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特許7384320処理装置、処理方法、システムおよびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】処理装置、処理方法、システムおよびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20231114BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20231114BHJP
   B23B 27/00 20060101ALI20231114BHJP
   B23B 29/12 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B23Q17/00 D
B23Q17/09 H
B23B27/00 D
B23B29/12 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023521716
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 JP2022040862
【審査請求日】2023-04-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100124028
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 公雄
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 類
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/241150(WO,A1)
【文献】特開2022-111857(JP,A)
【文献】特開2020-163564(JP,A)
【文献】特開2003-223205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00、09
B23B 27/00
B23B 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具から、当該切削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記出力値に基づいて前記出力値の正負を反転させる処理を行う処理部と、
前記処理部により正負が反転された後の前記出力値を表示する表示部とを含み、
前記表示部は、前記切削工具を表す工具画像と、前記センサを表すセンサ画像とを表示し、
前記センサ画像は、前記切削工具に前記センサが配置された位置に対応する、前記工具画像上の位置に、前記センサにかかる力に応じた形態により表示される、処理装置。
【請求項2】
切削工具から、当該切削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信部と、
前記出力値がしきい値より大きいか否かを判定する判定部と、
前記出力値を表示する表示部とを含み、
前記表示部は、前記判定部により、前記出力値が前記しきい値以下であると判定されたことを受けて、
前記出力値の正負を反転させて、前記しきい値以下であると判定された前記出力値を表示する、または、
前記出力値を表示する軸を反転させて、前記しきい値以下であると判定された前記出力値を表示する、処理装置。
【請求項3】
切削工具から、当該切削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信部と、
前記出力値の変化から、前記切削工具による切削加工が開始されたか否かと、前記切削加工の開始による前記出力値の変化方向とを判定する判定部と、
前記出力値を表示する表示部とを含み、
前記表示部は、前記判定部により、前記変化方向が、前記出力値が減少する方向であると判定されたことを受けて、
前記出力値の正負を反転させて、前記切削加工の開始後の前記出力値を表示する、または、
前記出力値を表示する軸を反転させて、前記切削加工の開始後の前記出力値を表示する、処理装置。
【請求項4】
前記センサは、ひずみセンサを含み、
前記処理部は、前記ひずみセンサの出力値を変換して、前記切削工具の切削部にかかる応力および前記切削部の変位の少なくとも1つを算出する変換部を含む、請求項1に記載の処理装置。
【請求項5】
前記変換部は、前記応力を算出し、
前記表示部は、前記切削工具を表す工具画像と、前記応力を表すベクトル画像とを表示し、
前記ベクトル画像は、前記切削工具における前記応力の算出対象位置に対応する、前記工具画像上の位置に表示される、請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
前記変換部は、前記変位を算出し、
前記表示部は、前記切削工具を表す工具画像と、前記変位を表すベクトル画像とを表示し、
前記ベクトル画像は、前記工具画像上における前記変位の算出対象位置に対応する、前記工具画像上の位置に表示される、請求項4に記載の処理装置。
【請求項7】
前記変換部は、前記応力および前記変位を算出し、
前記表示部は、前記切削工具を表す工具画像と、前記応力を表す第1ベクトル画像とを表示する第1形態と、前記工具画像と、前記変位を表す第2ベクトル画像とを表示する第2形態とを切替えて表示し、
前記第1ベクトル画像は、前記切削工具における前記応力の算出対象位置に対応する、前記工具画像上の位置に表示され、
前記第2ベクトル画像は、前記工具画像上における前記変位の算出対象位置に対応する、前記工具画像上の位置に表示される、請求項4に記載の処理装置。
【請求項8】
通信装置が、切削工具から、当該切削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信ステップと、
処理装置が、前記受信ステップにより受信された前記出力値に基づいて前記出力値の正負を反転させる処理を行う処理ステップと、
表示装置が、前記処理ステップにより正負が反転された後の前記出力値を表示する表示ステップとを含み、
前記表示ステップは、前記切削工具を表す工具画像と、前記センサを表すセンサ画像とを表示するステップを含み、
前記センサ画像は、前記切削工具に前記センサが配置された位置に対応する、前記工具画像上の位置に、前記センサにかかる力に応じた形態により表示される、処理方法。
【請求項9】
通信装置が、切削工具から、当該切削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信ステップと、
判定装置が、前記出力値がしきい値より大きいか否かを判定する判定ステップと、
表示装置が、前記出力値を表示する表示ステップとを含み、
前記表示ステップは、前記判定ステップにより、前記出力値が前記しきい値以下であると判定されたことを受けて、
前記出力値の正負を反転させて、前記しきい値以下であると判定された前記出力値を表示する、または、
前記出力値を表示する軸を反転させて、前記しきい値以下であると判定された前記出力値を表示するステップを含む、処理方法。
【請求項10】
通信装置が、切削工具から、当該切削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信ステップと、
判定装置が、前記出力値の変化から、前記切削工具による切削加工が開始されたか否かと、前記切削加工の開始による前記出力値の変化方向とを判定する判定ステップと、
表示装置が、前記出力値を表示する表示ステップとを含み、
前記表示ステップは、前記判定ステップにより、前記変化方向が、前記出力値が減少する方向であると判定されたことを受けて、
前記出力値の正負を反転させて、前記切削加工の開始後の前記出力値を表示する、または、
