(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】口腔乾燥症を診断するための唾液バイオマーカー及びその用途
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20231114BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20231114BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALN20231114BHJP
C07K 16/40 20060101ALN20231114BHJP
C07K 16/42 20060101ALN20231114BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20231114BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20231114BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231114BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20231114BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20231114BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20231114BHJP
C12N 15/52 20060101ALN20231114BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20231114BHJP
【FI】
G01N33/50 G
G01N33/68
C12Q1/6851 Z
C07K16/40
C07K16/42
C07K16/18
C12N15/115 Z
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/53
C12N15/54
C12N15/52 Z
C12N15/113 Z
(21)【出願番号】P 2021180275
(22)【出願日】2021-11-04
【審査請求日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】10-2020-0154577
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0154578
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】304039548
【氏名又は名称】コリア・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】507107394
【氏名又は名称】アイユーシーエフ-エイチワイユー(インダストリー-ユニバーシティー コーオペレイション ファウンデーション ハンヤン ユニバーシティー)
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ファン,キョン-ギュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン ファ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジ ウン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ス ジン
(72)【発明者】
【氏名】パク,イェ ウン
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-249618(JP,A)
【文献】特開2009-264988(JP,A)
【文献】特表2006-528662(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0273083(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0314715(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0021906(US,A1)
【文献】Yoo, MH, Rhee, Y-H, Jung, JY, et al.,TRPV1 regulates inflammatory process in the tongue of surgically induced xerostomia mouse,Head & Neck,2019年11月13日,Volume 42, Issue 2,198-209
【文献】Shin Eui Kang,Soluble Semaphorin 4D/CD100 Is Increased in the Saliva of Sjogren’s Syndrome,2018 ACR/ARHP Annual Meeting Online Program,2018年10月22日,1
【文献】Tomoko Ichiyama, Eiji Nakatani, Kasumi Tatsumi, Katsumi Hideshima, Takeshi Urano, Yoshiki Nariai, Joji Sekine,Expression of aquaporin 3 and 5 as a potential marker for distinguishing dry mouth from Sjogren’s syndrome,Journal of Oral Science,2018年06月20日,60 巻, 2 号,p. 212-220
【文献】Nguyen, C.Q., Sharma, A., Lee, B.H. et al.,Differential gene expression in the salivary gland during development and onset of xerostomia in Sjogren's syndrome-like disease of the C57BL/6.NOD-Aec1Aec2mouse,Arthritis Res Ther,2009年04月20日,11,R56
【文献】Fleissig, Y., Deutsch, O., Reichenberg, E., Redlich, M., Zaks, B., Palmon, A. and Aframian, D.,Different proteomic protein patterns in saliva of Sjogren's syndrome patients,Oral Diseases,2008年12月10日,15,61-68,https://doi.org/10.1111/j.1601-0825.2008.01465.x
【文献】Baldini, C., Giusti, L., Ciregia, F. et al.,Correspondence between salivary proteomic pattern and clinical course in primary Sjogren syndrome and non-Hodgkin's lymphoma: a case report,J Transl Med,2011年11月02日,9,188,https://doi.org/10.1186/1479-5876-9-188
【文献】Atsuko Igarashi, Kouji Katsura, Kayoko Ito, Saori Funayama,Current Status of Salivary Gland Diseases: Sjogren's Syndrome and Dry Mouth,Journal of Oral Biosciences,2011年,Volume 53, Issue 1,Pages 31-37,https://doi.org/10.1016/S1349-0079(11)80033-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
C12Q 1/6851
C07K 16/18 -16/42
C12N 15/113-15/54
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NUCB2(Nucleobindin-2
)遺伝子の発現レベル、あるいは蛋白質またはその断片の発現レベルを測定する製剤を含む、口腔乾燥症診断用組成物。
【請求項2】
唾液試料において検出するためのものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前述のNUCB
2遺伝子の発現レベルは、正常対照群の発現レベルに比べて低下する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記製剤は、
