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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/78 20060101AFI20231114BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20231114BHJP
   B01D 53/38 20060101ALI20231114BHJP
   B01D 53/40 20060101ALI20231114BHJP
   B01D 53/42 20060101ALI20231114BHJP
   B01F 25/10 20220101ALN20231114BHJP
【FI】
B01D53/78
B01D53/18 110
B01D53/38 120
B01D53/40 200
B01D53/42 ZAB
B01F25/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019204794
(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2021074691
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000107941
【氏名又は名称】セイコー化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 康浩
(72)【発明者】
【氏名】津田 益宏
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-219036(JP,A)
【文献】特公昭45-036482(JP,B1)
【文献】特開昭53-012169(JP,A)
【文献】特開2004-105956(JP,A)
【文献】特開2015-045518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 47/00-02
B01D 53/14ー18、34-96
B01F 23/20-2375、25/00-74
B01J 10/00
B05B 1/02
C10K 1/08-14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害成分を含む処理気体の給気路と、
処理液を貯留した処理容器と、
前記給気路から前記処理容器内の前記処理液中に挿入される給気管と、
前記処理液で処理された処理済気体を前記処理容器から排出する排気路と、
前記処理液の液面から所定深さに配置され、前記給気管に接続された気体貯留部と、を備え、
前記気体貯留部は、水平方向に広がる気体放出面を有し、
前記気体放出面は、前記給気管から供給される前記処理気体を前記処理液中に噴出する複数個のスパイラルノズルを所定間隔で有しており、
前記処理容器は、前記処理液を該処理容器に供給する供給タンクと、前記処理液を該処理容器から排出する排出タンクと、をさらに備え、
前記供給タンクは、上部は大気開放となっており前記処理容器の下部から前記処理液を供給するように構成され、
前記排出タンクは、前記処理容器の上部から排出する前記処理液を排水バルブが設けられた排水管を介して排出するように構成され、
前記排出タンクの下流側には、前記排水管から排出した前記処理液を貯液して該排水管に空気が入るのを防ぐ貯液部を有している、
ことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
前記気体貯留部は、前記処理容器の高さ方向の中間部分に配置され、前記給気管が中央部分に接続されており、
前記スパイラルノズルは、前記給気管の周囲に前記所定間隔で配置されている、
請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記処理容器内の前記処理液は、前記気体放出面から突出する前記スパイラルノズルの高さの1.5倍~6倍の位置が液面となるように構成されている、
請求項1又は2に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記排気路に接続され、前記処理容器内の気体を吸引する吸引機を備え、
