(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】空調衣服の服本体及び空調衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20231114BHJP
A41D 27/00 20060101ALI20231114BHJP
A41D 27/20 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D27/00 A
A41D27/20 B
(21)【出願番号】P 2020080077
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-03-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年1月14日~1月17日 (株)寅壱児島駅前ショールームにて展示令和2年1月29日~1月31日 FESTAE表参道ビル2Fにて展示
(73)【特許権者】
【識別番号】592171005
【氏名又は名称】株式会社セフト研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】399005552
【氏名又は名称】株式会社 寅壱
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】市ヶ谷 弘司
(72)【発明者】
【氏名】村上 貴章
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/198396(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3223897(JP,U)
【文献】登録実用新案第3212889(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/002
A41D27/00
A41D27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気導入手段を取り付けるための取付部を備える空調衣服の服本体であって、
服地に形成された前記取付部と別個の開口部と、
一端部が前記開口部を囲むように前記服地に接続された袋状部材と、
を備え、
前記袋状部材は、
前記服本体の内面側に位置する状態と、前記服本体の外面側に位置する状態と、を切り替え可能であり、
前記服本体の外面側に位置する状態で、前記取付部を覆うことができるように形成されていることを特徴とする空調衣服の服本体。
【請求項2】
前記取付部近傍の前記服地の外面側に、前記袋状部材を着脱自在に接続するための接続手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の空調衣服の服本体。
【請求項3】
前記接続手段は、前記袋状部材の上端部近傍を前記服地に接続するための上端部接続手段と、前記袋状部材の下端部近傍を前記服地に接続するための下端部接続手段と、を含むことを特徴とする請求項2に記載の空調衣服の服本体。
【請求項4】
前記接続手段を、前記服本体の外面側から覆う接続手段カバー部材を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の空調衣服の服本体。
【請求項5】
前記袋状部材は、一方の面を形成する第1シート状部材と、他方の面を形成する第2シート状部材と、を備え、
前記第1シート状部材と前記第2シート状部材とは、前記服地に接続された一端部を除いた端部において互いに接続されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体。
【請求項6】
前記袋状部材は、一端部に、前記第1シート状部材及び前記前記第2シート状部材の前記服本体の外面側に位置する状態において対向する面同士を固定して形成された掴み部を備えることを特徴とする請求項5に記載の空調衣服の服本体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体と、
前記空調衣服の服本体の内部に空気を導入する空気導入手段と、
前記空気導入手段に電力を供給する電源手段と、
を備えることを特徴とする空調衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調衣服の服本体及び空調衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、身体を冷却する空調衣服が実用化され、急速に普及しつつある。空調衣服は、通気性の低い素材で形成された服本体と、服本体の後側の下方に取り付けられた2つのファンと、2つのファンに電力を供給するための電源装置と、電源装置と2つのファンとを電気的に接続するための電源ケーブルと、を備える。
【0003】
ファンを作動させると、大量の空気がファンから服本体内に取り込まれ、取り込まれた空気の圧力により服本体と着用者の身体との間に空気流通路が自動的に形成される。取り込まれた空気は、形成された空気流通路を着用者の身体又は下着の表面に沿って流通し、例えば、襟部や袖部の開口部に形成された空気排出部から外部に排出される。
そして、取り込まれた空気が、服本体と着用者の身体又は下着との間の空気流通路を流通する間に、身体から出た汗を蒸発させ、蒸発する際の気化熱により身体が冷却される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような空調衣服は、冷却機能を必要としない場合においては、その服本体を、空調衣服としての冷却機能を利用せずに、他の用途(例えば、防寒目的の通常の上衣や、レインコート等としての用途)のために使用することが考えられる。
しかし、空調衣服の服本体は、通常、着用者の腰部付近等の目立つ位置に、ファン等の空気導入手段を取り付けるための取付孔を有することから、空調衣服以外の用途に用いるためには、外見や保温性等の観点から、このような取付孔を塞ぐための専用のカバー等を用いることが必要となるが、空調衣服の服本体に備えつけるにしても、別部材とするにしても、取付孔を塞ぐための専用の部材を用意することは、徒に部品点数の増加を招くこととなり、望ましくなかった。
【0006】
本発明の課題は、部品点数の増加を抑制しつつ、冷却機能を利用しない場合に空気導入手段を取り付けるための取付孔を塞ぐことのできる空調衣服の服本体及び空調衣服を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
