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特許7384370住宅用の鉄筋コンクリート製躯体、住宅用の鉄筋コンクリート製躯体の設計方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】住宅用の鉄筋コンクリート製躯体、住宅用の鉄筋コンクリート製躯体の設計方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/20 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
E04B1/20 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023562255
(86)(22)【出願日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 JP2023030200
【審査請求日】2023-10-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523381893
【氏名又は名称】株式会社タイング
(74)【代理人】
【識別番号】100108604
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 義人
(72)【発明者】
【氏名】小澤 昇
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特公昭58-016410(JP,B2)
【文献】特開平09-041669(JP,A)
【文献】特開2000-257169(JP,A)
【文献】特開2008-217631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/02 - 1/04
E04B 1/16 - 1/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間口方向に伸びる所定の長さの仮想の線分である間口線分と、前記間口線分の一端から前記間口線分と垂直な方向に伸びる所定の長さの仮想の線分である奥行線分とによって規定される平面視矩形の範囲である矩形範囲の前記奥行線分に平行な2辺上の少なくとも両端と、所定の長さである第1長さより長い場合における前記奥行線分に平行な2辺を前記第1長さ以下の長さに均等に区切る前記2辺上の位置である奥行区分位置と、に対として立てられるとともに、所定の長さである第2長さより長い場合における前記間口線分を前記第2長さ以下に均等に区切る前記間口線分上の位置である間口区分位置から前記奥行線分に平行に伸びる前記奥行線分と同じ長さの仮想の線分である補助線分の両端と、前記補助線分上の前記奥行区分位置に対応する位置とに立てられた、所定の長さである第3長さ以下の長さの鉛直な長尺材である複数の柱と、
前記柱のうち、前記間口線分に平行で且つ隣接する位置にあるもの2本のすべての上下の両端部を、前記間口線分と平行な方向で水平に繋ぐ長尺材である複数の間口梁、及び前記間口梁のうち地面に接する複数の基礎間口梁と、
前記柱のうち、前記奥行線分に平行で且つ隣接する位置にあるもの2本のすべての上下の両端部を前記奥行線分と平行な方向で水平に繋ぐ長尺材である複数の奥行梁、及び前記奥行梁のうち地面に接する複数の基礎奥行梁と、
前記矩形範囲の前記間口線分に平行な2辺上に位置する前記柱のうち、隣接するもの同士の間を前記間口線分に平行に板状に塞ぐか、又は前記矩形範囲の前記奥行線分に平行な2辺或いは前記補助線分上に位置する前記柱のうち、隣接するもの同士の間を前記奥行線分に平行に板状に塞ぐ複数の壁と、
前記柱の上下の高さ位置において、2本の前記間口梁と2本の前記奥行梁、又は2本の前記基礎間口梁と2本の前記基礎奥行梁とに囲まれる矩形の空間を水平に塞ぐ複数のスラブと、
を備えている、住宅用の鉄筋コンクリート製躯体であって、
前記柱、前記間口梁、前記基礎間口梁、前記奥行梁、及び前記基礎奥行梁のみによって構成されるフレームの構造設計上の強度が十分となるようにされており、
複数の前記柱はすべて、太さと長さ方向の鉄筋の構成が同一であり、
複数の前記間口梁はすべて、太さと長さ方向の鉄筋の構成が同一であり、
複数の前記基礎間口梁はすべて、太さと長さ方向の鉄筋の構成が同一であり、
複数の前記奥行梁はすべて、太さと長さ方向の鉄筋の構成が同一であり、
複数の前記基礎奥行梁はすべて、太さと長さ方向の鉄筋の構成が同一であり、
複数の前記壁はすべて、所定の単位面積あたりの構成が同一であり、
複数の前記スラブはすべて、所定の単位面積あたりの構成が同一である、
鉄筋コンクリート製躯体。
【請求項2】
前記間口線分は、前記第2長さ以下である、
請求項1記載の鉄筋コンクリート製躯体。
【請求項3】
前記間口線分は、前記第2長さ以上であり、
前記補助線分で区切られた隣接する2つの空間は、他の住宅を構成するようになっている、
請求項1記載の鉄筋コンクリート製躯体。
【請求項4】
すべての前記柱の上に、前記第3長さ以下とされ、太さと長さ方向の鉄筋の構成が前記柱と同一とされた新たな柱である延長柱少なくとも1本が、すべての前記柱に対して同数ずつ鉛直方向に延長して接続されているとともに、
前記間口梁、前記奥行梁、前記壁、前記スラブとそれぞれ同じ構成の新たな前記間口梁、前記奥行梁、前記壁、前記スラブの組が、延長された前記1本分の柱毎に設けられていることで、前記住宅が多層階構造となっている、
請求項1記載の鉄筋コンクリート製躯体。
【請求項5】
前記延長柱の長さは、前記柱の長さに等しくされている、
請求項4記載の鉄筋コンクリート製躯体。
【請求項6】
前記柱は、前記間口方向の長さよりも前記奥行方向の長さの方が長い平面視矩形である、
請求項1記載の鉄筋コンクリート製躯体。
【請求項7】
前記間口梁の前記奥行方向の長さである幅は、前記柱の前記奥行方向の長さに等しくされている、
請求項6記載の鉄筋コンクリート製躯体。
【請求項8】
前記奥行梁の前記間口方向の長さである幅は、前記柱の前記間口方向の長さに等しくされている、
請求項6記載の鉄筋コンクリート製躯体。
【請求項9】
間口方向に伸びる所定の長さの仮想の線分である間口線分と、前記間口線分の一端から前記間口線分と垂直な方向に伸びる所定の長さの仮想の線分である奥行線分とによって規定される平面視矩形の範囲である矩形範囲を基準として、
鉛直に立てられた、所定の長さである第3長さ以下の長さの長尺材である、長さを除いて構成が同一とされた柱、複数と、
前記間口線分に平行な仮想の同一の線分の上にある隣接する前記柱2本の上下の両端部を水平に繋ぐ複数の間口梁、及び前記間口梁のうち地面に接する複数の基礎間口梁と、
前記奥行線分に平行な仮想の同一の線分の上にある隣接する前記柱2本の上下の両端部を水平に繋ぐ複数の奥行梁、及び前記奥行梁のうち地面に接する複数の基礎奥行梁と、
前記柱のうち、所定の2本の間を塞ぐ板状の複数の壁と、
前記柱のうち、上下の高さ位置における所定の空間を水平に塞ぐ板状の複数のスラブと、
を組合せることによって構成される住宅用の鉄筋コンクリート製躯体を、前記柱の太さと長さ方向の鉄筋の構成、前記間口梁、前記基礎間口梁、前記奥行梁、及び前記基礎奥行梁それぞれの太さと長さ方向の鉄筋の構成、前記壁、及び前記スラブの単位面積あたりの構成をそれぞれ、前記柱、前記間口梁、前記基礎間口梁、前記奥行梁、及び前記基礎奥行梁のみによって構成されるフレームの構造設計上の強度が十分となる範囲で規格化して決定した上で設計する、鉄筋コンクリート製躯体の設計方法であって、
前記間口線分と、前記奥行線分とのそれぞれの長さを決定する過程、
前記矩形範囲の前記奥行線分に平行な2辺上の少なくとも両端と、所定の長さである第1長さより長い場合における前記奥行線分に平行な前記2辺を前記第1長さ以下の長さに均等に区切る前記2辺上の位置である奥行区分位置と、に対として前記柱を立てるとともに、所定の長さである第2長さより長い場合における前記間口線分を前記第2長さ以下に均等に区切る前記間口線分上の位置である間口区分位置から前記奥行線分に平行に伸びる前記奥行線分と同じ長さの仮想の線分である補助線分の両端と、前記補助線分上の前記奥行区分位置に対応する位置とに規格化された前記柱を立てることを決定する過程と、
前記柱のうち、前記間口線分に平行で且つ隣接する位置にあるもの2本のすべての上下の両端部を規格化された前記間口梁、又は前記基礎間口梁で繋ぐことを決定する過程と、
前記柱のうち、前記奥行線分に平行で且つ隣接する位置にあるもの2本のすべての上下の両端部を規格化された前記奥行梁、又は前記基礎奥行梁で繋ぐことを決定する過程と、
前記矩形範囲の前記間口線分に平行な2辺上に位置する前記柱のうち、隣接するもの同士の間を前記間口線分に平行な規格化された前記壁によって塞ぐこと、及び前記矩形範囲の前記奥行線分に平行な2辺或いは前記補助線分上に位置する前記柱のうち、隣接するもの同士の間を前記奥行線分に平行な規格化された前記壁によって塞ぐことを決定する過程と、
前記柱の上下の高さ位置において、2本の前記間口梁と2本の前記奥行梁、又は2本の前記基礎間口梁と2本の前記基礎奥行梁とに囲まれる平面視矩形の空間を規格化された前記スラブによって塞ぐことを決定する過程と、
を含む、
設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、住宅用の鉄筋コンクリート製躯体と、その設計方法に関する。住宅には、一戸建て住宅、集合住宅のいずれも含む。
【背景技術】
【0002】
日本における住宅の躯体には主に、木造と鉄筋コンクリート製が存在する。近年、意匠性や堅牢性に富む鉄筋コンクリート製躯体を持つ住宅の人気が高まってきている。
