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特許7384372固形化粧料組成物、固形化粧料組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】固形化粧料組成物、固形化粧料組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20231114BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20231114BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20231114BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/02
A61K8/98
A61Q19/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018197476
(22)【出願日】2018-10-19
(65)【公開番号】P2020063224
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】516140649
【氏名又は名称】株式会社CELMYON
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タンジャ マハマドゥ
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-247882(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0131565(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0279902(US,A1)
【文献】Odacite, USA,Aventurine Kiss Lip Serum,Mintel GNPD [online],2018年07月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#5758367, [検索日:2023.09.01], 表題部分及び成分
【文献】Ojon, UK,Deep Conditioner,Mintel GNPD [online],2013年05月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#2048855, [検索日:2023.09.01], 表題部分及び成分
【文献】Sarah Chapman, UK,Lip Enhancer Power Base & Tint Balm,Mintel GNPD [online],2016年06月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#4099699, [検索日:2023.04.06], 表題部分及び成分
【文献】Borlind, Germany,Ultimate Matte Long Lasting Lipstick,Mintel GNPD [online],2018年07月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#5794109, [検索日:2022.10.27], 製品詳細, 製品情報
【文献】Beauty Kitchen, UK,Night Halo Potent Sleep Mask,Mintel GNPD [online],2017年03月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#4693313, [検索日:2022.10.27], 製品詳細, 製品情報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアバター(A)を15~80質量%と、
ココアバター(B)を15~80質量%と、
アビシニアンオイル、およびメドウフォームオイルから選ばれる少なくとも1種の成分(C)を0.1~10質量%と、
植物性液状油(D)(但し、アビシニアンオイルおよびメドウフォームオイルを除く)を0.1~20質量%とを含み、
前記植物性液状油(D)が、マルラオイルでり、
水を実質的に含まない、固形化粧料組成物。
【請求項2】
ミツロウ(E)を1~50質量%含む、請求項1に記載の固形化粧料組成物。
【請求項3】
アビシニアンオイルを0.1~5質量%含む、請求項1または2に記載の固形化粧料組成物。
【請求項4】
メドウフォームオイルを0.1~5質量%含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の固形化粧料組成物。
【請求項5】
シアバター(A)とココアバター(B)との質量の合計が60~99質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の固形化粧料組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の固形化粧料組成物を製造するための方法であって、