空気導入手段を取り付けるための取付部を備える空調衣服の服本体であって、
服地に形成された前記取付部と別個の開口部と、
一端部が前記開口部を囲むように前記服地に接続された袋状部材と、
を備え、
前記袋状部材は、
前記服本体の内面側に位置する状態と、前記服本体の外面側に位置する状態と、を切り替え可能であり、
前記服本体の外面側に位置する状態で、前記取付部を覆うことができるように形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空調衣服の服本体において、
前記取付部近傍の前記服地の外面側に、前記袋状部材を着脱自在に接続するための接続手段を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の空調衣服の服本体において、
前記接続手段は、前記袋状部材の上端部近傍を前記服地に接続するための上端部接続手段と、前記袋状部材の下端部近傍を前記服地に接続するための下端部接続手段と、を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の空調衣服の服本体において、
前記接続手段を、前記服本体の外面側から覆う接続手段カバー部材を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体において、
前記袋状部材は、一方の面を形成する第1シート状部材と、他方の面を形成する第2シート状部材と、を備え、
前記第1シート状部材と前記第2シート状部材とは、前記服地に接続された一端部を除いた端部において互いに接続されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の空調衣服の服本体において、
前記袋状部材は、一端部に、前記第1シート状部材及び前記前記第2シート状部材の前記服本体の外面側に位置する状態において対向する面同士を固定して形成された掴み部を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、空調衣服において、
請求項1から6のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体と、
前記空調衣服の服本体の内部に空気を導入する空気導入手段と、
前記空気導入手段に電力を供給する電源手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、部品点数の増加を抑制しつつ、冷却機能を利用しない場合に空気導入手段を取り付けるための取付孔を塞ぐことのできる空調衣服の服本体及び空調衣服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る空調衣服の、第1開閉手段を閉じ、側方ポケットの袋状部材を側方開口部から服本体の外面側に引き出し、前身頃カバー部材を服本体の前身頃の左側に接続した状態における正面図である。
【
図2】実施形態に係る空調衣服の、第1開閉手段を閉じ、側方ポケットの袋状部材を側方開口部から服本体の外面側に引き出し、前身頃カバー部材を服本体の前身頃の左側から外した状態における正面図である。
【
図3】実施形態に係る空調衣服の、第1開閉手段を閉じ、側方ポケットの袋状部材を側方開口部から服本体の外面側に引き出し、かつ袋状部材を服本体の後身頃のファン取付孔近傍の部分から外した状態における背面図である。
【
図4】実施形態に係る空調衣服の、第1開閉手段を閉じ、側方ポケットの袋状部材を側方開口部から服本体の外面側に引き出し、かつ袋状部材を服本体の後身頃のファン取付孔近傍の部分に接続した状態における背面図である。
【
図5】実施形態に係る空調衣服の、第1開閉手段を開き、側方ポケットの袋状部材を側方開口部から服本体の内面側に収納した状態における正面図である。
【
図6】実施形態に係る空調衣服の、第1開閉手段を開き、側方ポケットの袋状部材を側方開口部から服本体の外面側に引き出した状態における正面図である。
【
図7】実施形態に係る空調衣服の、袋状部材を側方開口部から服本体の内面側に収納した状態における側方ポケット周辺を、右斜め後方から見た図である。
【
図8】実施形態に係る空調衣服の、フック掛け部の環状部材、第1ベルト部材及び第7スナップボタンを示す図である。
【
図9】実施形態に係る空調衣服の、フック掛け部の第8スナップボタン、第2ベルト部材及びスナップボタンカバー部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、
図1から
図9に基づいて説明する。ただし、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではなく、以下説明する実施の形態には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更を加えることが可能である。
また、以下においては、着用者が空調衣服100を着用した状態を基準として、着用者の前方向を前、着用者の後方向を後、着用者の上方向を上、着用者の下方向を下、着用者の右手方向を右、着用者の左手方向を左と定めて説明する。なお、第1開閉手段11を開いた状態においては、
図5及び
図6に示すように、服本体1の内面側が向く方向を前、その反対方向を後と定めて説明する。
【0017】
[第1 実施形態の構成]
実施形態に係る空調衣服100は、
図1から
図6に示すように、服本体1と、服本体1内部に空気を導入するファン2と、ファン2に電力を供給する電源部3と、電源部3とファン2とを接続する接続ケーブル4、を備え、ファン2によって服本体1内に取り込まれた空気を、着用者の身体又は下着の表面に沿って流通させた後に、服本体1の襟部及び肩部に形成された空気排出部14から排出することで、身体から出た汗を蒸発させ、蒸発する際の気化熱により身体を冷却するものである。
【0018】
[1 服本体]
服本体1は、
図1から
図6に示すように、通気性のない又はファン2による空気の導入によって膨らませることができる程度の通気性を有する服地Cによって、着用者の胴部を覆うベスト型に形成されている。
図1から
図6においては、服本体1を着用者が頭に被るフードを有するベスト型の上衣の形状に形成した場合につき図示しているが、服本体1の形状はこれに限られず、例えば、着用者の腕部も覆うブルゾン型の上衣の形状に形成してもよい。
