(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体
(51)【国際特許分類】
C08F 8/30 20060101AFI20231114BHJP
C08F 16/06 20060101ALI20231114BHJP
C08F 16/38 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
C08F8/30
C08F16/06
C08F16/38
(21)【出願番号】P 2020531543
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2020018635
(87)【国際公開番号】W WO2020230711
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2019090181
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】西村 洋平
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 莉紗
(72)【発明者】
【氏名】右手 浩一
(72)【発明者】
【氏名】押村 美幸
(72)【発明者】
【氏名】平野 朋広
(72)【発明者】
【氏名】鍵谷 遼
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108677(JP,A)
【文献】特開2016-151071(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01460649(GB,A)
【文献】特表2009-502332(JP,A)
【文献】特開平10-072509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/30
C08F 16/06
C08F 16/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)及び式(2)に示すユニットを有
し、前記式(2)に示すユニットの含有量が10~99.9モル%である、ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体。
【化1】
式(2)中、R
1は置換基を有していてもよ
く、炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を含む炭化水素基を示し、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を示す。また、R
1とR
2、又は、R
2とR
3が結合して環状構造となってもよい。
【請求項2】
上記式(1)に示すユニットの含有量が0.1~
90モル%である、請求項1記載のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体。
【請求項3】
上記式(2)に示すユニットの含有量が
10~99.5モル%である、請求項1又は2記載のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体。
【請求項4】
更に、下記式(3)に示すユニットを有する、請求項1、2又は3記載のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体。
【化2】
式(3)中、R
4は水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を表す。
【請求項5】
上記式(3)に示すユニットの含有量が0.5~90モル%である、請求項4記載のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体。
【請求項6】
上記式(2)に示すユニットにおいて、R
1は置換基を有していてもよ
く、炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を含む2価の炭化水素基であり、R
2及びR
3は水素原子又はアルキル基である、請求項1、2、3又は4記載のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野、化粧品分野、食料品容器分野などのライフサイエンスの分野では多くの高分子が使用されているが、その多くは、人体に使用することを前提に安全性を確保する必要がある。これらの分野で使用されているポリマーとしては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリルアミドなどがよく知られており、粒子、容器、板、フィルム、チューブなどの多くの形態で用いられている。
そのなかでも、ポリビニルアルコールは、ポリ乳酸と同様、廃棄処理時に環境へ負荷を与えない生分解性を有すると同時に、水溶性高分子であることから、マトリックス高分子として注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリビニルアルコールにアミンを導入することでPVAに生体適合性をもたせることが記載されている。また、特許文献2には、硫黄原子等を介してアミノ基を結合したアミノ基変性ポリビニルアルコールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-302973号広報
