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特許7384321処理装置、処理方法、システムおよびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】処理装置、処理方法、システムおよびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/09 20060101AFI20231114BHJP
   B23C 9/00 20060101ALI20231114BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B23Q17/09 H
B23C9/00 Z
B23Q17/00 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023524658
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 JP2022041290
【審査請求日】2023-05-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100124028
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 公雄
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 章宏
(72)【発明者】
【氏名】小池 雄介
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特許第7160230(JP,B1)
【文献】特開2017-132000(JP,A)
【文献】特開2013-246671(JP,A)
【文献】国際公開第2021/210037(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/09
B23C 9/00
B23Q 17/00
G05B 19/18
G05B 19/4063
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転削工具から、当該転削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記出力値から前記転削工具に関する物理量を算出する処理部と、
前記物理量の時系列データを表すグラフと前記物理量の分布を表す分布画像とを含む画像を表示する表示部とを含み、
前記表示部は、前記グラフに重畳させて所定時間に対応する幅を有する図形を表示し、
前記表示部に対する指示を入力するための操作部をさらに含み、
前記表示部は、前記図形が重畳している前記物理量の分布を表す前記分布画像を生成して表示し、
前記操作部により再生の指示が入力されたことを受けて、前記表示部は、前記図形を前記グラフの時間軸に沿って移動させつつ、移動後の前記図形が重畳している前記物理量により前記分布画像を更新する、処理装置。
【請求項2】
前記センサは、ひずみセンサであり、
前記出力値は、前記転削工具による転削加工時における前記センサの出力値であり、
前記処理部は、前記出力値から切削抵抗を算出し、
前記表示部は、前記所定時間内における前記出力値から算出される前記切削抵抗の2つの成分を平面にプロットすることにより前記分布画像を生成し、
前記2つの成分は、前記切削抵抗の、前記転削工具の回転軸に垂直な平面内において交差する2つの軸方向の成分である、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記操作部が操作されることにより、前記図形の1回の移動量が指定される、請求項に記載の処理装置。
【請求項4】
前記操作部が操作されることにより、前記分布画像が更新される速度が指定される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記転削工具の送り速度、または、前記転削工具の単位時間当たりの回転数および前記出力値のサンプリング周波数に基づいて、前記分布画像の更新速度を調整する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項6】
前記受信部は、
前記送り速度が第1速度である第1転削加工における前記出力値と、
前記送り速度が前記第1速度よりも大きい第2速度である第2転削加工における前記出力値を受信し、
前記処理部は、前記第1転削加工における前記出力値および前記第2転削加工における前記出力値から前記物理量を算出し、
前記処理部は、
前記第1転削加工における前記出力値から生成された前記分布画像の前記更新速度を増大させる、または、
前記第2転削加工における前記出力値から生成された前記分布画像の前記更新速度を減少させる、請求項に記載の処理装置。
【請求項7】
前記受信部は、
前記回転数が第1回転数であり、前記出力値のサンプリング周波数が第1周波数である第1転削加工における前記出力値と、
前記回転数が第2回転数であり、前記出力値のサンプリング周波数が第2周波数である第2転削加工における前記出力値とを受信し、
前記処理部は、
前記第1転削加工における前記出力値から、前記所定時間として第1時間を決定し、
前記第2転削加工における前記出力値から、前記所定時間として第2時間を決定し、
前記第1時間が前記第2時間よりも大きければ、前記第1転削加工における前記出力値から生成された前記分布画像の前記更新速度を減少させる、または、前記第2転削加工における前記出力値から生成された前記分布画像の前記更新速度を増大させる、請求項に記載の処理装置。
【請求項8】
前記第1回転数をS1とし、前記第1周波数をfs1とし、前記第1時間をT1とし、Z1を正の整数として、Z1=fs1×(60/S1)×N1を満たす自然数であるN1を用いて、前記第1時間T1は、T1=(60/S1)×N1により算出され、
前記第2回転数をS2とし、前記第2周波数をfs2とし、前記第2時間をT2とし、Z2を正の整数として、Z2=fs2×(60/S2)×N2を満たす自然数であるN2を用いて、前記第2時間T2は、T2=(60/S2)×N2により算出される、請求項に記載の処理装置。
【請求項9】
T1=(60/S1)×N1により算出された前記第1時間T1は、
所定の上限値Tl1よりも大きい場合、前記上限値Tl1に変更され、
所定の下限値Ts1よりも小さい場合、前記下限値Ts1に変更され、
T2=(60/S2)×N2により算出された前記第2時間T2は、
所定の上限値Tl2よりも大きい場合、前記上限値Tl2に変更され、
所定の下限値Ts2よりも小さい場合、前記下限値Ts2に変更される、請求項に記載の処理装置。
【請求項10】
通信装置が、転削工具から、当該転削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信ステップと、
処理装置が、前記通信装置により受信された前記出力値から前記転削工具に関する物理量を算出する処理ステップと、
