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特許7384323連続鋳造のスタートタイミング判定方法、連続鋳造設備の操業方法、鋳片の製造方法、判定装置、連続鋳造スタート判定システム及び表示端末装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】連続鋳造のスタートタイミング判定方法、連続鋳造設備の操業方法、鋳片の製造方法、判定装置、連続鋳造スタート判定システム及び表示端末装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/08 20060101AFI20231114BHJP
   B22D 11/16 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B22D11/08 Z
B22D11/16 104J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023529885
(86)(22)【出願日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2023002318
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2022011171
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】益田 稜介
(72)【発明者】
【氏名】澁田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】郡山 大河
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-276050(JP,A)
【文献】特開平11-090589(JP,A)
【文献】特開2012-170999(JP,A)
【文献】特開平11-123516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/08
B22D 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造設備において、ダミーバーの引き抜きタイミングである連続鋳造のスタートタイミングを判定する、連続鋳造のスタートタイミング判定方法であって、
前記連続鋳造設備の鋳型の銅板における、所定の鋳込み方向位置である鋳込み方向判定位置に設けられた複数の温度センサを用いて、前記銅板の温度を測定する測定工程と、
前記測定工程の測定結果と、前記連続鋳造設備で鋳造される鋳片の幅とに基づいて推定される溶鋼の湯面の前記鋳込み方向位置に応じて、前記スタートタイミングを判定する判定工程と、
を備える、連続鋳造のスタートタイミング判定方法。
【請求項2】
前記判定工程では、
前記鋳込み方向判定位置の前記複数の温度センサによって測定される温度のうち、一定割合以上の温度が閾値Aを超える場合に、前記湯面が前記鋳込み方向判定位置に到達したと判定し、
前記鋳込み方向判定位置に到達した判定結果に応じて前記スタートタイミングを判定する、請求項1に記載の連続鋳造のスタートタイミング判定方法。
【請求項3】
前記判定工程では、前記溶鋼が前記鋳込み方向判定位置に到達したと判定される状態が、所定の時間継続した場合に、前記スタートタイミングであることを判定する、請求項2に記載の連続鋳造のスタートタイミング判定方法。
【請求項4】
前記判定工程では、前記溶鋼が前記鋳込み方向判定位置に到達したと判定される状態の継続時間が閾値C以上である場合に、前記スタートタイミングであると判断し、前記継続時間が閾値C未満である場合に、前記スタートタイミングではないと判断し、
前記閾値Cは、湯面レベルの上昇速度によって分類されたテーブル値もしくは湯面レベルの上昇速度の関数に基づいて設定される、請求項3に記載の連続鋳造のスタートタイミング判定方法。
【請求項5】
前記判定工程では、前記鋳込み判定位置の前記複数の温度センサのうち、前記鋳片の幅の範囲内にある温度センサにより測定される温度のみを使用する、請求項1~4のいずれか1項に記載の連続鋳造のスタートタイミング判定方法。
【請求項6】
前記判定工程では、前記鋳込み判定位置の前記複数の温度センサのうち、前記鋳片の長辺側の前記銅板に設けられた温度センサにより測定される温度のみを使用する、請求項1~のいずれか1項に記載の連続鋳造のスタートタイミング判定方法。
【請求項7】
前記測定工程では、前記鋳込み方向判定位置と異なる少なくとも一つの鋳込み方向位置に設けられた複数の温度センサをさらに用いて、前記銅板の温度を測定し、
前記判定工程では、前記少なくとも一つの鋳込み方向位置における温度の測定結果と、前記鋳片の幅とに基づいて、前記少なくとも一つの鋳込み方向位置に前記溶鋼が到達したかを判定し、
前記鋳込み方向判定位置と前記少なくとも一つの鋳込み方向位置とにおける、前記溶鋼が到達したか否かの判定結果を、表示する表示工程とをさらに備える、請求項1~のいずれか1項に記載の連続鋳造のスタートタイミング判定方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一つの連続鋳造のスタートタイミング判定方法を用いて、前記スタートタイミングと判定されると、前記ダミーバーを引き抜き、前記連続鋳造を開始する、連続鋳造設備の操業方法。
