(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】石灰散布機
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20231114BHJP
A01K 45/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
A01K29/00 Z
A01K45/00 Z
(21)【出願番号】P 2020173732
(22)【出願日】2020-10-15
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】501399496
【氏名又は名称】タカキ製作所株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】高木 奈保子
(72)【発明者】
【氏名】副田 英樹
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-172805(JP,U)
【文献】特開昭63-039509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 29/00
A01K 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石灰を収容する石灰収容ケースに牽引具と車輪とを設けるとともに、石灰収容ケースの下部に石灰を散布するための石灰吐出機構を設け、車輪の回転軸と石灰吐出機構の駆動軸とをラチェット機構を介して連動連結して、前進方向に牽引した時に車輪の回転軸とともに駆動軸が回転して石灰吐出機構から石灰が散布され、後進方向に牽引した時に車輪の回転軸が空転して石灰吐出機構から石灰が散布されないように構成し
、前記牽引具を水平に伸延させ、牽引具が水平な状態で石灰収容ケースを停止させる前側ストッパーと、牽引具が水平よりも上方に傾斜した状態で石灰収容ケースを停止させる後側ストッパーとを設けたことを特徴とする石灰散布機。
【請求項2】
前記牽引具を水平よりも上方に傾斜させた状態で、石灰吐出機構の直前方側及び直後方側の壁に沿って石灰が石灰吐出機構に向けて滑落するようにしたことを特徴とする
請求項1に記載の石灰散布機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏舎や豚舎等に通じる通路に石灰を散布するために用いられる石灰散布機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
養鶏場や養豚場などにおいては、高病原性鳥インフルエンザ対策等の防疫目的のために、鶏舎や豚舎等に通じる通路に石灰を散布する必要がある。
【0003】
しかしながら、従来の石灰散布機は、農場に石灰を散布することを目的として開発されており、トラクタに装着されたケースに石灰を収容し、ケースに開口を設けるとともに、その開口を開閉体で開閉可能に被覆した構成となっている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の石灰散布機は、農業用途で使用するものであるため、そのまま養鶏場や養豚場などにおける防疫用途で使用するには、不具合が発生するおそれがある。
【0006】
たとえば、従来の石灰散布機では、ケースの開口から石灰を自然落下させて散布する構成であるために、養鶏場や養豚場などにおける防疫のためには石灰の散布量が少な過ぎるおそれがある。
【0007】
また、石灰の散布の有無を開閉体の開閉操作によって切り替える必要があり、作業者の負担が大きくなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に係る本発明では、石灰散布機において、石灰を収容する石灰収容ケースに牽引具と車輪とを設けるとともに、石灰収容ケースの下部に石灰を散布するための石灰吐出機構を設け、車輪の回転軸と石灰吐出機構の駆動軸とをラチェット機構を介して連動連結して、前進方向に牽引した時に車輪の回転軸とともに駆動軸が回転して石灰吐出機構から石灰が散布され、後進方向に牽引した時に車輪の回転軸が空転して石灰吐出機構から石灰が散布されないように構成し、前記牽引具を水平に伸延させ、牽引具が水平な状態で石灰収容ケースを停止させる前側ストッパーと、牽引具が水平よりも上方に傾斜した状態で石灰収容ケースを停止させる後側ストッパーとを設けることにした。
【0010】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記牽引具を水平よりも上方に傾斜させた状態で、石灰吐出機構の直前方側及び直後方側の壁に沿って石灰が石灰吐出機構に向けて滑落するようにした。
【発明の効果】