表示装置が、前記物理量の時系列データを表すグラフと前記物理量の分布を表す分布画像とを含む画像を表示する表示ステップと、
前記表示装置が、前記グラフに重畳させて所定時間に対応する幅を有する図形を表示するステップと、
前記表示装置が、前記図形が重畳している前記物理量の分布を表す前記分布画像を生成して表示するステップと
前記表示装置に対する指示を入力するための操作装置により再生の指示が入力されたことを受けて、前記表示装置が、前記図形を前記グラフの時間軸に沿って移動させつつ、移動後の前記図形が重畳している前記物理量により前記分布画像を更新するステップとを含む、処理方法。
【請求項11】
コンピュータに、
転削工具から、当該転削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信機能と、
前記受信機能により受信された前記出力値から前記転削工具に関する物理量を算出する処理機能と、
前記物理量の時系列データを表すグラフと前記物理量の分布を表す分布画像とを含む画像を表示する表示機能と、
前記グラフに重畳させて所定時間に対応する幅を有する図形を表示する機能と、
記図形が重畳している前記物理量の分布を表す前記分布画像を生成して表示する機能と
前記コンピュータに対する指示を入力するための操作装置により再生の指示が入力されたことを受けて、前記図形を前記グラフの時間軸に沿って移動させつつ、移動後の前記図形が重畳している前記物理量により前記分布画像を更新する機能とを実現させる、コンピュータプログラム。
【請求項12】
転削工具に搭載されたセンサと、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の処理装置とを含み、
前記転削工具は、前記センサの出力値を前記処理装置に送信する通信部を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理装置、処理方法、システムおよびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
センサを備えた切削工具(即ち、転削工具および旋削工具)が知られている。例えば、下記特許文献1には、センサと無線通信部とを含む切削工具が開示されている。この切削工具において、センサにより測定された切削工具の情報は、無線通信部により外部に送信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-62746号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示のある局面に係る処理装置は、転削工具から、当該転削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信部と、受信部により受信された出力値から転削工具に関する物理量を算出する処理部と、物理量の時系列データを表すグラフと物理量の分布を表す分布画像とを含む画像を表示する表示部とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、本開示の実施形態に係るシステムの構成を示す模式図である。
図2図2は、図1に示した転削工具を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、図1に示した転削工具に取付けられるセンサモジュールの構成を示すブロック図である。
図4図4は、図1に示した処理装置の構成を示すブロック図である。
図5図5は、表示装置に表示される表示画面の例を示す図である。
図6図6は、図1に示した処理装置による動作を示すフローチャートである。
図7図7は、表示装置に表示される初期画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
転削加工により得られたセンサの出力値を解析することにより、切刃の刃先にかかる切削の負荷(即ち切削抵抗)を算出し、加工状態を評価できる。評価方法としては、複数の切刃を有する転削工具に関して、各刃にかかる負荷の状況を任意の加工区間(即ちに、加工期間全体における任意の期間)において確認する方法、または、各刃にかかる負荷状況の傾向を加工全体に対して確認する方法がある。
【0007】
例えば、任意の加工区間のデータ(例えば、転削工具にかかる負荷等の物理量)を確認したい場合、時系列データを表すグラフから、特定の区間を確認した後、その区間のデータを用いて、分布画像(例えば、転削工具にかかる負荷の成分を2次元にプロットした画像)を作成する必要がある。また、分布画像1枚当たりに含める加工区間(即ち、1枚の分布画像の生成に用いるデータを特定するための区間)の調整を行うには、都度分布画像を生成しつつ確認する必要があった。加工全体のデータから生成した分布画像の時間的な変化をアニメーション(例えばGIF(Graphics Interchange Format)アニメーション)により表示する場合にも、再生速度を確認し調整するには、都度各フレーム画像(即ち分布画像)を生成する必要があった。また、異なる加工条件による転削加工を比較する際には、画像1枚当たりに含める加工区間および再生速度を個々に調整する必要がある。このように、転削加工により得られたセンサの出力値から算出された物理量(例えば負荷)から、転削工具の状態を視覚的に把握するには、煩雑なデータ処理が必要であった。
【0008】
したがって、本開示は、センサが搭載された転削工具の状態を容易に把握できる処理装置、処理方法、システムおよびコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【0009】
[発明の効果]
本開示によれば、センサが搭載された転削工具の状態を容易に把握できる処理装置、処理方法、システムおよびコンピュータプログラムを提供できる。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の実施形態の内容を列記して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組合せてもよい。
【0011】
(1)本開示の第1の局面に係る処理装置は、転削工具から、当該転削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信部と、受信部により受信された出力値から転削工具に関する物理量を算出する処理部と、物理量の時系列データを表すグラフと物理量の分布を表す分布画像とを含む画像を表示する表示部とを含む。このように、グラフと分布画像とを同時に表示することにより、転削加工中における、センサが搭載された転削工具の状態を容易に把握できる。
【0012】
(2)上記(1)において、センサは、ひずみセンサであることができ、出力値は、転削工具による転削加工時におけるセンサの出力値であることができ、処理部は、出力値から切削抵抗を算出でき、表示部は、所定時間内における出力値から算出される切削抵抗の2つの成分を平面にプロットすることにより分布画像を生成でき、2つの成分は、切削抵抗の、転削工具の回転軸に垂直な平面内において交差する2つの軸方向の成分であることができる。これにより、転削加工中における、センサが搭載された転削工具の切削抵抗を容易に把握でき、分布図形の形状から、切刃の欠損または摩耗等を容易に判定できる。