【請求項9】
連続鋳造設備を用いて鋳片を製造する際に、請求項8に記載の連続鋳造設備の操業方法を用いる、鋳片の製造方法。
【請求項10】
連続鋳造設備において、ダミーバーの引き抜きタイミングである連続鋳造のスタートタイミングを判定する、判定装置であって、
前記連続鋳造設備の鋳型の銅板における、所定の鋳込み方向位置である鋳込み方向判定位置に設けられ、前記銅板の温度を測定する複数の温度センサと、
前記複数の温度センサの測定結果と、前記連続鋳造設備で鋳造される鋳片の幅とに基づいて推定される溶鋼の湯面の前記鋳込み方向位置に応じて、前記スタートタイミングを判定する引き抜き開始判定部と、
を備える、判定装置。
【請求項11】
連続鋳造設備において、ダミーバーの引き抜きタイミングである連続鋳造のスタートタイミングを判定する、連続鋳造スタート判定システムであって、
判定サーバー装置と、
表示端末装置と、
を備え、
前記判定サーバー装置は、
前記連続鋳造設備の鋳型の銅板における、所定の鋳込み方向位置である鋳込み方向判定位置を含む複数の鋳込み方向位置において、鋳型幅方向に複数設けられ、前記銅板の温度を測定する温度センサと、
前記複数の温度センサの測定結果と、前記連続鋳造設備で鋳造される鋳片の幅とに基づいて推定される溶鋼の湯面の前記鋳込み方向位置に応じて、前記スタートタイミングを判定する引き抜き開始判定部と、
前記引き抜き開始判定部で推定される溶鋼の湯面の前記鋳込み方向位置を含む湯面レベル状態を示す湯面レベル情報を出力する湯面レベル情報出力手段と、を有し、
前記表示端末装置は、
前記湯面レベル情報を取得する表示データ取得手段と、
取得した前記湯面レベル情報に基づき、前記鋳込み方向位置の温度データに対応する位置ごとの湯面状態と、前記湯面状態を推定するための基準データとを表示する表示手段と、を有する、連続鋳造スタート判定システム。
【請求項12】
連続鋳造設備において、ダミーバーの引き抜きタイミングである連続鋳造のスタートタイミングを判定する判定サーバー装置とともに連続鋳造スタート判定システムを構成する表示端末装置であって、
前記判定サーバー装置で推定される溶鋼の湯面の鋳込み方向位置を含む湯面レベル状態を示す湯面レベル情報を取得する表示データ取得手段と、
取得した前記湯面レベル情報に基づき、鋳込み方向位置の温度データに対応する位置ごとの湯面状態と、前記湯面状態を推定するための基準データとを表示する表示手段と、
を備え、
前記溶鋼の湯面の鋳込み方向位置は、前記連続鋳造設備の鋳型の銅板における、所定の鋳込み方向位置である鋳込み方向判定位置を含む複数の鋳込み方向位置において、鋳型幅方向に複数設けられ、前記銅板の温度を測定する温度センサの測定結果と、前記連続鋳造設備で鋳造される鋳片の幅とに基づいて、前記サーバー装置で推定される、表示端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造のスタートタイミング判定方法、連続鋳造設備の操業方法、鋳片の製造方法、判定装置、連続鋳造スタート判定システム及び表示端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼の連続鋳造設備では、タンディッシュから連続的に注がれた溶鋼が、水冷管が埋設された鋳型により冷却された後、鋳型の下部から引き抜かれて、さらに冷却されることで鋳片が製造される。連続鋳造を開始する際は、鋳型の下側開口部にダミーバーを挿入し、ダミーバーヘッド部を底面として鋳型内部に溶鋼を注入し、溶鋼が所定のレベルに到達した後、ダミーバーを引き抜く手順により連続鋳造が開始される。
【0003】
ダミーバーの引き抜き開始に際しては、鋳片の外側に凝固シェルが十分に形成され、適度に凝固していることが重要である。不十分な凝固状態で引き抜きが開始されると、凝固シェルが破れて漏鋼が発生する、いわゆるブレークアウトが起きる可能性がある。一方で、過剰に凝固した状態で引き抜きを開始すると、ダミーバー切り離しが困難となり、通常操業への遷移を阻害する要因となる。
【0004】
これに対して、溶鋼の鋳型への注入開始から引き抜き開始に至るまでの自動化を目的とした連続鋳造のスタート方法が提案されている。例えば特許文献1には、鋳型内部での鋳片の凝固程度が溶鋼注入開始時点から引き抜き開始時点までの間の鋳型内部の溶鋼の滞留時間に依存することに着目し、渦流センサによって湯面レベルを計測し、溶鋼注入開始から予め設定された保持時間の経過後に引き抜き開始レベルに達したタイミングで引き抜きを開始する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3098426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように渦流センサにより湯面レベルを検知する手法では、連続鋳造設備の振動等によるノイズで検知精度が低下する場合がある。そのため、引き抜きを開始すべき湯面レベルに達していないにもかかわらず、鋳造を開始する場合や、引き抜きを開始すべき湯面レベルに達しているにもかかわらず鋳造を開始することができない場合がある。
