(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】光走査装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20231114BHJP
G02B 26/12 20060101ALI20231114BHJP
B41J 2/47 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G02B26/10 F
G02B26/12
B41J2/47 101D
(21)【出願番号】P 2023502215
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2022003372
(87)【国際公開番号】W WO2022181208
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2021027449
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真悟
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-044966(JP,A)
【文献】特開2004-109333(JP,A)
【文献】特開2004-012596(JP,A)
【文献】特開2007-025498(JP,A)
【文献】特開2007-249003(JP,A)
【文献】特開2015-219447(JP,A)
【文献】特開2018-120177(JP,A)
【文献】特開2015-191095(JP,A)
【文献】特開2010-020238(JP,A)
【文献】特開2006-078725(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0034790(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10,26/12
B41J 2/47
G02B 7/00
G03G 15/01,15/04
H04N 1/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の像担持体を露光する光走査装置であって、
光源が設けられたハウジングと、
少なくとも1つの反射ミラーを有し、前記光源から出射され基準レンズを通過した光を前記像担持体に導く基準導光部と、
前記基準導光部よりも多い前記反射ミラーを有し、前記光源から出射され従位レンズを通過した光を前記像担持体に導く従位導光部と、
前記基準レンズを保持し、主走査方向と交差する副走査方向に撓んだ前記基準レンズに接触可能に設けられた基準迎え部を有する基準保持構造と、
前記従位レンズを保持し、副走査方向に撓んだ前記従位レンズに接触可能に設けられた従位迎え部と、前記従位レンズを押圧することで前記従位レンズの撓みを調整する撓み調整機構と、を有する従位保持構造と、を備え、
前記基準レンズと前記従位レンズとは、前記基準迎え部に対する前記基準レンズの撓み方向と、前記従位迎え部に対する前記従位レンズの撓み方向と、が一致するように配置され、
前記基準レンズと前記従位レンズとに撓みが無いと仮定した場合、前記従位迎え部と前記従位レンズとの間の最短距離の絶対値は、前記基準迎え部と前記基準レンズとの間の最短距離の絶対値以上に設定されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記基準レンズと前記従位レンズとに撓みがある場合、前記基準レンズは前記基準迎え部に接近するように撓んだ状態で設けられ、前記従位レンズは前記従位迎え部に接近するように撓んだ状態で設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記ハウジングは、副走査方向に対向する底部と天部と、を有し、
前記基準迎え部は、前記底部の側で前記基準レンズの主走査方向の中央部に接触可能に設けられ、
前記基準保持構造は、
前記底部の側に設けられ、前記基準レンズの主走査方向の両端部を支持する一対の基準支持部と、
前記基準レンズを一対の前記基準支持部に押し付ける一対の基準付勢部材と、を有し、
前記従位迎え部および前記撓み調整機構は、前記天部の側で前記従位レンズの主走査方向の中央部に接触可能に設けられ、
前記従位保持構造は、
前記従位レンズを挟んで前記撓み調整機構とは反対側に設けられ、前記従位レンズの主走査方向の両端部を支持する一対の従位支持部と、
前記従位レンズを一対の前記従位支持部に押し付ける一対の従位付勢部材と、
前記撓み調整機構による押圧力とは反対方向に前記従位レンズを押圧する押圧部材と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記撓み調整機構は、前記従位レンズの主走査方向の中央部に接触可能な調整ネジであり、前記天部を通って操作可能であることを特徴とする請求項3に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記従位レンズは、光軸に沿って突出した凸部を有し、
前記従位迎え部は、前記従位レンズを保持するホルダーに形成された溝であって、
前記凸部は、前記従位迎え部に対して副走査方向に移動可能に係合することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記凸部は、前記従位迎え部に対して走査方向に移動不能に係合することを特徴とする請求項5に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記光源と前記基準導光部及び前記従位導光部との間において前記底部に配置され、前記光源から出射された光が入射するfθレンズを更に備え、
前記光源から前記従位導光部に向けて出射された光は、前記光源から前記基準導光部へ向けて出射された光よりも、前記底部に近い側で前記fθレンズを通過することを特徴とする請求項3に記載の光走査装置。