【0013】
(3)上記(2)において、表示部は、グラフに重畳させて所定時間に対応する幅を有する図形を表示してもよく、処理装置は、表示部に対する指示を入力するための操作部をさらに含んでいてもよく、操作部が操作されることにより、幅、および、グラフ上における図形の位置の少なくとも一方が変更されたことを受けて、処理部は、変更後の図形が重畳している出力値を用いて物理量を算出してもよく、表示部は、変更後の図形が重畳している出力値を用いて算出された物理量の分布を表す分布画像を生成して表示してもよい。これにより、センサが搭載された転削工具の状態を把握するために適切な分布画像を生成でき、センサが搭載された転削工具の状態を把握することが容易になる。
【0014】
(4)上記(3)において、操作部により再生の指示が入力されたことを受けて、表示部は、図形をグラフの時間軸に沿って移動させつつ、処理部により算出された物理量の分布を表す分布画像を更新してもよい。これにより、転削工具に関する物理量の時間的変化を分布画像のアニメーションにより確認でき、センサが搭載された転削工具の状態をより容易に把握できる。
【0015】
(5)上記(4)において、操作部が操作されることにより、図形の1回の移動量が指定されてもよい。これにより、センサが搭載された転削工具の状態を把握するために適切な分布画像のアニメーションを生成できる。
【0016】
(6)上記(4)または(5)において、操作部が操作されることにより、分布画像が更新される速度が指定されてもよい。これにより、センサが搭載された転削工具の状態を把握するために適切な分布画像のアニメーションの再生速度を指定できる。
【0017】
(7)上記(4)から(6)のいずれか1つにおいて、処理部は、転削工具の送り速度、または、転削工具の単位時間当たりの回転数および出力値のサンプリング周波数に基づいて、分布画像の更新速度を調整してもよい。これにより、2つの転削加工の測定結果を、同じタイミングにおいて容易に比較できる。
【0018】
(8)上記(7)において、受信部は、送り速度が第1速度である第1転削加工における出力値と、送り速度が第1速度よりも大きい第2速度である第2転削加工における出力値を受信してもよく、処理部は、第1転削加工における出力値および第2転削加工における出力値から物理量を算出してもよく、処理部は、第1転削加工における出力値から生成された分布画像の更新速度を増大させる、または、第2転削加工における出力値から生成された分布画像の更新速度を減少させてもよい。これにより、送り速度が異なる加工条件により同じ製品を加工した際に、同じタイミング(例えば、同じ距離を切削したタイミング)において、加工状態(即ち転削工具の状態)を容易に比較できる。
【0019】
(9)上記(7)において、受信部は、回転数が第1回転数であり、出力値のサンプリング周波数が第1周波数である第1転削加工における出力値と、回転数が第2回転数であり、出力値のサンプリング周波数が第2周波数である第2転削加工における出力値とを受信してもよく、処理部は、第1転削加工における出力値から、所定時間として第1時間を決定してもよく、第2転削加工における出力値から、所定時間として第2時間を決定してもよく、第1時間が第2時間よりも大きければ、第1転削加工における出力値から生成された分布画像の更新速度を減少させる、または、第2転削加工における出力値から生成された分布画像の更新速度を増大させてもよい。これにより、加工回転数が異なる加工条件により同じ製品を加工した際に、同じタイミング(即ち、転削工具の位置が同じになるタイミング)において、加工状態(即ち転削工具の状態)を容易に比較できる。また、異なるサンプリング周波数によりセンサの出力値を取得した場合であっても、同じタイミングにおいて、加工状態(即ち転削工具の状態)を容易に比較できる。
【0020】
(10)上記(9)において、第1回転数をS1とし、第1周波数をfs1とし、第1時間をT1とし、Z1を正の整数として、Z1=fs1×(60/S1)×N1を満たす自然数であるN1を用いて、第1時間T1は、T1=(60/S1)×N1により算出されてもよく、第2回転数をS2とし、第2周波数をfs2とし、第2時間をT2とし、Z2を正の整数として、Z2=fs2×(60/S2)×N2を満たす自然数であるN2を用いて、第2時間T2は、T2=(60/S2)×N2により算出されてもよい。これにより、加工回転数が異なる加工条件による加工状態(即ち転削工具の状態)を比較するため、または、異なるサンプリング周波数によりセンサの出力値を取得した場合の加工状態を比較するための所定時間を適切に決定できる。
【0021】
(11)上記(10)において、T1=(60/S1)×N1により算出された第1時間T1は、所定の上限値Tl1よりも大きい場合、上限値Tl1に変更されてもよく、所定の下限値Ts1よりも小さい場合、下限値Ts1に変更されてもよく、T2=(60/S2)×N2により算出された第2時間T2は、所定の上限値Tl2よりも大きい場合、上限値Tl2に変更されてもよく、所定の下限値Ts2よりも小さい場合、下限値Ts2に変更されてもよい。これにより、所定時間が大き過ぎて、即ち転削工具の移動距離が長くなり過ぎて、局所的な変化が分からなくなること、および、アニメーション全体のデータ量が大きくなることを回避できる。
【0022】
(12)本開示の第2の局面に係る処理方法は、通信装置が、転削工具から、当該転削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信ステップと、処理装置が、通信装置により受信された出力値から転削工具に関する物理量を算出する処理ステップと、表示装置が、物理量の時系列データを表すグラフと物理量の分布を表す分布画像とを含む画像を表示する表示ステップとを含む。このように、グラフと分布画像とを同時に表示することにより、センサが搭載された転削工具の状態を容易に把握できる。
【0023】
(13)本開示の第3の局面に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、転削工具から、当該転削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信機能と、受信機能により受信された出力値から転削工具に関する物理量を算出する処理機能と、物理量の時系列データを表すグラフと物理量の分布を表す分布画像とを含む画像を表示する表示機能とを実現させる。このように、グラフと分布画像とを同時に表示することにより、センサが搭載された転削工具の状態を容易に把握できる。
【0024】
(14)本開示の第4の局面に係るシステムは、転削工具に搭載されたセンサと、上記(1)から(11)のいずれか1つの処理装置とを含み、転削工具は、センサの出力値を処理装置に送信する通信部を含む。これにより、センサが搭載された転削工具の状態を容易に把握できる。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
