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特許7384468竹刀の清潔と寿命延長のためのコーティング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】竹刀の清潔と寿命延長のためのコーティング方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/02 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
A63B69/02 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022032436
(22)【出願日】2022-03-03
(65)【公開番号】P2023001007
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0078760
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522084751
【氏名又は名称】シン,ヨン マン
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヨン マン
【審査官】佐々木 祐
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-063075(JP,A)
【文献】特開2014-132978(JP,A)
【文献】特開2000-272294(JP,A)
【文献】特開昭62-142574(JP,A)
【文献】特許第4128559(JP,B2)
【文献】実公昭39-001466(JP,Y1)
【文献】実開昭59-174865(JP,U)
【文献】実開昭59-193465(JP,U)
【文献】国際公開第2008/001875(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/02
B05D 1/00 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4本の竹片からなる竹刀の刀身と、前記竹刀の柄部に当たる柄革と、前記竹刀の刀身の先端部から所定の距離に位置し、前記竹刀の刀身の4本の竹片が分離されることを防ぐ中結いと、前記竹刀の刀身の先端部を覆う先革と、前記柄革と前記竹刀の刀身との間に位置して使用者の手の甲を保護するための鍔と、前記竹刀の刀背部であることを表示する弦と、を備える竹刀において、対象物への打突が行われる前記竹片のもの打ち部位をコーティングする方法において、
接着力の向上などのために竹片の表面の薬品などを取り除くための酸/アルカリクリーニング処理ステップと、
前記表面を磨いて凹凸を与えて水性接着剤との物理的な結合を増加させるバフ研磨ステップと、
前記表面に極性性質を与えるためのプライマー前処理を通して接着力を向上させるステップと、
前記接着力を向上させるステップを行った後、1次合成油を用いてコーティングを行った後、熱処理と乾燥を行うステップであって、
前記一次合成油にMgCl 、及び前記水性接着剤に水性硬化剤を、さらに添加する、ステップと、
前記乾燥ステップ後に、2次合成油を用いてコーティングを行った後、熱処理と乾燥を行うステップと、
を含んでなり、
前記合成油は、最終混合物を100重量部としたとき、ラテックス7288重量部、ロジン3~7重量部、亜鉛3~7重量部、2.6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール3~7重量部、アルギン酸ナトリウム2~4重量部、二酸化チタン0.5~1.5重量部、ウルトラマリンブルー0.5~1.5重量部を含んでなることを特徴とする竹刀の清潔と寿命延長のためのコーティングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竹刀のコーティング方法に係り、さらに詳しくは、竹刀のもの打ち部位(打突部位)の主な部分である4本の竹片(割り竹)の内側面の1/3となる個所に竹刀の破損を予防し、破片によるけがを防ぐとともに、衝撃の緩和効果を得られるようにし、使用期間を延ばすことができ、湿気、カビを防止できるように特有の合成油(韓国語でタソム油といい)を用いて新規な方法で部分的にコーティングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のごとく、様々な武道のうち、伝統を誇る剣道の場合、刀剣で相手と対人稽古や試合をする武道であるが、刀剣を用いる武道は、東西洋を問わずに長年の伝統を有している武道である。
【0003】
その伝統にふさわしく、剣道には、所定の手続きを有する礼法があり、対人稽古や試合のための剣の種類もまた多岐にわたっている。基本的に、剣道の基本技を稽古するためには、竹刀と木刀を用いており、結局のところ、真剣を用いることになる。竹刀の場合、初級者、中級者らが稽古や修業をする過程において非常に一般的な道具である。
【0004】
図1は、従来の通常の竹刀を示す斜視図である。
【0005】
図1に示すように、一般に、従来の竹刀10は、竹刀の全長を規定した規格に合わせて4本の竹片からなる竹刀の刀身16と、竹刀を握る柄用の柄革11と、所定の部位に形成された中結い12及び竹刀の先端に先革13を結束させた刃部が一体になっている。
【0006】