そこで、本発明は、上記の課題に着目してなされたものであり、連続鋳造のスタートタイミングを精度良く判定することができる、連続鋳造のスタートタイミング判定方法、連続鋳造設備の操業方法、鋳片の製造方法、判定装置、連続鋳造スタート判定システム及び表示端末装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様によれば、連続鋳造設備において、ダミーバーの引き抜きタイミングである連続鋳造のスタートタイミングを判定する、連続鋳造のスタートタイミング判定方法であって、上記連続鋳造設備の鋳型の銅板における、所定の鋳込み方向位置である鋳込み方向判定位置に設けられた複数の温度センサを用いて、上記銅板の温度を測定する測定工程と、上記測定工程の測定結果と、上記連続鋳造設備で鋳造される鋳片の幅とに基づいて推定される溶鋼の湯面の上記鋳込み方向位置に応じて、上記スタートタイミングを判定する判定工程と、を備える、連続鋳造のスタートタイミング判定方法が提供される。
【0008】
(2)上記(1)の連続鋳造のスタートタイミング判定方法において、上記判定工程では、上記鋳込み方向判定位置の上記複数の温度センサによって測定される温度のうち、一定割合以上の温度が閾値Aを超える場合に、上記湯面が上記鋳込み方向判定位置に到達したと判定し、上記鋳込み方向判定位置に到達した判定結果に応じて上記スタートタイミングを判定する。
【0009】
(3)上記(2)の連続鋳造のスタートタイミング判定方法において、上記判定工程では、上記溶鋼が上記鋳込み方向判定位置に到達したと判定される状態が、所定の時間継続した場合に、上記スタートタイミングであることを判定する。
【0010】
(4)上記(3)の連続鋳造のスタートタイミング判定方法において、上記判定工程では、上記溶鋼が上記鋳込み方向判定位置に到達したと判定される状態の継続時間が閾値C以上である場合に、上記スタートタイミングであると判断し、上記継続時間が閾値C未満である場合に、上記スタートタイミングではないと判断し、上記閾値Cは、湯面レベルの上昇速度によって分類されたテーブル値もしくは湯面レベルの上昇速度の関数に基づいて設定される。
【0011】
(5)上記(1)~(4)のいずれか一つの連続鋳造のスタートタイミング判定方法において、上記判定工程では、上記鋳込み判定位置の上記複数の温度センサのうち、上記鋳片の幅の範囲内にある温度センサにより測定される温度のみを使用する。
【0012】
(6)上記(1)~(5)のいずれか一つの連続鋳造のスタートタイミング判定方法において、上記判定工程では、上記鋳込み判定位置の上記複数の温度センサのうち、上記鋳片の長辺側の上記銅板に設けられた温度センサにより測定される温度のみを使用する。
【0013】
(7)上記(1)~(6)のいずれか一つの連続鋳造のスタートタイミング判定方法において、上記測定工程では、上記鋳込み方向判定位置と異なる少なくとも一つの鋳込み方向位置に設けられた複数の温度センサをさらに用いて、上記銅板の温度を測定し、上記判定工程では、上記少なくとも一つの鋳込み方向位置における温度の測定結果と、上記鋳片の幅とに基づいて、上記少なくとも一つの鋳込み方向位置に上記溶鋼が到達したかを判定し、上記鋳込み方向判定位置と上記少なくとも一つの鋳込み方向位置とにおける、上記溶鋼が到達したか否かの判定結果を、表示する表示工程とをさらに備える。
【0014】
(8)本発明の一態様によれば、上記(1)~(7)のいずれか一つの連続鋳造のスタートタイミング判定方法を用いて、上記スタートタイミングと判定されると、上記ダミーバーを引き抜き、上記連続鋳造を開始する、連続鋳造設備の操業方法が提供される。
【0015】
(9)本発明の一態様によれば、連続鋳造設備を用いて鋳片を製造する際に、上記の連続鋳造設備の操業方法を用いる、鋳片の製造方法が提供される。
【0016】
(10)本発明の一態様によれば、連続鋳造設備において、ダミーバーの引き抜きタイミングである連続鋳造のスタートタイミングを判定する、判定装置であって、上記連続鋳造設備の鋳型の銅板における、所定の鋳込み方向位置である鋳込み方向判定位置に設けられ、上記銅板の温度を測定する複数の温度センサと、上記複数の温度センサの測定結果と、上記連続鋳造設備で鋳造される鋳片の幅とに基づいて推定される溶鋼の湯面の上記鋳込み方向位置に応じて、上記スタートタイミングを判定する引き抜き開始判定部と、を備える、判定装置が提供される。
【0017】
(11)本発明の一態様によれば、連続鋳造設備において、ダミーバーの引き抜きタイミングである連続鋳造のスタートタイミングを判定する、連続鋳造スタート判定システムであって、判定サーバー装置と、表示端末装置と、を備え、前記判定サーバー装置は、前記連続鋳造設備の鋳型の銅板における、所定の鋳込み方向位置である鋳込み方向判定位置を含む複数の鋳込み方向位置において、鋳型幅方向に複数設けられ、前記銅板の温度を測定する温度センサと、前記複数の温度センサの測定結果と、前記連続鋳造設備で鋳造される鋳片の幅とに基づいて推定される溶鋼の湯面の前記鋳込み方向位置に応じて、前記スタートタイミングを判定する引き抜き開始判定部と、前記引き抜き開始判定部で推定される溶鋼の湯面の前記鋳込み方向位置を含む湯面レベル状態を示す湯面レベル情報を出力する湯面レベル情報出力手段と、を有し、前記表示端末装置は、前記湯面レベル情報を取得する表示データ取得手段と、取得した前記湯面レベル情報に基づき、前記鋳込み方向位置の温度データに対応する位置ごとの湯面状態と、前記湯面状態を推定するための基準データとを表示する表示手段と、を有する、連続鋳造スタート判定システムが提供される。