【請求項8】
請求項1に記載の光走査装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の像担持体を露光する光走査装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において、複数の感光体ドラム(像担持体)を露光する走査光学装置が知られている(特許文献1)この走査光学装置には、感光体ドラム上での走査線の撓み(ボウ)を調整するための調整部が設けられている。調整部では調整ねじをねじ込んで第2レンズを弓状に撓ませることで、ボウ調整が成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調整された第2レンズの撓み(歪み)は、所謂クリープ現象によって時間の経過とともに変化(クリープ変化)する。クリープ現象による第2レンズの変形量は、第2レンズの調整量が大きいほど増大する。
【0005】
クリープ変化を防止するには、例えば、第2レンズを、クリープ変形に対抗可能な強度を持ったホルダーに保持させることが考えられる。しかしながら、高い強度を有するホルダーを使用した場合、製造コストの増加や装置の大型化という別の問題が発生する。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、クリープ変形を低減させることができる光走査装置および画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光走査装置は、複数の像担持体を露光する光走査装置であって、光源が設けられたハウジングと、少なくとも1つの反射ミラーを有し、前記光源から出射され基準レンズを通過した光を前記像担持体に導く基準導光部と、前記基準導光部よりも多い前記反射ミラーを有し、前記光源から出射され従位レンズを通過した光を前記像担持体に導く従位導光部と、前記基準レンズを保持し、主走査方向と交差する副走査方向に撓んだ前記基準レンズに接触可能に設けられた基準迎え部を有する基準保持構造と、前記従位レンズを保持し、副走査方向に撓んだ前記従位レンズに接触可能に設けられた従位迎え部と、前記従位レンズを押圧することで前記従位レンズの撓みを調整する撓み調整機構と、を有する従位保持構造と、を備え、前記基準レンズと前記従位レンズとは、前記基準迎え部に対する前記基準レンズの撓み方向と、前記従位迎え部に対する前記従位レンズの撓み方向と、が一致するように配置され、前記基準レンズと前記従位レンズとに撓みが無いと仮定した場合、前記従位迎え部と前記従位レンズとの間の最短距離の絶対値は、前記基準迎え部と前記基準レンズとの間の最短距離の絶対値以上に設定されていることを特徴とする。
【0008】
この場合、前記基準レンズと前記従位レンズとに撓みがある場合、前記基準レンズは前記基準迎え部に接近するように撓んだ状態で設けられ、前記従位レンズは前記従位迎え部に接近するように撓んだ状態で設けられてもよい。
【0009】
この場合、前記ハウジングは、副走査方向に対向する底部と天部と、を有し、前記基準迎え部は、前記底部の側で前記基準レンズの主走査方向の中央部に接触可能に設けられ、前記基準保持構造は、前記底部の側に設けられ、前記基準レンズの主走査方向の両端部を支持する一対の基準支持部と、前記基準レンズを一対の前記基準支持部に押し付ける一対の基準付勢部材と、を有し、前記従位迎え部および前記撓み調整機構は、前記天部の側で前記従位レンズの主走査方向の中央部に接触可能に設けられ、前記従位保持構造は、前記従位レンズを挟んで前記撓み調整機構とは反対側に設けられ、前記従位レンズの主走査方向の両端部を支持する一対の従位支持部と、前記従位レンズを一対の前記従位支持部に押し付ける一対の従位付勢部材と、前記撓み調整機構による押圧力とは反対方向に前記従位レンズを押圧する押圧部材と、を有してもよい。
【0010】
この場合、前記従位レンズは、光軸に沿って突出した凸部を有し、前記従位迎え部は、前記従位レンズを保持するホルダーに形成された溝であって、前記凸部は、前記従位迎え部に対して副走査方向に移動可能に係合してもよい。
【0011】
本発明の画像形成装置は、上記光走査装置を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基準導光部に入射する光線を基準とし、撓み調整機構により従位レンズの撓みを調整することで、複数の走査光の形状を容易に合わせこむことができる。さらに、基準レンズの撓み以上に従位レンズを撓ませることが可能になるため、基準レンズを基準とした従位レンズの撓み調整を適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部の概略を示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る光走査装置の内部構造を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る光走査装置の内部構造を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る光走査装置のレンズを示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る光走査装置の内部構造の一部を示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る光走査装置であって、基準レンズおよび基準保持構造の概略を示す側面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る光走査装置の従位レンズがホルダーに保持された状態を示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る光走査装置であって、従位レンズおよび従位保持構造の概略を示す側面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る光走査装置であって、ポリゴンミラーで偏向される光の概略を示す説明図である。