柄革11は、竹刀の柄部に当たり、滑らないように摩擦力が高い綿類や特殊の革により包まれている。
【0007】
中結い12は、竹刀10の先革13から1/3の位置において竹刀の刀身16を結んで4本の竹片が分離されることを防ぐ。
【0008】
先革13は、綿製や革製のカバーであり、相手に対して突きを行うときに竹により相手が傷付かないようにするために形成されたものである。
【0009】
従来の竹刀10は、使用者の手の甲を保護するための鍔14が柄革11の先端部に形成されている。
【0010】
一方、従来の竹刀10は、前記柄革11、中結い12及び先革13が別々に動くことはなく、もともとの自分の位置をしっかりと取るように竹刀の長手方向に沿って弦15が形成されている。このとき、弦15は、竹刀10の刀背部であることを表示する機能をも有する。
【0011】
しかしながら、従来の竹刀を使用し続ける場合には、竹刀で対象物を打突し続けてしまうことにより、竹刀に加えられる衝撃により竹刀が破損されてしまうという欠点がある。
【0012】
また、竹刀に加えられる衝撃によりできた竹刀の刀身16の破片により使用者がけがをすることが懸念され、竹刀による衝撃が使用者に溜まってしまうという不都合があった。
【0013】
このような竹刀には、湿度、気温など使用環境による損傷が生じ、特に、湿気、カビなどに弱いという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】韓国登録実用新案第2003-46277000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする技術的課題は、対象物への打突が行われる竹刀の弱い竹片に部分的に衝撃の吸収のためのコーティングを行って、竹刀で対象物を打突する場合であっても竹刀の破損を防ぐことができ、これにより、使用者のけがのリスクをも低減させるようにした竹刀のコーティング方法を提供するところにある。
【0016】
また、竹刀の竹片の一部、好ましくは、もの打ち部位にコーティング処理を行って安全な装備にし、破損を防ぎ、使用期間を延ばすことができ、湿気、カビなどを防ぐ竹刀のコーティング方法を提供するところに本発明の他の技術的課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の技術的課題を解決するために、本発明に係る竹刀の清潔と寿命延長のためのコーティング方法は、4本の竹片からなる竹刀の刀身と、前記竹刀の柄部に当たる柄革と、前記竹刀の刀身の先端部から所定の距離に位置し、前記竹刀の刀身の4本の竹片が分離されることを防ぐ中結いと、前記竹刀の刀身の先端部を覆う先革と、前記柄革と前記竹刀の刀身との間に位置して使用者の手の甲を保護するための鍔と、前記竹刀の刀背部であることを表示する弦と、を備えるが、対象物への打突が行われる前記竹片のもの打ち部位をコーティングする方法において、接着力の向上などのために竹片の表面の薬品などを取り除くための酸/アルカリクリーニング処理ステップと、前記表面を磨いて凹凸を与えて接着剤との物理的な結合を増加させるバフ研磨ステップと、前記表面に極性性質を与えるためのプライマー前処理を通して接着力を向上させるステップと、前記接着力を向上させるステップを行った後、1次合成油を用いてコーティングを行った後、熱処理と乾燥を行うステップと、前記乾燥ステップ後に、2次合成油を用いてコーティングを行った後、熱処理と乾燥を行うステップと、を含んでなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る竹刀のコーティング方法によれば、対象物への打突が行われる竹刀の刃部であるもの打ち部位への衝撃を吸収できるコーティングを行って、竹刀で対象物を打突する場合であっても竹刀の破損を防ぐことができるというメリットがある。
【0019】
また、使用者のけがのリスクを低減させることができ、安全な装備にし、破損を防ぎ、使用期間を延ばすことができ、湿気、カビなどを防ぐことができるという効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来の通常の竹刀を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に適用可能な竹刀を示す斜視図である。
図3】本発明に係る竹刀のもの打ち部位において、竹刀の竹片の内側においてコーティングされるコーティング部を示す図である。
図4】本発明に適用された竹刀のコーティング過程を示す工程手順図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に基づいて、本発明について詳しく説明する。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態に適用可能な竹刀を示す斜視図であり、図3は、本発明の一実施形態に係る竹刀の個別の竹片を示す図である。
【0023】
図2及び図3を参照すると、本発明の一実施形態に係る竹刀20は、竹刀の刀身26と、柄革21と、中結い22と、先革23と、鍔24及び弦25を備えてなる。
【0024】
竹刀の刀身26は、竹を縦に割った4本の竹片が隣り合っている状態で形成される。
【0025】
柄革21は、前記竹刀の柄部に当たり、竹刀の剣先から鍔24が設けられる部分まで革で包んだものであって、使用者が竹刀を使用する場合に手を怪我させないようにするだけではなく、手から発せれる汗を吸収して手から滑り出したり抜けたりすることを防ぐ。
