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特許7384353ガイド部材および当該ガイド部材を備えた水栓装置
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  • 特許-ガイド部材および当該ガイド部材を備えた水栓装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】ガイド部材および当該ガイド部材を備えた水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20231114BHJP
   E03C 1/02 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
E03C1/042 Z
E03C1/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020000993
(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公開番号】P2021110113
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】592243553
【氏名又は名称】株式会社タカギ
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】芳川 敏康
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115541(JP,A)
【文献】特開平11-158953(JP,A)
【文献】特開2011-231617(JP,A)
【文献】特開2006-144330(JP,A)
【文献】特開2006-183388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00 - 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流通・遮断するバルブ部を備えスパウトを保持する水栓本体と、
前記水栓本体の内部において前記バルブ部に前記流体を供給する配管と、
前記バルブ部の下流であって前記水栓本体から前記スパウトにかけて設けられた吐出用の導管と、を有する水栓装置において、
前記水栓本体の内部に設けられ、前記導管を挿通可能な第1開口部と第2開口部とを両端に有し、
前記第1開口部の直下で前記バルブ部から一旦離れるように折れ曲がって第1屈曲領域が形成され、前記バルブ部の側部を鉛直下方に向けて延出したのち、再度、前記水栓本体の中心側に復帰する第2屈曲領域が形成された挿通経路を備えたガイド部材。
【請求項2】
前記挿通経路が筒状に構成されている請求項1に記載のガイド部材。
【請求項3】
前記導管の挿入時に前記導管の端部を前記第1開口部に導く誘導片が前記第1開口部に隣設されている請求項1または2に記載のガイド部材。
【請求項4】
流体を流通・遮断するバルブ部を備えスパウトを保持する水栓本体と、
前記水栓本体の内部において前記バルブ部に前記流体を供給する配管と、
前記バルブ部の下流であって前記水栓本体から前記スパウトにかけて設けられた吐出用の導管と、を有する水栓装置において、
前記水栓本体の内部に設けられ、前記導管を挿通可能な第1開口部と第2開口部とを両端に有し、
前記第1開口部と前記第2開口部との間に二箇所以上の屈曲部を有する挿通経路が形成され、前記導管の挿入時に前記導管の端部を前記第1開口部に導く誘導片が前記第1開口部に隣設されているガイド部材。
【請求項5】
前記水栓本体の内壁あるいは前記配管の外面に当接する弾性係合部を備えている請求項1から4の何れか一項に記載のガイド部材。
【請求項6】
前記挿通経路を構成する部位が弾性を有する材料で形成されている請求項1から5の何れか一項に記載のガイド部材。
【請求項7】