【
図10】4つの感光体ドラム上における走査光の撓み(Bow)を示す説明図である。
【
図11】本発明の一実施形態の変形例に係る光走査装置であって、基準レンズおよび基準保持構造の概略を示す側面図である。
【
図12】本発明の一実施形態の変形例に係る光走査装置であって、従位レンズおよび従位保持構造の概略を示す側面図である。
【
図13】本発明の一実施形態の他の変形例に係る光走査装置の内部構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面に示すFr、Rr、L、R、U、Dは、前、後、左、右、上、下を示している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0015】
図1を参照して、第1実施形態に係る画像形成装置1について説明する。
図1は画像形成装置1の内部の概略を示す正面図である。
【0016】
画像形成装置1は、電子写真方式で形成したフルカラーのトナー像を用紙Pに転写して画像形成するカラープリンターである。画像形成装置1は、略直方体状の外観を構成する装置本体2を備えている。装置本体2の下部には用紙Pを収容するカセット3が着脱可能に設けられ、装置本体2の上面には画像形成された用紙Pが排出される排紙トレイ4が設けられている。排紙トレイ4の下方には、4色(マゼンタ,シアン,イエロー,ブラック)の補給用のトナー(現像剤)を収容した4つのトナーコンテナ5が着脱可能に装着されている。装置本体2の内部には、用紙Pをカセット3から排紙トレイ4まで搬送するための搬送路6が形成されている。
【0017】
また、装置本体2の内部には、給紙部10と、作像部11と、定着部12と、が設けられている。給紙部10は搬送路6の上流端部に設けられ、定着部12は搬送路6の下流側に設けられている。作像部11は、搬送路6において給紙部10と定着部12との中間に設けられている。
【0018】
作像部11は、中間転写ベルト13と、4つのドラムユニット14と、光走査装置15と、を有している。中間転写ベルト13は、トナーコンテナ5の下方に設けられ、
図1に矢印で示す方向に回転する。4つのドラムユニット14は中間転写ベルト13の下方で左右方向に並べられ、光走査装置15はドラムユニット14の下方に設けられている。4つのドラムユニット14は、左から右に向かって順に、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのトナーに対応している。なお、4つのドラムユニット14は、同一構造であるため、以下、1つのドラムユニット14について説明する。
【0019】
ドラムユニット14は、感光体ドラム20と、帯電装置21と、現像装置22と、一次転写ローラー23と、クリーニング装置24と、除電装置25と、を有している。像担持体の一例としての感光体ドラム20は、中間転写ベルト13の下側に接触しながら軸周りに回転駆動される。帯電装置21、現像装置22、一次転写ローラー23、クリーニング装置24および除電装置25は、感光体ドラム20の周囲に画像形成プロセス順に配置されている。一次転写ローラー23は、中間転写ベルト13を挟んで上側から感光体ドラム20に対向している。中間転写ベルト13の右端には、二次転写ローラー26が接触している。
【0020】
[画像形成処理]
ここで、画像形成装置1の動作について説明する。制御部(図示せず)は、外部端末から入力された画像データに基づいて、以下のように画像形成処理を実行する。
【0021】
帯電装置21は、感光体ドラム20の表面を帯電させる。光走査装置15は、感光体ドラム20に向けて画像データに対応した露光を行い、感光体ドラム20の表面に静電潜像を形成する。現像装置22は、トナーコンテナ5から供給されたトナーを用いて感光体ドラム20の表面に形成された静電潜像をトナー像に現像する。4つの感光体ドラム20に担持された4色のトナー像は、一次転写バイアスを印加された一次転写ローラー23によって、中間転写ベルト13に順番に一次転写される。これにより、中間転写ベルト13の表面には、フルカラーのトナー像が形成される。
【0022】
給紙部10は、カセット3に収容された用紙Pを取り出して搬送路6に送り出す。二次転写バイアスを印加された二次転写ローラー26は、用紙Pに中間転写ベルト13上のトナー像を二次転写する。以上によって、用紙Pにトナー像が形成される。定着部12は、用紙Pにトナー像を熱定着させる。画像形成された用紙Pは排紙トレイ4に排出される。クリーニング装置24は一次転写後に感光体ドラム20の表面に残留したトナーを除去し、除電装置25は除電光を照射して感光体ドラム20の電荷を除去する。
【0023】
[光走査装置]
次に、
図2および
図3を参照して、光走査装置15について説明する。
図2は光走査装置15の内部構造を示す平面図である。
図3は光走査装置15の内部構造を示す断面図である。
【0024】
光走査装置15は、複数の光を主走査方向および副走査方向に沿って走査しながら、4つの感光体ドラム20を露光する。
図2および
図3に示すように、光走査装置15は、ハウジング30と、光源31と、ポリゴンミラー32と、fθレンズ33と、第1従位導光部40Mと、第2従位導光部40Cと、第3従位導光部40Yと、基準導光部50と、を備えている。なお、本明細書では、説明の便宜上、第1従位導光部40M、第2従位導光部40Cおよび第3従位導光部40Yに共通する説明では、「従位導光部40」と呼び、符号には算用数字のみを付す。また、従位導光部40および基準導光部50に共通する説明では、「導光部40,50」と呼ぶ。
【0025】
<ハウジング>
