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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】弦楽器用チューニングマシン
(51)【国際特許分類】
   G10D 3/14 20200101AFI20231114BHJP
   G10D 1/08 20060101ALI20231114BHJP
   G10D 1/10 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G10D3/14
G10D1/08
G10D1/10
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021523294
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 CA2019051537
(87)【国際公開番号】W WO2020087168
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】62/753,673
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512007465
【氏名又は名称】ダンウッディ,デイヴィッド
【氏名又は名称原語表記】DUNWOODIE,David
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 友和
(74)【代理人】
【識別番号】100182903
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 武慶
(72)【発明者】
【氏名】パークエイト,オリヴァー ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ダンウッディ,デイヴィッド
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-073011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 3/14
G10D 1/08
G10D 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弦楽器用のチューニングマシンであって、
第1端と偏心体を有する対向する第2端とを有する入力軸であって、前記入力軸は入力に応じて回転可能な入力軸と、
前記入力軸が回転するときに円運動を介してローターを動かすための前記偏心体を受容するための中心軸ボアを備えたギア部材または前記ローターであって、前記ローターは、外部第1ローブを備えた第1ギア部分または上部ギア部分と、外部第2ローブを備えた第2または下部ギア部分とを有するローターと、
前記第1ギア部分の前記第1ローブの周りに配置された内部第1歯を有する固定された第1リングギアまたは上部リングギアと、
前記上部リングギアと離れ、かつ前記第2ローブの周囲に配置された内部第2歯を有する回転可能な第2リングギアまたは下部リングギアであって、前記上部リングギアおよび前記下部リングギアは、前記第1ローブの少なくとも1つが前記内部第1歯の少なくとも1つと噛み合うように、前記上部リングギア内での前記ローターの円運動に対応するために前記ローターよりも大きく、前記ローターがその円運動により前記下部リングギアをその中心軸の周りを回転させるように動くときに、前記第2ローブの少なくとも1つが、前記下部リングギアの前記内部第2歯の少なくとも1つと噛み合って駆動する第2リングギアまたは下部リングギアと、
前記下部リングギアによって駆動され、前記入力軸の一方向への回転により前記楽器の弦を巻き取り、前記入力軸の反対方向への回転により弦を巻き戻す弦ポストと、を備える、チューニングマシン。
【請求項2】
前記第1ローブおよび前記第2ローブは、凸状であり、かつ前記内部第1歯と前記内部第2歯との間の相補的な凹状の溝にそれぞれ噛み合うことができる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ローターは、対応するリングギアの前記内部歯よりも少なくとも1つ少ないローブを有する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記ローターは、対応するリングギアの前記内部歯よりも1つまたは2つ少ないローブを有する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記弦ポストは、前記下部リングギアの前記中心軸と同軸に前記下部リングギアに