【0003】
しかしながら、鉄筋コンクリート製躯体の住宅が木造の躯体の住宅を上回って普及するという状態にはなっていない。その大きな原因は、よく知られているように、鉄筋コンクリート製躯体の住宅を建築するために要する費用が、木造の躯体を持つ住宅の建築に要する費用よりも一般的に遥かに高価であるということにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄筋コンクリート製躯体の住宅を建築するために要する費用が高額となる理由には、鉄筋コンクリート製躯体の住宅を建築するために必要な資材の価格が、木造の躯体の住宅を建築するために必要な資材よりも高額となり易いということがある。
また、他の理由として、鉄筋コンクリート製躯体の住宅を建築するためには、構造設計を含む設計が必要となるところ、その費用は一般的に高価であるということもある。構造設計が高価になるのは一般に、構造設計が複雑であるからである。構造設計とは一般に、建物の土台と骨組みを様々な荷重に耐えられるように安全性能を満たしながら、経済的に設計することを意味する。
例えば、ラーメン構造の建築物の場合には、荷重を支えるのは、それぞれ複数の柱と梁である。多くの場合、建築資材の費用をなるべく低廉なものとするため、柱と梁の構造(例えば、柱や梁の太さや、それらの内部に配される鉄筋の位置、本数)は、柱ごと或いは梁ごとに異なることが殆どであり、むしろ、柱、梁の構造を柱ごと或いは梁ごとに異ならせるという複雑な構造を採用することにより、建築後の建物に求められる安全性能を充足させるということと、建築資材の費用をなるべく低廉にするということとを両立させるというのが通常である。現在では余りにも複雑になり過ぎた構造設計は殆どの場合、コンピュータにインストールされた専用のソフトウエアを用いて行われているが、専用のソフトウエアは上述の如きアプローチで作られている。
【0005】
上述したように、構造設計は極めて複雑である。それにより、別の問題も生じる。構造設計にあたって、構造設計者が行う作業は上述の説明から明らかなように極めて煩雑であり、そのため構造設計自体に要する時間が大きく、また構造設計に要する費用が比較的大きくなってしまうことが多い。例えば、鉄筋コンクリート製躯体の一戸建ての住宅の構造設計ですら、その期間に2ヶ月程度必要であり、50万円から100万円の費用がかかることが常識である。
しかも、構造設計が終わらないと、建築物を建築するために必要な建築資材が確定しないし、建築の工数(これは、建築の際に必要となる労務費に関係する)も確定しないため、建築物を建築するために必要な費用の見積りを行うことができない。そして、構造設計が終了した後に建築物を建築するために必要な費用の見積りが出たとしても、その費用が過大である場合には、施主はコンクリート製躯体の住宅の建築に着手するという決断を行うことができない。
構造設計が終わった後においてもそのようなリスクが存在するため、そもそも高額な費用が必要となる構造設計に着手することにも躊躇する施主が多い。
また、このような構造設計の複雑さは、実際に鉄筋コンクリート製躯体を建築する際の労務費を増大させる。例えば、各柱毎、各梁毎にその構成が異なるのであれば、コンクリート型枠の内部に鉄筋を配する作業は各柱毎、各梁毎に異なるものとなるので、作業の難易度が高くなり、作業効率が落ちたりミスが生じたりする原因にもなる。
このような事情も、コンクリート製躯体の住宅の普及を妨げている。
【0006】
少なくとも構造設計を簡単にすることができれば、例えばそれにより構造設計の費用を抑制することができれば、コンクリート製躯体の住宅の普及を妨げている上述の課題の一部が解決される可能性がある。
しかしながら、構造設計が「構造設計とは一般に、建物の土台と骨組みを様々な荷重に耐えられるように安全性能を満たしながら、経済的に設計する」という目的を持つものであり、「柱、梁の構造を柱ごと或いは梁ごとに異ならせるという複雑な構造を採用することにより、建築後の建物に求められる安全性能を充足させるということと、建築資材の費用をなるべく低廉にするということとを両立させる」というのがその目的を達成するための正しいアプローチであると信じられている現状では、構造設計を簡単にするという発想自体が存在していない。したがって、構造設計を安価に行えるようにするための現実的な手段は少なくとも現時点では提案されていない。
【0007】
本願発明は、構造設計を簡単なものにすることにより、構造設計を短期間で安価にすることを可能とする技術であり、場合によっては住宅を建築するために必要な費用をも安価にすることのできる技術を提案することをその課題とする。その技術は、もっぱら、住宅用の鉄筋コンクリート製躯体、或いは設計方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために本願出願人が提案する発明について、まず概説する。
従来の構造設計は既に述べたように複雑である。構造設計が複雑になるのは、例えば、ラーメン構造の構成要素である、柱、梁等に、必要最低限の強度しか与えないことにより、柱、梁によって与えられる建物或いは住宅の強度を確保することと、建築資材の費用を最小限に抑えることとを両立しようとするためである。柱、梁に必要最低限の強度しか与えないようにするため、鉄筋コンクリート製躯体中の異なる位置にある柱や梁にそれぞれ異なる構成を与えることが必要となり、その結果、構造設計が複雑なものとなる。建築物において、それぞれの柱の太さやその内部に含まれる鉄筋の数が異なることが普通であり、また、同一の柱の柱の高さ位置ごとに柱の太さや鉄筋の数が異なることも良くある。
他方、建物或いは住宅における荷重を柱と梁で支えるラーメン構造において最も単純な形状は、フレームを直方体形状とした場合である。直方体形状のフレームには、いずれも水平で互いに直交するx方向とy方向とに4本ずつそれぞれ伸びる梁と、鉛直なz方向に4本伸びる柱とが含まれる。
そのような直方体形状のフレームのうち、所定の形状であるものを基準となるフレームである基準フレームとして定め、そして、その基準フレームをx方向、y方向、z方向に連ねていく(或いは、配列していく)ことによって、直方体形状の新たなフレームを構築することを考える。隣接する基準フレームのうち、互いに重なり合う柱同士、梁同士は、一本にまとめることとする。それにより、ある程度の自由度をもって、直方体形状のフレームを構築することが可能となる。
次に、基準フレームを連結することによって作られる直方体形状のフレームに、壁とスラブを加えて鉄筋コンクリート製躯体を得る場合について考える。ただし、上述の基準フレームをz方向のみ20段積み重ねて新たなフレームを構築するようなある意味非常識なフレームについては考えない。そのような非常識ではない、別の言葉でいえば、設計者が予定している範囲での基準フレームの配列を行った場合、例えば、x方向にX個、y方向にY個、z方向にZ個の基準フレームの配列を行った場合であって、その新たなフレームに更に壁とスラブを加えた場合を考える。柱、梁、壁、スラブは、鉄筋コンクリートによって作られる鉄筋コンクリート製躯体の構成要素である。
予定された範囲において基準フレームを積み重ねることによって作られた新たなフレームが、必ずそのフレームを含む鉄筋コンクリート製躯体を有する住宅の荷重を支えることができるように、基準フレームにおける柱と、梁の構成を規格化することが可能である。ただし、梁のうち、最も下の地面に接する梁は基礎を兼ねさせるために、他の梁と異なる規格を与えるようにする。
そうすると、基準フレームを、x方向にX個、y方向にY個、z方向にZ個配列する(ただし、許容されるX、Y、Zの組合せは、設計者等によって事前に決定されている。)ことによって得られる新たなフレームを含む鉄筋コンクリート製躯体は、新たな構造設計或いは構造計算をするまでもなく、その鉄筋コンクリート製躯体を有する住宅の荷重を必ず支えられるものとなる。
とはいえ、この場合には、基準フレームに含まれる柱や梁の構成は、基準フレームを配列して作られた新たなフレームが住宅の荷重を支えるために必要とされる性能以上の性能を備えている場合がままあるであろう。
加えて、規格化された上述の如き柱と梁とを含む基準フレームを、x方向にX個、y方向にY個、z方向にZ個配列する(ただし、上述したように、許容されるX、Y、Zの組合せは、設計者等によって事前に決定されている。)ことによって得られる新たなフレームを含む鉄筋コンクリート製躯体がそれを含む住宅の荷重を必ず支えられることが保証されているのであれば、規格化された柱と梁に準じた柱と梁を備える基準フレームよりも例えばx方向、y方向、z方向の少なくとも1方向において小さくしたフレームである基準フレームに準拠したフレーム(準基準フレーム)を、x方向にX個、y方向にY個、z方向にZ個配列することによって得られる新たなフレームを含む鉄筋コンクリート製躯体もまた、新たな構造設計或いは構造計算をするまでもなく、その鉄筋コンクリート製躯体を有する住宅の荷重を必ず支えられるものとなる。
この場合には、準基準フレームに含まれる柱や梁の構成は、準基準フレームを配列して作られた新たなフレームが住宅の荷重を支えるために必要とされる性能以上の性能を備えている場合が更に頻発するであろう。
しかしながら、柱と梁に以上で説明したような過剰性能を与えることを許容するとともに、住居の形状を直方体形状(後述するように、完全な直方体形状とは限られない。)とするという制限を許容することにすれば、構造設計は極めて簡単になり、構造設計に要する時間も費用も抑制可能となる。
また、従来の設計方法では厳密な構造設計後にしか行うことのできなかった、コンクリート製躯体の建築を行うことに対する見積りも、短時間で行うことのできる構造設計の終了後に即座に行うことができるようになる。