【文献】特開平11-199632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法でアミノ基を結合させた場合、アミノ酸エステルとの共重合体構造ではないために性能が十分ではないことがある。例えば、体内で使用される再生医療用途のような細胞培養を必要とする用途には使用しにくいものである。また、生体組織との親和性も充分ではなく、生体適合性を高める必要がある。
更に、有機溶剤への溶解性についても、満足な結果が得られていない。
【0006】
本発明は、細胞培養性、生体適合性、抗菌性及び有機溶剤への溶解性等に優れ、医療分野、生体材料分野、農業分野(メディカル、ライフサイエンス分野)に応用可能なビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記式(1)及び式(2)に示すユニットを有するビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体である。
以下に本発明を詳述する。
【化1】
式(2)中、R
1は置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を示す。また、R
1とR
2、又は、R
2とR
3が結合して環状構造となってもよい。
【0008】
本発明のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体は、上記式(1)に示すユニット(以下、ビニルアルコールユニット)を有する。
このようなビニルアルコールユニットを有することで、親水性を制御することができる。
【0009】
本発明のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体における上記式(1)に示すユニットの含有量は、好ましい下限が0.1モル%、より好ましい下限は0.5モル%、さらに好ましい下限が1モル%、さらにより好ましい下限が5モル%、特に好ましい下限が10モル%、とりわけ好ましい下限が20モル%、非常に好ましい下限が30モル%である。また、好ましい上限が99.9モル%、より好ましい上限が99.5モル%、さらに好ましい上限が99モル%、さらにより好ましい上限が95モル%、特に好ましい上限が90モル%、とりわけ好ましい上限が80モル%、非常に好ましい上限が75モル%、例えば70モル%以下、特に65モル%以下である。
このような範囲とすることで、親水性、疎水性、反応性を制御することが可能となり、また細胞培養性、生体適合性、抗菌性及び有機溶剤への溶解性等に優れる共重合体を得ることができる。
なお、上記式(1)に示すユニットの含有量は、1H-NMRによって測定することができる(他のユニットについても同様)。
【0010】
本発明のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体は、上記式(2)に示すユニット(以下、アミノ酸エステルユニット)を有する。
このようなアミノ酸エステルユニットを有することで、生体適合性、細胞培養性、抗菌性及び有機溶剤への優れた溶解性等これまでになかった性能をビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体に付与することができる。
【0011】
上記式(2)中、R1は置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。
上記置換基を有していてもよい炭化水素基を有することで、生体適合性、細胞培養性、抗菌性及び有機溶剤への溶解性等の機能を更に付与することができる。
なお、上記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した炭化水素基が含まれる。
【0012】
上記炭化水素基としては、2価の炭化水素基が好ましい。
上記2価の炭化水素基としては、炭素数1~20(好ましくは1~15、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~7、更により好ましくは1~5、特に好ましくは1~3)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。また、炭素数2~20(好ましくは2~15、より好ましくは2~10、更に好ましくは2~7、更により好ましくは2~5、特に好ましくは2~3)の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルキリデン基、アリレン基、ベンジリデン基等が挙げられる。
【0013】
上記炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、メチレン、メチルメチレン(エチリデン)、エチルメチレン(プロピリデン)、ジメチルメチレン(イソプロピリデン)、エチルメチルメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
上記炭素数2~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基としては、プロペニレン基等が挙げられる。
上記シクロアルキレン基としては、1,3-シクロペンチレン、1,2-シクロへキシレン、1,3-シクロへキシレン、1,4-シクロへキシレン基等が挙げられる。
上記シクロアルキリデン基としては、シクロプロピレン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン基等が挙げられる。
上記アリレン基としては、1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン基等が挙げられる。