前記出力値を表示する軸を反転させて、前記切削加工の開始後の前記出力値を表示するステップを含む、処理方法。
【請求項11】
コンピュータに、
切削工具から、当該切削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信機能と、
前記受信機能により受信された前記出力値に基づいて前記出力値の正負を反転させる処理を行う処理機能と、
前記処理機能により正負が反転された後の前記出力値を表示する表示機能とを実現させ、
前記表示機能は、前記切削工具を表す工具画像と、前記センサを表すセンサ画像とを表示する機能を含み、
前記センサ画像は、前記切削工具に前記センサが配置された位置に対応する、前記工具画像上の位置に、前記センサにかかる力に応じた形態により表示される、コンピュータプログラム。
【請求項12】
コンピュータに、
切削工具から、当該切削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信機能と、
前記出力値がしきい値より大きいか否かを判定する判定機能と、
前記出力値を表示する表示機能とを実現させ、
前記表示機能は、前記判定機能により、前記出力値が前記しきい値以下であると判定されたことを受けて、
前記出力値の正負を反転させて、前記しきい値以下であると判定された前記出力値を表示する、または、
前記出力値を表示する軸を反転させて、前記しきい値以下であると判定された前記出力値を表示する機能を含む、コンピュータプログラム。
【請求項13】
コンピュータに、
切削工具から、当該切削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信機能と、
前記出力値の変化から、前記切削工具による切削加工が開始されたか否かと、前記切削加工の開始による前記出力値の変化方向とを判定する判定機能と、
前記出力値を表示する表示機能とを実現させ、
前記表示機能は、前記判定機能により、前記変化方向が、前記出力値が減少する方向であると判定されたことを受けて、
前記出力値の正負を反転させて、前記切削加工の開始後の前記出力値を表示する、または、
前記出力値を表示する軸を反転させて、前記切削加工の開始後の前記出力値を表示する機能を含む、コンピュータプログラム。
【請求項14】
切削工具に搭載されたセンサと、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の処理装置とを含み、
前記切削工具は、前記センサの出力値を前記処理装置に送信する通信部を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理装置、処理方法、システムおよびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
センサを備えた切削工具が知られている。例えば、下記特許文献1および下記特許文献2には、センサと無線通信部とを含む切削工具が開示されている。この切削工具において、センサにより測定された切削工具の情報は、無線通信部により外部に送信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-62746号公報
【文献】国際公開第2022/241628号
【発明の概要】
【0004】
本開示のある局面に係る処理装置は、切削工具から、当該切削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信部と、受信部により受信された出力値に基づいて出力値の正負を反転させる処理を行う処理部と、処理部により正負が反転された後の出力値を表示する表示部とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、本開示の実施形態に係るシステムの構成を示す模式図である。
図2図2は、図1に示した切削工具を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、図1に示した切削工具に取付けられるセンサモジュールの構成を示すブロック図である。
図4図4は、図1に示した処理装置の構成を示すブロック図である。
図5図5は、図1に示した処理装置による動作を示すフローチャートである。
図6図6は、センサの出力値を示すグラフである。
図7図7は、図5に示した処理によりセンサの出力値が処理された結果を示すグラフである。
図8図8は、図1に示した処理装置による動作を示す、図5とは別のフローチャートである。
図9図9は、指標の算出方法を示す模式図である。
図10図10は、算出された指標を示すグラフである。
図11図11は、図8に示した処理によりセンサの出力値が処理された結果を示すグラフである。
図12図12は、表示装置に表示される画面を示す図である。
図13図13は、測定値の表示条件を設定する画面を示す図である。
図14図14は、測定値の表示例を示す図である。
図15図15は、図14とは別の表示形態を示す図である。
図16図16は、切削工具に配置されたセンサの状態を切削工具の画像に重ねて表示した画面を示す図である。
図17図17は、切削工具に配置されたセンサの状態を図16とは別の形態により、切削工具の画像に重ねて表示した画面を示す図である。
図18図18は、切削工具にかかる応力を切削工具の画像に重ねて表示した画面を示す図である。
図19図19は、切削工具の変位を切削工具の画像に重ねて表示した画面を示す図である。
図20図20は、切削工具にかかる応力をベクトルの形態により、切削工具の画像に重ねて表示した画面を示す図である。
図21図21は、切削工具の変位をベクトルの形態により、切削工具の画像に重ねて表示した画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
加工現場においては、センサの出力値(以下、測定値ともいう)を解析し、切削状態(即ち異常状態等)の監視が行われる。切削工具へのひずみセンサの組付けと、加工時の圧力のかかり方によって、ひずみセンサの出力値の正負が決まるため、加工時におけるひずみセンサの出力値が負になることがある。そのような場合、作業者は切削状態を容易に判断できない(例えば、直感的に判断できない)ことがある。また、ひずみセンサから出力されるひずみ値は、物理的に解釈することが難しい。即ち、ひずみ値から、ひずみセンサが搭載された切削工具の物理的変化を把握することは難しい。
【0007】
したがって、本開示は、センサの出力値が負であっても切削状態を容易に判断でき、センサが搭載された切削工具の物理的変化を容易に把握できる処理装置、処理方法、システムおよびコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【0008】
[発明の効果]
本開示によれば、センサの出力値が負であっても切削状態を容易に判断でき、センサが搭載された切削工具の物理的変化を容易に把握できる処理装置、処理方法、システムおよびコンピュータプログラムを提供できる。
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の実施形態の内容を列記して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組合せてもよい。
【0010】
(1)本開示の第1の局面に係る処理装置は、切削工具から、当該切削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信部と、受信部により受信された出力値に基づいて出力値の正負を反転させる処理を行う処理部と、処理部により正負が反転された後の出力値を表示する表示部とを含む。これにより、センサの出力値が負であっても切削状態を容易に判断できる。
【0011】