更に、構造設計を簡単なものとする過程で、柱、梁が規格化されたものとなった鉄筋コンクリート製躯体は、実際に鉄筋コンクリート製躯体を建築する際の作業難易度を下げることにより建築の作業効率を向上させることを可能とし、結果として労務費の削減を可能とする場合がある。加えて、規格化された柱毎或いは規格化された梁毎に共通することとなった建築用の資材(例えば鉄筋)の大量購入により資材の仕入れ費用を抑制することも可能となる場合がある。これらを加味すれば、構造設計を簡単なものとした本願発明によれば、簡単な構造設計によって設計される鉄筋コンクリート製躯体を建築するための費用(構造設計から鉄筋コンクリート製躯体を建築するまでのトータルの費用)は、柱や梁に過剰性能を与えることによる費用の増加分を考慮したとしても、従来よりも安くなる場合が多く存在する。
本願発明は、このような考え方によりなされた。
【0009】
本願発明は、以下のような住宅用の鉄筋コンクリート製躯体(以下、単に「鉄筋コンクリート製躯体」という場合もある。)として実現される。
本願発明の鉄筋コンクリート製躯体は、間口方向に伸びる所定の長さの仮想の線分である間口線分と、前記間口線分の一端から前記間口線分と垂直な方向に伸びる所定の長さの仮想の線分である奥行線分とによって規定される平面視矩形の範囲である矩形範囲を基準として構築される。
本願発明による鉄筋コンクリート製躯体は、上述の矩形範囲の前記奥行線分に平行な2辺上の少なくとも両端と、所定の長さである第1長さより長い場合における前記奥行線分に平行な2辺を前記第1長さ以下の長さに均等に区切る前記2辺上の位置である奥行区分位置と、に対として立てられるとともに、所定の長さである第2長さより長い場合における前記間口線分を前記第2長さ以下に均等に区切る前記間口線分上の位置である間口区分位置から前記奥行線分に平行に伸びる前記奥行線分と同じ長さの仮想の線分である補助線分の両端と、前記補助線分上の前記奥行区分位置に対応する位置とに立てられた、所定の長さである第3長さ以下の長さの鉛直な長尺材である複数の柱を有する。
また、本願発明による鉄筋コンクリート製躯体は、前記柱のうち、前記間口線分に平行で且つ隣接する位置にあるもの2本のすべての上下の両端部を、前記間口線分と平行な方向で水平に繋ぐ長尺材である複数の間口梁、及び前記間口梁のうち地面に接する複数の基礎間口梁を有する。
また、前記柱のうち、前記奥行線分に平行で且つ隣接する位置にあるもの2本のすべての上下の両端部を前記奥行線分と平行な方向で水平に繋ぐ長尺材である複数の奥行梁、及び前記奥行梁のうち地面に接する複数の基礎奥行梁を有する。
また、本願発明による鉄筋コンクリート製躯体は、前記矩形範囲の前記間口線分に平行な2辺上に位置する前記柱のうち、隣接するもの同士の間を前記間口線分に平行に板状に塞ぐか、又は前記矩形範囲の前記奥行線分に平行な2辺或いは前記補助線分上に位置する前記柱のうち、隣接するもの同士の間を前記奥行線分に平行に板状に塞ぐ複数の壁を有する。
また、本願発明による鉄筋コンクリート製躯体は、前記柱の上下の高さ位置において、2本の前記間口梁と2本の前記奥行梁、又は2本の前記基礎間口梁と2本の前記基礎奥行梁とに囲まれる矩形の空間を水平に塞ぐ複数のスラブを有する。
そして、前記柱、前記間口梁、前記基礎間口梁、前記奥行梁、及び前記基礎奥行梁のみによって構成されるフレームの構造設計上の強度が十分となるようにされている。
また、本願発明における住宅用の鉄筋コンクリート製躯体における複数の前記柱はすべて、太さと長さ方向の鉄筋の構成が同一であり、複数の前記間口梁はすべて、太さと長さ方向の鉄筋の構成が同一であり、複数の前記基礎間口梁はすべて、太さと長さ方向の鉄筋の構成が同一であり、複数の前記奥行梁はすべて、太さと長さ方向の鉄筋の構成が同一であり、複数の前記基礎奥行梁はすべて、太さと長さ方向の鉄筋の構成が同一であり、複数の前記壁はすべて、所定の単位面積あたりの構成が同一であり、複数の前記スラブはすべて、所定の単位面積あたりの構成が同一である。
【0010】
本願発明による鉄筋コンクリート製躯体は、矩形範囲を基準として構築される。矩形範囲は、平面視矩形の範囲である。矩形範囲は、平面視した場合に互いに直交する2つの線分によってその平面形状を規定される。2つの線分の一方は間口線分であり、他方が奥行線分である。なお、最終的に構築された住宅の間口線分に対応する部分がその住宅の間口に相当するとは限らず、奥行線分についても同様である。
鉄筋コンクリート製躯体は、上述した基準フレームに相当する直方体形状のフレームを縦横高さ方向に少なくとも1つ配列することによって構築されたフレームを有している。フレームを構築するのは、柱と、間口梁と、奥行梁である。それらはいずれも複数であり、少なくとも4本ずつである。なお、間口梁のうち地面に接するものは基礎間口梁であり、奥行梁のうち地面に接するものは基礎奥行梁である。基礎間口梁と基礎奥行梁は、基礎を兼ねる。
柱は、上述の矩形範囲の奥行線分に平行な2辺上の少なくとも両端に立設される。言い換えれば、柱は、矩形範囲の4隅に必ず立てられる。柱は、また、奥行線分が所定の長さである第1長さより長い場合には、奥行線分に平行な2辺を第1長さ以下の長さに均等に区切る当該2辺上の位置である奥行区分位置にも立てられる。柱は、また、間口線分が所定の長さである第2長さより長い場合には、間口線分を第2長さ以下の長さに均等に区切る間口線分上の位置である間口区分位置から奥行線分に平行に伸びる奥行線分と同じ長さの仮想の線分である補助線分を想定した場合における、補助線分の両端と、奥行線分上に奥行区分位置が存在する場合における奥行区分位置に対応する位置とにも立てられる。柱は鉛直であり、また、その長さは所定の長さである第3長さ以下である。
間口梁と、基礎間口梁とは以下のようなものとされる。間口梁は、柱のうち、間口線分に平行で且つ隣接する位置にあるもの2本のすべての上下の両端部を、間口線分と平行な方向で水平に繋ぐ。間口梁は、長尺材である。間口梁のうち地面に接するものが基礎間口梁である。上述したように、間口梁が張り渡される間口線分に平行な直線上に位置する隣接する2本の柱の間隔は第2長さ以下であるのだから、間口梁(と基礎間口梁)の長さは必ず第2長さ以下となる。
奥行梁と、基礎奥行梁とは以下のようなものとされる。奥行梁は、柱のうち、奥行線分に平行で且つ隣接する位置にあるもの2本のすべての上下の両端部を奥行線分と平行な方向で水平に繋ぐ長尺材である。奥行梁のうち地面に接するものが基礎奥行梁である。上述したように、奥行梁が張り渡される奥行線分に平行な直線上に位置する隣接する2本の柱の間隔は第1長さ以下であるのだから、奥行梁(と基礎奥行梁)の長さは必ず第1長さ以下となる。
壁は複数であり、矩形範囲の間口線分に平行な2辺上に位置する柱のうち、隣接するもの同士の間を間口線分に平行に板状に塞ぐか、又は矩形範囲の奥行線分に平行な2辺或いは補助線分上に位置する柱のうち、隣接するもの同士の間を奥行線分に平行に板状に塞ぐ。
スラブは、複数であり、柱の上下の高さ位置において、2本の間口梁と2本の奥行梁、又は2本の基礎間口梁と2本の基礎間口梁とに囲まれる矩形の空間を水平に塞ぐ。スラブは、屋上、或いは床を構成する。
加えて、複数の柱はすべて、太さと長さ方向の鉄筋の構成が同一であり、複数の間口梁はすべて、太さと長さ方向の鉄筋の構成が同一であり、複数の基礎間口梁はすべて、太さと長さ方向の鉄筋の構成が同一であり、複数の奥行梁はすべて、太さと長さ方向の鉄筋の構成が同一であり、複数の前記基礎奥行梁はすべて、太さと長さ方向の鉄筋の構成が同一である。つまり、柱、間口梁(及び基礎間口梁)、奥行梁(及び基礎奥行梁)はすべて、規格化されている。その規格化は、柱、間口梁、基礎間口梁、奥行梁、及び基礎奥行梁のみによって構成されるフレームの構造設計上の強度が十分となるように設計されている。
この鉄筋コンクリート製躯体は、フレームによって荷重に耐える構成を採用している。つまり、壁とスラブは、荷重を担う機能を有する必要がない。言い換えれば、本願の鉄筋コンクリート製躯体は、いわゆるラーメン構造を採用したものとなっている。
フレームは、4本の柱と、4本の間口梁(又は2本の間口梁と2本の基礎間口梁)、4本の奥行梁(又は2本の奥行梁と2本の基礎奥行梁)で構成される、上述の本願発明の概説で説明した基準フレームを、x方向(例えば間口線分方向)、y方向(例えば奥行線分方向)に配列したものとなる。また、既に述べたように、柱の長さは第3長さ以下であり、間口梁(及び基礎間口梁)の長さは第2長さ以下であり、奥行梁(及び基礎奥行梁)の長さは第1長さ以下となる。
ここで、柱、間口梁(及び基礎間口梁)、奥行梁(及び基礎奥行梁)はそれぞれ、太さと長さ方向の鉄筋の構成が規格化されている。この規格化は、柱、間口梁、基礎間口梁、奥行梁、及び基礎奥行梁のみによって構成されるフレームの構造設計上の強度が十分となるように設計されている。そのような規格化された柱、間口梁(及び基礎間口梁)、及び奥行梁(及び基礎奥行梁)がそれぞれ満たすべき条件は、本願発明の概説で説明した基準フレームを、x、y、z方向の長さがそれぞれ、第1長さ(最長の奥行梁又は基礎奥行梁の長さ)、第2長さ(最長の間口梁又は基礎間口梁の長さ)、第3長さ(最長の柱の長さ)とした場合において、その基準フレームを、x、y、z方向にX、Y、Z個(ただし、許容されるX、Y、Zの組合せは、設計者等によって事前に決定されている。)配列することによって得られるフレームを含む鉄筋コンクリート製躯体が、そのフレームによって鉄筋コンクリート製躯体全体の荷重を支えることができるようにするための条件として、容易に求めることができる。