工程(1):シアバター(A)およびココアバター(B)を溶解し、溶解液aを得る工程、
工程(2):工程(1)で得られた溶解液aと、
アビシニアンオイル、およびメドウフォームオイルから選ばれる少なくとも1種の成分(C)と、
植物性液状油(D)とを混合し、混合液bを得る工程
工程(3):工程(2)で得られた混合液bを冷却する冷却工程
とを含む、固形化粧料組成物の製造方法。
【請求項7】
前記工程(3)が、冷却開始から2時間以内に、混合液bの中心温度が10℃以下に到達する冷却工程である請求項6に記載の固形化粧料組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形化粧料組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人気が高まっている化粧料として、固形化粧料がある。この固形化粧料は、主成分として半固形~固形油を含んでいるため、常温での剤型は半固形~固形であるが、手や肌などに触れると体温で半固形~固形油が融解して液状になり、伸ばし広げやすい物性になることが特徴である。
【0003】
固形化粧料は、肌(特に顔、手、足)、爪など、全身に用いることができる。一般に、固形化粧料を肌に塗布することによって、肌が保湿され、潤うことが知られている。
市販されている固形化粧料の形態としては、成形後に包装されたもの、缶やビンに充填されたもの、スティックタイプのもの等が挙げられる。
【0004】
固形化粧料についての先行技術としては、例えば、特許文献1において、(i)(a)外部層に対して10~45重量%の量の硬質植物性バター、及び(b)外部層に対して55~80重量%の量の軟質植物性バターを含む外部層と、(ii)(a)軟質植物性バター組成物、(b)フォンダン、又は(c)液体化粧品である内部コアとを含む固形化粧品組成物が開示されている。特許文献2では、植物性バターを含む固体化粧品組成物であって、前記固体組成物が、その中に気泡を分散させており、前記気泡が、前記固体化粧品組成物の体積の少なくとも20%を形成する、固体組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2015-535235号公報
【文献】特表2014-520138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された発明は、肌に塗布するとべたつきがあり、使い心地がよくなかった。特許文献2に開示された発明は、肌に塗布するとべたつきがあることや、油脂の酸化安定性が懸念された。
このようなことから、本発明は、主成分として半固形~固形油を含んでいながら、肌に塗布してもべたつかず、酸化安定性の高い固形化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する固形化粧料およびその製造方法は上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、例えば以下の[1]~[7]である。
[1]シアバター(A)を15~80質量%と、ココアバター(B)を15~80質量%と、アビシニアンオイル、メドウフォームオイル、および抗酸化剤から選ばれる少なくとも1種の成分(C)を0.1~10質量%と、植物性液状油(D)(但し、アビシニアンオイルおよびメドウフォームオイルを除く)を0.1~20質量%とを含む、固形化粧料組成物。
[2]ミツロウ(E)を1~50質量%含む、[1]に記載の固形化粧料組成物。
[3]アビシニアンオイルを0.1~5質量%含む、[1]または[2]に記載の固形化粧料組成物。
[4]メドウフォームオイルを0.1~5質量%含む、[1]~[3]のいずれかに記載の固形化粧料組成物。
[5]シアバター(A)とココアバター(B)との質量の合計が60~99質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の固形化粧料組成物。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の固形化粧料組成物を製造するための方法であって、
工程(1):シアバター(A)およびココアバター(B)を溶解し、溶解液aを得る工程、工程(2):工程(1)で得られた溶解液aと、アビシニアンオイル、メドウフォームオイル、および抗酸化剤から選ばれる少なくとも1種の成分(C)と、植物性液状油(D)とを混合し、混合液bを得る工程、工程(3):工程(2)で得られた混合液bを冷却する冷却工程とを含む、固形化粧料組成物の製造方法。
[7]前記工程(3)が、冷却開始から2時間以内に、混合液bの中心温度が10℃以下に到達する冷却工程である[6]に記載の固形化粧料組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、主成分として半固形~固形油を含んでいながら、肌に塗布してもべたつかず、酸化安定性の高い固形化粧料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に本発明の固形化粧料組成物およびその製造方法について具体的に説明する。
