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▶ 広州百▲ジ▼基因科技有限公司の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】抗CLL1抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231114BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231114BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231114BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231114BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231114BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231114BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231114BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20231114BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20231114BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/28
G01N33/574 A
C12P21/08
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022529575
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 CN2020138286
(87)【国際公開番号】W WO2022120943
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】202011458917.8
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522199217
【氏名又は名称】広州百▲ジ▼基因科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羅 敏
(72)【発明者】
【氏名】李 光超
(72)【発明者】
【氏名】丁 ▲ブン▼
(72)【発明者】
【氏名】周 兆
(72)【発明者】
【氏名】王 学俊
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-522541(JP,A)
【文献】特表2017-534256(JP,A)
【文献】特表2015-519336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 16/00-16/46
C12P 21/08
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CLL1抗体であって、
前記抗CLL1抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 1で示されるCDR1、SEQ ID NO: 2で示されるCDR2、SEQ ID NO: 3で示されるCDR3を含み、且つ、前記抗CLL1抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 4で示されるCDR1、SEQ ID NO: 5で示されるCDR2、SEQ ID NO: 6で示されるCDR3を含み、または
前記抗CLL1抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 7で示されるCDR1、SEQ ID NO: 8で示されるCDR2、SEQ ID NO: 9で示されるCDR3を含み、且つ、前記抗CLL1抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 10で示されるCDR1、SEQ ID NO: 5で示されるCDR2、SEQ ID
NO: 11で示されるCDR3を含み、または
前記抗CLL1抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 12で示されるCDR1、SEQ ID NO: 13で示されるCDR2、SEQ ID NO: 14で示されるCDR3を含み、且つ、前記抗CLL1抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 15で示されるCDR1、SEQ ID NO: 16で示されるCDR2、SEQ ID NO: 17で示されるCDR3を含む、
前記抗CLL1抗体。
【請求項2】
前記抗CLL1抗体の重鎖可変領域はSEQ ID NO: 18で示されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO: 19で示されるアミノ酸配列を含み、または
前記抗CLL1抗体の重鎖可変領域はSEQ ID NO: 20で示されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO: 21で示されるアミノ酸配列を含み、または
前記抗CLL1抗体の重鎖可変領域はSEQ ID NO: 22で示されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO: 23で示されるアミノ酸配列を含み、または
前記抗CLL1抗体の重鎖可変領域はSEQ ID NO: 24で示されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 26、またはSEQ ID NO: 27で示されるアミノ酸配列を含む、