【0018】
(12)本発明の一態様によれば、連連続鋳造設備において、ダミーバーの引き抜きタイミングである連続鋳造のスタートタイミングを判定する判定サーバー装置とともに連続鋳造スタート判定システムを構成する表示端末装置であって、前記判定サーバー装置で推定される溶鋼の湯面の鋳込み方向位置を含む湯面レベル状態を示す湯面レベル情報を取得する表示データ取得手段と、取得した前記湯面レベル情報に基づき、鋳込み方向位置の温度データに対応する位置ごとの湯面状態と、前記湯面状態を推定するための基準データとを表示する表示手段と、を備え、前記溶鋼の湯面の鋳込み方向位置は、前記連続鋳造設備の鋳型の銅板における、所定の鋳込み方向位置である鋳込み方向判定位置を含む複数の鋳込み方向位置において、鋳型幅方向に複数設けられ、前記銅板の温度を測定する温度センサの測定結果と、前記連続鋳造設備で鋳造される鋳片の幅とに基づいて、前記サーバー装置で推定される、表示端末装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、連続鋳造のスタートタイミングを精度良く判定することができる、連続鋳造のスタートタイミング判定方法、連続鋳造設備の操業方法、鋳片の製造方法、判定装置、連続鋳造スタート判定システム及び表示端末装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態における連続鋳造機を示す模式図である。
図2】鋳型及び温度センサの配置の一例を示す説明図である。
図3】長辺側の銅板に設置される温度センサの設置位置を示す模式図である。
図4】判定装置の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の一実施形態に係る連続鋳造のスタートタイミング判定方法を示すフローチャートである。
図6】変形例において、鋳込み方向位置毎のステータスの表示方法の一例を示す説明図である。
図7】連続鋳造スタート判定システムの構成を示すブロック図である。
図8】実施例において、鋳込み方向判定位置での鋳型銅板温度の時系列変化を示すグラフである。
図9】実施例において、本発明による連続鋳造のスタートタイミング判定方法を適用した例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の詳細な説明では、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0022】
本発明の一実施形態に係る連続鋳造のスタートタイミング判定方法について説明する。本実施形態では、溶鋼を連続鋳造する連続鋳造設備1における、連続鋳造のスタートタイミングを判定する。このような連続鋳造設備1では、後述するスタートタイミングでダミーバーを引き抜き、連続鋳造を開始することで、鋳片が製造される。
【0023】
<連続鋳造設備の装置構成>
連続鋳造設備1は、図1に示すように、溶鋼2が注入されているタンディッシュ3と、タンディッシュ3から浸漬ノズル4を介して注がれた溶鋼2を冷却する銅製の鋳型5と、鋳型5から引き抜かれた半凝固状態の鋳片6を搬送する複数の鋳片支持ロール7と、鋳型5の長辺面及び短辺面に設置された複数の温度センサ8と、設置された温度センサ8の検出温度から連続鋳造のスタートタイミングを判定する判定装置9とを備える。また、鋳型5には、湯面を回転させる電磁撹拌磁場を発生させるコイル(不図示)が設置されている。
【0024】
鋳型5は、図2に示すように、2枚の長辺面の銅板51に、2枚の短辺面の銅板52が挟まれて構成される。また、銅板51及び銅板52の内部には、複数の温度センサ8が設けられる。複数の温度センサ8は、鋳型5の鋳込み方向の複数の位置について、水平方向に並んで複数設けられる。つまり、図3に示すように銅板52を例にすると、銅板52の鋳込み方向(図3の上下方向)の位置である鋳込み方向位置に対して、複数の鋳込み方向位置に温度センサ8が設けられる。また、各鋳込み方向位置では、水平方向(図3の左右方向)に対して、複数の温度センサ8が設けられる。これは、銅板51についても同様であり、温度センサ8が設けられる鋳込み方向位置は、銅板51と銅板52とで同じ位置となる。さらに、鋳型5は、鋳造される鋳片6の幅(鋳片幅)を調整可能なように、短辺側の銅板52が図2の左右方向に移動可能に構成される。
【0025】
温度センサ8は、鋳型5の温度を測定できるものであれば特に限定されないが、例えば、熱電対が用いられてもよく、光ファイバー方式のセンサが用いられてもよい。例えば、温度センサ8が光ファイバー方式のセンサである場合、銅板51,52の上端面から、銅板51,52の溶鋼側表面と平行に、鋳片の鋳造方向(つまり引き抜き方向)に光ファイバーを挿入する。このような方式は、連続鋳造設備1が垂直曲げ型スラブ連続鋳造機のように長辺側の銅板51が平坦な面で構成される場合に適用することが好ましい。また、温度センサ8の温度測定点の銅板51,52の厚み方向における設置位置は、設置した全ての温度測定点の銅板51,52の溶鋼側表面からの距離を同一として、且つ各温度測定点が銅板51,52の溶鋼側表面と冷却水スリット(銅板を冷却するための冷却水が通る水路)との間に位置するように設置する。