<固形化粧料組成物>
本発明において固形化粧料組成物とは、剤形が室温(25℃)で半固形~固形の化粧料組成物であり、非常に粘度の高いクリームや軟膏を意味する。
本発明の固形化粧料組成物は、シアバター(A)を15~80質量%と、ココアバター(B)を15~80質量%と、アビシニアンオイル、メドウフォームオイル、および抗酸化剤から選ばれる少なくとも1種の成分(C)を0.1~10質量%と、植物性液状油(D)(但し、アビシニアンオイルおよびメドウフォームオイルを除く)を0.1~20質量%とを含む。
【0011】
本発明の固形化粧料組成物は、任意で、ミツロウ(E)を1~50質量%含むことも好ましく、20~30質量%含むことがより好ましい。また、必要に応じて、その他の成分を含んでいてもよい。
なお、上記の各成分の含有量は、固形化粧料組成物を100質量%とした場合の含有量を示している。
【0012】
<シアバター(A)>
本発明の固形化粧料組成物は、シアバター(A)を15~80質量%含み、25~75質量%含むことが好ましく、30~73質量%含むことがより好ましい。
本発明の固形化粧料組成物で用いるシアバター(A)は、室温(25℃)において、固形状のシアバターであれば特に限定されないが、脱臭、脱色しているものが好ましい。
シアバター(A)として、具体的には、Shea Butter RFO(株式会社CELMYON社製)等を用いることができる。
本発明ではシアバター(A)を、後述するココアバター(B)と組み合わせて用いる。
【0013】
<ココアバター(B)>
本発明の固形化粧料組成物は、ココアバター(B)を15~80質量%含み、25~70質量%含むことが好ましく、30~65質量%含むことがより好ましい。
本発明の固形化粧料組成物は、ココアバター(B)は、室温(25℃)において、固形状のココアバターであれば特に限定されないが、脱臭、脱色しているものが好ましい。
ココアバター(B)として、具体的には、COCOA BUTTER RF(株式会社CELMYON社製)等を用いることができる。
【0014】
本発明の固形化粧料組成物は、上述したシアバター(A)とココアバター(B)との質量の合計が60~99質量%であることが好ましく、65~95質量%であることがより好ましい。
【0015】
<成分(C)>
本発明の固形化粧料組成物は、アビシニアンオイル、メドウフォームオイル、および抗酸化剤から選ばれる少なくとも1種の成分(C)を0.1~10質量%含み、1~5質量%含むことが好ましく、2~4質量%含むことがより好ましい。
【0016】
本発明の固形化粧料組成物は、成分(C)を上記の量含むことによって、酸化による品質劣化を抑制することができる。
本発明で用いるアビシニアンオイルは、クランベアビシニカの種子から抽出される油のことを指す。本発明の固形化粧料組成物は、アビシニアンオイルを配合することで、肌に塗布した際の保湿効果が高く、さらさらとした使い心地になることや、酸化による品質劣化を抑制することから好ましい。本発明の固形化粧料組成物はアビシニアンオイルを、0.1~5質量%含むことが好ましく、1~3質量%含むことがより好ましい。
【0017】
本発明で用いるメドウフォームオイルは、メドウフォームの種子から抽出される油のことを指し、トコフェロール類を多く含むものが好ましい。本発明の固形化粧料組成物は、メドウフォームオイルを配合することで、保湿効果が高く、剤の伸びがよくなることや、酸化による品質劣化を抑制することから好ましい。本発明の固形化粧料組成物はメドウフォームオイルを、0.1~5質量%含むことが好ましく、1~4質量%含むことがより好ましい。
【0018】
本発明で用いる抗酸化剤として、具体的には、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロール類、ローズマリー抽出物、茶抽出物、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、フェノール系酸化防止剤が挙げられる。これらの中でも、酸化安定性が高く、製剤にした際の香りや色への影響が少ないことからなことから、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロール類が好ましい。本発明の固形化粧料組成物が、抗酸化剤を含む場合には、0.01~10質量%含むことが好ましく、0.05~1質量%含むことがより好ましい。なお、本発明の固形化粧料組成物において、抗酸化剤が成分(C)の下限である0.1質量%より少ない場合には、アビシニアンオイルおよびメドウフォームオイルから選択される少なくとも一方と併用すればよい。
【0019】
成分(C)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。成分(C)としては、アビシニアンオイル、メドウフォームオイル、および抗酸化剤から選ばれる少なくとも2種の成分であることが好ましく、アビシニアンオイルおよびメドウフォームオイルであるか、アビシニアンオイル、メドウフォームオイル、および抗酸化剤であることがより好ましい。