(2)上記(1)において、センサは、ひずみセンサを含むことができ、処理部は、ひずみセンサの出力値を変換して、切削工具の切削部にかかる応力および切削部の変位の少なくとも1つを算出する変換部を含むことができる。これにより、切削加工時に、センサが搭載された切削工具の物理的変化を容易に把握することが可能になる。
【0012】
(3)上記(1)または(2)において表示部は、切削工具を表す工具画像と、センサを表すセンサ画像とを表示してもよく、センサ画像は、切削工具にセンサが配置された位置に対応する、工具画像上の位置に、センサにかかる力に応じた形態により表示されてもよい。これにより、切削加工時に、センサが搭載された切削工具にかかる応力方向(即ち、圧縮または引張)を把握でき、切削加工時における切削工具の状態を容易に把握できる。
【0013】
(4)上記(2)において、変換部は、応力を算出してもよく、表示部は、切削工具を表す工具画像と、応力を表すベクトル画像とを表示してもよく、ベクトル画像は、切削工具における応力の算出対象位置に対応する、工具画像上の位置に表示されてもよい。これにより、切削加工時に、センサが搭載された切削工具にかかる応力を視覚的に表現でき、切削工具の物理的変化を容易に把握できる。
【0014】
(5)上記(2)において、変換部は、変位を算出してもよく、表示部は、切削工具を表す工具画像と、変位を表すベクトル画像とを表示してもよく、ベクトル画像は、切削工具における変位の算出対象位置に対応する、工具画像上の位置に表示されてもよい。これにより、切削加工時に、センサが搭載された切削工具に生じる変位を視覚的に表現でき、切削工具の物理的変化を容易に把握できる。
【0015】
(6)上記(2)において、変換部は、応力および変位を算出してもよく、表示部は、切削工具を表す工具画像と、応力を表す第1ベクトル画像とを表示する第1形態と、工具画像と、変位を表す第2ベクトル画像とを表示する第2形態とを切替えて表示してもよく、第1ベクトル画像は、切削工具における応力の算出対象位置に対応する、工具画像上の位置に表示されてもよく、第2ベクトル画像は、工具画像上における変位の算出対象位置に対応する、工具画像上の位置に表示されてもよい。これにより、切削加工時に、センサが搭載された切削工具にかかる応力および切削工具に生じる変位を視覚的に表現でき、切削工具の物理的変化をより容易に把握できる。
【0016】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つにおいて、処理部は、出力値がしきい値より大きいか否かを判定する判定部を含み、判定部により、出力値がしきい値より大きいと判定されたことを受けて、出力値の正負を反転させる処理を行ってもよい。これにより、センサの出力値が負である場合に、自動的に出力値の正負を反転させて表示でき、切削状態を容易に判断できる。
【0017】
(8)上記(1)から(6)のいずれか1つにおいて、処理部は、出力値の変化から、切削工具による切削加工が開始されたか否かと、切削加工の開始による出力値の変化方向とを判定する判定部を含み、判定部により、変化方向が、出力値が減少する方向であると判定されたことを受けて、出力値の正負を反転させる処理を行ってもよい。これにより、センサの出力値が負である場合に、自動的に出力値の正負を反転させて表示でき、切削状態を容易に判断できる。
【0018】
(9)本開示の第2の局面に係る処理方法は、通信装置が、切削工具から、当該切削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信ステップと、処理装置が、受信ステップにより受信された出力値に基づいて出力値の正負を反転させる処理を行う処理ステップと、表示装置が、処理ステップにより正負が反転された後の出力値を表示する表示ステップとを含む。これにより、センサの出力値が負であっても切削状態を容易に判断できる。
【0019】
(10)本開示の第3の局面に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、切削工具から、当該切削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信機能と、受信機能により受信された出力値に基づいて出力値の正負を反転させる処理を行う処理機能と、処理機能により正負が反転された後の出力値を表示する表示機能とを実現させる。これにより、センサの出力値が負であっても切削状態を容易に判断できる。
【0020】
(11)本開示の第4の局面に係るシステムは、切削工具に搭載されたセンサと、上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の処理装置とを含み、切削工具は、センサの出力値を処理装置に送信する通信部を含む。これにより、センサの出力値が負であっても切削状態を容易に判断できる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
以下の実施形態においては、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0022】
[全体構成]
図1を参照して、本開示の実施形態に係るシステム100は、処理装置102、通信装置104、操作装置106、表示装置108およびセンサモジュール112を含む。処理装置102は、例えばコンピュータにより実現される。通信装置104は、無線機能を有し、切削工具110に搭載されたセンサモジュール112から送信されるデータを受信する。通信装置104は、処理装置102にとって受信部として機能する。切削工具110は切削装置114に搭載され、加工対象物の切削加工に利用される。切削工具110は、例えば旋削工具である。切削工具110は転削工具であってもよい。切削工具110による加工状態はセンサモジュール112による測定値(即ち、センサの出力値)に反映される。通信装置104は、受信したセンサの出力値を処理装置102に出力する。操作装置106は、処理装置102に対する指示を入力するための装置である。操作装置106は、例えば、コンピュータ用のキーボード、マウスおよびタッチパネル等を含む。表示装置108は、液晶表示装置等の画像表示装置である。表示装置108は、処理装置102にとって表示部として機能する。処理装置102は、後述するように、通信装置104から入力される出力値を記憶して解析し、操作装置106からの指示に従って、出力値および解析結果を表示装置108に表示する。
【0023】
なお、図1においては、処理装置102の外部に通信装置104、操作装置106および表示装置108が配置される場合を示しているが、それらの一部または全部が処理装置102に含まれる構成であってもよい。例えば、操作装置106および表示装置108にはタッチパネルディスプレイが用いられ、タッチパネルディスプレイが処理装置102に含まれていてもよい。
【0024】
[切削工具の構成]
図2を参照して、切削工具110は、切削インサート120を有する旋削工具である。切削インサート120は、切削対象物に当接され、切削対象物を切削する切削部である切刃122を有する。切刃122は、固定用部材124により、着脱可能に固定される。切削工具110は、切削工具110の側面110Aおよび底面110Bにそれぞれ配置されたセンサモジュール112Aおよびセンサモジュール112Bを有する。ここでは、センサモジュール112Aおよびセンサモジュール112Bは同じ種類のセンサであり同じ構成であるとする。したがって、両者を区別しない場合にはセンサモジュール112と表記する。なお、センサモジュール112Aおよびセンサモジュール112Bは、切削工具110の側面110Aおよび底面110B以外の面に配置されていてもよい。図2には、切削工具110に対して設定される、直交する右手系のXYZ軸を表示している。X軸は側面110Aに垂直であり、Z軸は底面110Bに垂直である。