前記吸引機で前記処理容器内を負圧にすることで前記給気路から前記処理気体が前記気体貯留部に引き込まれるように構成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の製造工程における排ガスから有害成分を除去する排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の製造工程において、製造装置などから有害成分を含むガスが排出される。(この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、このガスを「排ガス」又は「処理気体」という。また、「有害成分」は、酸、アルカリ、臭気などを含む。)このような排ガスとして、例えば、化学物質の製造過程において化学反応を行わせる反応層や、汚泥処理における反応層などから排出される排ガス、生ゴミ処理機などから排出される排ガスなどがある。このような排ガスは、酸やアルカリ、臭気などの有害成分を除去した後、大気放出されている。
【0003】
例えば、排ガスを処理する先行技術として、排ガスを吸収液と気液接触させて、排ガス中の有害成分を吸収液中に溶解又は捕集させる散気処理装置がある(例えば、特許文献1参照)。この処理装置では、吸収液が通流する筒状の通路管の内側に、右捻り又は左捻りとした螺旋状の複数個の羽根体を設け、通路管の下方の気体噴出部から排ガスを噴出させて気液接触させている。
【0004】
また、他の排ガス処理に関する先行技術として、入口部から出口部に向けて排ガスを螺旋状に流す排ガス流路に向けて、交流電流に基づく電磁波により処理された電磁波処理水を噴霧することで排ガスを浄化する排ガス浄化装置もある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-219036号公報
【文献】特開2013-167160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した特許文献1では、吸収液と排ガスを通流させる通路管の構造が複雑で、小流量の排ガス処理を行う場合でも多くの費用が必要となる。また、上記した特許文献2では、装置全体の構造が複雑であるとともに大型化するため、小流量の排ガスを処理するために多くの費用と設置スペースが必要となる。
【0007】
そこで、本発明は、有害成分を含む小流量の排ガス(処理気体)から適切に有害成分を除去できる排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、有害成分を含む処理気体の給気路と、処理液を貯留した処理容器と、前記給気路から前記処理容器内の前記処理液中に挿入される給気管と、前記処理液で処理された処理済気体を前記処理容器から排出する排気路と、前記処理液の液面から所定深さに配置され、前記給気管に接続された気体貯留部と、を備え、前記気体貯留部は、水平方向に広がる気体放出面を有し、前記気体放出面は、前記給気管から供給される前記処理気体を前記処理液中に噴出する複数個のスパイラルノズルを所定間隔で有している。
【0009】
この構成により、給気路から給気管を介して気体貯留部に供給した処理気体を、気体貯留部の気体放出面に設けられた複数個のスパイラルノズルから処理液中に噴出させ、処理気体を処理液と効率良く気液接触させて有害成分を除去することができる。しかも、小型化も容易であるため、例えば、排ガスの発生場所に近い位置に設置して、装置から排出された直後の、高濃度の酸やアルカリ成分などを含む排ガスを効率良く処理することができる。
【0010】
また、前記気体貯留部は、前記処理容器の高さ方向の中間部分に配置され、前記給気管が中央部分に接続されており、前記スパイラルノズルは、前記給気管の周囲に前記所定間隔で配置されていてもよい。
【0011】
このように構成すれば、気体貯留部の中央部分に供給した処理気体を周囲のスパイラルノズルから処理液中に噴出させるので、処理気体を気体放出面に設けたスパイラルノズルから処理容器の処理液中にほぼ均等に噴出させて気液接触させることができる。しかも、処理容器の高さ方向の中間部分に配置された気体貯留部から気体を噴出させるので、処理容器内の処理液に流れを生じさせて循環させ、処理気体中の有害成分を処理容器内の処理液で適切に除去するようにできる。
【0012】
また、前記処理容器内の前記処理液は、前記気体放出面から突出する前記スパイラルノズルの高さの1.5倍~6倍の位置が液面となるように構成されていてもよい。
【0013】
このように構成すれば、気体貯留部のスパイラルノズルから噴出させる処理気体によって処理液を適切にバブリングさせて有害成分を処理液によって除去することができる。
【0014】
