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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】膨張弁および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/40 20210101AFI20231114BHJP
   F25B 41/335 20210101ALI20231114BHJP
   F16K 31/68 20060101ALI20231114BHJP
   F16K 47/02 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
F25B41/40 A
F25B41/335 C
F16K31/68 S
F16K47/02 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019203632
(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公開番号】P2021076190
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100100365
【弁理士】
【氏名又は名称】増子 尚道
(72)【発明者】
【氏名】冨塚 真弘
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】矢野 卓宏
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-023896(JP,A)
【文献】特開2017-187225(JP,A)
【文献】特開2020-060356(JP,A)
【文献】特開2017-025975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 41/335
F25B 41/40
F16K 31/64-31/72
F16K 47/00-47/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体を導入する流入路と当該熱媒体を排出する流出路とに連通する弁室を有する弁本体と、
前記弁室の内部に配置され、弁座に着座した閉弁状態と前記弁座から離間した開弁状態との間で前記弁座に対して進退動することにより前記熱媒体の流量を変更する弁体と、
前記弁体を支持する弁支持部と、
前記弁支持部を介して前記弁体を前記弁座に向けて付勢する付勢部材と、
前記弁体に接触して前記付勢部材による付勢力に抗し前記弁体を開弁方向へ移動させる作動棒と、
前記作動棒を駆動する駆動部と
を備えた膨張弁であって、
前記弁室は、
前記流入路を通じて前記熱媒体を導入する流入口と、
前記流出路を通じて前記熱媒体を排出する流出口と
を有し、
前記弁支持部は、
周面の一部が、前記弁室の内壁面に摺動可能に当接し、且つ、前記流入口から前記弁室内に流入して前記流出口に向け流れる前記熱媒体に押されて前記弁室の内壁面に押し付けられるように、前記弁室内に備えられており、
前記流入口に対向する側の弁室の内壁面に沿うように広がって当該内壁面に当接する後周面と、
前記流入口側の弁室の内壁面から離間して、当該流入口側の弁室の内壁面との間に、前記流入口から前記流出口に向け流れる熱媒体の流路を形成する前周面と
を有し、
前記弁支持部の軸方向から見たときに前記後周面は円弧状に広がる一方、
前記前周面は前記流入口に対向するように広がる平面であり、
これにより前記弁支持部が略D字状の横断面を有する
ことを特徴とする膨張弁。
【請求項2】
前記後周面に、前記流入口に対向する側の弁室の内壁面に向け突出して当該内壁面に当接する突起を1つ以上備えた
請求項に記載の膨張弁。
【請求項3】
熱媒体を導入する流入路と当該熱媒体を排出する流出路とに連通する弁室を有する弁本体と、
前記弁室の内部に配置され、弁座に着座した閉弁状態と前記弁座から離間した開弁状態との間で前記弁座に対して進退動することにより前記熱媒体の流量を変更する弁体と、
前記弁体を支持する弁支持部と、
前記弁支持部を介して前記弁体を前記弁座に向けて付勢する付勢部材と、
前記弁体に接触して前記付勢部材による付勢力に抗し前記弁体を開弁方向へ移動させる作動棒と、
前記作動棒を駆動する駆動部と
を備えた膨張弁であって、
前記弁室は、
前記流入路を通じて前記熱媒体を導入する流入口と、
前記流出路を通じて前記熱媒体を排出する流出口と
