)
x軸方向の前記素子パターン間のギャップgxが等しいことを特徴とする態様1から3のいずれか1つに記載のリフレクトアレイ。
(態様5)
y軸方向の前記素子パターン間のギャップgyが等しいことを特徴とする態様1から4のいずれか1つに記載のリフレクトアレイ。
(態様6)
x軸方向の前記素子パターン間のギャップgxが等しく、かつy軸方向の前記素子パターン間のギャップgyが等しく、かつgyとgyが等しいことを特徴とする態様1から5のいずれか1つに記載のリフレクトアレイ。
(態様7)
x軸方向の前記素子パターン間のギャップgxが等しく、かつy軸方向の前記素子パターン間のギャップgyが等しく、かつgyとgyが異なることを特徴とする態様1から6のいずれか1つに記載のリフレクトアレイ。
(態様8)
前記素子パターンはクロスパッチによって構成される、態様1から7のいずれか1つに記載のリフレクトアレイ。
(態様9)
前記素子パターンが前記xy平面において前記クロスパッチおよび、その周りを囲む円環からなる態様1から8のいずれか1つに記載のリフレクトアレイ。
(態様10)
前記素子パターンが前記xy平面においてエルサレムクロス形状からなる態様1から9のいずれか1つに記載のリフレクトアレイ。
(態様11)
意匠層を備える態様1から10のいずれか1つに記載のリフレクトアレイ。
(態様12)
保護層を備える態様1から11のいずれか1つに記載のリフレクトアレイ。
(態様13)
支持体に、態様1から12のいずれか1つに記載のリフレクトアレイを設けたリフレクトアレイ装置。
(態様14)
少なくとも素子パターン、誘電体層、グランド層をこの順に積層したリフレクトアレイの設計方法であって、
前記リフレクトアレイは少なくとも1つの反射制御領域を含み、
前記反射制御領域は少なくとも2つの単位セルを有し、
前記単位セルには前記素子パターンが1つ配置され、
前記素子パターンは、xy平面において2つの方形パッチが直交したクロスパッチを含み、
前記素子パターンのx軸方向の幅である第一素子幅wxまたは/かつy軸方向の幅である第二素子幅wyは、前記素子パターンの反射特性のシミュレーションにおいて、前記第一素子幅wxおよび前記第二素子幅wyを設計パラメータとして導出した反射位相に基づいて設定される、
ることを特徴とするリフレクトアレイの設計方法。
【符号の説明】
【0150】
1、11―1n、1d1―1d3、1e1―1e3、1a―1c、1x
1―1x
n、1y
1―1y
n 素子パターン、
2 誘電体層、
3 グランド層、
4、41-4n、4a―4c、4x
1-4x
n、4y
1-4y
n 単位セル、
5、5a―5h、5x、5y 反射制御領域、
6、6a―6h リフレクトアレイ、
7 機能層、
8 保護層、
9 接着層、
10 意匠層、
11 設置層
【要約】
【課題】本発明では、良品率を向上させる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】代表的な本発明のリフレクトアレイの一つは、少なくとも素子パターン、誘電体層、グランド層をこの順に積層したリフレクトアレイであって、前記リフレクトアレイは少なくとも1つの反射制御領域を含み、前記反射制御領域は少なくとも2つの単位セルを有し、前記単位セルには前記素子パターンが1つ配置され、前記素子パターンは、xy平面において2つの方形パッチが直交したクロスパッチを含み、前記反射制御領域内において、前記素子パターンのx軸方向の幅である第一素子幅wxまたは/かつy軸方向の幅である第二素子幅wyは、前記少なくとも2つの単位セルそれぞれに配置される素子パターン毎に異なることを特徴とする。
【選択図】
図1