本願の鉄筋コンクリート製躯体に含まれることになるフレームは、上述したような基準フレームを、x、y方向、或いはx、y、z方向に配列したものとなるか、或いは上述したような基準フレームよりもx、y、z方向の少なくとも1方向の長さが短くされた基準フレームをx、y方向、或いはx、y、z方向に配列したものとなる。いずれの場合においても、そのようなフレームを含む鉄筋コンクリート製躯体は、それに含まれるフレームのみによって、新たな構造設計を行うまでもなく、鉄筋コンクリート製躯体全体の荷重に耐えられるものとなる。
したがって、本願の鉄筋コンクリート製躯体は、その構造設計が簡単となり、構造設計に要する時間も費用も抑制可能となる。また、このような鉄筋コンクリート製躯体は、短時間で行うことのできる構造設計後速やかに見積を行うことができることになる。
加えて、柱、間口梁及び基礎間口梁、奥行梁と基礎奥行梁のそれぞれを規格化してそれぞれ、長さを除いて同一構造とするとともに、壁やスラブの構造も規格化することにより、鉄筋コンクリート製躯体の構築時において必要となる、コンクリートを流し込むための型枠を組む作業や、型枠の中に鉄筋を配する配筋の作業を画一的なものとすることが可能となる。これは、上述した鉄筋コンクリート製躯体を有する住宅を建築するための作業を容易にするものであり、鉄筋コンクリート製躯体を建築するための費用の抑制に繋がる。
また、柱、間口梁及び基礎間口梁、奥行梁と基礎奥行梁のそれぞれを規格化してそれぞれ、長さを除いて同一構造とするとともに、壁やスラブの構造も規格化するということを、1つの鉄筋コンクリート製躯体についてではなく、多数の鉄筋コンクリート製躯体について行うことにより、例えば、鉄筋コンクリート製躯体を建築するときに柱等の中に入れることが必要となる鉄筋の種類を最小限とすることも可能である。そうすると、建築資材の小品種大量仕入れが可能となるため、本願の鉄筋コンクリート製躯体を建築するために必要となる建築資材の仕入れコストを抑制することも可能となる。
【0011】
前記間口線分は、第2長さ以下である場合がある。
その場合、上述した矩形範囲の中に補助線分が存在しないことになり、柱は、矩形範囲を囲む辺の上のみに存在することになる。そのような鉄筋コンクリート製躯体は、一戸建ての住居に向いたものとなる。
他方、前記間口線分は、前記第2長さ以下の場合がある。この場合、前記補助線分で区切られた隣接する2つの空間は、他の住宅を構成するようになっていてもよい。
その場合、上述した矩形範囲の中には、少なくとも一本の補助線分が存在することになり、柱は、矩形範囲を囲む辺の上のみならず、補助線分の両端部と、場合によっては補助線分の途中に存在することになる。その場合においては、矩形範囲は、補助線分上に設けられる壁によって区切られることになる。そのような鉄筋コンクリート製躯体は、アパート、マンションその他の集合住宅に向いたものとなる。
なお、上述したように、本願発明による鉄筋コンクリート製躯体では、柱、間口梁及び基礎間口梁、奥行梁と基礎奥行梁のそれぞれの構造と、壁やスラブの構造も規格化する。規格化された柱、間口梁及び基礎間口梁、奥行梁と基礎奥行梁、壁、スラブのセットを、一戸建て住宅を意図した鉄筋コンクリート製躯体用に一セット、集合住宅を意図した鉄筋コンクリート製躯体用に一セット、互いに異なるものとして予め準備して置くこともできる。
なお、第1長さ、第2長さ、第3長さのセットも、戸建住宅用と集合住宅用とで、異なるセットを準備しておいても良い。
【0012】
本願発明による鉄筋コンクリート製躯体では、すべての前記柱の上に、前記第3長さ以下とされ、太さと長さ方向の鉄筋の構成が前記柱と同一とされた新たな柱である延長柱少なくとも1本が、すべての前記柱に対して同数ずつ鉛直方向に延長して接続されていてもよい。この場合、前記間口梁、前記奥行梁、前記壁、前記スラブとそれぞれ同じ構成の新たな前記間口梁、前記奥行梁、前記壁、前記スラブの組が、延長された前記1本分の柱毎に設けられていることで、前記住宅が多層階構造となっていてもよい。
このように鉄筋コンクリート製躯体は、一戸建て用、集合住宅用の別を問わず、多層階の住宅用のものとすることができる。
この場合、延長柱は、柱と同様に規格化されたものとなる。また、延長柱の長さは、柱と同様に第3長さ以下の長さとされる。したがって、多層階に対応した鉄筋コンクリート製躯体であっても、本願発明の概説で述べた理由により、従来よりも簡単な構造設計により設計された鉄筋コンクリート製躯体であっても、それに含まれるフレームにより鉄筋コンクリート製躯体全体の荷重に耐えられることが保証される。
延長柱の長さは、1階の柱の長さと等しくても良い。そうすると、延長柱と柱は、長さも含めて同じ構成となり、多層階に対応した鉄筋コンクリート製躯体における各階の階高は同じとなる。これは、鉄筋コンクリート製躯体の構造設計をより単純化することにも寄与するし、また、型枠の設置や配筋の作業をより画一化することにも寄与する。
【0013】
本願発明の鉄筋コンクリート製躯体における柱は、太さと長さ方向の鉄筋の構成が同一とされ、規格化される。柱は、その全長において同じ太さで同じ断面形状を持つものとされる。
前記柱は、例えば、前記間口方向の長さよりも前記奥行方向の長さの方が長い平面視矩形とすることができる。そうすることにより、柱に、壁の一部を担わせることが可能となるとともに、鉄筋コンクリート製躯体の荷重に耐える性能を柱に与えやすくなる。
柱の形状が上述したような平面視矩形の場合、前記間口梁の前記奥行方向の長さである幅は、前記柱の前記奥行方向の長さに等しくされていてもよい。基礎間口梁も同様とすることができる。そうすることにより、間口梁(と基礎間口梁)の幅を柱に接続可能な範囲で最大とすることができるため、間口梁(と基礎間口梁)による、鉄筋コンクリート製躯体の荷重を支える効果を最大化できることになるとともに、柱と、間口梁(と基礎間口梁)との接続部分の美観をすっきりしたものとすることができるようになる。また、間口梁(と基礎間口梁)と柱との接合を強固なものとするためには、間口梁(と基礎間口梁)の内部をそれらの長さ方向に走る鉄筋を柱の内部にまで至らせるのが望ましいが、間口梁(と基礎間口梁)の幅を柱の奥行方向の長さに一致させ、間口梁(と基礎間口梁)の幅方向を柱の奥行方向に対応させれば、断面のどこに位置していたとしても、間口梁(と基礎間口梁)の内部にある鉄筋を柱の内部に入れ込むことが可能となる。
また、柱の形状が上述したような平面視矩形の場合、前記奥行梁の前記間口方向の長さである幅は、前記柱の前記間口方向の長さに等しくされていてもよい。基礎奥行梁も同様とすることができる。そうすることにより、奥行梁(と基礎奥行梁)の幅を柱に接続可能な範囲で最大とすることができるため、奥行梁(と基礎奥行梁)による、鉄筋コンクリート製躯体の荷重を支える効果を最大化できることになるとともに、柱と奥行梁(と基礎奥行梁)の少なくとも一方との接続部分の美観をすっきりしたものとすることができるようになる。また、奥行梁(と基礎奥行梁)と柱との接合を強固なものとするためには、奥行梁(と基礎奥行梁)の内部をそれらの長さ方向に走る鉄筋を柱の内部にまで至らせるのが望ましいが、奥行梁(と基礎奥行梁)の幅を柱の間口方向の長さに一致させ、奥行梁(と基礎奥行梁)の幅方向を柱の間口方向に対応させれば、断面のどこに位置していたとしても、奥行梁(と基礎奥行梁)の内部にある鉄筋を柱の内部に入れ込むことが可能となる。
【0014】
本願発明者は、また、鉄筋コンクリート製躯体の設計方法も本願発明の一態様として提案する。かかる設計方法の発明の効果は、本願の住宅用の鉄筋コンクリート製躯体を設計することができるというものである。その設計に基づいて建築される鉄筋コンクリート製躯体は、これまでに述べた鉄筋コンクリート製躯体が奏する効果を奏する。
一例となる住宅用の鉄筋コンクリート製躯体の設計方法は、間口方向に伸びる所定の長さの仮想の線分である間口線分と、前記間口線分の一端から前記間口線分と垂直な方向に伸びる所定の長さの仮想の線分である奥行線分とによって規定される平面視矩形の範囲である矩形範囲を基準として、鉛直に立てられた、所定の長さである第3長さ以下の長さの長尺材である、長さを除いて構成が同一とされた柱、複数と、前記間口線分に平行な仮想の同一の線分の上にある隣接する前記柱2本の上下の両端部を水平に繋ぐ複数の間口梁、及び前記間口梁のうち地面に接する複数の基礎間口梁と、前記奥行線分に平行な仮想の同一の線分の上にある隣接する前記柱2本の上下の両端部を水平に繋ぐ複数の奥行梁、及び前記奥行梁のうち地面に接する複数の基礎奥行梁と、前記柱のうち、所定の2本の間を塞ぐ板状の複数の壁と、前記柱の上下の高さ位置において、2本の前記間口梁と2本の前記奥行梁、又は2本の前記基礎間口梁と2本の前記基礎奥行梁とに囲まれる矩形の空間を水平に塞ぐ板状の複数のスラブと、を組合せることによって構成される住宅用の鉄筋コンクリート製躯体を、前記柱の太さと長さ方向の鉄筋の構成、前記間口梁、前記基礎間口梁、前記奥行梁、及び前記基礎奥行梁それぞれの太さと長さ方向の鉄筋の構成、前記壁、及び前記スラブの単位面積あたりの構成をそれぞれ、前記柱、前記間口梁、前記基礎間口梁、前記奥行梁、及び前記基礎奥行梁のみによって構成されるフレームの構造設計上の強度が十分となる範囲で規格化して決定した上で設計する、鉄筋コンクリート製躯体の設計方法である。