【0025】
図3を参照して、センサモジュール112は、センサ130、AD変換部132、メモリ134、制御部136、通信部138、バス140および電源部142を含む。ここでは、センサ130はひずみセンサであるとする。なお、センサ130は、ひずみセンサ以外のセンサであってもよく、例えば加速度センサであってもよい。AD変換部132は、入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。即ち、AD変換部132は、センサ130から出力されるアナログ信号(即ち出力値)を、所定のサンプリング周波数によりサンプリングしてデジタル信号を生成する。生成されたデジタル信号である出力値は、バス140を介してメモリ134に伝送される。メモリ134は、例えば書換可能な不揮発性の半導体メモリであり、バス140を介して伝送されるデータを記憶する。メモリ134は、制御部136が実行するコンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)を記憶している。
【0026】
制御部136は、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成されている。制御部136は、メモリ134に記憶された出力値を読出し、通信部138に出力する。通信部138は、入力されるデータをセンサモジュール112の外部、即ち通信装置104に送信する。通信部138は、例えばWi-Fi等の無線通信機能を有する。具体的には、通信部138は、制御部136から入力されるデータと、送信先アドレスとして通信装置104のアドレスと、送信元アドレスとして通信部138のアドレスとを含む通信パケットを生成して送信する。これにより、通信部138から送信された通信パケットは、通信装置104により受信される。バス140は、AD変換部132、メモリ134および制御部136により相互に交換されるデータを伝送する。電源部142は、センサモジュール112を構成する各部が機能するために必要な電力を供給する。電源部142は、例えばバッテリである。
【0027】
[処理装置の構成]
図4を参照して、処理装置102は、制御部160、IF部162、メモリ164およびバス166を含む。制御部160は、CPUを含んで構成されている。メモリ164は、例えば、書換可能な不揮発性の半導体メモリであり、制御部160が実行するプログラムを記憶している。メモリ164は、HDD(Hard Disk Drive)であってもよい。メモリ164は、制御部160が実行するプログラムのワーク領域を提供する。
【0028】
IF部162は、通信装置104、操作装置106および表示装置108の各々とデータを交換するためのインターフェイスである。IF部162は、通信装置104から伝送されるデータ(即ち、センサの出力値)を、バス166を介してメモリ164に伝送して記憶させる。IF部162は、操作装置106が操作されることにより入力される指示を、バス166を介して制御部160に伝送する。これにより、制御部160は、後述する処理を実行し、処理結果をメモリ164に記憶させる。メモリ164の一部は、表示装置108に表示する画像に対応するビデオデータを記憶するビデオメモリとして機能する。IF部162は、メモリ164のビデオメモリのデータを、表示装置108に伝送し、表示装置108に画像として表示させる。なお、メモリ164には、切削工具110に関する情報をも記憶している。切削工具110に関する情報は、切削工具110の種類、形状、寸法、材質、並びに、センサモジュール112Aおよびセンサモジュール112Bの配置位置等の情報を含む。
【0029】
[処理装置の動作]
図5を参照して、処理装置102の動作に関して説明する。図5に示した処理は、例えば、切削装置114による加工時に、操作装置106が操作されて指示が処理装置102に入力されたことを受けて、制御部160(図4参照)が所定のプログラムをメモリ164から読出して実行することにより実現される。なお、図5に示した処理が実行された結果は、適宜メモリ164に記憶される。ここでは、切削工具110に搭載されたセンサモジュール112Aおよびセンサモジュール112Bの各々に含まれるセンサの出力値は、順次、通信装置104に送信され、通信装置104により受信されてIF部162を介してメモリ164に記憶されるとする。このとき、センサモジュール112Aおよびセンサモジュール112Bから送信される出力値は、通信パケットに含まれる送信元アドレスにより区別されて、それぞれの時系列データとしてメモリ164に記憶される。
【0030】
図5に示した処理は、センサモジュール112Aおよびセンサモジュール112Bの各々の出力値を処理対象として実行される。例えば、センサモジュール112Aにより測定された出力値の時系列データを処理対象とするプログラムと、センサモジュール112Bにより測定された出力値の時系列データを処理対象とするプログラムとが並列に実行される。図5に示した処理は、出力値の受信中に実行されても、切削加工が終了した後に、メモリ164に記憶されている出力値に対して実行されてもよい。図5に示した処理が出力値の受信中に実行される場合、例えば、出力値を所定期間バッファしながら実行される。以下においては、センサモジュール112Aに含まれるセンサの出力値の時系列データを処理対象とするとして説明する。
【0031】
ステップ200において、制御部160は、メモリ164に記憶されている、センサモジュール112Aに含まれるセンサの出力値の時系列データから1つの出力値を読出す。その後、制御はステップ202に移行する。
【0032】
ステップ202において、制御部160は、ステップ200により読出された出力値がしきい値Th1よりも大きいか否かを判定する。大きいと判定された場合、制御はステップ204に移行する。そうでなければ、制御はステップ206に移行する。しきい値Th1は、出力値の大きさに応じて、適切な値が予め設定されていればよい。例えば、出力値が非加工時のノイズのσを下振れする場合を検出できるように、しきい値Th1は、-σに設定され得る。σは、ノイズの分布を正規分布とした場合の標準偏差であり、非加工時のノイズを測定して算出できる。
【0033】
ステップ204において、制御部160は、ステップ200により読出された出力値をそのまま表示装置108に表示する。その後、制御はステップ208に移行する。例えば、制御部160は、縦軸を出力値とし横軸を時間軸とするグラフが表示されるように、メモリ164のビデオメモリに記憶する。後述するように、ステップ204は繰返し実行されるので、表示装置108には、センサの出力値の時系列データがグラフとして表示される。
【0034】
ステップ202による判定結果がNOであれば、ステップ206において、制御部160は、ステップ200により読出された出力値に-1を乗算して得られた値を表示装置108に表示する。その後、制御はステップ208に移行する。出力値がしきい値以下であれば、符号(即ち正負)を反転した値が出力される。上記したように、Th1には負の値(即ちTh1=-σ)が設定されるので、符号が反転される出力値は負の値であり、正の値として出力される。例えば、制御部160は、符号が反転された後の正の値を、ステップ204と同様に、メモリ164のビデオメモリに記憶する。後述するように、ステップ206は繰返し実行されるので、表示装置108には、符号が反転されたセンサの出力値の時系列データがグラフとして表示される。
【0035】