前記蛋白質またはその断片に特異的に結合する抗体、その抗原結合断片またはアプタマー、または
前記蛋白質またはその断片を暗号化するポリヌクレオチドと同一であるか、またはそれに相補的なポリヌクレオチドを含む核酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である、請求項
4に記載の組成物。
【請求項6】
前記核酸は、プライマー、プローブまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項
4に記載の組成物。
【請求項7】
KV108(immunoglobulin kappa variable 1-8)、GSLG1(golgi apparatus protein 1)、FAM3B(protein FAM3B)、MUC21(mucin-21)、RB11A(Ras-related protein Rab-11A)、LYSC(Lysozyme C)、CALL3(calmodulin-like protein 3)、A1BG(alpha-1B-glycoprotein)、A1AG1(alpha-1-acid glycoprotein 1)、CALR(calreticulin)、PLMN(plasminogen)、ECM1(extracellular matrix protein 1)、ANXA6(Annexin A6)、WDR1(WD repeat-containing protein 1)、ILEU(leukocyte elastase inhibitor)、FETUA(alpha-2-HS-glycoprotein)、MNDA(myeloid cell nuclear differentiation antigen)、MMP9(matrix metalloproteinase-9)、NGAL(neutrophil gelatinase-associated lipocalin)、DOPD(D-dopachrome decarboxylase)、MMP8(neutrophil collagenase)、A1AT(alpha-1-antitrypsin)
、IGG1(Immunoglobulin gamma-1 heavy chain)
、PDCD6IP(Programmed cell death 6-interacting protein)、PTGR1(Prostaglandin reductase 1)、FAM3D、ZG16B(Zymogen granule protein 16 homolog B)、ANT3(Antithrombin-III)、ATPA(ATP synthase subunit alpha, mitochondrial)、HRG(histidine-rich glycoprotein)、H15(histone H1.5)、H2B1L(histone H2B type 1-L)、PCBP1(poly(rC)-binding protein 1)及びPTPRJ(receptor-type tyrosine-protein phosphatase eta)からなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベル、あるいは蛋白質またはその断片の発現レベルを測定する製剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
NUCB
2遺伝子の発現レベル、あるいは蛋白質またはその断片の発現レベルを測定する製剤を含む、口腔乾燥症診断用キット。
【請求項9】
KV108、GSLG1、FAM3B、MUC21、RB11A、LYSC、CALL3、A1BG、A1AG1、CALR、PLMN、ECM1、ANXA6、WDR1、ILEU、FETUA、MNDA、MMP9、NGAL、DOPD、MMP8、A1AT
、IGG1
、PDCD6IP、PTGR1、FAM3D、ZG16B、ANT3、ATPA、HRG、H15、H2B1L、PCBP1及びPTPRJからなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベル、あるいは蛋白質またはその断片の発現レベルを測定する製剤をさらに含む、請求項
8に記載のキット。
【請求項10】
口腔乾燥症が疑われる個体から分離された唾液試料において、NUCB
2遺伝子の発現レベル、あるいは蛋白質またはその断片の発現レベルを測定する段階と、
前記測定された発現レベルを、正常対照群の発現レベルと比較する段階と
、を含む、口腔乾燥症の診断に必要な情報を提供するためにバイオマーカーを検出する方法。
【請求項11】
前記測定する段階は、前記唾液試料と、前記蛋白質またはその断片に特異的に結合する抗体、その抗原結合断片またはアプタマーと、をインキュベーションさせるか、あるいは前記遺伝子をコーディングするポリヌクレオチドと同一であるか、あるいはそれに相補的なポリヌクレオチドをインキュベーションさせる段階を含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記測定する段階は、LC-MSによって遂行される、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
KV108、GSLG1、FAM3B、MUC21、RB11A、LYSC、CALL3、A1BG、A1AG1、CALR、PLMN、ECM1、ANXA6、WDR1、ILEU、FETUA、MNDA、MMP9、NGAL、DOPD、MMP8、A1AT
、IGG1
、PDCD6IP、PTGR1、FAM3D、ZG16B、ANT3、ATPA、HRG、H15、H2B1L、PCBP1及びPTPRJからなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベル、あるいは蛋白質またはその断片の発現レベルを測定する段階をさらに含む、請求項
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔乾燥症を診断するための唾液バイオマーカー、それを利用した口腔乾燥症診断用組成物、そのキット、及びそれを利用したバイオマーカーの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
唾液腺機能は、さまざまな状態によって影響を受けることになる。口腔乾燥症は、口内に唾液がなく、主観的に、口腔乾燥を感じるものである。口腔乾燥症により、唾液腺の機能が低下し、潤滑作用または抗菌作用の機能が低下すれば、口腔に現われる二次疾患として、歯牙齲蝕と歯周疾患が示されうる。該口腔乾燥症は、唾液分泌機能低下初期段階においては、認知し難く、一時的な口腔乾燥症と、器質的な口腔乾燥症との区分が困難であり、器質的な唾液腺機能低下による口腔乾燥症は、迅速な診断が困難である。老化による老人性口腔乾燥症も、器質的な唾液腺機能低下に起因する。該唾液腺機能低下による口腔乾燥症は、病気が進んだ後、完治が困難であり、治療法も、疾病を完全に治療するものではなく、症状を緩和するところに重点を置いている。
【0003】
口腔乾燥症は、シェーグレン症侯群、貧血、糖尿、老化、薬物服用、神経系疾患のような多様な原因によっても生じる。最近、該口腔乾燥症を有する個体の唾液試料においてバイオマーカーを検出し、シェーグレン症侯群(Sjogren's syndrome:)を診断して治療する方法が開発された(特許文献1)。しかし、該口腔乾燥症を診断するためのバイオマーカーは、開発されていない。
【0004】
従って、口腔乾燥症を迅速であり、客観的であり、簡便であり、廉価でもって診断することができ、診断の正確度及び特異度が高いバイオマーカーを開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許公告US9,833,519B2
【文献】国際公開WO2021/086067A1
【文献】韓国特許KR10-2091483B1
【文献】米国特許出願公開US2015/0219665A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、口腔乾燥症診断用組成物を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、また、口腔乾燥症診断用キットを提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、また、口腔乾燥症の診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、NUCB2(Nucleobindin-2)、PDCD6IP(Programmed cell death 6-interacting protein)、PTGR1(Prostaglandin reductase 1)、FAM3D、ZG16B(Zymogen granule protein 16 homolog B)、A1AT(alpha-1-antitrypsin)、ANT3(Antithrombin-III)、ATPA(ATP synthase subunit alpha,mitochondrial)、HRG(histidine-rich glycoprotein)、H15(histone H1.5)、H2B1L(histone H2B type 1-L)、IGG1(Immunoglobulin gamma-1heavy chain)、PCBP1(poly(rC)-binding protein 1)及びPTPRJ(receptor-type tyrosine-protein phosphatase eta)からなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベル、あるいは蛋白質またはその断片の発現レベルを測定する製剤を含む口腔乾燥症診断用組成物を提供する。