ハウジング30は、背の低い直方体状の外形を有し、光走査装置15の各部材を支持している。
図3に示すように、ハウジング30は、上方に開口を有するハウジング本体30Aと、ハウジング本体30Aの開口を覆う蓋部30Bと、を有している。ハウジング本体30Aは、下方(直交方向の一方)に配置された底部30Cを有している。蓋部30Bは、底部30Cに対向して上方(直交方向の他方)に配置された天部を構成している。蓋部30Bには、4つの感光体ドラム20に向かってレーザー光を出射させるための第1出射口301、第2出射口302、第3出射口303および第4出射口304が開口している。
【0026】
<光源、ポリゴンミラー、fθレンズ>
図2に示すように、光源31は、ハウジング30の内部(底部30C上)の左後側に設けられている。光源31は、4つの感光体ドラム20に照射される4つのレーザー光を出射する。ポリゴンミラー32は、ハウジング30の内部(底部30C上)の左側に軸回りに回転可能に支持されている。ポリゴンミラー32は、平面から見て多角形状に形成され、その側面には反射面34(偏向面)が形成されている。回転するポリゴンミラー32は、光源31から出射された複数の光を反射面34で反射させて走査する。
【0027】
図3に示すように、fθレンズ33は、光路においてポリゴンミラー32の下流側に配置され、ポリゴンミラー32によって偏向された複数の光が通過する。fθレンズ33は、ポリゴンミラー32で等角度走査されたレーザー光を感光体ドラム20上で等速走査させる。なお、本明細書では、4つの感光体ドラム20に照射されるレーザー光を、左から右に向かって順に、第1光線L1、第2光線L2、第3光線L3、第4光線L4と呼ぶこととする。
【0028】
<導光部の概要>
図3に示すように、第1従位導光部40M、第2従位導光部40C、第3従位導光部40Yおよび基準導光部50は、この順に、ポリゴンミラー32の近傍から右方に向かって配置されている。4つの導光部40,50は、光路においてfθレンズ33と4つの感光体ドラム20との間に配置され、ポリゴンミラー32によって偏向された光を4つの感光体ドラム20に導く。詳細には、第1従位導光部40Mはマゼンタ用の感光体ドラム20を露光し、第2従位導光部40Cはシアン用の感光体ドラム20を露光し、第3従位導光部40Yはイエロー用の感光体ドラム20を露光し、基準導光部50はブラック用の感光体ドラム20を露光する。
【0029】
<第1従位導光部>
第1従位導光部40Mは、第1反射ミラー411と、第1従位レンズ42Mと、第2反射ミラー412と、を有している。第1反射ミラー411は、ハウジング本体30Aの底部30Cに配置され、fθレンズ33を通過した第1光線L1を上方かつ左方に向かって反射する。第1従位レンズ42Mは、蓋部30Bの側において第1反射ミラー411で反射した第1光線L1の光路上に配置されている。第2反射ミラー412は、蓋部30Bの側に配置され、第1従位レンズ42Mを通過した第1光線L1を上方の感光体ドラム20に向かって反射する。
【0030】
<第2従位導光部>
第2従位導光部40Cは、第3反射ミラー413と、第2従位レンズ42Cと、第4反射ミラー414と、を有している。第3反射ミラー413は、ハウジング本体30Aの底部30Cに配置され、fθレンズ33を通過した第2光線L2を上方かつ左方に向かって反射する。第2従位レンズ42Cは、蓋部30Bの側において第3反射ミラー413で反射した第2光線L2の光路上に配置されている。第4反射ミラー414は、蓋部30Bの側に配置され、第2従位レンズ42Cを通過した第2光線L2を上方の感光体ドラム20に向かって反射する。
【0031】
<第3従位導光部>
第3従位導光部40Yは、第5反射ミラー415と、第6反射ミラー416と、第3従位レンズ42Yと、第7反射ミラー417と、を有している。第5反射ミラー415は、ハウジング本体30Aの底部30Cに配置され、fθレンズ33を通過した第3光線L3を上方に向かって反射する。第6反射ミラー416は、蓋部30Bの側に配置され、第5反射ミラー415で反射した第3光線L3を左方に向かって反射する。第3従位レンズ42Yは、蓋部30Bの側において第6反射ミラー416で反射した第3光線L3の光路上に配置されている。第7反射ミラー417は、蓋部30Bの側に配置され、第3従位レンズ42Yを通過した第3光線L3を上方の感光体ドラム20に向かって反射する。
【0032】
<基準導光部>
基準導光部50は、基準レンズ52と、第8反射ミラー51と、を有している。基準レンズ52は、ハウジング本体30Aの底部30Cにおいてfθレンズ33を通過した第4光線L4の光路上に配置されている。第8反射ミラー51は、ハウジング本体30Aの底部30Cに配置され、基準レンズ52を通過した第4光線L4を上方の感光体ドラム20に向かって反射する。
【0033】
なお、本明細書では、説明の便宜上、第1従位レンズ42M、第2従位レンズ42Cおよび第3従位レンズ42Yに共通する説明では、「従位レンズ42」と呼び、符号には算用数字のみを付す。また、従位レンズ42と基準レンズ52とに共通する説明では、「レンズ42,52」と呼ぶ。さらに、第1~第8反射ミラー411~417,51に共通する説明では、「反射ミラー41,51」と呼び、符号を簡略化する。
【0034】
以上説明したように、基準導光部50は1つの第8反射ミラー51を有し、各々の従位導光部40は基準導光部50よりも多い2つ以上の反射ミラー41を有している。基準導光部50は光源31から出射され基準レンズ52を通過した光を感光体ドラム20に導き、従位導光部40は光源31から出射され従位レンズ42を通過した光を感光体ドラム20に導く。なお、fθレンズ33を通過する第1光線L1、第2光線L2、第3光線L3および第4光線L4は、この順に、ハウジング30の底部30C側から蓋部30Bに向かって並んでいる。すなわち、第1光線L1は、最も底部30Cに近い位置でfθレンズ33を通過し、第4光線L4は、最も蓋部30Bに近い位置でfθレンズ33を通過する。