ステップ208において、制御部160は、終了するか否かを判定する。終了すると判定された場合、本プログラムは終了する。そうでなければ、制御はステップ200に戻り、上記の処理が繰返される。例えば、切削装置114による加工終了後に、操作装置106が操作されて終了指示が処理装置102に入力された場合に、制御部160は終了すると判定する。また、制御部160は、加工終了を自動的に検出して、終了すると判定してもよい。
【0036】
これにより、センサモジュール112Aに含まれるセンサの出力値が正の値であれば(即ち、ステップ202による判定結果がYES)、時系列の出力値をそのまま正の値のグラフとして表示装置108に表示できる。一方、センサモジュール112Aに含まれるセンサの出力値が、しきい値Th1以下の負の値であれば(即ち、ステップ202による判定結果がNO)、時系列の出力値を反転させて、正の値のグラフとして表示装置108に表示できる。センサモジュール112Bに含まれるセンサの出力値の時系列データを処理対象としても、同様に表示できる。即ち、センサモジュール112Bに含まれるセンサの出力値が正の値であれば、時系列の出力値をそのまま正の値のグラフとして表示装置108に表示でき、しきい値Th1以下の負の値であれば、時系列の出力値を反転させて、正の値のグラフとして表示装置108に表示できる。したがって、センサの出力値が負であっても切削状態を容易に判断できる。このように、制御部160は、処理装置102において、出力値に基づいて出力値の正負を反転させる処理を行う処理部として機能する。
【0037】
例えば、図5に示した処理を行わず、センサの出力値の時系列データをそのままグラフとして表示装置108に表示すると、図6に示したように表示されるとする。縦軸は、センサの出力値を相対値として表している。縦軸には、0以下のスケールが表示されている。横軸は時間に対応する値を表す。水平の破線はしきい値を表している。出力値は、時間Tsにおいて0付近(即ちノイズレベル)から急激に減少している。このことは、時間Tsに切削加工が開始されたことを表している。切削加工中は、出力値は負の値である。その後、出力値は急激に増大し、時間Teに0付近(即ちノイズレベル)になっている。このことは、時間Teに切削加工が終了したことを表している。
【0038】
図6に示した時系列データは、図5に示したように処理されると、図7に示すようなグラフとして表示装置108に表示される。図7の縦軸および横軸の意味は、図6と同じである。但し、図7においては、図6と異なり、縦軸には0以上のスケールが表示されている。図7においては、Th1よりも大きい出力値はそのまま表示され、Th1以下の出力値は符号が反転されて、即ち正の値として表示されている。時間Tsから時間Teの間、即ち切削加工中において、負であった出力値は正の値として表示されている。したがって、センサの出力値が負であっても切削状態を容易に判断できる。なお、図7において、時間Ts以前(即ち切削加工前)、および、時間Te以降(即ち切削加工後)においては、しきい値以下のノイズは、符号が反転されて正の値として表示されており、しきい値(左右方向の波線参照)よりも下には表示されていない。
【0039】
[変形例]
センサからの出力値が負である場合のグラフを、切削状態を容易に判断できように反転して表示する処理は、図5に示した処理に限定されない。変形例に係る処理は、切削加工の開始を検出し、切削加工開始時における出力値の正負に応じて、出力値の符号を反転させる。その処理を、例えば図8に示す。図8に示した処理は、例えば、切削装置114による加工時に、操作装置106が操作されて指示が処理装置102に入力されたことを受けて、制御部160(図4参照)が、所定のプログラムをメモリ164から読出して実行することにより実現される。図5の場合と同様に、切削工具110に搭載されたセンサモジュール112Aおよびセンサモジュール112Bの各々に含まれるセンサの出力値は、順次、通信装置104に送信され、メモリ164に記憶される。また、図8に示した処理は、センサモジュール112Aおよびセンサモジュール112Bの各々に含まれるセンサの出力値を処理対象として実行される。以下においては、センサモジュール112Aに含まれるセンサの出力値の時系列データを処理対象とするとして説明する。
【0040】
図8を参照して、ステップ300において、制御部160は、メモリ164に記憶されている、センサモジュール112Aに含まれるセンサの出力値の時系列データから所定区間の出力値を読出す。その後、制御はステップ302に移行する。具体的には、図9を参照して、制御部160は、時系列の出力値のうち、個数N1の連続するデータの出力値を読出す。
【0041】
ステップ302において、制御部160は、ステップ300により読出された出力値から指標を算出し、その絶対値が正のしきい値Th2よりも大きいか否か、即ち、指標<-Th2、または、指標>Th2であるか否かを判定する。大きければ(即ち、|指標|>Th2)、制御はステップ308に移行する。そうでなければ(即ち、|指標|≦Th2)、制御はステップ304に移行する。指標は、ステップ300により読出されたN1個の出力値のうち、最も新しい出力値から連続するデータの出力値(個数N2(図9参照))の移動平均値A2から、N1個の出力値の移動平均値A1を減算した値である。即ち、|指標|=|A2-A1|である。例えば、N1およびN2は、それぞれ200および100である。しきい値Th2は、例えば、非加工時のノイズの標準偏差をσとして、σに設定される。
【0042】
ステップ304において、制御部160は、ステップ300により読出された出力値をそのまま表示装置108に表示する。その後、制御はステップ306に移行する。例えば、制御部160は、縦軸を出力値とし横軸を時間軸とするグラフが表示されるように、メモリ164のビデオメモリに記憶する。後述するように、ステップ304は繰返し実行されるので、表示装置108には、センサの出力値の時系列データがグラフとして表示される。
【0043】
ステップ306において、制御部160は、ステップ300によりメモリ164から出力値を読出す区間を、前回読出した区間から1だけ、より新しい出力値が読出されるように移動させる。その後、制御はステップ300に戻る。即ち、前回読出した出力値のうち、最も古い出力値を含まず、最も新しい出力値の次の出力値を含むように、出力値を読出す新たな区間を設定する。なお、ステップ300が2回目以降に実行される場合、前回の区間の出力値は既に読出しているので、制御部160は、最も古い出力値を破棄し、新たに読出すべき出力値を読出せばよい。
【0044】
ステップ302の処理は、切削加工の開始を検出するための処理である。ステップ302の判定結果がYESであれば、切削加工の開始が検出され、後述するステップ308が実行される。ステップ302の判定結果がNOであれば、切削加工の開始は検出されていない。したがって、ステップ302の判定結果がYESになるまで(即ち、切削加工の開始が検出されるまで)、出力値の読出し区間を移動させてステップ302の判定を繰返す。図6のグラフから算出される指標を図10に示す。左右方向の2本の破線は、指標=Th2、および、指標=-Th2を表す。図10には、図6に示した時間Ts(即ち切削加工開始時)を示している。切削加工前においては、指標の絶対値はしきい値Th2以下である。切削加工の開始直後においては、指標の絶対値がしきい値Th2よりも大きくなっている。したがって、|指標|>しきい値Th2(即ち、指標<-Th2、または、指標>Th2)であれば、切削加工が開始されたと判定できる。
【0045】
ステップ308において、制御部160は、指標がしきい値Th2よりも大きいか否かを判定する。大きいと判定された場合、制御はステップ310に移行する。そうでなければ(即ち、指標≦Th2)、制御はステップ314に移行する。
【0046】