なお、服地Cの服本体1の着用時において着用者に向く面を服地Cの内面側、その反対側の服本体1の着用時において外部空間に向く面を服地Cの外面側とする。また、服地Cの内面側及び服本体1の着用時において服地Cの内面側よりも着用者側に位置する部分を服本体1の内面側、服地Cの外面側及び服本体1の着用時において服地Cの外面側よりも外部空間側に位置する部分を服本体1の外面側とする。
【0019】
服本体1は、
図1から
図6に示すように、第1開閉手段11と、空気漏れ防止手段12と、ファン取付孔13と、空気排出部14と、電源部保持手段15と、前身頃カバー部材16と、側方ポケット17と、フック掛け部18と、命綱貫通手段19と、を備え、ファン取付孔13からファン2によって取り込まれた外気が、空気排出部14から排出されるように構成されている。
【0020】
[(1) 第1開閉手段]
第1開閉手段11は、服本体1を前開き式とし、空調衣服100を着用する際に、服本体1の前部を開閉するための手段であり、
図1、
図2、
図5及び
図6に示すように、服本体1の前身頃の服地を左右に分割すると共に、その両側に例えば線ファスナー等を備えて、当該分割部分を着脱自在とすることにより形成されている。
なお、服本体1の服地Cの前身頃のうち第1開閉手段11の右側を前身頃右側、第1開閉手段11の左側を前身頃左側という。
【0021】
[(2) 空気漏れ防止手段]
空気漏れ防止手段12は、服本体1下部に備えられた、服本体1と着用者の身体との間の空間内の空気が服本体1の裾部から外部に漏れることを防止するための手段であり、例えば、
図1から
図4に示すように、服本体1の裾部に、第1開閉手段11付近を除いて着用者の身体を周回するようにして形成された紐通し部と、紐通し部に通された紐状部材と、紐状部材の紐通し部から出ている部分に備えられたコードストッパーと、を備え、紐状部材の紐通し部から出ている部分を引っ張った上でコードストッパーを固定することで、服本体1の裾部を着用者の身体に密着させることができるようにすることで形成される。
空調衣服100の着用時においては、空気漏れ防止手段12によって、服本体1の裾部が絞り込まれて着用者の身体に密着し、服本体1下部から空気が外部に漏れることを防止することができる。
【0022】
[(3) ファン取付孔]
ファン取付孔13は、
図3及び
図6に示すように、服本体1を形成する服地Cの着用者の腰の左右に対応する位置に形成された、空調衣服100の着用時において、服本体1と着用者の身体との間の空間と、服本体1の外部の空間と、を繋ぐこととなる円形の孔部である。
【0023】
ファン取付孔13は、直径が後述のファン2の直径と略同一となるように形成され、ファン取付孔13を挿通するようにしてファン2を取り付けることで、ファン取付孔13を介して、外部の空気を服本体1と着用者の身体との間の空間内に取り込むことができる。
ファン取付孔13の周囲は、例えばプラスチック等によって形成された扁平な環状の部材を取り付ける、服本体1の服地Cのファン取付孔13周囲の部分を折り返して縫合する等の方法で、補強されていることが好ましい。
【0024】
[(4) 空気排出部]
空気排出部14は、ファン2によってファン取付孔13から服本体1と着用者の身体との間の空間内に導入された空気を、着用者の身体又は下着に沿って流通させた後に排出するための開口部である。本実施形態においては、
図1から
図6に示すように、服本体1のフードに形成される開口部と、服本体1の肩部に形成される開口部と、が空気排出部14に該当することとなる。
【0025】
[(5) 電源部保持手段]
電源部保持手段15は、電源部3を、接続ケーブル4を通じてファン2へと電力を供給可能な位置において保持するための手段であり、例えば、
図1及び
図2に示すように、服本体1の外面側に備えられた電源部3を収納可能なポケットが用いられる。服本体1の外面側に電源部保持手段15を備える場合、
図5及び
図6に示すように、服本体1の服地Cの電源部保持手段15に対応する位置に、服地Cの内面側と外面側とを繋ぐ孔部151を備え、孔部151を介して、電源部3とファン2とが接続ケーブル4により接続されることとなる。
なお、電源部保持手段15の具体的な構成は、電源部3を、接続ケーブル4を通じてファン2へと電力を供給可能な位置において保持することができるものであればよく、例えば服本体1の内面側に備えるようにしてもよい。
【0026】
[(6) 前身頃カバー部材]
前身頃カバー部材16は、
図1及び
図2に示すように、服本体1の前身頃の外面側に、第1開閉手段11の下部(上下方向中央部よりも下方の部分の少なくとも一部)を覆うように備えらえたシート状部材であり、第1線ファスナー161及び第1スナップボタン162によって服本体1の服地Cの前身頃左側と着脱自在に接続され、縫合部163によって服本体1の服地Cの前身頃右側と着脱不能に接続されている。
【0027】
また、前身頃カバー部材16は、2枚のシート状部材、すなわち、前身頃カバー部材16が服本体1の服地Cの前身頃左側と接続された状態で前身頃カバー部材16の前側に位置する前面側シート状部材16aと、同状態で前身頃カバー部材16の後側に位置する後面側シート状部材16bと、備え、これら2枚のシート状部材は、端部の全周において、縫合等の方法によって接続されている。
【0028】
また、前面側シート状部材16aには、前面側シート状部材16aと後面側シート状部材16bとの間の空間へと通じる前方ポケット166が形成されている。
【0029】
[a 第1線ファスナー、第2線ファスナー]
第1線ファスナー161及び第2線ファスナー164は、前身頃カバー部材16を服本体1の服地Cの前身頃左側と着脱自在に接続するための手段である。第1線ファスナー161は、
図2に示すように、前身頃カバー部材16の後面側シート状部材16bの、前身頃カバー部材16が服本体1の服地Cの前身頃左側と接続された状態において後方を向く側の左端部近傍(
図2に示すように折り返された状態においては、前方を向く側の右端部近傍に位置することとなる。)に配置されている。また、第2線ファスナー164は、前身頃カバー部材16を服本体1の服地Cの前身頃左側と着脱自在に接続するための手段であり、
図2に示すように、服地Cの前身頃左側の外面側の、前身頃カバー部材16を伸ばした状態において第1線ファスナー161と対向する位置に配置されている。
第1線ファスナー161及び第2線ファスナー164は、それぞれ線ファスナーのエレメント(務歯)を含み、相互に噛み合うことで、前身頃カバー部材16を服本体1の服地Cの前身頃左側と着脱自在に接続することができる。