接続されている、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記弦楽器に取り付けるためのハウジングをさらに備え、前記ハウジングはボアを画定し、前記入力軸は前記ボア内で回転するように軸支され、前記ハウジングはさらに、前記ローターを収容するための空洞を画定し、前記空洞の上部部分に前記上部リングギアが取り付けられている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記弦楽器に取り付けるための底面を有するベース部分を含み、前記空洞は、前記ベース部分に画定され、前記底面に向かって開口し、前記ハウジングは、前記底面に対向して前記空洞を区切る頂壁をさらに含み、前記ボアは、前記頂壁に画定され、前記上部リングギアは、前記頂壁の内側面に画定される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、前記入力軸の前記第1端に接続されたハンドルをさらに含み、ユーザーが前記入力軸に回転を付与することを容易にする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記弦ポストは、前記下部リングギアの前記中心軸と同軸に前記下部リングギアに接続されている、請求項2に記載の装置。
【請求項10】
前記弦楽器に取り付けるためのハウジングをさらに備え、前記ハウジングはボアを画定し、前記入力軸は前記ボア内で回転するように軸支され、前記ハウジングはさらに、前記ローターを収容するための空洞を画定し、前記空洞の上部部分に前記上部リングギアが取り付けられている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ハウジングは、前記弦楽器に取り付けるための底面を有するベース部分を含み、前記空洞は、前記ベース部分に画定され、前記底面に向かって開口し、前記ハウジングは、前記底面に対向して前記空洞を区切る頂壁をさらに含み、前記ボアは、前記頂壁に画定され、前記上部リングギアは、前記頂壁の内側面に画定される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、前記入力軸の前記第1端に接続されたハンドルをさらに含み、ユーザーが前記入力軸に回転を付与することを容易にする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記弦ポストは、前記下部リングギアの前記中心軸と同軸に前記下部リングギアに接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記弦楽器に取り付けるためのハウジングをさらに備え、前記ハウジングはボアを画定し、前記入力軸は前記ボア内で回転するように軸支され、前記ハウジングはさらに、前記ローターを収容するための空洞を画定し、前記空洞の上部部分に前記上部リングギアが取り付けられている、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記ハウジングは、前記弦楽器に取り付けるための底面を有するベース部分を含み、前記空洞は、前記ベース部分に画定され、前記底面に向かって開口し、前記ハウジングは、前記底面に対向して前記空洞を区切る頂壁をさらに含み、前記ボアは、前記頂壁に画定され、前記上部リングギアは、前記頂壁の内側面に画定される、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記装置は、前記入力軸の前記第1端に接続されたハンドルをさらに含み、ユーザーが前記入力軸に回転を付与することを容易にする、請求項15に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、弦楽器のチューニングを行うマシンヘッドまたはチューニングマシン、特に、ウクレレ、ギター、バンジョーまたは類似する弦楽器のチューニングマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の記載)