前記導管が、前記スパウトおよび前記挿通経路の内部を往復移動可能なフレキシブルホースである請求項1から6の何れか一項に記載のガイド部材。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載のガイド部材を備える水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓本体が、流体を流通・遮断するバルブ部と流体を吐出するスパウトとを備え、流体を供給する配管と流体を吐出する導管とがバルブ部に接続されている水栓装置であって、水栓本体の内部において導管がバルブ部に干渉しない状態に敷設されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
このような従来技術としては、例えば以下の特許文献1に示す技術がある。この技術は、流し台や洗面化粧台で使用される混合水栓に用いられ、ホースが接続されたシャワーヘッドを着脱自在に支持する吐水管に関するものである。具体的には、ホースをグースネック状の吐水管の内部に挿通し、シャワーヘッドを出し入れする際のホースの摺動性を高め、摺動音を低減させようとするものであって、吐水管の内周面にホースと摺接する保護材を設けたものである。
【0003】
保護材は、例えば、6-ナイロン・ポリエチレン等の材質から形成されるスパイラル管・スリット管・コルゲート管等であり、湾曲した箇所にも好適に用いられるような屈曲性・柔軟性に富んだ管状である。この保護材を吐水管の先端側より挿入し、シャワーヘッドを支持する支持部材を吐水管の先端にビス止めすることで固定する。
【0004】
このような保護材は屈曲性・柔軟性に富んでいることから、吐水管内の湾曲した箇所をスムーズに移動することができ、グースネック状の曲げ半径の小さい吐水管にも容易に挿入することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-183388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術にあっては、保護材は、吐水管の内部にのみ敷設される。つまり、水栓本体の内部に対して保護材は設けられていない。このため、ホースを出し入れする場合、水栓本体の内部においてホースの外面が水栓本体の内壁や操作部の構成部品と接触する可能性がある。この結果、ホースの摺動性が損なわれ、ホースや水栓本体の内部部品が損傷する可能性がある。
【0007】
また、従来技術の図2によれば、水栓本体の上方にあるホースの位置と水栓本体の下方にあるホースの位置とが偏位している。操作部の近傍位置でホースがどのように挿通されているかは不明であるが、屈曲を伴っていることは明らかである。このような構成の場合、ホースを水栓本体の内部に挿通する作業が煩雑になると推測されるが、当該従来技術には当該問題に関する記載はない。
【0008】
このように、従来から、引き出し可能なホースについて摺動性を改善しようとする技術はあるが、水栓装置の全体に亘って当該課題を解決しようとするものではない。そのため、ホースの摺動性や敷設作業性等の特性をさらに改善し得るガイド部材あるいは水栓装置の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(特徴構成)
本発明に係るガイド部材の特徴構成は、
流体を流通・遮断するバルブ部を備えスパウトを保持する水栓本体と、
前記水栓本体の内部において前記バルブ部に前記流体を供給する配管と、
前記バルブ部の下流であって前記水栓本体から前記スパウトにかけて設けられた吐出用の導管と、を有する水栓装置において、
前記水栓本体の内部に設けられ、前記導管を挿通可能な第1開口部と第2開口部とを両端に有し、
前記第1開口部の直下で前記バルブ部から一旦離れるように折れ曲がって第1屈曲領域が形成され、前記バルブ部の側部を鉛直下方に向けて延出したのち、再度、前記水栓本体の中心側に復帰する第2屈曲領域が形成された挿通経路を備えた点にある。
【0010】
(効果)
本構成のように、導管の挿通経路に第1屈曲領域および第2屈曲領域の二箇所以上の屈曲部を形成することで、導管を水栓本体の内部に挿通する作業の煩雑さが解消される。つまり、例えばバルブ部の位置に屈曲部を対応させることで、バルブ部を回避する狭い空間に対して導管を引掛りなしに挿通させることができる。
【0011】
また、屈曲部によってバルブ部の側部を通過した導管の延出方向を水栓本体の下方に向けることもでき、導管が水栓本体を容易に貫通して、その後のバルブ部等への接続作業が円滑になる。
【0012】
(特徴構成)