なお、スライダー等の線ファスナーの開閉部品については、
図2においては、第1線ファスナー161は備えず、第2線ファスナー164が備える場合につき図示しているが、第1線ファスナー161が備えるようにしてもよい。
【0030】
[b 第1スナップボタン、第2スナップボタン]
第1スナップボタン162及び第2スナップボタン165は、前身頃カバー部材16を服本体1の服地Cの前身頃左側と着脱自在に接続するための手段である。第1スナップボタン162は、
図2に示すように、前身頃カバー部材16の後面側シート状部材16bの、前身頃カバー部材16が服本体1の服地Cの前身頃左側と接続された状態において後方を向く側の上端部近傍に配置されている。また、第2スナップボタン165は、
図2に示すように、服地Cの前身頃左側の外面側の、前身頃カバー部材16を伸ばした状態において第1スナップボタン162と対向する位置に配置されている。
なお、第1スナップボタン162及びこれと対になる第2スナップボタン165は一例として2個(対)のスナップボタンを備えた場合につき図示したが、これに限られず、1個(対)のみとしてもよいし、これより多数としてもよい。
【0031】
[c 縫合部]
縫合部163は、
図1及び
図2に示すように、前身頃カバー部材16と服本体1の服地Cの前身頃右側との接続部であり、前身頃カバー部材16と、服本体1の服地Cの前身頃右側とが、縫合されて着脱不能に接続されている。
図1及び
図2に示すように、縫合部163は、前身頃カバー部材16の右端部近傍の周囲を、右方及び上下から囲むようにして前面側シート状部材16aと後面側シート状部材16bの両者を服地Cに縫合するようにして形成されている。
なお、前身頃カバー部材16と服地Cとが縫合されている場合においても、相当の力を掛ければこれを分離することが可能であるが、このような場合であっても、着用者が任意に着脱できないものについては、「着脱不能」に含まれるものとする。
【0032】
[d 前方ポケット]
前方ポケット166は、
図1に示すように、前面側シート状部材16aに形成された切れ目である前方開口部1661を備え、前面側シート状部材16aと後面側シート状部材16bとの間の空間へと繋がるように形成されている。また、前方ポケット166は、前面側シート状部材16aの前方開口部1661の上方の部分に接続された前方ポケットカバー部材1662を備え、前方ポケットカバー部材1662によって、前方開口部1661を覆うことができる。
また、前方ポケットカバー部材1662の前方開口部1661を覆う状態において前面側シート状部材16aと対向する側に、第3スナップボタン1663を備え、また、前面側シート状部材16aの前方開口部1661の下方の前方ポケットカバー部材1662が前方開口部1661を覆う状態において第3スナップボタン1663と対向する位置に、第4スナップボタン1664を備える。これによって、前方ポケットカバー部材1662が前方開口部1661を覆う状態で、前方ポケットカバー部材1662と、前面側シート状部材16aの前方開口部1661の下方の部分と、を着脱自在に接続することが可能となる。
【0033】
[(7) 側方ポケット]
側方ポケット17は、
図1から
図6に示すように、服本体1の左右両側の2か所に備えられたポケットであり、服本体1の服地に備えられた側方開口部171と、側方開口部171を囲むようにして服本体1の服地Cの内面側に接続された袋状部材172と、袋状部材172を服地Cの後身頃の外面側に接続するために袋状部材172に備えられた第5スナップボタン173及び第1面ファスナー174と、袋状部材172を服地Cの後身頃の外面側に接続するために服地Cに備えられた第6スナップボタン175及び第2面ファスナー176と、第2面ファスナー176を覆うようにして服地Cに備えらえた面ファスナーカバー部材177と、を備える。
【0034】
[a 側方開口部]
側方開口部171は、
図1から
図3及び
図7に示すように、服本体1の側方の服地Cに形成された上下方向の切れ目である。
側方開口部171は、これを介して着用者が手を服本体1の外面側から内面側へと挿し入れることができるように、服本体1の左右の着用者の手の届く位置に、着用者が手を挿通させることができる程度の大きさで形成されている。
【0035】
[b 袋状部材]
袋状部材172は、
図1から
図7に示すように、服本体1の服地Cの内面側に、側方開口部171を囲むようにして接続された袋状の部材であり、
図1から
図3に示すように側方開口部171から左右方向に引き出した状態において前方を向く面に配置された略五角形状の第1シート状部材172aと、同状態において後方を向くように配置された第1シート状部材172aと略同形状となる第2シート状部材172bと、を備え、第1シート状部材172aの一端部を側方開口部171の前方の服地Cに接続し、第2シート状部材172bの一端部を側方開口部171の後方の服地Cに接続すると共に、それ以外の端部において第1シート状部材172aと第2シート状部材172bとが互いに接続されるようにすることにより、側方開口部171に通じる部分以外に開口部を有しない袋状に形成されている。
なお第1シート状部材172aと第2シート状部材172bとは必ずしも別個のシート状部材であることを要せず、一枚のシート状部材を折り畳むことによって折り目の一方が第1シート状部材172aとなり、折り目の他方が第2シート状部材172bとなるようにしてもよい。
【0036】
袋状部材172は、
図1から
図4及び
図6に示すように、側方開口部171を介して、服本体1の外面側へと引き出すことができるように形成されている。また、
図4に示すように、服本体1の外面側へと引き出した状態で、服本体1の後身頃側へと折り返した場合に、ファン取付孔13を覆うことができるように形成されている。
【0037】
また、袋状部材172は、
図1から
図4及び
図7に示すように、角部の一つに、第1シート状部材172a及び第2シート状部材172bの、側方開口部171を介して服本体1の外面側へと引き出された状態において対向する面同士を固定することよって形成された掴み部1721を備える。
掴み部1721は、
図1から
図4に示すように、第1シート状部材172a及び第2シート状部材172bの側方開口部171を介して服本体1の外面側へと引き出された状態において対向する面同士を、角部の一つの近傍において、縫合等の方法によって固定することによって形成されている。