【0014】
上記置換基としては、炭素数1~20(好ましくは1~15、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~7、更により好ましくは1~5、特に好ましくは1~3)のアルコキシ基、炭素数6~30(好ましくは6~20、より好ましくは6~10)のアリールオキシ基が挙げられる。また、炭素数2~20(好ましくは2~15、より好ましくは2~10、更に好ましくは2~7)のアルコキシカルボニル基、炭素数7~30(好ましくは7~20、より好ましくは7~15、更に好ましくは7~10)のアリールオキシカルボニル基が挙げられる。更に、炭素数1~20(好ましくは1~15、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~7、更により好ましくは1~5、特に好ましくは1~3)のアシルオキシ基、炭素数1~20(好ましくは1~15、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~7、更により好ましくは1~5、特に好ましくは1~3)のアシル基等が挙げられる。加えて、炭素数1~20(好ましくは1~15、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~7、更により好ましくは1~5、特に好ましくは1~3)のカルバモイル基、炭素数0~30(好ましくは1~20、より好ましくは1~15、更に好ましくは1~10、更により好ましくは1~5)のスルファモイル基が挙げられる。また、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数6~30のアリールチオ基、炭素数0~20のアルキルスルホニル基、炭素数6~30のアリールスルホニル基、フェノール基、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、ヒドラジノ基、炭素数1~20のウレア基、炭素数1~20のチオウレア基、ニトロ基等が挙げられる。これらの置換基は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記置換基としては、生体適合性及び生分解性を更に向上させる観点から、親水性の官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基、フェノール基、アミノ基)を有することが好ましい。
【0015】
なかでも、上記R1としては、生体適合性を更に向上させる観点から、置換基としてフェノール基を有する炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、及び、置換基として炭素数2~20のアルコキシカルボニル基を有する炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を用いることが好ましい。また、置換基としてフェノール基を有する炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基がより好ましく、置換基としてフェノール基を有するエチリデン基がさらに好ましい。
【0016】
【0017】
上記式(2)中、上記R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を示す。また、R1とR2、又は、R2とR3が結合して環状構造となってもよい。
なお、R2及びR3は同一であっても良く、異なるものであっても良い。上記炭化水素基としては、アルキル基、アルキレン基が好ましく、上記アルキル基、アルキレン基としては、炭素数1~20のアルキル基、アルキレン基が好ましい。
なお、R2とR3が結合して環状構造を形成する場合、R2及びR3は、N原子と共に環状構造を形成することとなる。R2及びR3がN原子と共に環状構造を形成する場合、R2及びR3の合計炭素数は、好ましくは2~20、より好ましくは3~10、さらに好ましくは4~8である。
また、R1とR2が結合して環状構造を形成する場合、R1及びR2は、N原子と共に環状構造を形成することとなる。R1及びR2がN原子と共に環状構造を形成する場合、R1及びR2の合計炭素数は、好ましくは2~20、より好ましくは3~10、さらに好ましくは4~8である。
上記R1とR2、又は、R2とR3が結合して環状構造を形成する場合の構造としては、ピロリジン、ピペリジン等が挙げられる。
本発明では、上記式(2)に示すユニットにおいて、R1は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、R2及びR3は水素原子又はアルキル基であることが好ましく、特に上記R2及びR3が何れも水素原子であることが好ましい。
【0018】
本発明のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体における上記式(2)に示すユニットの含有量は、好ましい下限が0.1モル%、より好ましい下限は0.5モル%、さらに好ましい下限が1モル%、さらにより好ましい下限が5モル%、特に好ましい下限が10モル%、とりわけ好ましい下限が20モル%、非常に好ましい下限が25モル%である。例えば30モル%以上、特に35モル%以上であり、好ましい上限が99.9モル%、より好ましい上限が99.5モル%、さらに好ましい下限が99モル%、さらにより好ましい下限が95モル%、特に好ましい下限が90モル%、とりわけ好ましい下限が80モル%、非常に好ましい下限が70モル%である。
