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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】転写具
(51)【国際特許分類】
   B43L 19/00 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
B43L19/00 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021153557
(22)【出願日】2021-09-21
(65)【公開番号】P2023045262
(43)【公開日】2023-04-03
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】596091358
【氏名又は名称】株式会社カミオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹治 香里
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-016610(JP,A)
【文献】実開昭60-022399(JP,U)
【文献】特開平10-324092(JP,A)
【文献】実開昭61-151607(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 19/00-19/04
B43M 11/06
B65H 37/00
B43K 21/00-21/16
B43K 24/00-24/18
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が形成されたケースと、
被転写物に転写される転写層を含む転写テープを前記被転写物に押し付ける転写ヘッドと、前記転写ヘッドに供給される前記転写テープが巻き付けられた供給リールと、前記転写ヘッドを通過した前記転写テープを巻き取る巻取リールと、を含み、前記ケースに収容されており、前記転写ヘッドが前記ケースの前記開口を通じて前記ケースの外に出る使用位置と、前記転写ヘッドが前記ケースの前記開口を通じて前記ケースの中に入る収容位置と、の間で前記ケースに対して前後にスライド可能なテープ本体と、
前記ケースに収容されており、前記テープ本体が前記使用位置に配置されているときに、前記ケースの前記開口を開き、前記テープ本体が前記収容位置に配置されているときに、前記ケースの前記開口を閉じるシャッターと、
前記転写ヘッドが前記使用位置に配置される前端位置と、前記転写ヘッドが前記収容位置に配置される後端位置と、の間で前記ケースに対して前後にスライド可能であり、ユーザーによって操作されるスライドボタンと、を備え、
前記ケースは、前記テープ本体が前記収容位置に配置されているときに左右方向に見ると、前記テープ本体の後方と前記テープ本体の上方または下方とを通って前記開口と前記転写ヘッドとの間の位置まで延びる一対のガイド溝を含み、
前記シャッターは、前記一対のガイド溝によって左右両側が支持されており、前記一対のガイド溝の後端よりも前記一対のガイド溝の始点側の位置だけで前記テープ本体に固定されており、前記ケースに対する前後方向への前記テープ本体のスライドに応じて、前記転写ヘッドが前記ケースの前記開口を通過可能なオープン形状と、前記シャッターが前記ケースの前記開口を閉じるクローズ形状と、の間で弾性変形しながら、前記一対のガイド溝によって案内されるバンドであり、
前記ガイド溝は、前記テープ本体が前記収容位置に配置されているときに左右方向に見ると、前記転写ヘッドよりも前方に配置されており、前記ケースの前記開口の後方に位置する前方部を含み、
前記前方部での前記ガイド溝の深さの最大値は、前記前方部以外の位置での前記ガイド溝の深さの最大値よりも小さい、転写具。
【請求項2】
開口が形成されたケースと、
被転写物に転写される転写層を含む転写テープを前記被転写物に押し付ける転写ヘッドと、前記転写ヘッドに供給される前記転写テープが巻き付けられた供給リールと、前記転写ヘッドを通過した前記転写テープを巻き取る巻取リールと、を含み、前記ケースに収容されており、前記転写ヘッドが前記ケースの前記開口を通じて前記ケースの外に出る使用位置と、前記転写ヘッドが前記ケースの前記開口を通じて前記ケースの中に入る収容位置と、の間で前記ケースに対して前後にスライド可能なテープ本体と、
前記ケースに収容されており、前記テープ本体が前記使用位置に配置されているときに、前記ケースの前記開口を開き、前記テープ本体が前記収容位置に配置されているときに、前記ケースの前記開口を閉じるシャッターと、
前記転写ヘッドが前記使用位置に配置される前端位置と、前記転写ヘッドが前記収容位置に配置される後端位置と、の間で前記ケースに対して前後にスライド可能であり、ユーザーによって操作されるスライドボタンと、を備え、
前記ケースは、前記テープ本体が前記収容位置に配置されているときに左右方向に見ると、前記テープ本体の後方と前記テープ本体の上方または下方とを通って前記開口と前記転写ヘッドとの間の位置まで延びる一対のガイド溝を含み、
前記シャッターは、前記一対のガイド溝によって左右両側が支持されており、前記一対のガイド溝の後端よりも前記一対のガイド溝の始点側の位置だけで前記テープ本体に固定されており、前記ケースに対する前後方向への前記テープ本体のスライドに応じて、前記転写ヘッドが前記ケースの前記開口を通過可能なオープン形状と、前記シャッターが前記ケースの前記開口を閉じるクローズ形状と、の間で弾性変形しながら、前記一対のガイド溝によって案内されるバンドであり、
前記ケースは、前記収容位置から前記使用位置までの前記テープ本体の移動経路の全域で前記テープ本体を案内する主ガイド面と、前記使用位置を含む前記テープ本体の移動経路の一部だけで前記テープ本体を案内する副ガイド面と、を含む転写具。
【請求項3】
前記ガイド溝は、前記シャッターの外側に位置する外側面と、前記シャッターの内側に位置する内側面と、を含み、
前記ケースの前記開口の内周面は、前記ガイド溝の前記外側面から前記ケースの外面まで延びている、請求項1または2に記載の転写具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写テープから被転写物に転写層を転写する転写具に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、修正テープなどの塗布膜転写具が開示されている(カッコ内の数字は、特許文献1における参照符号を表す。)。この転写具では、ユーザーが操作部(220)を前方に移動させると、ケース(100)の開口(110)が開かれ、転写部(250)が開口(110)から外に出る。ユーザーが操作部(220)を後方に移動させると、転写部(250)が開口(110)から中に入り、開口(110)が蓋(500)によって閉じられる。
【0003】