これによって、
図7に示すように、袋状部材172が服本体1の内面側に位置する状態においても、当該角部のみは、服本体1の外面側に引き出された際の状態が維持されることとなり、着用者が、側方開口部171を介して袋状部材172内に手を挿し入れた際に、掴み部1721を掴むことが可能となる。
【0038】
[c 第5スナップボタン、第6スナップボタン]
第5スナップボタン173及び第6スナップボタン175は、側方開口部171を介して服本体1の外面側に引き出された状態の袋状部材172の上端部近傍を、服本体1の服地Cの外面側のファン取付孔13近傍の部分と着脱自在に接続するための手段である。第5スナップボタン173は、
図3に示すように、袋状部材172の第2シート状部材172bの、服本体1の外面側に引き出された状態において側方開口部171から離れる位置の上端部に位置する角部の近傍に配置されている。また、第6スナップボタン175は、
図3に示すように、服本体1の服地Cの外面側のファン取付孔13上方の服地Cの外面側に配置されている。
なお、本例においては、第5スナップボタン173及びこれと対になる第6スナップボタン175は、左右各1個(対)のスナップボタンを備えた場合につき図示したが、複数のスナップボタンを備えるようにしてもよい。
【0039】
[d 第1面ファスナー、第2面ファスナー]
第1面ファスナー174及び第2面ファスナー176は、側方開口部171を介して服本体1の外面側に引き出された状態の袋状部材172の下端部近傍を、服本体1の服地Cの外面側のファン取付孔13近傍の部分と着脱自在に接続するための手段である。第1面ファスナー174は、
図3に示すように、袋状部材172の第2シート状部材172bの、服本体1の外面側に引き出された状態における下端部近傍に左右方向に延在するように配置されている。また、第2面ファスナー176は、
図3に示すように、服本体1の服地Cの外面側のファン取付孔13下方の服地Cの外面側に、左右方向に延在するように配置されている。
第1面ファスナー174は、服本体1の服地Cの外面側のファン取付孔13近傍に備えられた第2面ファスナー176に貼り付かせることで、服本体1の外面側に引き出された状態の袋状部材172を、服本体1の服地Cの外面側のファン取付孔13近傍の部分に接続することができる。袋状部材172に備えられた第1面ファスナー174を第2面ファスナー176に貼り付かせることで、袋状部材172を、服本体1の服地Cの外面側のファン取付孔13近傍の部分に接続することができる。
【0040】
[e 面ファスナーカバー部材]
面ファスナーカバー部材177は、
図3、
図4及び
図7に示すように、第2面ファスナー176を上方を除いて覆うようにして備えられたシート状の部材であり、第2面ファスナー176の下方及び左右において服地Cに接続されている。これによって、
図4に示すように、袋状部材172の下端部を、面ファスナーカバー部材177と服本体の服地Cとの間に上方から挟み込むようにして、袋状部材172に備えられた第1面ファスナー174と、服地Cに備えられた第2面ファスナー176とを接続することが可能となる。
【0041】
面ファスナーカバー部材177は、
図7に示すように、側方開口部171の下端部を覆うようにして備えられている。これによって、第1面ファスナー174を第2面ファスナー176に接続した状態における袋状部材172の下端部全体を、側方開口部171近傍の部分を含めて覆うことができる。
【0042】
[(8) フック掛け部]
フック掛け部18は、例えば、安全帯に接続された命綱(ランヤード)に備えられたフックを、当該命綱を使用しない場合において掛けておくために用いられる部分であり、
図1及び
図2に示すように、服本体1の着用者の胸部前方の左右2か所に備えられている。
フック掛け部18は、フックを掛けることができる環状部材181と、環状部材181が取り付けられる第1ベルト部材182と、第1ベルト部材182を服本体1の服地Cに取り付けるために第1ベルト部材182に備えられた第7スナップボタン183と、第1ベルト部材182を服本体1の服地Cに取り付けるために服地Cに備えられた第8スナップボタン184と、第1ベルト部材182を押さえるための第2ベルト部材185と、第8スナップボタン184を覆うようにして服地Cに備えらえたスナップボタンカバー部材186と、を備える。
【0043】
[a 環状部材]
環状部材181は、
図1、
図2及び
図8に示すように、例えばD鐶等のフックを掛けることができる環状の部材である。なお、「環状」とは、円形に限らず、三角形、四角形、D鐶のようなD型の形状等、両端が一致する閉じた形状を全て含むものとする。
【0044】
[b 第1ベルト部材]
第1ベルト部材182は、環状部材181と、服本体1の服地Cとの間を接続する部材であり、
図8に示すように、ベルト状の部材を環状部材181に通した状態で折り返した上で、重ねられた部分を縫合等の方法によって接続することで、環状部材181と接続されている。このような構成にすると、第1ベルト部材182と環状部材181とを一体化することができ、第1ベルト部材182と環状部材181とが分離することがないので、服本体1の服地Cの前身頃への着脱に手間取ることがない。
【0045】
[c 第7スナップボタン、第8スナップボタン]
第7スナップボタン183及び第8スナップボタン184は、第1ベルト部材182を服本体1の服地Cの前身頃と着脱自在に接続するための手段である。第7スナップボタン183は、
図1、
図2及び
図8に示すように、第1ベルト部材182の環状部材181と接続されているのと反対側の端部近傍に配置されている。また、第8スナップボタン184は、
図9に示すように後述のスナップボタンカバー部材186に覆われるようにして、服地C外面側の前身頃上部の左右2か所に配置されている。
第7スナップボタン183は、服本体1の服地Cに備えられた第8スナップボタン184と係合することで、第1ベルト部材182を服本体1の服地Cの前身頃と着脱自在に接続することができる。
なお、本例においては、第7スナップボタン183及びこれと対になる第8スナップボタン184は1個(対)のスナップボタンを備えた場合につき図示したが、複数(対)のスナップボタンを備えるようにしてもよい。
【0046】
[d 第2ベルト部材]
第2ベルト部材185は、
図1、
図2及び