【0035】
<レンズの詳細>
次に、
図4を参照して、レンズ42,52について説明する。
図4はレンズ42,52を示す斜視図である。
【0036】
3つの従位レンズ42および基準レンズ52は、部品の共通化によるコスト低減を目的として、全て同一形状となっている。レンズ42,52は、例えば、合成樹脂で形成されている。レンズ42,52は、前後方向(主走査方向)に長く延びた棒状に形成されている。レンズ42,52には、光が入射する入射面F1と、光が出射する出射面(図示せず)とが左右方向に対向するように形成されている。また、レンズ42,52には、第1側部S1と第2側部S2とが上下方向に対向するように形成されている。レンズ42,52は、前後方向の中央部かつ入射面F1の側において第1側部S1から光軸に沿って突出した凸部Vを有している。
【0037】
合成樹脂製のレンズ42,52は、金型等を使用して製造されるため、例えば、上下方向(主走査方向と交差する副走査方向)に撓む(僅かに湾曲する)ことが多い。レンズ42,52の撓み方向(反り方向)は、製造時において金型自体の配置や金型のゲート(溶融合成樹脂の流入口)の配置等によって変化する。したがって、金型の配置等を統一することで、レンズ42,52の撓み方向(反り方向)を統一することが可能である。
【0038】
従位レンズ42と基準レンズ52とでは、ハウジング30に対する取付構造が異なっている。主に、基準レンズ52はハウジング30の底部30Cの側に支持され、従位レンズ42はハウジング30の天部の側に支持されている。
【0039】
<基準保持構造>
まず、
図3、
図5および
図6を参照して、基準レンズ52を保持する基準保持構造53について説明する。
図5は光走査装置15の内部構造の一部を示す斜視図である。
図6は基準レンズ52および基準保持構造53の概略を示す側面図である。
【0040】
図3および
図5に示すように、基準保持構造53は、第1立壁H1、第2立壁H2および中央規制部H3を有している。第1立壁H1および第2立壁H2は、ハウジング本体30Aの右側において底部30Cから突き出している。中央規制部H3は、第1立壁H1の前後方向の中央部に形成されている。基準レンズ52は、第1側部S1を底部30Cの側に向けた姿勢(
図4のレンズ42,52を上下逆さまにした姿勢)とされ、第1立壁H1と第2立壁H2との間に配置される。基準レンズ52の凸部Vは、中央規制部H3に係合する(
図5参照)。なお、ハウジング本体30Aには、基準レンズ52の前後両端に当接する一対の内壁(図示せず)が設けられている。中央規制部H3と一対の内壁とによって、基準レンズ52の前後方向の移動が規制される。
【0041】
図6に示すように、基準保持構造53は、基準迎え部55と、一対の基準支持部56と、一対の基準付勢部材57と、を有している。基準迎え部55および一対の基準支持部56はハウジング30の底部30Cの側に設けられ、一対の基準付勢部材57はハウジング30の天部の側に設けられている。
【0042】
(基準迎え部、基準支持部)
基準迎え部55および一対の基準支持部56は、それぞれ、第1立壁H1と第2立壁H2との間において底部30Cから突き出した突起である。基準迎え部55は底部30Cの前後方向の中央部に設けられ、一対の基準支持部56は底部30Cの前後方向の両側に設けられている。一対の基準支持部56は、基準レンズ52(第1側部S1)の前後方向(主走査方向)の両端部を支持している(接触している)。基準迎え部55は、各基準支持部56よりも低く形成されている。
【0043】
(基準迎え部)
図6に示すように、基準レンズ52は、前述のように、第1側部S1を底部30Cに向けた姿勢で配置され、下方(底部30Cの側)に膨らむように撓む。基準迎え部55は、例えば、基準レンズ52が下方に膨らむように撓んだ場合に、基準レンズ52の中央部に接触可能に設けられている。仮に、基準レンズ52に撓みが無く前後方向に真っすぐ延びている場合(
図6の二点鎖線参照)、基準迎え部55は基準レンズ52(第1側部S1)に接触せず、基準レンズ52(第1側部S1)と基準迎え部55との間には隙間が形成される。また、基準レンズ52の撓み量が大きい場合、基準迎え部55は基準レンズ52に接触し(図示せず)、撓み量の増加を規制する。なお、基準レンズ52の撓み量が小さい場合には、基準迎え部55は基準レンズ52に接触しないこともある(
図6に示すように隙間が形成される)。
【0044】
(基準付勢部材)
一対の基準付勢部材57は、基準レンズ52の第2側部S2の前後方向の両端部とハウジング本体30Aの前後方向の両端部との間に設けられている。一対の基準付勢部材57は、例えば、板バネ、コイルスプリング、ゴム等で構成され、基準レンズ52を一対の基準支持部56に押し付ける。基準付勢部材57の付勢力によって、基準レンズ52の上下方向の移動が規制される。
【0045】
<従位保持構造>
次に、
図7および
図8を参照して、従位レンズ42を保持する従位保持構造43について説明する。
図7は従位レンズ42がホルダー44に保持された状態を示す斜視図である。
図8は従位レンズ42および従位保持構造43の概略を示す側面図である。なお、第1従位導光部40M、第2従位導光部40Cおよび第3従位導光部40Yを保持する3つの従位保持構造43は、同一構造であるため、以下1つの従位保持構造43について説明する。
【0046】
図7および
図8に示すように、従位保持構造43は、ホルダー44と、従位迎え部45と、一対の従位支持部46と、一対の従位付勢部材47と、撓み調整機構48と、押圧部材49と、を有している。ホルダー44は、底部30Cから蓋部30Bの側に離間した位置に従位レンズ42を保持する。従位迎え部45、撓み調整機構48および一対の従位付勢部材47は、ハウジング30の天部の側に設けられている。一対の従位支持部46は、従位レンズ42を挟んで撓み調整機構48とは反対側に設けられている。