弦楽器は、各弦の一端に固定されたアンカーと、もう一端にはユーザーが弦に一定の張力を与えることができる機構とを提供する。弦が振動する周波数は、いくつかの他のパラメータの中でも弦の振動長およびその張力に大きく依存する。弦の張力を調整するために使用されるギア付きマシン機構は、チューニングマシンまたはマシンヘッドと呼ばれることが多い。チューニングマシンは、本分野でよく知られており、ギター、バンジョーなどに使われている典型的なチューニングマシンは、ハウジングを通じて伸びるウォーム軸の端に固定されたチューニングハンドルを含む。ハウジング内のウォーム軸にはウォームホイールが噛み合っており、円筒状のポストは、ウォームホイールに接続され、ウォームホイールの回転軸に同調している。円筒状のポストは、楽器のヘッドストックの穴を通って弦と同じ側に伸び、その軸が弦に対して垂直になるように配置されている。動作において、ハンドル(つまりウォーム軸)を回転させると、それがウォームホイールを回転させ、そして円筒状のポストが回転する。これにより、円筒状のポストに画定されたギター弦挿入穴内に挿入されたギター弦が、円筒状のポストに巻き付けられたり、円筒状のポストから巻き戻されたりすることで、弦の張力が増したりまたは減ったりして、弦のチューニングが行われる。
【0003】
市販されているチューニングマシンは様々なデザインのものがあるが、上記の共通した特徴と機能を備え、主に金属で作られているものが多い。多くの従来のギア付きチューニングマシンの欠点は、ギアの歯の大きさによってギア比がある程度制限されることである。一般的には、歯が細かすぎて破損しやすいため、36:1の減速が従来のチューニングマシンでは限界とされている。したがって、ヘッドストックに大きな重量を加えることなく小型の弦楽器から大型の弦楽器まで使用され得、36:1以上の高い減速比を含む幅広い減速比を提供し得、そして低コストで経済的に大量生産され得る実施形態を備える単純、軽量かつ経済効果の高いチューニングマシンのニーズがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、第1端と偏心体を有する対向する第2端とを有する入力軸であって、入力軸はユーザーからの入力に応じて回転可能な入力軸と、入力軸が回転するときに円運動を介してローターを動かすための偏心体を受容するための中心軸ボアを備えたギア部材またはローターであって、ローターは、外部第1ローブを備えた第1ギア部分または上部ギア部分と、外部第2ローブを備えた第2または下部ギア部分とを有するローターと、上部ギア部分の第1ローブの周りに配置された内部第1歯を有する第1リングギアまたは上部リングギアと、上部リングギアと離れ、かつ下部ギア部分の第2ローブの周囲に配置された内部第2歯を有する第2または下部リングギアであって、上部および下部リングギアは、第1ローブの少なくとも1つが内部第1歯の少なくとも1つと噛み合うように、リングギア内でのローターの円運動に対応するためにローターよりも大きく、ローターがその円運動により下部リングギアをその中心軸の周りを回転させるように動くときに、第2ローブの少なくとも1つが、下部リングギアの内部第2歯の少なくとも1つと噛み合って駆動する第2または下部リングギアと、下部リングギアによって駆動され、入力軸の一方向への回転により楽器の弦を巻き取り、入力軸の反対方向への回転により弦を巻き戻す弦ポストと、を備える、弦楽器用のチューニングマシンを提供する。
【0005】
いくつかの実施形態では、第1および第2ローブは、凸状であり得、かつ第1内歯と第2内歯との間の相補的な凹状の溝にそれぞれ噛み合うことができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、ローターは、対応するリングギアの内歯よりも少なくとも1つ少ないローブを有し得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、ローターは、対応するリングギアの内歯よりも1つまたは2つ少ないローブを有し得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、弦ポストは、下部リングギアの中心軸と同軸に下部リングギアに接続され得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、装置は、弦楽器に取り付けるためのハウジングをさらに備え、ハウジングはボアを画定し、入力軸はボア内で回転するように軸支され、ハウジングはさらに、ローターを収容するための空洞を画定し、その上に上部リングギアが取り付けられている。
【0010】
いくつかの実施形態では、ハウジングは、弦楽器に取り付けるための底面を有するベース部分を含み得、空洞は、ベース部分に画定され得、底面に向かって開口し得、ハウジングは、底面に対向して空洞を区切る頂壁をさらに含み得、ボアは、頂壁に画定され、上部リングギアは、頂壁の内側面に画定される。
【0011】
いくつかの実施形態では、装置は、入力軸の第1端に接続されたハンドルをさらに含み得、ユーザーが入力軸に回転を付与することを容易にする。
【0012】