本発明に係るガイド部材にあっては、前記挿通経路が筒状に構成されていると好都合である。
【0013】
(効果)
本構成の如く挿通経路が筒状に構成されることで、導管の挿通時に導管の先端位置が不用意に動くような場合でも、導管を確実に誘導し挿通することができる。
【0014】
また、挿通経路を筒状に構成することでガイド部材の剛性が高まり、ガイド部材を水栓本体に装着した際に配管などに押されて挿通経路が変形するといった不具合が生じ難くなる。その結果、導管の挿通経路の形状が所期の状態に確保され、導管の適切な挿通状態を長期に亘り維持することができる。
【0015】
(特徴構成)
本発明に係るガイド部材としては、前記導管の挿入時に前記導管の端部を前記第1開口部に導く誘導片を前記第1開口部に隣設しておくことができる。
【0016】
(効果)
挿通経路に屈曲部が形成され、挿通しようとする導管の先端が誘導されるとはいえ、水栓本体の構成によっては第1開口部の位置がスパウトの内部通路の位置から離間してしまう場合がある。その場合、スパウトの側から挿通させた導管の端部が第1開口部に挿通可能な位置に至らず挿通作業が煩雑となる。そこで本構成の如く誘導片を設けることで、導管の端部が第1開口部に容易に導かれ導管の挿通作業がより簡便なものとなる。
【0017】
(特徴構成)
本発明に係るガイド部材は、
流体を流通・遮断するバルブ部を備えスパウトを保持する水栓本体と、
前記水栓本体の内部において前記バルブ部に前記流体を供給する配管と、
前記バルブ部の下流であって前記水栓本体から前記スパウトにかけて設けられた吐出用の導管と、を有する水栓装置において、
前記水栓本体の内部に設けられ、前記導管を挿通可能な第1開口部と第2開口部とを両端に有し、
前記第1開口部と前記第2開口部との間に二箇所以上の屈曲部を有する挿通経路が形成され、前記導管の挿入時に前記導管の端部を前記第1開口部に導く誘導片が前記第1開口部に隣設された構成とすることもできる
【0018】
(効果)
本構成のように、導管の挿通経路に二箇所以上の屈曲部を形成することで、導管を水栓本体の内部に挿通する作業の煩雑さが解消される。例えば、バルブ部の位置に屈曲部を対応させることで、バルブ部を回避する狭い空間に対して導管を引掛りなしに挿通させることができる。
【0019】
また、屈曲部によってバルブ部の側部を通過した導管の延出方向を水栓本体の下方に向けることもでき、導管が水栓本体を容易に貫通して、その後のバルブ部等への接続作業が円滑になる。
【0020】
特に、本構成の如く誘導片を設けることで、導管の端部が第1開口部に容易に導かれ導管の挿通作業がより簡便なものとなる。
【0021】
(特徴構成)
本発明に係るガイド部材にあっては、前記水栓本体の内壁あるいは前記配管の外面に当接する弾性係合部を備えていると好都合である。
【0022】
(効果)
水栓本体の内部では、水栓本体の内壁の形状や配管の敷設状態によっては複雑な形状の空間が形成される。ただし、配管の敷設状態は水栓本体のタイプに応じて大よそ同じになるため内部空間の形状もある程度似たものとなる。
【0023】
そこで本構成の如く、ガイド部材の外表面に弾性係合部を設けることで、水栓本体に対するガイド部材の固定作業が簡略化され、水栓装置の設置作業効率がより向上する。
【0024】
(特徴構成)
本発明に係るガイド部材にあっては、前記挿通経路を構成する部位を、弾性を有する材料で形成することができる。
【0025】
(効果)
本構成の如く挿通経路を構成する部位を弾性材料で形成することで、ガイド部材を効率的に製造することができる。例えば、挿通経路に係る部位を弾性樹脂材料で一体成形することで製造工数およびコストを下げながら形状精度を高めることができる。
【0026】
また、使用材料の弾性の程度を適宜設定することで水栓本体の内部空間の形状に応じて可撓性の異なる屈曲ガイド部を製造することができ、挿入作業が容易でありながら強固に固定できる屈曲ガイド部を得ることができる。
【0027】
(特徴構成)
本発明に係るガイド部材にあっては、前記導管として、前記スパウトおよび前記挿通経路の内部を往復移動可能なフレキシブルホースを用いることができる。
【0028】
(効果)