請求項に記載の抗CLL1抗体。
【請求項3】
前記抗CLL1抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間は、鎖間ジスルフィド結合を介して連結され、かつ、前記抗CLL1抗体の重鎖可変領域間は、鎖間ジスルフィド結合を介して連結され
請求項1または2に記載の抗CLL1抗体。
【請求項4】
前記抗CLL1抗体は定常領域を更に含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の抗CLL1抗体。
【請求項5】
前記抗CLL1抗体にグリコシル化基が修飾されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の抗CLL1抗体。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載の抗CLL1抗体をコードするDNA断片を含む、
核酸分子。
【請求項7】
請求項に記載の核酸分子を含む、
発現ベクター。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載の抗CLL1抗体を発現する、
組換え細胞。
【請求項9】
前記組換え細胞のゲノムに請求項に記載の核酸分子が組み込まれている、
請求項に記載の組換え細胞。
【請求項10】
前記組換え細胞は、請求項に記載の発現ベクターを含む、
請求項に記載の組換え細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、生物医薬の技術分野に関し、抗CLL1抗体およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
C型レクチン様分子1(CLL1)は、C型レクチンドメインファミリー12のメンバーA(CLEC12A)とも呼ばれ、文献およびデータベースには、DCAL-2、MICL、CD371等の名称もあり、II型膜貫通タンパク質であり、全長265個のアミノ酸があり、分子量が30762ダルトンで、コーディング遺伝子はchr12:9,951,268~9,995,694(GRCh38/hg38)に位置する。現在、いくつかの主流データベースにおいて、CLL1遺伝子の識別コードは、Q5QGZ9(UniprotKB)、31713(HGNC)、160364(Entrez Gene)、ENSG00000172322(Ensembl)、および(612088)OMIMである。
【0003】
研究によると、CLL1は、造血細胞に制限的に発現し、主に、末梢血および骨髄中の骨髄系に由来する細胞を含み、例えば、単核細胞、樹状細胞、顆粒球およびほとんどの急性骨髄性白血病(AML)細胞を含む。注意すべきことに、CLL1が末梢血および骨髄中の骨髄細胞に大量に発現するが、末梢組織中の骨髄系に由来する細胞に発現せず、例えば、組織マクロファージおよび組織樹状細胞にCLL1がいずれも発見しないことが分かった。研究によると、CLL1がAML幹細胞(CD34+/CD38-)およびごく一部の造血前駆細胞(CD34+/CD38+、またはCD34+/CD33+)に発現するが、正常の造血幹細胞(CD34+/CD38-、またはCD34+/CD33-)に発現しないことが更に分かった。このような特殊な発現モードにより、CLL1は、AMLを診断して治療する潜在的な標的点になることが期待されている。
【0004】
現在、知られているヒトCLL1遺伝子は7つの転写物を含み、そのうちの5つはタンパク質をコードし、ヒトCLL1タンパク質は1種の膜受容体であり、従来構造の細胞外ドメインはC型レクチンドメインを有し、細胞内ドメインは免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を有し、リン酸化ITIMは、SH2ドメインを含むホスファターゼと結合し、顆粒球および単核細胞を負調節(transient transfection)する機能を発揮する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、抗CLL1抗体およびその使用を提供し、前記抗体は、単独でおよび/または他の薬剤と合わせて癌および自己免疫疾患の治療に使用される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
態様1において、本願は、
重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、
前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 9、またはSEQ ID NO: 14で示されるCDR3を含み、
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 11、またはSEQ ID NO: 17で示されるCDR3を含む、
抗CLL1抗体を提供する。
【0007】
いくつかの具体的な実施形態において、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:
1、SEQ ID NO: 7、またはSEQ ID NO: 12で示されるCDR1を更に含む。
【0008】
いくつかの具体的な実施形態において、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 8、またはSEQ ID NO: 13で示されるCDR2を更に含む。
【0009】
いくつかの具体的な実施形態において、前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 10、またはSEQ ID NO: 15で示されるCDR1を更に含む。
【0010】