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、NUCB2、PDCD6IP、PTGR1、FAM3D、ZG16B、A1AT、ANT3、ATPA、HRG、H15、H2B1L、IGG1、PCBP1及びPTPRJからなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベル、あるいは蛋白質またはその断片の発現レベルを測定する製剤を含む口腔乾燥症診断用キットを提供する。
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は、口腔乾燥症が疑われる個体から分離された唾液試料において、NUCB2、PDCD6IP、PTGR1、FAM3D、ZG16B、A1AT、ANT3、ATPA、HRG、H15、H2B1L、IGG1、PCBP1及びPTPRJからなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベル、あるいは蛋白質またはその断片の発現レベルを測定する段階と、前記測定された発現レベルを、正常対照群の発現レベルと比較する段階と、前述のNUCB2、PDCD6IP、PTGR1、FAM3D及びZG16Bからなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベルが、正常対照群の発現レベルと比較して低下するか、あるいは前述のA1AT、ANT3、ATPA、HRG、H15、H2B1L、IGG1、PCBP1及びPTPRJからなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベルが、正常対照群の発現レベルと比較して上昇した場合、口腔乾燥症と決定する段階と、を含む、口腔乾燥症の診断に必要な情報を提供するためにバイオマーカーを検出する方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
一様相による口腔乾燥症診断用組成物、そのキット、及びそれを利用した口腔乾燥症の診断方法によれば、口腔乾燥症を簡便であって客観的であり、高い正確度及び特異度でもって診断するのに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】正常対照群と口腔乾燥症患者グループとの唾液試料のSDS-PAGEゲルイメージである。
【
図2】唾液試料で同定された蛋白質と、p値が0.05未満と、統計的に有意な蛋白質とを分析し、個数を示したベン図式である。
【
図3A】NUCB2の正常対照群と口腔乾燥症患者群とのスコアによる発現レベルを示すグラフである(y軸:LFQ強度、N:正常対照群、S1:スコア1、S2:スコア2、S345:スコア3以上)。
【
図3B】PDCD6IPの正常対照群と口腔乾燥症患者群とのスコアによる発現レベルを示すグラフである(y軸:LFQ強度、N:正常対照群、S1:スコア1、S2:スコア2、S345:スコア3以上)。
【
図3C】PTGR1の正常対照群と口腔乾燥症患者群とのスコアによる発現レベルを示すグラフである(y軸:LFQ強度、N:正常対照群、S1:スコア1、S2:スコア2、S345:スコア3以上)。
【
図3D】FAM3Dの正常対照群と口腔乾燥症患者群とのスコアによる発現レベルを示すグラフである(y軸:LFQ強度、N:正常対照群、S1:スコア1、S2:スコア2、S345:スコア3以上)。
【
図3E】ZG16Bの正常対照群と口腔乾燥症患者群とのスコアによる発現レベルを示すグラフである(y軸:LFQ強度、N:正常対照群、S1:スコア1、S2:スコア2、S345:スコア3以上)。
【
図4A】A1ATの正常対照群と口腔乾燥症患者群とのスコアによる発現レベルを示すグラフである(y-軸:LFQ強度、N:正常対照群、S1:スコア1、S2:スコア2、S345:スコア3以上)。
【
図4B】ANT3の正常対照群と口腔乾燥症患者群とのスコアによる発現レベルを示すグラフである(y-軸:LFQ強度、N:正常対照群、S1:スコア1、S2:スコア2、S345:スコア3以上)。
【
図4C】ATPAの正常対照群と口腔乾燥症患者群とのスコアによる発現レベルを示すグラフである(y-軸:LFQ強度、N:正常対照群、S1:スコア1、S2:スコア2、S345:スコア3以上)。
【
図4D】HRGの正常対照群と口腔乾燥症患者群とのスコアによる発現レベルを示すグラフである(y-軸:LFQ強度、N:正常対照群、S1:スコア1、S2:スコア2、S345:スコア3以上)。
【
図4E】H15の正常対照群と口腔乾燥症患者群とのスコアによる発現レベルを示すグラフである(y-軸:LFQ強度、N:正常対照群、S1:スコア1、S2:スコア2、S345:スコア3以上)。
【
図4F】H2B1Lの正常対照群と口腔乾燥症患者群とのスコアによる発現レベルを示すグラフである(y-軸:LFQ強度、N:正常対照群、S1:スコア1、S2:スコア2、S345:スコア3以上)。
【
図4G】IGG1の正常対照群と口腔乾燥症患者群とのスコアによる発現レベルを示すグラフである(y-軸:LFQ強度、N:正常対照群、S1:スコア1、S2:スコア2、S345:スコア3以上)。
【
図4H】PCBP1の正常対照群と口腔乾燥症患者群とのスコアによる発現レベルを示すグラフである(y-軸:LFQ強度、N:正常対照群、S1:スコア1、S2:スコア2、S345:スコア3以上)。
【
図4I】PTPRJの正常対照群と口腔乾燥症患者群とのスコアによる発現レベルを示すグラフである(y-軸:LFQ強度、N:正常対照群、S1:スコア1、S2:スコア2、S345:スコア3以上)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一様態は、NUCB2(Nucleobindin-2)、PDCD6IP(Programmed cell death 6-interacting protein)、PTGR1(Prostaglandin reductase 1)、FAM3D、ZG16B(Zymogen granule protein 16 homolog B)、A1AT(alpha-1-antitrypsin)、ANT3((Antithrombin-III)、ATPA(ATP synthase subunit alpha,mitochondrial)、HRG(histidine-rich glycoprotein)、H15(histone H1.5)、H2B1L(histone H2B type 1-L)、IGG1(Immunoglobulin gamma-1 heavy chain)、PCBP1(poly(rC)-binding protein 1)及びPTPRJ(receptor-type tyrosine-protein phosphatase eta)からなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベル、あるいは蛋白質またはその断片の発現レベルを測定する製剤を含む口腔乾燥症診断用組成物を提供する。
【0015】
用語「口腔乾燥症(xerostomiaまたはdry mouth)」は、唾液分泌低減や、それ以外の他の多様な原因により、口内が乾く症状を言う。口腔乾燥症は、唾液腺機能低下(salivary gland hypofunction)とも呼ばれる。口腔乾燥症は、シェーグレン症侯群(Sjogren's syndrome)、貧血、糖尿、栄養素欠乏、老化、薬物服用(例:抗ヒスタミン剤、精神神経系作用薬物、高血圧治療剤)、神経系疾患、精神的疾患(例:鬱病)及び放射線療法などの原因によっても引き起こされる。口腔乾燥症が誘発されれば、乾燥感自体により、飲食物を飲み込み難く、話をするのが不便になるということを感じ、虫歯(歯牙齲蝕症)及び歯槽膿漏(歯周炎)の発生が増大して悪化しやすく、口腔内かび感染、舌痛症、口臭、味覚異常などが誘発されてしまう。口腔乾燥症は、口腔潰瘍のような口腔疾患の発生にも影響を及ぼしうる。口腔乾燥症は、唾液分泌量測定(休息時の唾液分泌量が0.1mL/分以下)、唾液腺造影術、組織検査または核医学検査方法によっても診断される。また、唾液腺組織検査を介しても診断することができるが、唾液腺組織における唾液腺実質の退縮程度によって診断することができる。シェーグレン症侯群症侯群において、唾液腺機能低下に係わる評価において、唾液腺組織内の免疫細胞の浸透様相を測定し、免疫細胞の浸透が多い程度により、スコア0ないし6に分類することができる。