ステップ310において、制御部160は、メモリ164からセンサの出力値を読出し、ステップ304と同様に、センサの出力値をそのまま表示装置108に表示する。その後、制御はステップ312に移行する。ステップ310が繰返されることにより、表示装置108にセンサの出力値が時系列のグラフとして表示される。
【0047】
ステップ312において、制御部160は、終了するか否かを判定する。終了すると判定された場合、本プログラムは終了する。そうでなければ、制御はステップ310に戻り、ステップ310の処理が繰返される。例えば、切削装置114による加工終了後に、操作装置106が操作されて終了指示が処理装置102に入力された場合に、制御部160は終了すると判定する。また、制御部160は、加工終了を自動的に検出して、終了すると判定してもよい。
【0048】
ステップ314において、制御部160は、メモリ164からセンサの出力値を読出し、その出力値に-1を乗算して得られた値を表示装置108に表示する。その後、制御はステップ316に移行する。Th2には正の値(即ちTh2=σ)が設定されるので、ステップ308の判定結果がNO(即ち、指標がしきい値Th2以下)であれば、ステップ302の判定結果がYES(即ち、指標<-Th2、または、指標>Th2)であることから指標<-Th2であり、出力値は負の値となっている。即ち、符号が反転される出力値は負の値であり、正の値として出力される。例えば、制御部160は、符号が反転された後の正の値を、ステップ304と同様に、メモリ164のビデオメモリに記憶する。ステップ314が繰返されることにより、表示装置108に、符号が反転されたセンサの出力値が時系列のグラフとして表示される。
【0049】
ステップ316において、制御部160は、ステップ312と同様に、終了するか否かを判定する。終了すると判定された場合、本プログラムは終了する。そうでなければ、制御はステップ314に戻り、ステップ314の処理が繰返される。
【0050】
ステップ308の処理は、加工開始時におけるセンサの出力値の正負を判定する処理である。加工が開始すると、出力値は、急激に増大または減少する。加工開始直後(即ち、|指標|>しきい値Th2)に、センサの出力値が増大すれば、指標>Th2となる。一方、加工開始直後に、センサの出力値が減少すれば、指標<-Th2となる。したがって、指標>しきい値Th2であるか否かを判定することにより、センサの出力値が正であるか、負であるかを判定できる。指標>しきい値Th2であれば、センサの出力値は正であるので、ステップ310によりセンサの出力値をそのまま表示する。指標≦しきい値Th2であれば、指標<-Th2であり、センサの出力値は負であるので、ステップ314によりセンサの出力値の符号を反転させて、正の値として表示する。したがって、センサの出力値が負であっても切削状態を容易に判断できる。
【0051】
例えば、センサの出力値の時系列データをそのまま表示した図6に示した出力値を処理対象とする。図6に示した時系列データは、図8に示したように処理されると、図11に示すようなグラフとして表示装置108に表示される。図11の縦軸および横軸の意味は、図6と同じである。但し、図11においては、図6と異なり、縦軸は0以上のスケールが表示されている。図11においては、切削加工の開始前(時間Tsより前)においては、センサの出力値はそのまま表示され、切削加工の開始後(時間Ts以降)は、センサの出力値は符号が反転されて、即ち正の値として表示されている。切削加工の開始後、即ち切削加工中において、負であった出力値は正の値として表示されている。したがって、センサの出力値が負であっても切削状態を容易に判断できる。なお、図11においては、図7と異なり、切削加工終了後(時間Te以降)においても、出力値は符号が反転されて表示されている。即ち、センサの出力値(即ちノイズ)が正の値であれば、負の値として表示され、センサの出力値(即ちノイズ)が負の値であれば、正の値として表示されている。
【0052】
上記においては、センサの出力値に-1を乗算して表示する場合を説明したが、これに限定されない。後述するように(図15参照)、センサの出力値の符号を反転させる代わりに、センサの出力値を表示するグラフの縦軸のスケールを反転させてもよい。これにより、センサの出力値が負であれば、上下が反転されて、正の出力値のグラフと同様に表示される。したがって、センサの出力値が負であっても切削状態を容易に判断できる。
【0053】
[画面表示]
図12から図15を参照して、表示装置108に表示される画面に関して説明する。図12を参照して、表示装置108に表示される表示画面400は、領域402、領域404、領域406および領域408を含む。領域402には、システムの状態および操作に関する情報が表示される。システムの状態は、測定対象の切削工具に搭載された各センサを特定するための情報(例えば、センサの種類および番号)、無線通信の状態、センサの電池残量等により表される。操作に関する情報は、センサの出力データを保存するファイルの名前、突出し量、測定開始を指示する測定開始ボタン410等により表される。測定開始ボタン410が操作されると、処理装置102から各センサに対して、センサの出力値の送信が指示され、センサの出力値の送信が開始される。これにより、センサの出力値は通信装置104により受信され、処理装置102に伝送される。
【0054】
領域402には、切削工具110に搭載されているセンサモジュール112に含まれるセンサの出力値(即ち測定値)が、上記したように時系列のグラフとして表示される。領域406には、センサモジュール112が搭載された切削工具110の切削加工中の状態を表す情報として、切削工具110に関する物理量、具体的には応力および変位が表示される。領域408には、領域404に関する設定画面を表示させるための表示設定ボタン412が表示されている。領域408の右端には、表示画面400の表示形態(即ち、アイコン表示、ウィンドウ表示および全画面表示)を変更するボタンおよび表示画面400を終了するためのボタンが表示されている。
【0055】
図13を参照して、表示設定ボタン412が操作されることにより表示される表示設定画面420は、複数の領域422と、保存ボタン424およびキャンセルボタン426とを含む。各領域422には、センサ種別、縦軸表示範囲およびグラフの縦軸反転に関する情報が設定される。各領域422に含まれる左端のチェックボックスは、その領域422内の設定を有効にするためのものである。センサ種別は、センサを特定する情報であり、下向きの三角印が操作されることにより表示されるプルダウンメニューに含まれるセンサch00、センサch01等の複数の表示の中から選択される。縦軸表示範囲には、出力値を表示するグラフの縦軸の範囲が、数値入力により設定される。縦軸反転は、チェックボックスであり、縦軸反転のチェックボックスがチェックされていなければ出力値がそのまま、即ち、値が増大する方向を上方とする縦軸スケールを用いてグラフ表示される。一方、縦軸反転のチェックボックスがチェックされていれば、チェックされていない場合の縦軸を反転した縦軸を用いて、即ち、値が減少する方向を上方とする縦軸スケールを用いてグラフ表示される。このグラフ表示は、出力値が負の場合に符号を反転して表示するグラフ表示に対応する。但し、縦軸スケールの符号は反対である。
【0056】
保存ボタン424が操作されると、設定されている情報がメモリ164(図4参照)に記憶され、表示装置108から表示設定画面420は消去され、表示画面400が表示される。キャンセルボタン426が操作されると、設定されている情報が破棄され、表示装置108から表示設定画面420は消去され、表示画面400が表示される。
【0057】
[測定値の表示]