【0026】
連続鋳造設備1は、さらに、図4に示すように、複数の温度センサ8の測定結果に基づいて、連続鋳造のスタートのタイミングを判定する判定装置9を有する。判定装置9は、コンピュータ等の情報処理装置によって構成され、CPU(Central Processing Unit)等の内部の演算処理装置がコンピュータプログラムを実行することにより、湯面レベル推定部91及び引き抜き開始判定部92として機能する。同じ鋳込み方向位置に設けられる温度センサ8の数は、特に限定されないが、測定精度の観点からは、後述するように、鋳造される鋳片幅において測定可能とされる温度センサ8の点数(個数)が10点以上であることが好ましい。
【0027】
<スタートタイミング判定方法>
本実施形態では、図5に示す処理フローの判定処理に従って、連続鋳造のスタートタイミングが判定され、連続鋳造が開始される。なお、図5に示す判定処理は、判定装置9に対してスタートタイミング判定の実行指令が入力されたタイミングで開始となる。例えば、スタートタイミング判定の実行指令は、浸漬ノズル4からの鋳型5への溶鋼の2の注入開始のタイミングや作業者の操作によって入力される。
【0028】
図5に示す連続鋳造のスタートタイミングの判定処理では、まず、ステップS100の処理として、引き抜き開始判定部92が、初期値としてステータス0及びタイマー0を出力する。ステータスは0,1又は2の3種類である。なお、ステータス2に達したタイミングでダミーバーの引き抜き開始の指示が出される。これにより、ステップS100の処理は完了し、判定処理はステップS102の処理に進む。
ステップS102の処理として、温度センサ8によって鋳型5の銅板51,52の温度が測定され、その後、湯面レベル推定部91は、測定される銅板51,52の温度及び鋳片幅のデータを取得する(測定工程)。これにより、ステップS102の処理は完了し、判定処理はステップS104の処理に進む。
【0029】
ステップS104の処理として、湯面レベル推定部91は、ステップS102の処理において取得した鋳片幅のデータと、予め用意した温度センサの設置座標データとを用いて、複数の温度センサ8のうち、鋳片幅の範囲内にある温度センサの点数Nをカウントする。鋳型5は、図2に示すように、2枚の長辺面の銅板51に、2枚の短辺面の銅板52が挟まれており、鋳片幅が狭い場合は長辺面の銅板51の端部に設置された温度センサ8は短辺面の銅板52より外側に位置する。このため、銅板52より外側に位置する銅板51の温度センサ8は、鋳造中でも温度が低位となる。したがって、このような温度センサ8では、湯面が温度センサ8のあるレベルに達しているか判別することは困難であり、本判定には用いるべきではないので、ステップS104ではこのような温度センサ8を予め除外する。これにより、ステップS104の処理は完了し、判定処理はステップS106の処理に進む。
【0030】
ステップS106の処理では、湯面レベル推定部10が、ステップS104の処理において抽出された温度センサ8のうち、所定の鋳込み方向位置にある複数の温度センサ8について、温度が閾値Aを超えたセンサの点数mをカウントする。鋳込み方向位置は、銅板51,52の上端からの鋳込み方向への距離であるが、銅板51,52の上端からの鉛直方向への距離であってもよい。所定の鋳込み方向位置は、連続鋳造が開始される際に鋳型5の湯面高さとして適当な鋳込み方向位置であり、例えば、連続鋳造の定常状態における湯面高さ(メニスカス位置)或いはその近傍の鋳込み方向位置である。なお、この所定の鋳込み方向位置を、鋳込み方向判定位置ともいう。例えば、図3に示す例では、銅板の上端から温度センサ8の4断目の位置を、鋳込み方向位置(方形の破線で示す領域)とする。使用する温度センサ8に関して、銅板上端からの高さ位置(鋳込み方向位置)は適宜の数だけ設定可能であるが、同じ鋳込み方向位置にある温度センサ8のうち鋳片幅の範囲内にある点数Nは10点以上であることが好ましい。これにより、ステップS106の処理は完了し、判定処理はステップS108の処理に進む。閾値Aは、銅板51,52の温度センサ8が設置された鋳込み方向位置に溶鋼2が到達したことを検出可能な値として設定されるものであり、銅板表面からの温度センサ8の距離や銅板51,52の材質等によって適宜設定される。
【0031】