【0047】
(ホルダー)
ホルダー44は、例えば、板金を折り曲げ加工することで形成されている。
図7に示すように、ホルダー44は、上面部441と、押え部442と、側面部443と、折曲部444と、を有している。上面部441は従位レンズ42の第1側部S1の上面を覆い、押え部442は上面部441の一端から下方に延びて入射面F1の上部(第1側部S1)を覆っている。側面部443は、上面部441の他端から下方に延びて従位レンズ42の出射面に対向している。側面部443には、出射面を露出させるための開口部(図示せず)が開口している。折曲部444は、側面部443の下端から外側に向かって延びている。折曲部444がハウジング本体30Aにネジ止めされることで、ホルダー44がハウジング本体30Aに固定される。従位レンズ42は、第1側部S1を蓋部30Bの側に向けた姿勢とされ、ホルダー44に保持される。また、従位レンズ42は、ホルダー44を介してハウジング本体30Aに支持される。
【0048】
(従位迎え部)
従位迎え部45は、ホルダー44の押え部442に形成された溝である。従位迎え部45は、押え部442の前後方向(主走査方向)の中央部で、押え部442の下端から上方に向かって切り欠かれている。従位レンズ42の凸部Vは、従位迎え部45に対して上下方向(副走査方向)に移動可能に係合する。凸部Vが従位迎え部45に係合することで、従位レンズ42の前後方向の移動が規制される。
【0049】
図8に示すように、従位レンズ42は、前述のように、第1側部S1を上方に向けた姿勢で配置され、上方に膨らむように撓む。従位迎え部45は、例えば、従位レンズ42が上方に膨らんだ場合、従位レンズ43の凸部V(前後方向の中央部)に接触可能に設けられている。具体的には、撓んだ従位レンズ42の凸部Vは、従位迎え部45(溝)の最深部45Dに突き当たることがある。仮に、従位レンズ42に撓みが無く前後方向に真っすぐ延びている場合(
図8の二点鎖線参照)、従位迎え部45の最深部45Dは従位レンズ42の凸部Vに接触せず、凸部Vと従位迎え部45の最深部45Dとの間には隙間が形成される。また、従位レンズ42の撓み量が大きい場合、従位迎え部45の最深部45Dは凸部Vに接触し(図示せず)、撓み量の増加を規制する。なお、従位レンズ42の撓み量が小さい場合には、従位迎え部45の最深部45Dは凸部Vに接触しないこともある(
図8に示すように隙間が形成される)。
【0050】
(従位支持部)
一対の従位支持部46は、ハウジング本体30Aの前後方向の両側に設けられた一対の内支持壁35から突き出している。一対の従位支持部46は、従位レンズ42の第2側部S2の前後方向(主走査方向)の両端部を支持している(接触している)。
【0051】
(従位付勢部材)
一対の従位付勢部材47は、ホルダー44の上面部441の前後方向の両端部とハウジング本体30A(または蓋部30B)の前後方向の両端部との間に設けられている。一対の従位付勢部材47は、例えば、板バネ、コイルスプリング、ゴム等で構成され、ホルダー44に保持された従位レンズ42を一対の従位支持部46に押し付ける。従位付勢部材47の付勢力によって、従位レンズ42の上下方向の移動が規制される。
【0052】
(撓み調整機構)
図7および
図8に示すように、撓み調整機構48は、ホルダー44の上面部441の前後方向の中央部に設けられている。撓み調整機構48は、ホルダー44の上面部441に開口したネジ穴(図示せず)と、ネジ穴の雌ネジに噛み合う雄ネジを有する調整ネジ48Aと、を含んでいる。調整ネジ48Aは、ネジ穴(上面部441)を貫通し、従位レンズ42(第1側部S1)の前後方向(主走査方向)の中央に接触可能に設けられている。調整ネジ48Aがねじ込まれると、調整ネジ48Aの先端部が第1側部S1を押圧する。調整ネジ48Aが引き抜き方向にねじられると、第1側部S1に対する押圧力が低減(解除)される。調整ネジ48Aを正逆回転させることで、主走査方向に沿ったレンズ42,52の撓みが調整される。なお、基準保持構造53には、基準レンズ52の撓みを調整する機構は備えられていない。
【0053】
(押圧部材)
押圧部材49は、ホルダー44と一体に形成されている。押圧部材49は、ホルダー44の側面部443の下端から折曲部444とは逆方向に延びた一対の板バネである(
図7参照)。押圧部材49は、従位レンズ42の下部(第2側部S2)を支持し、従位レンズ42がホルダー44から離脱することを規制する。押圧部材49は、撓み調整機構48による押圧力とは反対方向(上方)に従位レンズ42を押圧する。
【0054】
なお、押圧部材49は、一対の板バネであったが、これに限らず、1つ(または3つ以上)の板バネであってもよい。また、押圧部材49がホルダー44と一体に形成されていたが、これに限らず、ホルダー44とは別部材となる板バネ、コイルスプリング、ゴム等で構成されてもよい(図示せず)。また、本明細書では、説明の便宜上、従位迎え部45および基準迎え部55に共通する説明では、単に「迎え部45,55」と呼ぶこととする。
【0055】
[レンズと迎え部との隙間]
上記したように、4つのレンズ42,52は、撓み方向(反り方向)が統一されるように製造されている。本実施形態に係る光走査装置15では、
図6および
図8に示すように、基準レンズ52と従位レンズ42とに撓みがある場合、基準迎え部55に対する基準レンズ52の撓み方向と、従位迎え部45に対する従位レンズ42の撓み方向と、が一致している。つまり、基準レンズ52と3つの従位レンズ42とが、同じ向きに撓んだ(反った)姿勢でハウジング30に装着されている。詳細には、基準レンズ52は基準迎え部55に接近するように撓んだ状態で設けられ、従位レンズ42は従位迎え部45に接近するように撓んだ状態で設けられている。
【0056】
図6および