以下の実施形態においては、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0026】
[全体構成]
図1を参照して、本開示の実施形態に係るシステム100は、処理装置102、通信装置104、操作装置106、表示装置108およびセンサモジュール112を含む。処理装置102は、例えばコンピュータにより実現される。通信装置104は、無線機能を有し、転削工具110に搭載されたセンサモジュール112から送信されるデータを受信する。通信装置104は、処理装置102にとって受信部として機能する。転削工具110は切削装置114に搭載され、加工対象物の転削加工に利用される。転削工具110による加工状態はセンサモジュール112による測定値(即ち、センサの出力値)に反映される。通信装置104は、受信したセンサの出力値を処理装置102に出力する。操作装置106は、処理装置102に対する指示を入力するための装置である。操作装置106は、例えば、コンピュータ用のキーボード、マウスおよびタッチパネル等を含む。表示装置108は、液晶表示装置等の画像表示装置である。表示装置108は、処理装置102にとって表示部として機能する。処理装置102は、後述するように、通信装置104から入力される出力値を記憶して解析し、操作装置106からの指示に従って、出力値から算出された物理量およびその分布画像を表示装置108に表示する。
【0027】
なお、図1においては、処理装置102の外部に通信装置104、操作装置106および表示装置108が配置される場合を示しているが、それらの一部または全部が処理装置102に含まれる構成であってもよい。例えば、操作装置106および表示装置108にはタッチパネルディスプレイが用いられ、タッチパネルディスプレイが処理装置102に含まれていてもよい。
【0028】
[転削工具の構成]
図2を参照して、転削工具110は、端部に切削部120を有する転削工具である。切削部120には、切削対象物に当接され、切削対象物を切削する切刃122が配置されている。図2においては、切刃122を1つ示しているが、複数(例えば4つ)配置されていてもよい。切刃122は、切削部120に着脱可能に固定されていてもよい。転削工具110は、転削工具110の側面にセンサモジュール112A、センサモジュール112B、センサモジュール112Cおよびセンサモジュール112Dが配置されている。センサモジュール112A、センサモジュール112B、センサモジュール112Cおよびセンサモジュール112Dの回転方向に隣接するモジュールの間隔は、転削工具110の回転軸を中心として90度である。センサモジュール112A、センサモジュール112B、センサモジュール112Cおよびセンサモジュール112Dは同じ種類のセンサを含み、同じ構成であるとする。したがって、それらを区別しない場合にはセンサモジュール112と表記する。図2には、転削工具110に対して設定される、直交する右手系のXYZ軸を表示している。転削工具110の回転軸をZ軸とし、X軸は回転軸からセンサモジュール112A(具体的にはセンサ)を通り転削工具110の外部に向かう方向に設定されている。また、Y軸は回転軸からセンサモジュール112B(具体的にはセンサ)を通り転削工具110の外部に向かう方向に設定されている。なお、センサモジュール112A、センサモジュール112B、センサモジュール112Cおよびセンサモジュール112Dの各々に含まれるセンサが、転削工具110の側面に配置されていればよく、各センサモジュールのセンサを除く部分は、転削工具110の周囲に配置された円柱状のハウジング(図示せず)に収容されていてもよい。
【0029】
図3を参照して、センサモジュール112は、センサ130、AD変換部132、メモリ134、制御部136、通信部138、バス140および電源部142を含む。センサ130は、図2に示した112A、センサモジュール112B、センサモジュール112Cおよびセンサモジュール112Dのいずれかに対応する位置に配置されている。ここでは、センサ130はひずみセンサである。なお、センサ130は、ひずみセンサ以外のセンサであってもよく、例えば加速度センサであってもよい。AD変換部132は、入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。即ち、AD変換部132は、センサ130から出力されるアナログ信号(即ち出力値)を、所定のサンプリング周波数によりサンプリングしてデジタル信号を生成する。生成されたデジタル信号である出力値は、バス140を介してメモリ134に伝送される。メモリ134は、例えば書換可能な不揮発性の半導体メモリであり、バス140を介して伝送されるデータを記憶する。また、メモリ134は、制御部136が実行するコンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)を記憶している。
【0030】
制御部136は、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成されている。制御部136は、メモリ134に記憶された出力値を読出し、通信部138に出力する。通信部138は、入力されるデータをセンサモジュール112の外部、即ち通信装置104に送信する。通信部138は、例えばWi-Fi等の無線通信機能を有する。具体的には、通信部138は、制御部136から入力されるデータと、送信先アドレスとして通信装置104のアドレスと、送信元アドレスとして通信部138のアドレスとを含む通信パケットを生成して送信する。これにより、通信部138から送信された通信パケットは、通信装置104により受信される。バス140は、AD変換部132、メモリ134および制御部136により相互に交換されるデータを伝送する。電源部142は、センサモジュール112を構成する各部が機能するために必要な電力を供給する。電源部142は、例えばバッテリである。
【0031】
なお、上記においては、1つのセンサモジュールが1つのセンサを含む場合を説明したがこれに限定されない。1つのセンサモジュールが複数のセンサモジュールを含んでいてもよい。例えば、1つのセンサモジュール112が、4つのセンサを含み、各センサが図2に示したセンサモジュール112A、センサモジュール112B、センサモジュール112Cおよびセンサモジュール112Dに対応する位置に配置されていてもよい。その場合、センサモジュール112は、4つのセンサ130の各々に対応する、合計4つのAD変換部132を含む。各AD変換部132は、対応する1つのセンサ130の出力値をサンプリングしてデジタルの出力値を生成し、メモリ134に、時系列データとして記憶する。制御部136は、通信部138を介して通信装置104に出力値を送信する場合には、送信される各出力値がどのセンサの出力値であるかを処理装置102が区別できるように送信する。例えば、制御部136は、出力値を送信するときに、当該出力値を出力したセンサを特定する情報を付して送信すればよい。
【0032】
[処理装置の構成]