【0016】
前記組成物は、唾液試料において検出するためのものでもある。
【0017】
前述のNUCB2、PDCD6IP、PTGR1、FAM3D及びZG16Bからなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベルは、正常対照群の発現レベルに比べても低下する。
【0018】
NUCB2(Nucleobindin-2)は、カルシウム恒常性に機能を行うことができるカルシウム結合蛋白質であり、HEL-S-109またはNEFAとも呼ばれる。NUCB2蛋白質は、NUCB2遺伝子によってコーディングされる蛋白質でもある。該NUCB2は、ヒトにおいて、UniProt番号P80303のアミノ酸配列を含むものでもある。該NUCB2は、マウスにおいて、UniProt番号P81117のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0019】
PDCD6IP(Programmed cell death 6-interacting protein)は、細胞内取り込み(endocytosis)または予定細胞死(programmed cell death)に機能を行う蛋白質であり、AIP1、ALIX、DRIP4またはHP95とも呼ばれる。PDCD6IPの過発現は、細胞自殺(apoptosis)を遮断することができる。PDCD6IPは、ヒトにおいて、UniProt番号Q8WUM4のアミノ酸配列を含むものでもある。PDCD6IPは、マウスにおいて、UniProt番号Q9WU78のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0020】
PTGR1(Prostaglandin reductase 1)は、プロスタグランジン(prostaglandin)、ロイコトリエン(leukotriene)及びリポキシン(lipoxin)の炎症性及び抗炎症性のエイコサノイド(eicosanoid)の代謝不活性化に関与するNAD(P)H依存性酸化還元酵素である。PTGR1は、PRG-1、15-オキソプロスタグランジン13-還元酵素(15-oxoprostaglandin 13-reductase)、ジチオールエチオン誘導性遺伝子1蛋白質(dithiolethione-inducible gene 1 protein)、DIG-1、ロイコトリエンB412-ヒドロキシ脱水素(LTB4DH:leukotriene B412-hydroxydehydrogenase)またはNAD(P)H依存性アルケナル/オン酸化還元酵素(NAD(P)H-dependent alkenal/one oxidoreductase)とも呼ばれる。該PTGR1は、ヒトにおいて、UniProt番号Q14914のアミノ酸配列を含むものでもある。該PTGR1は、マウスにおいて、UniProt番号P48758のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0021】
FAM3Dは、サイトカイン活性に機能することができ、グルカゴン分泌またはインシュリン分泌において、陰性調節を担当することができる。該FAM3Dは、ヒトにおいて、UniProt番号Q96BQ1のアミノ酸配列を含むものでもある。該FAM3Dは、マウスにおいて、UniProt番号P97805のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0022】
ZG16B(Zymogen granule protein 16 homolog B)は、炭水化物結合または網膜恒常性に機能を担当することができる。ZG16Bは、EECP、HRPE773、JCLN2、PAUF、PRO1567またはLOC124220とも呼ばれる。該ZG16Bは、ヒトにおいて、UniProt番号Q96DA0のアミノ酸配列を含むものでもある。該ZG16Bは、ラットにおいて、UniProt番号A0A0G2K7Y9のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0023】
前述のA1AT、ANT3、ATPA、HRG、H15、H2B1L、IGG1、PCBP1及びPTPRJからなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベルは、正常対照群の発現レベルに比べて上昇するものでもある。
【0024】
A1AT(alpha-1-antitrypsin)は、セルピン(serpin)スーパーファミリーに属する蛋白質である。A1ATは、SERPINA1、A1A、AAT、PI、PI1、PRO2275、alpha1AT、serpin family A member 1またはnNIFとも呼ばれる。A1ATは、多様な蛋白質分解酵素を阻害する蛋白質分解酵素阻害剤でもある。A1ATは、一本鎖の糖蛋白質でもある。該A1ATは、ヒトにおいて、UniProt番号P01009のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0025】
ANT3(Antithrombin-III)は、血液凝固システムのさまざまな酵素を非活性化させる小蛋白質である。ANT3は、血漿において、トロンビンを非活性化させることができる。ANT3は、SERPINC1、AT3、AT3D、ATIII、THPH7、serpin系列Cメンバー1、ATIII-R2、ATIII-T2またはATIII-T1とも呼ばれる。該ANT3は、ヒトにおいて、UniProt番号P01008のアミノ酸配列を含むものでもある。該ANT3は、マウスにおいて、UniProt番号P32261のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0026】
ATPA(ATP synthase subunit alpha,mitochondrial)は、細胞呼吸電子輸送複合体によって生成される陽性子濃度勾配下において、ADPからATPを生合成する蛋白質をなすサブユニットである。ATPAは、ATP合成酵素F1サブユニットアルファとも呼ばれる。該ATPAは、ヒトにおいて、UniProt番号P25705のアミノ酸配列を含むものでもある。該ATPAは、マウスにおいて、UniProt番号Q03265のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0027】
HRG(histidine-rich glycoprotein)は、肝臓で生成される糖蛋白質である。HRGは、HPRG、HRGPまたはTHPH11とも呼ばれる。該HRGは、ヒトにおいて、UniProt番号P04196のアミノ酸配列を含むものでもある。該HRGは、マウスにおいて、UniProt番号Q9ESB3のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0028】
H15(histone H1.5)は、ヌクレオソーム間のリンカーDNAに結合し、クロマチンという巨大分子構造を形成する蛋白質である。H15は、histone H1a、histone H1bまたはhistone H1s-3とも呼ばれる。該H15は、ヒトにおいて、UniProt番号P16401のアミノ酸配列を含むものでもある。該H15は、マウスにおいて、UniProt番号P43276のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0029】
H2B1L(histone H2Btype 1-L)は、ヌクレオソームをなす蛋白質のうち一つである。H2B1Lは、histone H2B.cとも呼ばれる。該H2B1Lは、ヒトにおいて、UniProt番号Q99880のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0030】
IGG1(Immunoglobulin gamma-1 heavy chain)は、抗体の重鎖でもある。IGG1は、IGHG1またはImmunoglobulin gamma-1 heavy chain NIEとも呼ばれる。該IGG1は、ヒトにおいて、UniProt番号P0DOX5のアミノ酸配列を含むものでもある。該IGG1は、マウスにおいて、UniProt番号P01868または同P01869のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0031】