図8に示すように、レンズ42,52に撓みが無い(または撓み量が小さい)と仮定した場合(二点鎖線参照)、迎え部45,55とレンズ42,52との間に隙間が形成される。本実施形態では、基準レンズ52と従位レンズ42とで、隙間の大きさ(距離)の関係が定義されている。具体的には、基準レンズ52と従位レンズ42とに撓みが無いと仮定した場合、従位迎え部45(最深部45D)と従位レンズ42(凸部V)との間の最短距離(B)の絶対値は、基準迎え部55と基準レンズ52との間の最短距離(A)の絶対値以上に設定されている(|A|≦|B|)。本実施形態では、一例として、最短距離(B)の絶対値が、最短距離(A)の絶対値よりも大きく設定されている。
【0057】
[感光体ドラム上の走査光]
ここで、
図9および
図10を参照して、感光体ドラム20上の走査光について説明する。
図9はポリゴンミラー32で偏向される光の概略を示す説明図である。
図10は4つの感光体ドラム20上における走査光の副走査方向への曲がり(Bow)を示す説明図である。
【0058】
図9に示すように、光源31から出射された複数の光線は、ポリゴンミラー32の反射面34に対して鋭角(または反射面34と直交する面に対して鋭角)からなる所定の角度でそれぞれ入射する。反射面34の外周縁の回転軌跡は、
図9に示すP1とP2との間で移動する。P1はポリゴンミラー32の最小外径に対応し、P2は反射面34の隣接する平面間の稜線に対応する。反射面34がP1に位置する時、入射光Q11が反射されると反射光Q12となり、入射光Q21が反射されると反射光Q22となる。一方、反射面34がP2に位置する時、入射光Q11が反射されると反射光Q13となり、入射光Q21が反射されると反射光Q23となる。このため、
図10に示すように、各感光体ドラム20上では、走査光に副走査方向への曲がり(Bow)が生じる。
【0059】
反射面34で反射した第1光線L1および第2光線L2は、反射面34の面中心CM(
図9参照)よりも下方を進行し、反射面34で反射した第3光線L3および第4光線L4は、反射面34の面中心CMよりも上方を進行する。このため、
図10に示すように、感光体ドラム20上における第1光線L1および第2光線L2のBow形状と、第3光線L3および第4光線L4のBow形状とは、感光体ドラム20の回転軸線に対して線対称となる。なお、走査光のBow形状の向きは、光線が反射ミラーで反射される度に反転するため、反射ミラーの数によって変化する。
【0060】
本実施形態では、第1従位導光部40Mおよび第2従位導光部40Cは2枚の反射ミラーを備え、第3従位導光部40Yは3枚の反射ミラーを備え、基準導光部50は1枚の反射ミラーを備えている。また、4つのレンズ42,52は、撓み方向(反り方向)を統一されている。このため、4つの走査光のBow形状の向きは、
図10に示すような線対称形状となる。なお、
図9において、反射面34への入射光の斜入射角度が大きいほど、感光体ドラム20上のBow形状の撓み量(反り量)は大きくなる。
【0061】
また、レンズ42,52や反射ミラー41,51が主走査方向に対して傾斜して固定されると、感光体ドラム20上の走査光にも傾き(Skew)が発生する。走査光の曲がりや傾きは、色ずれ等の不良画像を発生させる。
【0062】
以上説明した本実施形態に係る光走査装置15では、基準導光部50の基準レンズ52は、撓み調整機構48(感光体ドラム20上の副走査方向に沿った走査光のBowを調整する機構)を備えておらず、他の従位レンズ42の撓み調整の基準となる。基準導光部50は、他の従位導光部40と比較して反射ミラーの数が最も少ないため、反射ミラーの重さや傾きによって、感光体ドラム20上の走査光(第4光線L4)に生じる曲がり(Bow)や傾き(Skew)が従位導光部40よりも小さくなる。このため、基準導光部50の第4光線L4を基準とし、調整ネジ48Aを正逆回転させて従位レンズ42の撓みを調整することで、4つの走査光の形状を容易に合わせこむことができる。また、基準導光部50の撓み調整機構48を省略することができ、光走査装置15の製造コストを低減することができる。
【0063】
ところで、撓み調整機構48によって調整された従位レンズ42の撓みは、時間の経過とともに変化する(所謂クリープ現象)。クリープ現象による従位レンズ42の変形量は、従位レンズ42の調整量(撓み量)が大きいほど増大する。このようなクリープ現象に起因する問題に対し、本実施形態に係る光走査装置15では、4つのレンズ42,52に撓みがある場合、4つのレンズ42,52の撓み方向(反り方向)が一致させる構成とした。この構成によれば、4つのレンズ42,52の反り方向が揃うため、一部の従位レンズ42の調整量だけが大きくなることがなく、各々の従位レンズ42の調整量を最小限に抑えることができる。これにより、調整後の従位レンズ42のクリープ変形を低減させることができる。
【0064】
仮に、基準迎え部55と基準レンズ52との間の最短距離(A)が、従位迎え部45(最深部45D)と従位レンズ42(凸部V)との間の最短距離(B)よりも大きい(長い)場合、第4光線L4(基準レンズ52)を基準として、従位レンズ42の撓みを撓み調整機構48で調整しきれない虞がある。このような問題に対し、本実施形態に係る光走査装置15では、上記した最短距離(B)の絶対値が、上記した最短距離(A)の絶対値以上(|A|≦|B|)に設定されていた(
図6および
図8参照)。この構成によれば、基準レンズ52の撓み以上に従位レンズ42を撓ませることが可能になるため、第4光線L4(基準レンズ52)を基準とした従位レンズ42の撓み調整を適正に行うことができる。
【0065】
また、本実施形態に係る光走査装置15によれば、従位レンズ42は従位迎え部45に接近するように撓んだ状態で設けられているため、撓んだ従位レンズ42が従位迎え部45に突き当たることで、それ以上に撓みが増大することを規制することができる。また、撓み調整機構48は従位レンズ42を撓み方向とは反対方向に押圧することで、第4光線L4(基準レンズ52)を基準として、従位レンズ42の撓みを調整することができる。