図4を参照して、処理装置102は、制御部160、IF部162、メモリ164およびバス166を含む。制御部160は、CPUを含んで構成されている。メモリ164は、例えば、書換可能な不揮発性の半導体メモリであり、制御部160が実行するプログラムを記憶している。メモリ164は、HDD(Hard Disk Drive)であってもよい。メモリ164は、制御部160が実行するプログラムのワーク領域を提供する。
【0033】
IF部162は、通信装置104、操作装置106および表示装置108の各々とデータを交換するためのインターフェイスである。IF部162は、通信装置104から伝送されるデータ(即ち、センサの出力値)を、バス166を介してメモリ164に伝送して記憶させる。IF部162は、操作装置106が操作されることにより入力される指示を、バス166を介して制御部160に伝送する。これにより、制御部160は、後述する処理を実行し、処理結果をメモリ164に記憶させる。メモリ164の一部は、表示装置108に表示する画像に対応するビデオデータを記憶するビデオメモリとして機能する。IF部162は、メモリ164のビデオメモリのデータを、表示装置108に伝送し、表示装置108に画像として表示させる。なお、メモリ164には、転削工具110に関する情報および切削加工(即ち転削加工)時の加工条件(例えば、回転速度、送り速度等)をも記憶している。転削工具110に関する情報は、形状、寸法、材質(例えばポアソン比)、切刃の数、各切刃の位置、並びに、センサモジュール112A、センサモジュール112B、センサモジュール112Cおよびセンサモジュール112Dの配置位置等の情報を含む。
【0034】
制御部160は、メモリ164に記憶されたセンサモジュール112A、センサモジュール112B、センサモジュール112Cおよびセンサモジュール112Dの各々の出力値(即ちひずみ値)を読出して、転削工具110の形状および材質(例えばポアソン比)と、センサモジュール112A、センサモジュール112B、センサモジュール112Cおよびセンサモジュール112Dの配置位置とから、転削工具110にかかる負荷(即ち、切削抵抗)とモーメントとを算出する。制御部160は、算出した負荷の各成分(X成分、Y成分およびZ成分)を、時系列データとしてメモリ164に記憶する。制御部160は、モーメントに関しても、時系列データとしてメモリ164に記憶する。制御部160は、操作装置106が操作されて指示が入力されることにより、メモリ164から算出結果を読出し、表示装置108に、例えば図5に示すように表示させる。
【0035】
[画面表示]
図5を参照して、表示画面200は、領域202、領域204、領域206、領域208および領域210を含む。領域202は、画面を表示するプログラムを表すタイトル212と、右端に表示された、表示画面200全体に対する操作ボタンとを含む。領域202の右端部分には、表示画面200の表示形態(即ち、アイコン表示、ウィンドウ表示および全画面表示)を変更するボタンおよび表示画面200を閉じるためのボタン(即ち終了ボタン)が表示されている。
【0036】
領域206内の左側領域には、算出された転削工具に関する物理、即ち、負荷のXYZ成分(それぞれFx、Fy、Fzにより表されている)およびトルクMのZ成分(Mzにより表されている)の時系列データを表すグラフが示されている。いずれのグラフにおいても横軸は時間(秒)を表す。即ち、上段のグラフは、Fx成分とFy成分とを重ねて表示したものである。中断のグラフは、Z成分Fzを表し、下段のグラフは、トルクのZ成分Mzを表す。いずれも縦軸の単位にはN(ニュートン)を用いている。各グラフの右下の枠内に示されているmin、max、aveおよびsdはそれぞれ、各グラフの所定区間(即ち、Window250、Window252およびWindow254)内の各物理量の最大値、最小値、平均値および標準偏差を表す。
【0037】
領域206内の右側領域には、上段のグラフに示されているWindow250内のデータに関する分布画像、即ち、横軸をFx、縦軸をFyとしてWindow250内の複数のデータをプロットした分布画像が表示されている。後述するように、Window250の幅(時間的な幅であり、以下、区間幅ともいう)は変更可能であり、Window250の幅の変化に応じてWindow250内のデータが変わるので、それに応じて新たな分布画像が生成されて表示画面200に表示される。また、操作装置106を操作することにより、Window250を時間軸方向に移動可能である。Window250が移動された場合にも、Window250内のデータが変わるので、それに応じて新たな分布画像が生成されて表示画面200に表示される。なお、Window250の形状は、長方形に限定されない。分布画像の生成に用いられたデータを示すための視覚情報(即ち、図形、色等)であればよい。
【0038】
領域204は、セル220、セル222、セル224、セル226、セル228、モード選択ボタン230、参照ボタン232、表示ボタン234および表示中グラフ保存ボタン236を含む。セル220は、Step幅、即ちWindow250を移動させる量(秒単位)を設定するためのセルである。セル222は、Window幅、即ちWindow250の幅(秒単位)を設定するためのセルである。Window250はセル220に設定された値(例えばT0(秒)とする)に従って移動し、上記したように、Window250内のデータを用いて1枚の分布画像が生成され、表示される。したがって、分布画像が生成される速度(即ち、領域206に表示される分布画像が更新される速度)は、1/T0(枚/秒)である。セル224は、転削工具110の加工回転数(転削工具110の単位時間当たりの回転数、単位はrpm)を表示または設定するためのセルである。セル226は、転削工具の送り速度(単位はmm/sec)を表示または設定するためのセルである。セル224およびセル226は、領域206に表示されたデータ(即ち物理量)の算出の元データ(即ちセンサの出力値)を取得した転削加工の条件が表示または設定される。例えば、加工条件は切削装置114に入力されるので、処理装置102が切削装置114から転削加工の条件を取得し、メモリ164に記憶し得る。その場合、制御部160は、加工条件を読出してセル224およびセル226に表示する。また、転削加工の条件が処理装置102のメモリ164に記憶されていなければ、操作装置106が操作されることにより、セル224およびセル226に設定される。
【0039】