蓋(500)は、ケース(100)の中に配置されており、ケース(100)に対して回転可能である。蓋(500)は、開口(110)を開閉する湾曲部(530)と、湾曲部(530)に連結された右側面部(510)および左側面部(520)とを含む。右側面部(510)および左側面部(520)は、軸と孔とによってケース(100)に取り付けられている。右側面部(510)には、ピニオン(512)が設けられており、転写部(250)を含むスライド部材(200)にはラック(260)が設けられている。スライド部材(200)が前後にスライドすると、スライド部材(200)のスライドがラック(260)およびピニオン(512)によって、蓋(500)の回転に変換される。これにより、ケース(100)の開口(110)が開閉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-016610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、操作部(220)を操作するだけで、転写部(250)の出没と蓋(500)の開閉とを行うことができる。しかしながら、転写部(250)がケース(100)の外に配置された状態では、蓋(500)の右側面部(510)および左側面部(520)がスライド部材(200)の右側および左側に配置される。そのため、ケース(100)を左右に大きくする必要がある。それだけでなく、スライド部材(200)のスライドを蓋(500)の回転に変換するラック(260)およびピニオン(512)を、スライド部材(200)および蓋(500)に設ける必要があり、構造が複雑になる。
【0006】
そこで、本発明の目的の一つは、スライドボタンをスライドさせるだけで、転写ヘッドの出没とシャッターの開閉とを行うことができ、ケースを左右に小型化できる転写具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、開口が形成されたケースと、被転写物に転写される転写層を含む転写テープを前記被転写物に押し付ける転写ヘッドと、前記転写ヘッドに供給される前記転写テープが巻き付けられた供給リールと、前記転写ヘッドを通過した前記転写テープを巻き取る巻取リールと、を含み、前記ケースに収容されており、前記転写ヘッドが前記ケースの前記開口を通じて前記ケースの外に出る使用位置と、前記転写ヘッドが前記ケースの前記開口を通じて前記ケースの中に入る収容位置と、の間で前記ケースに対して前後にスライド可能なテープ本体と、前記ケースに収容されており、前記テープ本体が前記使用位置に配置されているときに、前記ケースの前記開口を開き、前記テープ本体が前記収容位置に配置されているときに、前記ケースの前記開口を閉じるシャッターと、前記転写ヘッドが前記使用位置に配置される前端位置と、前記転写ヘッドが前記収容位置に配置される後端位置と、の間で前記ケースに対して前後にスライド可能であり、ユーザーによって操作されるスライドボタンと、を備え、前記ケースは、前記テープ本体が前記収容位置に配置されているときに左右方向に見ると、前記テープ本体の後方と前記テープ本体の上方または下方とを通って前記開口と前記転写ヘッドとの間の位置まで延びる一対のガイド溝を含み、前記シャッターは、前記一対のガイド溝によって左右両側が支持されており、前記一対のガイド溝の後端よりも前記一対のガイド溝の始点側の位置だけで前記テープ本体に固定されており、前記ケースに対する前後方向への前記テープ本体のスライドに応じて、前記転写ヘッドが前記ケースの前記開口を通過可能なオープン形状と、前記シャッターが前記ケースの前記開口を閉じるクローズ形状と、の間で弾性変形しながら、前記一対のガイド溝によって案内されるバンドである、転写具を提供する
【0008】
前記ガイド溝は、前記シャッターの外側に位置する外側面と、前記シャッターの内側に位置する内側面と、を含み、前記ケースの前記開口の内周面は、前記ガイド溝の前記外側面から前記ケースの外面まで延びていてもよい
【0009】
前記ガイド溝は、前記テープ本体が前記収容位置に配置されているときに左右方向に見ると、前記転写ヘッドよりも前方に配置されており、前記ケースの前記開口の後方に位置する前方部を含み、前記前方部での前記ガイド溝の深さの最大値は、前記前方部以外の位置での前記ガイド溝の深さの最大値よりも小さくてもよい
【0010】
前記ケースは、前記収容位置から前記使用位置までの前記テープ本体の移動経路の全域で前記テープ本体を案内する主ガイド面と、前記使用位置を含む前記テープ本体の移動経路の一部だけで前記テープ本体を案内する副ガイド面と、を含んでいてもよい
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スライドボタンをスライドさせるだけで、転写ヘッドの出没とシャッターの開閉とを行うことができ、ケースを左右に小型化できる転写具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】転写ヘッドがケースの中に入った収容状態の転写具の斜視図である。
図2】転写ヘッドがケースの外に出た使用状態の転写具の斜視図である。
図3】左側の分割ケースを取り外した収容状態の転写具の左側面図である。
図4】左側の分割ケースを取り外した使用状態の転写具の左側面図である。
図5】テープ本体の左側面図である。
図6】テープ本体の右側面図である。
図7】テープ本体の平面図である。
図8】テープ本体の底面図である。
図9】右側の分割ケースを内側から左右方向に見た図である。
図10】左側の分割ケースを内側から左右方向に見た図である。
図11】スライドボタンを下から見た図である。
図12】右側の分割ケースの内側からスライドボタンを見た図である。
図13】左側の分割ケースを取り外した収容状態の転写具の左側面図である。
図14】左側の分割ケースを取り外した使用状態の転写具の左側面図である。
図15】開口を通る水平な平面に沿う一対の分割ケースの断面図である。
図16】ガイド溝の深さの変化を説明するための右側の分割ケースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、転写ヘッド6がケース2の中に入った収容状態の転写具1の斜視図である。図2は、転写ヘッド6がケース2の外に出た使用状態の転写具1の斜視図である。図3は、左側の分割ケース3を取り外した収容状態の転写具1の左側面図である。図4は、左側の分割ケース3を取り外した使用状態の転写具1の左側面図である。図3および図4では、理解を容易にするために、シャッター52にハッチングを施している。
【0015】
転写ヘッド6を含むテープ本体5は、転写ヘッド6がケース2の外に配置された使用位置(図4に示す位置)と、転写ヘッド6がケース2の中に配置された収容位置(図3に示す位置)との間で、ケース2に対して移動可能である。以下では、特に断りがない限り、テープ本体5が収容位置に配置された状態について説明する。
【0016】
テープ本体5の移動方向は、前後方向であり、転写ヘッド6に転写テープ7を供給する供給リール8の回転中心C1(図3参照)と平行な方向は、左右方向である。供給リール8の回転中心C1と平行な方向は、テープ本体5の移動方向に直交する方向である。収容位置から使用位置に向かう方向は、前方向であり、使用位置から収容位置に向かう方向は、後方向である。転写ヘッド6において転写テープ7を介して被転写物に押し付けられる側が、下側である。以下の説明における「側方」は、転写具1を左右に二等分する鉛直な平面WO(図15参照)から離れる方向を意味する。