【0020】
成分(C)としてアビシニアンオイルおよびメドウフォームオイルを用いる場合には、アビシニアンオイル:メドウフォームオイル(質量比)が、1:0.1~1:10であることが好ましい。
【0021】
また、成分(C)として、アビシニアンオイル、メドウフォームオイル、および抗酸化剤を用いる場合には、アビシニアンオイル:抗酸化剤(質量比)が、1:0.01~1:10であることが好ましい。
【0022】
<植物性液状油(D)>
本発明の固形化粧料組成物は、植物性液状油(D)を0.1~20質量%含み、1~10質量%含むことが好ましい。
本発明の固形化粧料組成物で用いる植物性液状油(D)には、アビシニアンオイルおよびメドウフォームオイルは含まれず、これらは前述の成分(C)に該当する。
【0023】
植物性液状油(D)として、具体的には、マルラオイル、バオバブオイル、アルガンオイル、モリンガオイル、ホホバオイル、アプリコットオイル、ココナツオイル、アーモンドオイル、スウィートアーモンドオイル、オリーブオイル、ヒマワリオイル、グレープシードオイル、パッションフラワーオイル、ワイルドアフリカンカラバシュオイル、ザクロオイル、ローズヒップオイル、シーバックソーンオイル、ハイビスカスオイル、クランベリーオイル、ラズベリーオイル、アボカドオイル、マカダミアオイル、ニームオイル、ウチワサボテンオイル、米油、セサミオイル、バラニテスオイル、ヘンプシードオイル、アムラオイルが挙げられる。これらの中でも、肌に塗布した際の保湿効果が高く、肌のオイルバランスを整え、さらさらとした使い心地に優れるという観点から、バオバブオイル、マルラオイルが好ましい。
【0024】
植物性液状油(D)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。植物性液状油(D)がバオバブオイルおよびマルラオイルである場合には、バオバブオイル:マルラオイル(質量比)が、1:0.1~1:10であることが好ましい。
【0025】
<ミツロウ(E)>
本発明の固形化粧料組成物は、任意で、ミツロウ(E)を1~50質量%含むことが好ましく、15~35質量%含むことがより好ましい。
本発明の固形化粧料組成物は、任意で、ミツロウ(E)を上記の量含むことによって、剤の形状安定性が増すことから好ましい。
【0026】
<その他成分>
本発明の固形化粧料組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外に、香料、色素(黄色、緑、茶色、青、オレンジ等)、エッセンシャルオイル、エキス、ラノリン、増粘剤、保湿剤、生薬類、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、および等の添加剤を含有することができる。
【0027】
また、シアバター(A)、ココアバター(B)と共に、マンゴバター、ムルムルバター、クパスバター、コクムバター、アボカドバターから選ばれる少なくとも1種を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
香料として、具体的には、リナロール、リモネン、β-カリオフィレン、シス-3-ヘキセノール、ファルネソール、β-フェニルエチルアルコール、2,6-ノナジエナール、シトラール、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、β-イオノン、ι-カルボン、シクロペンタデカノン、リナリルアセテート、ベンジルベンゾエート、γ-ウンデカラクトン、オイゲノール、ローズオキサイド、インドール、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、オーランチオールが挙げられる。エッセンシャルオイルとして具体的には、ローズマリー、オレンジ、スウィートオレンジ、グレープフルーツ、ゆず、ベルガモット、ローズ、ラベンダー、シナモン、ユーカリ、サンダルウッド、ライム、レモン、レモングラス、フランキンセンス、ティーツリー、ムスク、セージ、コーヒー、イランイラン、カモミール、ゼラニウム、バニラ、ネロリが挙げられ、ローズ、ゆず、ラベンダー、オレンジ、ゼラニウム、ローズマリー、ベルガモットが好ましい。エキスとして、具体的には、アロエエキス、アロエベラ葉エキス、ハトムギ種子エキス、チャ葉エキス、コメヌカエキス、カモミール花エキス、ハマメリスエキス、ユキノシタエキス、ヒナギク花エキス、オリーブ葉エキス、カミツレエキス、アスナロエキス、シャクヤク根エキス、ユズ果実エキス、ダイズ種子エキス、ブドウ種子エキス、セージ葉エキス、ローズマリー葉エキス、ラベンダー花エキス、モモ種子エキス、ダイズ種子エキスが挙げられる。
【0029】
本発明の固形化粧料組成物は、水を実質的に含まないことが好ましい。水を実質的に含まないとは、各成分の不純物として存在する水や、本発明の固形化粧料組成物を製造する際に大気中から混入する水については、固形化粧料組成物に含まれていてもよいが、通常水を意図的に添加しないことを意味する。水を実質的に含まないとは、具体的には本発明の固形化粧料組成物中の水の含有量が、通常は0~7質量%、好ましくは0~5質量%であることを意味する。
