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特許7384379平板プレス加工の作業支援方法、平板プレス加工の作業支援プログラム、及び平板プレス加工の作業支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】平板プレス加工の作業支援方法、平板プレス加工の作業支援プログラム、及び平板プレス加工の作業支援システム
(51)【国際特許分類】
   B21D 11/20 20060101AFI20231114BHJP
   B63B 73/50 20200101ALI20231114BHJP
   B21D 7/16 20060101ALN20231114BHJP
【FI】
B21D11/20 Z
B63B73/50
B21D7/16
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019172179
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021049532
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】松尾 宏平
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 正仁
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0165732(US,A1)
【文献】特開2015-227796(JP,A)
【文献】特開2004-013492(JP,A)
【文献】特開2009-012058(JP,A)
【文献】松尾 宏平,曲率線情報に基づく造船プレス加工支援システムに関する研究,日本船舶海洋工学論文集,2018年12月,第28号,189-201ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 11/20
B63B 73/50
B21D 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板をプレス加工して目標形状を得るための作業支援方法であって、
曲面を展開した前記平板に付したプレスラインを利用した一次加工手順に従って前記プレス加工を行なう一次加工ステップと、
少なくとも前記一次加工ステップで得られた前記平板の一次加工曲板の形状を計測する形状計測ステップと、
少なくとも前記計測された前記一次加工曲板の前記形状と前記目標形状を比較し一致度を判定する判定ステップと、
前記一致度が所定値を満たさない場合に前記一次加工曲板に付す追加加工プレスラインを利用した追加加工手順を導出する手順導出ステップと、
前記追加加工手順を前記一次加工曲板に反映して追加プレス加工を行なう追加加工ステップと、
前記追加プレス加工を行なった追加加工曲板の形状について前記形状計測ステップと前記判定ステップを繰り返す追加加工確認ステップとを備え、
前記追加プレス加工として前記追加加工プレスラインに主曲率のうちの最大主方向を追跡した最大主曲率線を与える加工を行い、前記目標形状との前記一致度が前記所定値を満たす前記曲面を得ることを特徴とする平板プレス加工の作業支援方法。
【請求項2】
前記判定ステップにおける前記一致度は、前記計測された前記一次加工曲板の前記形状の点群データに前記目標形状のCADデータを重畳して求めることを特徴とする請求項1に記載の平板プレス加工の作業支援方法。
【請求項3】
前記重畳は、前記一次加工曲板の前記形状の前記点群データから前記目標形状に関連する前記点群データを抽出して行なうことを特徴とする請求項2に記載の平板プレス加工の作業支援方法。
【請求項4】
前記一致度は、前記目標形状の曲率線の法曲率と、前記計測された前記一次加工曲板の前記形状の相当曲率線の前記法曲率との差分より求めることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の平板プレス加工の作業支援方法。
【請求項5】
前記追加加工プレスラインは、前記一次加工曲板の前記形状の計測結果から曲率線に対応した曲線を求め、前記曲線に沿った角度を計算しプレス点を求めて描画するものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の平板プレス加工の作業支援方法。
【請求項6】
前記追加加工手順は、前記プレス加工のプレス位置、プレス角度、及びプレス負荷を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の平板プレス加工の作業支援方法。
【請求項7】
前記一次加工手順及び/又は追加加工手順は、補強材の取り付け位置を含む関連情報を提供することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の平板プレス加工の作業支援方法。
【請求項8】
前記形状の計測はレーザスキャナを用いて行なうことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の平板プレス加工の作業支援方法。
【請求項9】
前記一次加工曲板の前記形状及び/又は前記目標形状を、拡張現実技術を用いて表示手段に表示させることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の平板プレス加工の作業支援方法。
【請求項10】
平板をプレス加工して目標形状を得るための作業支援プログラムであって、
コンピュータに、
曲面を展開した前記平板に付したプレスラインを利用した一次加工手順に従って前記プレス加工を行なった前記平板の一次加工曲板の形状を計測した計測結果を取得させる形状取得ステップと、
前記目標形状を得る目標形状取得ステップと、
少なくとも前記計測された前記一次加工曲板の前記形状と前記目標形状を比較し一致度を判定する判定ステップと、
前記一致度が所定値を満たさない場合に前記一次加工曲板に付した追加加工プレスラインを利用した追加加工手順を導出する手順導出ステップと、
追加プレス加工として前記追加加工プレスラインに主曲率のうちの最大主方向を追跡した最大主曲率線を与える加工を行うべく前記追加加工手順の導出結果を前記一次加工曲板に反映する手順反映ステップとを実行させ、
前記目標形状との前記一致度が前記所定値を満たす前記曲面を得ることを特徴とする平板プレス加工の作業支援プログラム。
【請求項11】
前記判定ステップにおける前記一致度は、前記計測された前記一次加工曲板の前記形状の点群データに前記目標形状のCADデータを重畳して求めることを特徴とする請求項10に記載の平板プレス加工の作業支援プログラム。
