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特許7384502真贋判定装置、真贋判定方法及び真贋判定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】真贋判定装置、真贋判定方法及び真贋判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/32 20060101AFI20231114BHJP
   G06T 5/30 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H04N1/32 144
G06T5/30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023032584
(22)【出願日】2023-03-03
【審査請求日】2023-03-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591097964
【氏名又は名称】光村印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】松本 大助
(72)【発明者】
【氏名】柴田 栄治
(72)【発明者】
【氏名】ウメイニ マイケル
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-028102(JP,A)
【文献】特開2001-236544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/32
G06T 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像を含む被読取領域が予め印刷された被写体を、画像情報として読み取る撮像部と、
前記画像情報から、前記潜像の前記画像情報である潜像画像情報を抽出して顕在化させる画像処理部と、
顕在化した前記潜像画像情報を、前記撮像部による読み取りと同時に前記潜像に重ねて画面上に表示する表示処理部と、を有
前記被読取領域が、
平網又は万線で構成されて複写機による複写が可能な前記潜像と、
平網又は万線で構成されて複写機による複写が前記潜像よりも劣る背景と、を含み、
前記潜像の万線が、幅0.05~0.35ミリメートル、ピッチ0.2~0.8ミリメートル、又は、
前記潜像の平網が、直径0.1~0.5ミリメートル、ピッチ0.2~0.8ミリメートルである、
ことを特徴とする真贋判定装置。
【請求項2】
前記被読取領域に含まれた特定画像と、前記特定画像に関連付けられて予め記憶された特定画像情報とが、一致するか否かを判定する判定部を有し、
前記特定画像が前記特定画像情報と一致した場合に、前記表示処理部が稼働する、
ことを特徴とする請求項1に記載された真贋判定装置。
【請求項3】
前記潜像が、
前記特定画像である特定画像潜像部を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載された真贋判定装置。
【請求項4】
前記画像処理部が、
顕在化した前記潜像画像情報を有彩色に変換する彩色処理部を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載された真贋判定装置。
【請求項5】
前記画像処理部が、
前記画像情報から低周波成分を抽出する抽出処理部と、
前記画像情報を二値化する二値化処理部と、
二値化された前記画像情報に膨張・収縮処理を施す膨張収縮処理部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載された真贋判定装置。
【請求項6】
潜像を含む被読取領域を被写体に印刷する印刷手順と、
前記被写体を画像情報として読み取る撮像手順と、
前記画像情報から、前記潜像の前記画像情報である潜像画像情報を抽出して顕在化させる画像処理手順と、
顕在化した前記潜像画像情報を、前記撮像手順による読み取りと同時に前記潜像に重ねて画面上に表示する表示処理手順と、を経るものであり、
前記被読取領域が、
平網又は万線で構成されて複写機による複写が可能な前記潜像と、
平網又は万線で構成されて複写機による複写が前記潜像よりも劣る背景と、を含み、
前記潜像の万線が、幅0.05~0.35ミリメートル、ピッチ0.2~0.8ミリメートル、又は、
前記潜像の平網が、直径0.1~0.5ミリメートル、ピッチ0.2~0.8ミリメートルである、
ことを特徴とする真贋判定方法
【請求項7】
潜像を含む被読取領域が予め印刷された被写体を画像情報として読み取る撮像手順と、
前記画像情報から、前記潜像の前記画像情報である潜像画像情報を抽出して顕在化させる画像処理手順と、
顕在化した前記潜像画像情報を、前記撮像手順による読み取りと同時に前記潜像に重ねて画面上に表示する表示処理手順と、をコンピューターに実行させものであり