本発明の他の態様および特徴は、添付の図面および請求項と併せて本発明の実施形態の以下の説明を検討すると、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面は、本明細書の一部を構成し、様々な形態で達成され得る本発明の好ましい実施形態を含む。本発明の理解を容易にするために、本発明の様々な態様を誇張または拡大して示している場合があることを理解していただきたい。図において、
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るチューニングマシンの透視図である。
図2図1のチューニングマシンの側面図である。
図3図1のチューニングマシンの別の透視図である。
図4図1のチューニングマシンの上からの分解透視図である。
図5図1のチューニングマシンの側面からの分解透視図である。
図6図1のチューニングマシンからハンドルとハウジングとを取り除いた、入力軸、ローター、下部リングギアおよび出力軸を示す透視図である。
図7】入力軸の偏心体の拡大透視図である。
図8】上部リングギアを示すハウジングの底面からの透視図である。
図9】上部リングギアとローターとを示す底からのハウジングの図である。
図10】下部リングギアとその中のローターとを示す上からの出力部材の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の原理の理解を促進する目的で、ここでは図面に示された例示的な実施形態を参照し、特定の言語を使用してそれを説明する。それにもかかわらず、本発明の範囲のいかなる限定もそれによって意図されていないことが理解されるであろう。関連する技術分野の当業者であって本開示を所有する者に生じるであろう、本明細書に例示された発明的特徴の任意の変更およびさらなる修正、ならびに本明細書に例示された本発明の原理の任意の追加的な適用は、本発明の範囲内とみなされる。
【0016】
図1~10を参照すると、例えばギター、バンジョー、ウクレレなどの弦楽器のヘッドストックに取り付けられ得る、本発明の第1実施形態によるマシンヘッドまたはチューニングマシン100が示されている。チューニングマシン100は、ハウジング102、入力軸104、ハンドル106、ギア部材またはローター108、および出力部材110を備える。
【0017】
ハウジング102は、弦楽器のヘッドストック上の平らな表面と接触するように適合された平らな表面116を有するベース部分114を含む。ベース部分114は、ハウジング102をヘッドストックに固定するためのねじなどの留め具を受容する1または複数の取り付け穴118を含む。ハウジング102は、円周側壁122および頂壁124を有する隆起部分120をさらに含み、これらは共に、円形空洞126のような内部空洞を画定する。頂壁124は、空洞126と同軸の中心ボア128を含む。
【0018】
入力軸104は、第1端138と偏心体134を有する対向する第2端136とを有する。偏心体とは、回転軸に固定された円形のディスクまたはピンであり、その中心135は軸の中心137からオフセットされていることが読者に理解されるべきである。第1端138において、入力軸104は、ハンドル106と入力軸104の端138とがキーフィットを有すると言われ得るように、ハンドル106を貫通する概ね矩形の軸ボア140内に受容されるように形成されることによって、ハンドル106に接続される。入力軸の端136は、偏心体134が空洞126内に伸びるように、ハウジング102の中心ボア128内で回転するように軸支されている。従って、ハンドル106を回転させると、空洞126内の偏心体134が回転する。このように、入力軸は、ユーザーからの入力に応じて回転可能であるが、入力軸を回転させるための他のユーザー入力機構は、今後、当業者に明らかになるであろう。
【0019】
図8および図9を参照すると、ハウジング102の空洞126内には、上部リングギア部分180のような内部リングギアが画定されており、入力軸104の長手方向軸137と一致する中心186を中心に半径方向に配置された、その間に半円形の溝184を画定する空洞126の円周の周りに等間隔に配置された複数の歯188を備える。歯188は、好ましくは丸みを帯びている。したがって、空洞126と、溝184および歯188を有する上部リングギア部分180とは、内歯を有する第1リングギアの一実施形態である。
【0020】
チューニングマシン100は、下部リングギア部分160などの第2リングギアをさらに含む。図示された実施形態では、下部リングギア部分160は、ディスク部分150を含む出力部材110の一部である。一緒に、ディスク部分150およびハウジング102は、好ましくは、ディスク部分150が内部空洞126内に受容されるような形状および構成である。出力部材110は、さらに、弦ポストとして機能し、楽器の弦の端が巻かれる弦巻部分154を含む、ディスク部分150に垂直な出力軸152を備える。したがって、弦ポスト150は、示された実施形態では、下部リングギア部分160に直接接続されることによって下部リングギア部分160により駆動される。しかしながら、いくつかの実施形態では、弦ポストは、リングギアによって駆動されるように、例えば中間ギアなどによって、下部リングギアに間接的に連結され得る。