セル228は、アニメーションの再生スピード(即ち、分布画像が更新される速度であり、以下、再生速度ともいう)を設定または表示するためのセルである。アニメーションの各フレームは、1枚の分布画像に対応する。したがって、アニメーションの再生速度は、上記したように1/T0(fps)により算出され得る。なお、アニメーションの再生速度は、後述するように変更(即ち調整)され得る。モード選択ボタン230は、アニメーションの再生基準を選択するためのボタンである。モード選択ボタン230が操作されると、複数の候補を含むプルダウンメニューが表示され、複数の候補の中から選択できる。プルダウンメニューに含まれる候補は、例えば、“加工回転数”、“送り速度”および“手動”である。加工回転数が選択された場合(以下、回転数基準という)、後述するように、セル224の加工回転数に基づいて自動的に(即ち制御部160により)再生スピードが決定(即ち調整)されてセル228に表示される。送り速度が選択された場合(以下、送り速度基準という)には、セル226の送り速度に基づいて自動的に(即ち制御部160により)再生スピードが決定されてセル228に表示される。自動的に再生スピードが決定(即ち調整)されるこれらの場合を自動モードという。一方、手動が選択された場合(即ち手動モード)には、操作装置106が操作されることにより、再生スピードがセル228に設定される。図5は、再生基準として加工回転数が選択された状態を示している。
【0040】
参照ボタン232は、領域206に表示するデータを読出すためのボタンである。参照ボタン232が操作されると、領域210に、読出し候補のファイル名を含むリストが表示される。表示ボタン234は、領域210に表示されたリストにおいて選択されているファイルのデータを読出して領域206に表示することを指示するためのボタンである。表示中グラフ保存ボタン236は、領域206に表示されているグラフを保存することを指示するためのボタンである。表示中グラフ保存ボタン236が操作されると、保存するファイル名および保存場所を指定するための画面(例えばダイアログボックス)が表示される。
【0041】
領域210には、上記したように参照ボタン232が操作されることにより、領域206に表示するためのデータを含むファイル名のリストが表示される。図5は、領域210に“data0.csv”から“data3.csv”の4つのファイルがリスト表示され、そのうち“data1.csv”が選択され、表示ボタン234が操作されて“data1.csv”のデータが領域206に表示された状態を示している。
【0042】
領域208は、再生ボタン260および再生カーソル262を含む。再生ボタン260は、領域206に表示されている分布画像のアニメーション表示を開始させるボタンである。再生カーソル262は、アニメーションの再生時間全体における現在の再生位置を表す。領域206に示したWindow250は、分布画像のアニメーション再生に応じて移動する。即ち、Window250は、上段のグラフ上において、表示されている分布画像の生成に用いられたデータを含む位置に表示される。中断および下段のグラフにおいても、Window250と同じタイミングに対応する位置に、Window250と同様の図形(即ちWindow252およびWindow254)が表示されている。
【0043】
このように、転削工具に関する物理量の時間変化を表すグラフと、物理量の分布画像とを同時に表示することにより、転削加工中における、センサが搭載された転削工具の状態を容易に把握できる。
【0044】
分布画像として、負荷(即ち切削抵抗)のX成分FxおよびY成分Fyをプロットした画像を表示することにより、転削加工中における、センサが搭載された転削工具の切削抵抗を容易に把握でき、分布図形の形状から、切刃の欠損または摩耗等を容易に判定できる。例えば、4つの切刃のうち、特定の切刃に欠損または摩耗が発生すると、その切刃により切削される長さが短くなるので、十字を構成する4本の線分のうち、その切刃に対応する線分が短くなる。
【0045】
上記においては、分布画像が、負荷(即ち切削抵抗)のX成分FxおよびY成分Fyをプロットした画像である場合を説明したが、これに限定されない。例えば、Z成分Fzと、X成分FxまたはY成分Fyをプロットした画像であってもよい。分布画像は、転削工具に関する物理量であってベクトルで表される物理量の2成分をプロットした画像であればよい。
【0046】
上記したように、セル222によりWindow250の幅を設定可能であり、Window250を時間軸に沿って移動させることができる。これにより、センサが搭載された転削工具の状態を把握するために適切な分布画像を生成でき、センサが搭載された転削工具の状態を把握することが容易になる。
【0047】
上記したように、再生ボタン260が操作されることにより、Window250をグラフの時間軸に沿って移動させつつ、制御部160により算出された物理量の分布を表す分布画像を更新する。これにより、転削工具に関する物理量の時間的変化を分布画像のアニメーションにより確認でき、センサが搭載された転削工具の状態をより容易に把握できる。
【0048】
上記したように、セル220によりWindow250の1回の移動量を指定できる。これにより、センサが搭載された転削工具の状態を把握するために適切な分布画像のアニメーションを生成できる。
【0049】
上記したように、セル228により、アニメーションの再生速度、即ち分布画像が更新される速度を指定できる。これにより、センサが搭載された転削工具の状態を把握するために適切な分布画像のアニメーションを生成できる。
【0050】
[再生速度の自動調整]
以下に、自動的に再生スピードを設定する方法に関して説明する。転削加工における適切な加工条件を求める場合、同じ対象物(例えば、複数の同じ製品)に対して異なる加工条件により転削加工を行って、その結果を比較することが行われる。即ち、異なる加工条件による転削加工により取得されたセンサの出力値から算出される物理量を比較することにより、転削加工の状態を比較する。
【0051】
<送り速度基準の場合>
転削工具の送り速度が異なる場合(その他の条件は同じ)、図5に示したように、物理量の分布画像をアニメーション表示しても、送り速度の違いにより、転削工程における同じタイミング(例えば、同じ距離を切削したタイミング)において比較することが難しい。例えば、2つ加工条件の送り速度を第1送り速度および第2送り速度とし、第2送り速度が第1送り速度よりも大きい(即ち、第2送り速度>第1送り速度)であるとする。その場合、送り速度の違いによるタイミングの違いを調整するには、例えば、第1送り速度により転削加工を行って得られたセンサの出力値から算出された物理量の分布画像のアニメーションの再生速度を増大させる。また、第2送り速度により転削加工を行って得られたセンサの出力値から算出された物理量の分布画像のアニメーションの再生速度を減少させることによっても、送り速度の違いによるタイミングの違いを調整できる。これにより、送り速度が異なる加工条件により同じ製品を加工した際に、同じタイミング(例えば、同じ距離を切削したタイミング)において、加工状態(即ち転削工具の状態)を容易に比較できる。なお、アニメーションの再生速度は、上記したように1/T0(fps)により算出できるので、T0、即ちStep幅が調整される。
【0052】
<回転速度基準の場合>
2つの加工条件のうち、回転数が異なる場合(その他の条件は同じ)、図5に示したように、物理量の時間変化を表すグラフと物理量の分布画像とを同時に表示し、分布画像をアニメーション表示する際に、回転数の影響を受けるアニメーションの再生速度を調整する必要がある。また、分布画像のアニメーションの再生速度は、サンプリング周波数の影響を受けるので、サンプリング周波数が異なる場合にも、再生速度を調整する必要がある。