前記被読取領域が、
平網又は万線で構成されて複写機による複写が可能な前記潜像と、
平網又は万線で構成されて複写機による複写が前記潜像よりも劣る背景と、を含み、
前記潜像の万線が、幅0.05~0.35ミリメートル、ピッチ0.2~0.8ミリメートル、又は、
前記潜像の平網が、直径0.1~0.5ミリメートル、ピッチ0.2~0.8ミリメートルである、
ことを特徴とする真贋判定プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体の真贋を判定することができる真贋判定装置、真贋判定方法及び真贋判定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、偽造防止技術として、複写機によって複写されると複写物に潜像が現れるものがある(下記特許文献1参照、以下、特許文献1に記載された技術を「文献公知1発明」と記す。)。文献公知1発明によれば、背景となる万線パターンに対して、潜像となる万線パターンの線幅が、背景の万線パターンの1/2であり、背景の万線パターンと潜像の万線パターンとが直角の関係にある。
【0003】
文献公知1発明に係る偽造防止用紙は、潜像の視認が困難であるため、潜像が目立たないが、複写されると潜像のみが顕在化して現れるため、偽造を目的とした複写物であることがわかる。したがって、複写による偽造の抑止が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-237211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、文献公知1発明によれば、偽造された複写物か否かを判断することは容易であるが、複写されたものではないオリジナルの物が、そもそも本物であるか否か判断することは困難である。肉眼で券面等の真贋を判定することは困難であるし、複写機による複写が不可能である立体物には、文献公知1発明のような偽造防止技術は馴染まない。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、真贋判定が容易な真贋判定装置、真贋判定方法及び真贋判定プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る真贋判定装置は、潜像を含む被読取領域が予め印刷された被写体を、画像情報として読み取る撮像部と、前記画像情報から、前記潜像の前記画像情報である潜像画像情報を抽出して顕在化させる画像処理部と、顕在化した前記潜像画像情報を、前記撮像部による読み取りと同時に前記潜像に重ねて画面上に表示する表示処理部と、を有する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る真贋判定装置は、前記被読取領域に含まれた特定画像と、前記特定画像に関連付けられて予め記憶された特定画像情報とが、一致するか否かを判定する判定部を有し、前記特定画像が前記特定画像情報と一致した場合に、前記表示処理部が稼働することが好ましい。
【0009】
本発明に係る真贋判定装置は、前記潜像が、前記特定画像である特定画像潜像部を含んでいることが好ましい。
【0010】
本発明に係る真贋判定装置は、前記画像処理部が、顕在化した前記潜像画像情報を有彩色に変換する彩色処理部を有していることが好ましい。
【0011】
本発明に係る真贋判定装置は、前記画像処理部が、前記画像情報から低周波成分を抽出する抽出処理部と、前記画像情報を二値化する二値化処理部と、二値化された前記画像情報に膨張・収縮処理を施す膨張収縮処理部と、を有していることが好ましい。
【0012】
本発明に係る真贋判定装置は、前記被読取領域が、平網又は万線で構成されて複写機による複写が可能な前記潜像と、平網又は万線で構成されて複写機による複写が前記潜像よりも劣る背景と、を含み、前記潜像の万線が、幅0.05~0.35ミリメートル、ピッチ0.2~0.8ミリメートル、又は、前記潜像の平網が、直径0.1~0.5ミリメートル、ピッチ0.2~0.8ミリメートルであることが好ましい。
【0013】