【請求項12】
前記重畳は、前記一次加工曲板の前記形状の前記点群データから前記目標形状に関連する前記点群データを抽出して行なうことを特徴とする請求項11に記載の平板プレス加工の作業支援プログラム。
【請求項13】
前記一致度は、前記目標形状の曲率線の法曲率と、前記計測された前記一次加工曲板の前記形状の相当曲率線の前記法曲率との差分より求めることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の平板プレス加工の作業支援プログラム。
【請求項14】
前記追加加工プレスラインは、前記一次加工曲板の前記形状の計測結果から曲率線に対応した曲線を求め、前記曲線に沿った角度を計算しプレス点を求めて描画するものであることを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の平板プレス加工の作業支援プログラム。
【請求項15】
前記追加加工手順は、前記プレス加工のプレス位置、プレス角度、及びプレス負荷を含むことを特徴とする請求項10から請求項14のいずれか1項に記載の平板プレス加工の作業支援プログラム。
【請求項16】
前記一次加工手順及び/又は追加加工手順は、補強材の取り付け位置を含む関連情報を提供することを特徴とする請求項10から請求項15のいずれか1項に記載の平板プレス加工の作業支援プログラム。
【請求項17】
平板をプレス加工して目標形状を得るための作業支援システムであって、
少なくとも曲面を展開した前記平板に付したプレスラインを利用した一次加工手順に従って前記プレス加工を行なうプレス加工手段と、
少なくとも前記一次加工手順で得られた前記平板の一次加工曲板の形状を計測する形状計測手段と、
少なくとも前記計測された前記一次加工曲板の前記形状と前記目標形状を比較し一致度を判定する判定手段と、
前記一致度が所定値を満たさない場合に前記一次加工曲板に付した追加加工プレスラインを利用した追加加工手順を導出する手順導出手段とを備え、
前記プレス加工手段により追加プレス加工として前記追加加工プレスラインに主曲率のうちの最大主方向を追跡した最大主曲率線を与える加工を行い、前記目標形状との前記一致度が前記所定値を満たす前記曲面を得ることを特徴とする平板プレス加工の作業支援システム。
【請求項18】
前記判定手段と前記手順導出手段を、コンピュータを用いて構成したことを特徴とする請求項17に記載の平板プレス加工の作業支援システム。
【請求項19】
前記形状計測手段として、レーザスキャナを用いることを特徴とする請求項17又は請求項18に記載の平板プレス加工の作業支援システム。
【請求項20】
前記一次加工曲板の前記形状及び/又は前記目標形状を、拡張現実技術を用いて表示手段に表示させることを特徴とする請求項17から請求項19のいずれか1項に記載の平板プレス加工の作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板から滑らかに曲げられた曲板を成形する過程において行われるプレス加工作業を支援する平板プレス加工の作業支援方法、作業支援プログラム、及び作業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
船体の曲面は、滑らかに曲げられた鋼板である曲り外板で構成されている。曲り外板は、平らな鋼板に曲げ加工を加えることで成形される。曲げ加工は、プレス機械によるプレス加工(冷間加工)やガス炎による線状加熱により行われる。
曲げ加工は職人技ともいわれる難しい作業であり、熟練技能者の確保や若手への技術の継承は簡単でない。
【0003】
ここで、特許文献1には、経験の浅い作業者であっても船殻外板等の複雑な曲面形状を有する鋼板を目標の形状に精度よく加工することを目的として、金属板の表面に熱を加えることにより起こる角変形と、金属板の表面から裏面にかけて熱を加えることにより起こる熱収縮とを組み合わせて、金属板を曲面を含む所望の形状に加工していく曲面を有する金属板の製造方法において、金属板の表面に、幾何学的解析により得られた、角変形を起こさせる加熱線、熱収縮を起こさせる加熱線又は加熱点を予め設定しておき、これら加熱線又は加熱点に沿って加熱していくことが開示されている。
また、特許文献2には、基準面形状を細分化してメッシュごとに曲率を算出することにより基準曲率マップを作成する予備工程と、加工面形状の三次元計測データを取得する計測工程と、加工面形状を模擬した仮想面形状を作成するフィッティング工程と、仮想面形状を基準面形状と同様に細分化してメッシュごとに曲率を算出することにより仮想曲率マップを作成するマップ作成工程と、仮想曲率マップと基準曲率マップとを比較して差分を算出することにより差分曲率マップを作成する比較工程と、差分曲率マップを表示する出力工程を備えた面形状評価方法を用い、加工面形状と基準面形状とを比較して評価することが開示されている。
また、非特許文献1には、造船における目的曲面への成形を支援する曲げ加工支援ARアプリケーションや、曲率線展開法を用いて曲率線をプレス線として用いることが開示されている。
また、非特許文献2には、プレス加工作業の高度化を目的として、レーザスキャナを用いてプレス前の平板に対してプレス線を示すこと、曲板の3次元計測を行なうことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-74200号公報
【文献】特開2015-227796号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】松尾宏平,AR技術を用いた造船生産支援システムの開発について,平成27年度(第15回)海上技術安全研究所研究発表会,https://www.nmri.go.jp/main/publications/paper/pdf/2A/15/00/PNM2A150012-00.pdf
【文献】稗方和夫,造船設計製造のデジタル化とデータ活用に関する技術開発,http://classnk-rd.com/assets/pdf/katsudou201711_D.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
目標形状に成形するために平板に対して行なうプレス加工は、平板の材料特性や作業者による加工精度にばらつきがあるため、当初の想定通りに曲がる可能性は極めて低く、初期のプレス加工だけでは目標形状を得難い。よって、プレス加工により得られた曲板に追加のプレス加工を行なう必要がある。