を有し、
前記弁支持部は、
周面の一部が、前記弁室の内壁面に摺動可能に当接し、且つ、前記流入口から前記弁室内に流入して前記流出口に向け流れる前記熱媒体に押されて前記弁室の内壁面に押し付けられるように、前記弁室内に備えられており、
前記流入口に対向する側の弁室の内壁面に沿うように広がって当該内壁面に当接する後周面と、
前記流入口側の弁室の内壁面から離間して、当該流入口側の弁室の内壁面との間に、前記流入口から前記流出口に向け流れる熱媒体の流路を形成する前周面と
を有し、
前記後周面に、前記流入口に対向する側の弁室の内壁面に向け突出して当該内壁面に当接する突起を1つ以上備えた
ことを特徴とする膨張弁。
【請求項4】
前記突起は、半球状の形状を有する
請求項2または3に記載の膨張弁。
【請求項5】
前記弁体の進退動方向に延び且つ前記突起と係合して当該突起を介し前記弁支持部が前記弁支持部の軸周りに回転することを阻止するスリットを前記流入口に対向する側の弁室の内壁面に備えた
請求項2から4のいずれか一項に記載の膨張弁。
【請求項6】
熱媒体を導入する流入路と当該熱媒体を排出する流出路とに連通する弁室を有する弁本体と、
前記弁室の内部に配置され、弁座に着座した閉弁状態と前記弁座から離間した開弁状態との間で前記弁座に対して進退動することにより前記熱媒体の流量を変更する弁体と、
前記弁体を支持する弁支持部と、
前記弁支持部を介して前記弁体を前記弁座に向けて付勢する付勢部材と、
前記弁体に接触して前記付勢部材による付勢力に抗し前記弁体を開弁方向へ移動させる作動棒と、
前記作動棒を駆動する駆動部と
を備えた膨張弁であって、
前記弁室は、
前記流入路を通じて前記熱媒体を導入する流入口と、
前記流出路を通じて前記熱媒体を排出する流出口と
を有し、
前記弁支持部は、
周面の一部が、前記弁室の内壁面に摺動可能に当接し、且つ、前記流入口から前記弁室内に流入して前記流出口に向け流れる前記熱媒体に押されて前記弁室の内壁面に押し付けられるように、前記弁室内に備えられており、
前記流入口に対向する側の弁室の内壁面に沿うように広がって当該内壁面に当接する後周面と、
前記流入口側の弁室の内壁面から離間して、当該流入口側の弁室の内壁面との間に、前記流入口から前記流出口に向け流れる熱媒体の流路を形成する前周面と
を有し、
前記後周面に、前記弁支持部の軸方向に延びる平面部を形成し、
当該平面部の両縁が、前記流入口に対向する側の弁室の内壁面に当接するようにした
ことを特徴とする膨張弁。
【請求項7】
前記後周面に、前記弁支持部の軸方向に延びる平面部を形成し、
当該平面部の両縁が、前記流入口に対向する側の弁室の内壁面に当接するようにした
請求項1から5のいずれか一項に記載の膨張弁。
【請求項8】
前記弁体と前記弁支持部が一体の部材である
請求項1から7のいずれか一項に記載の膨張弁。
【請求項9】
熱媒体を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された前記熱媒体を冷却して液化する凝縮器と、
前記凝縮器で液化された前記熱媒体を減圧膨張させる膨張弁と、
前記膨張弁で減圧膨張された前記熱媒体を蒸発気化する蒸発器と
を備えた冷凍サイクル装置であって、
前記膨張弁が、前記請求項1から8のいずれか一項に記載の膨張弁であることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張弁および冷凍サイクル装置に係り、特にエアコンなどの冷凍サイクルに備えられる膨張弁の弁振動を抑制し、異音が発生することを防ぐ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カーエアコンのような冷凍サイクル装置では、エバポレータ(蒸発器)の能力を十分に引き出すために膨張弁が備えられる。この膨張弁は、エバポレータの出口側配管の冷媒温度に感応してエバポレータに供給される冷媒の流れを絞り、最適流量に制御する。
【0003】
一方、かかる膨張弁では、弁の開度が小さいときに弁振動が生じ、この振動によって膨張弁から異音が発生することがある。このため、下記特許文献1のような弁振動を抑制する提案が従来からなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-11885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の発明は、弁開度が小さいときほど弁支持部や作動棒を押さえる力が強くなる構造を採用することで弁開度に応じた効果的な制振が可能となる一方で、制振用の防振ばねを新たに備える必要があり、部品点数の増加から製造コストが嵩む面がある。また部品点数が増える分、組立工程数も増えることとなる。