このような範囲とすることで、ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体に生体適合性、細胞培養性、抗菌性及び有機溶剤への優れた溶解性等の機能を付与することが可能となる。
【0019】
本発明のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体の重量平均分子量としては特に制限は無いが、重量平均分子量が1000~100万であることが好ましい。
また、本発明のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体は、重合度が200~3000であることが好ましく、250~2500であることがより好ましく、300~2000であることがさらに好ましい。上記範囲内とすることで、幅広い分野での使用可能性を発現することができる。
本発明において、重合度、数平均分子量および重量平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィにおいて、溶出液としてDMSO、カラムとしてShodex LF-804(8.0mmID×300ml)×1本を用いて、ポリエチレングリコール標準により測定することができる。
【0020】
本発明のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体は、4重量%水溶液として、20℃で測定した粘度の好ましい下限が1.0mPa・s、より好ましい下限は2.0mPa・s、好ましい上限が500mPa・s、より好ましい上限は400mPa・sである。上述した範囲内とすることで、水溶液とした場合の取扱を向上することが可能となる。
なお、上記粘度はJIS K 6726に準じて測定することができる。
【0021】
本発明のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体は、下記一般式(3)に示すユニット(以下、アセタールユニットともいう)を有することが好ましい。上記ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体がアセタールユニットを有すると、親疎水性の制御が容易となり、また強度を向上させることができる。
【0022】
【0023】
上記式(3)中、R4は水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0024】
上記式(3)中、R4が炭素数1~20のアルキル基である場合、該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。また、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。なかでも、機械的強度の向上の観点から、メチル基、n-プロピル基が好ましく、n-プロピル基が好ましい。
【0025】
本発明のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体において、上記一般式(3)で表されるアセタール基を有するユニットの含有量の好ましい下限は0.5モル%、より好ましい下限が1.0モル%、さらに好ましい下限が5.0モル%、さらにより好ましい下限が10.0モル%である。また、好ましい上限は90モル%、より好ましい上限が80モル%、さらに好ましい上限が70モル%、さらにより好ましい上限が65モル%である。
上記アセタールユニットの含有量が上記下限以上であると、有機溶剤への溶解性を向上させることができる。上記アセタールユニットの含有量が上記上限以下であると、強靭性に優れたポリビニルアセタール樹脂とすることができる。
なお、本明細書において、アセタールユニットの含有量の計算方法としては、ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体のアセタール基が、2個の水酸基を有する構成単位をアセタール化して得られたものであることから、アセタール化された2個の水酸基を有する構成単位を数える方法を採用してアセタールユニットの含有量を計算する。
【0026】
本発明のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体は、親疎水性及び融点の制御の観点から、下記一般式(4)で表される酢酸ビニルからなるユニット(以下、酢酸ビニルユニットともいう)を有することが好ましい。
【0027】
【0028】
本発明のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体において、上記一般式(4)で表される酢酸ビニルユニットの含有量の好ましい下限は0.5モル%、より好ましい下限は1.0モル%、さらに好ましい下限が1.5モル%である。また、好ましい上限は99.5モル%、より好ましい上限が99モル%、さらに好ましい上限が90モル%、さらにより好ましい上限が80モル%、特に好ましい上限が70モル%、とりわけ好ましい上限が60モル%、例えば50モル%以下、特に30モル%以下である。
このような範囲とすることで、ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体の疎水性を制御することができる。
【0029】
本発明のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体は、更に、他のモノマーからなるユニットを有していてもよい。