PCBP1(poly(rC)-binding protein 1)は、オリゴdCに結合する一本鎖核酸結合蛋白質である。PCBP1は、HEL-S-85、HNRPE1、HNRPX、hnRNP-E1またはhnRNP-Xとも呼ばれる。該PCBP1は、ヒトにおいて、UniProt番号Q15365のアミノ酸配列を含むものでもある。該PCBP1は、マウスにおいて、UniProt番号P60335のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0032】
PTPRJ(receptor-type tyrosine-protein phosphatase eta)は、CTNND1、FLT3、PDGFRB、MET、RET(変異体MEN2A)、KDR、LYN、SRC、MAPK1、MAPK3、EGFR、TJP1、OCLN、PIK3R1及びPIK3R2の脱リン酸化に関与するチロシンホスファターゼである。PTPRJは、CD148、DEP1、HPTPeta、R-PTP-ETAまたはSCC1とも呼ばれる。該PTPRJは、ヒトにおいて、UniProt番号Q12913のアミノ酸配列を含むものでもある。該PTPRJは、マウスにおいて、UniProt番号Q64455のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0033】
前記断片(fragment)は、前記蛋白質の一部であり、免疫原性ポリペプチドでもある。
前記遺伝子は、前記蛋白質を暗号化する核酸を言う。前記遺伝子の発現レベルは、前記蛋白質を暗号化するmRNAの発現レベルでもある。該mRNAの発現レベルは、mRNAの相対的量、または絶対的な量でもある。前記遺伝子の発現レベルの測定は、mRNAの量を測定することでもある。
【0034】
前記蛋白質またはその断片の発現レベルは、前記蛋白質またはその断片の相対的量、または絶対的な量でもある。前記蛋白質またはその断片の発現レベルの測定は、前記蛋白質またはその断片の量を測定することでもある。
【0035】
前記製剤は、前記蛋白質またはその断片に特異的に結合する抗体、その抗原結合断片またはアプタマー(aptamer)でもある。前記抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体でもある。用語「抗体(antibody)」は、用語「免疫グロブリン(immunoglobulin)」と相互交換的にも使用される。前記抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体でもある。前記抗体は、全長抗体でもある。前記抗原結合断片は、抗原結合部位を含むポリペプチドを言う。前記抗原結合断片は、単一ドメイン抗体(single-domain antibody)、Fab、Fab’またはscFvでもある。前記抗体または抗原結合断片は、固体支持体に付着されたものでもある。前記固体支持体は、例えば、金属チップ、プレートまたはウェル(well)の表面である。前記抗体または抗原結合断片は、抗体または抗原結合断片でもある。前記アプタマーは、前記蛋白質またはその断片に特異的に結合する単一鎖の核酸(DNA、RNAまたは変形核酸)やペプチドでもある。
【0036】
前記製剤は、前記蛋白質またはその断片を暗号化するポリヌクレオチドと同一であるか、あるいはそれに相補的なポリヌクレオチドを含む核酸でもある。前記核酸は、プライマー、プローブまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドでもある。前述のプライマー、プローブまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドは、その末端または内部に、蛍光物質、化学発光物質(chemiluminescent)または放射性同位元素などよって標識されたものでもある。
【0037】
前記組成物は、KV108(immunoglobulin kappa variable 1-8)、GSLG1(golgi apparatus protein 1)、FAM3B(protein FAM3B)、MUC21(mucin-21)、RB11A(Ras-related protein Rab-11A)、LYSC(Lysozyme C)、CALL3(calmodulin-like protein 3)、A1BG(alpha-1B-glycoprotein)、A1AG1(alpha-1-acid glycoprotein 1)、CALR(calreticulin)、PLMN(plasminogen)、ECM1(extracellular matrix protein 1)、ANXA6(Annexin A6)、WDR1(WD repeat-containing protein 1)、ILEU(leukocyte elastase inhibitor)、FETUA(alpha-2-HS-glycoprotein)、MNDA(myeloid cell nuclear differentiation antigen)、MMP9(matrix metalloproteinase-9)、NGAL(neutrophil gelatinase-associated lipocalin)、DOPD(D-dopachrome decarboxylase)及びMMP8(neutrophil collagenase)からなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベル、あるいは蛋白質またはその断片の発現レベルを測定する製剤をさらに含んでもよい。
【0038】
前述のKV108、GSLG1、FAM3B、MUC21、RB11A、LYSC及びCALL3からなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベルは、正常対照群の発現レベルに比べて低下するものでもある。
【0039】
KV108(immunoglobulin kappa variable 1-8)は、免疫グロブリン軽鎖の可変部位でもある。KV108は、IGKV18、L9またはIGKV1-8とも呼ばれる。該KV108は、ヒトにおいて、UniProt番号A0A0C4DH67のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0040】
GSLG1(golgi apparatus protein 1)は、線維芽細胞成長因子(fibroblast growth factor)とE-セレクチンに結合することができる。GSLG1は、CFR-1(cysteine-rich fibroblast growth factor receptor)、ESL-1(E-selectin ligand 1)またはgolgi sialoglycoprotein MG-160とも呼ばれる。該GSLG1は、ヒトにおいて、UniProt番号Q92896のアミノ酸配列を含むものでもある。該GSLG1は、マウスにおいて、UniProt番号Q61543のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0041】
FAM3B(protein FAM3B)は、膵臓において、アルファ細胞及びベータ細胞の細胞自殺を誘導することができる。FAM3Bは、cytokine-like protein 2-21またはPANDER(pancreatic-derived factor)とも呼ばれる。該FAM3Bは、ヒトにおいて、UniProt番号P58499のアミノ酸配列を含むものでもある。該FAM3Bは、マウスにおいて、UniProt番号Q9D309のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0042】
MUC21(mucin-21)は、肺癌腫のバイオマーカーでもある。MUC21は、エピグリカニン(epiglycanin)とも呼ばれる。該MUC21は、ヒトにおいて、UniProt番号Q5SSG8のアミノ酸配列を含むものでもある。該MUC21は、マウスにおいて、UniProt番号D9N008または同A8QW50のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0043】
RB11A(Ras-related protein Rab-11A)は、細胞内膜移動を調節するsmall GTPase Rabでもある。RB11Aは、Rab-11またはYL8とも呼ばれる。該RB11Aは、ヒトにおいて、UniProt番号P62491のアミノ酸配列を含むものでもある。該RB11Aは、マウスにおいて、UniProt番号P62492のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0044】
LYSC(Lysozyme C)は、加水分解と糖転移とに機能を行う酵素である。LYSCは、1,4-beta-N-acetylmuramidase Cとも呼ばれる。該LYSCは、ヒトにおいて、UniProt番号P61626のアミノ酸配列を含むものでもある。該LYSCは、マウスにおいて、UniProt番号P17897または同P08905のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0045】