ステップS108の処理では、湯面レベル推定部91が、鋳込み方向判定位置にある複数の温度センサ8について、温度が閾値Aを超えた温度センサ8が一定割合以上であるか判定する。すなわち、温度が閾値Aを超えたセンサの点数mを、鋳片幅の範囲内にある点数Nで除算した値が閾値B以上であるかを判定する。この判定では、鋳込み方向判定位置において、測定される温度が一定割合以上であるか否かが判定されることで、鋳込み方向判定位置に溶鋼2の湯面が到達したか否かが判定される。ステップS108の判定において、閾値Bを下回った場合は、判定処理はステップS110の処理に進み、閾値B以上であった場合は、判定処理はステップS112の処理に進む。閾値Bは、鋳込み方向判定位置において溶鋼2が到達したと判断できる値として設定されることが好ましく、温度センサ8の検出精度等に応じて設定される。引き抜き開始前の湯面は、幅方向及び厚み方向ともにばらつきが大きい場合がある。したがって、閾値Bが1に限りなく近い場合、鋳込み方向判定位置に湯面が到達したと判定するタイミングが遅れてしまい、引き抜き開始が遅れて生産性を低下させるか、溶鋼が鋳型からあふれる恐れがある。一方で、閾値Bが過小である場合は、平均的な湯面レベル(鋳型5内における湯面の鋳込み方向位置又は高さ方向位置)が鋳込み方向判定位置に達していないにもかかわらず湯面が到達したと誤判定するリスクが高まる。したがって、閾値Bは、0.5以上0.9以下の値に設定されることが好ましい。
【0032】
ステップS110の処理では、引き抜き開始判定部92が、ステータス0及びタイマー0を出力し、判定処理はステップS102の処理に戻る。
一方、ステップS112の処理では、引き抜き開始判定部92が、ステータス1を出力し、判定処理はステップS114の処理に進む。
【0033】
ステップS114の処理では、引き抜き開始判定部92が、タイマーが閾値C以上であるか判定する。つまり、ステップS114では、鋳込み方向判定位置に湯面が到達したと判定される状態が所定の時間継続したか否かが判定される。なお、タイマーの値は、鋳込み判定位置に湯面が到達したと判定される状態の継続時間を示すものである。閾値Cを下回った場合は、スタートタイミングではないと判断されて、判定処理はステップS116に進む。一方、閾値C以上であった場合は、スタートタイミングであると判定されて、判定処理はステップS118の処理に進む。閾値Cは、鋳込み方向判定位置に到達した溶鋼2に、引き抜きに耐えうる程度に凝固シェルが十分に形成されたと判断できる値として設定されることが好ましい。閾値Cは、鋳型5の冷却能や過去の実績データ等から適宜設定されてもよい。例えば、タンディッシュ3と浸漬ノズル4との間にあるスライディングノズルの開度と、鋳片の幅及び厚みとから、平均的な湯面レベルの上昇速度を推定することができる。閾値Cが過大である場合、溶鋼が鋳型から溢れる恐れがある。一方で、閾値Cが過小である場合、未凝固のまま、つまり凝固シェルが十分に形成されていない状態で、引き抜きを開始してしまう可能性がある。したがって、閾値Cは、湯面レベルの上昇速度によって分類されたテーブル値もしくは湯面レベルの上昇速度の関数に基づいて、5秒以上15秒以下の間で設定されることが好ましい。
【0034】
ステップS116の処理では、引き抜き開始判定部92が、タイマーを1秒カウントアップした値を出力し、判定処理はステップS102の処理に戻る。なお、本実施形態では、ステップS102の測定工程における温度センサ8による温度測定は、1秒間隔で連続して行われ、ステップS102~S116までの一連の処理も1秒間隔で行われる。
ステップS118の処理では、引き抜き開始判定部92が、ステータス2を出力し、判定処理はステップS120の処理に進む。
ステップS120の処理では、引き抜き開始判定部92が、ダミーバー引き抜き開始指示を出し、一連の判定処理を終了する。なお、ステップS104~S114における判定処理を、判定工程ともいう。つまり、本実施形態では、ステップS102の測定工程の後、ステップS104~S114の判定工程が行われる。図5に示す処理フローが終了すると、連続鋳造が開始され、連続鋳造設備1で鋳片6が製造されることとなる。
【0035】
本実施形態に係るスタートタイミング判定方法は、湯面の鋳込み方向位置に応じてスタートタイミングを判定するものであり、鋳片幅の範囲内にある温度センサ8の測定結果から、閾値B及び閾値Cを用いて判定をすることで、鋳込み方向判定位置に湯面が到達し、十分に時間が経過したかを精度良く判定することができる。また、渦流センサを用いて湯面を検出する場合に比べ、鋳型5に設けた温度センサ8を用いて湯面を検出するため、連続鋳造設備の振動等の影響を受けないため、より高い精度で湯面を検出することができる。また、連続鋳造の開始時に溶鋼2を鋳型5に注入する際には、注入された溶鋼2が鋳型5内で飛散することで湯面高さよりも高い鋳込み方向位置においても温度センサ8により測定される温度が高くなる場合がある。しかし、本実施形態に係るスタートタイミング判定方法によれば、閾値B及び閾値Cを用いて判定することにより、このような場合においても湯面が所定の鋳込み方向位置に到達したかを精度良く判定することができる。このため、連続鋳造のスタートタイミングを精度良く判定することができる。
【0036】
また、本実施形態に係るスタートタイミング判定方法は、水平方向に並んだ複数の温度センサ8の測定結果を用いる。これにより、幅方向や厚み方向への溶鋼の大きな湯面変動を考慮することができる。一方、温度センサを鋳造方向に一次元配置するような場合、幅方向や厚み方向への溶鋼の大きな湯面変動があると湯面を正確に検知することができず、スタートタイミングを精度よく判定することができない。
【0037】
<変形例>