そして、その設計方法は、前記間口線分と、前記奥行線分とのそれぞれの長さを決定する過程と、前記矩形範囲の前記奥行線分に平行な2辺上の少なくとも両端と、所定の長さである第1長さより長い場合における前記奥行線分に平行な前記2辺を前記第1長さ以下の長さに均等に区切る前記2辺上の位置である奥行区分位置と、に対として前記柱を立てるとともに、所定の長さである第2長さより長い場合における前記間口線分を前記第2長さ以下に均等に区切る前記間口線分上の位置である間口区分位置から前記奥行線分に平行に伸びる前記奥行線分と同じ長さの仮想の線分である補助線分の両端と、前記補助線分上の前記奥行区分位置に対応する位置とに規格化された前記柱を立てることを決定する過程と、前記柱のうち、前記間口線分に平行で且つ隣接する位置にあるもの2本のすべての上下の両端部を規格化された前記間口梁、又は前記基礎間口梁で繋ぐことを決定する過程と、前記柱のうち、前記奥行線分に平行で且つ隣接する位置にあるもの2本のすべての上下の両端部を規格化された前記奥行梁、又は前記基礎奥行梁で繋ぐことを決定する過程と、前記矩形範囲の前記間口線分に平行な2辺上に位置する前記柱のうち、隣接するもの同士の間を前記間口線分に平行な規格化された前記壁によって塞ぐこと、及び前記矩形範囲の前記奥行線分に平行な2辺或いは前記補助線分上に位置する前記柱のうち、隣接するもの同士の間を前記奥行線分に平行な規格化された前記壁によって塞ぐことを決定する過程と、前記柱の上下の高さ位置において、2本の前記間口梁と2本の前記奥行梁、又は2本の前記基礎間口梁と2本の前記基礎奥行梁とに囲まれる平面視矩形の空間を規格化された前記スラブによって塞ぐことを決定する過程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本願の一実施形態による設計方法で用いられる矩形範囲を概念的に示す平面。
図2】一実施形態による設計方法において柱を立てる位置を決定する方法を概念的に示す平面図。
図3】一実施形態による設計方法において、矩形範囲に柱を書き込んだ状態を示す平面図。
図4】一実施形態による設計方法において使用される柱リスト、梁リスト、壁リスト、及びスラブリストを示す図。
図5】一実施形態による設計方法において、間口梁及び基礎間口梁の配置位置を決定する方法を概念的に示す平面図。
図6】一実施形態による設計方法において、奥行梁及び基礎奥行梁の配置位置を決定する方法を概念的に示す平面図。
図7】一実施形態による設計方法において、壁の配置位置を決定する方法を概念的に示す平面図。
図8】一実施形態による設計方法において、壁の配置位置を決定する他の方法を概念的に示す平面図。
図9】一実施形態による設計方法において、スラブの配置位置を決定する方法を概念的に示す平面図。
図10】設計された図9の状態の鉄筋コンクリート製躯体を、図9における横方向から見た状態を示す図。
図11】一実施形態による設計方法によって設計された鉄筋コンクリート製躯体のフレームの一例の斜視図。
図12】一実施形態による設計方法によって設計された鉄筋コンクリート製躯体のフレームの他の例の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を参照しつつ、本願発明による住宅用の鉄筋コンクリート製躯体の設計方法(以下、単に「設計方法」という場合がある。)と、その設計方法を実行することによって設計された住宅用の鉄筋コンクリート製躯体について説明する。
【0017】
≪設計方法≫
かかる設計方法によって設計される鉄筋コンクリート製躯体は、図1に示したような平面視矩形の矩形範囲αを基準として設計される。
矩形範囲αは、互いに垂直な間口線分A1と、奥行線分B1とによって規定される平面視矩形の範囲である。矩形範囲αは、間口線分A1、奥行線分B1、線分A2、線分B2を4辺とする矩形である。間口線分A1と線分A2とは、互いに平行な対辺であり、奥行線分B1と線分B2とは、互いに平行な対辺である。概念としては、間口線分A1、線分A2、奥行線分B1、線分B2はいずれも、鉄筋コンクリート製躯体が建てられる地面に描かれる線分である。
間口線分A1は、後に建てられる、追って説明するが略直方体形状とされる鉄筋コンクリート製躯体の平面視した場合の一辺を、奥行線分B1は、鉄筋コンクリート製躯体の間口線分A1と垂直な他の一辺に相当するものである。間口線分A1が、後に建てられる鉄筋コンクリート製躯体の間口に相当する必要はないし、奥行線分B1が、後に建てられる鉄筋コンクリート製躯体の奥行に相当する必要はないが、この実施形態では、間口線分A1は、後に建てられる鉄筋コンクリート製躯体の間口に相当し、奥行線分B1が、後に建てられる鉄筋コンクリート製躯体の奥行に相当するようにする。
間口線分A1と、奥行線分B1とは、鉄筋コンクリート製躯体が建てられる敷地の形状、大きさ等に基づいて、後に建てられる鉄筋コンクリート製躯体の形状、大きさに合わせて適宜決定される。間口線分A1と奥行線分B1の長さはどちらが長い場合もあり得る。
【0018】
上述の矩形範囲αを基準として建築される鉄筋コンクリート製躯体は、柱と、間口梁と、間口基礎梁と、奥行梁と、基礎奥行梁とを備えたフレームを含むものとされる。それらはいずれも長尺材であり、柱は鉛直方向に、間口梁、及び間口基礎梁は間口線分方向に水平に、奥行梁、及び基礎奥行梁は奥行線分方向に水平にそれぞれ伸びる。
【0019】
まず、矩形範囲αに対する、柱の建てられる位置をどのようにして決定するかについて説明する。
柱の建てられる位置は、以下のルール1からルール3の3つのルールによって決まる。図2図3を用いて、ルール1からルール3について説明する。
ルール1)柱Pは、上述の矩形範囲αの奥行線分B1に平行な2辺上の少なくとも両端に立設される。言い換えれば、柱は、矩形範囲αの4隅に必ず立てられる。
ルール2)柱Pは、奥行線分B1が所定の長さである第1長さより長い場合には、奥行線分B1に平行な2辺を第1長さ以下の長さに均等に区切る当該2辺上の位置である奥行区分位置bに立てられる。
ルール3)柱Pは、間口線分A1が所定の長さである第2長さより長い場合には、間口線分A1を第2長さ以下の長さに均等に区切る間口線分A1上の位置である間口区分位置aから奥行線分B1に平行に伸びる奥行線分B1と同じ長さの仮想の線分である補助線分B3を想定した場合における、補助線分B3の両端と、奥行線分B1上に奥行区分位置bが存在する場合における奥行区分位置bに対応する位置とに立てられる。
図2を参照する。
まず、ルール1によって、p1の符号が付された4箇所に柱Pが立てられることが決定される。
次にルール2についてである。ルール2では、第1長さL1が登場する(図1参照)。第1長さL1は、後述する基準フレームを決定する際に予め決定されている。第1長さL1は、例えば4500mmから5700mmの範囲で予め決定しておく。これには限られないがこの実施形態では、第1長さL1を5100mmと定めている。
ルール2により立てられる柱Pの位置を決定するには、まず、奥行線分B1の長さl1が、第1長さL1よりも長いか否かを検証する。奥行線分B1の長さl1が、第1長さL1以下の場合には、奥行線分B1の上には、その両端のp1以外の位置に柱Pは立てられず、また、線分B2の上には、その両端のp1以外の位置に柱Pは立てられない。
他方、奥行線分B1の長さl1が、第1長さL1よりも長い場合には、奥行線分B1の上には、その両端のp1に加え、奥行区分位置bにも柱Pが立てられる。奥行区分位置bは、なるべく小さい自然数で奥行線分B1を均等に区分した場合における、奥行線分B1を区分する位置である。例えば、奥行線分B1を2等分した場合における長さが第1長さL1以下となった場合には、奥行線分B1の中央が、奥行区分位置bとなる。また、奥行線分B1を2等分した場合における長さが第1長さL1よりも長く、奥行線分B1を3等分した場合における長さが第1長さL1以下となった場合には、奥行線分B1を3等分する2つの位置が、奥行区分位置bとなる。より一般化するのであれば、奥行線分B1をn等分した場合における長さが第1長さL1よりも長く、奥行線分B1をn+1等分した場合における長さが第1長さL1以下となった場合には、奥行線分B1をn+1等分する奥行線分B1上のn個の位置が、奥行区分位置bとなる。
図2に示した例では、奥行区分位置bが、奥行線分B1の中央の1箇所である場合が示されている。その場合、ルール2に従って柱Pは、奥行線分B1の中央p2と、奥行線分B1と平行な線分B2の中央p2との2箇所に立てられることになる。
次にルール3についてである。ルール3には、第2長さL2が登場する(図1参照)。第2長さL2は、後述する基準フレームを決定する際に予め決定されている。第2長さL2は、例えば、3700mmから5100mmの範囲で予め決定しておくことができる。これには限られないがこの実施形態では、第2長さL2を4100mmと定めている。なお、第2長さL2は、設計の対象となる鉄筋コンクリート製躯体が一戸建て用の場合と、集合住宅用の場合とで異なる長さとすることも可能である。例えば、鉄筋コンクリート製躯体が一戸建て用の場合には第2長さL2を4700mmから5100mmの範囲の適当な長さ(例えば、4900mm)とし、集合住宅用の場合には第2長さL2を3700mmから4100mmの範囲の適当な長さ(例えば、3900mm)と決定しておくことができる。
ルール3により立てられる柱Pの位置を決定するには、まず、間口線分A1の長さl2が、第2長さL2よりも長いか否かを検証する。間口線分A1の長さl2が、第2長さL2以下の場合には、ルール3により立てられる柱Pは存在しない。
他方、間口線分A1が所定の長さである第2長さL2より長い場合には、間口線分A1を第2長さL2以下の長さに均等に区切る間口線分A1上の位置である間口区分位置aをまず求めることになる。奥行線分B1を均等に区分して奥行区分位置bを求める場合と同様に一般化すると、間口線分A1をn等分した場合における長さが第2長さL2長さよりも長く、間口線分A1をn+1等分した場合における長さが第2長さL2以下となった場合には、間口線分A1をn+1等分する間口線分A1上のn個の位置が、間口区分位置aとなる。ルール3では、間口区分位置aを求めたら、そこから、奥行線分B1に平行に伸びる奥行線分B1に等しい長さの補助線分B3を求める。補助線分B3は、要するに、間口線分A1と線分A2とを、両者に直交するように繋ぐ線分となる。間口区分位置aがn個である場合、補助線分B3はn本となる。