CALL3(calmodulin-like protein 3)は、ミオシン-10の特定軽鎖として機能することができる。CALL3は、CLP(CaM-like protein)またはcalmodulin-related protein NB-1とも呼ばれる。該CALL3は、ヒトにおいて、UniProt番号P27482のアミノ酸配列を含むものでもある。該CALL3は、マウスにおいて、UniProt番号医アミノ酸配列を含むものでもある。
【0046】
前述のA1BG、A1AG1、CALR、PLMN、ECM1、ANXA6、WDR1、ILEU、FETUA、MNDA、MMP9、NGAL、DOPD及びMMP8からなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベルは、正常対照群の発現レベルに比べて上昇するものでもある。
【0047】
A1BG(alpha-1B-glycoprotein)は、好中球または血小板の脱顆粒(degranulation)に機能することができる。A1BGは、A1B、ABG、GAB、HYST2477またはアルファ-1-B糖蛋白質とも呼ばれる。該A1BGは、ヒトにおいて、UniProt番号P04217のアミノ酸配列を含むものでもある。該A1BGは、マウスにおいて、UniProt番号Q19LI2のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0048】
A1AG1(alpha-1-acid glycoprotein 1)は、血液において、伝達蛋白質として機能することができる。A1AG1は、AGP1またはOMD1(orosomucoid-1)とも呼ばれる。該A1AG1は、ヒトにおいて、UniProt番号P02763のアミノ酸配列を含むものでもある。該A1AG1は、マウスにおいて、UniProt番号Q60590のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0049】
CALR(calreticulin)は、カルシウムイオンに結合する水溶性蛋白質である。CALRは、CRT、HEL-S-99n、RO、SSAまたはcC1qRとも呼ばれる。該CALRは、ヒトにおいて、UniProt番号P27797のアミノ酸配列を含むものでもある。該CALRは、マウスにおいて、UniProt番号P14211のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0050】
PLMN(plasminogen)は、プラスミンの前駆体である。PLMNは、、plasmin heavy chain A、activation peptide、アンギオスタチン(angiostatin)、plasmin heavy chain A(short form)及びplasmin light chain Bによっても切断される。該PLMNは、ヒトにおいて、UniProt番号P00747のアミノ酸配列を含むものでもある。該PLMNは、マウスにおいて、UniProt番号P06869のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0051】
ECM1(extracellular matrix protein 1)は、骨無機質化の陰性調節因子であり、軟骨内骨生成に関与する。ECM1は、secretory component p85とも呼ばれる。該ECM1は、ヒトにおいて、UniProt番号Q16610のアミノ酸配列を含むものでもある。該ECM1は、マウスにおいて、UniProt番号Q61508のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0052】
ANXA6(Annexin A6)は、カルシウム依存性膜及びリン脂質結合蛋白質である。ANXA6は、ANX6、CBP68、annexin A6、CPB-II、p70またはp68とも呼ばれる。該ANXA6は、ヒトにおいて、UniProt番号P08133のアミノ酸配列を含むものでもある。該ANXA6は、マウスにおいて、UniProt番号P14824のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0053】
WDR1(WD repeat-containing protein 1)は、蛋白質間相互作用に関与しうる。WDR1は、AIP1、HEL-S-52またはNORI-1とも呼ばれる。該WDR1は、ヒトにおいて、UniProt番号O75083のアミノ酸配列を含むものでもある。該WDR1は、マウスにおいて、UniProt番号O88342のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0054】
ILEU(leukocyte elastase inhibitor)は、先天性免疫反応、炎症及び細胞恒常性の調節に関与する好中球セリンプロテアーゼ阻害剤である。ILEUは、LEI、EI、M/NEI(monocyte/neutrophil elastase inhibitor)、PI-2(peptidase inhibitor 2)またはserpin B1とも呼ばれる。該ILEUは、ヒトにおいて、UniProt番号P30740のアミノ酸配列を含むものでもある。該ILEUは、マウスにおいて、UniProt番号Q9D154のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0055】
FETUA(alpha-2-HS-glycoprotein)は、胎児において豊富な血漿結合蛋白質である。FETUAは、AHSG(alpha-2-HS-glycoprotein)、A2HS、AHSまたはHSGAとも呼ばれる。該FETUAは、ヒトにおいて、UniProt番号P02765のアミノ酸配列を含むものでもある。該FETUAは、マウスにおいて、UniProt番号P29699のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0056】
MNDA(myeloid cell nuclear differentiation antigen)は、顆粒球・単核球系細胞の核から検出される蛋白質である。MNDAは、PYHIN3とも呼ばれる。該MNDAは、ヒトにおいて、UniProt番号P41218のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0057】
MMP9(matrix metalloproteinase-9)は、細胞外基質の分解と係わる亜鉛・金属蛋白質分解酵素のうち一つである。MMP9は、CLG4B、GELB、MANDP2、MMP-9、92 kDa type IV collagenase、92 kDagelatinaseまたはgelatinase Bとも呼ばれる。該MMP9はヒトにおいて、UniProt番号P14780のアミノ酸配列を含むものでもある。該MMP9は、マウスにおいて、UniProt番号P41245のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0058】
NGAL(neutrophil gelatinase-associated lipocalin)は、先天性免疫に係わる蛋白質である。NGALは、LCN2、24p3、MSFI、p25またはlipocalin 2とも呼ばれる。該NGALは、ヒトにおいて、UniProt番号P80188のアミノ酸配列を含むものでもある。該NGALは、マウスにおいて、UniProt番号P11672のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0059】
DOPD(D-dopachrome decarboxylase)は、D-ドーパクロムを5,6-ジヒドロキシインドール(DHI:dihydroxyindole)で脱カルボキシ化させる酵素である。DOPDは、phenylpyruvate tautomerase IIとも呼ばれる。該DOPDは、ヒトにおいて、UniProt番号P30046のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0060】
MMP8(neutrophil collagenase)は、纎維性I型,II型及びIII型コラーゲンを分解することができる酵素である。MMP8は、MMP-8(matrix metalloproteinase-8)またはPMNL-CL(PMNL-CL)とも呼ばれる。該MMP8は、ヒトにおいて、UniProt番号P22894のアミノ酸配列を含むものでもある。該MMP8は、マウスにおいて、UniProt番号O70138のアミノ酸配列を含むものでもある。