フレキシブルホースはスパウトに対して引出・格納可能となるよう屈曲容易である。よって、フレキシブルホースを挿通する空間が狭く曲がっているような場合には挿通作業が煩雑となる。ただし、本構成では、水栓本体の内部に屈曲部を設けてあるからフレキシブルホースの敷設作業であっても容易に行うことができる。
【0029】
また、フレキシブルホースは、頻繁に引出・格納操作を行うから、ガイド部材がフレキシブルホースの周囲を覆うことで摺動抵抗を下げ騒音の発生を抑えることができる。
【0030】
さらには、フレキシブルホース自身や水栓本体の内面・配管の外面などの傷付きや摩耗を防止し水栓装置の耐久性を高めることができる。
【0031】
(特徴構成)
以上のガイド部材は、そのもの自身で特段の作用効果を奏するが、このガイド部材が組み込まれた水栓装置も以下の作用効果を発揮する。
【0032】
(効果)
水栓装置に上記ガイド部材を設けることで、水栓装置の設置工数が大幅に軽減される。特に、スパウトの内部にフレキシブルホースを備えている場合には、フレキシブルホースの設置作業の効率向上効果がより顕著となる。
【0033】
また、フレキシブルホースの引出・格納操作が円滑となるうえ操作音が低減するなどフレキシブルホースの使用感が向上する。
【0034】
さらに、フレキシブルホースや水栓本体の内面・配管の外面などの摩擦が抑えられ、水栓装置の耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】水栓装置の外観を示す説明図
図2】水栓本体の構成を示す分解斜視図
図3】水栓本体の構成を示す分解斜視図
図4】配管および導管の接続構造を示す分解斜視図
図5】ガイド部材の設置状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0036】
〔概要〕
本発明のガイド部材Gは、流体を流通・遮断するバルブ部VとスパウトSを備えた水栓本体1を有する水栓装置Uに用いられる。ここでの流体は、例えば水道水や水道水を濾過した浄水さらには湯である。水栓本体1の内部にあっては、流し台の下方等から導いた流体を供給する配管2がバルブ部Vに接続され、バルブ部Vの下流には、水栓本体1からスパウトSの先端まで流体を流通させる吐出用の導管3が接続されている。本発明のガイド部材Gは、水栓本体1の内部における導管3の敷設作業を容易にし、導管3や水栓本体1の傷付きや摩耗を抑えるべく水栓本体1に設置されるものである。以下、本発明に係るガイド部材Gの実施形態につき図面を参照しながら説明する。
【0037】
本発明に係る水栓装置Uの外観を図1に示す。例えば略円筒状の水栓本体1が流し台に取り付けられ、水栓本体1からはU字状のスパウトSが延出している。スパウトSは水栓本体1に対して所定の角度に亘って回転する。スパウトSは、水栓本体1に連接され水栓本体1に対して左右に回転するホルダ部S1と、このホルダ部S1に抜き差し自在に接続されるヘッド部S2とを備えている。ヘッド部S2には導管3として機能するフレキシブルホース3aが接続され、ホルダ部S1の内部を介して水栓本体1の下方に敷設されている。
【0038】
ホルダ部S1の内部には、フレキシブルホース3aの摺動が円滑に行われるよう、例えば筒状の低摩擦部(図外)が形成してある。低摩擦部の構成は任意であり、フレキシブルホース3aとの摩擦抵抗が小さい樹脂材料をホルダ部S1の内面に被覆する構成や、予め形成した樹脂製のパイプをホルダ部S1の内部に設置する構成を採り得る。また、その他に、ホルダ部S1自身が低摩擦特性を有する樹脂材料で構成されるものであっても良い。
【0039】
ヘッド部S2の内部には、浄水用のカートリッジCを装着することができる。ホルダ部S1の先端にはホルダ部S1に対して回転操作できる吐水部3bが設けられ、吐水部3bの操作によって吐出する流体を原水と浄水とに切り換えることができる。
【0040】
水栓本体1には、流体である水と湯とを適宜の混合比率に調節することができ、吐水状態と吐水停止状態とを切り替えるバルブ部Vと、当該バルブ部Vを操作するハンドルHとが設けられている。バルブ部Vには、流体をバルブ部Vに供給する配管2として、例えば水を供給する第1配管21と湯を供給する第2配管22が接続されている。
【0041】
吐水および吐水停止は、通常、ハンドルHの操作により行うが、本実施形態では、ハンドルHを用いずタッチレスで吐水および吐水停止を行えるよう近接センサ3cと電磁バルブEVを備えている。