以上で、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態とともに種々の変形例を含む本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲に記載された発明の実施形態には、本明細書に記載したこれらの変形例を単独または組み合わせて含む実施形態も網羅すると解すべきである。
【0038】
例えば、上記実施形態では、所定の鋳込み方向位置である鋳込み方向判定位置の温度センサ8の測定結果を用いてスタートタイミングの判定をするとしたが、本発明はかかる例に限定されない。本発明では、複数の鋳込み方向位置の温度センサ8の温度の測定結果、つまり鋳込み方向判定位置での測定結果と、鋳込み方向判定位置とは異なる少なくとも一つの鋳込み方向位置での測定結果とを用いてスタートタイミングの判定をしてもよい。例えば、上記実施形態における鋳込み方向判定と、それよりも鋳込み方向の下流側(図3における下側)の温度センサ8についても、鋳込み方向位置毎に、上記実施形態と同様にステップS100~S118の処理を行い、ステータスを算出するようにしてもよい。そして、鋳込み方向判定位置を含む複数の鋳込み方向位置のステータスが2となった場合に、引き抜き開始指示を出すようにしてもよい。また、鋳込み方向判定位置と、鋳込み方向判定位置の上流側及び下流側の少なくとも2箇所の鋳込み方向位置との温度センサ8について、鋳込み方向位置毎にステータスを算出するようにしてもよい。この場合、例えば、鋳込み方向判定位置でのステータスが2となっていなくても、上流側及び下流側の鋳込み方向位置でのステータスが2となっている場合には、鋳込み方向判定位置での測定において異常が発生している可能性がある。このため、このような場合において、上流側及び下流側の鋳込み方向位置でのステータスから、鋳込み判定位置でのステータスも2であるとして、引き抜き開始指示を出すようにしてもよい。
【0039】
また、複数の鋳込み方向位置においてステータスを算出する場合、鋳込み方向位置毎のステータスの算出結果を表示させるようにしてもよい。図6には、鋳込み方向位置毎のステータスの算出結果を表示させる一例を示す。図6に示す例では、鋳込み方向位置毎のステータスの算出結果を縦に並んだ方形のブロックで示し、ブロックの表示をステータスに応じて変えることで算出結果を表示させる。なお、図6に示す下側が鋳造方向の下流側となり、上側が鋳造方向の上流側となる。図6に示す例では、鋳込み方向位置に22段の温度センサ8を設置し、5段目と6段目との間がメニスカス位置となり、6段目がメニスカス位置の直下の鋳込み方向位置が鋳込み方向判定位置となる。そして、溶鋼2の鋳型5への注入が正常に行われると、ダミーバーよりも上側のブロック(図6の16段目)の下側からステータスが変わっていき、鋳造開始のタイミングになると、溶鋼が注入される範囲内で鋳込み方向判定位置から下側のステータスが全て2となる。このような表示をすることにより、溶鋼の湯面が鋳型5内のどの鋳込み方向位置まで到達したかが分かるようになり、作業者は、鋳型5内の溶鋼の湯面位置を視覚的に認識できるようになる。これにより、作業者は、スタートタイミングを正確に判定することができるようになる。なお、溶鋼が鋳型5内のどの鋳込み方向位置まで到達したかを示す情報(溶鋼の湯面の鋳込み方向位置)を含む湯面レベル状態を示す情報を湯面レベル情報ともいう。また、図6に示すように、ステータス0,1,2の表示以外にも、測定された温度が異常と判定される場合にステータスとして表示する異常フラグを表示してもよい。さらに、温度異常の閾値(上下限)、湯面判定温度加減(閾値A)、ステータス遷移時間(閾値C)、湯面判定割合(閾値B)及び湯面判定用段数(鋳込み方向判定位置)を表示させるようにしてもよい。
【0040】
さらに、鋳片幅の範囲内にある温度センサ8について、同じ鋳込み方向位置の他の温度センサ8が温度上昇しているのに関わらず温度上昇がみられない(測温不良となる)場合には、測温不良となる温度センサ8をNに含めない又は閾値Bを調整するようにしてもよい。
さらに、上記実施形態では、温度センサ8が複数の鋳込み方向位置に設けられるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。上記実施形態と同様に、所定の鋳込み方向位置である鋳込み方向判定位置でのみ連続鋳造のスタートタイミングを判定する場合には、鋳込み方向判定位置にのみ温度センサ8が設けられるようにしてもよい。
【0041】
さらに、上記実施形態では、長辺側の銅板51に設けられた温度センサ8と短辺側の銅板52に設けられた温度センサ8との両方の温度センサ8の測定結果を用いるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。鋳片6の引き抜きを開始する際には、長辺側の鋳片6の凝固シェルの厚みが問題となる場合が多い。このため、長辺側の銅板51に設けられた温度センサ8の測定結果のみを用いて、スタートタイミングの判定をするようにしてもよい。この場合、長辺側の銅板51にのみ温度センサ8を設けるようにしてもよい。
【0042】
さらに、上記実施形態では、判定装置9は、図4に示す装置構成であるとしたが、この装置構成に温度センサ8を加えて判定装置9としてもよい。つまり、本発明では、連続鋳造のスタートタイミングを判定する判定装置9は、湯面レベル推定部91と、引き抜き開始判定部92と、複数の温度センサ8とを備えてもよい。