上記他のモノマーは特に限定されないが、分子内にカルボキシル基、アミド基及びエポキシ基、エーテル基からなる群から選択される少なくとも1つの極性基と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマーが好ましい。このようなモノマーとしては、例えば、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0030】
本発明のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体中に含まれる他のモノマーからなるユニットの含有量は、用途に応じて設計されるため、特に限定されないが、ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体全体に対して、20モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下がさらに好ましい。
【0031】
本発明のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体において、上記一般式(1)及び一般式(2)で表されるユニット、並びに必要に応じて、一般式(3)及び一般式(4)で表されるユニット及び他のモノマーからなるユニットは、ユニットの配列がランダムであってよく、ブロックであってもよい。
【0032】
本発明のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体を製造する方法としては、例えば、下記式(5)に示すジアニオン型亜鉛アート錯体を用いて、原料ポリビニルアルコールをエステル交換反応する工程を有する方法(エステル交換反応法)を用いることが好ましい。
【0033】
本発明のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体の製造方法(エステル交換反応法)は、下記式(5)に示すジアニオン型亜鉛アート錯体を用いて、原料ポリビニルアルコールをエステル交換反応する工程を有する。
上記ジアニオン型亜鉛アート錯体を用いることで、所定のビニルアルコールユニット及びアミノ酸エステルユニットを有するビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体を好適に作製することができる。さらに上記ジアニオン型亜鉛アート錯体を用いることで、エステル交換反応が非常に短い反応時間で進行させることが可能となる。具体的には、CH3ONaを用いたエステル交換に比べて10分の1程度の時間で反応が進行させることが可能となる。
【0034】
【化5】
式(5)中、nは1~4の整数、mは1又は2であり、Rはnが1又は2のときはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1~8のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアリールアルキル基であり、Mはリチウム又はマグネシウムである。
【0035】
上記炭素数1~8のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、ビニル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0036】
上記Mはリチウム又はマグネシウムを示し、Mがリチウムのときは、mは2であり、Mがマグネシウムのときはmは1を示す。
【0037】
上記式(5)で示されるジアニオン型亜鉛アート錯体は、特開2004-292328号公報に記載されており、該公報に記載の方法により入手可能である。
具体的には例えば、ジリチウム塩としては、テトラt-ブチル亜鉛酸ジリチウム、トリt-ブチルメチル亜鉛酸ジリチウム、トリt-ブチルエチル亜鉛酸ジリチウム、トリt-ブチル-n-プロピル亜鉛酸ジリチウム、トリt-ブチル-n-ブチル亜鉛酸ジリチウム、トリt-ブチル-i-ブチル亜鉛酸ジリチウム、トリt-ブチル-sec-ブチル亜鉛酸ジリチウム、ジt-ブチルジメチル亜鉛酸ジリチウム、ジt-ブチルジエチル亜鉛酸ジリチウム、ジt-ブチルジ-n-プロピル亜鉛酸ジリチウム、ジt-ブチルジ-n-ブチル亜鉛酸ジリチウム、ジt-ブチルジ-i-ブチル亜鉛酸ジリチウム、ジt-ブチルジ-sec-ブチル亜鉛酸ジリチウム、t-ブチルトリメチル亜鉛酸ジリチウム、t-ブチルトリエチル亜鉛酸ジリチウム、t-ブチルトリ-n-プロピル亜鉛酸ジリチウム、t-ブチルトリ-n-ブチル亜鉛酸ジリチウム、t-ブチルトリ-i-ブチル亜鉛酸ジリチウム、t-ブチルトリ-sec-ブチル亜鉛酸ジリチウム等が挙げられる。
また、マグネシウム塩としては、テトラt-ブチル亜鉛酸マグネシウム、トリt-ブチルメチル亜鉛酸マグネシウム、トリt-ブチルエチル亜鉛酸マグネシウム、トリt-ブチル-n-プロピル亜鉛酸マグネシウム、トリt-ブチル-n-ブチル亜鉛酸マグネシウム、トリt-ブチル-i-ブチル亜鉛酸マグネシウム、トリt-ブチル-sec-ブチル亜鉛酸マグネシウム、ジt-ブチルジメチル亜鉛酸マグネシウム、ジt-ブチルジエチル亜鉛酸マグネシウム、ジt-ブチルジ-n-プロピル亜鉛酸マグネシウム、ジt-ブチルジ-n-ブチル亜鉛酸マグネシウム、ジt-ブチルジ-i-ブチル亜鉛酸マグネシウム、ジt-ブチルジ-sec-ブチル亜鉛酸マグネシウム、t-ブチルトリメチル亜鉛酸マグネシウム、t-ブチルトリエチル亜鉛酸マグネシウム、t-ブチルトリ-n-プロピル亜鉛酸マグネシウム、t-ブチルトリ-n-ブチル亜鉛酸マグネシウム、t-ブチルトリ-i-ブチル亜鉛酸マグネシウム、t-ブチルトリ-sec-ブチル亜鉛酸マグネシウム等が挙げられる。