【0042】
近接センサ3cは、図1に示すように、例えばホルダ部S1の側面に設けられる。使用者が近接センサ3cに手を近付けると近接センサ3cが反応し、電磁バルブEVを駆動させて水や湯が吐出される。
【0043】
一方の電磁バルブEVは、水栓本体1の下方位置など外部に露出しない位置であって、例えば、バルブ部Vの下流に接続された導管3に接続される。電磁バルブEVのさらに下流にはフレキシブルホース3aが接続される。この電磁バルブEVは、バルブ部Vを通過した水や湯の吐出および吐出停止を近接センサ3cでの検知信号に基づいてON/OFF制御する。尚、電磁バルブEVを用いたタッチレス方式によって吐水・吐水停止を行う場合には、ハンドルHは所定の開き位置に設定しておく。
【0044】
第1配管21および第2配管22、導管3は、設置作業時に手による曲げ加工を可能にするために銅管が用いられ柔らかく構成されている。本実施形態では、図4に示すように先端をL字状に曲げた第1配管21および第2配管22、導管3を下方からバルブ部Vの側方位置まで延出させ、バルブ部本体Vaの一部を構成するバルブケースVa1に接続する。
【0045】
二本の配管2および導管3の夫々は、バルブケースVa1に形成した接続口Va2に挿入され接続される。二本の配管2および導管3は、各々の先端に形成した鍔部2a等が、三つの切欠部を有する固定板10とバルブケースVa1とで挟持され、バルブケースVa1の一方側から挿入した固定ネジ11を固定板10に螺合させることでバルブケースVa1に固定される。その際、バルブケースVa1の接続口Va2には予め第1シールリング9aを取り付けておき、配管2および導管3の先端の夫々にも第2シールリング9bを取り付けておく。これにより、配管2および導管3とバルブケースVa1とが確実に密封状態に接続される。
【0046】
接続作業に際しては、固定板10と配管2および導管3を水栓本体1の下方から挿入する。一方、バルブケースVa1をハンドルHの側の開口から水栓本体1の内部に挿入する。その後、配管2および導管3とバルブケースVa1とを位置合わせし、固定ネジ11で締結する。
【0047】
このように配管2および導管3の先端部をL字状に曲げた構成とすることで、バルブ部本体Vaを水栓本体1の側方に偏位させ易くなり、水栓本体1の内部空間を広く確保し易くなる。よって、配管2や導管3の接続作業が容易となり、水栓本体1の意匠性を高めことも可能となる。
【0048】
尚、この他の接続構成として、バルブ部本体Vaの下面に配管の接続孔を形成しておき、バルブ部本体Vaが先に設置された水栓本体1に対して直線状の配管2や導管3を下方から近接させてバルブ部本体Vaの下面に接続するものであってもよい。また、水栓本体1の内部に予め屈曲した流路を形成しておき、この流路と接続されるように、水栓本体1の側方からバルブ部Vを接続し、一方、水栓本体1の下方から直線状の配管2や導管3を接続するものであってもよい。
【0049】
水栓本体1の内部にあっては、バルブ部Vのサイズやバルブ部本体Vaに接続される配管2等の設置状態が問題となる。特に、フレキシブルホース3aを備えた水栓装置Uでは、フレキシブルホース3aをスパウトSに格納した状態で、フレキシブルホース3aの一部がバルブ部Vの下方に延出し、流し台の内部で折り返されてバルブ部本体Vaに接続されることが多い。つまり、フレキシブルホース3aは、往復移動可能な状態でバルブ部Vの側部に挿通配置される必要があるため、フレキシブルホース3aの挿通空間の確保が重要となる。
【0050】
(第1ガイド部材)
図2乃至図5に示すように、本実施形態の水栓装置Uでは、バルブ部Vの側部にガイド部材Gの一つとして第1ガイド部材G1が設けられる。この第1ガイド部材G1は例えば筒状であり、導管3を挿通可能な第1開口部P1と第2開口部P2とを両端に有する。第1開口部P1と第2開口部P2との間には挿通経路Rが形成され、ここには二箇所以上の屈曲部Kが形成されている。この屈曲部Kにより、フレキシブルホース3aはバルブ部Vを回避して案内される。
【0051】
ガイド部材Gのうち主となるのは屈曲部Kを有する第1ガイド部材G1であるが、この他に、第1ガイド部材G1の上方には第2ガイド部材G2を備え、下方には第3ガイド部材G3を備えている。