特許文献1は、ガスバーナ等を用いた加熱による加工作業の品質向上等を目的としたものであり、その前段における1次曲げプレスが記載されているだけで、追加のプレス加工を行なっての品質向上については何ら記載されていない。
また、特許文献2は、加工面形状と基準面形状とを比較して評価するものではあるが、基準面形状に成形するための追加プレス加工について加工手順を示すものではない。
また、非特許文献1及び非特許文献2は、プレス前の平板に対して初期プレス線を示すものではあるが、初期プレス加工が行われた後の曲板に対して追加プレス加工を行なうための追加プレス線を示すものではない。
そこで本発明は、追加プレス加工を的確に行い、平板プレス加工の精度を向上させることができる平板プレス加工の作業支援方法、平板プレス加工の作業支援プログラム、及び平板プレス加工の作業支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の記載に対応した平板プレス加工の作業支援方法においては、平板をプレス加工して目標形状を得るための作業支援方法であって、曲面を展開した平板に付したプレスラインを利用した一次加工手順に従ってプレス加工を行なう一次加工ステップと、少なくとも一次加工ステップで得られた平板の一次加工曲板の形状を計測する形状計測ステップと、少なくとも計測された一次加工曲板の形状と目標形状を比較し一致度を判定する判定ステップと、一致度が所定値を満たさない場合に一次加工曲板に付す追加加工プレスラインを利用した追加加工手順を導出する手順導出ステップと、追加加工手順を一次加工曲板に反映して追加プレス加工を行なう追加加工ステップと、追加プレス加工を行なった追加加工曲板の形状について形状計測ステップと判定ステップを繰り返す追加加工確認ステップとを備え、追加プレス加工として追加加工プレスラインに主曲率のうちの最大主方向を追跡した最大主曲率線を与える加工を行い、目標形状との一致度が所定値を満たす曲面を得ることを特徴とする。
請求項1に記載の本発明によれば、追加プレス加工を的確に行い、平板プレス加工の精度(目標形状との一致度)を向上させることができる。また、追加プレス加工として追加加工プレスラインに主曲率のうちの最大主方向を追跡した最大主曲率線を与える加工を行うことで、追加プレス加工を効率よく行なうことができる。
【0008】
請求項2記載の本発明は、判定ステップにおける一致度は、計測された一次加工曲板の形状の点群データに目標形状のCADデータを重畳して求めることを特徴とする。
請求項2に記載の本発明によれば、一次加工曲板の曲面と目標形状の曲面との対応付けを的確に行い、一次加工曲板の形状と目標形状との一致度を精度よく判定することができる。
【0009】
請求項3記載の本発明は、重畳は、一次加工曲板の形状の点群データから目標形状に関連する点群データを抽出して行なうことを特徴とする。
請求項3に記載の本発明によれば、一次加工曲板の曲面と目標形状の曲面との重畳を精度よく行なうことができる。
【0010】
請求項4記載の本発明は、一致度は、目標形状の曲率線の法曲率と、計測された一次加工曲板の形状の相当曲率線の法曲率との差分より求めることを特徴とする。
請求項4に記載の本発明によれば、一次加工曲板の形状と目標形状との一致度を精度よく求め、追加加工のレベルを判定することができる。
【0011】
請求項5記載の本発明は、追加加工プレスラインは、一次加工曲板の形状の計測結果から曲率線に対応した曲線を求め、曲線に沿った角度を計算しプレス点を求めて描画するものであることを特徴とする。
請求項5に記載の本発明によれば、追加加工プレスラインを精度よく算出して描画することができる。
【0012】
請求項6記載の本発明は、追加加工手順は、プレス加工のプレス位置、プレス角度、及びプレス負荷を含むことを特徴とする。
請求項6に記載の本発明によれば、追加加工手順を的確に作業者に指示することができる
【0013】
求項記載の本発明は、一次加工手順及び/又は追加加工手順は、補強材の取り付け位置を含む関連情報を提供することを特徴とする。
請求項に記載の本発明によれば、補強材の取り付け位置についても作業者に指示することができる。
【0014】
請求項記載の本発明は、形状の計測はレーザスキャナを用いて行なうことを特徴とする。
請求項に記載の本発明によれば、曲板の3次元形状を精度よく計測することができる。
【0015】
請求項記載の本発明は、一次加工曲板の形状及び/又は目標形状を、拡張現実技術を用いて表示手段に表示させることを特徴とする。
請求項に記載の本発明によれば、作業者がプレス加工中や加工後の曲板の曲げ状況、加工要領等を認識しやすくなる。
【0016】
請求項10の記載に対応した平板プレス加工の作業支援プログラムにおいては、平板をプレス加工して目標形状を得るための作業支援プログラムであって、コンピュータに、曲面を展開した平板に付したプレスラインを利用した一次加工手順に従ってプレス加工を行なった平板の一次加工曲板の形状を計測した計測結果を取得させる形状取得ステップと、目標形状を得る目標形状取得ステップと、少なくとも計測された一次加工曲板の形状と目標形状を比較し一致度を判定する判定ステップと、一致度が所定値を満たさない場合に一次加工曲板に付した追加加工プレスラインを利用した追加加工手順を導出する手順導出ステップと、追加プレス加工として追加加工プレスラインに主曲率のうちの最大主方向を追跡した最大主曲率線を与える加工を行うべく追加加工手順の導出結果を一次加工曲板に反映する手順反映ステップとを実行させ、目標形状との一致度が所定値を満たす曲面を得ることを特徴とする。
請求項10に記載の本発明によれば、追加プレス加工を的確に行い、平板プレス加工の精度(目標形状との一致度)を向上させることができる。また、追加プレス加工として追加加工プレスラインに主曲率のうちの最大主方向を追跡した最大主曲率線を与える加工を行うべく追加加工手順の導出結果を一次加工曲板に反映することで、追加プレス加工を効率よく行なうことができる。
【0017】
請求項11記載の本発明は、判定ステップにおける一致度は、計測された一次加工曲板の形状の点群データに目標形状のCADデータを重畳して求めることを特徴とする。
請求項11に記載の本発明によれば、一次加工曲板の曲面と目標形状の曲面との対応付けを的確に行い、一次加工曲板の形状と目標形状との一致度を精度よく判定することができる。
【0018】
請求項12記載の本発明は、重畳は、一次加工曲板の形状の点群データから目標形状に関連する点群データを抽出して行なうことを特徴とする。
請求項12に記載の本発明によれば、一次加工曲板の曲面と目標形状の曲面との重畳を精度よく行なうことができる。
【0019】
請求項13記載の本発明は、一致度は、目標形状の曲率線の法曲率と、計測された一次加工曲板の形状の相当曲率線の法曲率との差分より求めることを特徴とする。