図9に示すように、第8スナップボタン184下方の服地C外面側の左右2か所に、左右方向に延在するように配置されたベルト状の部材であり、少なくとも2か所(服本体1の肩部の開口部寄りの位置に配置された第1縫合部1851及び第1縫合部1851よりも服本体1の左右方向の中央部寄りの位置に配置された第2縫合部1852)において、服本体1の服地Cに縫合され、接続されている。
【0047】
また、第1縫合部1851と第2縫合部1852との間の部分は、服地Cに接続されておらず、第2ベルト部材185と服地Cとの間に、第1ベルト部材182を通すことができる挿通部1853が形成されている。
これによって、
図1及び
図2に示すように、第1ベルト部材182を挿通部1853に挿通させた状態で、第7スナップボタン183及び第8スナップボタン184により、第1ベルト部材を服地Cに取り付けることが可能となる。
【0048】
[e スナップボタンカバー部材]
スナップボタンカバー部材186は、
図9に示すように、第8スナップボタン184を下方を除いて覆うようにして備えられたシート状の部材であり、
図1及び
図2に示すように、第1ベルト部材182の上端部を、スナップボタンカバー部材186と服本体1の服地Cとの間に下方から挟み込むようにして、第1ベルト部材182に備えられた第7スナップボタン183と、服地Cに備えられた第8スナップボタン184とを接続することができるように構成されている。
【0049】
[(9) 命綱貫通手段]
命綱貫通手段19は、着用者が服本体1の内側に着用したフルハーネス型安全帯等の安全帯の命綱を、服本体1の内部から外部へと引き出すための貫通部であり、
図3及び
図4に示すように、服本体1の後身頃の左右方向中央上部に備えられ、服本体1の服地Cに形成された開閉自在な孔部である第2開閉手段191と、筒状に形成され、一方の端部が第2開閉手段191を囲むように服本体1の服地Cの内面側に接続された命綱挿通部192と、命綱挿通部192の服本体1の服地に接続されているのとは反対側の端部に形成された開口部調整機構193と、を備える。
【0050】
[a 第2開閉手段]
第2開閉手段191は、
図3及び
図4に示すように、服本体1の後身頃の上部の服地Cに形成された上下方向の切れ目を開閉自在とすることにより形成されている。第2開閉手段191を開閉自在とする手段としては、例えば、第1開閉手段11と同様に線ファスナーを用いることができる。
【0051】
[b 命綱挿通部]
命綱挿通部192は、
図3から
図6に示すように、一方の端部が第2開閉手段191を囲むように服本体1の服地Cの内面側に接続された筒状に形成されている。また、他方の端部に開口部調整機構193が備えられている。
【0052】
[c 開口部調整機構]
開口部調整機構193は、命綱挿通部192の服本体1に接続されているのとは反対側の端部に形成される開口部の開口面積を調整する手段であり、例えば、
図3及び
図4に示すように、命綱挿通部192の服本体1の服地Cに接続されているのとは反対側の端部に、2か所の引出口1932を有し、内部に紐を通すことができる空隙を有する略環状の紐通し部1931を形成し、紐通し部1931に、これを一周する長さよりも長い紐状部材1933を通し、紐状部材1933の引出口1932から外部に出ている2つの端部に、紐状部材1933の紐通し部1931を通る部分の長さが短くなった状態でこれを固定するコードストッパー1934を備えることによって、形成されている。
【0053】
なお、命綱貫通手段19としては、フルハーネス型安全帯等の安全帯の命綱を、服本体1の内面側から外面側へと貫通させることができるものであればよく、具体的な構成は上記のものに限られない。
【0054】
[2 ファン]
ファン2は、
図3、
図6及び
図7に示すように、ファン取付孔13を挿通するようにして服本体1に取り付けられ、ファン取付孔13を通して、服本体1と着用者の身体との間の空間に空気を導入するための手段である。ファン2には、電源部3より、接続ケーブル4を通じて必要な電力が供給される。
ファン2は、ファン取付孔13を挿通するようにして服本体1に取り付けられ、服本体1の外面側から内面側へと空気を導入できるものであればよく、その具体的な構成は任意である。
【0055】
[3 電源部]
電源部3は、ファン2に電力を供給するための部材であり、例えば、安全保護回路が付加されたリチウムイオン組電池が内蔵され、
図1及び
図2に示すように電源部保持手段15に収納され、接続ケーブル4を通じてファン2と接続される。また、電源部3は、ファン2に供給する電力のオン/オフを切り替えるスイッチを備える。
電源部3は、ファン2に電力を供給することができるものであれば、その具体的な構成は任意である。
【0056】
[4 接続ケーブル]
接続ケーブル4は、
図5及び
図6に示すように、電源部3とファン2とを接続するケーブルであり、接続ケーブル4を通じて、電源部3からファン2に対して、ファン2の稼働に必要な電力が供給される。
接続ケーブル4は、電源部3からファン2に対して、ファン2の稼働に必要な電力を供給できるものであればよく、その具体的な構成は任意である。
【0057】
[第2 実施形態の効果]
以下、本実施形態の効果につき、構成ごとに説明する。
【0058】
[1 前身頃カバー部材の効果]
本実施形態に係る空調衣服100によれば、服本体1が、線ファスナー等によって前身頃を左右に分割可能とした第1開閉手段11を有することから、第1開閉手段を用いて前身頃を左右に開くことで、容易にこれを着脱することができる。
また、空調衣服100の着用中には、前身頃カバー部材16を用いて、第1開閉手段11の少なくとも一部を覆うことで、第1開閉手段11が服本体1の上端から下端に亘って存在しているように見えなくなり、かぶり式の衣服のような外見とすることができる。
したがって、本実施形態によれば、空調衣服100につき、着脱の容易性と、かぶり式の衣服のような外見と、を両立することが可能となる。
【0059】
特に、前身頃カバー部材16が、第1開閉手段11の上下方向中央部よりも下方の部分の少なくとも一部を覆い、第1開閉手段11の上端部近傍を覆わないように形成されていることで、着用者の首元から下端部に達しない所定の範囲にのみ線ファスナー等の開閉手段が備えられた一般的なかぶり式の衣服に類似した外見とすることができる。
【0060】