また、前記排気路に接続され、前記処理容器内の気体を吸引する吸引機を備え、前記吸引機で前記処理容器内を負圧にすることで前記給気路から前記処理気体が前記気体貯留部に引き込まれるように構成されていてもよい。
【0015】
このように構成すれば、処理気体が高濃度の酸性、アルカリ性のガスであっても、吸引機によって処理容器内を負圧にすることで処理気体を処理容器内に引き込んで処理液中に噴出させるので、吸引機は処理済気体と接するのみで高濃度の酸性、アルカリ性による腐食などを防止できる。
【0016】
また、前記処理容器は、前記処理液を供給する供給タンクと、前記処理液を排出する排出タンクと、をさらに備え、前記供給タンクは、前記処理容器の下部から前記処理液を供給するように構成され、前記排出タンクは、前記処理容器の上部から前記処理液を排出するように構成され、前記排出タンクの下流側に、該排出タンクから排出した前記処理液の貯液部を有していてもよい。
【0017】
このように構成すれば、処理液を供給タンクから処理容器に供給し、処理容器から排出タンクに排出させることで、処理容器中の処理液を入れ替えながら処理気体中の有害成分を除去する排ガス処理の連続運転ができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、有害成分を含む小流量の排ガス(処理気体)であっても、処理液と効率良く気液接触させて有害成分を除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る排ガス処理装置の一部を断面にして示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すII-II矢視の断面図である。
図3図3は、図2に示すIII-III矢視の断面における処理気体の噴出状態を示す断面図である。
図4図4は、図3に示すスパイラルノズルの一例を示す正面図である。
図5図5は、図1に示す処理容器内においてスパイラルノズルから噴出させる処理気体と処理容器内の処理液との気液混合状態を示す図面であり、(A)は処理容器内の処理液の流れを含む模式図であり、(B)はスパイラルノズルから噴出させる処理気体の流れを示す模式図である。
図6図6は、図1に示す排ガス処理装置を含む第2実施形態に係る排ガス処理装置を示す正面図である。
図7図7は、図6に示す排ガス処理装置の平面図である。
図8図8は、図6に示す排出タンクと貯液タンクの部分を示す図面であり、(A)は図6に示す排出タンクと貯液タンクの部分の左側面図、(B)は他の例を示す側面図である。
図9図9は、図6に示す排ガス処理装置の一部を示す運転停止時における処理液の状態の断面図である。
図10図10(A)、(B)は、図6に示す排ガス処理装置の一部を示す運転時における処理液の状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における前後左右方向の概念は、図1に示す前後左右方向の概念と一致するものとする。
【0021】
(第1実施形態に係る排ガス処理装置の構成)
図1は、第1実施形態に係る排ガス処理装置1の一部を断面にして示す斜視図である。図2は、図1に示すII-II矢視の断面図である。図3は、図2に示すIII-III矢視の断面における処理気体A1の噴出状態を示す断面図である。
【0022】
図1に示すように、この実施形態の排ガス処理装置1は、有害成分を含む処理気体A1の給気路20と、処理液Wを貯留した処理容器10と、給気路20から処理容器10の内部の処理液W中に挿入される給気管21と、処理液Wで処理された処理済気体A2を処理容器10から排出する排気路40と、を備えている。この実施形態の処理容器10は、平面視で矩形状に形成された例である。
【0023】
処理容器10は、処理液Wの液面L1から所定深さに配置された気体貯留部22を備えている。気体貯留部22は、処理容器10の内面との間に、処理液Wが通流する所定の空間ができる大きさで形成されている。気体貯留部22は、上面に水平方向に広がる気体放出面23を有し、その周囲には下方に延びる周壁24が設けられている。これにより、気体貯留部22は、下方が開放した所定容量の内部空間25(図3)を有している。気体貯留部22は、気体放出面23の中央部分に上記給気管21が接続されており、給気管21によって処理容器10の高さ方向の中間部分に配置されている。気体貯留部22は、気体放出面23が処理容器10中の処理液Wの液面L1から所定深さ(液深)となるように配置されている。給気管21の内部は、気体貯留部22の内部空間25(図3)と連通している。気体放出面23には、給気管21から供給される処理気体A1を処理液W中に噴出するように、所定間隔で複数個のスパイラルノズル30が配置されている。処理容器10に入れられる処理液Wは、水、アルカリ性溶液、酸性溶液、その他の薬液などを含む。