【0006】
他方、弁振動は弁の開度だけでなく、弁内を通過する冷媒の圧力にも影響され、冷媒の圧力が高くなるほど弁振動は起こりやすくなる。しかしながら、上記特許文献1記載の発明は弁開度の観点から効果的な制振を企図したものであり、冷媒圧力に対応した効果的な振動抑制を行うことは必ずしも出来ない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、部品点数や製造工程数を増加させることなく弁振動を抑制することにあり、さらに、熱媒体の圧力が高くなるほど振動の抑制力を高めることを可能とする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る膨張弁は、熱媒体を導入する流入路と当該熱媒体を排出する流出路とに連通する弁室を有する弁本体と、弁室の内部に配置され、弁座に着座した閉弁状態と弁座から離間した開弁状態との間で弁座に対して進退動することにより熱媒体の流量を変更する弁体と、弁体を支持する弁支持部と、弁支持部を介して弁体を弁座に向けて付勢する付勢部材と、弁体に接触して付勢部材による付勢力に抗し弁体を開弁方向へ移動させる作動棒と、作動棒を駆動する駆動部とを備える。
【0009】
また上記弁室は、流入路を通じて熱媒体を導入する流入口と、流出路を通じて熱媒体を排出する流出口とを有する。さらに上記弁支持部は、周面の一部が、弁室の内壁面に摺動可能に当接し、且つ、流入口から弁室内に流入して流出口に向け流れる熱媒体に押されて弁室の内壁面に押し付けられるように、弁室内に備えられている。
【0010】
本発明の膨張弁では、弁室の内壁面に摺動可能に当接するように備えられた弁支持部が流入口から流出口に向け流れる熱媒体に押されて弁室の内壁面に押し付けられるように配置されている。したがって、この熱媒体による押圧力により弁支持部やこれにより支持される弁体の振動が抑えられ、前述した防振ばねのような制振用の部材を別に備えなくても弁振動を抑制することができ、弁振動の抑制にあたって部品点数や製造工程数の増加を招くことを回避することが出来る。
【0011】
また、熱媒体の流れ(押圧力)を利用して制振を行う本発明によれば、熱媒体の圧力が高くなるほど強い押圧力が弁支持部に加わることとなるから、熱媒体の圧力が高いときほど生じやすくなる弁振動に効果的に対処することが可能となる。
【0012】
なお、上述した「周面の一部が弁室の内壁面に当接する」とは、周面の一部が内壁面に直接接触する構成に限られず、例えば後に述べるように突起を備えてこの突起を介して当接しているような、間接的に内壁面に押し当てられる構成を含む概念である。
【0013】
弁支持部は、流入口に対向する側の弁室の内壁面に沿うように広がって当該内壁面に当接する後周面と、流入口側の弁室の内壁面から離間して、当該流入口側の弁室の内壁面との間に、流入口から流出口に向け流れる熱媒体の流路を形成する前周面とを有することがある。このような態様では、流入口が備えられた側の弁室の内壁面と、弁支持部の前周面との間に形成された流路を通って流れる熱媒体に押されて弁支持部の後周面が、流入口に対向する側(流入口とは反対側)の弁室の内壁面に押し付けられ、これにより弁振動が抑制される。
【0014】
また本発明では、弁支持部の軸方向から見たときに上記後周面は円弧状に広がる一方、上記前周面は流入口に対向するように広がる平面であり、これにより弁支持部が略D字状の横断面を有する場合がある。
【0015】
さらに、上記後周面に、流入口に対向する側の弁室の内壁面に向け突出して当該内壁面に当接する突起を1つ以上備えても良い。突起の形状は、例えば半球状の形状とする。
【0016】
また、弁体の進退動方向に延び且つ上記突起と係合して当該突起を介し弁支持部が弁支持部の軸周りに回転することを阻止するスリットを流入口に対向する側の弁室の内壁面に備えても良い。このような態様によれば、弁支持部が軸周りに回転して上記突起が流入口側に移動し、流入口を塞いでしまうような事態を回避することが出来る。
【0017】
また、上記後周面に、弁支持部の軸方向に延びる平面部を形成し、当該平面部の両縁が、流入口に対向する側の弁室の内壁面に当接するようにしても良い。このような態様によれば、軸方向に延びる一対の平面部の縁が弁室内壁面に当接して押し付けられるから、安定した強い振動抑制力を得ることが出来る。
【0018】