【0052】
第1ガイド部材G1に形成されるフレキシブルホース3aの挿通経路Rは筒状である。本形状であれば、フレキシブルホース3aを挿通する際にフレキシブルホース3aの先端位置が不用意に動くような場合でも、フレキシブルホース3aを第1ガイド部材G1の内部に沿って確実に誘導することができる。
【0053】
また、挿通経路Rを筒状に構成することで第1ガイド部材G1の剛性が高まり、第1ガイド部材G1を水栓本体1に装着した際に配管2などに押されて挿通経路Rが変形するといった不具合が生じ難くなる。その結果、フレキシブルホース3aの挿通経路Rの形状が所期の状態に確保され、フレキシブルホース3aの適切な挿通状態を長期に亘り維持することができる。
【0054】
第1ガイド部材G1は、例えば、樹脂材料など弾性を有する材料で形成する。その場合、第1ガイド部材G1は、射出成形などにより製造することができ、製造工数およびコストを下げながら全体の形状精度を高めることができる。
【0055】
また、このように屈曲した第1ガイド部材G1を水栓本体1の狭い空間に設置する作業は煩雑となりがちである。しかし、使用材料の弾性の程度を適宜設定することで水栓本体1の内部空間の形状に応じて可撓性の変更が可能である。よって、挿入作業が容易でありながら強固に固定できる第1ガイド部材G1を得ることができる。
【0056】
図5に示すように、本実施形態における第1ガイド部材G1の挿通経路Rは、第1開口部P1の直下でバルブ部Vから一旦離れるように折れ曲がって第1屈曲領域KAが形成され、バルブ部Vの側部を鉛直下方に向けて延出したのち、再度、水栓本体1の中心側に復帰して第2屈曲領域KBが形成されている。この実施形態では、挿通経路Rに小さな四つの屈曲部K1乃至K4が形成される。つまり、最初の第1屈曲領域KAでは、小さな屈曲部K1,K2がS字状に連続形成されて挿通経路Rが形成される。同様に下方の第2屈曲領域KBでも屈曲部K3,K4がS字状に連続形成されて挿通経路Rが形成される。
【0057】
尚、本発明のガイド部材Gにあっては、第1ガイド部材G1の第1開口部P1の直下にS字状の第1屈曲領域KAを一つだけ設け、第2開口部P2の側は鉛直下方に直線状に形成されるものであっても良い。フレキシブルホース3aが水栓本体1から下方に容易に導かれるものであれば第1ガイド部材G1の形状は適宜設定可能である。
【0058】
図2および図3に示すように、第1開口部P1に隣接した位置には誘導片Fが形成されている。これは水栓装置Uを設置する際に、ホルダ部S1の側から挿通したフレキシブルホース3aの先端を第1ガイド部材G1の内部に導くものである。
【0059】
本実施形態の水栓本体1は筒状であり、ホルダ部S1との接続部においては、水栓本体1とホルダ部S1とは同じ軸芯X1を有する(図5)。ただし、水栓本体1の内部に設置された第1ガイド部材G1は、バルブ部Vを避けるために上記軸芯X1から偏位した位置にある。その場合でも、第1開口部P1の位置は、ホルダ部S1の軸芯X1に近付くように設定されるが、水栓本体1の内部形状によっては必ずしもそのようにはならない場合がある。
【0060】
また、ホルダ部S1はカーブしているものの、内部を挿通するフレキシブルホース3aの先端は、ホルダ部S1の下端部から突出する際に、カーブの外側に向く可能性もある。
【0061】
そこで、軸芯X1の延長上に誘導片Fを設けることで、フレキシブルホース3aの端部が第1開口部P1に容易に導かれることとなり、導管3の挿通作業がより簡便なものとなる。
【0062】
図2乃至図4に示すように、第1ガイド部材G1の外表面には、例えば水栓本体1の内面に当接する弾性係合部4が設けられている。この弾性係合部4は、例えば、板状の部位を突出させて形成したものであるが、この他に棒状のものを突出形成したものでも良い。
【0063】
第1ガイド部材G1を固定するためには、第1ガイド部材G1の外形そのものも有効である。図5に示すように、第1ガイド部材G1は図5中において左に湾曲している。この部分には配管2や導管3の曲率部が位置するから、第1ガイド部材G1は自身の外面の全体で位置保持する機能も有する。
【0064】