いくつかの具体的な実施形態において、前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 5またはSEQ ID NO: 16で示されるCDR2を更に含む。
【0011】
本願において、抗体の重鎖可変領域のCDR1~3と軽鎖可変領域のCDR1~3とが共に抗体の抗原に対する特異的な識別結合能力を決定し、SEQ ID NO: 1~6、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 7~11、またはSEQ ID NO: 12~17を含むCDRの抗体は、CLL1タンパク質に対して著しい結合能力を有する。
【0012】
1つの具体的な実施例において、前記抗CLL1抗体23D7の重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 1で示されるCDR1、SEQ ID NO: 2で示されるCDR2、SEQ ID NO: 3で示されるCDR3を含み、
前記抗CLL1抗体23D7の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 4で示されるCDR1、SEQ ID NO: 5で示されるCDR2、SEQ ID NO: 6で示されるCDR3を含む。
SEQ ID NO: 1:RYWMH。
SEQ ID NO: 2:YIYPGSGTSNYDEKFKS。
SEQ ID NO: 3:EARYTMDY。
SEQ ID NO: 4:SASSSVSYIY。
SEQ ID NO: 5:DTSNLAS。
SEQ ID NO: 6:QQWSSFP。
【0013】
本願において、SEQ ID NO: 1~3の重鎖可変領域CDRとSEQ ID NO: 4~6の軽鎖可変領域CDRとを含む抗CLL1抗体23D7は、CLL1タンパク質結合活性を有する。
【0014】
いくつかの具体的な実施形態において、前記抗CLL1抗体23D7の重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 18で示されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、SEQ
ID NO: 19で示されるアミノ酸配列を含む。
SEQ ID NO: 18:
QVQLQQPGSDLVRPGASVKLSCKASGYTFTRYWMHWVKQRPGHGLEWIGYIYPGSGTSNYDEKFKSKATLTVDTSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCTREARYTMDYWGQGTSVTVSS。
SEQ ID NO: 19:
QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSASSSVSYIYWYQQKPGSSPGLLIYDTSNLASGVPVRFSGSGSGTSYSLTISRMEAEDAATYYCQQWSSFPPTFGAGTKLELK。
【0015】
1つの具体的な実施例において、前記抗CLL1抗体19C1の重鎖可変領域は、SE
Q ID NO: 7で示されるCDR1、SEQ ID NO: 8で示されるCDR2、SEQ ID NO: 9で示されるCDR3を含み、
前記抗CLL1抗体19C1の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 10で示されるCDR1、SEQ ID NO: 5で示されるCDR2、SEQ ID NO: 11で示されるCDR3を含む。
SEQ ID NO: 7:SYWIE。
SEQ ID NO: 8:EIFPGSGSIKYNEKFKG。
SEQ ID NO: 9:GGTYNDYSLFDY。
SEQ ID NO: 10:SASSSVSYMY。
SEQ ID NO: 11:QQWSSYP。
【0016】
本願において、SEQ ID NO: 7~9の重鎖可変領域CDRとSEQ ID NO: 5、10~11の軽鎖可変領域CDRとを含む抗CLL1抗体19C1は、CLL1タンパク質結合活性を有する。
【0017】
いくつかの具体的な実施形態において、前記抗CLL1抗体19C1の重鎖可変領域はSEQ ID NO: 20で示されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO: 21で示されるアミノ酸配列を含む。
SEQ ID NO: 20:
QVQLQQSGAELMKPGASVKISCKATGYTFSSYWIEWVKQRPGHGLEWIGEIFPGSGSIKYNEKFKGKATFTADTSSNTAYMQLSSLTSEDSAVHYCARGGTYNDYSLFDYWGQGTTLTVSS。
SEQ ID NO: 21:
QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSASSSVSYMYWYQQKPGSSPRLLIFDTSNLASGVPVRFSGSGSGTSYSLTISRMEAEDAATYYCQQWSSYPLTFGAGTKLELK。
【0018】
1つの具体的な実施例において、前記抗CLL1抗体27H4の重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 12で示されるCDR1、SEQ ID NO: 13で示されるCDR2、SEQ ID NO: 14で示されるCDR3を含み、
前記抗CLL1抗体27H4の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 15で示されるCDR1、SEQ ID NO: 16で示されるCDR2、SEQ ID NO: 17で示されるCDR3を含む。
SEQ ID NO: 12:GYHMH。
SEQ ID NO: 13:RINPYNGAASHNQKFKD。
SEQ ID NO: 14:GWDYDGGYYAMDY。
SEQ ID NO: 15:KSSQSLLYSDNQKNYLA。