【0017】
転写具1は、紙などの被転写物に転写テープ7を擦り付けて、転写テープ7から被転写物に転写層を転写するための文房具である。転写具1は、文字や図形などを筆記用具で筆記できる不透明な修正膜を被転写物に転写する修正テープであってもよいし、表面および裏面の両方が粘着力を有する固体状の糊の層を被転写物に転写するテープのりであってもよい。転写具1は、転写テープ7を交換可能な交換式であってもよいし、転写テープ7の交換を想定していない使い切り式であってもよい。
【0018】
図1および図2に示すように、転写テープ7を介して被転写物に擦り付けられる転写ヘッド6は、シャッター52によって開閉されるケース2の開口51から出入りする。図2に示すように、ユーザーがスライドボタン22をケース2の開口51の方にスライドさせると、開口51が開き、転写ヘッド6が開口51を通じてケース2の外に出る。図1に示すように、その後、ユーザーが開口51から遠ざかるようにスライドボタン22をスライドさせると、開口51がシャッター52で閉じられ、転写ヘッド6が開口51を通じてケース2の中に入る。
【0019】
ケース2は、前後に長い直方体状であり、左右に分割されている。ケース2は、テープ本体5の左右両側に配置された一対の分割ケース3を含む。一対の分割ケース3は、互いに連結されており、テープ本体5を収容する収容空間を両者の間に形成している。ケース2は、直方体以外の形状であってもよい。ケース2は、左右に二等分されていてもよいし、右側または左側に偏った位置で分割されていてもよい。
【0020】
ケース2が直方体状である場合、図3に示すように、ケース2は、収容位置に位置するテープ本体5の前方に位置する前壁2fと、収容位置に位置するテープ本体5の後方に位置する後壁2rと、収容位置に位置するテープ本体5の上方に位置する上壁2uと、収容位置に位置するテープ本体5の下方に位置する下壁2dと、収容位置に位置するテープ本体5の左右両側に配置された一対の側壁とを含む。図2に示すように、一方の側壁は、テープ本体5の右方に位置する右側壁2Rであり、他方の側壁は、テープ本体5の左方に位置する左側壁2Lである。
【0021】
ケース2の前壁2f、後壁2r、上壁2u、および下壁2dの右半分は、右側の分割ケース3によって構成されている。ケース2の前壁2f、後壁2r、上壁2u、および下壁2dの左半分は、左側の分割ケース3によって構成されている。右側の分割ケース3は、テープ本体5の右方に配置される右側壁2Rと、右側壁2Rの外周から左方に延びる右筒状壁4Rとを含む。左側の分割ケース3は、テープ本体5の左方に配置される左側壁2Lと、左側壁2Lの外周から右方に延びる左筒状壁4Lとを含む。一対の分割ケース3は、右筒状壁4Rと左筒状壁4Lとが重ね合わされることにより連結されている。
【0022】
図1および図2に示すように、ケース2の開口51は、ケース2の前壁2fに形成されており、前壁2fをその厚み方向に貫通している。右側の分割ケース3には、右筒状壁4Rの左端から右方に凹んだ凹みが形成されている。左側の分割ケース3には、左筒状壁4Lの右端から左方に凹んだ凹みが形成されている。一対の分割ケース3は、2つの凹みが左右に向かい合った状態で連結されている。これにより、開口51が形成されている。開口51は、転写ヘッド6が通る経路上に配置されている。
【0023】
スライドボタン22は、ケース2の左側面に配置されている。スライドボタン22は、ケース2の左側面に沿って前後にスライド可能である。スライドボタン22は、ケース2の左側壁2Lをその厚み方向に貫通するスライド穴21を介してテープ本体5に取り付けられている。スライド穴21は、前後方向に延びている。図1および図2は、スライド穴21が前後に延びる長方形状である例を示している(図10も併せて参照)。
【0024】
スライドボタン22は、スライド穴21の前端からスライド穴21の後端までの範囲内でケース2に対して前後に直線的に移動可能である。スライドボタン22は、ケース2に対して前端位置(図2に示す位置)と後端位置(図1に示す位置)との間で前後にスライドする。スライドボタン22の前端位置は、テープ本体5が使用位置に配置される位置である。スライドボタン22の後端位置は、テープ本体5が収容位置に配置される位置である。
【0025】
図5図6図7、および図8は、テープ本体5の左側面図、右側面図、平面図、および底面図である。図9は、右側の分割ケース3を内側から左右方向に見た図である。図10は、左側の分割ケース3を内側から左右方向に見た図である。
【0026】
図5および図6に示すように、テープ本体5は、前述の転写ヘッド6と、転写ヘッド6に供給される転写テープ7が巻き付けられた供給リール8と、転写ヘッド6を通過した転写テープ7(被転写物に転写層を転写した場合は、ベーステープのみ)を巻き取る巻取リール9とを含む。テープ本体5は、さらに、供給リール8および巻取リール9を連動させる連動ギヤと、転写ヘッド6、供給リール8、巻取リール9、および連動ギヤを保持するホルダー10とを含む。
【0027】
図8に示すように、ホルダー10は、供給リール8および巻取リール9の左右両側に配置された一対の側壁10sと、一対の側壁10sの下端部同士を連結する下壁10dとを含む。図7に示すように、ホルダー10は、一対の側壁10sの上端部同士を連結する上壁10uをさらに含む。図5および図6に示すように、左右方向に見ると、側壁10sの上端および下端は、前後に延びる直線状であり、側壁10sの後端は、後方に凸の円弧状である。
【0028】
転写ヘッド6は、側面視において一対の側壁10sから前方に突出している。供給リール8および巻取リール9は、左右方向における一対の側壁10sの間に配置されており、上下方向における上壁10uおよび下壁10dの間に配置されている。供給リール8は、左右に延びる回転中心C1まわりにホルダー10に対して回転可能であり、巻取リール9は、左右に延びる回転中心C2まわりにホルダー10に対して回転可能である。
【0029】
ホルダー10を移動させると、転写ヘッド6や供給リール8などのホルダー10に保持された複数の部品は、それらの位置関係を維持したままホルダー10と共に移動する。シャッター52は、ホルダー10に取り付けられている。後述するように、シャッター52は、前後方向へのホルダー10のスライドにしたがって前後に移動するものの、弾性変形しながら前後に移動する。したがって、転写ヘッド6や供給リール8に対するシャッター52の位置は、前後方向へのホルダー10のスライドに応じて変化する。図5図8は、テープ本体5が使用位置に配置されているときのシャッター52の形状を示している。
【0030】
テープ本体5は、ケース2に対して前後方向に直線状に移動可能である。テープ本体5は、ケース2に接触しながら前後に移動する複数のスライド面を含む。図5および図6に示すように、複数のスライド面は、ホルダー10の右側面に設けられた一対の右主スライド面11Rおよび一対の右副スライド面12Rと、ホルダー10の左側面に設けられた一対の左主スライド面11Lおよび一対の左副スライド面12Lとを含む。