また、前身頃カバー部材16は、服本体1の服地Cの前身頃右側と縫合部163によって着脱不能に接続され、服本体1の服地Cの前身頃左側と第1線ファスナー161及び第1スナップボタン162によって着脱自在に接続されることから、前身頃左側との接続部を着脱するのみで、前身頃カバー部材16が第1開閉手段11を覆う状態と、覆わない状態とを切り替えることが可能となる。また、不使用時に前身頃カバー部材16が服本体1から外れてしまうこともなくなる。
【0061】
また、前身頃カバー部材16が、前身頃左側と接続された状態において前方を向く面に前方ポケット166を備えることで、通常第1開閉手段11によってポケットを備えることのできない前身頃の左右方向中央部にポケットを備えることができる。これによって、左右両方の手が届き易い使い勝手の良い位置に、大型のポケットを備えることが可能となる。
【0062】
また、前身頃カバー部材16が、前身頃左側に接続された状態において前面側に位置する前面側シート状部材16aと、当該状態において後面側に位置する後面側シート状部材16bと、を備え、前方ポケット166が、前面側シート状部材16aと、後面側シート状部材16bと、の間へと通じるように形成された前方開口部1661を有することで、前面側シート状部材16aと後面側シート状部材16bとの間の空間の全体をポケットの収納空間とすることが可能となり、前方ポケット166の収納量を増加させることができる。
【0063】
また、前身頃カバー部材16が、服本体1の服地Cの前身頃左側と、左端部近傍に備えられた第1線ファスナー161と、上端部近傍に備えられた第1スナップボタン162と、の両者によって接続されることで、前身頃カバー部材16が捲れ難くなり、かぶり式衣服のような外観を維持し易くなる。
【0064】
[2 側方ポケットの効果]
本実施形態に係る空調衣服100によれば、服本体1が、側方開口部171と、一端部が側方開口部171を囲むように服本体1の服地Cに接続された袋状部材172と、を備える側方ポケット17を備え、また、袋状部材172が、服本体1の内面側に位置する状態と服本体1の外面側に位置する状態とを切り替え可能であり、服本体1の外面側に位置する状態でファン取付孔13を覆うことができるように形成されていることで、空調衣服としての冷却機能を必要としない場合においては、ファン取付孔13を袋状部材172を用いて塞いで使用することが可能となり、服本体1を空調衣服以外の他の用途、例えば、防寒目的の通常の上衣や、レインコート等としての用途のために使用し易くなる。
【0065】
また、袋状部材172はあくまで衣服に一般的に設けられるポケットである側方ポケット17の一部に過ぎず、ファン取付孔13を塞ぐための専用の部材を設けたわけではない。したがって、部品点数の増加等による生産性の低下を抑えつつ、上記の効果を得ることができる。
【0066】
また、ファン取付孔13近傍の服地Cの外面側に、袋状部材172を着脱自在に接続するための第6スナップボタン175及び第2面ファスナー176を備えることで、袋状部材172を、ファン取付孔13を覆う状態で服地Cに接続することが可能となり、ファン取付孔13が袋状部材172によって覆われた状態を維持し易くなる。
また、袋状部材172の上端部近傍を服地Cに接続するための第6スナップボタン175と、袋状部材172の下端部近傍を服地Cに接続するための第2面ファスナー176と、の両者を備えることで、袋状部材172が捲れ難くなり、一層上記効果を高めることができる。
【0067】
また、第2面ファスナー176を服本体1の外面側から覆う面ファスナーカバー部材177を備えることで、袋状部材172の第1面ファスナー174を取り付けていない状態において第2面ファスナー176を目立たなくすることができると共に、袋状部材172の第1面ファスナー174を第2面ファスナー176に取り付けた状態においては、面ファスナーカバー部材177によって袋状部材172の一部を覆うことが可能となり、袋状部材172の第1面ファスナー174が、第2面ファスナー176から意図せずして剥がれてしまうことを回避できる。
【0068】
また、袋状部材172が、一方の面を形成する第1シート状部材172aと、他方の面を形成する第2シート状部材172bと、を備えると共に、一端部に、第1シート状部材172a及び第2シート状部材172bの服本体1の外面側に位置する状態において対向する面同士を固定して形成された掴み部1721を備えることで、袋状部材172が服本体1の内面側に位置する状態においても、掴み部1721は、服本体1の外面側に引き出された際の状態が維持されることとなり、着用者が、側方開口部171を介して袋状部材172内に手を挿し入れた際に、掴み部1721を掴むことにより、袋状部材172を服本体1の内面側から外面側へと引き出し易くなる。
【0069】
[3 フック掛け部の効果]
本実施形態に係る空調衣服100によれば、服本体1が、フックを掛けることができる環状部材181と、環状部材181と服本体1の服地Cとを繋ぐ第1ベルト部材182と、を備えるフック掛け部18を備えることで、空調衣服100の着用者が着用した安全帯の命綱に備えられたフック等のフックを、不使用時に服本体1に掛けておくことが可能となる。さらに、第1ベルト部材182と環状部材181とを一体化(ユニット化)することができ、第1ベルト部材182と環状部材181とが分離することがないので紛失し難く、服本体1の服地Cの前身頃への着脱に手間取ることがない。さらに、第1ベルト部材182と環状部材181とが分離する場合に比べると、取り外した第1ベルト部材182、環状部材181の紛失を抑えることができる。
【0070】
また、本実施形態に係る空調衣服100によれば、フック掛け部18が、第2ベルト部材185を備え、第2ベルト部材185によって第1ベルト部材182を押さえることで、第1ベルト部材182の服地Cとの接続部と環状部材181との接続部との間の部分を、服地Cに近接した状態に維持することができることから、服地にベルト部材によって環状部材が取り付けられている状態であって、フック掛け部18の不使用時に、環状部材181及び第1ベルト部材182が揺れ動いてしまい、着用者の邪魔になることを回避できる。
【0071】
また、環状部材181及び第1ベルト部材182を揺れ動き難くするため第1ベルト部材182を短くしてしまうと、環状部材181が服地Cに近接し過ぎてしまい、フックを掛け難くなることがあるが、本実施形態によれば、第2ベルト部材185によって第1ベルト部材182を押さえることで、第1ベルト部材182の長さを短くすることなく、これが邪魔になることを回避できる。
【0072】