SEQ ID NO: 16:WASTRES。
SEQ ID NO: 17:QQYYTYP。
【0019】
本願において、SEQ ID NO: 12~14の重鎖可変領域CDRとSEQ ID NO: 15~17の軽鎖可変領域CDRとを含む抗CLL1抗体27H4は、CLL1タンパク質結合活性を有する。
【0020】
いくつかの具体的な実施形態において、前記抗CLL1抗体27H4の重鎖可変領域はSEQ ID NO: 22で示されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO: 23で示されるアミノ酸配列を含む。
SEQ ID NO: 22:
EVQLQQSGPELVKPGASVKISCKASGYSFTGYHMHWVKQ
SHVKSLEWIGRINPYNGAASHNQKFKDKATLTVDKSSSTAYMELHSLTSEDSAVYYCARGWDYDGGYYAMDYWGQGTSVTVSS。
SEQ ID NO: 23:
DIVMSQSPSSLAVSVGEKVTMSCKSSQSLLYSDNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVKAEDLAVYYCQQYYTYPYTFGGGTKLEIK。
【0021】
好ましくは、抗CLL1抗体27H4に対してヒト化改造を行い、27H4のフレーム領域を最適化し、取得したヒト化H27H4抗体は、CLL1とのより強い親和性を持ち、前記抗CLL1抗体H27H4の重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 24で示されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 25、SEQ ID
NO: 26またはSEQ ID NO: 27で示されるアミノ酸配列を含む。
SEQ ID NO: 24:
EVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGYHMHWVRQAPGQRLEWMGRINPYNGAASHNQKFKDRVTITRDTSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGWDYDGGYYAMDYWGQGTLVTVSS。
SEQ ID NO: 25:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKSSQSLLYSDNQKNYLAWYQQKPGKAPKLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYYTYPYTFGQGTKLEIK。
SEQ ID NO: 26:
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCKSSQSLLYSDNQKNYLAWYLQKPGQSPQLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCQQYYTYPYTFGQGTKLEIK。
SEQ ID NO: 27:
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLYSDNQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYTYPYTFGQGTKLEIK。
【0022】
好ましくは、前記抗CLL1抗体はモノマーであり、1グループの重鎖および軽鎖で形成され、前記重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間は、鎖間ジスルフィド結合を介して連結される。
【0023】
好ましくは、前記抗CLL1抗体はポリマーであり、複数グループの重鎖および軽鎖で形成され、前記重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間は、鎖間ジスルフィド結合を介して連結され、異なる重鎖可変領域間は、鎖間ジスルフィド結合を介して連結される。
【0024】
好ましくは、前記抗CLL1抗体は定常領域を更に含む。
【0025】
好ましくは、前記抗CLL1抗体にグリコシル化基が修飾されている。
【0026】
態様2において、本願は、態様1に記載の抗CLL1抗体をコードするDNA断片を含む核酸分子を提供する。
【0027】
態様3において、本願は、態様2に記載の核酸分子を含む発現ベクターを提供する。
【0028】
態様4において、本願は、態様1に記載の抗CLL1抗体を発見する組換え細胞を提供する。
【0029】
好ましくは、前記組換え細胞のゲノムに、態様2に記載の核酸分子が組み込まれている。
【0030】
好ましくは、前記組換え細胞は態様3に記載の発現ベクターを含む。
【0031】
態様5において、本願は、
(1)抗CLL1抗体のコード核酸をプラスミドに連結し、コンピンテントセルに転移し、培養した後、モノクローナル細胞を選抜してスクリーニングすることと、
(2)スクリーニングした陽性クローンの発現ベクターを抽出し、宿主細胞にトランスフェクションし、培養して上清を収集し、分離精製して前記抗体を取得することと、
を含む態様1に記載の抗CLL1抗体の調製方法を提供する。
【0032】
態様6において、本願は、態様1に記載の抗CLL1抗体を含む医薬組成物を提供する。
【0033】
好ましくは、前記医薬組成物は抗腫瘍薬を更に含む。
【0034】
好ましくは、前記医薬組成物は、医薬的に許容されるベクター、希釈剤、または賦形剤のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを更に含む。
【0035】
態様7において、本願は、態様1に記載の抗CLL1抗体、態様2に記載の核酸分子、態様3に記載の発現ベクター、態様4に記載の組換え細胞、または態様6に記載の医薬組成物の、疾患検出試薬および/または疾患治療薬の調製における使用であって、