【0031】
図6に示すように、右主スライド面11Rおよび右副スライド面12Rは、ホルダー10の右側の側壁10sに設けられている。右主スライド面11Rおよび右副スライド面12Rは、前後方向に延びる平面である。右副スライド面12Rの前端および後端は、右主スライド面11Rの前端よりも前方に配置されている。右主スライド面11Rの後端よりも前方に配置されるのであれば、右副スライド面12Rの後端を右主スライド面11Rの前端よりも後方に配置してもよい。
【0032】
右主スライド面11Rおよび右副スライド面12Rと同様に、図5に示すように、左主スライド面11Lおよび左副スライド面12Lは、ホルダー10の左側の側壁10sに設けられている。左主スライド面11Lおよび左副スライド面12Lは、前後方向に延びる平面である。左副スライド面12Lの前端および後端は、左主スライド面11Lの前端よりも前方に配置されている。左主スライド面11Lの後端よりも前方に配置されるのであれば、左副スライド面12Lの後端を左主スライド面11Lの前端よりも後方に配置してもよい。
【0033】
ケース2は、テープ本体5の複数のスライド面に接触しながら複数のスライド面を前後に案内することにより、テープ本体5をケース2に対して前後にスライドさせる複数のガイド面を含む。図9および図10に示すように、複数のガイド面は、右側の分割ケース3に設けられた一対の右主ガイド面13Rおよび一対の右副ガイド面14Rと、左側の分割ケース3に設けられた一対の左主ガイド面13Lおよび一対の左副ガイド面14Lとを含む。
【0034】
図9に示すように、右主ガイド面13Rおよび右副ガイド面14Rは、ケース2の右側壁2Rに設けられている。右主ガイド面13Rおよび右副ガイド面14Rは、前後方向に延びる平面である。右副ガイド面14Rの前端および後端は、右主ガイド面13Rの前端よりも前方に配置されている。右主ガイド面13Rの後端よりも前方に配置されるのであれば、右副ガイド面14Rの後端を右主ガイド面13Rの前端よりも後方に配置してもよい。
【0035】
右主ガイド面13Rおよび右副ガイド面14Rと同様に、図10に示すように、左主ガイド面13Lおよび左副ガイド面14Lは、ケース2の左側壁2Lに設けられている。左主ガイド面13Lおよび左副ガイド面14Lは、前後方向に延びる平面である。左副ガイド面14Lの前端および後端は、左主ガイド面13Lの前端よりも前方に配置されている。左主ガイド面13Lの後端よりも前方に配置されるのであれば、左副ガイド面14Lの後端を左主ガイド面13Lの前端よりも後方に配置してもよい。
【0036】
テープ本体5の一対の右主スライド面11Rは、ケース2の一対の右主ガイド面13Rの間に配置されており、一対の右主ガイド面13Rと直接向かい合っている。同様に、テープ本体5の一対の左主スライド面11Lは、ケース2一対の左主ガイド面13Lの間に配置されており、一対の左主ガイド面13Lと直接向かい合っている。このようになるのであれば、一対の右主スライド面11Rは、右方に突出する凸部の一対の側面であってもよいし、左方に凹んだ凹みの一対の側面であってもよい。左主スライド面11Lおよび左主ガイド面13Lについても同様である。
【0037】
収容位置から使用位置までのテープ本体5の移動経路上のいずれの位置にテープ本体5が位置しているときでも、右主ガイド面13Rの少なくとも一部は、右主スライド面11Rと直接向かい合っており、左主ガイド面13Lの少なくとも一部は、左主スライド面11Lと直接向かい合っている。したがって、右主ガイド面13Rおよび左主ガイド面13Lは、収容位置と使用位置との間でテープ本体5を案内する。
【0038】
その一方で、テープ本体5が収容位置に配置されているとき、一対の右副スライド面12Rは、一対の右副ガイド面14Rよりも後方に配置されており、一対の右副ガイド面14Rと直接向かい合っていない(図3および図4参照)。同様に、テープ本体5が収容位置に配置されているとき、一対の左副スライド面12Lは、一対の左副ガイド面14Lよりも後方に配置されており、一対の左副ガイド面14Lと直接向かい合っていない(図3および図4参照)。
【0039】
テープ本体5が収容位置と使用位置との間の中間位置まで前方に移動すると、一対の右副スライド面12Rが一対の右副ガイド面14Rの間に配置され、一対の右副ガイド面14Rと直接向かい合う。中間位置から使用位置までの移動経路では、この状態が維持される。したがって、右副ガイド面14Rは、中間位置よりも後方の位置ではテープ本体5を案内せず、中間位置と使用位置との間だけでテープ本体5を案内する。
【0040】
同様に、テープ本体5が収容位置と使用位置との間の中間位置まで前方に移動すると、一対の左副スライド面12Lが一対の左副ガイド面14Lの間に配置され、一対の左副ガイド面14Lと直接向かい合う。中間位置から使用位置までの移動経路では、この状態が維持される。したがって、左副ガイド面14Lは、中間位置よりも後方の位置ではテープ本体5を案内せず、中間位置と使用位置との間だけでテープ本体5を案内する。
【0041】
次に、スライドボタン22について説明する。
【0042】
図11は、スライドボタン22を下から見た図である。図12は、右側の分割ケース3の内側からスライドボタン22を見た図である。図12は、図10の一部を拡大した図である。図11および図12に示すように、スライドボタン22は、ユーザーの指に接するスライドプレート23と、ケース2の内面に引っ掛かる二対の抜け止めフック25と、テープ本体5を収容位置の方に移動させる力をテープ本体5に伝達する伝達ブロック24とを含む。
【0043】
スライドプレート23は、ケース2の外に配置されている。二対の抜け止めフック25と伝達ブロック24とは、スライドプレート23の裏面(図11では下面)からテープ本体5に向かって突出している。二対の抜け止めフック25と伝達ブロック24とは、ケース2のスライド穴21に挿入されている。ユーザーがスライドボタン22をスライドさせると、抜け止めフック25および伝達ブロック24は、スライド穴21に挿入された状態でケース2に対して移動する。
【0044】
図12に示すように、二対の抜け止めフック25は、前後に間隔を空けて配置されている。一つの対を構成する2つの抜け止めフック25は、上下に間隔を空けて配置されている。伝達ブロック24は、二対の抜け止めフック25の間に配置されている。前側の一対の抜け止めフック25と伝達ブロック24とは、T字状の前方連結溝26を形成している。後ろ側の一対の抜け止めフック25と伝達ブロック24とは、T字状の後方連結溝27を形成している。伝達ブロック24の幅(上下方向の長さ)は、スライド穴21の幅(上下方向の長さ)よりも狭い。
【0045】
図11に示すように、抜け止めフック25は、ケース2の内面から内側に突出している。抜け止めフック25は、ケース2のスライド穴21に挿入され柱部25pと、ケース2の内面に引っ掛かる頭部25hとを含む。抜け止めフック25がスライド穴21から抜ける方向にスライドボタン22を引っ張ると、頭部25hがケース2の内面に接触し、スライドボタン22の動きが止まる。これにより、ケース2からのスライドボタン22の脱落が防止される。