本発明に係る真贋判定方法は、潜像を含む被読取領域を被写体に印刷する印刷手順と、前記被写体を画像情報として読み取る撮像手順と、前記画像情報から、前記潜像の前記画像情報である潜像画像情報を抽出して顕在化させる画像処理手順と、顕在化した前記潜像画像情報を、前記撮像手順による読み取りと同時に前記潜像に重ねて画面上に表示する表示処理手順と、を経る、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る真贋判定プログラムは、潜像を含む被読取領域が予め印刷された被写体を、画像情報として読み取る撮像手順と、前記画像情報から、前記潜像の前記画像情報である潜像画像情報を抽出して顕在化させる画像処理手順と、顕在化した前記潜像画像情報を、前記撮像手順による読み取りと同時に前記潜像に重ねて画面上に表示する表示処理手順と、をコンピューターに実行させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る真贋判定装置は、潜像を含む被読取領域が予め印刷された被写体を、画像情報として読み取る撮像部と、画像情報から、潜像の画像情報である潜像画像情報を抽出して顕在化させる画像処理部と、顕在化した潜像画像情報を、撮像部による読み取りと同時に潜像に重ねて画面上に表示する表示処理部とを有している。したがって、被写体の画像情報から潜像画像情報が抽出され、画面上では、リアルタイムで潜像画像情報が潜像に重なって表示される。換言すれば、画像情報は、静止画や動画として記録されたうえで処理されるのではなく、読み取られるのと同時に処理され、潜像画像情報が顕在化されて画面上に現れることで、潜像が際立って見える。よって、取り扱いが簡便であるうえ、真贋判定が容易である。また、潜像は、視認できないため(又は視認し辛いため)、被写体の美観を妨げない。
【0016】
本発明に係る真贋判定装置は、被読取領域に含まれた特定画像と、特定画像に関連付けられて予め記憶された特定画像情報とが、一致するか否かを判定する判定部を有し、特定画像が特定画像情報と一致した場合に、表示処理部が稼働する。特定画像が印刷されていない被写体を対象としては、表示処理部が稼働しないため、顕在化した潜像画像情報が画面上に現れない。よって、顕在化した潜像画像情報が現れない被写体は、偽物であると判断できるため、真贋判定が容易である。
【0017】
本発明に係る真贋判定装置は、潜像が、特定画像である特定画像潜像部を含んでいる。すなわち、特定画像が潜像として印刷されているため、特定画像が被写体の美観を妨げない。
【0018】
本発明に係る真贋判定装置は、画像処理部が、顕在化した潜像画像情報を有彩色に変換する彩色処理部を有している。潜像画像情報が、有彩色に変換されることで、際立って画面上に現れる。よって、真贋判定が容易である。
【0019】
本発明に係る真贋判定装置は、画像処理部が、画像情報から低周波成分を抽出する抽出処理部と、画像情報を二値化する二値化処理部と、二値化された画像情報に膨張・収縮処理を施す膨張収縮処理部とを有している。潜像画像情報は、明るさの変化が緩やかであることから低周波数成分に相当するため、抽出処理部によって、潜像画像情報が顕在化する。また、画像情報が、二値化処理部によって二値化されることで、更に、膨張収縮処理部によって膨張・収縮処理されることで、潜像画像情報が顕在化する。よって、潜像画像情報を高精度で顕在化することができる。
【0020】
本発明に係る真贋判定装置は、被読取領域が、平網又は万線で構成されて複写機による複写が可能な潜像と、平網又は万線で構成されて複写機による複写が潜像よりも劣る背景とを含み、潜像の万線が、幅0.05~0.35ミリメートル、ピッチ0.2~0.8ミリメートル、又は、潜像の平網が、直径0.1~0.5ミリメートル、ピッチ0.2~0.8ミリメートルである。したがって、平網や万線で構成された潜像が印刷された偽造防止印刷物を読み取りの対象とすることができる。既存の技術を利用できるため、簡便である。
【0021】
本発明に係る真贋判定方法は、潜像を含む被読取領域を被写体に印刷する印刷手順と、被写体を画像情報として読み取る撮像手順と、画像情報から、潜像の画像情報である潜像画像情報を抽出して顕在化させる画像処理手順と、顕在化した潜像画像情報を、撮像手順による読み取りと同時に潜像に重ねて画面上に表示する表示処理手順とを経る。よって、上記した真贋判定装置と同じ効果を奏する。
【0022】
本発明に係る真贋判定プログラムは、潜像を含む被読取領域が予め印刷された被写体を、画像情報として読み取る撮像手順と、画像情報から、潜像の画像情報である潜像画像情報を抽出して顕在化させる画像処理手順と、顕在化した潜像画像情報を、撮像手順による読み取りと同時に潜像に重ねて画面上に表示する表示処理手順とをコンピューターに実行させる。よって、上記した真贋判定装置と同じ効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施形態に係る真贋判定装置のハードウェア構成概略図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る真贋判定装置によって判定される被写体の概略図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る真贋判定装置による処理フローが示されたフローチャートである。
図4図4は、撮像部で読み取られた画像情報の概略図である。
図5図5は、画像処理の過程を示す第一概略図である。