例えば、図13に示したように表示設定されていれば、図12に示した領域404には、図14に示すようなグラフが表示される。即ち、縦軸反転のチェックボックスがチェックされていないので、ch00およびch01の各々のセンサの出力値がそのままグラフ表示される。図14において、縦軸はセンサの出力値、横軸は時間を表す。2つのグラフのいずれに関しても、縦軸には、下方がセンサの出力値が減少する方向であるスケールが表示されている。
【0058】
例えば、図13に示した表示設定画面420において、センサch00に対応する縦軸反転のチェックボックスがチェックされると、図12に示した領域404には、図15に示すようなグラフが表示される。即ち、ch01のセンサの出力値はそのままグラフ表示されているが、ch00のセンサの出力値は、図14と異なり、上下が反転されてグラフ表示されている。図15においては、ch00のグラフの縦軸には、上方がセンサの出力値が減少する方向であるスケールが表示されている。ch00のグラフの縦軸のスケールは、ch01のスケールの上下が反転されたものである。このように、ひずみセンサの出力値が負である場合に、反転されたグラフとして表示することを可能にすることにより、センサの出力値が負であっても切削状態を容易に判断できる。
【0059】
[工具および物理量の表示]
応力・変位を表示する領域406に表示される画面例を示す。図16を参照して、旋削工具を表す画像(以下、工具画像という)に重畳させて、側面110Aおよび底面110Bのそれぞれに配置されたセンサモジュール112Aおよびセンサモジュール112Bに含まれるひずみセンサを表すセンサ画像130Aおよび103Bを表示する。センサ画像130Aおよび103Bは、対応するひずみセンサが旋削工具に配置された位置に対応する、工具画像上の位置に表示される。なお、図16において、参照符号は表示装置108の表示画面には表示されない(図17から図21においても同様)。旋削工具を表す工具画像は、処理装置102の制御部160により、メモリ164(図4参照)に記憶されている切削工具の情報(例えば、CAD(Computer-Aided Design)データ、CG(Computer Graphics)データ等)から生成され得る。切削工具に配置されたひずみセンサの位置も、切削工具の情報に含めておけば、センサの位置に対応する工具画像上の位置を算出できる。なお、2次元画像である工具画像自体をメモリ164に記憶しておいてもよい。
【0060】
図16において、センサ画像130Aおよび103Bは、各ひずみセンサを表す形状(例えば四角形)を用いて、各センサに加わる力(即ち、引張力または圧縮力)に応じて異なる色により表示される。例えば、引張力であれば赤色により、圧縮力であれば青色により表示する。また、図16においては、センサ画像130Aおよびセンサ画像130Bのそれぞれの近くに、旋削工具上の各センサを区別するための情報として、文字430(即ちch00)および文字432(即ちch01)が表示されている。これにより、切削加工(即ち旋削加工)時に、センサ(即ち、ひずみセンサ)が搭載された切削工具(即ち旋削工具)にかかる応力方向(即ち、圧縮または引張)を把握でき、切削加工時における切削工具の状態を容易に把握できる。なお、工具画像と、重畳されたセンサ画像130Aおよびセンサ画像130Bとを、操作装置106(例えば、コンピュータ用マウスまたはタッチパネル)に対する操作に応じて回転させて表示してもよい。また、工具画像をCADデータまたはCGデータから生成する場合、表示装置108に対する操作に応じた視点から見た2次元画像として表示可能にできる。このような操作により、切削加工時における切削工具の状態をより容易に把握できる。
【0061】
図16に代えて、図17に示すように表示されてもよい。図17を参照して、図16と同様に、旋削工具を表す工具画像に重畳させて、側面110Aおよび底面110Bのそれぞれに配置されたセンサモジュール112Aおよびセンサモジュール112Bに含まれるひずみセンサを表すセンサ画像130Aおよび103Bを表示する。図17には、図16と同様に、旋削工具上の各センサを区別するための情報として、文字430および文字432を表示している。図17においてはさらに、センサ画像130Aおよびセンサ画像130Bのそれぞれの近くに、ひずみセンサに加わる力(即ち、引張力または圧縮力)を表す矢印500および矢印502を表示している。これにより、図16と同様に、切削加工(即ち旋削加工)時に、センサ(即ち、ひずみセンサ)が搭載された切削工具(即ち旋削工具)にかかる応力方向(即ち、圧縮または引張)を把握でき、切削加工時における切削工具の状態を容易に把握できる。なお、センサ画像130Aおよび103Bは、同じ色により表示されていても、センサに加わる力(即ち、引張力または圧縮力)に応じて異なる色により表示されていてもよい。また、矢印500および矢印502は、同じ色により表示されていても、センサに加わる力に応じて異なる色により表示されていてもよい。
【0062】
旋削工具にかかる応力を表示する場合、例えば図18に示すように表示される。図18を参照して、旋削工具を表す工具画像に重畳させて、2つのひずみセンサの出力値から算出された切刃にかかる応力を表すベクトル画像510およびベクトル画像512を、切刃に対応する工具画像上の位置に表示する。ベクトル画像510およびベクトル画像512はそれぞれ、切削工具の底面110Bおよび側面110Aに配置されたセンサの出力値から算出された応力を表す。したがって、ベクトル画像510の方向は、底面110Bに垂直(即ち、図2に示したZ軸の負方向)であり、ベクトル画像512の方向は、側面110Aに垂直(即ち、図2に示したX軸の負方向)である。ベクトル画像510およびベクトル画像512の近くには、それぞれに対応するセンサを表すための情報として、文字430および文字432が表示されている。ベクトル画像510およびベクトル画像512は、応力の大きさ(即ち応力値)に応じた長さを有する。ベクトル画像510およびベクトル画像512の終点(ベクトルの終点に対応)は、表示する応力が算出された位置(以下、算出対象位置という)、即ち刃先に位置するように表示される。これにより、切削加工(即ち旋削加工)時に、センサ(即ち、ひずみセンサ)が搭載された切削工具(即ち旋削工具)にかかる応力を視覚的に表現でき、切削工具の物理的変化を容易に把握できる。なお、ベクトル画像510およびベクトル画像512は、同じ色により表示されていても、異なる色により表示されていてもよい。
【0063】
旋削工具の変位を表示する場合、例えば図19に示すように表示される。図19を参照して、旋削工具を表す工具画像に重畳させて、2つのひずみセンサの出力値から算出された切刃における変位を表すベクトル画像514およびベクトル画像516を、切刃の位置に表示する。ベクトル画像514およびベクトル画像516はそれぞれ、切削工具の底面110Bおよび側面110Aに配置されたセンサの出力値から算出された変位を表す。したがって、ベクトル画像514の方向は、底面110Bに垂直(即ち、図2に示したZ軸の負方向)であり、ベクトル画像516の方向は、側面110Aに垂直(即ち、図2に示したX軸の負方向)である。ベクトル画像514およびベクトル画像516の近くには、それぞれに対応するセンサを表すための情報として、文字430および文字432が表示されている。ベクトル画像514およびベクトル画像516は、変位の大きさ(即ち変位量)に応じた長さを有する。ベクトル画像514およびベクトル画像516の始点(ベクトルの始点に対応)は、表示する変位が算出された位置(即ち算出対象位置)、即ち刃先に位置するように表示される。これにより、切削加工(即ち旋削加工)時に、センサ(即ち、ひずみセンサ)が搭載された切削工具(即ち旋削工具)に生じる変位を視覚的に表現でき、切削工具の物理的変化を容易に把握できる。なお、ベクトル画像514およびベクトル画像516は、同じ色により表示されていても、異なる色により表示されていてもよい。