【0046】
図12に示すように、テープ本体5は、ホルダー10の左側面から側方に突出するT字状の連結突起28を含む(図5参照)。テープ本体5の連結突起28は、スライド穴21に挿入されている。スライドボタン22は、テープ本体5の連結突起28がスライドボタン22の後方連結溝27に嵌るように、テープ本体5に取り付けられている。スライドボタン22を前方に移動させる力をユーザーがスライドボタン22に加えると、この力は、後ろ側の一対の抜け止めフック25からテープ本体5の連結突起28に直接伝達される。これにより、テープ本体5が前方に移動する。
【0047】
図11に示すように、テープ本体5は、ホルダー10の左側面(図11では、上面)から側方に突出する可動凸部29を含む。図12に示すように、ケース2は、可動凸部29との接触により可動凸部29に抵抗を与える複数の固定凸部を含む。複数の固定凸部は、テープ本体5が収容位置から前方に移動するときに可動凸部29に抵抗を与える一対の後方固定凸部32と、テープ本体5が使用位置から後方に移動するときに可動凸部29に抵抗を与える一対の前方固定凸部31とを含む。
【0048】
可動凸部29の上端および下端は、テープ本体5の一対の左主スライド面11L(図5参照)の間に配置されている。可動凸部29は、テープ本体5の連結突起28の前方に配置されている。左端に相当する可動凸部29の先端(図11では上端)は、左端に相当する連結突起28の先端よりも内側に配置されている。言い換えると、可動凸部29は、左右方向に関して連結突起28よりも低い。テープ本体5の連結突起28がスライドボタン22の後方連結溝27に嵌められ、スライドボタン22がテープ本体5に取り付けられると、可動凸部29は、連結突起28と伝達ブロック24との間に配置される。
【0049】
前方固定凸部31および後方固定凸部32は、スライドボタン22が後端位置から前端位置に移動したときに可動凸部29が通過する位置に配置されている。したがって、ユーザーがスライドボタン22を後端位置から前端位置にスライドさせると、可動凸部29は、前方固定凸部31および後方固定凸部32の両方を乗り越える。スライド穴21は、一対の前方固定凸部31の間に配置されており、一対の後方固定凸部32の間に配置されている。前方固定凸部31および後方固定凸部32は、スライド穴21と左主ガイド面13L(図10参照)との間に配置されている。
【0050】
テープ本体5が収容位置から使用位置の方に移動するときは、テープ本体5の可動凸部29がケース2の後方固定凸部32を乗り越える必要がある。可動凸部29が後方固定凸部32を登るとき、言い換えると、可動凸部29が後方固定凸部32に重なった状態で後方固定凸部32の頂上に向かって移動するときは、後方固定凸部32から可動凸部29に抵抗が加わる。したがって、収容位置から移動しようとするテープ本体5に抵抗を与えることができる。この抵抗の大きさを調整することで、テープ本体5が自重で収容位置から移動することを防止できる。
【0051】
テープ本体5の可動凸部29がケース2の前方固定凸部31を乗り越えると、可動凸部29の可動接触面29sが、前方固定凸部31の固定接触面31sの前方に移動し、前方固定凸部31の固定接触面31sと直接向かい合う。転写ヘッド6を被転写物に押し付けると、テープ本体5を使用位置から収容位置の方に移動させる力がテープ本体5に加わる。テープ本体5が使用位置に配置された状態で転写ヘッド6を上に向けたときも、自重によるこのような力がテープ本体5に加わる。このような力がテープ本体5に加わると、可動凸部29の可動接触面29sが、前方固定凸部31の固定接触面31sに接触し、テープ本体5がその場に留まる(可動接触面29sが固定接触面31sに接触した位置に留まる)。これにより、テープ本体5が意図せず収容位置の方に移動することを防止できる。
【0052】
テープ本体5が使用位置に配置された状態でユーザーがスライドボタン22を後方にスライドさせると、スライドボタン22の伝達ブロック24がテープ本体5の可動凸部29に押し付けられ、可動凸部29が前方固定凸部31から内側に離れるように動く。その後、可動凸部29の可動接触面29sが前方固定凸部31の固定接触面31sに接触せずに、可動凸部29が前方固定凸部31に乗り上がり、前方固定凸部31に沿って後方に移動する。したがって、ユーザーは、スライドボタン22を後方にスライドさせることにより、テープ本体5を使用位置でロックさせずに収容位置までスライドさせることができる。
【0053】
スライドボタン22の伝達ブロック24がテープ本体5の可動凸部29に後方向に押し付けられると、弾性変形により可動凸部29の先端が内側に移動する。伝達ブロック24が可動凸部29を後方向に押す力がなくなると、弾性変形により発生した復元力で可動凸部29の先端が外側に移動し、元の位置に戻る。伝達ブロック24が可動凸部29に押し付けられた際に発生する弾性変形は、可動凸部29または側壁10sの弾性変形であってもよいし、可動凸部29および側壁10sの両方の弾性変形であってもよい。図11は、左右に揺れ動く片持ちの撓み板30が左側の側壁10sに設けられており、可動凸部29が撓み板30に結合された例を示している(図5も参照)。
【0054】
可動凸部29および撓み板30のまわりにはホルダー10の左側の側壁10sを左右に貫通するスリットが形成されており、撓み板30の根元だけが左側の側壁10sに結合されている。可動凸部29は、左側の側壁10sに直接結合されておらず、撓み板30を介して左側の側壁10sに支持されている。可動凸部29を内側に押す力が発生すると、撓み板30の根元を中心に撓み板30が内側に撓み、可動凸部29が内側に移動する。このとき撓み板30に加わる力が弾性限度以下であれば、可動凸部29を内側に押す力をなくすと、可動凸部29が元の位置まで外側に移動する。
【0055】
次に、シャッター52およびガイド溝41について説明する。
【0056】
図13は、左側の分割ケース3を取り外した収容状態の転写具1の左側面図である。図14は、左側の分割ケース3を取り外した使用状態の転写具1の左側面図である。図15は、開口51を通る水平な平面に沿う一対の分割ケース3の断面図である。図16は、ガイド溝41の深さの変化を説明するための右側の分割ケース3の斜視図である。図13および図14では、理解を容易にするために、シャッター52にハッチングを施している。
【0057】
図13および図14に示すように、シャッター52は、シャッター52の長手方向における一方の端部だけがテープ本体5に固定された長方形状のバンドである。シャッター52の長手方向における一方の端部は、シャッター52の固定端部52fに相当し、シャッター52の長手方向における他方の端部は、シャッター52の自由端部52rに相当する。シャッター52は、固定端部52fだけでテープ本体5に固定されており、自由端部52rなどの固定端部52f以外のシャッター52の各部ではテープ本体5に固定されていない。
【0058】