【0024】
図2に示すように、この実施形態では、平面視で矩形状に形成されている気体放出面23の角部を除く部分に複数個のスパイラルノズル30が所定間隔で配置されている。スパイラルノズル30の数と間隔は、処理気体A1の処理流量(例えば、毎分の処理流量)、処理液Wの液面L1からの深さによる圧力損失の大きさ、などに応じて決定することができる。気体放出面23には、所定間隔でスパイラルノズル30を取り付けるためのねじ穴26(図5(B))が設けられ、そのねじ穴26にスパイラルノズル30のねじ部31(図4)をねじ込むことで取り付けられている。
【0025】
図3に示すように、処理容器10の高さ方向の中間部分に配置された気体貯留部22は、給気管21から供給された処理気体A1を内部空間25に溜め、全てのスパイラルノズル30から処理液W中に噴出するようになっている。気体貯留部22の位置と処理液Wの関係としては、例えば、気体放出面23に対する処理液Wの液面L1の位置を、気体放出面23から突出するスパイラルノズル30の高さの1.5~6倍程度にできる。これにより、気体放出面23を、処理液Wの液面L1から50~200mm程度の深さに位置させることができる。処理液Wの液面L1に対する気体放出面23の深さ(液深)としては、処理気体A1に含まれる有害成分と、その有害成分を除去する処理液Wの成分などに応じて適切に設定することができる。
【0026】
(スパイラルノズルの構成)
図4は、図3に示すスパイラルノズル30の一例を示す正面図である。この実施形態のスパイラルノズル30は、気体貯留部22の気体放出面23に取り付けるためのねじ部31と、その上部に設けられた基部32と、その先端部分に設けられたスパイラル部33とを有している。ねじ部31から基部32まで所定径の孔部34が設けられ、基部32の先端部分で孔部34は直径が小さくなっている。スパイラル部33は、基部32の先端部分に連なるように一体成型されており、基部32の中心軸Zに向かって収束する螺旋状に形成されている。また、スパイラル部33は、中心軸Zに対して直交する面が、孔部34から噴出させる気体がスパイラル状で噴出されるように所定角度の傾斜面35に形成されている。
【0027】
このようなスパイラルノズル30によれば、螺旋状のスパイラル部33から噴出させる処理気体A1はスパイラル状に噴出させられて気泡が微細化されるため、処理液Wとの気液接触を効率良く行うことができる。
【0028】
(排ガス処理装置の運転状態例)
図5は、図1に示す処理容器10内においてスパイラルノズル30から噴出させる処理気体A1と処理容器10内の処理液Wとの気液混合状態を示す図面であり、(A)は処理容器10内の処理液Wの流れを含む模式図であり、(B)はスパイラルノズル30から噴出させる処理気体A1の流れを示す模式図である。
【0029】
図5(A)に示すように、給気管21から処理容器10の高さ方向の中間部分に配置された気体貯留部22に供給された処理気体A1は、気体貯留部22の内部空間25に一定量が溜められた状態で、全てのスパイラルノズル30から処理液W中に噴出させられる。これにより、処理気体A1と処理液Wとが気液接触させられて、処理気体A1中の有害成分が除去される。また、スパイラルノズル30から噴出される処理気体A1はスパイラル状に噴出させられて気泡が微細化されるため、液面L1の揺れを抑えるとともに処理液Wとの気液接触を効率良く行うことができる。しかも、スパイラルノズル30から処理気体A1が噴出させられた処理液Wは、気体貯留部22の上方から処理容器10の下方へと流れる流れが生じ、処理容器10の下方の処理液Wと攪拌される。これにより、処理容器10内の処理液Wを効率良く攪拌し、全ての処理液Wによって処理気体A1から有害成分を除去することができる。
【0030】
また、処理液Wの液面L1を、処理気体A1に含まれる有害成分と、その有害成分を除去する処理液Wの成分などに応じて、気体放出面23から突出する前記スパイラルノズル30の高さの1.5倍~6倍の高さで適切に設定することで、気体貯留部22のスパイラルノズル30から噴出させる処理気体A1によって処理液Wを適切にバブリングさせることができる。これによっても、処理気体A1を処理液Wと効率良く気液接触させて、処理気体A1中の有害成分を除去することができる。
【0031】