請求項13に記載の本発明によれば、一次加工曲板の形状と目標形状との一致度を精度よく求め、追加加工のレベルを判定することができる。
【0020】
請求項14記載の本発明は、追加加工プレスラインは、一次加工曲板の形状の計測結果から曲率線に対応した曲線を求め、曲線に沿った角度を計算しプレス点を求めて描画するものであることを特徴とする。
請求項14に記載の本発明によれば、追加加工プレスラインを精度よく算出して描画することができる。
【0021】
請求項15記載の本発明は、追加加工手順は、プレス加工のプレス位置、プレス角度、及びプレス負荷を含むことを特徴とする。
請求項15に記載の本発明によれば、追加加工手順を的確に作業者に指示することができる
【0022】
求項16記載の本発明は、一次加工手順及び/又は追加加工手順は、補強材の取り付け位置を含む関連情報を提供することを特徴とする。
請求項16に記載の本発明によれば、補強材の取り付け位置についても作業者に指示することができる。
【0023】
請求項17の記載に対応した平板プレス加工の作業支援システムにおいては、平板をプレス加工して目標形状を得るための作業支援システムであって、少なくとも曲面を展開した平板に付したプレスラインを利用した一次加工手順に従ってプレス加工を行なうプレス加工手段と、少なくとも一次加工手順で得られた平板の一次加工曲板の形状を計測する形状計測手段と、少なくとも計測された一次加工曲板の形状と目標形状を比較し一致度を判定する判定手段と、一致度が所定値を満たさない場合に一次加工曲板に付した追加加工プレスラインを利用した追加加工手順を導出する手順導出手段とを備え、プレス加工手段により追加プレス加工として追加加工プレスラインに主曲率のうちの最大主方向を追跡した最大主曲率線を与える加工を行い、目標形状との一致度が所定値を満たす曲面を得ることを特徴とする。
請求項17に記載の本発明によれば、追加プレス加工を的確に行い、平板プレス加工の精度(目標形状との一致度)を向上させることができる。また、追加プレス加工として追加加工プレスラインに主曲率のうちの最大主方向を追跡した最大主曲率線を与える加工を行うことで、追加プレス加工を効率よく行なうことができる。
【0024】
請求項18記載の本発明は、判定手段と手順導出手段を、コンピュータを用いて構成したことを特徴とする。
請求項18に記載の本発明によれば、一致度の判定と追加加工手順の導出を正確かつ迅速に行なうことができる。
【0025】
請求項19記載の本発明は、形状計測手段として、レーザスキャナを用いることを特徴とする。
請求項19に記載の本発明によれば、曲板の3次元形状を精度よく計測することができる。
【0026】
請求項20記載の本発明は、一次加工曲板の形状及び/又は目標形状を、拡張現実技術を用いて表示手段に表示させることを特徴とする。
請求項20に記載の本発明によれば、作業者がプレス加工中や加工後の曲げ状況、加工要領等を認識しやすくなる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の平板プレス加工の作業支援方法によれば、追加プレス加工を的確に行い、平板プレス加工の精度(目標形状との一致度)を向上させることができる。また、追加プレス加工として追加加工プレスラインに主曲率のうちの最大主方向を追跡した最大主曲率線を与える加工を行うことで、追加プレス加工を効率よく行なうことができる。
【0028】
また、判定ステップにおける一致度は、計測された一次加工曲板の形状の点群データに目標形状のCADデータを重畳して求める場合には、一次加工曲板の曲面と目標形状の曲面との対応付けを的確に行い、一次加工曲板の形状と目標形状との一致度を精度よく判定することができる。
【0029】
また、重畳は、一次加工曲板の形状の点群データから目標形状に関連する点群データを抽出して行なう場合には、一次加工曲板の曲面と目標形状の曲面との重畳を精度よく行なうことができる。
【0030】
また、一致度は、目標形状の曲率線の法曲率と、計測された一次加工曲板の形状の相当曲率線の法曲率との差分より求める場合には、一次加工曲板の形状と目標形状との一致度を精度よく求め、追加加工のレベルを判定することができる。
【0031】
また、追加加工プレスラインは、一次加工曲板の形状の計測結果から曲率線に対応した曲線を求め、曲線に沿った角度を計算しプレス点を求めて描画するものである場合には、追加加工プレスラインを精度よく算出して描画することができる。
【0032】
また、追加加工手順は、プレス加工のプレス位置、プレス角度、及びプレス負荷を含む場合には、追加加工手順を的確に作業者に指示することができる
【0033】
た、一次加工手順及び/又は追加加工手順は、補強材の取り付け位置を含む関連情報を提供する場合には、補強材の取り付け位置についても作業者に指示することができる。
【0034】
また、形状の計測はレーザスキャナを用いて行なう場合には、曲板の3次元形状を精度よく計測することができる。
【0035】
また、一次加工曲板の形状及び/又は目標形状を、拡張現実技術を用いて表示手段に表示させる場合には、作業者がプレス加工中や加工後の曲板の曲げ状況、加工要領等を認識しやすくなる。
【0036】
また、本発明の平板プレス加工の作業支援プログラムによれば、追加プレス加工を的確に行い、平板プレス加工の精度(目標形状との一致度)を向上させることができる。また、追加プレス加工として追加加工プレスラインに主曲率のうちの最大主方向を追跡した最大主曲率線を与える加工を行うべく追加加工手順の導出結果を一次加工曲板に反映することで、追加プレス加工を効率よく行なうことができる。
【0037】
また、判定ステップにおける一致度は、計測された一次加工曲板の形状の点群データに目標形状のCADデータを重畳して求める場合には、一次加工曲板の曲面と目標形状の曲面との対応付けを的確に行い、一次加工曲板の形状と目標形状との一致度を精度よく判定することができる。
【0038】
また、重畳は、一次加工曲板の形状の点群データから目標形状に関連する点群データを抽出して行なう場合には、一次加工曲板の曲面と目標形状の曲面との重畳を精度よく行なうことができる。
【0039】
また、一致度は、目標形状の曲率線の法曲率と、計測された一次加工曲板の形状の相当曲率線の法曲率との差分より求める場合には、一次加工曲板の形状と目標形状との一致度を精度よく求め、追加加工のレベルを判定することができる。
【0040】
また、追加加工プレスラインは、一次加工曲板の形状の計測結果から曲率線に対応した曲線を求め、曲線に沿った角度を計算しプレス点を求めて描画するものである場合には、追加加工プレスラインを精度よく算出して描画することができる。