シャッター52の固定端部52fは、ホルダー10に固定されている。ホルダー10は、シャッター52の固定端部52fに形成された取付穴52h(図8も参照)に差し込まれた取付軸53を含む。取付軸53は、ホルダー10の下壁10dから下方に突出している。シャッター52の固定端部52fは、ホルダー10の下壁10dの下方に配置されている。取付穴52hは、シャッター52の厚み方向にシャッター52の固定端部52fを貫通している。
【0059】
ホルダー10を前後に移動させると、シャッター52の固定端部52fも前後に移動する。このとき、シャッター52の固定端部52fは、ホルダー10に対して前後にずれることなく前後に移動してもよいし、数ミリメートル以下であれば前後に多少ずれて前後に移動してもよい。取付軸53は、このようなはめ合いで取付穴52hに挿入されている。取付軸53は、取付穴52hに圧入されていてもよいし、取付穴52hにすきまばめされていてもよい。
【0060】
図15に示すように、シャッター52は、ケース2に設けられた一対のガイド溝41の間に配置されている。一対のガイド溝41は、ケース2の中に形成されている。シャッター52の右端部および左端部は、一対のガイド溝41に嵌められている。シャッター52は、撓んだ状態でガイド溝41に嵌められており、ガイド溝41に沿う形に変化している。シャッター52には、シャッター52の各部の曲率半径を増加させる復元力が働いている。シャッター52は、ガイド溝41によって拘束されており、曲率半径の変化が防止されている。
【0061】
シャッター52をガイド溝41に沿って移動させると、シャッター52の各部の曲率半径が増加または減少し、ガイド溝41に沿う別の形状にシャッター52が変化する。テープ本体5が使用位置(図14に示す位置)に配置されると、シャッター52は、シャッター52がケース2の開口51のいずれの部分にも重ならないオープン形状になる。テープ本体5が収容位置(図13に示す位置)に配置されると、シャッター52は、シャッター52がケース2の開口51に重なるクローズ形状になる。シャッター52は、ケース2に対する前後方向へのテープ本体5のスライドに応じてオープン形状とクローズ形状との間で弾性変形する。
【0062】
シャッター52の強度は、ケース2に対する前後方向へのテープ本体5のスライドに応じてオープン形状とクローズ形状との間で弾性変形するように設定されている。シャッター52がこのように弾性変形するのであれば、材質、厚み、形状、および寸法などのシャッター52の強度を決める各要素は任意である。例えば、シャッター52は、樹脂製であり、その厚みは、0.5~2.0ミリメートルの範囲内である。シャッター52は、樹脂以外の材料製であってもよいし、その厚みは、前記の範囲外であってもよい。
【0063】
テープ本体5が収容位置に配置されると、シャッター52がクローズ形状になり、開口51がシャッター52によって閉じられる。シャッター52がクローズ形状のときに開口51に垂直な方向に開口51を外側から見ると、開口51のいずれの部分もシャッター52に重なっている。数ミリメートル程度であれば、シャッター52がクローズ形状のとき、開口51の内周面51iとシャッター52の下端との間に隙間が形成されていてもよい。
【0064】
シャッター52は、一対のガイド溝41に嵌められた状態で、テープ本体5に沿うように曲線状に曲げられている。シャッター52は、テープ本体5を上下および前後に取り囲んでいる。シャッター52は、テープ本体5の下方からテープ本体5の後方および上方を通ってテープ本体5の前方まで延びている。シャッター52は、テープ本体5の右側および左側に配置されておらず、テープ本体5の右側面および左側面は、シャッター52から露出している。
【0065】
シャッター52の幅は、シャッター52の短辺方向(左右方向)へのシャッター52の長さに相当する。シャッター52の長さは、シャッター52の長辺方向へのシャッター52の長さに相当する。シャッター52の幅は、シャッター52の長さよりも短い。シャッター52の幅は、転写ヘッド6の幅よりも広い。シャッター52の幅は、開口51の幅以上である。シャッター52の幅は、長手方向におけるシャッター52の一端から長手方向におけるシャッター52の他端まで一定であってもよいし、開口51の全体または殆ど全体を覆うことができるのであれば、途中で変化していてもよい。
【0066】
図15に示すように、シャッター52の右端は、右側のガイド溝41に挿入されており、シャッター52の左端は、左側のガイド溝41に挿入されている。各ガイド溝41の深さは、シャッター52の幅の半分未満である。したがって、シャッター52は、シャッター52の右端部および左端部だけが一対のガイド溝41によって支持されている。左右方向におけるシャッター52の中央部は、一対のガイド溝41内に配置されていない。
【0067】
シャッター52の中央部は、一対のガイド溝41内に配置されておらず、一対のガイド溝41によって直接的に拘束されていないが、シャッター52の右端部および左端部以外のシャッター52の各部も、シャッター52の右端部および左端部を拘束する力で、シャッター52の右端部および左端部と同様の形に変化している。シャッター52が一対のガイド溝41に沿って移動すると、シャッター52の右端部および左端部以外のシャッター52の各部も、シャッター52の右端部および左端部と同様に形を変える。
【0068】
ガイド溝41は、ケース2の右側壁2Rまたは左側壁2Lの内面から凹んだ凹みであってもよいし、ケース2の右側壁2Rまたは左側壁2Lの内面から突出する内壁および外壁の間に形成されていてもよい。後者の場合、分割ケース3の右筒状壁4Rまたは左筒状壁4Lの内周面が外壁の一部を構成していてもよい。図13は、後者の例、つまり、右側壁2Rの内面から左方に突出する内壁43および外壁44が右側の分割ケース3に設けられており、内壁43および外壁44の間にガイド溝41が形成された例を示している。この例では、右筒状壁4Rの内周面が外壁44の一部を構成している。
【0069】
図15に示すように、ガイド溝41の内面は、シャッター52の側方に配置された底面42bと、シャッター52の内側に配置された内側面42iと、シャッター52の外側に配置された外側面42oとを含む。内側面42iおよび外側面42oは、底面42bから左右に延びている。シャッター52は、一対のガイド溝41の底面42bの間に配置されている。シャッター52は、一対のガイド溝41の底面42bよって、左右方向への移動が規制される。
【0070】
右側のガイド溝41は、右側の分割ケース3に設けられた右ガイド溝41Rであり、左側のガイド溝41は、左側の分割ケース3に設けられた左ガイド溝41Lである。右ガイド溝41Rおよび左ガイド溝41Lは、転写具1を左右に二等分する鉛直な平面WOに関して面対称である。右ガイド溝41Rおよび左ガイド溝41Lを左右方向に見ると、右ガイド溝41Rのいずれの部分も左ガイド溝41Lに重なる。したがって、以下では、右ガイド溝41Rについて詳細に説明し、左ガイド溝41Lについては必要に応じて説明する。
【0071】
図13に示すように、右ガイド溝41Rは、右側の分割ケース3の右筒状壁4Rの内側に配置されている。右ガイド溝41Rは、右筒状壁4Rの内周面に沿って延びている。右主ガイド面13Rおよび右副ガイド面14Rは、右ガイド溝41Rの内側に配置されている。一対の右副ガイド面14Rは、右ガイド溝41Rを形成する内壁43から後方に延びている。右ガイド溝41Rの一部は、開口51と右副ガイド面14Rと間に配置されている。