さらに、図5(B)に示すように、スパイラルノズル30から噴出させられる処理気体A1は、スパイラル部33の傾斜面35に沿って螺旋状(一点鎖線の矢印で示す)に噴出させられるため、小さな気泡で処理液W中に噴出させられる。これにより、処理気体A1が処理液Wと気液接触する面積を増やすことができ、効率良く処理気体A1中の有害成分を除去することができる。
【0032】
(第2実施形態に係る排ガス処理装置の構成)
図6は、図1に示す排ガス処理装置1を含む第2実施形態に係る排ガス処理装置2を示す正面図である。図7は、図6に示す排ガス処理装置2の平面図である。図8は、図6に示す排出タンク60と貯液タンク62の部分を示す図面であり、(A)は図6に示す排出タンク60と貯液タンク62の部分の左側面図、(B)は他の例を示す側面図である。
【0033】
第2実施形態の排ガス処理装置2は、処理気体A1の処理を連続運転で行うこともできる例である。この排ガス処理装置2には、排気路40の下流側に、ミストトラップ41と吸引機たる吸引ブロア42とが備えられている。この排ガス処理装置2では、吸引ブロア42によって排気路40を介して処理容器10内の処理済気体A2を吸引することで処理容器10の内部を負圧にし、これによって給気路20から処理気体A1を処理容器10の内部の気体貯留部22に吸引する構成となっている。これにより、処理容器10の内部に処理気体A1を入れるための構成が、酸やアルカリ成分を含む処理気体A1と接触しないようにしている。よって、この実施形態によれば、吸引ブロア42の内部構成が酸やアルカリ成分の影響を受けないようにできる。この実施形態の処理容器10には、前面から内部を確認するために透明の点検窓11が設けられている。
【0034】
また、第2実施形態の排ガス処理装置2は、処理容器10の一方(右方)の側面に、処理容器10に処理液Wを供給する供給タンク50が備えられ、処理容器10の他方(左方)の側面に処理液Wを排出する排出タンク60が備えられている。供給タンク50は、処理容器10に下部から処理液Wを供給するように、処理容器10と供給口51で連通している。供給タンク50の上部側面には、処理液Wの給水口52が設けられている。供給タンク50の上部空間は、大気開放となっている。図8(A)にも示すように、排出タンク60は、処理容器10の上部から処理液Wを排出するように、処理容器10と排出口61で連通している。排出タンク60の下方には、処理液Wの貯液部たる貯液タンク62が設けられている。排出タンク60と貯液タンク62との間には、排水バルブ64で開閉可能な排水管63が設けられている。排水管63の下端は、貯液タンク62に溜められた処理液W中に挿入されている。貯液タンク62には、所定量が溜ったら処理液Wを排水する排水口65が設けられている。排出タンク60の上部空間は、処理容器10の上部空間と同一圧力となっている。
【0035】
図8(B)に示すように、排出タンク60の下方に設ける処理液Wの貯液部は、排水バルブ74が設けられた排水管73に連なる貯液管72とすることができる。貯液管72はU字状に形成され、一方が排水バルブ74に連結され、他方に排水口75が設けられている。排水口75は、貯液管72の所定高さ位置に設けられており、排水口75より下方に処理液Wが溜るようになっている。貯液管72に溜った処理液Wは、排水口75の高さを超える量が排水口75から排水される。なお、貯液部は、上記貯液タンク62及び貯液管72に限定されるものではない。
【0036】
このような排ガス処理装置2によれば、吸引ブロア42を運転することで、排気路40から処理容器10内の処理済気体A2が吸引され、ミストトラップ41で水分が除去された後に排気管43から大気放出される。これにより、処理容器10の内部が負圧になって処理液Wの液面L1が上昇し、給気管21の内部の処理気体A1が気体貯留部22に引き込まれる。そして、気体貯留部22に引き込まれた処理気体A1がスパイラルノズル30から処理液W中に噴出させられる。その後、吸引ブロア42の運転を続けることで、給気路20から給気管21を介して気体貯留部22に引き込まれた処理気体A1がスパイラルノズル30から処理液W中に噴出されて排ガス処理ができる。例えば、排ガス処理装置2により、毎分1m程度の高濃度排ガスを処理する場合、処理容器10の大きさとしては平面視において各辺を400mm~600mm程度で形成し、気体貯留部22に10~60個程度のスパイラルノズル30を設けて処理することができる。
【0037】