弁支持部は、典型的には後に説明する実施形態のように弁体と別の部材により構成するが、本発明では弁体と弁支持部を一体の部材により(一つの部材として一体に)構成することも可能である。
【0019】
また、本発明に係る冷凍サイクル装置は、熱媒体を圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮された熱媒体を冷却して液化する凝縮器と、凝縮器で液化された熱媒体を減圧膨張させる膨張弁と、膨張弁で減圧膨張された熱媒体を蒸発気化する蒸発器とを備えた冷凍サイクル装置であり、膨張弁として前述した本発明に係るいずれかの膨張弁を使用する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、部品点数や製造工程数を増加させることなく弁振動を抑制することができ、熱媒体の圧力が高くなるほど振動の抑制力を高めることが可能となる。
【0021】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る膨張弁を示す垂直断面図である。
図2図2は、前記第1実施形態に係る膨張弁(閉弁状態)の弁室部を拡大して示す垂直断面図である。
図3図3は、前記第1実施形態に係る膨張弁の弁支持部の水平断面図(図2のA-A矢視断面)である。
図4図4は、本発明の第2の実施形態に係る膨張弁の弁室部を拡大して示す垂直断面図である。
図5図5は、前記第2実施形態に係る膨張弁の弁支持部を示す斜視図(斜め前方から見た図)である。
図6図6は、前記第2実施形態に係る膨張弁の弁支持部を示す斜視図(斜め後方から見た図)である。
図7図7は、前記第2実施形態に係る膨張弁の弁支持部の水平断面図(図4のB-B矢視断面)である。
図8図8は、前記第2実施形態に係る膨張弁の弁支持部の水平断面図(図4のC-C矢視断面)である。
図9図9は、前記第2実施形態に係る膨張弁の変形例を前記図4と同様に示す垂直断面図である。
図10図10は、前記第2実施形態に係る膨張弁の変形例(弁支持部)を前記図6と同様に示す斜視図(斜め後方から見た図)である。
図11図11は、前記第2実施形態に係る膨張弁の変形例(弁支持部)を前記図8と同様に示す水平断面図(図4のC-C矢視断面に相当)である。
図12図12は、本発明の第3の実施形態に係る膨張弁の弁室部を拡大して示す垂直断面図である。
図13図13は、前記第3実施形態に係る膨張弁の弁支持部を示す斜視図(斜め後方から見た図)である。
図14図14は、前記第3実施形態に係る膨張弁の弁支持部の水平断面図(図9のD-D矢視断面)である。
図15図15は、前記第3実施形態に係る膨張弁の弁支持部の水平断面図(図9のE-E矢視断面)である。
図16図16は、本発明の第4の実施形態に係る冷凍サイクル装置を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
図1から図3を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。なお、各図には前後左右の各方向を表す二次元直交座標、または上下前後左右の各方向を表す三次元直交座標をそれぞれ示し、これらの方向に基いて説明を行う。
【0024】
図1から図3に示すように、本発明の第1の実施形態に係る膨張弁11は、弁室13を内部に備えた弁本体12と、弁室上部に形成された弁座14と、弁座14に対向し且つ弁座14に対して進退動(上下動)可能に設置された弁体15と、弁体15を下方から支持する弁体支持部16と、弁本体12の下面部に装着されることにより弁室13を封止するばね受け部材18と、ばね受け部材18と弁体支持部16との間に配置されて弁体支持部16を介し弁体15を弁座14に向け上方へ付勢するコイルばね(付勢部材)17と、弁体15をコイルばね17の付勢力に抗して弁座14から後退させる(下方へ移動させる)作動棒19と、弁本体12の上面部に備えられて作動棒19を上下動させるダイアフラム装置(駆動部)24とを有する。
【0025】
また弁本体12は、弁室13に冷媒(熱媒体)を導入する流入路21と、弁室13から外部へ冷媒を排出する流出路22と、弁本体12の上部を左右に貫通するように冷媒を流通させる戻り流路23をさらに備えている。なお、戻り流路23と上記ダイアフラム装置26の詳細については、本実施形態の膨張弁11を使用する後述の第4実施形態において説明する。
【0026】