【0072】
左右方向に見ると、右ガイド溝41Rは、収容位置に位置するテープ本体5の下方からテープ本体5の後方および上方を通って転写ヘッド6の前方の位置まで延びている。右ガイド溝41Rは、右ガイド溝41Rの始点41Sから右ガイド溝41Rの終点41Eまで右ガイド溝41Rの長手方向に連続していてもよいし、シャッター52を案内できるのであれば、右ガイド溝41Rの長手方向に不連続であってもよい。図13および図14は、前者の例を示している。
【0073】
右ガイド溝41Rの始点41Sは、図13に示すクローズ形状のシャッター52の固定端部52fよりも前方に配置されている。右ガイド溝41Rの始点41Sは、右ガイド溝41Rの終点41Eよりも後方に配置されている。右ガイド溝41Rの終点41Eは、ケース2の開口51の下端よりも下方に配置されている。右ガイド溝41Rの終点41Eは、ケース2の開口51の下端と等しい高さに配置されていてもよい。右ガイド溝41Rの終点41Eは、右ガイド溝41Rの始点41Sより上方または下方に配置されていてもよいし、右ガイド溝41Rの始点41Sと等しい高さに配置されていてもよい。
【0074】
右ガイド溝41Rは、収容位置(図13に示す位置)に位置するテープ本体5の前方に位置する前方部41fと、収容位置に位置するテープ本体5の上方に位置する上方部41uと、収容位置に位置するテープ本体5の後方に位置する後方部41rと、収容位置に位置するテープ本体5の下方に位置する下方部41dとを含む。前方部41f、上方部41u、および下方部41dは、いずれも直線状である。前方部41fは、上下に延びており、上方部41uおよび下方部41dは、前後に延びている。後方部41rは、上下に延びる直線状であってもよい。
【0075】
前方部41fと上方部41uとの結合部は、外側に凸の円弧状である。上方部41uと後方部41rとの結合部も、外側に凸の円弧状であり、後方部41rと下方部41dとの結合部も、外側に凸の円弧状である。後方部41rを含む右ガイド溝41Rの後端部は、後方に凸の円弧状である。後方部41rの後端は、右ガイド溝41Rの後端41eに相当する。シャッター52の固定端部52fは、右ガイド溝41Rの後端41eよりも始点41S側の位置でホルダー10に固定されている。
【0076】
右ガイド溝41Rの前方部41fは、開口51の上端から開口51の下端まで開口51に沿って延びている。右ガイド溝41Rの前方部41fは、開口51と隣接していてもよいし、開口51から後方に離れていてもよい。図15は、前者の例を示している。この例では、開口51の内周面51iが右ガイド溝41Rの外側面42oからケース2の外面まで前方に延びている。
【0077】
テープ本体5が収容位置に配置されているとき、転写ヘッド6は、右ガイド溝41Rの前方部41fよりも後方に配置される。テープ本体5が使用位置に移動するときや使用位置から離れるときは、転写ヘッド6の先端が右ガイド溝41Rの前方部41fと左ガイド溝41Lの前方部41fとの間を通過する。テープ本体5が使用位置に配置されているときは、転写ヘッド6またはホルダー10が、右ガイド溝41Rの前方部41fと左ガイド溝41Lの前方部41fとの間に配置される。
【0078】
図16に示すように、シャッター52の内側および外側に配置される内壁43および外壁44は、前方部41fのところだけ低くなっており、前方部41f以外のところでは高くなっている。したがって、ガイド溝41は、前方部41fのところだけ浅くなっている。ガイド溝41の深さに相当する内壁43および外壁44の高さ(左右方向の長さ)は、ガイド溝41の始点41Sからガイド溝41の終点41Eまで一定であってもよい。
【0079】
ユーザーがスライドボタン22を後端位置から前端位置の方にスライドさせると、スライドボタン22をスライドさせる力がテープ本体5に伝達され、テープ本体5が収容位置から使用位置の方に移動する。このとき、シャッター52の固定端部52fがテープ本体5によって引っ張られ、ガイド溝41の始点41Sに近づく方向に移動する。
【0080】
シャッター52の固定端部52fを引っ張る力は、シャッター52とガイド溝41との接触によって、シャッター52の全体をガイド溝41に沿ってガイド溝41の始点41Sに近づく方向に移動させる力に変換される。そのため、シャッター52の全体が、ガイド溝41に沿う新しい形に弾性変形の範囲内で変化しながら、ガイド溝41に沿ってガイド溝41の始点41Sに近づく方向にガイド溝41内を移動する。
【0081】
シャッター52の全体がガイド溝41の始点41Sの方に移動すると、シャッター52の自由端部52rもガイド溝41の始点41Sの方に移動し、ケース2の開口51が徐々に開かれる。具体的には、シャッター52の自由端部52rが上方に移動し、ケース2の開口51が下から徐々に開かれる。前端に相当する転写ヘッド6の先端がケース2の開口51に達したときには、シャッター52の自由端部52rは、テープ本体5に接触しない位置まで退避している。このとき、ケース2の開口51は、全開であってもよしい、シャッター52によって部分的に閉じられていてもよい。
【0082】
ユーザーがスライドボタン22を前端位置までスライドさせたときには、ケース2の開口51が開かれており、転写ヘッド6がケース2の外に配置されている。したがって、ユーザーは、スライドボタン22をスライドさせるだけで、ケース2の開口51を開くと共に、転写ヘッド6をケース2から突出させることができる。
【0083】
ユーザーがスライドボタン22を前端位置から後端位置の方にスライドさせると、スライドボタン22をスライドさせる力がテープ本体5に伝達され、テープ本体5が使用位置から収容位置の方に移動する。このとき、シャッター52の固定端部52fがテープ本体5によって押され、ガイド溝41の始点41Sから離れる方向に移動する。
【0084】
シャッター52の固定端部52fを押す力は、シャッター52とガイド溝41との接触によって、シャッター52の全体をガイド溝41に沿ってガイド溝41の始点41Sから離れる方向に移動させる力に変換される。そのため、シャッター52の全体が、ガイド溝41に沿う新しい形に弾性変形の範囲内で変化しながら、ガイド溝41に沿ってガイド溝41の始点41Sから離れる方向にガイド溝41内を移動する。
【0085】
シャッター52の全体がガイド溝41の終点41Eに近づくと、シャッター52の自由端部52rもガイド溝41の終点41Eに近づき、ケース2の開口51が徐々に閉じられる。具体的には、シャッター52の自由端部52rが開口51の上端に向かって前方に下降し、ケース2の開口51が上から徐々に閉じられる。シャッター52の自由端部52rがテープ本体5に接触しなければ、前端に相当する転写ヘッド6の先端がケース2の開口51を通過する前に、シャッター52の自由端部52rでケース2の開口51を閉じ始めてもよいし、転写ヘッド6の先端がケース2の開口51を通過した後に、シャッター52の自由端部52rでケース2の開口51を閉じ始めてもよい。
【0086】