好ましくは、前記疾患は急性骨髄性白血病を含む、
使用を提供する。
【0036】
態様8において、本願は、患者に有効用量の態様1に記載の抗CLL1抗体を投与することを含む癌の治療方法を提供する。
【0037】
好ましくは、前記方法は、1種または複数種の抗腫瘍薬を抗CLL1抗体と同時、別々、または順次投与することを更に含む。
【0038】
好ましくは、前記癌症は急性骨髄性白血病を含む。
【発明の効果】
【0039】
従来技術と比べ、本願は、以下のような有益な効果を有する。
【0040】
(1)本願の抗CLL1抗体23D7、27H4、19C1は、CLL1に対して著しい結合能力を有し、ch23D7、ch27H4およびch19C1の抗原CLL1と結合する親和性は、それぞれ2.19nM、3.83nMおよび10.9nMであり、対照抗体1075.7に相当する。
【0041】
(2)本願の抗CLL1抗体23D7、27H4、19C1は、細胞表面のCLL1タンパク質と結合することができ、結合力は抗体濃度の上昇に伴って増大する。
【0042】
(3)本願の抗体は、ヒト化改造を経た後、抗体と遊離したおよび/または細胞表面のCLL1との親和性を更に向上させる。
【0043】
(4)本願の抗体およびそのヒト化改造された抗体は、CLL1陽性腫瘍の治療におい
て重要な応用の見通しを有する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】キメラ抗体ch23D7、ch27H4およびch19C1のForteBIO評価結果である。
図2】キメラ抗体ch23D7、ch27H4、ch19C1とCLL1抗原との結合をフローサイトメーターで検出する図である。
図3】ヒト化抗体hz27H4とCLL1抗原との結合をフローサイトメーターで検出する図である。
図4】抗体がCLL1と結合して293T細胞に一過性トランスフェクションする能力をフローサイトメーターで検出する図である。
図5A図5Aは、23D7-scFv-hFcとCLL1抗原との結合能力のMPA検出結果である。
図5B図5Bは、27H4-scFv-hFcとCLL1抗原との結合能力のMPA検出結果である。
図5C図5Cは、19C1-scFv-hFcとCLL1抗原との結合能力のMPA検出結果である。
図5D図5Dは、Hz27H4-scFv-hFcとCLL1抗原との結合能力のMPA検出結果である。
図6A図6Aは、組換えヒトCLL-1結合の動力学グラフである。
図6B図6Bは、組換えカニクイサルCLL-1結合の動力学グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本願が講じた技術的手段およびその効果を更に説明するために、以下、実施例および図面を参照しながら本願について更に説明する。ここで説明する具体的な実施形態は、本願を解釈するためのものに過ぎず、本願を限定するものではないことが理解できる。
【0046】
実施例に具体的な技術または条件が明記されていないものは、本分野内の文献に記載されている技術もしくは条件、または製品の説明書に従って行われる。使用される試薬または機器におけるメーカーが明記されていないものは、いずれも正規のルートから購入可能な通常の製品である。
【0047】
実施例1 抗体の取得
10匹の7~8週齢のBALB/Cの健康な雌のマウスを選択し、免疫原CLL1-mFc(CLL1細胞外ドメインとマウスIgG1 Fc断片との融合タンパク質、CLL1細胞外ドメインのアミノ酸配列はSEQ ID NO: 28に示すとおりである)を用いて免疫を行い、2回目の免疫を行ってから2週間後に、マウスの尾静脈から採血して血清を分離し、ELISAで抗体価を検出し、抗体価が融合可能な要求に達した2匹のマウスを選択し、融合の3日前に抗原を50μg/100μL/匹で腹腔内に注射してショック免疫を行い、それと同時に、抗体価検出の1週間前に骨髄腫細胞SP2/0を蘇生させ、37℃にて5%のCOインキュベーターで培養し、融合の前日に骨髄腫細胞を継代し、または新鮮な培地に交換し、細胞を最適な状態に保持させた。
【0048】
SEQ ID NO: 28:
HVTLKIEMKKMNKLQNISEELQRNISLQLMSNMNISNKIRNLSTTLQTIATKLCRELYSKEQEHKCKPCPRRWIWHKDSCYFLSDDVQTWQESKMACAAQNASLLKINNKNALEFIKSQSRSYDYWLGLSPEEDSTRGMRVDNIINSSAWVIRNAPDLNNMYCGYINRLYVQYYHCTYKKRMICEKMANPVQLGSTYFREA。
【0049】
ショック免疫を行ったマウスを頸採血し、75%のアルコールで10min消毒した後、脾臓を取り出し、結合組織を除去し、脾細胞懸濁液を調製し、脾細胞懸濁液を50mLの遠心チューブに移し、RPMI1640を30mLまで加え、1000rpmで5min遠心し、上清を捨て、RPMI1640を30mLまで加え、細胞カウントを行い、成長状態が良好な骨髄腫細胞(生細胞数>95%)を50mLの遠心チューブに移し、RPMI1640を30mLまで加え、1000rpmで5min遠心し、上清を捨て、RPMI1640を30mLまで加え、細胞カウントを行った。
【0050】
脾細胞と骨髄腫細胞とを4:1の割合で混合させ、1000rpmで5min遠心し、上清を捨て、沈殿した細胞塊をペースト状にしてから37℃の水浴に置き、1min内に1mLの融合剤を入れて均一に撹拌し、37℃の水浴に45~60s置き、1min内にRPMI1640を入れて融合剤の融合作用を終了させ、1000rpmで5min遠心し、上清を捨てた。
【0051】
細胞を軽く均一にし、HATを含む完全培養液を徐々に加え、細胞懸濁液を予め用意した完全培地に加え、ピペットで96孔プレートに滴下し、各孔に150~200μLとし、37℃にてCOのインキュベーターで培養して観察した。
【0052】