流入路21と流出路22は弁室13を介して互いに連通するが、コイルばね17の上方への付勢力によって弁体15が弁座14に当接し着座した閉弁状態(図1および図2に示す状態)では流入路21と流出路22とは連通せずに遮断状態となる。一方、作動棒19の下方への押圧力により弁体15が下方へ移動し弁座14から離れると、流入路21と流出路22とが連通し、流入路21を通って流入口21aから弁室13の内部に流入した冷媒は、流出口22aから流出路22を通って膨張弁11の外へ排出されエバポレータ64(後述の図16参照)に導入される。そして、弁体15と弁座14との距離が変更されることにより当該冷媒の流量が調整される。
【0027】
弁の開閉を行う作動棒19は、弁本体12の内部において上下方向に延び、上端をダイアフラム装置24に接続し、下端を弁体15に接触させてある。
【0028】
弁支持部16は、弁体15を載せて当該弁体15が例えば溶接等の方法により固定される弁体固定部16aを上面に有するとともに、コイルばね17を接続するばね接続部16cを下面に有する。またこれら弁体固定部16aとばね接続部16cとの間の弁支持本体部16bは、図3に示すように円弧状に湾曲した後周面31と平面状の前周面32とからなる外周面を備え、略D字状の横断面(水平断面)を有する。なお、図3(後述の図7図8図11図14図15も同様)では、弁体15の位置を二点鎖線で示している。また、弁支持本体部16bの形状について別の表現をすれば、円柱の前面側の一部を垂直に切り欠いたような形状、より具体的には、円柱の前縁と中心軸との間の位置において中心軸に平行に垂直に当該円柱を切り欠いた形状を弁支持本体部16bは有する。
【0029】
そして、弁支持部16(弁支持本体部16b)の後周面31は、弁室13の内壁面13aに、より詳しくは流入口21aに対向する側(流入口21aが備えられている側とは反対側)の内壁面(後側内壁面)13aに、弁の開閉方向(すなわち上下方向)に摺動可能に接触している。一方、弁支持部16(弁支持本体部16b)の前周面32は、流入口21aから流出口22aに向け弁室13の内部を流れる熱媒体が当該前周面32と弁室内壁面13bとの間を通過し、熱媒体の流路を形成できるように流入口21aが備えられている側の弁室内壁面(前側内壁面)13bと距離を隔てて広がっている。
【0030】
したがって、開弁時には、流入口21aから弁室13の内部に流入した熱媒体が弁支持部16の前周面32と弁室前側内壁面13bとの間の流路を通って流出口22aに向け流れる。このとき弁支持部16は、熱媒体の流れに押されて後周面31が弁室13の後側内壁面13aに押し付けられ、この押圧力により弁支持部16やこれに固定された弁体15の振動が抑制される。言い換えれば、本実施形態の膨張弁11(後述の実施形態においても同様)は、弁室内を通過する熱媒体の流れによって弁支持部16が弁室13の内壁面13aに押し付けられるように熱媒体の流路を片側(流入口側/前側)に寄せたものである。
【0031】
また、熱媒体の圧力が高まるほど熱媒体が弁支持部16を弁室内壁面13aに押し付ける押圧力は大きくなるから、熱媒体の圧力に対応して弁振動を効果的に抑制することが可能となる。
【0032】
〔第2実施形態〕
図4から図8を参照して本発明の第2の実施形態に係る膨張弁について説明する。なお、以下の説明では、前記第1実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付して重複した説明を省略し、相違点を中心に説明を行う(後述の各実施形態についても同様)。
【0033】
図4から図8に示すように第2実施形態に係る膨張弁は、前記第1実施形態と比べ、弁支持部41の構造が異なるもので他の構成は同様である。具体的には、本実施形態において弁支持部41は、弁体15を載せて固定する天板部42(弁体固定部16a)と、弁支持本体部43と、弁支持本体部43の後周面を覆うように天板部42の後側縁部から立ち下がる外筒部44と、コイルばねを接続するばね接続部16cとを備えている。
【0034】
なお、本実施形態では、外筒部44の後周面31が前記第1実施形態の弁支持本体部16bの後周面31に相当し、当該外筒部44の後周面31が前記第1実施形態の弁支持本体部16bの後周面31と同様に、弁室13(弁室上部13d)の後側内壁面13aに当接し、押し当てられることとなる。
【0035】
また、天板部42と弁支持本体部43は、前記第1実施形態の弁支持部16(弁支持本体部16b)と同様に、弁室13の前側内壁面13bとの間に熱媒体の流路を形成するために前縁を切り欠いたような略D字状の水平断面形状を有する。さらに、外筒部44は、弁室13の後側内壁面13aに沿うように湾曲して広がる円弧状の水平断面形状を有し、外周面に複数(本実施形態では3つ)の突起45a,45b,45cを備えている。各突起45a~45cは、半球状の形状を有し、弁室13(弁室下部13c)の後側内壁面13aに当接する。