【0066】
また、本実施形態に係る光走査装置15では、従位導光部40がハウジング30の天部の側に設けられているため、蓋部30Bを取り外すことで、撓み調整機構48(調整ネジ48A)が露出する。この構成によれば、作業者は撓み調整機構48(調整ネジ48A)を容易に操作することができる。また、ハウジング30の底部30Cの側に設けられた基準レンズ52(基準保持構造53)は撓みを調整する必要がないため、全体として光走査装置15の走査光の撓み調整を容易に行うことができる。なお、蓋部30Bを取り外すことなく撓みの調整を行うことができるように、蓋部30Bに調整用の穴を形成してもよい。
【0067】
また、本実施形態に係る光走査装置15によれば、従位レンズ42の凸部Vが従位迎え部45に対して上下方向(副走査方向)に移動可能に係合するため、従位レンズ42の主走査方向の位置決めを行いながら、従位レンズ42の撓み調整時の移動を案内することができる。また、凸部Vがレンズ42,52の主走査方向の中央部に配置されているため、レンズ42,52が熱膨張したとしても、凸部Vの位置は略変化しない。これにより、複数の走査光の間で副走査方向におけるずれを縮小することができる。また、レンズ42,52に凸部Vが形成されることで、入射面F1と出射面の識別が容易になり、レンズ42,52の取付作業を容易に行うことができる。
【0068】
なお、本実施形態に係る光走査装置15では、レンズ42,52が迎え部45,55に接近するように撓んだ状態に設けられていたが、本発明はこれに限定されない。これとは逆に、
図11および
図12に示すように、変形例に係る光走査装置15として、レンズ42,52が迎え部45,55から離れるように撓んだ状態に設けられてもよい。この場合でも、レンズ42,52に撓みが無いと仮定したときに(
図11および
図12の二点鎖線参照)、上記した最短距離(B)の絶対値が、上記した最短距離(A)の絶対値以上に設定される。このため、例えば、
図11に示すように、基準迎え部55が基準支持部56よりも高くなることもある。この場合、基準レンズ52に撓みが無いと仮定したときに、基準迎え部55は基準レンズ52に食い込むことになり、最短距離(A)は負数となる。また、例えば、
図12に示すように、従位迎え部45の最深部45Dは、
図8に示した位置よりも低くなることもある。この場合でも、従位レンズ42に撓みが無いと仮定したときに、従位迎え部45の最深部45Dは従位レンズ42に食い込むことがあり、最短距離(B)が負数となることもある(図示せず)。
【0069】
また、本実施形態(変形例を含む。以下同じ。)に係る光走査装置15では、全てのレンズ42,52に凸部Vが形成されていたが、これに限らず、凸部Vは、少なくとも従位レンズ42に形成されていればよく、基準レンズ52から削除されてもよい。
【0070】
なお、第4光線L4は、第3光線L3よりもfθレンズ33の中心から離れた位置を進行するため、感光体ドラム20上において、第4光線L4のBow形状(撓み量)は、第3光線L3のBow形状(撓み量)よりも大きくなりやすい(
図10参照)。また、基準レンズ52には撓み調整機構48)が省略されているため、第4光線L4のBow形状は極力小さくすることが好ましい。
【0071】
また、導光部40,50には、感光体ドラム20上の走査光の傾き(Skew)を調整するSkew調整機構が設けられてもよい。この場合、撓み調整機構48と同様に、Skew調整機構は、従位レンズ42に備えられ、基準レンズ52には備えられないこととしてもよい。また、第8反射ミラー51を除いた第1~第7反射ミラー411~417にSkew調整機構を設けてもよい。
【0072】
また、本実施形態に係る光走査装置15では、
図3に示すように、レンズ42,52および反射ミラー41,51が配置されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図13に示すように、他の変形例に係る光走査装置15として、第4光線L4が第3光線L3の下方を進行するように、第3従位導光部40Yと基準導光部50とが構成されている。第5反射ミラー415は、第4光線L4の光路の上方に配置されて、第4光線L4の光路を遮らないように下端部が切り欠かれた台形形状に形成されている。
【0073】
他の変形例に係る光走査装置15では、fθレンズ33を通過する第1光線L1、第2光線L2、第4光線L4および第3光線L3は、この順に、ハウジング30の底部30C側から蓋部30Bに向かって並んでいる。第4光線L4のポリゴンミラー32の反射面34への斜入射角度(
図9参照)は4つの光線の中で最も小さくなるため、感光体ドラム20上での第4光線L4のBow形状(撓み量)を小さくすることができる。これにより、従位導光部40のBow調整の基準となりやすい。なお、第4光線L4の撓み量を更に小さくするために、第8反射ミラー51の厚さを他の第1~第7反射ミラー411~417よりも厚くしてもよいし、補強リブなどを設けてもよい(図示せず)。また、感光体ドラム20上の第4光線L4のBow形状に対する第8反射ミラー51の撓みの影響を小さくするために、第8反射ミラー51への第4光線L4の反射角度を小さく設定してもよい(図示せず)。
【0074】
また、本実施形態(各変形例を含む。)の説明では、一例として、本発明をカラープリンターに適用した場合を示したが、これに限らず、例えば、モノクロプリンター、複写機、ファクシミリまたは複合機等に本発明を適用してもよい。
【0075】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る光走査装置および画像形成装置における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施態様に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。