【0061】
他の様態は、NUCB2、PDCD6IP、PTGR1、FAM3D、ZG16B、A1AT、ANT3、ATPA、HRG、H15、H2B1L、IGG1、PCBP1及びPTPRJからなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベル、あるいは蛋白質またはその断片の発現レベルを測定する製剤を含む口腔乾燥症診断用キットを提供する。
【0062】
NUCB2、PDCD6IP、PTGR1、FAM3D、ZG16B、A1AT、ANT3、ATPA、HRG、H15、H2B1L、IGG1、PCBP1、PTPRJ及び口腔乾燥症は、前述の通りである。
【0063】
前記キットは、口腔乾燥症診断に必要な試料をさらに含んでもよい。前記キットは、固体支持体、抗体または抗原結合断片の免疫学的検出のために、基質、適する緩衝溶液、発色酵素、蛍光物質で標識された二次抗体、または発色基質を含んでもよい。前記キットは、核酸検出のために、重合酵素、緩衝剤、核酸、補酵素(coenzyme)、蛍光物質、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。前記重合酵素は、例えば、Taq重合酵素である。
【0064】
前記キットは、KV108、GSLG1、FAM3B、MUC21、RB11A、LYSC、CALL3、A1BG、A1AG1、CALR、PLMN、ECM1、ANXA6、WDR1、ILEU、FETUA、MNDA、MMP9、NGAL、DOPD及びMMP8からなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベル、あるいは蛋白質またはその断片の発現レベルを測定する製剤をさらに含んでもよい。
【0065】
他の様態は、口腔乾燥症が疑われる個体から分離された唾液試料において、NUCB2、PDCD6IP、PTGR1、FAM3D、ZG16B、A1AT、ANT3、ATPA、HRG、H15、H2B1L、IGG1、PCBP1及びPTPRJからなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベル、あるいは蛋白質またはその断片の発現レベルを測定する段階と、前記測定された発現レベルを、正常対照群の発現レベルと比較する段階と、前述のNUCB2、PDCD6IP、PTGR1、FAM3D及びZG16Bからなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベルが、正常対照群の発現レベルと比較して低下するか、あるいは前述のA1AT、ANT3、ATPA、HRG、H15、H2B1L、IGG1、PCBP1及びPTPRJからなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベルが、正常対照群の発現レベルと比較して上昇した場合、口腔乾燥症と決定する段階と、を含む、口腔乾燥症の診断に必要な情報を提供するためにバイオマーカーを検出する方法を提供する。
【0066】
NUCB2、PDCD6IP、PTGR1、FAM3D、ZG16B、A1AT、ANT3、ATPA、HRG、H15、H2B1L、IGG1、PCBP1、PTPRJ及び口腔乾燥症は、前述の通りである。
【0067】
前記方法は、口腔乾燥症が疑われる個体から分離された唾液試料において、NUCB2、PDCD6IP、PTGR1、FAM3D、ZG16B、A1AT、ANT3、ATPA、HRG、H15、H2B1L、IGG1、PCBP1及びPTPRJからなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベル、あるいは蛋白質またはその断片の発現レベルを測定する段階を含む。
【0068】
前記個体は、哺乳動物、例えば、ヒト、牛、馬、豚、犬、羊、山羊または猫でもある。前記個体は、口腔乾燥症障害を病んでいるか、あるいは口腔乾燥症にかかっていると疑われる個体でもある。
【0069】
前記唾液試料は、前記個体から得られた唾液試料を言う。前記唾液試料は、遠心分離、濾過などの前処理を経た試料でもある。前記唾液試料は、唾液試料から得られた蛋白質試料または核酸試料を含む。
【0070】
前記測定する段階は、前記唾液試料と、前記蛋白質またはその断片に特異的に結合する抗体、その抗原結合断片またはアプタマーと、をインキュベーションさせるか、あるいは前記遺伝子をコーディングするポリヌクレオチドと同一であるか、またはそれに相補的なポリヌクレオチドをインキュベーションさせる段階を含んでもよい。
【0071】
前記測定する段階は、電気泳動、免疫ブロッティング、酵素結合免疫吸着分析法(ELISA:enzyme-linked immunosorbent assay)、重合酵素連鎖反応、ノーザンブロッティング(northern blotting)、ポリメラーゼ増幅反応(PCR:polymerase chain reaction)、蛋白質チップ、免疫沈降、マイクロアレイ、電子顕微鏡法(electron microscopy)、またはそれらの組み合わせによっても遂行される。前記電気泳動は、SDS-PAGE、等電点電気泳動、二次元電気泳動、またはそれらの組み合わせでもある。
【0072】
前記方法は、測定された発現レベルを、正常対照群の発現レベルと比較する段階を含む。
【0073】
前記方法は、NUCB2、PDCD6IP、PTGR1、FAM3D及びZG16Bからなる群のうちから選択されたいずれか1つの発現レベルが、正常対照群の発現レベルと比較して低下したか否かということを確認する段階を含んでもよい。前記正常対照群は、口腔乾燥症かかっていない群であり、陰性対照群を意味する。前記方法において、測定された唾液試料において、NUCB2、PDCD6IP、PTGR1、FAM3D及びZG16Bからなる群のうちから選択されたいずれか1つの発現レベルの程度が、正常対照群の発現レベルに比べて低下し、例えば、前記検出されたバイオマーカーの量が、正常対照群の量より少ない場合、前記個体は、口腔乾燥症にかかっているか、あるいはかかる確率が高いとも診断される。
【0074】
前記方法は、A1AT、ANT3、ATPA、HRG、H15、H2B1L、IGG1、PCBP1及びPTPRJからなる群のうちから選択されたいずれか1つの発現レベルが、正常対照群の発現レベルと比較して上昇したか否かということを確認する段階を含んでもよい。前記正常対照群は、口腔乾燥症かかっていない群であり、陰性対照群を意味する。前記方法において、測定された唾液試料において、A1AT、ANT3、ATPA、HRG、H15、H2B1L、IGG1、PCBP1及びPTPRJからなる群のうちから選択されたいずれか1つの発現レベルの程度が、正常対照群の発現レベルに比べて上昇し、例えば、前記検出されたバイオマーカーの量が、正常対照群の量より多い場合、前記個体は、口腔乾燥症にかかっているか、あるいはかかる確率が高いとも診断される。
【0075】
口腔乾燥症と診断された個体に、口腔管理、薬物投与調節、唾液代替剤投与、口腔保湿剤投与、口腔の電気刺激、または針などの治療を施すことができる。
【0076】
前記方法は、KV108、GSLG1、FAM3B、MUC21、RB11A、LYSC、CALL3、A1BG、A1AG1、CALR、PLMN、ECM1、ANXA6、WDR1、ILEU、FETUA、MNDA、MMP9、NGAL、DOPD及びMMP8からなる群のうちから選択された遺伝子の発現レベル、あるいは蛋白質またはその断片の発現レベルを測定する段階をさらに含んでもよい。
【実施例】
【0077】
以下、実施例を介し、さらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、1以上の具体例について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0078】
〔実施例1.口腔乾燥症患者の唾液試料において差等発現されたバイオマーカーの確認〕
〔1.口腔乾燥症患者の唾液試料の準備〕
漢陽大学校から、正常対照群(n=3)と、口腔乾燥症と診断された患者とからの唾液試料を収集した。該口腔乾燥症は、唾液腺分泌と口腔粘膜状態とに対する臨床検査、及び唾液腺スキャンにより、唾液腺機能に対する評価によって診断した。該唾液腺機能は、唾液腺組織検査を施し、唾液腺組織の状態と、唾液腺実質周辺におけるリンパ球の浸透いかんとにより、スコア1ないしスコア5に分類した。スコア1、スコア2、及びスコア3ないし5の3群に分類し、唾液サンプリングを行った。
【0079】
唾液試料の蛋白質の分解または変形を防ぐために、血清を得た直後に得られた唾液試料に、蛋白質分解酵素阻害剤として、cOmplete、Mini EDTA-freeプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)、及びホスファターゼ阻害剤として、PhosSTOP(Roche)を添加した。 該阻害剤を添加した唾液試料を定量した後、実験に使用するまで、-80℃で保管した。