また、図2乃至図4に示すように、第1ガイド部材G1の下方には樋状の長尺部5が形成してある。この部位は配管2の外面に当接し、第1ガイド部材G1の姿勢を安定させる他、配管2をバルブ部本体Vaに接続したあと、配管2を曲げ加工する必要が生じた場合に、配管2が不用意に挿通経路Rに進入するのを防止するものである。
【0065】
この長尺部5も弾性係合部4の一つである。この他にも、バルブ部本体Vaに当接する弾性係合部4を設けても良い。これら弾性係合部4および長尺部5は、第1ガイド部材G1の外面の何れの位置に設けてあっても良い。
【0066】
水栓本体1の内部には、水栓本体1の内面の形状や配管2等の敷設状態によっては複雑な形状の空間が形成される。ただし、配管2等の敷設状態は水栓本体1のタイプに応じて大よそ同じになるため内部空間の形状は似たものとなる。そこで本構成の如く、第1ガイド部材G1の外表面に弾性係合部4を設けておくことで、水栓本体1に対する第1ガイド部材G1の固定作業が簡略化され、水栓装置Uの設置効率がより向上する。
【0067】
水栓装置Uに電磁弁EVを備えてタッチレス方式とするには、近接センサ3cから電磁弁EVに至る配線が必要になる。そのため、図3及び図4に示すように、第1ガイド部材G1の側部には、例えばコの字形の断面を有するケーブルガイド6が形成されている。ここに固定されるケーブル(図示省略)は、スパウトSの先端に設けた近接センサ3cに接続されるものである。ケーブルをケーブルガイド6に固定することで、ケーブルが水栓本体1の内部で不用意に位置ずれするおそれが無くなる。その結果、往復移動するフレキシブルホース3aにケーブルが緩衝するなどの不都合が防止される。
【0068】
第1ガイド部材G1を構成する材質としては、フレキシブルホース3aの引き出し・格納に際してのストッパ機能等は求められず、それほど高い剛性は不要である。しかし、ガイド用の材質として摺動性及び耐摩耗性が重要となるため摩擦係数の低い材質が好ましい。摺動性・耐摩耗性の観点からはPP(ポリプロピレン)や、POM(ポリアセタール)、ナイロン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)が好ましい。寸法安定性を加味するとPPが望ましい。一方、製造コストと摺動性を加味するとPOMが望ましい。ただし、第1ガイド部材G1としては、必要な特性を考慮するとPPを用いるのが好適である。
【0069】
尚、破損防止や形状確保の観点から、1,400MPa程度の曲げ弾性率を有する強さが必要である。その一方で、屈曲した形状をしているため、水栓本体1の内部への組み付け性の観点から、曲げ弾性率を2,500MPa以下とし、組み付け時には所定の曲り変形が生じ得ることが望ましい。
【0070】
(第2ガイド部材)
図2図3図5に示すように、第1ガイド部材G1に対してスパウトSのホルダ部S1の側には、ホルダ部S1と略連続した状態に第2ガイド部材G2が設けられている。第2ガイド部材G2は略完全な円筒状の部材であり、水栓本体1の上端においてホルダ部S1の軸芯X1と同軸芯上に設置される。第2ガイド部材G2は、フレキシブルホース3aが水栓本体1の内面に直に接触するのを防止する他、上端部に形成した凸部や凹部等(図外)が、ホルダ部S1を回転させる際の振り角ストッパとして機能する。
【0071】
図5に示すように、第2ガイド部材G2の下方の先端開口部は傾斜させてあり、誘導片Fの近傍までフレキシブルホース3aを確実に誘導するように構成してある。このような第2ガイド部材G2を設けることで、フレキシブルホース3aの挿通領域がより制限され、水栓装置Uを設置する際にフレキシブルホース3aの先端を第1ガイド部材G1の第1開口部P1に誘導し易くなる。また、水栓装置Uの使用に際してフレキシブルホース3aが水栓本体1の内面に当接しなくなるから、フレキシブルホース3aおよび水栓本体1の傷付きや摩耗を抑えることができる。
【0072】
第2ガイド部材G2は例えば樹脂材料で形成する。この部材はホルダ部S1を回転させる際の振り角ストッパとして機能させるため、第1ガイド部材G1に比べて硬い樹脂材料とするのがよい。例えば、曲げ弾性率が8,500MPa程度のPOM+GF(ガラス繊維強化ポリアミド)25%や、13,000MPa程度のPPS(ポリフェニレンサルファイド)1140A1等が適用可能である。
【0073】
(第3ガイド部材)