【0053】
後述するように、任意の回転数およびサンプリング周波数における最適な区間幅(即ち、図5に示したWindow250の幅)を算出し、より大きい区間幅に対応するアニメーションの再生速度を減少させる。または、より小さい区間幅に対応するアニメーションの再生速度を増大させてもよい。なお、アニメーションの再生速度は、上記したように1/T0(fps)により算出できるので、T0、即ちStep幅が調整される。
【0054】
(区間幅の算出)
転削工具の回転数をS(rpm)とし、サンプリング周波数をfs(Hz)とし、回転する転削工具の位置が回転開始時点の位置(以下、初期位置という)に戻る回転数毎に、アニメーション画像の1フレームを切り出せる(即ち、生成できる)ように区間幅T(sec)を設定する。具体的には、T=(60/S)×N により区間幅Tを決定する。Nは、Zを正の整数として、Z=fs×(60/S)×N を満たす自然数である。60/Sは、転削工具が1回転する時間を表す。よって、fs×(60/S)は、転削工具が1回転する間のサンプリング数(即ちデータ数)、即ち、転削工具が1回転する間に得られるセンサの出力値の数を表す。したがって、転削工具が初期位置からN回転する間に得られるサンプリング数Zが整数値であれば、転削工具の位置が初期位置に戻ったタイミングにおいてサンプリングが実行される。上記のように区間幅Tを決定すれば、このタイミング毎にアニメーション画像の1フレームが生成される。但し、上記の条件だけでは、Nの候補は複数存在するので、下記の制約条件により、適切なTを決定する。
【0055】
即ち、区間幅Tが短すぎると、フレーム枚数が多くなり、アニメーション全体のサイズ(即ち、データ量)が大きくなるので、区間幅Tに下限値Tsを設定し、T>Tsであれば、T=Tsとする。即ち、T=(60/S)×Nにより算出された値Tを、Tsに変更する。これにより、アニメーション全体のデータ量が大きくなることを回避できる。なお、下限値Tsは、任意の値であり、処理装置102のメモリ164の容量から予め決定すればよい。
【0056】
また、区間幅Tが大き過ぎると、その間の転削工具の移動距離が長くなり過ぎて、局所的な変化が分からなくなる。即ち、局所的な変化が埋没された1枚の分布画像が生成されるので、アニメーション再生しても、局所的な変化を判定することはできない。したがって、上限値Tlを設定し、T>Tlであれば、T=Tlとする。即ち、T=(60/S)×Nにより算出された値Tを、Tlに変更する。これにより、所定時間が大き過ぎて、即ち転削工具の移動距離が長くなり過ぎて、局所的な変化が分からなくなることを回避できる。なお、送り速度およびTlの積が転削工具の移動量Dであるので、移動量Dが局所的な変化を判定可能な値になるように、上限値Tlを設定すればよい。
【0057】
したがって、T=(60/S)×Nが、Ts≦T≦Tlであれば、算出された値Tを変更しない。このようにして、加工条件である回転数およびサンプリング周波数の少なくとも1つが異なる、センサの出力値の時系列データから算出した物理量の時系列データに関して、区間幅Tを決定し、決定された2つの区間幅Tに関して、上記したように、再生速度を調整する。即ち、より大きい区間幅に対応するアニメーションの再生速度を減少させる、または、より小さい区間幅に対応するアニメーションの再生速度を増大させる。これにより、加工回転数が異なる加工条件により同じ製品を加工した際に、同じタイミング(即ち、転削工具の位置が同じになるタイミング)において、加工状態(即ち転削工具の状態)を容易に比較できる。また、加工回転数が同じ加工条件により同じ製品を加工し、異なるサンプリング周波数によりセンサの出力値を取得した場合であっても、同じタイミングにおいて、加工状態(即ち転削工具の状態)を容易に比較できる。
【0058】
上記したように、再生基準が自動モードに設定された場合、転削工具110の送り速度、または、転削工具110の加工回転数(即ち転削工具の単位時間当たりの回転数)および出力値のサンプリング周波数に基づいて、分布画像の更新速度を調整する。これにより、2つの転削加工の測定結果を、同じタイミングにおいて容易に比較できる。
【0059】
[処理装置の動作]
図6を参照して、処理装置102の動作に関して説明する。図6に示した処理は、操作装置106が操作されて指示が処理装置102に入力されたことを受けて、制御部160(図4参照)が所定のプログラムをメモリ164から読出して実行することにより実現される。なお、切削装置114による転削工具110を用いた転削加工により得られたセンサの出力値から、制御部160により転削工具110の物理量が算出され、時系列データとしてメモリ164に記憶されているとする。
【0060】
ステップ300において、制御部160は、センサ130に初期画面を表示する。具体的には、メモリ164に記憶されている初期画面の画像データを、メモリ164のビデオメモリとして利用される領域にコピーする。これにより、センサ130に、例えば図7に示す初期画面である表示画面270が表示される。表示画面270は、図5に示した表示画面200において、参照ボタン232が操作される前の状態の画像に対応する。
【0061】
ステップ302において、制御部160は、図7に示した参照ボタン232の操作があったか否かを判定する。操作があったと判定された場合、制御はステップ306に移行する。そうでなければ、制御はステップ304に移行する。
【0062】
ステップ304において、制御部160は、終了の指示を受けたか否かを判定する。終了の指示を受けたと判定された場合、本プログラムを終了する。そうでなければ、制御はステップ302に戻る。終了の指示は、例えば図7に示した領域202の右端の終了ボタンが操作されることによりなされる。
【0063】
操作ボタンの操作があれば、ステップ306において、制御部160は、図7の領域210にファイルリストを表示する。その後、制御はステップ308に移行する。領域210には、例えば、図5に示すようにファイルリストが表示される。
【0064】
ステップ308において、制御部160は、領域210に表示されたファイルリストからファイルが選択されたか否かを判定する。選択されたと判定された場合、制御はステップ310に移行する。そうでなければ、ステップ308の処理が繰返される。なお、領域210に表示されたファイルが1つ選択される場合に限らず、複数のファイルが選択されてもよい。
【0065】
ステップ310において、制御部160は、ステップ308により選択されたファイルのデータをメモリ164から読出して表示装置108に表示する。その後、制御はステップ312に移行する。これにより、例えば、図5に示すように、領域206に時系列データのグラフと、分布画像が読出される。分布画像は、例えば、初期設定により位置およびWindow幅が設定されているWindow内のデータを用いて生成さえる。なお、複数のファイルが選択されている場合、各ファイルのデータを並列させて表示すればよい。
【0066】