細胞融合後の初日から細胞の成長状態を観察し、培養液が汚染されていないことを確定し、7~10日間培養した後、HAT培養液をHT培養液に交換し、3~4日間培養し続け、各孔から上清を取り出してELISA検出を行った。
【0053】
ELISAのスクリーニングステップは、以下のとおりであった。
【0054】
(1)抗原の被覆:濃度50ng/mLの純抗原human CLL1 ECD-His(ヒトCLL1細胞外ドメインにHisタグが連結されている)を被覆液で希釈した後、100μL取ってポリスチレン酵素結合検出プレートの各孔に入れ、4℃で一晩置いた。
【0055】
(2)ブロッキング:翌日、ELISAプレートを室温にバランスさせ、PBSで3回洗浄し、各孔に100μLのブロッキング液を加え、室温で1時間インキュベートした後、PBSで3回洗浄し、叩いて乾燥させた。
【0056】
(3)測定待ちサンプルの添加:無菌条件で融合細胞を取って上清を培養し、35~50μL/孔でサンプルをブロッキングされたELISAプレートに加え、それと同時に、ネガティブコントロール孔(細胞成長がない)およびポジティブコントロール孔(陽性血清が添加された)を設け、室温で1hインキュベートし、PBST(0.05%トゥイーン)で3回洗浄し、PBSで2回洗浄した。
【0057】
(4)二次抗体の添加:50μL/孔の添加量で希釈された酵素標識二次抗体を加え、37℃で30minインキュベートし、PBSで3回洗浄し、叩いて乾燥させた。
【0058】
(5)発色:二成分TMB発色液終了液(Solarbio、Cat#PR1210)を50μL/孔で添加し、添加前に均一に混合させ、37℃で15~30min発色し、その後、50μL/孔で終了液を加えて反応を終了させた。
【0059】
(6)値の読み取り:単波長450nMで各孔のOD値を測定し、高い順に読み取り値が高い複数のクローンを選択して次の機能のスクリーニングを行った。
【0060】
ELISA初回スクリーニングの陽性孔を選択し、合流率の高い陽性孔の細胞を24孔プレートに継代し、更に機能実験を行い、サブクローンを行うクローン番号を確定し、限界希釈法で細胞サブクローンを行うとともに、凍結して種を保存し、具体的には、細胞クローンを希釈してから96孔プレートに敷き、クローン毎に1つのプレートを敷き、HT培地で7~10日間培養し、7日目以降顕微鏡で観察し、モノクローナル細胞を選択して上清をELISAで更に陽性クローンをスクリーニングした。
【0061】
クローンをシーケンシングし、クローン23D7、19C1、27H4のアミノ酸配列を取得し、ここで、23D7の重鎖可変領域はSEQ ID NO: 18に示すとおりであり、軽鎖可変領域はSEQ ID NO: 19に示すとおりであり、19C1の重鎖可変領域はSEQ ID NO: 20に示すとおりであり、軽鎖可変領域はSEQ ID NO: 21に示すとおりであり、27H4の重鎖可変領域はSEQ ID NO: 22に示すとおりであり、軽鎖可変領域はSEQ ID NO: 23に示すとおりであった。
【0062】
実施例2 抗体の発現および精製
本実施例は、モノクローナル鑑定シーケンシング結果に基づき、特異的なプライマーを設計し、PCRで抗体23D7、19C1、27H4の遺伝子を取得し、遺伝子をヒトIgG1重鎖定常領域のFc断片のコーディング遺伝子の上流にクローンし、組換え真核発現ベクターを構築し、ヒト-マウスキメラ抗体発現プラスミドを取得した。
【0063】
前記ヒト-マウスキメラ抗体発現プラスミドを293F細胞に一過性トランスフェクションし、一過性発現およびアフィニティ精製により、23D7、19C1、27H4を親としてのキメラ抗体ch23D7、ch19C1、ch27H4を取得した。
【0064】
実施例3 抗体の親和性試験
本実施例は、ForteBio親和性測定方法(P. Estepら、High throughput solution-based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning.MAbs、2013.5(2):270~278.)を採用してキメラ抗体ch23D7、ch19C1、ch27H4に対して親和性検出を行い、対照抗体(Anti-CLL1-Ref)は、抗ヒトCLL-1抗体1075.7(特許US8536310B2)のVLおよびVL鎖(SEQ ID NO: 29)を選択した。
【0065】
簡単に言えば、ベースラインを確立するために、抗体を抗ヒトIgG捕捉(AHC)バイオセンサに搭載し、センサを測定緩衝液内においてオフラインで30minバランスさせ、オンラインで60s監視した。抗体を搭載したセンサと100nMの抗原human
CLL1 ECD-Hisとを共に5minインキュベートした後、測定緩衝液内に移し、5min後に解離速度を測定し、1:1の結合モデルで動力学分析を行った。
【0066】
結果は、表1および図1に示すように、ch23D7、ch27H4およびch19C1の抗原CLL1と結合する親和性は、それぞれ2.19nM、3.83nMおよび10.9nMであり、対照抗体1075.7の抗原CLL1と結合する親和性は1.08nMであった。
【0067】
【表1】
【0068】
SEQ ID NO: 29:
ENVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCRASSNVISSYVHWYQQRSGASPKLWIYSTSNLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISSVEAEDAATYYCQQYSGYPLTFGAGTKLELGGGGSGGGGSGGGGSDIQLQESGPGLVKPSQSLSLTCSVTGYSITSAYYWNWIRQFPGNKLEWMGYISYDGRNNYNPSLKNRISITRDTSKNQFFLKLNSVTTEDTATYYCAKEGDYDVGNYYAMDYWGQGTSVTVSS。
【0069】
実施例4 抗体とHEK293細胞におけるCLL1との結合