【0041】
また、追加加工手順は、プレス加工のプレス位置、プレス角度、及びプレス負荷を含む場合には、追加加工手順を的確に作業者に指示することができる
【0042】
た、一次加工手順及び/又は追加加工手順は、補強材の取り付け位置を含む関連情報を提供する場合には、補強材の取り付け位置についても作業者に指示することができる。
【0043】
また、本発明の平板プレス加工の作業支援システムによれば、追加プレス加工を的確に行い、平板プレス加工の精度(目標形状との一致度)を向上させることができる。また、追加プレス加工として追加加工プレスラインに主曲率のうちの最大主方向を追跡した最大主曲率線を与える加工を行うことで、追加プレス加工を効率よく行なうことができる。
【0044】
また、判定手段と手順導出手段を、コンピュータを用いて構成した場合には、一致度の判定と追加加工手順の導出を正確かつ迅速に行なうことができる。
【0045】
また、形状計測手段として、レーザスキャナを用いる場合には、曲板の3次元形状を精度よく計測することができる。
【0046】
また、一次加工曲板の形状及び/又は目標形状を、拡張現実技術を用いて表示手段に表示させる場合には、作業者がプレス加工中や加工後の曲げ状況、加工要領等を認識しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の実施形態による平板プレス加工の作業支援方法のフロー図
図2】同形状計測ステップから手順導出ステップまでの詳細フロー図
図3】同目標形状と現在形状間のマッピングとパラメータ化の概念図
図4】同追加加工プレスラインの計算の概念図
図5】本発明の実施形態による平板プレス加工の作業支援プログラムのフロー図
図6】本発明の実施形態による平板プレス加工の作業支援システムのブロック図
図7】実証試験における計算された鋼板の初期プレスラインを示す図
図8】同初期プレスラインがマーキングされたプレス加工前の鋼板を示す写真
図9】同初期のプレス加工を行い曲板となった鋼板の形状をレーザスキャンする様子を示す写真
図10】同目標形状のCAD表面データに重ねられた点群データを示す図
図11】同目標形状と現在形状の主曲率の差を示すカラーマップ
図12】同目標形状の表面の第1曲率線に対応する現在形状の表面上の曲線を示す図
図13】同曲率を示す図
図14】同作業支援システムが最終的に出力した追加加工プレスラインを示す図
図15】従来の方法によって作業者が取得した追加加工プレスラインを示す図
図16】実証試験において作業者がARアプリケーションを使用して現在形状を確認している状態を示す写真
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施形態による平板プレス加工の作業支援方法、平板プレス加工の作業支援プログラム、及び平板プレス加工の作業支援システムについて説明する。
【0049】
図1は本実施形態による平板プレス加工の作業支援方法のフロー図である。図2は形状計測ステップから手順導出ステップまでの詳細フロー図である。
平板プレス加工の作業支援方法は、例えば造船所における曲り外板の成形作業において、平板をプレス加工して目標形状の曲板を得るために用いられる。
目標形状の曲面は、設計にて展開され、NC切断機等により鋼板等から平板として切り出される。
【0050】
まず、曲面を展開した平板に付した初期プレスライン(プレス線)を利用した一次加工手順に従ってプレス加工を行なう(S1:一次加工ステップ)。
【0051】
平板に付す初期プレスラインは、設計された3D表面から展開された平板で計算される。
初期プレスラインは、例えば、文献「松尾宏平他,曲率線情報に基づく造船プレス加工支援システムに関する研究,日本船舶海洋工学会論文集,Vol.28,pp.189-201,2018」にあるように、曲率線展開法を用いて算出する。
曲率線とは、曲面の微分幾何学に基づいて計算される曲面上の曲線群である。曲面上の任意の点では、法曲率が最大値をとる最大主方向と、最小値をとる最小主方向とが存在する。それらの方向は互いに直交することが知られており、それぞれの方向を追跡した曲線は曲率線(「lines of curvature」又は「curvature lines」)と呼ばれる。そのため曲率線は、最大主方向を追跡した最大主曲率線(第1曲率線)と、最小主方向を追跡した最小主曲率線(第2曲率線)とが存在し、それらは曲面上で直交網を構築する。
初期プレスラインは、補強材の取り付け位置を表す他の基準線と共に平板上にNCマーキングされる。
なお、一次加工(初期のプレス加工)としてのプレス加工は、型プレスを含む曲率線展開法を用いない方法であってもよい。
【0052】
一次加工ステップS1の後は、形状計測ステップS2となる。
形状計測ステップS2は、プレス加工を行った曲板の曲面形状を全体的に計測する工程であり、一次加工ステップS1の後においては、平板をプレス加工することにより得られた曲板である一次加工曲板の形状を計測する。
【0053】
形状計測ステップS2において、形状の計測には、レーザスキャナを用いる。レーザは、初期プレスラインが描画されている面に対して照射する。
レーザスキャナを用いることにより、曲げ型(木枠)を用いる場合よりも曲板の3次元形状を客観的に精度よく計測することができる。また、曲げ型の製作が不要になるため作業工数を低減することができる。
レーザスキャナによる測定によって取得した点群データには、加工対象の曲板以外の点群データ(ノイズ)も含まれている。よって、加工対象の曲板以外の点群データを除去する等の点群データ処理を行い、加工対象の曲板に関連する点群データのみを抽出する(点群データ処理ステップS2-1)。これにより、曲板の曲面形状を求めることができる。
【0054】
形状計測ステップS2の後は、判定ステップS3となる。
判定ステップS3は、形状計測ステップS2において形状が計測された曲板と目標形状とを比較し、一致度が所定値を以上か否かを判定する。
ここでは、形状計測ステップS2において計測した形状が一次加工曲板であるため、計測された一次加工曲板の形状と目標形状を比較し、一致度が所定値以上か否かを判定する。
【0055】
判定ステップS3においては、計測された曲板の形状の点群データに目標形状のCADデータを重畳する(重畳ステップS3-1)。これにより、その時点での曲板の形状(以下、「現在形状」ということがある。)の曲面と目標形状の曲面との対応付けを的確に行い、現在形状と目標形状との一致度を精度よく判定することができる。