図6図6は、画像処理の過程を示す第二概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態に係る真贋判定装置を図面に基づいて説明する。図1には、真贋判定装置20のハードウェアの概略構成が示されている。
【0025】
図1に示されているとおり、真贋判定装置20は、少なくとも、制御部(CPU1)、記憶部2、入力部(撮像部6)及び出力部(表示画面部15)等を有している。記憶部2は、ROM3、RAM4、HDD又は/及びSSD5等から構成されている。入力部は、例えば、カメラレンズ、電荷結合素子(CCD:Charge Coupled Device)等で構成された撮像部6であり、出力部は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示画面部15である。CPU1は、ROM3に格納されたプログラムに従って、OS(Operating System)のプログラムやアプリケーションプログラムの一部が格納されたRAM4を使用して、撮像部6、画像処理部7(抽出処理部8、二値化処理部9、膨張収縮処理部10、顕在化処理部11、彩色処理部12)、判定部13、表示処理部14及び表示画面部15を制御する。
【0026】
真贋判定装置20は、ハードウェア構成、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、ソフトウェアによって実現することが可能である。例えば、ソフトウェアによって実現する場合、実際にはコンピューターのCPU1、GPUやMPU、ROM3、RAM4等を備えて構成し、ROM3やRAM4に記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。
【0027】
したがって、各部6ないし15の機能が、撮像手順、画像処理手順(抽出処理手順、二値化処理手順、膨張収縮処理手順、顕在化処理手順、彩色処理手順)、判定手順、表示処理手順及び表示手順として動作する真贋判定プログラムが、スマートフォンやタブレット等の携帯端末、コンピューター(以下、「携帯端末等」と記す。)を介して実現される。また、真贋判定プログラムが、例えばCD-ROM等の記録媒体に記録され、真贋判定プログラムを携帯端末等に読み込ませること(例えば、コンピューターに読み込まれた真贋判定プログラムを携帯端末に読み込ませること)によって実現することもできる。記録媒体としては、CD-ROM以外に、例えば、ハードディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、磁気テープ、光磁気ディスク、不揮発性メモリカード、DVDなどを用いることができる。
【0028】
真贋判定装置20は、ASP(Application Service Provider)として機能させてもよく、真贋判定プログラムをインターネット等のネットワークを介して携帯端末等にダウンロードすることによっても実現できる。更に、これらのハードウェア、ソフトウェア資源を、ネットワークを介してアクセス可能なクラウド等の態様で提供することもできる。
【0029】
次に、真贋判定装置20によって判定される被写体を図面に基づいて説明する。図2は、被写体30の概略図であり、被写体30は、例えば偽造防止印刷物である。なお、被写体30には、例えば、書類、券面、ラベル、書籍、包装紙等の二次元平面の一部や、箱、容器等の三次元立体物が含まれる。
【0030】
被写体30には、潜像36及び背景33が含まれた被読取領域34が予め印刷されている。潜像36には、潜像部31と特定画像潜像部32とが含まれている。印刷文字35は、被写体30の用途に応じて、被読取領域34の上に印刷される。なお、印刷文字35は、図柄等であってもよいし、潜像36の上から印刷されていてもよい。潜像36は、肉眼では視認し辛いが複写機(図示省略)による複写が可能であり、背景33は、複写機による複写の度合いが潜像36よりも劣る。したがって、仮に、被写体30が複写されると、複写物には、潜像36のみが現れ、背景33は出力されない。なお、「複写機による複写の度合いが潜像36よりも劣る」とは、例えば、複写機による複写が不可能であって完全に複写されない場合や、複写機による複写が可能であるが肉眼では視認し得ない程度の場合や、肉眼で視認し得るが僅かである場合や、肉眼で視認し得るが潜像36よりも明瞭ではない場合が含まれる。
【0031】
潜像36は、例えば、複写機で再現可能な万線によって表され、30~120線/インチの線群で構成されている。万線は、幅が0.05~0.35ミリメートル、ピッチが0.2~0.8ミリメートルであり、好ましくは、幅が0.1ミリメートル、ピッチが0.5(≒0.508)ミリメートルである。この場合の線数は、50線/インチである。一方で、背景33は、複写再現能力に満たない小さな点である平網によって表され、150~300線/インチの網点で構成されている。背景33の平網濃度は、例えば5~25パーセント(%)である。両者の面積率は、例えば5~25パーセント(%)である。これらの線数及び面積率によれば、背景33は、一様な面として視認が可能であっても、複写機によって再現し難く、潜像36は、一様な面として視認が可能であるが、潜像36として視認し辛く、複写機によって複写できる。