【0036】
なお、弁室13は、図4に示すように弁支持部41の上端部(天板部42や弁支持本体部43)が配置される上部は内径が小さく、コイルばね17や弁支持部41の下端部(外筒部下部の突起45a~45c)が配置される下部は内径が大きくなっており、弁室上部13dでは外筒部44の後周面31が弁室内壁面13aに当接し、弁室下部13cでは外筒部44の後周面31から外方へ突出する突起45a~45cが弁室内壁面13aに当接する。
【0037】
本実施形態の膨張弁では、弁支持部41の前周面32と弁室13の前側内壁面13bとの間を通過する熱媒体により弁支持部41(外筒部44の上部と突起45a~45c)が弁室13の後側内壁面13aに押し付けられ、これにより弁支持部41および弁体15の振動が抑制される。また本実施形態では、弁支持部上部(外筒部44)の後周面31に加えて、複数の突起45a~45cが弁室内壁面13aに押し当てられることとなるから、前記第1実施形態と比べて強い制振効果を得ることが出来る。
【0038】
さらに本実施形態では、図9から図11に示すように弁支持部41の各突起45a,45b,45cと係合するスリット46a,46b,46cを弁室下部13cの後側内壁面13aに形成しても良い。これらのスリット46a~46cは、弁の開閉方向(上下方向)に延び、各突起45a,45b,45cは、対応するスリット46a,46b,46cにそれぞれ嵌入しつつ弁の開閉に伴ってスリット46a,46b,46cに沿って上下に移動する。
【0039】
一方、当該スリット46a~46cによって突起45a~45cの左右への移動は阻止され、弁支持部41が軸周りに回転すること(図11の矢印G参照)を防ぐことが出来る。これにより、弁支持部41が軸周りに回転して外筒部44の下端部や突起45a~45cが流入口側に移動し、流入口21aを塞いで熱媒体の流入を阻害するような事態が生じることを防ぐことが出来る。
【0040】
なお、図示の例では、各突起45a~45cに対応するように3本のスリット46a~46cを設けたが、当該スリットは1本(例えば中央の突起45bに対応するスリット46bのみを備える)あるいは2本としても構わない。また同様に、突起45a~45cについても、本実施形態では3つ備えたが、2つ以下あるいは4つ以上備えることも可能である。
【0041】
〔第3実施形態〕
図12から図15を参照して本発明の第3の実施形態に係る膨張弁について説明する。これらの図に示すように当該膨張弁は、前記第1乃至第2実施形態と比べ、弁支持部51の構造が異なるもので他の構成は同様である。
【0042】
具体的には本実施形態の弁支持部51は、前記第2実施形態と同様に、弁体15を載せて固定する天板部42(弁体固定部16a)と、弁支持本体部43と、弁支持本体部43の後周面を覆うように天板部42の後側縁部から立ち下がる外筒部44と、コイルばねを接続するばね接続部16cとを備えている。
【0043】
一方、前記第2実施形態と異なり、外筒部44の後面には、一定幅を有し上下方向に延びる平面部52を形成してある。なお、この平面部52の形成に伴い本実施形態では、前記第2実施形態と同様に斜め左後方と斜め右後方の2つの突起45a,45cを備えるが、真後ろ(中央)の突起45b(図6および図8参照)は備えていない。
【0044】
他方、本実施形態では、2つの突起45a,45cに加えて、上下方向に延びる平面部52の左右両縁52a,52bが下縁部を除く全長に亘って弁室13の後側内壁面13aに当接し押し当てられるため、前記第1および第2実施形態より大きな振動抑制効果を得ることが出来る。なお、本実施形態においても前記第2実施形態(図9から図11)と同様に突起45a,45cに対応して回転防止用のスリット46a,46cを備えても良い。
【0045】
〔第4実施形態〕
本発明の第4の実施形態に係る冷凍サイクル装置は、前記第1実施形態の膨張弁11を用いたものである。
【0046】
具体的には、図16に示すようにこの冷凍サイクル装置61は、熱媒体(冷媒)を圧縮するコンプレッサ(圧縮機)62と、コンプレッサ62で圧縮された冷媒を冷却して液化するコンデンサ(凝縮器)63と、コンデンサ63で液化された冷媒を減圧膨張させる膨張弁11と、膨張弁11で減圧膨張された冷媒を蒸発気化するエバポレータ(蒸発器)64とを備え、膨張弁として前記第1実施形態に係る膨張弁11を使用する。