具体的には、目標形状の曲面がパラメータ(u,v)を使用して関数f(u,v)として数学的に表現される場合、レーザスキャナによって測定された各点群データPc(n),(n=1,Np)について、対応する(u,v)が決定される。次に、各点のパラメータ(u,v)が可能な限り保存されるように、現在形状の曲面g(u,v)が取得される(曲面生成ステップS3-2)。現在形状の曲面g(u,v)は、本実施形態ではNURBS曲面で表している。
ここでは、形状計測ステップS2において形状を計測した曲板が一次加工曲板であるため、計測された一次加工曲板の形状の点群データに目標形状のCADデータを重畳する。
【0056】
計測された曲板の形状の点群データと目標形状のCADデータとの重畳は、曲板の形状の点群データから目標形状に関連する点群データを抽出して行なう。これにより、その時点での曲板の曲面と目標形状の曲面との重畳を精度よく行なうことができる。
ここでは、形状計測ステップS2において形状を計測した曲板が一次加工曲板であるため、計測された一次加工曲板の形状の点群データから目標形状に関連する点群データを抽出して重畳する。
【0057】
判定ステップS3における一致度は、目標形状の曲率線の法曲率と、計測された曲板の形状の相当曲率線の法曲率との差分より求める。これにより、現在形状と目標形状との一致度を精度よく求め、追加加工のレベルを判定することができる。
ここでは、形状計測ステップS2において形状を計測した曲板が一次加工曲板であるため、目標形状の曲率線の法曲率と、計測された一次加工曲板の形状の相当曲率線の法曲率との差分より一致度を求める。
なお、相当曲率線は、プレス加工された曲板において、目標形状の曲率線に相当する曲率線である。
上述のように曲率線は、最大主方向を追跡した最大主曲率線(第1曲率線)と、最小主方向を追跡した最小主曲率線(第2曲率線)とが存在する。本実施形態では、目標形状の曲率線として第1曲率線を用いているので、プレス加工された曲板における相当曲率線としては第1相当曲率線となる。
【0058】
判定ステップS3において一致度が所定値を満たす(所定値以上)と判定された場合は、プレス加工を終了する。
プレス加工の後、必要な場合は線状加熱を行なう工程に移行する。
なお、一致度の所定値は、線状加熱等の後加工の有無によっても異なるが、日本船舶海洋工学会が出している「日本鋼船工作法精度標準」による、外板曲がりの場合の精度許容限界±5mm(外板の大きさに依らない)に基づいて設定することが好ましい。
【0059】
一方、判定ステップS3において一致度が所定値を満たさない(所定値未満)と判定された場合は、曲板に付す追加加工プレスラインを利用した追加加工手順を導出する(S4:手順導出ステップ)。
ここでは、判定ステップS3において一次加工曲板と目標形状を比較しているため、一次加工曲板に付す追加加工プレスラインを利用した追加加工手順を導出する。
追加加工手順は、目標形状との一致度が所定値を満たさない曲板について、目標形状を得るための追加のプレス位置となる追加加工プレスラインを提示する。この機能は、初期プレスラインと共に扱われる。板金の材料特性やプレス操作のばらつきにより、初期プレスラインに沿ってプレス加工したとしても目標形状をそれだけで得ることは困難であるため、追加加工プレスラインを提示することで、プレス加工を補完することができる。
【0060】
追加加工手順においては、追加加工プレスラインを出力する。
目標形状上の第1曲率線に相当する現在形状上の第1相当曲率線の法曲率(それまでのプレス加工で付与された曲率に相当)が、目標形状上の第1曲率線の法曲率(最終的にプレス加工で付与すべき曲率に相当)になるように、追加のプレス位置を定める。そして、第2曲率線に平行になるように、最終的な追加加工プレスラインを定める。
【0061】
追加加工プレスラインは、曲面の曲率線の情報に基づいて計算される。つまり、プレス加工は、幾何学的解釈に基づき、目標形状f(u,v)における曲率線に沿った主曲率Knをプレスによって与えられることとする。
【0062】
目標形状における第1曲率線CL1(n)(u,v),(n=1,NCL)が準備されると、目標形状fにおける第1曲率線CL1(n)(u,v)に対応する現在形状gの曲線g_CL1(n)(u,v)が得られる(対応曲線導出ステップS4-1)。
【0063】
追加プレス加工は、現在形状gの曲線g_CL1(n)(u,v)に沿った法曲率g_Kn(u,v)を目標形状fの主曲率Kn(u,v)と一致させる。
具体的には、下式(1)のように、第1曲率線CL1(n)に垂直な第2曲率線を基準線として選択し、プレス角度差θ(s)は、交点Pからの曲線に沿って主曲率Kn(u,v)と法曲率g_Kn(u,v)の曲率差を積分することによって決定される。
【数1】
【0064】
プレス角度差θ(s)が予め設定されたプレス角度ΔPを超える点がプレス点である(プレス点導出ステップS4-2)。
これは、すべての第1曲率線CL1(n) ,(n=1,NCL)に対して実行され、隣接する第1曲率線CL1(n)のプレス点は、追加加工プレスラインを取得するために第2曲率線に平行になるように接続して描画される(追加加工プレスライン描画ステップS4-3)。
図3は目標形状と現在形状間のマッピングとパラメータ化の概念図である。図4は追加加工プレスラインの計算の概念図である。
【0065】
このように、追加加工プレスラインは、曲板の形状の計測結果から曲率線に対応した曲線を求め、曲線に沿った角度を計算しプレス点を求めて描画する。これにより、追加加工プレスラインを精度よく算出して描画することができる。
【0066】
また、追加プレス加工は追加加工プレスラインに主曲率を与える加工とすることで、追加プレス加工を効率よく行なうことができる。
【0067】
追加加工手順は、プレス加工のプレス位置、プレス角度、及びプレス負荷を含む。これにより、追加加工手順を的確に作業者に指示することができる。
プレス位置及びプレス角度は追加加工プレスラインによって与えられる。また、プレス負荷は、現在形状と目標形状との一致度の差に基づき、所定の曲り角度を与えるには、現在形状にどれだけの荷重を加えれば良いかを算出して与えられる。
【0068】
また、一次加工手順及び/又は追加加工手順は、補強材の取り付け位置を含む関連情報を提供する。これにより、補強材の取り付け位置についても作業者に指示することができる。
【0069】
追加加工プレスライン等の追加加工手順は、現場に設置されたタブレットPC等に転送され、AR技術(拡張現実技術)によって実際の曲板に重畳表示される。これにより作業者は、追加加工プレスラインが実際の曲板のどの位置に対応するか等を直感的に理解しやすくなる。
【0070】
また、一次加工曲板の形状と目標形状の少なくとも一方を、拡張現実技術を用いて表示手段50に表示させてもよい。これにより、作業者がプレス加工中や加工後の曲板の曲げ状況、加工要領等を認識しやすくなる。