なかでも、上記式(5)で示されるジアニオン型亜鉛アート錯体としては、ジリチウム塩を使用することが好ましく、炭素数1~4のアルキル基を有することが好ましい。特に、テトラt-ブチル亜鉛酸ジリチウム(TBZL)が好ましい。
なお、上記ジアニオン型亜鉛アート錯体は、1種のみ用いても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
上記TBZLの調製は、特開2004-292328号公報の実施例1記載の方法に準じて行うことができる。
【0038】
上記エステル交換反応の際の反応温度は、特に限定されないが、-80℃~200℃の範囲から適宜選択することができる。好ましくは、0℃~80℃の範囲である。
【0039】
上記エステル交換反応は、常圧で行ってもよく、あるいは減圧下で行ってもよい。
また、上記エステル交換反応の反応時間は、エステル交換反応が終了するように調整することでよく、0.1~100時間であることが好ましく、1~70時間であることがより好ましく、5~50時間であることがさらに好ましい。
更に、上記エステル交換反応を行う際に、副生するアルコールを有機溶媒との共沸により除去する手法をとることも可能である。
【0040】
上記エステル交換反応において、ジアニオン型亜鉛アート触媒の使用量は、原料ポリビニルアルコール中のビニルアルコール単位1モルに対して、好ましい下限が0.001モル、好ましい上限が0.5モルである。より好ましい下限は0.001モル、より好ましい上限は0.1モルであり、更に好ましい下限は0.005モル、更に好ましい上限は0.05モルである。
【0041】
上記ジアニオン型亜鉛アート錯体を用いて、エステル交換反応する工程は、例えば、原料ポリビニルアルコールを溶媒に溶解した後、ジアニオン型亜鉛アート錯体、アミノ酸エステル化合物を添加してエステル交換反応を行い、更に酸を添加することでエステル交換反応を停止する方法を用いることが好ましい。
上記溶媒は特に限定されず、例えば、トルエン、ジメチルスルホキシド、アセトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、水、及び、これらの混合溶媒等が挙げられる。
【0042】
上記アミノ酸エステル化合物としては、グリシンアルキルエステル、アスパラギン酸アクリルエステル、L-チロシンメチル、L-メチオニンメチル、L-メチオニンエチル、DL-2-アミノ酪酸メチル、L-アラニンメチル、N-Boc-グリシンメチル、βアラニンメチル、N-カルボベンゾキシグリシンメチル、L-tert-ロイシンメチル、2-ピペリジンカルボン酸メチル、2-ピペリジンカルボン酸エチル、4-ピペリジンカルボン酸メチル(イソニペコチン酸メチル)、4-ピペリジンカルボン酸エチル、DL-ピログルタミン酸メチル、L-グルタミン酸1-メチル、L-アスパラギン酸1-メチル、3-アミノ安息香酸メチル、2-アミノチオフェン-3-カルボン酸メチル、2-アミノ-4,5-ジフルオロ安息香酸メチル、4-アミノ安息香酸メチル、1-アミノシクロプロパンカルボン酸メチル、1-アミノシクロヘキサンカルボン酸メチル、1-アミノ-1-シクロペンタンカルボン酸メチルエステル、5-アミノ-2,4-ジフルオロ安息香酸メチル、3-アミノピラゾール-4-カルボン酸メチル、2-(アセチルアミノ)イソニコチン酸メチル、5-アミノ-2-フロ酸メチル等が挙げられる。
【0043】
上記エステル交換反応する工程では、モレキュラーシーブス等の担体を添加してもよい。
上記担体を添加することで、担体への吸着が起こり、化学平衡が傾く。その結果、担体が反応助剤の役割を果たす。
上記モレキュラーシーブスとしては、ゼオライトを用いることが好ましく、モレキュラーシーブス3A、モレキュラーシーブス4A等が挙げられるが、好ましくは、モレキュラーシーブス4Aが挙げられる。
【0044】
上記エステル交換反応する工程は、均一系で行ってもよく、不均一系で行ってもよい。
なお、均一系とは物質が均一な濃度で存在している系であり、成分が溶媒に溶解している状態を意味する。不均一系は反応系が不均一なことを言い、反応が進行するにつれて、物質が局在化してくる系であり、一部の樹脂などの成分が反応の過程で未溶解となる状態を意味する。
【0045】
本発明のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体は、例えば、水溶液の粘度調整剤、ガスバリアコーティング剤、懸濁剤、乳化剤、偏光板、水溶性フィルム、分散剤、細胞培養培地、生体材料、農業フィルム、抗菌樹脂等、各種樹脂の原材料等の用途で使用することができる。
【0046】
本発明のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体の形態としては、特に限定されるものではなく、繊維、不織布等の布帛、メッシュ、フィルム、塗膜、シート状、塊状、粒子状、棒状、板状、スポンジ状、溶液状、塗料、ゲル状、クリーム状等の各種形状が挙げられる。なかでも、不織布等の布帛、シート状、塗膜、粒子状が好ましい。また、水又はアルコール等の有機溶剤及び水の混合物に、溶解又は分散させ、スプレーする方法も好ましく使用できる。
【0047】