【0047】
かかる冷凍サイクル装置61では、コンプレッサ62で加圧された冷媒は、コンデンサ63で液化されて膨張弁11に送られる。また、膨張弁11で断熱膨張された冷媒はエバポレータ64に送り出され、エバポレータ64で、エバポレータ64の周囲を流れる空気と熱交換される。エバポレータ64から戻る冷媒は、膨張弁11の戻り流路23を通ってコンプレッサ62へ戻される。
【0048】
膨張弁11には、コンデンサ63から高圧の冷媒が供給される。より具体的には、コンデンサ63から送られた高圧冷媒は、流入路21を通って弁室13に流れ込む。コイルばね17によって弁体15が弁座14に押し付けられて着座した閉弁状態にあれば、弁室13と流出路22とが連通していないから、弁室13内の冷媒は膨張弁11から排出されない。
【0049】
一方、コイルばね17の付勢力に抗して作動棒19が下方へ移動し、弁体15を弁座14から後退させると、弁室13と流出路22とが連通状態(開弁状態)となり、弁室13内の冷媒が流出路22から排出されてエバポレータ64へ送り出される。かかる作動棒19の動作は、弁本体12の上面部に備えられたダイアフラム装置24により行われる。
【0050】
ダイアフラム装置24は、上蓋部材25と、中央部に開口を有する受け部材26と、上蓋部材25と受け部材26との間に配置されたダイアフラム(図示せず)とを備える。そして、上蓋部材25とダイアフラムとによって囲まれる第1空間には、作動ガスを充填してある。また、ダイアフラムには作動棒19の上端が接続されており、第1空間内の作動ガスが液化されると、作動棒19はダイアフラムによって上方へ引き上げられ、液化された作動ガスが気化されると、作動棒19はダイアフラムによって下方へ押し下げられる。このようにして、膨張弁11の開弁状態と閉弁状態との間の切り換えが行われる。
【0051】
また、ダイアフラムと受け部材26との間の第2空間は、前記受け部材中央の開口を通じて戻り流路23と連通している。このため、戻り流路23を流れる冷媒の温度と圧力に応じて、第1空間内の作動ガスの相(気相か液相か)が変化し、この変化に応じて作動棒19が駆動される。このようにして膨張弁11では、エバポレータ64から膨張弁11に戻る冷媒の温度と圧力に応じて、膨張弁11からエバポレータ64に向けて供給される冷媒の量が自動的に調整される。
【0052】
また、本実施形態の冷凍サイクル装置61では、前記第1実施形態の膨張弁11を使用しているため、弁振動、特に弁体15や弁支持部16に生じる振動を、弁室内を流入口21aから流出口22aに向けて流れる熱媒体の圧力によって効果的に抑制することができ、膨張弁11から異音が発生することを防ぐことが出来る。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【0054】
例えば、前記実施形態では弁体15と弁体支持部16,31,41,51を別部材として構成したが、これらは一体に成形された1つの部材であっても良い。また前記第4実施形態に係る冷凍サイクル装置では、第1実施形態の膨張弁11を使用したが、第2乃至第3実施形態の膨張弁を使用しても勿論良く、さらに前記実施形態の膨張弁以外にも本発明に基いて構成可能な他の膨張弁を用いることも可能である。
【0055】
さらに、本発明はカーエアコンの膨張弁に好ましく使用することが出来るものであるが、用途や適用対象はカーエアコンに限られず、ルームエアコンや冷凍機など他の様々な冷凍サイクル装置の膨張弁に適用することが出来る。
【符号の説明】
【0056】
11 膨張弁
12 弁本体
13 弁室
13a 流入口に対向する側の弁室の内壁面(後側内壁面)
13b 流入口側の弁室の内壁面(前側内壁面)
13c 弁室下部
13d 弁室上部
14 弁座
15 弁体
16,31,41,51 弁体支持部
16a 弁体固定部
16b,43 弁支持本体部
16c ばね接続部
17 コイルばね(付勢部材)
18 ばね受け部材
19 作動棒
21 流入路
21a 流入口
22 流出路
22a 流出口
23 戻り流路
24 ダイアフラム装置
25 上蓋部材
26 受け部材
31 後周面
32 前周面
42 天板部
44 外筒部
45a,45b,45c 突起
46a,46b,46c スリット
61 冷凍サイクル装置
62 コンプレッサ(圧縮機)
63 コンデンサ(凝縮器)
64 エバポレータ(蒸発器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16