【0071】
手順導出ステップS4の後は、追加加工ステップS5となる。
追加加工ステップS5は、手順導出ステップS4において導出した追加加工手順を曲板に反映して、追加プレス加工を行なう。
ここでは、手順導出ステップS4において一次加工曲板についての追加加工手順を導出しているので、導出した追加加工手順を一次加工曲板に反映して、追加プレス加工を行なう。
【0072】
追加加工ステップS5の後は、追加加工確認ステップS6となる。
追加加工確認ステップS6においては、再び形状計測ステップS2に移行し、追加加工ステップS5において追加プレス加工を行なった曲板である追加加工曲板の形状を計測する。
そして、判定ステップS3に進み、計測された追加加工曲板の形状と目標形状を比較し、一致度が所定値以上か否かを判定する。
【0073】
判定ステップS3において一致度が所定値を満たさない(所定値未満)と判定された場合は、手順導出ステップS4を経て追加加工ステップS5に進む。
以降は、判定ステップS3において、現在形状と目標形状との一致度が所定値を満たす(所定値以上)と判定されるまで、すなわち目標形状との一致度が所定値を満たす曲面が得られるまで、同様のステップを繰り返す。
このように、平板をプレス加工して一次加工曲板を得た後、追加のプレス加工を繰り返すにあたり、任意の時点における曲板の形状(現在形状)に応じた合理的な追加加工手順を導出することで、追加プレス加工を的確に行い、平板プレス加工の精度(目標形状との一致度)を向上させることができる。これにより、例えば、その後の線状加熱に係る時間を短縮することができる。また、作業者の技能度合に依らない作業体制を構築して生産性の向上に寄与することができる。
【0074】
図5は本実施形態による平板プレス加工の作業支援プログラムのフロー図である。
平板プレス加工の作業支援プログラムは、上記で説明した平板プレス加工の作業支援方法と同様の機能を有しており、追加プレス加工を的確に行い、平板プレス加工の精度(目標形状との一致度)を向上させることができる。
【0075】
平板プレス加工の作業支援プログラムは、コンピュータに、形状取得ステップS11と、目標形状取得ステップS12と、判定ステップS13と、手順導出ステップS14と、手順反映ステップS15を実行させ、目標形状との一致度が所定値を満たす曲面を得る。
形状取得ステップS11においては、曲面を展開した平板に付したプレスラインを利用した一次加工手順に従ってプレス加工を行なった平板の一次加工曲板の形状を計測した計測結果を取得する。
目標形状取得ステップS12においては、プレス加工における最終的な目標とする形状である目標形状を取得する。
判定ステップS13においては、少なくとも計測された一次加工曲板の形状と目標形状を比較し一致度を判定する。
判定ステップS13において一致度が所定値を満たさない(所定値未満)と判定された場合は、手順導出ステップS14において一次加工曲板に付した追加加工プレスラインを利用した追加加工手順を導出する。
手順反映ステップS15においては、手順導出ステップS14における追加加工手順の導出結果を一次加工曲板に反映する。
なお、判定ステップS13において一致度が所定位置を満たす(所定値以上)と判定された場合は、プレス加工を終了する。プレス加工の後は、必要な場合は線状加熱を行なう工程に移行する。
【0076】
作業者は、手順反映ステップS15で一次加工曲板に反映された追加加工手順に基づき、一次加工曲板に対して追加プレス加工を行なう。
追加プレス加工の後、作業者は、追加プレス加工を行った曲板である追加加工曲板の形状を計測し、計測結果をコンピュータに入力する。
平板プレス加工の作業支援プログラムは、コンピュータに追加加工曲板の形状の計測結果が入力されると、判定ステップS13に移行し、計測された追加加工曲板の形状と目標形状を比較し、一致度を判定する。
そして、判定ステップS13において一致度が所定値を満たさない(所定値未満)と判定された場合は、手順導出ステップS14を経て追加加工ステップS15に進む。
以降は、判定ステップS13において、プレス加工を行った曲板の形状と目標形状との一致度が所定値を満たす(所定値以上)と判定されるまで、同様のステップを繰り返す。
これにより、追加プレス加工を的確に行い、平板プレス加工の精度(目標形状との一致度)を向上させることができる。
【0077】
なお、判定ステップS13における一致度は、計測された一次加工曲板の形状の点群データに目標形状のCADデータを重畳して求めることが好ましい。これにより、一次加工曲板の曲面と目標形状の曲面との対応付けを的確に行い、一次加工曲板の形状と目標形状との一致度を精度よく判定することができる。
【0078】
また、重畳は、一次加工曲板の形状の点群データから目標形状に関連する点群データを抽出して行なうことが好ましい。これにより、一次加工曲板の曲面と目標形状の曲面との重畳を精度よく行なうことができる。
【0079】
また、一致度は、目標形状の曲率線の法曲率と、計測された一次加工曲板の形状の相当曲率線の法曲率との差分より求めることが好ましい。これにより、一次加工曲板の形状と目標形状との一致度を精度よく求め、追加加工のレベルを判定することができる。
【0080】
また、追加加工プレスラインは、一次加工曲板の形状の計測結果から曲率線に対応した曲線を求め、曲線に沿った角度を計算しプレス点を求めて描画するものであることが好ましい。これにより、追加加工プレスラインを精度よく算出して描画することができる。
【0081】
また、追加加工手順は、プレス加工のプレス位置、プレス角度、及びプレス負荷を含むことが好ましい。これにより、追加加工手順を的確に作業者に指示することができる。
【0082】
また、追加プレス加工は追加加工プレスラインに主曲率を与える加工であることが好ましい。これにより、追加プレス加工を効率よく行なうことができる。
【0083】
また、一次加工手順及び/又は追加加工手順は、補強材の取り付け位置を含む関連情報を提供することが好ましい。これにより、補強材の取り付け位置についても作業者に指示することができる。
【0084】
図6は本実施形態による平板プレス加工の作業支援システムのブロック図である。 平板プレス加工の作業支援システムは、上記で説明した平板プレス加工の作業支援方法及び平板プレス加工の作業支援プログラムと同様の機能を有しており、追加プレス加工を的確に行い、平板プレス加工の精度(目標形状との一致度)を向上させることができる。
【0085】
平板プレス加工の作業支援システムは、プレス加工手段10と、形状計測手段20と、判定手段30と、手順導出手段40を備え、目標形状との一致度が所定値を満たす曲面を得る。