また、供給タンク50に処理液Wを供給することで、その供給分の処理液Wが供給口51から処理容器10の内部に供給されるが、その供給分の処理液Wは排出口61から排出タンク60に排出されて、処理容器10の液面L1は一定水位に保たれる。排出タンク60に排出された処理液Wは、排水管63から貯液タンク62に排出され、貯液タンク62に溜った処理液Wは、所定量以上が排水口65から排水される。そして、供給タンク50への処理液Wの供給を続けることで、処理容器10内の処理液Wを入れ替えながら排ガス処理の連続運転をすることができる。
【0038】
その上、排ガス処理装置2の全体的な大きさを抑えることができるので、排ガスの発生源に近い位置に設置して排ガス処理をすることが可能となる。
【0039】
(排ガス処理設備における運転状態例)
図9は、図6に示す排ガス処理装置2の一部を示す運転停止時における処理液Wの状態の断面図である。図10(A)、(B)は、図6に示す排ガス処理装置2の一部を示す運転時における処理液Wの状態の断面図である。
【0040】
図9に示すように、排ガス処理装置2は、運転停止状態では、処理容器10と供給タンク50とは供給口51で連通しており、供給タンク50の上部は大気開放となっているため、処理容器10の内部、給気管21の内部及び供給タンク50の処理液Wは同一の液面L1となっている。
【0041】
図10(A)に示すように、排水バルブ64を閉じた状態とし、排ガス処理装置2を運転して排気路40から処理容器10内の処理済気体A2を吸引することで処理容器10内が負圧になる。そして、処理容器10内の静圧低下により処理液Wの液面L1が上昇し、給気管21の処理気体A1が気体貯留部22に引き込まれる。気体貯留部22の内部空間25に入った処理気体A1は、気体放出面23に設けられたスパイラルノズル30から処理液W中に噴出させられる。この状態では、処理容器10の上部空間の静圧が低下しているため、処理容器10の内部では処理液Wの液面L1が上昇し、供給タンク50の液面L2は下降する。図10(A)に示すように運転すれば、排ガス処理装置2による排ガス処理のバッチ運転ができる。
【0042】
図10(B)に示すように、図10(A)に示す運転状態で排水バルブ64を開いた状態とし、供給タンク50に処理液Wを供給することで、その供給分は供給口51で連通している処理容器10に供給されるが、その供給分の処理液Wは排出口61から排出タンク60に排出されて、処理容器10の液面L1は一定水位に保たれる。排出タンク60に排出された処理液Wは、排水バルブ64が開放された排水管63から貯液タンク62に流出する。貯液タンク62に流出した処理液Wは、貯液タンク62に設けられた排水口65の高さまで溜められるので、排水管63の下端は常に処理液W中に位置した状態となる。よって、排水管63から排出タンク60に空気が入ることはない。排水管63の内部の処理液Wは、処理容器10内と連通している排出タンク60の静圧に応じた高さの液面L3となる。このような状態で、供給タンク50に処理液Wを供給すれば、処理容器10の内部の処理液Wを入れ替えながら排ガス処理を行うことができる。図10(B)に示すように運転すれば、排ガス処理装置2による排ガス処理の連続運転ができる。
【0043】
(その他の変形例)
上記した実施形態では、平面視で矩形状の処理容器10を用いた例を説明したが、処理容器10は平面視で円形やその他の形状で合ってもよく、処理容器10の平面視の形状は、上記した実施形態に限定されるものではない。気体貯留部22の平面視の形状も矩形に限定されるものではなく、処理容器10の平面視の形状などに応じて決定すればよい。
【0044】
また、上記した実施形態におけるスパイラルノズル30の数、配置は一例であり、処理気体A1を適切な流速で処理液W中に噴出させることができ、噴出させる処理気体A1の圧力損失を適切にできる数、配置であればよく、スパイラルノズル30の数、配置は上記した実施形態に限定されるものではない。
【0045】
さらに、上記した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
1 排ガス処理装置
2 排ガス処理装置
10 処理容器
20 給気路
21 給気管
22 気体貯留部
23 気体放出面
24 周壁
25 内部空間
30 スパイラルノズル
33 スパイラル部
40 排気路
41 ミストトラップ
42 吸引ブロア
50 供給タンク
51 供給口
60 排出タンク
61 排出口
62 貯液タンク(貯液部)
63 排水管
64 排水バルブ
72 貯液パイプ(貯液部)
A1 処理気体
A2 処理済気体
L1 液面
L2 液面
W 処理液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10