【0011】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0012】
すなわち、本発明では、石灰散布機において、石灰を収容する石灰収容ケースに牽引具と車輪とを設けるとともに、石灰収容ケースの下部に石灰を散布するための石灰吐出機構を設け、車輪の回転軸と石灰吐出機構の駆動軸とをラチェット機構を介して連動連結して、前進方向に牽引した時に車輪の回転軸とともに駆動軸が回転して石灰吐出機構から石灰が散布され、後進方向に牽引した時に車輪の回転軸が空転して石灰吐出機構から石灰が散布されないように構成することにしているために、石灰散布機を前進させた時だけ石灰吐出機構から所定量の石灰を強制的に散布することができるので、養鶏場や養豚場などの防疫のために必要な量の石灰を容易に散布することができ、養鶏場や養豚場などにおける防疫用途で使用することができる。
【0013】
特に、牽引具を水平に伸延させ、牽引具が水平な状態で石灰収容ケースを停止させる前側ストッパーと、牽引具が水平よりも上方に傾斜した状態で石灰収容ケースを停止させる後側ストッパーとを設けた場合には、石灰散布機が前方又は後方に転倒するのを防止できるとともに、前側ストッパーと後側ストッパーとで規制される範囲内で石灰収容ケースを適度に傾斜させた状態を保持して適量の石灰を散布することができる。
【0014】
また、牽引具を水平よりも上方に傾斜させた状態で、石灰吐出機構の直前方側及び直後方側の壁に沿って石灰が石灰吐出機構に向けて滑落するようにした場合には、石灰散布機を前進させて石灰を散布する時に石灰収容ケースの内部で石灰を石灰吐出機構に向けて良好に集めることができ、常に所定量の石灰を散布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】同部分拡大図(ラチェット機構(a)、石灰吐出機構(b))。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る石灰散布機の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1~
図4に示すように、石灰散布機1は、石灰収容ケース2の上部に牽引具3を取付けるとともに、石灰収容ケース2の左右下部に車輪4,4を回転自在に取付けている。
【0018】
石灰収容ケース2は、上下垂直の前後壁5,6及び左右側壁7,8の下部に前高後低の傾斜状の底壁9とで、上方を開口させた中空箱型形状となっており、上方の開口から投入された石灰を内部に収容する。
【0019】
石灰収容ケース2の左右側壁7,8の上部には、前後水平に伸延する平面視コ字状の牽引具3が跨設されている。
【0020】
また、石灰収容ケース2の左右側壁7,8の中途部には、車輪4,4の回転軸10,10が回転自在に軸支されている。左右の回転軸10,10の外側端部間には、コ字状のガードフレーム11が跨設されている。
【0021】
さらに、石灰収容ケース2の内側下端部には、石灰を強制的に吐出(散布)するための石灰吐出機構12が設けられている。
【0022】
石灰吐出機構12は、石灰収容ケース2の左右側壁7,8の下端部間に左右水平に伸延する駆動軸13を回転自在に取付けるとともに、駆動軸13の外周面に半径方向へ向けて突出する複数のブラシ14を左右及び円周方向に等間隔をあけて取付けている。
【0023】
また、石灰吐出機構12は、石灰収容ケース2の下端部(前後壁5,6及び左右側壁7,8並びに底壁9の下端で囲まれた部分)に形成された開口にベース板15を覆設している。ベース板15は、左右に駆動軸13に沿って円弧状に窪んでおり、駆動軸13とともに回転するブラシ14の先端部が内側面に当接するようになっている。このベース板15には、左右に伸延する複数の長孔状の吐出口16が前後及び左右に交互間隔をあけて千鳥状に形成されている。
【0024】
そして、石灰吐出機構12は、駆動軸13を回転させると、それに伴ってブラシ14が回転し、石灰収容ケース2の内部に収容された石灰をブラシ14によって吐出口16から下方へ向けて強制的に吐出するようになっている。なお、石灰吐出機構12は、駆動軸13(車輪4)の回転速度(石灰散布機1の前進速度)に応じて所定量の石灰を吐出することができる。また、石灰吐出機構12は、ベース板15の周囲に下方へ向けて横長矩形筒型状のカバー17を取付けて、吐出口16から吐出される石灰の飛散を防止している。
【0025】
この石灰吐出機構12は、正面視で左側の車輪4の回転軸10に駆動軸13の左端部をラチェット機構18を介して連動連結している。すなわち、石灰散布機1は、回転軸10の前転時(車輪4の前進時)のみ動力を伝達する構成のラチェット機構18を介して車輪4の回転軸10に駆動ギヤ19を取付ける一方、石灰吐出機構12の駆動軸13に従動ギヤ20を取付け、駆動ギヤ19と従動ギヤ20とをチェーン21で連結している。
【0026】