そして、柱Pは、補助線分B3の両端p3と、補助線分B3における、奥行区分位置bに対応する位置p3とに立てられることになる。図2の例でいえば、間口区分位置aが一箇所、補助線分B3が一本であり、補助線分B3の両端p3と、補助線分B3の中央p3に、柱Pが立てられることになる。
【0020】
矩形範囲αにおけるp1、p2、p3の位置に柱Pを立てることに決定した場合を、図3に示す。
これには限られないが、柱Pは、間口方向(間口線分A1に沿う方向)の長さよりも、奥行方向(奥行線分B1に沿う方向)の長さの方が長い、平面視矩形とされる。もちろんこれには限られないが、この実施形態における柱Pは、間口方向の長さが400mm、奥行方向の長さが1200mmの断面矩形となっている。第1長さL1、第2長さL2について先に言及した数字は、柱Pの断面形状が400mm×1200mmである場合の例である。
各柱Pは、その太さと長さ方向の鉄筋の構成が同じとされている。各柱Pの太さ或いは断面形状は、第3長さ以下とされるその長さ方向のすべての部分で同一であり、また、柱P内に配される鉄筋は、柱Pの内部を柱Pの長さ方向に走る。第3長さは、例えば、1階あたりの階高として想定される上限として決定しておくことができる。
つまり、鉄筋コンクリート製躯体内における柱Pはすべて、その長さが第3長さ以下であるという制限はあるが、長さに関しては一意に予め決定されている必要はない。他方、柱Pの長さを除いた構成、言い換えれば単位長さあたりの構成に関していえば、一通りに規格化されている。なお、柱Pの長さは、鉄筋コンクリート製躯体においてその柱Pが属する階の階高を決定するものであるから、鉄筋コンクリート製躯体が後述するように多層構造を採用する場合には、同一階に属する柱Pの長さはすべて等しくされる。もっとも、他の階に属する柱Pについても、長さをすべて揃えて長さについても規格化を行うことも可能である。この場合には、複数階建ての多層構造となる鉄筋コンクリート製躯体の各階の階高が同じとなる。この実施形態では、これには限られないが、多層階構造を採用する鉄筋コンクリート製躯体の各階に属する柱Pはすべて、長さが同一であるものとする。
鉄筋コンクリート製躯体に用いられる柱Pの構成を示す柱リストの例を、図4(A-1)と、同(B-1)とに示す。図4(A-1)に示されているのは、鉄筋コンクリート製躯体が一戸建て用のときの柱リストであり、同(B-1)に示されているのは、鉄筋コンクリート製躯体が集合住宅用のときの柱リストである。柱リストに示されているのはいずれも、柱Pの断面図である。図中191は、柱Pの長さ方向或いは紙面に垂直な方向に走る長尺の鉄筋であり、192は長尺の鉄筋191を囲んでそれらの位置のズレを防止するループ状の鉄筋である。柱リストには、長さを除いた柱Pの寸法、鉄筋の構成(数も含めた長尺の鉄筋191の配置位置、ループ状の鉄筋192が配置される鉄筋191の長さ方向における間隔、配置される鉄筋191、192の種類等)も記録されるのが一般的である。なお、一戸建て用と集合住宅用の柱リストを共通化することも可能である。
一般的なコンクリート製躯体に用いられる柱用の柱リストは複数というより、多数作られることになるが、この実施形態での柱リストの数は少ない。
【0021】
次に、間口梁及び基礎間口梁が配される位置をどのようにして決定するかについて説明する。
間口梁、及び基礎間口梁が配される位置は、以下のルール4からルール5の2つのルールによって決まる。図5を用いて、ルール4からルール5について説明する。
ルール4)間口梁FBは、柱Pのうち、間口線分A1に平行で且つ隣接する位置にあるもの2本のすべての上下の端部を、間口線分A1と平行な方向で水平に繋ぐように配される。
ルール5)基礎間口梁FFBは、柱Pのうち、間口線分A1に平行で且つ隣接する位置にあるもの2本のすべての下の端部であり地面に接する部分を、間口線分A1と平行な方向で水平に繋ぐように配される。
図5を参照する。
まず、ルール4、ルール5によって、図5において横並びとなっている2本の柱Pの間に、間口梁FB又は基礎間口梁FFBが張り渡される。図5は平面図であり、間口梁FBと基礎間口梁FFBとは重なっている。
間口梁FBと基礎間口梁FFBはいずれも長尺である。ただし、それらの長さは第2長さL2以下となっており、それらによって繋がれる2本の柱Pの位置関係により自動的に決定されるようになっている。
これには限られないが、間口梁FBと、間口梁FBの一種である基礎間口梁FFBとはいずれも断面矩形であり、それらの奥行方向の長さである幅が、柱Pの奥行方向の長さに等しくされている。間口梁FBと、基礎間口梁FFBとはいずれも、それらの幅方向の両端が柱Pの奥行方向の両端と揃うようにして、柱Pに接続されるようにする。
各間口梁FBは、その太さと長さ方向の鉄筋の構成が同じとされており、基礎間口梁FFBも同様である。間口梁FBも基礎間口梁FFBも、それらの太さ或いは断面形状は、その長さ方向のすべての部分で同一とされており、また、間口梁FB内、または基礎間口梁FFB内に配される鉄筋は、それらの内部をそれらの長さ方向に走るようにされる。
つまり、鉄筋コンクリート製躯体内における間口梁FB、または基礎間口梁FFBはすべて、長さが第2長さL2以下であるという制限はあるものの、長さに関しては一意に予め決定されている必要はない。他方、間口梁FB、または基礎間口梁FFBの長さを除いた構成、言い換えれば単位長さあたりの構成に関していえば、一通りに規格化されている。なお、1つの鉄筋コンクリート製躯体の中において複数存在する間口梁FBの長さは共通である。また、これも複数存在する基礎間口梁FFBの長さは共通である。更に、間口梁FBと基礎間口梁FFBの長さも共通となる。
鉄筋コンクリート製躯体に用いられる間口梁FBの構成を示す梁リストの例を、図4(A-2)と、同(A-3)と、同(B-2)と、同(B-3)とに示す。図4(A-2)に示されているのは、鉄筋コンクリート製躯体が一戸建て用のときの間口梁FBの梁リストであり、同(B-2)に示されているのは、鉄筋コンクリート製躯体が集合住宅用のときの間口梁FBの梁リストである。図4(A-3)に示されているのは、鉄筋コンクリート製躯体が一戸建て用のときの基礎間口梁FFBの梁リストであり、同(B-3)に示されているのは、鉄筋コンクリート製躯体が集合住宅用のときの基礎間口梁FFBの梁リストである。
以上の梁リストに示されているのはいずれも、間口梁FB又は基礎間口梁FFBの断面図である。図中191は、間口梁FB又は基礎間口梁FFBの長さ方向或いは紙面に垂直な方向に走る鉄筋であり、192は長尺の鉄筋191を囲んでそれらの位置のズレを防止するループ状の鉄筋である。梁リストには、長さを除いた間口梁FB又は基礎間口梁FFBの寸法、鉄筋の構成(数も含めた長尺の鉄筋191の配置位置、ループ状の鉄筋192が配置される鉄筋191の長さ方向における間隔、配置される鉄筋191、192の種類等)も記録されるのが一般的である。なお、間口梁FBと基礎間口梁FFBについての一戸建て用と集合住宅用の梁リストを共通化することも可能である。
間口梁FBよりも基礎間口梁FFBの方が一般に強度が求められるため、一戸建て用の場合、集合住宅用の場合によらず、後者の厚さ(或いは高さ)が前者の厚さよりも大きくされている。
一般的なコンクリート製躯体に用いられる間口梁FB又は基礎間口梁FFBの梁リストは複数というより、多数作られることになるが、この実施形態での間口梁FB又は基礎間口梁FFBの梁リストの数は少ない。
【0022】
次に、奥行梁及び基礎奥行梁が配される位置をどのように決定するかについて説明する。
奥行梁、及び基礎奥行梁が配される位置は、以下のルール6からルール7の2つのルールによって決まる。図6を用いて、ルール6からルール7について説明する。
ルール6)奥行梁DBは、柱Pのうち、奥行線分B1に平行で且つ隣接する位置にあるもの2本のすべての上下の端部を、奥行線分B1と平行な方向で水平に繋ぐように配される。
ルール7)基礎奥行梁FDBは、柱Pのうち、奥行線分B1に平行で且つ隣接する位置にあるもの2本のすべての下の端部であり地面に接する部分を、奥行線分B1と平行な方向で水平に繋ぐように配される。
図6を参照する。
まず、ルール6、ルール7によって、図6において上下に位置する2本の柱Pの間に、奥行梁DB又は基礎奥行梁FDBが張り渡される。図6は平面図であり、奥行梁DBと基礎奥行梁FDBとは重なっている。
奥行梁DBと基礎奥行梁FDBはいずれも長尺である。ただし、それらの長さは、第1長さL1以下となっており、それらによって繋がれる2本の柱Pの位置関係により自動的に決定されるようになっている。
これには限られないが、奥行梁DBと、奥行梁DBの一種である基礎奥行梁FDBとはいずれも断面矩形であり、それらの間口方向の長さである幅が、柱Pの間口方向の長さに等しくされている。奥行梁DBと、基礎奥行梁FDBとはいずれも、それらの幅方向の両端が柱Pの間口方向の両端と揃うようにして、柱Pに接続されるようにする。
各奥行梁DBは、その太さと長さ方向の鉄筋の構成が同じとされており、基礎奥行梁FDBも同様である。奥行梁DBも基礎奥行梁FDBも、それらの太さ或いは断面形状は、その長さ方向のすべての部分で同一とされており、また、奥行梁DB内、または基礎奥行梁FDB内に配される鉄筋は、それらの内部をそれらの長さ方向に走るようにされる。
つまり、鉄筋コンクリート製躯体内における奥行梁DB、または基礎奥行梁FDBはすべて、長さが第1長さL1以下であるという制限はあるものの、長さに関しては一意に予め決定されている必要はない。他方、奥行梁DB、または基礎奥行梁FDBの長さを除いた構成、言い換えれば単位長さあたりの構成に関していえば、一通りに規格化されている。なお、1つの鉄筋コンクリート製躯体の中において複数存在する奥行梁DBの長さは共通である。また、これも複数存在する基礎奥行梁FDBの長さは共通である。更に、奥行梁DBと基礎奥行梁FDBの長さも共通となる。