本実施例は、抗体ch23D7、ch27H4、ch19C1とHEK293細胞におけるCLL1との結合をフローサイトメトリー法で検出し、ステップは以下のとおりであった。
【0070】
PBS+5%BSAを採用してCLL1を過剰発現した5×10個のHEK293細胞を再懸濁し、4℃で30minインキュベートし、異なる濃度の抗体(1μg/mL~0.01μg/mL、10倍段階希釈)を加え、4℃で60minインキュベートし、遠心して洗浄した後、FITC-標識ヒツジ抗ヒトIgG-Fc二次抗体(1:200、sigma、F9512)を含むPBS+5%BSA溶液を加え、氷上で遮光して30minインキュベートし、細胞を3回洗浄した後、フローサイトメトリー法で分析した。
【0071】
対照グループCLL1-RefAb(ch1075.7)、Cell+二次抗体、およびBlankを設けた。
【0072】
結果は、図2に示すように、キメラ抗体ch23D7、ch27H4、ch19C1、ch1075.7は、いずれもHEK293-CLL1細胞と効果的に結合することができ、抗体濃度の上昇に伴い、平均蛍光強度(MFI)も上昇した。
【0073】
実施例5 抗体のヒト化改造
本実施例は、27H4に対してヒト化改造を行った。簡単に言えば、27H4抗体の遺伝子配列をヒト抗体Germlineデータベースと比較し、相同性が高い配列を見出したとともに、一般的に使用しないまたは小さな種類のGermlineを回避した。ヒト化テンプレートを選択した後、抗体の特定のFRサイトにおけるアミノ酸の出現頻度を並べ替え(rearranged)、CDR移植を行い、グリコシル化等のタンパク質修飾サイトおよび化学分解しやすいサイトの導入を回避し、CDR移植後の配列の親和性が低下すると、復帰変異を行い、変異原則は、FR領域に対して段階的な単一サイトの変異を行うことであり、CDR領域に修飾サイトまたは化学分解サイトが存在し、且つタンパク質の品質制御に影響を及ぼす場合、サイトに対して段階的な単一サイトの変異を行い、毎ラウンドの変異の後に、親和性(KD/Kon/Koff)検出を行い、最終的に取得したヒト化配列は、親和性(親と比べて3倍以内の差がある)、安定性、タンパク質の品質
(プレアルブミンPA>90%)等の面でいずれも最適な表現を有する。
【0074】
以上の原則に基づき、ヒト化hz27H4抗体の1本の重鎖可変領域であるhz27H4H1(SEQ ID NO: 24)と、3本の軽鎖可変領域であるhz27H4L1(SEQ ID NO: 25)、hz27H4L2(SEQ ID NO: 26)およびhz27H4L3(SEQ ID NO: 27)とを取得した。
【0075】
実施例6 ヒト化前後の抗体のCLL1との親和性の差のForteBIoによる分析
簡単に言えば、ベースラインを確立するために、4μg/mLの抗体を抗ヒトIgG捕捉(AHC)バイオセンサに搭載し、センサを測定緩衝液内においてオフラインで30minバランスさせ、オンラインで60s監視し、抗体を搭載したセンサと60nMの抗原human CLL1 ECD-Hisとを共に3minインキュベートし、その後、測定緩衝液に移し、3min後に解離速度を測定し、1:1の結合モデルで動力学分析を行った。
【0076】
結果は、表2に示すように、3つのヒト化抗体(hz27H4H1L1、hz27H4H1L2およびhz27H4H1L3)は、親抗体(ch27H4)と比べ、いずれも高い親和性を保留した。
【0077】
【表2】
【0078】
実施例7 ヒト化抗体とCLL1との結合のフローサイトメーターによる検出
本実施例は、フローサイトメトリー法で抗体hz27H4H1L1、hz27H4H1L2とHEK293細胞におけるCLL1との結合を検出し、ステップは以下のとおりであった。
【0079】
PBS+5%BSAを採用してCLL1を過剰発現した2×10個のHEK293細胞を再懸濁し、4℃で30minインキュベートし、異なる濃度の抗体(5μg/mL~0.002286μg/mL、3倍段階希釈)を加え、4℃で60minインキュベートし、遠心して洗浄した後、FITC-標識ヒツジ抗ヒトIgG-Fc二次抗体(1:200、sigma、F9512)を含むPBS+5%BSA溶液を加え、氷上で遮光して30minインキュベートし、細胞を3回洗浄した後、フローサイトメトリー法で分析し、Graphpadソフトウェアで計算してEC50を得た。
【0080】
対照グループch27H4、CLL1-RefAb(ch1075.7)、およびNC-huIgG1を設けた。
【0081】
結果は、図3図4および表3に示すように、ch27H4は用量依存の方式でCLL1と結合し、EC50(n=1)は0.3583μg/mLであり、hz27H4H1L1は用量依存の方式でCLL1と結合し、EC50値(n=1)は0.2681μg/m
Lであり、hz27H4H1L2は用量依存の方式でCLL1と結合し、EC50値(n=1)は0.3214μg/mLであり、CLL1-refAbは用量依存の方式でCLL1と結合し、EC50値(n=1)は0.2246μg/mLであり、ch27H4、hz27H4H1L1およびhz27H4H1L2は、CLL1-refAbに類似するEC50でヒトCLL1と結合した。
【0082】
【表3】
【0083】
実施例8 抗体の特異性の膜プロテオームアレイによる評価
本実施例は、膜プロテオームアレイ(Membrane Proteome Array、MPA)を採用して抗体の非標的点結合の相互作用を検証した。膜プロテオームアレイ(MPA)は、特異的な抗体および他のリガンドを標的とするヒト膜タンパク質を分析する1つのプラットフォームであり、抗体の標的点の特異性を確定することに使用できる。
【0084】