【0026】
中結い22は、前記竹刀の刀身26の先端部から約1/3の距離に位置し、前記竹刀の刀身26を包み込んで前記竹刀の刀身26の4本の竹片が分離されることを防ぐ。
【0027】
先革23は、前記竹刀の刀身26の先端部を覆う。前記先革23は、竹刀20の突き、斬りなどを行うときに相手を保護し、竹刀20の打突による衝撃から竹刀の刀身26が破損されることを防ぐためのものであり、綿製や革製である。
【0028】
鍔24は、前記柄革21と前記竹刀の刀身26との間に位置して使用者の手の甲を保護する。
【0029】
弦25は、柄革21、中結い22及び先革23が別々に動かずにもともとの自分の位置をしっかりと取るように竹刀20の長手方向に沿って形成されている。なお、弦25は、弦25が形成された部分が前記竹刀20の刀背部であることを表示する機能を行う。
【0030】
一方、図3は、本発明に一例として適用されて竹刀20をなす4本の竹片27のうちの一つを代表的に示している。
【0031】
同図に示すように、4本の竹片が組み合わせられて竹刀20を形成する竹片27の主なもの打ち部位である前部分の1/3の個所の内側にコーティング処理を行って安全な装備にし、破損を防ぎ、使用期間を延ばすことができ、湿気、カビなどを防ぐことができる。
【0032】
本発明は、通常、竹刀20に用いられる竹の材質が有する表面エネルギー特性とコーティング加工工程中に用いられる化学薬品及び離型剤、添加された低分子量のポリマー及びオイルなどのマイグレーション(migration)現象により接着力が格段に低下してしまうという問題を解決する。
【0033】
図4を参照すると、本発明は、接着力の向上などのために竹片27の表面の薬品などを取り除くための酸/アルカリクリーニング処理、表面を磨いて凹凸を与えて接着剤との物理的な結合を増加させるバフ研磨、次いで、表面の極性性質を与えるためのプライマー前処理を通して接着力を向上させる。
【0034】
次いで、本発明は、1次的に本発明に係る1次合成油を用いてコーティングを行い、熱処理と乾燥を行うことになる。
【0035】
乾燥後に、本発明は、再び2次合成油を用いてコーティングを行い、熱処理と乾燥を行うことになる。
【0036】
本発明に適用された1次合成油は、最終混合物を100重量部としたとき、ラテックス70~90重量部、ロジン3~7重量部、亜鉛3~7重量部、2.6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール3~7重量部、アルギン酸ナトリウム2~4重量部、二酸化チタン0.5~1.5重量部、ウルトラマリンブルー0.5~1.5重量部からなる。
【0037】
本発明に適用された合成油は、前記配合比に従って密閉式混合機を用いて製造し、製造条件としては、回転速度は40rpm、温度は80℃に設定した後、10分以上混合して使用することになる。
【0038】
本発明において、前記1次合成油をコーティングした後、再び2次合成油を用いてコーティングを行い、熱処理と乾燥を行うことになるが、通常、2次合成油をコーティングする前にバフ研磨工程を行って接着の性能を高めることになる。
【0039】
この場合、前記コーティング剤の表面を磨く過程において生じる粉塵による作業環境の汚れは、作業者の健康を脅威するだけではなく、手作業により行われるが故に、工程の複雑化及び値上がりの原因となる。
【0040】
本発明は、2次合成油をコーティングする前に行うバフ研磨工程を除去するために、1次合成油にMgCl 1~3重量部、接着剤としては、(株)ドンソンにおいて生産される被着材用UVプライマー(P-7-2)とヘンケル(HENKEL)社において生産される水性接着剤W50 100重量部に水性硬化剤ARF40 5重量部をさらに添加する。
【0041】
本発明において、水性接着剤を適用した場合、MgClが添加されたコーティング時における24時間後の接着力が2.0kgf/cmであって、MgCl未添加のコーティング時の接着力が0.2kgf/cmであることに比べて、約10倍の優れた状態接着特性を示す。
【0042】
水性接着剤の場合、溶剤型接着剤に比べて初期接着力は低下するものの、状態接着力は30%以上上がり、これは、MgClが水に溶ける塩であるということを考慮したとき、有機溶媒からなる溶剤型接着剤よりも水からなる水性型接着剤の方において1次コーティングの表面に含まれているMgClが水性型接着剤に含まれている水に溶けながらMgClが溶けた場所の空間に見合う分だけ接着剤に触れる表面積が広くなるので、接着特性が発現されるのである。
【0043】
また、本発明において、2次合成油には、MgClが含まれていない。
【0044】
以上述べたように、本発明に係る保護用パッドを備えた竹刀のコーティング方法によれば、対象物への打突が行われる竹刀の刃部に衝撃の吸収及び保護用のパッドを備えて、竹刀の対象物を打突する場合であっても竹刀の破損を防ぐことができ、これにより、使用者のけがのリスクもまた低減させることができるという効果がある。
【0045】
以上の説明においては、本発明の様々な実施形態を挙げて説明したが、本発明が必ずしもこれに限定されるとは限らず、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の置換、変形及び変更を行うことが可能であるということが容易にわかるはずである。
【符号の説明】
【0046】
20 竹刀
21 柄革
22 中結い
23 先革
24 鍔
25 弦
図1
図2
図3
図4