図2乃至図5に示すように、第1ガイド部材G1の下方側であって水栓本体1の下端部には第3ガイド部材G3が設けられている。第3ガイド部材G3は、第1ガイド部材G1から下方に延出したフレキシブルホース3aの往復移動を案内する。また、ヘッド部S2をホルダ部S1から引き出す際に、フレキシブルホース3aに取り付けたストッパ3dに当接し、フレキシブルホース3aの引き出し長さを規制する。さらに、水栓本体1の内部における配管2などの位置を固定する。尚、第1ガイド部材G1の下端部との距離をとるためにスリーブ8が設けられている。
【0074】
第3ガイド部材G3は、図2乃至図5に示すように分割構成であり、既に敷設されている配管2および導管3を回避しつつ下方から嵌合によりスリーブ8に取付けることができる。第3ガイド部材G3は、フレキシブルホース3aや配管2など全ての敷設物の取り付けが完了したあと水栓本体1の下方から挿入固定するから取付作業は非常に容易である。
【0075】
第3ガイド部材G3は樹脂材料で形成可能である。ただし、特段のストッパ機能などは持たないため高い剛性は不要である。しかし、銅製の配管2の保持やフレキシブルホース3aのストッパ機能が付加されるため、破損防止や形状確保の観点から例えば1,400~2,500MPa程度の曲げ弾性率が必要である。
【0076】
(その他の部材の材質)
水栓本体1の材質としては、量産性及び強度が重要となる為、曲げ弾性率の高い材質が好ましい。強度と量産性を重視する場合、亜鉛や黄銅が好ましい。特に耐食性能をも重視すると黄銅が望ましい。
【0077】
フレキシブルホース3aの外側を構成するアウターホースの材質としては、摺動性及び耐久性を加味して高強度のものが好ましい。強度と量産性を重視すると、ステンレス、ナイロン、PETが適用可能である。中でも意匠性および高級感を重視するとステンレスが好ましい。
【0078】
尚、本実施形態では、ホルダ部S1やヘッド部S2などのスパウトSを樹脂材料で構成する。その場合、剛性を確保するために1,400MPa以上の高い曲げ弾性率を有するのが望ましい。例えば、これにより、ホルダ部S1を水栓本体1に対して確実に圧入することができ、圧入後の摺動部の形状が確保される。また、ホルダ部S1やヘッド部S2の動きに基づく音や振動の発生が少なくなるうえ、仮にフレキシブルホース3aが引っ掛かってもそれにより破損することがない。
【0079】
ただし、これよりも曲げ弾性率が低い1,200MPa以下であっても、柔らかさが現れるため使用可能である。この程度の曲げ弾性率であれば、量産時の品質のバラツキを加味しても、変形が容易で組立性に優れ、水栓本体1に対して確実に圧入可能なスパウトSを得ることが出来る。
【0080】
さらにスパウトSを樹脂で構成する場合の結晶構造についても以下のように設定するのが好ましい。即ち、耐摩耗性を高めるために結晶性樹脂を用いることで、水栓本体1などへの圧入時に粉が発生し難く、水栓本体1やフレキシブルホース3aとの摺動時にも粉が発生し難くなる。よって、長寿命化が可能となる。
【0081】
また、フレキシブルホース3aとの摩擦を下げるためには、動摩擦係数は0.37μd以下が好ましい。本構成であれば、フレキシブルホース3aの引き出し・格納の操作力が小さくなる。また、摩耗の程度も少なくなり長寿命化が可能となる。
【0082】
ただし、スパウトSは、各種の金属材料で構成しても良い。例えば、黄銅や青銅・ステンレス鋼・亜鉛ダイカスト等を用いることができる。その場合、鋳造成形によれば中空形状の製品を容易に得ることができ材料ロスも少ない。これにより剛性が高く質感の良いスパウトSを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明のガイド部材は、スパウトの内部から水栓本体の下方に掛けて各種の導管を敷設する必要のある水栓装置に適用可能であり、本発明の水栓装置は、例えば導管としてフレキシブルホースを備えたものに適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 水栓本体
2 配管
3 導管
3a フレキシブルホース
4 弾性係合部
V バルブ部
F 誘導片
G ガイド部材
K 屈曲部
P1 第1開口部
P2 第2開口部
R 挿通経路
S スパウト
U 水栓装置
図1
図2
図3
図4
図5