【0021】
図4図6および図10を参照すると、ディスク部分150は、内部平面162を画定しており、その上には、出力軸152の長手方向の軸と一致する中心166を中心に半径方向にその間に配置された半円形の溝164を画定するディスク部分の円周の周りに等間隔で配置された複数の歯168が設けられている。また、隣接する半円形の溝164の間の歯168は、丸みを帯びている。したがって、ディスク部分150と、溝164および歯168を有する下部リングギア部分160は、内歯を有する第2リングギアの実施形態である。
【0022】
チューニングマシン100が楽器のヘッドストックに取り付けられた状態で、出力部材110の出力軸152は、本分野では一般的であるように、ヘッドストックの開口部を通過し、ディスク部分150は、ハウジング102の内部空洞126内に受容される。ハウジングは、ディスク部分150が内部空洞126内で回転可能になるように、ヘッドストックに固定される。
【0023】
ローター108は、連結された2つの積層されたディスク状のギア部分:上部ギア部分190および下部ギア部分191を含む。ローター108は、入力軸104の偏心体134を受容する、その中を通る中心軸ボア174を有する。上部ギア部分190は、中心軸ボア174を中心に半径方向に位置する複数の半円形のローブ172を有する円周端を画定する。隣接するローブ172の間の移行ゾーンまたは半円形の溝176は、凹状である。上部ギア部分190は、組み立てられたチューニングマシンのハウジング102の上部リングギア部分180内に収まるように構成されている。下部ギア部分191は、中心軸ボア174を中心に半径方向に位置する複数の半円形のローブ192を有する円周端を画定する。隣接するローブ192の間の移行ゾーンまたは半円形の溝196は、凹状である。下部ギア部分191は、組み立てられたチューニングマシンの出力部材110の下部リングギア部分160内に収まるように構成されている。
【0024】
ローターのローブ172は、図9に示すように、上部リングギア部分180の溝184と噛み合うような大きさと形状になっている。したがって、上部リングギア180は、入力軸104の中心軸137を中心とした偏心体134の回転の結果としてローター108がその偏心円運動を介して駆動されるときに、ローブ172の少なくとも1つがリングギアの内歯188の少なくとも1つと噛み合うように、上部リングギア内の上部ギア190の偏心円運動に対応するために、上部ギア190よりも大きくなっている。上部ギア部分190のローブ172の数は、上部リングギア部分180の半円形の溝184の数よりも、少なくとも1つ少なく、2つ少なくてもよい。本明細書で説明するように、ローブ172の数は、入力軸104からローター108への減速比を決定する。
【0025】
ローターのローブ192は、図10に示すように、下部リングギア部分160の溝164と噛み合うような大きさと形状になっている。したがって、下部リングギア160は、入力軸104の中心軸137を中心とした偏心体134の回転の結果としてローター108がその偏心円運動を介して駆動されるときに、ローブ192の少なくとも1つがリングギアの内歯168の少なくとも1つと噛み合うように、下部リングギア160内の下部ギア191の偏心円運動に対応するために、下部ギア191よりも大きくなっている。下部ギア部分191のローブ192の数は、下部リングギア部分160の半円形の溝164の数よりも、少なくとも1つ少なく、2つ少なくてもよい。本明細書で説明するように、半円形の溝164の数は、ローター108から出力軸152への減速比を決定する。
【0026】
図示された実施形態では、上部リングギア部分180は、7つの半円形の溝184を有し、ローター108の上部ギア部分190は、6つの半円形のローブ172を有する。したがって、上部ギア部分は、溝184、ひいては上部リングギア部分の歯188よりも少なくとも1つ少ないローブ172を有する。好ましくは、上部ギア部分は、上部リングギア180の歯188よりも1つまたは2つ少ないローブ172を有する。好ましくは、上部ギア部分は、上部リングギア部分の歯188よりも1つ少ないローブ172を有する。
【0027】