約6000個の膜タンパク質クローン(ヒト膜プロテオームの94%以上を占める)を含むプラスミドを、それぞれHEK-293T細胞(ATCC、CRL-3216)またはQT6細胞(ATCC、CRL-1708)にトランスフェクションし、18000個の細胞/孔の密度で384孔の細胞培養プレート(Corning、3764)に接種し、36時間インキュベートした後、試験抗体を予め確定された濃度で膜プロテオームアレイマトリックスプレートに加え、フローサイトメーターで抗体scFvと約6000種の膜タンパク質の発現細胞との結合状況を直接検出した。全ての標的タンパク質は、いずれも天然配座および適当な翻訳後修飾を有し、哺乳動物が発現した一本鎖抗体(scFv)はVL-(G4S)3-VH構造であり、C末端はヒトhIgG1-Fcを融合発現し、具体的な情報は表4に示すとおりであった。
【0085】
試験結果は、図5A図5B図5Cおよび図5Dに示すように、23D7-scFv-hFc、27H4-scFv-hFc、19C1-scFv-hFc、Hz27H4-scFv-hFcは、いずれもCLL1標的抗原と特異的に結合することができ、ここで、FCGR1A、FCGR2B、FCGR3BはIgG Fc受容体(IgG Fc receptors)であった。
【0086】
【表4】
【0087】
実施例9 抗体親和性の表面プラズモン共鳴による測定
本実施例は、表面プラズモン共鳴技術(Surface Plasmon Resonance、SPR)を採用して2種のCLL-1抗原(組換えヒト由来CLL-1、Acro、商品番号:CLA-H5245、ロット番号:3413a-9B8F1-SQ。組換えカニクイサルCLL-1、Acro、商品番号:CLA-H5263、ロット番号:3765-2079F1-SS)と6つの抗体との親和性を検出して比較し、一本鎖抗体(scFv)はVL-(G4S)3-VH構造であり、C末端はヒトhIgG1-Fcを融合発現し、サンプル情報テーブルは表5に示すとおりであった。
【0088】
【表5】
【0089】
(1)サンプルの配合
抗体希釈液(リガンド):抗体を1×HBS-EP+ランニング緩衝液で5μg/mLに希釈した。
組換えヒト由来CLL-1希釈液(分析物1):組換えヒト由来CLL-1(250μg/mL)をランニング緩衝液で50nMに希釈し、2倍段階希釈して50nM、25nM、12.5nM、6.25nM、3.125nM、0nMの組換えヒト由来CLL-1希釈液を取得した。
組換えカニクイサルCLL-1希釈液(分析物2):組換えカニクイサルCLL-1(250μg/mL)をランニング緩衝液で50nMに希釈し、2倍段階希釈して50nM、25nM、12.5nM、6.25nM、3.125nM、0nMの組換えカニクイサルCLL-1希釈液を取得した。
【0090】
(2)組換えヒト由来CLL-1抗原の分析
Protein Aチップで検出し、5μg/mLの抗体希釈液に10μL/minの流速で実験流路(Fc2、Fc4)を通過させ、捕捉量が約454RUとなるように20s捕捉し、その後、流速を30μL/minに調節し、異なる濃度の組換えヒト由来CLL-1希釈液(0、3.125nM、6.25nM、12.5nM、25nM、50nM)を順次添加しながら、実験流路(Fc2、Fc4)およびリファレンス流路(Fc1、Fc3)の表面を通過させ、結合時間を85sとし、解離時間を70sとし、最後にグリシン液(Glycine、pH=1.5)を60s添加し、チップを再生して次のサイクルに進んだ。
【0091】
(3)組換えカニクイサルCLL-1抗原の分析
Protein Aチップで検出し、5μg/mLの抗体希釈液に10μL/minの流速で実験流路(Fc2、Fc4)を通過させ、捕捉量が約454RUとなるように20
s捕捉し、その後、流速を30μL/minに調節し、異なる濃度の組換えカニクイサルCLL-1希釈液(0、3.125nM、6.25nM、12.5nM、25nM、50nM)を順次添加しながら、実験流路(Fc2、Fc4)およびリファレンス流路(Fc1、Fc3)の表面を通過させ、結合時間を85sとし、解離時間を70sとし、最後にグリシン液(Glycine、pH=1.5)を60s添加し、チップを再生して次のサイクルに進んだ。
【0092】
(4)データの分析
データ分析ソフトウェアEvaluation Software3.1で試験結果を分析し、サンプル試験流路から収集したセンシング信号に対してリファレンス流路、サンプルブランクの二重差し引きを行い、動力学「1:1」モデルを用いてフィッティングし、各ロットのサンプルおよびshTNF-αの動力学的パラメータ(ka:結合速度、kd:解離速度、kD:結合解離平衡定数)を取得した。6つの抗体の、組換えヒト由来CLL-1との結合の動力学的フィッティング結果は、表6および図6Aに示すとおりであった。組換えカニクイサルCLL-1との結合の動力学的フィッティング結果は図6Bに示すとおりであった。
【0093】
【表6】
【0094】
結果により、23D7-scFv-hFcと組換えヒト由来CLL-1との結合親和性が低かったほか、別の5つの抗体と組換えヒト由来CLL-1結合との親和性がいずれも1nM~6nMの間にあり、6つの抗体が組換えカニクイサルCLL-1といずれも結合しなかったことを示した(図6B)。
【0095】
上記をまとめ、本願の抗CLL1抗体23D7、27H4、19C1は、CLL1に対して著しい結合能力を有し、ヒト化改造を経た後、抗体とCLL1との親和性を更に向上させ、腫瘍の臨床診断および/または治療の面で重要な応用の見通しを有する。
【0096】
本願は、上記実施例により本願の詳細方法を説明するが、本願は上記詳細方法に限定されるものではなく、即ち、本願は上記詳細方法に依存して実施しなければならないことを意味するものではないことを、出願人より声明する。当業者であれば、本願に対するいかなる改良、本願の製品の各原料に対する等価的な置換および補助成分の追加、具体的な形態の選択等は、全て本願の保護範囲および開示範囲内に含まれることを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
【配列表】
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