さらに、上記実施形態では、温度センサ8の測温値そのものを用いることとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、2次元配置された温度センサ8の測温値を線形内挿や3次スプライン内挿等の内挿法を用いて、鋳型の銅板の温度分布を推定することで、鋳込み方向判定位置は温度センサ8の存在しない位置に設定してもよい。
【0043】
さらに、本発明は、連続鋳造スタート判定システムにも適用することができる。この場合、例えば、図7に示すように、連続鋳造スタート判定システム10は、判定サーバー装置11と表示端末装置12とを備える。判定サーバー装置11と表示端末装置12とは、ネットワークを介して無線又は有線で接続される。判定サーバー装置11は、温度センサ8と、湯面レベル推定部91と、引き抜き開始判定部92と、表示データ出力部13とを有する。温度センサ8、湯面レベル推定部91及び引き抜き開始判定部92は、上記実施形態や他の変形例と同様である。つまり、温度センサ8は、連続鋳造設備1の鋳型5の銅板における、所定の鋳込み方向位置である鋳込み方向判定位置を含む複数の鋳込み方向位置において、鋳型幅方向に複数設けられ、銅板の温度を測定する。また、湯面レベル推定部91は、複数の温度センサ8の測定結果と、連続鋳造設備1で鋳造される鋳片6の幅とに基づいて、溶鋼の湯面の鋳込み方向位置を推定する。さらに、引き抜き開始判定部92は、推定される溶鋼の湯面の鋳込み方向位置に応じて、スタートタイミングを判定する。表示データ出力部13は、推定される溶鋼の湯面の鋳込み方向位置を含む湯面レベル状態を示す湯面レベル情報を表示端末装置12へ出力する。また、表示端末装置12は、表示データ取得手段14と表示手段15とを有する。表示データ取得手段14は、判定サーバー装置11から湯面レベル情報を取得する。表示手段15は、取得した湯面レベル情報に基づき、鋳込み方向位置の温度データに対応する位置ごとの湯面状態と、湯面状態を推定するための基準データとを表示する。基準データは、ステップS108やS114で用いる閾値BやC等である。例えば、表示手段15は、画像として図6に示す情報を表示するモニタ等の表示装置である。また、表示手段15は、図6に示す情報に加えて、後述する図8及び図9のように、鋳造条件や基準データ、銅版の温度等の時系列データを合わせて表示してもよい。
【実施例
【0044】
本発明者らは、実施例として、実際の連続鋳造設備1において上記実施形態に係るスタートタイミング判定方法を用いて連続鋳造を開始した。実施例では、メニスカス位置の直下を鋳込み方向判定位置として温度センサ8を設置した。鋳込み方向判定位置には、38個の温度センサ8を設けた。連続鋳造を行う際の、鋳片幅の範囲内にある温度センサ8の点数は、30点であった。
【0045】
図8に、溶鋼2を鋳型5に注入する前後における、温度センサ8の測定結果を示す。図8に示すように、長破線で示すタイミングで溶鋼注入を開始したところ、ばらつきがみられたものの、ほぼ全ての温度センサ8の検出温度が上昇した。本実施例では、図の点線で示される値を閾値A=50℃として、上記実施形態に係る連続鋳造のスタートタイミング判定方法を適用した。
【0046】
図9は、図8の温度データに基づいて上記実施形態に係る連続鋳造のスタートタイミング判定方法を適用した例を示す図である。図9は、温度が閾値Aを超えた温度センサ8の点数mをNで割った値、引き抜き開始判定部92が出力したステータス、引き抜き開始指示、及び実操業における鋳造速度の時系列変化を示している。本実施例では、m/Nの閾値B=0.6、ステータス1からステータス2に遷移するタイマーの閾値C=10秒とした。
本実施例では、ダミーバーの引き抜き開始指示を適切なタイミングで出すことができ、連続鋳造スタート時においてトラブルが発生することがなかった。
【符号の説明】
【0047】
1 連続鋳造設備
2 溶鋼
3 タンディッシュ
4 浸漬ノズル
5 鋳型
51,52 銅板
6 鋳片
7 鋳片支持ロール
8 温度センサ
9 判定装置
91 湯面レベル推定部
92 引き抜き開始判定部
10 連続鋳造スタート判定システム
11 判定サーバー装置
12 表示端末装置
13 表示データ出力部
14 表示データ取得手段
15 表示手段
【要約】
連続鋳造のスタートタイミングを精度良く判定することができる、連続鋳造のスタートタイミング判定方法、連続鋳造設備の操業方法、鋳片の製造方法、判定装置、連続鋳造スタート判定システム及び表示端末装置を提供すること。連続鋳造設備(1)において、ダミーバーの引き抜きタイミングである連続鋳造のスタートタイミングを判定する、連続鋳造のスタートタイミング判定方法であって、連続鋳造設備(1)の鋳型(5)の銅板における、所定の鋳込み方向位置である鋳込み方向判定位置に設けられた複数の温度センサ(8)を用いて、銅板の温度を測定する測定工程と、測定工程の測定結果と、連続鋳造設備(1)で鋳造される鋳片の幅とに基づいて推定される溶鋼(2)の湯面の鋳込み方向位置に応じて、スタートタイミングを判定する判定工程と、を備える、連続鋳造のスタートタイミング判定方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9