【0080】
〔2.唾液試料の濃縮及び定量〕
4個グループの総12個の唾液試料を、3k遠心分離フィルタ(Amicon Ultra,Millipore)を使用して濃縮した。3k遠心分離フィルタに、400μlの水(HPLC等級、J.T Baker)を2回加え、400μlの0.1%(w/v)SDSが含まれた10mMTris緩衝液(pH8.0)を2回加えてフィルタを準備した。
【0081】
唾液試料を0.1%(w/v)SDSが含まれた10mM Tris緩衝液で2倍に希釈し、ボルテキシング(vortexing)して沈殿物を除去した。希釈された試料を、準備されたフィルタに加えた後、14,000x gの速度で、10℃で約10分間遠心分離し、試料を濃縮した。その後、試料が含まれたフィルタを、0.05%(w/v)SDSが含まれた10mM Tris緩衝液で5回洗浄した。新たなチューブに、洗浄後の濃縮された試料が含まれたフィルタを裏返しにして挿入した後、3,000x gの速度で、10℃で約2分間遠心分離し、濃縮された試料を回収(recovery)した。
【0082】
回収された試料は、ビシンコニン酸(BCA:bicinchoninic acid)分析法で定量した。
【0083】
〔3.質量分析のための試料の準備及びゲル内分解(in-gel digestion)〕
プロテオーム分析のために、2.で得られた4個のグループの12個の個別試料55μgを、NuPAGEゲル(4%ないし12%のBis-Trisゲル、Invitrogen,Carlsbad,CA、米国)を使用し、分子量によって分離した。該ゲルを、クマシーブリリアントブルー(Coomassie Brillant Blue R-250)で染色した(
図1)。12個の個別試料に対して染色されたゲルを、12個の切片(slice)で分け、それぞれのゲル切片をマイクロ遠心分離チューブに移した。それぞれのゲル切片に含まれた蛋白質に対し、56℃で二硫化結合を還元させた後、25℃の暗い環境でアルキル化させ、トリプシンで一晩分解させた。次に、67%(v/v)のアセトニトリル(ACN:acetonitrile)/5%(v/v)のギ酸(FA:formic acid)(Wako Pure Chemicals、大阪、日本)溶液でペプチドを抽出した。抽出されたペプチドは、Speedvacで乾燥させた後、20μlの0.4%(v/v)酢酸に溶解させた。
【0084】
〔4.質量スペクトラム分析〕
0.4%酢酸に再懸濁した 3.で得たそれぞれの試料10μlを、Eksigent MDLCシステム(Eksigent Technologies, Dublin,CA、米国)上において、逆相Magic C18AQカラム(15cmX75μm)に注入した。前記カラムを、95%の緩衝液A(0.1%(v/v)のギ酸を含む100%(v/v)の水)と5%の緩衝液B(0.1%(v/v)のギ酸を含む100%(v/v)のACN)とを混合した緩衝液で平衡化させた。作業流速は、次の勾配条件において、0.35μl/分(min)にした:
0分ないし5分において、0-8%緩衝液B;5分ないし85分において、8-30%緩衝液B;85分ないし90分において、30-70%緩衝液B;90分ないし95分において、70%緩衝液B;95分ないし100分において、70-2%緩衝液B;並びに100分ないし110分において、2%緩衝液B
ナノHPLCシステムを、LTQ XL-Orbitrap質量スペクトロメーター(Thermo Scientific,San Jose,CA、米国)に装着させた。噴霧電圧(spray voltage)は、2.5kVに設定し、加熱された毛細管の温度は、250℃に設定した。調査全体スキャンMSスペクトラ(Survey full-scan MS spectra)(300ないし1,800m/z)を、1マイクロスキャン(microscan)及び60,000の解像度(resolution)で得て、先導物質(precursor)を選別し、電荷状態測定のためのプレビューモードを設定した。プレビューの調査スキャンから、10個の最も強力なイオンに係わるMS/MSスペクトラを、下記のようなオプションで、全体スキャンに係わるイオントラップから得た:分離間隔(isolation width) 2m/z(質量対電荷);標準化された衝突エネルギー(collision energy) 35%;動的排除時間(dynamic exclusion duration) 360秒(sec)。+1電荷、及び電荷状態が定まっていない先導物質は、データ従属的に(data-dependent)得られる間に廃棄した。
【0085】
それぞれのLC-MS/MSファイルを、MaxQunat1.5.8.3のAndromedaアルゴリズムを利用して分析した。MSデータ及びMS/MSデータをSwissProtヒトデータベース(2019年1月)と比較調査した。該調査は、2つの未切断(missed cleavages)トリプシン分解されたペプチド(tryptic peptide)を許容すると制限した。システイン(cysteine)のカルボアミドメチル化(carboamidomethylation)を、固定された修飾化(+57.021Da)に設定し、メチオニン酸化を、流動型修飾化(+15.995Da)に設定した。質量許容範囲(mass tolerance)をMS/MSデータについて0.5Daに設定し、MSデータについて15ppmで設定した。デコイ(decoy)データベース調査のために、0.01の厳格な誤謬発見比率(FDR:false discovery rate)と、0.05の緩和されたFDRとのどちらの2つの目標数値も適用した。全ての蛋白質は、2個以上の一致するペプチドを利用して同定した。
【0086】
〔5.ラベルフリー(label-free)定量分析〕
正常対照群と口腔乾燥症患者群との3個のグループから、唾液試料をそれぞれ3個ずつ収集した総12個のサンプルに存在する蛋白質の相対的な存在量を、ラベルフリー定量強度分析法(LFQ強度(label-free quantification intensity)に基づいて算出した。MaxQunat1.5.8.3を使用してLFQ強度を抽出した。次に、それぞれの蛋白質に係わるLFQ強度を、Perseusを利用し、相対的な定量分析を行った。蛋白質が存在しないか、あるいは検出限界以下である場合にも、零点(null)数値を補償した。正常対照群と、口腔乾燥症による患者群とのグループ間の倍数差を計算するために、正規分布(normal distribution)において、広さ0.3から1.8ほどをダウンシフトし、欠測値(missingvalue)を充填した。統計的な有意性は、正常対照群と、口腔乾燥症による患者群との3個の個別試料でもって、ANOVA検定から得たLFQ強度について行い、p値が0.05未満である場合、統計的に有意であると見なした。
【0087】
〔6.口腔乾燥症による患者群と係わる唾液蛋白質の同定、及び差等発現された蛋白質の確認〕
LFQ強度分析から、正常対照群と、口腔乾燥症によるグループとの12個の個別試料において、総703種の蛋白質を同定した。同定された蛋白質のうち、p値が0.05未満である蛋白質51種を確認した。同定された蛋白質と、p値が0.05未満と、統計的に有意な蛋白質とを分析し、個数をベン図式で示した結果を
図2に示した。
【0088】
また、p値が0.05未満と、統計的に有意な蛋白質を表1に示した。
【0089】
【0090】
p値が0.05未満と、統計的に有意な蛋白質のうち、正常対照群に比べて発現レベルが低下する蛋白質を表2に示した。
【0091】
【0092】
表2に記載された蛋白質の正常対照群と口腔乾燥症患者群とのスコアによる発現レベルを、
図3Aないし
図3Eに示した(N:正常対照群、S1:スコア1、S2:スコア2、S345:スコア3以上)。
【0093】
図3Aないし
図3Eから分かるように、Nucleobindin-2、Programmed cell death 6-interacting protein、Prostaglandin reductase 1、protein FAM3D及びZymogen granule protein 16 homolog Bは、口腔乾燥症において、有意に発現レベルが低下し、口腔乾燥症のスコアにより、発現レベルが異なるということを確認した。
【0094】
次に、p値が0.05未満と、統計的に有意な蛋白質のうち、正常対照群に比べて発現手順が2倍以上増加する蛋白質を表3に示した。
【0095】
【0096】
表3に記載された蛋白質の正常対照群と口腔乾燥症患者群とのスコアによる発現レベルを、
図4Aないし
図4Iに示した(N:正常対照群、S1:スコア1、S2:スコア2、S345:スコア3以上)。
【0097】
図4Aないし
図4Iから分かるように、A1AT、ANT3、ATPA、HRG、H15、H2B1L、IGG1、PCBP1及びPTPRJは、口腔乾燥症において、有意に発現レベルが上昇し、口腔乾燥症のスコアにより、発現レベルが異なるということを確認した。