【0030】
<固形化粧料組成物の製造方法>
本発明の固形化粧料組成物は、例えば、以下の工程(1)~(3)を含む製造方法により製造することができる。
工程(1):シアバター(A)およびココアバター(B)を溶解し、溶解液aを得る工程。
工程(2):工程(1)で得られた溶解液aと、アビシニアンオイル、メドウフォームオイル、および抗酸化剤から選ばれる少なくとも1種の成分(C)と、植物性液状油(D)とを混合し、混合液bを得る工程。
工程(3):工程(2)で得られた混合液bを冷却する冷却工程。
【0031】
前記工程(3)が、冷却開始から2時間以内に、混合液bの中心温度が10℃以下に到達する冷却工程であることが、各成分が均一に分散した固形化粧料組成物を得る観点から好ましい。また、得られる固形化粧料組成物が、ボソボソとした感触になるのを防ぐ観点からも2時間以内に、混合液bの中心温度が10℃以下に到達することが好ましい。
【0032】
固形化粧料組成物の製造方法において、公知の方法で、各成分を溶解および混合することができる。シアバター(A)およびココアバター(B)の溶解は、各成分を均一に混合するために、好ましくは加熱条件下、例えば65~85℃の加熱条件下で行うことが好ましい。
【0033】
固形化粧料組成物の製造方法において、成形する工程は、(3)の工程の前または後に行うことができる。成形する工程を(3)の前に行う場合は、混合液bを缶やビン、そのほか任意の容器に充填し、容器のまま冷却工程を経て製品としてもよい。成形する工程を(3)の後に行う場合は、冷却工程を経たのち、得られたものを棒状に成形してスティックタイプの製品としてもよい。
【0034】
<用途>
本発明の固形化粧料組成物は、肌(特に顔、手、足)、爪など、全身に用いることができ、肌に塗布してもべたつかず、酸化安定性の高い固形化粧料である。
【実施例
【0035】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
〔実施例1~5〕
表1に示す処方で各成分を混合することにより固形化粧料を製造し、以下の方法で評価した。なお、表中の処方の数値は、固形化粧料を100質量%とした場合の、各成分の質量%を表している。結果を表1に示す。
なお、表1に記載の各成分は以下の市販品を用いた。
<シアバター(A)>
シアバター:Shea Butter RFO(株式会社CELMYON社製)
<ココアバター(B)>
ココアバター:COCOA BUTTER RF(株式会社CELMYON社製)
<(C)>
アビシニアンオイル:ABYSSINIAN TERAL(株式会社CELMYON社製)
メドウフォームオイル:MEADOWFOAM TERAL(株式会社CELMYON社製)
トコフェロール:VITAMIN E(XIAN LYPHAR BIOTECH社製)
<植物性液状油(D)>
バオバブオイル:BAOBAB TERAL(株式会社CELMYON社製)
マルラオイル:MARULA TERAL(株式会社CELMYON社製)
<ミツロウ(E)>
ミツロウ:BZWAX 36(株式会社CELMYON社製)
<その他>
エッセンシャルオイル:Essential Oil CM(株式会社CELMYON社製)
アロエエキス:アロエベラエキス(Natural Cosmetic Lab社製)
ラノリン:LANOLIN USP(XIAN LYPHAR BIOTECH社製)
【0036】
【表1】
【0037】
〔実施例1の製造〕
耐熱容器にシアバターおよびココアバターを全量入れ、約70℃に加温し、シアバターおよびココアバターを融解させた。そこに、バオバブオイル、マルラオイル、アビシニアンオイル、メドウフォームオイル、エッセンシャルオイルを加え、混合した。混合したものを、成形容器に充填し、中心温度が2時間以内に10℃以下になるよう冷蔵庫で冷却した。冷却後、適当な大きさに切断し、製品とした。
製品を肌に塗布し、使い心地を評価した。また、製品を市販の食品保存用容器に入れ、室温で8か月保管し、品質の変化を観察した。
【0038】
〔実施例2の製造〕
各成分の配合量を表1に記載の量に変更し、耐熱容器にシアバター、ココアバターおよびミツロウを全量入れ、約70℃に加温した以外は、実施例1と同様に製造し、評価した。
【0039】
〔実施例3~5の製造〕
各成分の配合量を表1に記載の量に変更した以外は、実施例1と同様に製造し、評価した。なお、実施例1で配合されていない成分については、バオバブオイル、マルラオイル、アビシニアンオイル、メドウフォームオイル、エッセンシャルオイルと同時に添加した。
【0040】
〔考察〕
実施例1~5で製造した固形化粧料組成物は、肌に塗布してもべたつかず、保湿効果が高かった。また、実施例1~5で製造した固形化粧料組成物は、室温で8か月以上保存した後において、脂質酸化による劣化臭の発生や変色が無く、物性も半固形~固形を維持しており、酸化安定性の高い固形化粧料であった。