図示された実施形態では、下部リングギア部分160は、6つの半円形の溝164を有し、その結果、6つの歯168を有し、ローター108の下部ギア部分191は、5つの半円形のローブ192を有する。したがって、下部ギア部分は、溝164/下部リングギア部分の歯168よりも少なくとも1つ少ないローブ192を有する。好ましくは、下部ギア部分は、下部リングギアの歯168よりも1つまたは2つ少ないローブ192を有する。好ましくは、下部ギア部分は、下部リングギア部分の歯168よりも1つ少ないローブ192を有する。
【0028】
組み立てられたチューニングマシン100では、ローター108およびディスク部分150は、弦楽器のヘッドストックに取り付けられたハウジング102の内部空洞126内に受容される。それゆえ、ローター108は、下部ギア191のローブ192が下部リングギア160の溝164と噛み合い、上部ギア190のローブ192が上部リングギア180の溝184と噛み合うように、ディスク部分150と頂壁124との間に挟まれている。ディスク150は、ハウジング102内で回転自在であり、順に出力軸152に接続される。ローター108の中心ボア174は、入力軸104の偏心体134を受容し、この偏心体は、端136でハウジングのボア128内で回転するように軸支され、端138でハンドル106に接続されている。したがって、組み立てられたチューニングマシン100では、ハンドル106を介した入力軸104の回転、またはその他の任意の機構による回転により、入力軸の長手方向軸137を中心とした偏心体134の回転が生じ、これにより、空洞126内で平面偏心円状に移動するようにローター108を駆動する。
【0029】
底からの図である図9を参照すると、ハウジングの空洞126内のローター108が示されている。ローター108は、中心ボア174を介して偏心体134によって、ローターが偏心円で移動するように駆動される。これにより、上部ギア190の1または複数のローブ172が、上部リングギア180の隣接する歯188に突き当たり、それにより、ローブ172と歯188/溝184との間の連続した係合ごとに、例えば方向181のような回転の円弧を介して、ローター108に回転を付与する。方向181は、入力軸/偏心体の回転方向とは反対である。その結果は、入力軸の1回転(したがって偏心体)がローターの部分的な回転のみをもたらすので、入力軸からローターへの第1減速である。ローターは、ローブ172と歯188/溝184との間の連続した係合の結果として、その中心ボア174を中心に回転し、また、それは、偏心体134によって駆動される結果として、偏心円運動で移動をすることに留意すべきである。
【0030】
上からの図である図10を参照すると、出力部材110のディスク部材150の上にあるローター108が示されている。ローター108が(上述したように)方向181に回転し、その偏心円運動で移動すると、下部ギア191上の1または複数のローブ192が、ディスク部材150上の下部リングギア160の1または複数の隣接する歯168に対して駆動され、それにより、ローブ192と歯168/溝164との間の連続した係合ごとに、方向181とは反対の方向に、回転の円弧を介してディスク部材150(したがって、出力軸)に回転が付与される。その結果は、ローターの1回転がディスク部材150の部分的な回転のみをもたらすので、ローター108からディスク部材150(したがって、出力軸)への第2減速となる。入力軸104から出力軸152への全体的な減速は、入力軸からローターへの減速とローターからディスク部材への減速との倍数である。有利なことに、出力軸152(したがって、弦巻部分)の回転方向は、入力軸104(したがって、ハンドル102)の回転方向と同じである。入力軸の回転を逆にすると、出力軸の回転も逆になる。したがって、弦ポストは、上部および下部リングギアと相互作用するローターによって駆動され、入力軸の一方向への回転の結果として楽器の弦を巻き取り、入力軸の反対方向への回転の結果として弦をほどく。
【0031】
完全な円運動によるローター108の動きは、回転の円弧を介したローター108の回転を引き起こし、その値は、ギア比に依存し、上部ギア部分のローブ172の数によって決定される。例えば、上部ギアが6つのローブ172を有する示された実施形態では、ローターの完全な円運動から生じるローター108の回転は、ローターの完全な1回転の1/6となろう。したがって、このような実施形態における入力軸とローターのギア比は6:1となり、ローター108の1つの完全な回転を生じさせるためには、高速入力軸の6つの完全な回転が必要となることを意味する。
【0032】