本発明のビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体は、例えば上記形態において、例えば細胞の培地、生体材料、農業用フィルム、抗菌剤として有利に用いることができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、細胞培養性、生体適合性、抗菌性及び有機溶剤への溶解性等に優れ、医療分野、生体材料分野、農業分野(メディカル、ライフサイエンス分野)に応用可能なビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
原料ポリビニルアルコール(PVA-1、けん化度98.5、重合度300)1重量部をDMSOに49重量部に添加し溶解させた(濃度2重量%)。その後、L-チロシンメチル4.4重量部、テトラt-ブチル亜鉛酸ジリチウム(TBZL、溶媒:テトラヒドロフラン、濃度13重量%)6重量部を添加し、30℃で6時間撹拌することで、エステル交換反応を行った。
その後テトラヒドロフランに再沈し、テトラヒドロフランで洗浄することで生成物(ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体)を得た。
【0051】
(実施例2)
エステル交換反応における撹拌時間を「6時間」から「24時間」に変更した以外は実施例1と同様の方法で、生成物(ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体)を得た。
【0052】
(実施例3)
L-チロシンメチルの添加量を「4.4重量部」から「8.9重量部」に変更した以外は実施例1と同様の方法で、生成物(ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体)を得た。
【0053】
(実施例4)
L-チロシンメチルの添加量を「4.4重量部」から「17.7重量部」に変更した以外は実施例1と同様の方法で、生成物(ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体)を得た。
【0054】
(実施例5)
エステル交換反応における撹拌時間を「6時間」から「24時間」に変更し、水での再沈、洗浄を行った以外は実施例4と同様の方法で、生成物(ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体)を得た。
【0055】
(実施例6)
原料ポリビニルアルコール(PVA-1、けん化度98.5、重合度300)に代えて、原料ポリビニルアルコール(PVA-3、けん化度98.5、重合度600)を使用した以外は実施例5と同様の方法で、生成物(ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体)を得た。
【0056】
(実施例7)
原料ポリビニルアルコール(PVA-1、けん化度98.5、重合度300)に代えて、原料ポリビニルアルコール(PVA-4、けん化度98.5、重合度1000)を使用した以外は実施例5と同様の方法で、生成物(ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体)を得た。
【0057】
(実施例8)
原料ポリビニルブチラール(PVB、ビニルアルコールユニット含有量34モル%、アセタールユニット含有量65モル%、酢酸ビニルユニット含有量1モル%、重合度1700)1重量部をDMSOに19重量部に添加し溶解させた(濃度5重量%)。その後、L-チロシンメチル2.5重量部、テトラt-ブチル亜鉛酸ジリチウム(TBZL、濃度13重量%)0.25重量部を添加し、30℃で6時間撹拌することで、エステル交換反応を行った。
その後水に再沈し、熱湯で洗浄することで生成物(ビニルブチラール-アミノ酸エステル共重合体)を得た。
【0058】
(実施例9)
L-チロシンメチルに代えて、4-CEP(4-ピペリジンカルボン酸エチル)を用いるとともに、エステル交換反応におけるTBZL(濃度13重量%)の添加量を「6重量部」から「10重量部」、撹拌時間を「6時間」から「24時間」に変更した以外は実施例1と同様の方法で、生成物(ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体)を得た。
【0059】
(実施例10)
4-CEP(4-ピペリジンカルボン酸エチル)の添加量を「4.4重量部」から「17.7重量部」とした以外は実施例9と同様の方法で、生成物(ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体)を得た。
【0060】
(実施例11)
原料ポリビニルアルコール(PVA-1、けん化度98.5、重合度300)に代えて、原料ポリビニルアルコール(PVA-3、けん化度98.5、重合度600)を使用した以外は実施例10と同様の方法で、生成物(ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体)を得た。
【0061】
(実施例12)
原料ポリビニルアルコール(PVA-1、けん化度98.5、重合度300)に代えて、原料ポリビニルアルコール(PVA-4、けん化度98.5、重合度1000)を使用した以外は実施例10と同様の方法で、生成物(ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体)を得た。
【0062】
(実施例13)
L-チロシンメチルに代えて、4-CEP(4-ピペリジンカルボン酸エチル)を用いた以外は実施例8と同様の方法で、生成物(ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体)を得た。
【0063】
(参考例)