ユーザーがスライドボタン22を後端位置までスライドさせたときには、転写ヘッド6がケース2の中に配置されており、ケース2の開口51がシャッター52によって閉じられている。したがって、ユーザーは、スライドボタン22をスライドさせるだけで、転写ヘッド6をケース2の中に退避させることができると共に、ケース2の開口51をシャッター52で閉じることができる。
【0087】
以上のように本実施形態では、ユーザーがスライドボタン22を後端位置から前端位置にスライドさせると、テープ本体5が収容位置から使用位置にスライドし、テープ本体5に固定されたシャッター52の固定端部52fがケース2の開口51に近づく方向に引っ張られる。この引っ張る力は、シャッター52とガイド溝41との接触によって、シャッター52をクローズ形状からオープン形状に弾性変形させる力に変換される。これにより、ケース2の開口51が開き、その後、転写ヘッド6がケース2の開口51から外に出る。
【0088】
これとは反対に、ユーザーがスライドボタン22を前端位置から後端位置にスライドさせると、テープ本体5が使用位置から収容位置にスライドし、テープ本体5に固定されたシャッター52の固定端部52fがケース2の開口51から遠ざかる方向に押される。この押す力は、シャッター52とガイド溝41との接触によって、シャッター52をオープン形状からクローズ形状に弾性変形させる力に変換される。これにより、転写ヘッド6がケース2の開口51から中に入り、その後、ケース2の開口51がシャッター52によって閉じられる。
【0089】
このように、スライドボタン22をスライドさせるだけで、転写ヘッド6の出没とシャッター52の開閉を行えるので、これらを別々の操作で行う構成に比べて便利である。さらに、シャッター52をケース2から取り外す必要がないので、ごみや埃などの異物がケース2の開口51から中に入ることを防止できるだけでなく、シャッター52の紛失を防止できる。加えて、シャッター52は、従来のような回転式の蓋ではなく、長手方向における一方の端部だけがテープ本体5に固定された細長い板状のバンドであるので、従来の構成に比べて転写具1の幅を狭めることができ、構造の複雑化を防止できる。
【0090】
本実施形態では、ケース2の開口51を開閉するシャッター52が、ガイド溝41の内側面42iおよび外側面42oの間に配置されており、ケース2の開口51の内周面51iが、ガイド溝41の外側面42oからケース2の外面まで延びている。ガイド溝41は、ケース2の開口51から離れているのではなく、ケース2の開口51に隣接している。したがって、クローズ形状のシャッター52とケース2の開口51との間の隙間を小さくできる。加えて、シャッター52の弾性によりシャッター52の少なくとも一部を開口51のまわりでケース2の内面に密着させることができ、ケース2の開口51を通じて中に入る異物を減らすことができる。
【0091】
本実施形態では、テープ本体5が収容位置に配置されているときに左右方向に見ると、ガイド溝41の前方部41fが、ケース2の開口51と転写ヘッド6との間に配置されている一方で、前方部41f以外のガイド溝41の各部は、テープ本体5のまわりに配置されている。ユーザーがスライドボタン22をスライドさせると、転写ヘッド6は、一対のガイド溝41の前方部41fの間を通過する。前方部41fでのガイド溝41の深さを相対的に小さくすることにより、ケース2の幅を減らすことができる。前方部41f以外の位置でのガイド溝41の深さを相対的に大きくすることにより、シャッター52をより確実に案内でき、シャッター52をより確実に弾性変形させることができる。
【0092】
本実施形態では、収容位置から使用位置までいずれの位置にテープ本体5が位置しているときでも、テープ本体5が、ケース2の右主ガイド面13Rおよび左主ガイド面13Lによって案内される。これに対して、ケース2の右副ガイド面14Rおよび左副ガイド面14Lは、使用位置を含むテープ本体5の移動経路の一部だけでテープ本体5を案内する。テープ本体5が使用位置に配置されているときは、右主ガイド面13Rおよび左主ガイド面13Lおよび右副ガイド面14Rおよび左副ガイド面14Lの両方でテープ本体5が支持される。テープ本体5が使用位置に配置されているときは、転写ヘッド6が被転写物に押し付けられ、反力が転写ヘッド6に加わる。このような場合に右主ガイド面13Rおよび左主ガイド面13Lおよび右副ガイド面14Rおよび左副ガイド面14Lの両方でテープ本体5を支持することにより、転写ヘッド6のがたつきを小さくできる。さらに、収容位置付近では右主ガイド面13Rおよび左主ガイド面13Lだけでテープ本体5が案内されるので、テープ本体5に加わる抵抗を減らすことができ、テープ本体5をスムーズにスライドさせることができる。
【0093】
他の実施形態
本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0094】
例えば、ケース2の開口51を、四角形以外の形状に形成してもよい。
【0095】
ケース2の前壁2fの鉛直な断面を、上下に延びる直線状ではなく、前方に凸の円弧状に形成してもよい。
【0096】
シャッター52は、テープ本体5が収容位置に配置されているときに、テープ本体5の上方からテープ本体5の後方および下方を通ってテープ本体5の前方にまで延びていてもよい。言い換えると、シャッター52をテープ本体5の上方でテープ本体5に固定し、シャッター52が前記のように配置されるように一対のガイド溝42を形成してもよい。
【0097】
転写ヘッド6、供給リール8、および巻取リール9の位置関係を、収容位置と使用位置とで異ならせてもよい。例えば、前後方向へのスライドボタン22のスライドに伴って、転写ヘッド6を供給リール8および巻取リール9に対して前後にスライドさせてもよい。
【0098】
ケース2の右副ガイド面14Rおよび左副ガイド面14Lとテープ本体5の右副スライド面12Rおよび左副スライド面12Lとを省略してもよい。
【0099】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0100】
1:転写具、2:ケース、3:分割ケース、5:テープ本体、6:転写ヘッド、7:転写テープ、8:供給リール、9:巻取リール、10:ホルダー、11L:左主スライド面、11R:右主スライド面、12L:左副スライド面、12R:右副スライド面、13L:左主ガイド面、13R:右主ガイド面、14L:左副ガイド面、14R:右副ガイド面、22:スライドボタン、41:ガイド溝、41E:ガイド溝の終点、41L:左ガイド溝、41R:右ガイド溝、41S:ガイド溝の始点、41d:ガイド溝の下方部、41f:ガイド溝の前方部、41r:ガイド溝の後方部、41u:ガイド溝の上方部、41e:ガイド溝の後端、42b:ガイド溝の底面、42i:ガイド溝の内側面、42o:ガイド溝の溝外側面、43:内壁、44:外壁、51:開口、51i:開口の内周面、52:シャッター、52f:シャッターの固定端部、52h:シャッターの取付穴、52r:シャッターの自由端部、53:取付軸
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