ステップ312において、制御部160は、数値入力があったか否かを判定する。具体的には、制御部160は、操作装置106の操作により、セル220、セル222、セル224、セル226およびセル228のいずれかが選択されて、数値が入力されたか否かを判定する。数値入力があったと判定された場合、制御はステップ314に移行する。そうでなければ、制御はステップ316に移行する。なお、初期設定により、再生基準には“手動”が設定されているとする。また、上記したように、ステップ310により読出したファイルに含まれているデータの加工条件(即ち、加工回転数および送り速度)がメモリ164に記憶されていれば、制御部160は、その加工条件を読出してセル224およびセル226に表示する。
【0067】
ステップ314において、制御部160は、ステップ312により検出された入力値を該当するセルに入力する。その後、制御はステップ316に移行する。
【0068】
ステップ316において、制御部160は、ボタン操作があったか否かを判定する。具体的には、制御部160は、モード選択ボタン230、参照ボタン232、表示ボタン234、表示中グラフ保存ボタン236、再生ボタン260のいずれかが操作されたか否かを判定する。操作されたと判定された場合、制御はステップ318に移行する。そうでなければ、制御はステップ320に移行する。
【0069】
ステップ318において、制御部160は、再生基準として自動モードが設定され、且つ、ステップ308により2つのファイルが選択されたか否かを判定する。自動モードが設定され、且つ、2つのファイルが選択されたと判定された場合、制御はステップ322に移行する。そうでなければ、制御はステップ320に移行する。
【0070】
ステップ320において、制御部160は、ステップ316により操作されたと判定されたボタンに対応する処理を、上記したように実行する。その後、制御はステップ324に移行する。
【0071】
自動モードが設定され、且つ、2つのファイルが選択されていれば、ステップ322において、制御部160は、分布画像のアニメーションの再生速度を調整する。その後、制御はステップ324に移行する。具体的には、制御部160は、再生基準が、送り速度基準および回転速度基準のいずれであるかに応じて、上記したように、2つの時系列データから生成された分布画像のアニメーションの再生速度を調整する。
【0072】
ステップ324において、制御部160は、ステップ304と同様に、終了の指示を受けたか否かを判定する。終了の指示を受けたと判定された場合、本プログラムを終了する。そうでなければ、制御はステップ312に戻る。
【0073】
これにより、制御部160は、操作部の操作を受けて、表示装置108に図5に示したような表示画面200を表示し、操作に応じた処理を実行する。したがって、グラフと分布画像とを同時に表示することにより、転削加工中における、センサが搭載された転削工具の状態を容易に把握できる。
【0074】
なお、上述の実施形態の各処理(各機能)は、1または複数のプロセッサを含む処理回路(Circuitry)により実現されてもよい。上記処理回路は、上記1または複数のプロセッサに加え、1または複数のメモリ、各種アナログ回路および各種デジタル回路のいずれかが組み合わされた集積回路等により構成されてもよい。上記1または複数のメモリは、上記各処理を上記1または複数のプロセッサに実行させるプログラム(命令)を格納する。上記1または複数のプロセッサは、上記1または複数のメモリから読出した上記プログラムに従い上記各処理を実行してもよいし、予め上記各処理を実行するように設計された論理回路に従って上記各処理を実行してもよい。上記プロセッサは、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等、コンピュータの制御に適合する種々のプロセッサであってよい。
【0075】
また、処理装置102の処理(例えば、図6に示した処理)をコンピュータに実行させるプログラムを記録した記録媒体を提供できる。記録媒体は、例えば光ディスク(DVD(Digital Versatile Disc)等)、着脱可能な半導体メモリ(USB(Universal Serial Bus)メモリ等)である。コンピュータプログラムは通信回線により伝送され得るが、記録媒体は非一時的な記録媒体を意味する。記録媒体に記憶されたプログラムを車両に搭載されたコンピュータに読込ませることにより、コンピュータは、上記したように、車載装置が、路側装置等の外部装置にデータをアップロードする際に、遅延時間および通信帯域を考慮して、外部装置が提供するサービスにより有効に利用され得るデータを送信することを可能とする。
【0076】
(付記)
即ち、コンピュータ読取り可能な非一時的な記録媒体は、
コンピュータに、
転削工具から、当該転削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信機能と、
前記受信機能により受信された前記出力値から前記転削工具に関する物理量を算出する処理機能と、
前記物理量の時系列データを表すグラフと前記物理量の分布を表す分布画像とを含む画像を表示する表示機能とを実現させる、コンピュータプログラムを記憶している。
【0077】
以上、実施の形態を説明することにより本開示を説明したが、上記した実施の形態は例示であって、本開示は上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本開示の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味および範囲内での全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0078】
100 システム
102 処理装置
104 通信装置
106 操作装置
108 表示装置
110 転削工具
112、112A、112B、112C、112D センサモジュール
114 切削装置
120 切削部
122 切刃
130 センサ
132 AD変換部
134、164 メモリ
136、160 制御部
138 通信部
140、166 バス
142 電源部
162 IF部
200、270 表示画面
202、204、206、208、210 領域
212 タイトル
220、222、224、226、228 セル
230 モード選択ボタン
232 参照ボタン
234 表示ボタン
236 表示中グラフ保存ボタン
250、252、254 Window
260 再生ボタン
262 再生カーソル
300、302、304、306、308、310、312、314、316、318、320、322、324 ステップ
X、Y、Z 軸
【要約】
処理装置は、転削工具から、当該転削工具に搭載されたセンサの出力値を受信する受信部と、受信部により受信された出力値から転削工具に関する物理量を算出する処理部と、物理量の時系列データを表すグラフと物理量の分布を表す分布画像とを含む画像を表示する表示部とを含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7