また、第2ベルト部材185が、第1縫合部1851及び第2縫合部1852において、服本体1の服地Cに接続され、その間に挿通部1853が形成されていることで、第1ベルト部材182を挿通部1853に通すことで、第1ベルト部材182及びこれに取り付けられた環状部材181を、強固に押さえることが可能となる。
【0073】
また、第1ベルト部材182に第7スナップボタン183を備え、服地Cに第8スナップボタン184を備えることで、第1ベルト部材182及びこれに取り付けられた環状部材181を、服地Cに対して着脱自在とすることができる。
また、第1ベルト部材182を短くしてしまうと、第1ベルト部材182の服地Cに対する着脱が行い難くなるが、本実施形態によれば、第2ベルト部材185によって第1ベルト部材182を押さえることで、第1ベルト部材182の長さを短くせずに、これが邪魔になることを回避できることから、第1ベルト部材182及びこれに取り付けられた環状部材181の服地Cに対する着脱も行い易くすることができる。
【0074】
また、第8スナップボタン184を服本体1の外面側から覆うスナップボタンカバー部材186を備えることで、第7スナップボタン183を用いて第1ベルト部材182を取り付けていない状態において第8スナップボタン184を目立たなくすることができると共に、第7スナップボタン183を用いて第1ベルト部材182を取り付けた状態においては、スナップボタンカバー部材186によって第1ベルト部材182の一部を覆うことが可能となり、環状部材181及び第1ベルト部材182が意図せずして外れてしまうことを回避できる。
【0075】
また、服本体1が、後身頃に、フルハーネス型安全帯等の安全帯の命綱を貫通させることができる命綱貫通手段19を備えることで、服本体1の内側にフルハーネス型安全帯等の安全帯を着用した上で、命綱を命綱貫通手段19から引き出すようにして使用することが可能となる。
これによって、安全帯によって服本体1が締め付けられて空気流通路が閉ざされてしまい、空調衣服としての冷却機能が妨げられることを防止しつつ、空調衣服100とフルハーネス型安全帯等の安全帯とを併用することができるととともに、命綱貫通手段19から引き出された命綱の先端に備えられたフックを、フック掛け部18に掛けることが可能となる。
【0076】
また、第2ベルト部材185が、第1縫合部1851及び第2縫合部1852において服本体1の服地Cに接続され、その間に挿通部1853が形成されていることで、挿通部1853の部分の第2ベルト部材185は服地Cから浮いていることから、当該部分を、環状部材181とは別個に、フックやリング等を掛けることができる道具掛けとして使用することも可能となる。
【0077】
[第3 変形例]
上記においては、前身頃カバー部材16を、縫合部163において服地Cに縫合することによって服本体1の前身頃右側に着脱不能に接続し、また、第1線ファスナー161、第1スナップボタン162、第2線ファスナー164及び第2スナップボタン165を用いて、前身頃左側に着脱自在に接続する場合につき説明したが、これとは反対に、前身頃カバー部材16は、服本体1の前身頃左側に着脱不能に接続され、前身頃右側に着脱自在に接続されるようにしてもよい。さらに前身頃カバー部材16は、前身頃の左右どちらも着脱可能とすることもできる。
【0078】
また、前身頃カバー部材16を服地Cの前身頃右側又は左側に着脱不能に接続する手段は、縫合が好ましいもののこれに限られず、例えば接着材を用いた接着等の他の手段を用いてもよい。
また、前身頃カバー部材16を服地Cの前身頃右側又は左側に着脱自在に接続する手段も、線ファスナー及びスナップボタンが好ましいもののこれに限られず、例えば、線ファスナー又はスナップボタンのいずれかのみを用いるようにしてもよいし、面ファスナー等を用いてもよい。
【0079】
また、上記においては、側方ポケット17の袋状部材172を服本体1の服地Cのファン取付孔13近傍の部分に着脱自在に接続する手段として、第5スナップボタン173、第1面ファスナー174、第6スナップボタン175及び第2面ファスナー176を用いる場合につき説明したが、側方ポケット17の袋状部材172を服本体1の服地Cのファン取付孔13近傍の部分に着脱自在に接続する手段は、面ファスナー及びスナップボタンが好ましいものの、これに限られず、例えば、面ファスナー又はスナップボタンのいずれかのみを用いるようにしてもよいし、線ファスナー等を用いてもよい。
【0080】
また、上記においては、フック掛け部18の第1ベルト部材182を服本体1の服地Cに着脱自在に接続する手段として、第7スナップボタン183及び第8スナップボタン184を用いる場合につき説明したが、フック掛け部18の第1ベルト部材182を服本体1の服地Cに着脱自在に接続する手段は、スナップボタンが好ましいもののこれに限られず、例えば、面ファスナー、線ファスナー等を用いるようにしてもよい。
また、上記においては、フック掛け部18の第2ベルト部材185の服本体1の服地Cへの接続部として、縫合による接続部である第1縫合部1851及び第2縫合部1852を形成した場合につき説明したが、第2ベルト部材185の服本体1の服地Cへの接続方法は、2か所の接続部の間に第1ベルト部材182を挿通させることができる挿通部1853が形成されるものであればよく、縫合には限られない。
【符号の説明】
【0081】
100 空調衣服
1 服本体
11 第1開閉手段
13 ファン取付孔(取付部)
14 空気排出部
16 前身頃カバー部材
161 第1線ファスナー
162 第1スナップボタン
163 縫合部
164 第2線ファスナー
165 第2スナップボタン
166 前方ポケット
1661 前方開口部
16a 前面側シート状部材
16b 後面側シート状部材
17 側方ポケット
171 側方開口部(開口部)
172 袋状部材
1721 掴み部
172a 第1シート状部材
172b 第2シート状部材
173 第5スナップボタン
174 第1面ファスナー
175 第6スナップボタン(接続手段、上端部接続手段)
176 第2面ファスナー(接続手段、下端部接続手段)
177 面ファスナーカバー部材(カバー部材)
18 フック掛け部
181 環状部材
182 第1ベルト部材
183 第7スナップボタン
184 第8スナップボタン
185 第2ベルト部材
1851 第1縫合部
1852 第2縫合部
1853 挿通部
186 スナップボタンカバー部材
19 命綱貫通手段
2 ファン(空気導入手段)
3 電源部(電源手段)
4 接続ケーブル(電源手段)
C 服地