L-チロシンメチルに代えて、2-CEP(2-ピペリジンカルボン酸エチル)を用いるとともに、エステル交換反応におけるTBZL(濃度13重量%)の添加量を「6重量部」から「10重量部」、撹拌時間を「6時間」から「24時間」に変更した以外は実施例1と同様の方法で、生成物(ビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体)を得た。
【0064】
(比較例1)
ケン化度98.5、重合度300のビニルアルコール-酢酸ビニル共重合体(PVA-1)を使用した。
【0065】
(比較例2)
ケン化度88.0、重合度600のビニルアルコール-酢酸ビニル共重合体(PVA-2)を使用した。
【0066】
(比較例3)
ケン化度99.5、重合度1000のビニルアルコール-ビニルアミン共重合体(アミン変性PVA-1、ビニルアミンユニット含有量12モル%)を使用した。
【0067】
(比較例4)
ケン化度99.5、重合度500のビニルアルコール-ビニルアミン共重合体(アミン変性PVA-2、ビニルアミンユニット含有量6モル%)を使用した。
【0068】
(評価方法)
上記で得られた生成物を以下の方法で評価した。結果を表1に示した。
【0069】
(1)1H-NMR測定
得られた生成物を1H-NMR測定することで、生成物の組成比(ビニルアルコールユニット、アミノ酸エステルユニット、アセタールユニット、酢酸ビニルユニット、ビニルアミンユニット)を測定した。なお、1H-NMR測定には、JEOL JNM-ECX500を用い、DMSO-d6溶液(1wt/vol%)を用いて60℃で測定を実施した。
【0070】
(2)細胞培養性評価
得られた生成物をDMSOで溶解後、乾燥することで、96ウェルプレートの底面に塗布し、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)にウシ胎児血清(FBS)を5%添加したものを培地とし、マウス線維芽細胞用細胞株(NIH/3T3細胞)を1ウェルあたり1×104個播種し、5%CO2/37℃のインキュベーターで培養した。その後、培養1日目での初期接着、及び、培養4日目での経時増殖・接着維持を以下の通りに評価した。
培養後の生細胞数をディスポーザブル細胞計数盤(ワケンビーテック社製)を用いて、播種細胞数に対する培養後の生細胞数の比率を算出した。得られた生細胞数の比率について、以下の基準で細胞培養性を評価した。
【0071】
初期接着(1日目)
〇〇〇:播種細胞数に対する培養後の生細胞数の比率が1.5以上
〇〇:播種細胞数に対する培養後の生細胞数の比率が1.0以上、1.5未満
〇:播種細胞数に対する培養後の生細胞数の比率が0.5以上、1.0未満
△:播種細胞数に対する培養後の生細胞数の比率が0.2以上、0.5未満
×:播種細胞数に対する培養後の生細胞数の比率が0.2未満
経時増殖・接着維持(4日目)
〇〇〇:播種細胞数に対する培養後の生細胞数の比率が3.0以上
〇〇:播種細胞数に対する培養後の生細胞数の比率が2.5以上、3.0未満
〇:播種細胞数に対する培養後の生細胞数の比率が2.0以上、2.5未満
△:播種細胞数に対する培養後の生細胞数の比率が1.0以上、2.0未満
×:播種細胞数に対する培養後の生細胞数の比率が1.0未満
【0072】
(3)生体適合性評価
上記細胞培養性評価において1日後および6日後にATPアッセイを行うことによって評価した。培養後のウェルから培地を除去し、リン酸緩衝液で洗浄後、100μlのATP抽出試薬(Intracellular ATP assay kit ver.2:東洋ビーネット社製)を添加、5回ピペッティングし、5分間室温で静置した後、ATPを抽出した。上記ATP抽出溶液から1010μL抜き取り、ATP発光試薬(同キット)100μLを添加して撹拌後、これをMithrasLB940(Berthold社製)を用いて発光量を測定した。
測定した発光量から下記式を用いて細胞毒性を算出し、以下の基準で評価した。
細胞毒性=(培養6日後の発光量)/(培養1日後の発光量)×100
〇:細胞毒性が30%未満
×:細胞毒性が30%以上
【0073】
(4)血栓付着性
内径10mm×長さ100mmのPET製試験管(対照)の内面に、得られた生成物をDMSOに溶解させ、スプレー塗布して乾燥することにより塗布し、PET管にヒト血液1mLを添加、口部を密封して転倒混和ししてPET管全内面を血液で濡らした。
正立させて室温で4時間程度し、静置血液が凝固したのを確認してから遠心分離機で1500G×5分間遠心処理した後、PET管のヘッドスペース部内面に付着した血液(ピンクないし薄赤色の極薄膜が付着している部分)の程度を観察した。
赤味強度、付着面積の程度を総合的に判断し、付着が少ないものから○、△、×と相対評価を行った。
【0074】
(5)有機溶剤への溶解性
実施例1~7、9~12、比較例1~4で得られた生成物(PVA系の生成物)に対してはトルエン(70℃)、実施例8、13で得られた生成物(PVB系の生成物)に対してはブタノール(室温)を添加し、生成物の濃度が1.0質量%となるように調整した。その後、6時間500rpmで撹拌し、未溶解物の含有量から溶解性を以下の基準にて評価した。
〇:未溶解物が20質量%未満
×:未溶解物が20質量%以上
【0075】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、細胞培養性、生体適合性、抗菌性及び有機溶剤への溶解性等に優れ、医療分野、生体材料分野、農業分野(メディカル、ライフサイエンス分野)に応用可能なビニルアルコール-アミノ酸エステル共重合体を提供できる。