プレス加工手段10は、少なくとも曲面を展開した平板に付したプレスラインを利用した一次加工手順に従ってプレス加工を行なう。
形状計測手段20は、少なくとも一次加工手順で得られた平板の一次加工曲板の形状を計測する。
判定手段30は、少なくとも計測された一次加工曲板の形状と目標形状を比較し一致度を判定する。
手順導出手段40は、一致度が所定値を満たさない(所定値未満)と判定手段30が判定した場合に、一次加工曲板に付した追加加工プレスラインを利用した追加加工手順を導出する。
なお、判定手段30において一致度が所定位置を満たす(所定位置以上)と判定された場合は、プレス加工を終了する。プレス加工の後は、必要な場合は線状加熱を行なう工程に移行する。
【0086】
平板プレス加工の作業支援システムは、手順導出手段40で導出した追加加工手順に基づき、プレス加工手段10を用いて一次加工曲板に対して追加プレス加工を行なう。
追加プレス加工の後、追加プレス加工を行った曲板である追加加工曲板の形状を形状計測手段20により計測する。
判定手段30は、計測された追加加工曲板の形状と目標形状を比較し、一致度が所定値以上か否かを判定する。
そして、判定手段30において一致度が所定値を満たさない(所定値未満)と判定された場合は、手順導出手段40において追加加工手順を導出し、プレス加工手段10を用いて再び追加プレス加工を行なう。
以降は、判定手段30において、プレス加工を行った曲板の形状と目標形状との一致度が所定値を満たす(所定値以上)と判定されるまで、同様の手順を繰り返す。
これにより、追加プレス加工を的確に行い、平板プレス加工の精度(目標形状との一致度)を向上させることができる。
【0087】
なお、判定手段30と手順導出手段40を、コンピュータを用いて構成することが好ましい。これにより、一致度の判定と追加加工手順の導出を正確かつ迅速に行なうことができる。
【0088】
また、形状計測手段20として、レーザスキャナを用いることが好ましい。これにより、曲板の3次元形状を精度よく計測することができる。
【0089】
また、一次加工曲板の形状及び/又は目標形状を、拡張現実技術を用いて表示手段50に表示させることが好ましい。これにより、作業者がプレス加工中や加工後の曲板の曲げ状況、加工要領等を認識しやすくなる。表示手段50は、タブレットPC等である。
【0090】
次に、本発明による平板プレス加工の作業支援システムの実証実験結果について説明する。
本発明による平板プレス加工の作業支援システムを評価するために、造船所において実船用の鋼板を用いてプレス加工の実証実験を行った。実証実験では、作業支援システムが出力するプレス加工手順に従って、作業者がプレス加工を行った。実証実験に用いた鋼板の主な仕様は下表1の通りである。
【表1】
【0091】
図7は計算された鋼板の初期プレスラインを示す図である。
これらの初期プレスラインは、造船所のプレス機械の特性を考慮して、プレス長3m、プレス角度0.4度(プレス荷重160トンに相当)として計算された。
図8は初期プレスラインがマーキングされたプレス加工前の鋼板を示す写真である。初期プレスラインは、NCマシンによって鋼板にマーキングされた。作業者は、初期プレスラインと鋼板にマーキングされたプレス荷重に従って最初のプレス加工を行った。
【0092】
初期のプレス加工が完了した後、曲板となった鋼板の形状をレーザスキャナで測定した。図9は初期のプレス加工を行い曲板となった鋼板の形状をレーザスキャンする様子を示す写真である。
レーザスキャンにより、585,362(段落0059におけるNp)点が、鋼板上の点群データとして抽出された。
【0093】
図10は目標形状のCAD表面データに重ねられた585,362点の点群データを示している。同図右上の一部拡大図に示すように、点群データとCAD表面上の点は1対1で関連付けられている。その結果、CAD表面を表すパラメータ(u,v)が、レーザスキャナによって取得された各点群データに割り当てられる。
【0094】
図11は目標形状の主曲率と現在形状の相当曲率線の法曲率の差を示すカラーマップである。曲率の差は、追加が必要なプレス加工の量を意味する。
【0095】
図12は目標形状の表面の第1曲率線に対応する現在形状の表面上の曲線を示す図である。これは、上述した曲線g_CL1(n)(u,v)に対応する。
図13は曲率を示す図であり、図13(a)は目標形状上の第1曲率線CL1(n)(u,v)に沿った主曲率を示し、図13(b)は現在形状上の第1相当曲率線g_CL1(n)(u,v)に沿った法曲率を示している。これらの曲線間の曲率の差を積分することにより、追加加工プレスラインのプレス角度が得られる。
【0096】
図14は作業支援システムが最終的に出力した追加加工プレスラインを示す図である。同図中の円で囲んだ箇所は曲げが不足しており、この位置の追加加工プレスラインは追加のプレスが必要であることを示している。本実証実験では初期のプレス加工がわずかに過剰に曲げられていたため、主に曲りを戻すための追加加工プレスラインが出力された。
図15は従来の方法(木型による形状確認)によって作業者が取得した追加加工プレスラインを示す図である。図14図15を対比すると、作業支援システムが出力する追加加工プレスラインは、従来の方法で作業者が取得した追加加工プレスラインと同じ傾向があることがわかり、作業支援システムの有効性が確認された。
【0097】
図16は作業者がARアプリケーションを使用して現在形状を確認している状態を示す写真である。本実証実験では、AR(拡張現実技術)による情報の重畳を、表示手段50であるタブレットPCを用いて行った。ARにより、効果的な情報表現とコミュニケーションを行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、造船所等の平板をプレスにより曲げ加工を行なう現場に広く展開することができ、それらの現場において、曲げ加工における生産性の向上、品質の向上、生産体制の安定化、加工費の低減、技能の継承の容易化等に寄与する。
【符号の説明】
【0099】
10 プレス加工手段
20 形状計測手段
30 判定手段
40 手順導出手段
50 表示手段
S1 一次加工ステップ
S2 形状計測ステップ
S3 判定ステップ
S4 手順導出ステップ
S5 追加加工ステップ
S6 追加加工確認ステップ
S11 形状取得ステップ
S12 目標形状取得ステップ
S13 判定ステップ
S14 手順導出ステップ
S15 手順反映ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16