完全な円運動によるローター108の動きは、回転の円弧を介したディスク部材150の回転を引き起こし、その値はギア比に依存し、下部リングギア160の溝164/歯168の数によって決定される。例えば、下部リングギアが6つの溝164/歯168を有する示された実施形態では、ローターの完全な円運動から生じるディスク部材150の回転は、ローターの完全な1回転の1/6となろう。したがって、このような実施形態における出力軸に対するローターのギア比は6:1となり、出力軸の1つの完全な回転を生成するために、ローターの6つの完全な回転が必要となることを意味する。これらを組み合わせると、入力軸104から出力軸152への全体的な減速は36:1となる。
【0033】
したがって、示された実施形態におけるギア比は36:1となり、楽器の弦が巻かれる出力軸152の完全な1回転を生成するために、入力軸の36の完全な回転が必要であることを意味する。チューニングマシン100のギア比は、上部ギア部分190のローブ172の数および/または下部リングギア部分160の溝164の数を変更することによって選択され得る。例えば、64:1のギア比は、上部ギア部分190に8つのローブ172(それゆえ好ましくは上部リングギア部分に9つの溝184)を設け、下部リングギア部分160に8つの半円形の溝164(それゆえ好ましくは下部ギア部分191に7つのローブ192)を設けることによって得られ得る。同様に、ローター108の上部ギア部分190にL個のローブ172を設け、これに対応して上部リングギア部分180にL+1個の溝184を設け、下部リングギア部分160にG個の溝164を設け、これに対応してローターの下部ギア部分191にG-1個のローブ192を設けることで、L×G:1のギア比を得られ得る。
【0034】
好ましくは、ローターのローブ172および192の数は、それぞれの上部および下部リングギア部分180および160の溝184および164の数よりも2つ以下少ないローブである。ローターのローブが溝よりも2つ少ないという効果は、それぞれの部品間のギア比を変える結果となろう。また、ローブ/歯/溝の相互作用への影響は、ローターとリングギアとの間の摺動が大きくなり、それは、ディスクとリングギアとの間の摩擦が増加する結果、駆動の効率が低下する傾向になるだろう。小型のチューニングマシンで歯数が2つ少ないローターを設計することは、直径が大きく異ることによる歯の噛み合わせの問題や、歯の噛み合わせあたりの出力駆動の角変位が大きくなるため、現実的には難しいだろう。
【0035】
本発明のチューニングマシンの有利な点は、部品がシンプルであるため、プラスチック、金属、またはその両方から、鋳造、射出成形、3Dプリント技術、または単純な機械加工などの方法で、経済的に大量生産することができることである。また、入力軸からローターへ、そしてローターから出力軸への減速比を組み合わせることで、比較的加工してない部品で高いギア比を実現し得る。一方、従来のギア付きチューニングマシンで比較的高いギア比を実現するには、より故障しやすい微細なギア機構が必要であった。本発明のギア部品は、機能を損なうことなく、それらをより精度の低い寸法にすることができるように、寸法の変動がより大きくなり得、これにより、経済的な大量生産方法を使用して、より厳しくない寸法仕様でそれらを製造することが可能になる。例えば、本発明のチューニングマシンの部品は、プラスチックの射出成形によって作られてもよく、それにより、小さな弦楽器(ウクレレなど)または通常は大型のチューニングマシン(ベースギターなど)を備えた弦楽器で使用され得る、軽量で費用対効果の高いチューニングマシンをもたらし、同等の従来技術の金属チューニングマシンとは対照的に、大幅な軽量化を実現する。いくつかの実施形態では、チューニングマシンは、例えば出力軸/弦ポスト内の金属棒コアのような、構造補強のための金属部分を含んでいてもよく、これらはプラスチック射出成形プロセスで容易に組み込まれ得る。さらに、有利なことに、本発明のギア機構は、出力軸によって駆動され得ない。したがって、出力軸にかかる弦の張力による回転力は、ギア機構を逆回転させて弦の巻き戻しをもたらすことはない。ギア機構は、ハンドルまたは他のものによる入力軸の回転によってのみ駆動され得る。本発明の他の利点は、ギア機構のバックラッシュが減少され得、また、ギア構造が単純であるため、64:1のようなこれらの種の弦楽器用のチューニングマシンとしてはかなり高いギア比を含む、高比から低比までの様々なギア比のチューニングマシンを設計することが極めて容易である。
【0036】
上記の説明および図は、本発明の好ましいまたは代替の実施形態を構成するが、本発明の範囲から逸脱することなく、多数の変形が可能であることが理解されよう。したがって、本明細書で説明および図示した実施形態は、本発明を限定するものと考えてはならない。

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