(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】低ホウ素含有水酸化マグネシウムの製造法
(51)【国際特許分類】
C01F 5/22 20060101AFI20231114BHJP
B01D 21/28 20060101ALI20231114BHJP
C02F 1/58 20230101ALI20231114BHJP
【FI】
C01F5/22
B01D21/28 Z
C02F1/58 H
(21)【出願番号】P 2019062566
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000229162
【氏名又は名称】日本ソリッド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】波多野 倫
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/120746(WO,A1)
【文献】特開2018-038949(JP,A)
【文献】特開2013-085998(JP,A)
【文献】特開平02-275715(JP,A)
【文献】特開平01-231910(JP,A)
【文献】特開2013-203642(JP,A)
【文献】特開平05-238725(JP,A)
【文献】特開2018-153712(JP,A)
【文献】特開2002-234723(JP,A)
【文献】特公昭49-004638(JP,B1)
【文献】実公昭54-011398(JP,Y1)
【文献】特開昭48-103098(JP,A)
【文献】特開昭60-155529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 1/00-17/38
B01D 21/28
C02F 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水と石灰乳とを
シックナーで反応させて得られた水酸化マグネシウム
を沈降分離した後、隣接する水流傾斜膜との間に間隔を設けて連結した展張膜を多重展張して設けられたシックナーで
水洗浄処理することを特徴とす
る
水酸化マグネシウムの
精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水と水酸化カルシウムとを反応させて得られる低ホウ素含有水酸化マグネシウムの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来ホウ素を含有する原水からホウ素を除去する方法として、例えばホウ素を含む原水を、アルミニウム化合物およびカルシウム化合物の存在下であって、かつpH9以上の条件に調整して不溶性沈殿物を生成させ、次いで固液分離して得られる分離水を、pH9以上の条件下でアニオン交換樹脂と接触させることを特徴とするホウ素含有水の処理方法が知られている(特許文献1)。
また他の方法として、有害な無機性陰イオンを含有する被処理水に、該処理水のpHが8を超えているときは8以下に調整した後、少なくともセリウムの塩を主成分として含有する希土類元素の塩溶液及び水酸化マグネシウムを存在させ、pH8~11にて該無機性イオンを難溶性沈殿として生成させ、固液分離することを特徴とする有害な無機性陰イオンの固定化除去方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭57-180493号公報
【文献】特開2006-341139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、海水と石灰乳との反応で得られる水酸化マグネシウムを製造するに当り、特にホウ素含有量の少ない水酸化マグネシウムの製造法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、海水と石灰乳とを反応させて得られた水酸化マグネシウム懸濁液を、隣接する水流傾斜膜との間に間隔を設けて連結した展張膜を多重展張して設けられたシックナーで処理して低ホウ素含有水酸化マグネシウムを得る製造法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明方法によれば、ホウ素含有量の少ない水酸化マグネシウムを得ることができ、またアルミニウム、鉄、ケイ素系化合物の含有量をも減少させることができ、かつ連続運転が出来るので生産性が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】垂下膜の前面および後面における水の流れを示した状態図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を図面を参照しながら説明するが、本発明は以下の説明のみに限定されるものではない。
反応槽1にパイプ2を通して海水を導入し、同時にパイプ3から石灰乳を導入し反応を行う。得られた水酸化マグネシウム懸濁液を円形型シックナー4に導入する。
この円形型シックナー4には
図2に示すように、フロート5の下端部に垂下膜6を吊下した水流傾斜膜7を、
図3に示すように、隣接する水流傾斜膜7との間に間隔Hを設けて連結した展張膜8が、同心円状に多重展張されている。
【0009】
このシックナー4に導入された水酸化マグネシウム懸濁液は、
図4に示すように円形型シックナー4内に設けられた展張膜8の抵抗体としての垂下膜6と、導入された水酸化マグネシウム懸濁液の水流圧力および隣接する水流傾斜膜との間の間隔部に向かって左右に流れ方向が変えられる垂下膜6の前面において乱流境界層9を形成し、それによって淀み域10が形成される。そして水酸化マグネシウム懸濁液中の懸濁粒子はこの淀み域10に取り込まれることによって粒子密度が増して濃縮され、粒子群層となり、垂下膜6に沿って下降し迂回流となると共に、群沈降・沈殿が促進される。
一方前記垂下膜6の後面にあってはカルマン渦流が生起し、前記垂下膜6の前面における下降流と相俟って、これらの現象により、円形型シックナー4内における水酸化マグネシウム懸濁液の滞流時間が大幅に延長される。
【0010】
円形型シックナー4で分離された水酸化マグネシウムは、シックナー4から取り出し、次いで工業用水を用いて円形型シックナー4と同様の円形型シックナー11で洗浄し、精製水酸化カルシウムとして取得する。
【0011】
また本発明は使用する海水を予めシックナー4と同じシックナー12を使用し、反応槽13にパイプ14から海水を加え、同時に反応槽1で生成した水酸化マグネシウム懸濁液の一部をパイプ15を通して反応槽13に導入する。反応槽13で処理された処理海水はシックナー12に導入され、ここで処理された海水をパイプ16によって、パイプ2を介して反応槽1に導入することもできる。この処理海水を用いることによって、さらにホウ素含有量の少ない水酸化マグネシウムを得ることができる。海水に添加する水酸化マグネシウムの添加量は一般に海水に対し20~50質量%であることが好ましい。
また本発明は、円形型シックナーに代えて横流式のシックナーも使用することができる。
【0012】
次に本発明を実施例を掲げて説明するが、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
実施例
反応槽1にパイプ2を通して海水を導入し、同時にパイプ3を通して石灰乳を導入し、反応させて得られた水酸化マグネシウム懸濁液を円形型シックナー4に導入し、水酸化マグネシウムの沈降処理を行う。沈降分離された水酸化マグネシウムは円形型シックナー4から取り出し、次いで円形型シックナー11において工業用水で洗浄し、精製水酸化マグネシウムを得た。得られた精製水酸化マグネシウム中のB2O3の含有量は54mg/Lであった。
また予め反応増13において海水と水酸化マグネシウムを35質量%添加混合して円形型シックナーで処理した処理海水を用いた場合はさらにB2O3の含有量は低かった。一方比較のために直接海水と石灰乳とを反応させた水酸化マグネシウム懸濁液を用い、かつ円形型シックナー4の展張膜を除いた以外は同様の条件で処理したところ精製水酸化マグネシウム中のB2O3の含有量は2400mg/Lであった。