鉄筋コンクリート製躯体に用いられる奥行梁DBの構成を示す梁リストの例を、図4(A-4)と、同(A-5)と、同(B-4)と、同(B-5)とに示す。図4(A-4)に示されているのは、鉄筋コンクリート製躯体が一戸建て用のときの奥行梁DBの梁リストであり、同(B-4)に示されているのは、鉄筋コンクリート製躯体が集合住宅用のときの奥行梁DBの梁リストである。図4(A-5)に示されているのは、鉄筋コンクリート製躯体が一戸建て用のときの基礎奥行梁FDBの梁リストであり、同(B-5)に示されているのは、鉄筋コンクリート製躯体が集合住宅用のときの基礎奥行梁FDBの梁リストである。
以上の梁リストに示されているのはいずれも、奥行梁DB又は基礎奥行梁FDBの断面図である。図中191は、奥行梁DB又は基礎奥行梁FDBの長さ方向或いは紙面に垂直な方向に走る鉄筋であり、192は長尺の鉄筋191を囲んでそれらの位置のズレを防止するループ状の鉄筋である。梁リストには、長さを除いた奥行梁DB又は基礎奥行梁FDBの寸法、鉄筋の構成(数も含めた長尺の鉄筋191の配置位置、ループ状の鉄筋192が配置される鉄筋191の長さ方向における間隔、配置される鉄筋191、192の種類等)も記録されるのが一般的である。なお、奥行梁DBと基礎奥行梁FDBについての一戸建て用と集合住宅用の梁リストを共通化することも可能である。
奥行梁DBよりも基礎奥行梁FDBの方が一般に強度が求められるため、一戸建て用の場合、集合住宅用の場合によらず、後者の厚さ(或いは高さ)が前者の厚さよりも大きくされている。また、これには限られないがこの実施形態では、間口梁FBの厚さと奥行梁DBの厚さが同じとされ、基礎間口梁FFBと基礎奥行梁FDBの厚さが同じとされている。
一般的なコンクリート製躯体に用いられる奥行梁DB又は基礎奥行梁FDBの梁リストは複数というより、多数作られることになるが、この実施形態での奥行梁DB又は基礎奥行梁FDBの梁リストの数は少ない。
【0023】
以上で説明したのが、一階建ての住宅の鉄筋コンクリート製躯体の、或いは多層構造の住宅の1階部分の鉄筋コンクリート製躯体におけるフレームの設計方法である。
かかるフレームに対して、壁とスラブを追加することにより、一階建ての住宅の鉄筋コンクリート製躯体の、或いは多層構造の住宅の1階部分の鉄筋コンクリート製躯体の設計が終了する。
次に、壁とスラブが配される位置について説明する。
まず、壁から説明する。
壁が配される位置は、以下のルール8からルール9の2つのルールによって決まる。図7図8を用いて、ルール8からルール9について説明する。
ルール8)壁Wは、矩形範囲αの間口線分A1に平行な2辺上に位置する柱Pのうち、隣接するもの同士の間を間口線分A1に平行に塞ぐ。
ルール9)壁Wは、矩形範囲αの奥行線分B1に平行な2辺或いは補助線分B3上に位置する柱Pのうち、隣接するもの同士の間を奥行線分B1に平行に塞ぐ。
図7図8を参照する。
まず、ルール8によって、図7図8において横方向を長さ方向とする4枚の壁Wが配される。壁Wは矩形である。ルール8によって配される壁Wは、4辺のうち垂直な2辺が柱Pに、また水平な2辺が間口梁FB又は基礎間口梁FFBに接続される。壁Wは図7に示したように、基本的に、矩形範囲αにおける間口線分A1と、間口線分A1の対辺にあたる線分A2の上(つまり、矩形範囲αの輪郭の上)に構築される。ただし、壁Wは、間口線分A1に平行に配するという条件を充足する限り、図8の下側の壁Wのように、間口線分A1から矩形範囲αの内側に入り込んだ位置に設けられても構わない。つまり、壁Wは、矩形範囲αの輪郭から離れた位置に配するように設計される場合がある。言い換えれば、壁Wの配置位置に関しては、設計に対するある程度の自由度がある。
次にルール9によって、図7図8において縦方向を長さ方向とする6枚の壁が配される。壁Wは矩形である。ルール9によって配される壁Wは、4辺のうち垂直な2辺が柱Pに、また水平な2辺が奥行梁DB又は基礎奥行梁FDBに接続される。この場合においても、補助線分B3の上にない壁Wを矩形範囲αの輪郭の上から外れた位置に位置させることが許容される(つまり、壁Wの配置位置にある程度の自由度が与えられる。)が、図7図8では、壁Wは矩形範囲αの輪郭の上に、つまり、奥行線分B1と、奥行線分B1の対辺にあたる線分B2の上に配されることとしている。
ルール8、9のいずれによって配されるにせよ、壁Wは、よく知られているようにいずれも板状である。壁Wも、柱P等と同様に規格化されており、単位面積あたり構成が同じとなるようになっている。壁Wは、鉄筋コンクリート製躯体の重量を支える役割を担っていないので、堅牢性は最低限で良い。
鉄筋コンクリート製躯体に用いられる壁Wの構成を示す壁リストの例を、図4(A-6)と、同(B-6)とに示す。図4(A-6)に示されているのは、鉄筋コンクリート製躯体が一戸建て用のときの壁Wの壁リストであり、同(B-6)に示されているのは、鉄筋コンクリート製躯体が集合住宅用のときの壁Wの壁リストである。
以上の壁リストに示されているのはいずれも、壁Wの断面図である。図中191は、壁Wの中を幅方向に或いは紙面に垂直な方向に走る鉄筋である。図中191Xは、壁Wの中を紙面に平行に紙面に対して上下方向に走る鉄筋である。壁リストには、壁の寸法(壁厚)と、鉄筋の構成(壁Wの幅方向と高さ方向に走る鉄筋191、191Xの間隔と鉄筋の種類等)が記録されるのが一般的である。なお、壁Wについての一戸建て用と集合住宅用の壁リストを共通化することも可能である。
【0024】
スラブが配される位置は、以下のルール10によるルールによって決まる。図9図10を用いて、ルール10について説明する。
ルール10)スラブSは、柱Pの上下の高さ位置において、2本の間口梁FBと2本の奥行梁DB、又は2本の基礎間口梁FFBと2本の基礎奥行梁FDBとに囲まれる矩形の空間を水平に塞ぐ。
図9図10を参照する。図10は、設計された図9の状態の鉄筋コンクリート製躯体を、図9における横方向から見た状態を示す図である。ただし、図10では、壁Wの図示を省略している。
ルール10によって、図9において縦横に2×2に配置される4枚のスラブSが配される。スラブSは矩形である。ルール10によって配されるスラブSは、水平であり、柱Pの上下の位置に配される。スラブSの4辺は、2本の間口梁FBと2本の奥行梁DB、又は2本の基礎間口梁FFBと2本の基礎奥行梁FDBに接続される。
スラブSは、よく知られているようにいずれも板状である。スラブSも、柱P等と同様に規格化されており、単位面積あたりの構成が同じとなるようになっている。スラブSは、鉄筋コンクリート製躯体の重量を支える役割を担っていないので、堅牢性は最低限で良い。
鉄筋コンクリート製躯体に用いられるスラブSの構成を示すスラブリストの例を、図4(A-7)と、同(B-7)とに示す。図4(A-7)に示されているのは、鉄筋コンクリート製躯体が一戸建て用のときのスラブSのスラブリストであり、同(B-7)に示されているのは、鉄筋コンクリート製躯体が集合住宅用のときのスラブSのスラブリストである。
以上のスラブリストに示されているのはいずれも、スラブSの断面図である。図中191は、スラブSの中を紙面に垂直な方向に走る鉄筋である。図中191Xは、スラブSの中を紙面に平行に左右方向に走る鉄筋である。スラブリストには、スラブの寸法(スラブ厚)と、鉄筋の構成(スラブSの中を互いに直交して走る鉄筋191、191Xの間隔と鉄筋の種類等)が記録されるのが一般的である。なお、スラブSについての一戸建て用と集合住宅用のスラブリストを共通化することも可能である。
【0025】
以上で説明したのが、一階建ての住宅の鉄筋コンクリート製躯体の、或いは多層構造の住宅の1階部分の鉄筋コンクリート製躯体の設計方法である。
もちろん、鉄筋コンクリート製躯体を有する住宅は多層構造である場合がある。
多層構造の鉄筋コンクリート製躯体の設計を行う場合には、すべての柱Pの上に、第3長さ以下とされ、太さと長さ方向の鉄筋の構成が柱Pと同一とされた新たな柱P少なくとも1本を、すべての柱Pに対して同数ずつ鉛直方向に延長して接続することにする。元の柱Pに延長して接続される柱Pが1本なら鉄筋コンクリート製躯体は2階建てとなり、延長して接続される柱Pが2本なら鉄筋コンクリート製躯体は3階建てとなり、以後も同様である。
そして、鉄筋コンクリート製躯体の1階の設計を行ったときと同様に、新しく追加された柱Pの上端を間口梁FBと、奥行梁DBで繋ぎ、また、壁WとスラブSを配置する。ただし、壁Wの配置位置に関しては上述したようなある程度の自由度が認められるため、各階における壁Wの配置位置は完全に同じである必要はない。
【0026】
以上のようにして、住宅用の鉄筋コンクリート製躯体の設計が終了する。
なお、柱P、間口梁FB、基礎間口梁FFB、奥行梁DB、基礎奥行梁FDB、壁W、スラブSの設計の順番は、上述した順番である必要はない。
また、多層構造の鉄筋コンクリート製躯体の場合には例えば、1階部分を設計してから2階部分を設計する必要もない。例えば、多層階の構造を持つ鉄筋コンクリート製躯体におけるフレーム全体の設計を先に行ってから、そのフレームに取付けられる壁WやスラブSの設計を行うようにしても良い。
また、上述の例では、壁Wに設けるべき窓枠取付用の孔や、扉を取り付けるための孔の設計については説明を省略し、また、内階段を設けるために必要となるスラブSに設けるべき孔の設計については説明を省略したが、これらについては従来技術に倣って設計を行えば良い。