これにより、石灰吐出機構12は、車輪4の前進時のみ車輪4の回転軸10からラチェット機構18を介して駆動軸13に動力が伝達されて石灰を吐出するようになっている。
【0027】
また、石灰散布機1は、石灰収容ケース2の底壁9の前側下部に左右一対の前側ストッパー22,22を上下調節可能に取付けるとともに、石灰収容ケース2の後壁6の後側下部に左右一対の後側ストッパー23,23を上下調節可能に取付けている。
【0028】
前側ストッパー22,22は、牽引具3を水平な状態として石灰収容ケース2の前後壁5,6及び左右側壁7,8が垂直になっている状態で地面に当接するようになっており、石灰収容ケース2の前側への移動(転倒)を停止させるようになっている。一方、後側ストッパー23,23は、牽引具3を水平よりも上方へ向けて傾斜させた状態で地面に当接するようになっており、石灰収容ケース2の後側への移動(転倒)を停止させるようになっている。
【0029】
そして、石灰散布機1は、前側ストッパー22,22によって牽引具3を水平な状態(石灰収容ケース2の前後壁5,6及び左右側壁7,8が垂直になっている状態)にして停車させることができる。
【0030】
また、石灰散布機1は、停車状態から作業者が牽引具3の内側に入って牽引具3を上方に持ち上げると、
図5及び
図6に示すように、前側ストッパー22,22と後側ストッパー23,23とが地面から離れる範囲(所定の角度範囲)で石灰収容ケース2が後側に傾いた状態で傾斜し、石灰収容ケース2の底壁9が石灰吐出機構12に向けて前高後低状に傾斜するとともに後壁6が石灰吐出機構12に向けて前低後高状に傾斜し、石灰収容ケース2の内部に収容された石灰が石灰吐出機構12の直前方側の壁(底壁9)と直後方側の壁(後壁6)とに沿って石灰吐出機構12に向けて連続して円滑に滑落するようになる。
【0031】
その後、牽引具3を用いて石灰散布機1を前進させると、車輪4の回転軸10から石灰吐出機構12の駆動軸13に動力が伝達され、石灰吐出機構12から石灰を強制的に吐出(散布)させることができる。一方、石灰散布機1を後進させた場合には、ラチェット機構18によって車輪4の回転軸10から石灰吐出機構12の駆動軸13への動力の伝達が阻止され、車輪4の回転軸10が空転して石灰吐出機構12の駆動軸13が停止し、石灰吐出機構12から石灰が吐出(散布)されないようになっている。
【0032】
以上に説明したように、上記石灰散布機1は、石灰を収容する石灰収容ケース2に牽引具3と車輪4とを設けるとともに、石灰収容ケース2の下部に石灰を散布するための石灰吐出機構12を設け、車輪4の回転軸10と石灰吐出機構12の駆動軸13とをラチェット機構18を介して連動連結して、前進方向に牽引した時に車輪4の回転軸10とともに駆動軸13が回転して石灰吐出機構12から石灰が散布され、後進方向に牽引した時に車輪4の回転軸10が空転して石灰吐出機構12から石灰が散布されないように構成している。
【0033】
そのため、上記構成の石灰散布機1では、石灰散布機1を前進させた時だけ石灰吐出機構12から所定量の石灰を強制的に散布することができるので、養鶏場や養豚場などの防疫のために必要な量の石灰を容易に散布することができ、養鶏場や養豚場などにおける防疫用途で使用することができる。
【0034】
また、上記石灰散布機1は、牽引具3を水平に伸延させ、牽引具3が水平な状態で石灰収容ケース2を停止させる前側ストッパー22,22と、牽引具3が水平よりも上方に傾斜した状態で石灰収容ケース2を停止させる後側ストッパー23,23とを設けた構成となっている。
【0035】
そのため、上記構成の石灰散布機1では、石灰散布機1が前方又は後方に転倒するのを防止できるとともに、前側ストッパー22,22と後側ストッパー23,23とで規制される範囲内で石灰収容ケース2を適度に傾斜させた状態を保持して適量の石灰を散布することができる。
【0036】
さらに、上記石灰散布機1は、牽引具3を水平よりも上方に傾斜させた状態で、石灰吐出機構12の直前方側及び直後方側の壁(底壁9及び後壁6)に沿って石灰が石灰吐出機構12に向けて滑落する構成となっている。
【0037】
そのため、上記構成の石灰散布機1では、石灰散布機1を前進させて石灰を散布する時に石灰収容ケース2の内部で石灰を石灰吐出機構12に向けて良好に集めることができ、常に所定量の石灰を散布することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 石灰散布機 2 石灰収容ケース
3 牽引具 4 車輪
5 前壁 6 後壁
7 左側壁 8 右側壁
9 底壁 10 回転軸
11 ガードフレーム 12 石灰吐出機構
13 駆動軸 14 ブラシ
15 ベース板 16 吐出口
17 カバー 18 ラチェット機構
19 駆動ギヤ 20 従動ギヤ
21 チェーン 22 前側ストッパー
23 後側ストッパー