【0064】
また、図18に示したように切削工具に応力を表すベクトル画像を重畳させて表示する第1形態と、図19に示したように切削工具に変位を表すベクトル画像とを重畳させて表示する第2形態とを切替えて表示してもよい。これにより、切削加工(即ち旋削加工)時に、センサ(即ち、ひずみセンサ)が搭載された切削工具(即ち旋削工具)にかかる応力および切削工具に生じる変位を視覚的に表現でき、切削工具の物理的変化をより容易に把握できる。
【0065】
なお、切削工具(旋削工具を含む)の切刃にかかる応力および切刃の変位は、ひずみセンサの出力値であるひずみ値から、切削工具の形状、寸法、材質および突き出し量、並びに、切削工具におけるひずみセンサの取付位置を考慮して算出すればよい。突き出し量は、切削工具の切削装置への取付位置(即ち、応力および変位の算出における基準位置)から切刃までの距離を表す。切削工具(旋削工具を含む)の切刃にかかる応力および切刃の変位は、処理装置102の制御部160により算出される。即ち、制御部160は、処理装置102において、センサの出力値を応力および変位に変換する変換部として機能する。
【0066】
旋削工具に、直交する3方向のひずみをそれぞれ検出するひずみセンサが配置されていれば、旋削工具にかかる応力を、例えば図20に示すように表示してもよい。図20を参照して、旋削工具を表す画像に重畳させて、ひずみセンサの出力値から算出された切刃にかかる応力を表す3次元ベクトルであるベクトル画像520を、切刃の位置に表示する。ベクトル画像520の終点(ベクトルの終点に対応)は、表示する応力が算出された位置(即ち算出対象位置)、即ち刃先に位置するように表示される。これにより、切削加工(即ち旋削加工)時に、センサ(即ち、ひずみセンサ)が搭載された切削工具(即ち旋削工具)にかかる応力、例えば旋削工具の切刃にかかる応力を視覚的に表現でき、切削工具の物理的変化を容易に把握できる。
【0067】
旋削工具に、直交する3方向のひずみをそれぞれ検出するひずみセンサが配置されていれば、旋削工具の変位を、例えば図21に示すように表示してもよい。図21を参照して、旋削工具を表す画像に重畳させて、ひずみセンサの出力値から算出された切刃における変位を表す3次元ベクトルであるベクトル画像522を、切刃の位置に表示する。ベクトル画像522の始点(ベクトルの始点に対応)は、表示する変位が算出された位置(即ち算出対象位置)、即ち刃先に位置するように表示される。これにより、切削加工(即ち旋削加工)時に、センサ(即ち、ひずみセンサ)が搭載された切削工具(即ち旋削工具)に生じる変位、例えば旋削工具の切刃の変位を視覚的に表現でき、切削工具の物理的変化を容易に把握できる。
【0068】
また、図20に示したように切削工具に応力を表すベクトル画像を重畳させて表示する第1形態と、図21に示したように切削工具に変位を表すベクトル画像とを重畳させて表示する第2形態とを切替えて表示してもよい。これにより、切削加工(即ち旋削加工)時に、センサ(即ち、ひずみセンサ)が搭載された切削工具(即ち旋削工具)にかかる応力および切削工具に生じる変位を視覚的に表現でき、切削工具の物理的変化をより容易に把握できる。
【0069】
なお、図13に示した領域406に表示される工具画像は1つに限定されない。複数の工具画像を表示してもよい。例えば、領域404に複数のセンサに関するグラフが表示される場合、それら複数のセンサの各々に対応する工具画像を表示してもよい。
【0070】
なお、上述の実施形態の各処理(各機能)は、1または複数のプロセッサを含む処理回路(Circuitry)により実現されてもよい。上記処理回路は、上記1または複数のプロセッサに加え、1または複数のメモリ、各種アナログ回路および各種デジタル回路のいずれかが組み合わされた集積回路等により構成されてもよい。上記1または複数のメモリは、上記各処理を上記1または複数のプロセッサに実行させるプログラム(命令)を格納する。上記1または複数のプロセッサは、上記1または複数のメモリから読出した上記プログラムに従い上記各処理を実行してもよいし、予め上記各処理を実行するように設計された論理回路に従って上記各処理を実行してもよい。上記プロセッサは、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等、コンピュータの制御に適合する種々のプロセッサであってよい。
【0071】
また、処理装置102の処理(具体的には、出力値の正負を反転させる処理(例えば、図6および図8に示した処理))をコンピュータに実行させるプログラムを記録した記録媒体を提供できる。記録媒体は、例えば光ディスク(DVD(Digital Versatile Disc)等)、着脱可能な半導体メモリ(USB(Universal Serial Bus)メモリ等)である。コンピュータプログラムは通信回線により伝送され得るが、記録媒体は非一時的な記録媒体を意味する。記録媒体に記憶されたプログラムを車両に搭載されたコンピュータに読込ませることにより、コンピュータは、上記したように、車載装置が、路側装置等の外部装置にデータをアップロードする際に、遅延時間および通信帯域を考慮して、外部装置が提供するサービスにより有効に利用され得るデータを送信することを可能とする。
【0072】
(付記)
即ち、コンピュータ読取り可能な非一時的な記録媒体は、
コンピュータに、
切削工具から、当該切削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信機能と、
前記受信機能により受信された前記出力値に基づいて前記出力値の正負を反転させる処理を行う処理機能と、
前記処理機能により正負が反転された後の前記出力値を表示する表示機能とを実現させる、コンピュータプログラムを記憶している。
【0073】
以上、実施の形態を説明することにより本開示を説明したが、上記した実施の形態は例示であって、本開示は上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本開示の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味および範囲内での全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0074】
100 システム
102 処理装置
104 通信装置
106 操作装置
108 表示装置
110 切削工具
110A 側面
110B 底面
112、112A、112B センサモジュール
114 切削装置
120 切削インサート
122 切刃
124 固定用部材
130 センサ
130A、130B センサ画像
132 AD変換部
134、164 メモリ
136、160 制御部
138 通信部
140、166 バス
142 電源部
162 IF部
200、202、204、206、208、300、302、304、306、308、310、312、314、316 ステップ
400 表示画面
402、404、406、408、422 領域
410 測定開始ボタン
412 表示設定ボタン
420 表示設定画面
424 保存ボタン
426 キャンセルボタン
430、432 文字
500、502 矢印
510、512、514、516、520、522 ベクトル画像
N1、N2 個数
Te、Ts 時間
【要約】
処理装置は、切削工具から、当該切削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信部と、受信部により受信された出力値に基づいて出力値の正負を反転させる処理を行う処理部と、処理部により正負が反転された後の出力値を表示する表示部とを含む。
図1
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