また、この鉄筋コンクリート製躯体では、例えば、壁Wのうちの任意のものを一面のガラスとすることも可能である。そうしたとしても、壁WやスラブSは、鉄筋コンクリート製躯体の荷重を支える役割を担っていないため、鉄筋コンクリート製躯体の十分な強度が保証される。
【0027】
壁WやスラブSによらず、フレームのみで鉄筋コンクリート製躯体の荷重を支えられるのは次の理由による。
図11図12に示した、一例となるフレームFの斜視図を用いて説明する。
図11図12に示したのは、以上で説明した鉄筋コンクリート製躯体の設計方法によって設計された、鉄筋コンクリート製躯体におけるフレームFを抜き出した斜視図である。
図11では、フレームFの下端の矩形範囲αの手前側の2辺のうち、左側の辺が間口線分A1、右側の辺が奥行線分B1となっている。
図11の例では、間口線分A1は、第2長さL2以下となっており、奥行線分B1は、第1長さL1の2倍よりも長く、3倍よりも短くなっている。
その結果、上述のルール1からルール7によって設計されるフレームFは、図11に示したようなものとなる。ここで、図中の網掛けがされた、4本の柱P、4本の間口梁FB(正確には、2本の間口梁FBと2本の基礎間口梁FFB)、4本の奥行梁DB(正確には、2本の奥行梁DBと2本の基礎奥行梁FDB)によって規定される直方体の範囲が、本願発明の概説で説明した基準フレームSFに相当する。そして、図11に示したフレームFは、基準フレームSFを間口線分A1方向に1つ、奥行線分B方向に3つ、鉛直方向に3つ連ねたものとなっている。
図12では、フレームの下端の矩形範囲αの手前側の2辺のうち、右側の辺が間口線分A1、左側の辺が奥行線分B1となっている。
図12の例では、間口線分A1は、第2長さL2の2倍よりも長く、3倍よりも短くなっており、奥行線分B1は、第1長さL1以下となっている。
その結果、上述のルール1からルール7によって設計されるフレームFは、図12に示したようなものとなる。図12に示したフレームは、図11で説明した基準フレームSFを間口線分A1方向に3つ、奥行線分B方向に1つ、鉛直方向に3つ連ねたものとなっている。
ここで、柱P、間口梁FB、基礎間口梁FFB、奥行梁DB、基礎奥行梁FDB、壁W、及びスラブSは、基準フレームSFを間口線分方向、奥行線分方向、鉛直方向にそれぞれX個、Y個、Z個連ねることにより全体として略直方体形状とされたフレームFを形成し(ただし、X、Y、Zの組合せには制限を設けることができる。)、更にそれに上述したルール8からルール10にしたがって、壁WとスラブSとを追加したとしても、フレームFが、鉄筋コンクリート製躯体全体の荷重を支えるのに十分となるように規格化されている。
したがって、上述のX、Y、Zで規定される数字の組合せが、設計者が予定していた組合せの範疇に入るのであれば、基準フレームSFを縦横高さ方向に配列して作られたフレームFを持つ鉄筋コンクリート製躯体は、半ば自動的に鉄筋コンクリート製躯体の荷重を支えるに足りる十分な強度を持つことが保証されることになる。言い換えれば、柱Pの構成を特定する上述の柱リスト、間口梁FB、基礎間口梁FFB、奥行梁DB、基礎奥行梁FDBの構成を特定する上述の梁リスト、壁Wの構成を特定する上述の壁リスト、及びスラブSの構成を特定する上述のスラブリストを、基準フレームSFを縦横高さ方向に配列したときにフレームFが鉄筋コンクリート製躯体の荷重を支えるのに十分となるという条件を充足するような状態で、セットとして予め準備しておけば、上述のルール1からルール10に従って作られた鉄筋コンクリート製躯体の中のフレームFは自動的に、鉄筋コンクリート製躯体の荷重を支えるに足りる十分な強度を持つことになる。
なぜならそのようにして設計された鉄筋コンクリート製躯体中のフレームFは、基準フレームSFを縦横高さ方向に積み重ねた略直方体形状のものとなるか、或いは基準フレームSFよりも縦横高さの少なくともいずれかが短いフレーム(本願発明の概説で説明した準基準フレーム)を縦横高さ方向に積み重ねた略直方体形状のものとなるからである。
【0028】
図11に示したフレームFを設計する場合には、補助線分B3は登場しない。したがって、1階から3階の各階には、補助線分B3上に配されることにより、各階の空間を区切る壁Wは存在しないことになる。
したがって、図11に示したフレームFを有する鉄筋コンクリート製躯体は、1階と2階とを繋ぐ内階段と、2階と3階とを繋ぐ内階段を備える、一戸建て住宅に向いたものとなる。
図12に示したフレームを設計する場合には、補助線分B3が2本登場する。それにより、1階から3階の各階には、各階を3つに分けるように壁Wが配されることになる。
したがって、図12に示したフレームFを有する鉄筋コンクリート製躯体は、1階と2階とを繋ぐ内階段と、2階と3階とを繋ぐ内階段を備えることにより、図12における網掛けがされた部分を1戸とする、3階建てのメゾネットタイプの部屋が横並びに3つ並んだ集合住宅に向いたものとなる。或いは、外階段と外部の通路を適宜追加し、上述した内階段を無くせば、図12に示したフレームを有する鉄筋コンクリート製躯体は、各階に3部屋の独立した部屋を有する合計9部屋を持つ集合住宅に向いたものとなる。
【0029】
≪鉄筋コンクリート製躯体≫
この実施形態における鉄筋コンクリート製躯体は、以上で説明した設計方法によって設計された設計図面によって建築される。
鉄筋コンクリート製躯体は、従来工法によって建築することができる。
例えば、1階建ての住宅用の鉄筋コンクリート製躯体であれば、まず、型枠を組むとともに型枠の内部に適宜に鉄筋を配し、組んだ型枠内にコンクリートを打設して養生しつつ硬化させることにより、基礎間口梁FFBと、基礎奥行梁FDBと、1階の床に相当するスラブSを構築する。
次いで、基礎間口梁FFBと、基礎奥行梁FDBを構築するために組んだ型枠を取り除いた後再び型枠を組むとともに型枠の内部に適宜に鉄筋を配し、組んだ型枠内にコンクリートを打設して養生しつつ硬化させることにより、柱Pと、間口梁FBと、奥行梁DBと、壁Wと、1階の天井に相当するスラブSを構築する。
それにより、1階建ての住宅用の鉄筋コンクリート製躯体が完成する。
多層階、例えば2階建ての住宅用の鉄筋コンクリート製躯体の場合であれば、上述のようにして1階部分のコンクリート製躯体を完成させた後、1階部分の柱Pと、間口梁FBと、奥行梁DBと、壁Wと、1階の天井に相当するスラブSとを構築するために組んだ型枠を取り除いた後再び型枠を組むとともに型枠の内部に適宜に鉄筋を配し、組んだ型枠内にコンクリートを打設して養生しつつ硬化させることにより、2階部分の柱Pと、間口梁FBと、奥行梁DBと、壁Wと、2階の天井に相当するスラブSを構築する。
3階部分より上の階も同様の作業を繰り返すことによって構築することができる。
鉄筋コンクリート製躯体には、例えば、図12において破線で囲んだような、柱Pと間口梁FBと奥行梁DBが、或いは、柱Pと基礎間口梁FFBと、基礎奥行梁FDBとが交差する部分(鉄筋の定着を行う部分)が存在する。
その部分においては、その交差する部分において、柱Pの長さ方向に伸びる鉄筋と、間口梁FBの長さ方向に伸びる鉄筋と、奥行梁DBの長さ方向に伸びる鉄筋とが、或いは柱Pの長さ方向に伸びる鉄筋と、基礎間口梁FFBの長さ方向に伸びる鉄筋と、基礎奥行梁FDBの長さ方向に伸びる鉄筋とがそれぞれ交差するようにする。間口線分方向、奥行線分方向、鉛直方向の鉄筋を当該部分で互いに交差させることにより、柱Pと間口梁FB、柱Pと奥行梁DB、柱Pと基礎間口梁FFB、柱Pと基礎奥行梁FDBの結合を強固なものとすることができ、鉄筋コンクリート製躯体の荷重に対する耐性を増すのに役立つ。
例えば、柱Pの中の長尺の鉄筋191は、鉄筋コンクリート製躯体の最上部から最下端まで伸びるようにするのが通常である。そして、間口梁FBの長さ方向に伸びる鉄筋、奥行梁DBの長さ方向に伸びる鉄筋、基礎間口梁FFBの長さ方向に伸びる鉄筋、基礎奥行梁FDBの長さ方向に伸びる鉄筋の端部はいずれも、柱Pの内部に、適当な長さ例えば400mm程度入り込ませるようにすることができる。間口梁FBの長さ方向に伸びる鉄筋、奥行梁DBの長さ方向に伸びる鉄筋、基礎間口梁FFBの長さ方向に伸びる鉄筋、基礎奥行梁FDBの柱Pの内部に入り込む部分は、直角に折り曲げられたり、U字状に折り返されたりする場合もある。
このように柱と梁の内部にそれぞれ含まれる鉄筋を、柱と梁の接合部で立体的に交差等させることを定着と呼ぶが、柱リスト、梁リスト等で、柱Pの長さ方向に伸びる鉄筋と、間口梁FBの長さ方向に伸びる鉄筋と、奥行梁DBの長さ方向に伸びる鉄筋とが、或いは柱Pの長さ方向に伸びる鉄筋と、基礎間口梁FFBの長さ方向に伸びる鉄筋と、基礎奥行梁FDBの長さ方向に伸びる鉄筋とがそれぞれ交差する部分における各鉄筋の定着の仕方も規格化しておくことが好ましい。
【符号の説明】
【0030】
α 矩形範囲
A1 間口線分
B1 奥行線分
B3 補助線分
a 間口区分位置
b 奥行区分位置
P 柱
FB 間口梁
DB 奥行梁
FFB 基礎間口梁
FDB 基礎奥行梁
W 壁
S スラブ
【要約】
構造設計を短期間で安価に行えるような鉄筋コンクリート製躯体を提供する。
鉄筋コンクリート製躯体は、4本の柱P、4本の間口梁FB(正確には、2本の間口梁FBと2本の基礎間口梁FFB)、4本の奥行梁DB(正確には、2本の奥行梁DBと2本の基礎奥行梁FDB)からなる基準フレームSFを、縦横高さ方向に任意の数配列して構成されるフレームFを備える。柱P、間口梁FB、基礎間口梁FFB、奥行梁DB、基礎奥行梁FDBは、基準フレームSFを配列して構成されたフレームFが鉄筋コンクリート製躯体の荷重に耐えられるように、当初から規格化されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12