【0032】
ここで、線数とは、1インチ中に存在する線の本数をいい、同じ面積率の場合、線数が大きい(多い)ほど、形成される点(網点)は小さくなり、線(万線)は細くなる。線数の差が大きいほど、境界が目立つ傾向がある。また、面積率は、単位面積中の網点や万線の面積の割合をいう。したがって、例えば、150線15パーセントの平網と、42線15パーセントの万線に基づいて作製された網点万線は、平網の部分で、背景33が実現し、万線の部分で、潜像36が実現する。
【0033】
なお、潜像36は、複写機で再現可能な大きい点の集合体であってもよく、例えば、複写機で再現可能な平網によって表され、50線/インチの平網で構成される。平網は、直径が0.1~0.5ミリメートル、ピッチが0.2~0.8ミリメートルであり、好ましくは直径が0.3ミリメートル、ピッチが0.5(≒0.508)ミリメートルである。一方で、背景33は、複写再現能力に満たない線群であってもよい。この場合の線群は、潜像36に用いられた万線よりも細い線で構成されるか、潜像36で用いられた万線とは異なる角度で構成される。
【0034】
潜像36が、画像情報として真贋判定装置20に入力されると、潜像部31及び特定画像潜像部32は、真贋判定装置20の画像処理によって顕在化されて表示画面部15に現れる。その際、予め真贋判定装置20に記録された情報と特定画像潜像部32とが一致した場合にのみ、潜像部31及び特定画像潜像部32が顕在化して表示画面部15に現れる。なお、特定画像潜像部32は、任意の図形、記号、文字又はこれらの複数の組み合わせ等である。
【0035】
次に、各部6ないし15を、真贋判定装置20による被写体30の処理手順と共に図面に基づいて説明する。図3は、真贋判定装置20の処理フローの概略が示されている。図4には、被写体30の画像情報37が示されている。図5及び6には、画像処理の過程が示されている。なお、図4等における格子のマス目はピクセルを表したものであるが、簡略化したものであって、真贋判定装置20が有する本来の解像度を正確に表したものではない。
【0036】
図3において、ステップS1では、撮像部6による撮像手順が実行される。撮像手順では、被写体30(被読取領域34)で反射した光が、カメラレンズを通過してCCDで結像し、電気信号に変換される。この電気信号は、図4に示されているとおり、画像情報37として読み取られ、画像処理部7に入力される。
【0037】
ステップS2ないしS6では、画像処理部7による画像処理手順が実行される。画像処理手順では、被写体30の画像情報37から、潜像36の画像情報である潜像画像情報38を抽出して顕在化させる。画像処理部7は、抽出処理部8、二値化処理部9、膨張収縮処理部10、顕在化処理部11及び彩色処理部12を有している(図1参照)。
【0038】
ステップS2では、抽出処理部8が、フィルタ処理を実行する。フィルタ処理では、画像情報37の周波数成分のうち、任意の低周波成分が、ローパスフィルタ又はバンドパスフィルタによって抽出される。潜像画像情報38は、印刷文字35の印字画像情報39と比較して、明るさの変化が緩やかであることから低周波数成分に相当するため、フィルタ処理が施されることで、画像情報37から印字画像情報39等が除外され、潜像画像情報38が残る(図5参照)。
【0039】
ステップS3では、二値化処理部9が、二値化処理手順によって画像情報37を二値化する。二値化処理手順では、例えば、判別分析法や適応的閾値処理によって、最適な閾値が設定され、閾値を境界として画像情報37が白又は黒に変換される。例えば、256諧調のモノクロ画像情報の場合、潜像画像情報38は、背景の画像情報である背景画像情報40と比較して画素の値が大きいため、黒に変換される。逆に、背景画像情報40は白に変換される(図6参照)。
【0040】
ステップS4では、膨張収縮処理部10が二値化された画像情報37に、膨張収縮処理手順によって、任意のカーネルで膨張・収縮処理を施す。したがって、白画素の数が増減し、黒画素の潜像画像情報38が際立つ。
【0041】
ステップS5では、顕在化処理部11が、顕在化処理手順によって、画像情報37のヒストグラムを生成して潜像画像情報38のみを抽出する。すなわち、画像情報37に、潜像画像情報38以外の低周波数成分が含まれていた場合、この低周波数成分はノイズであるため、潜像画像情報38と区別され、潜像画像情報38のみが抽出される。
【0042】
上記したステップS2ないしS5の処理が実行されることで、潜像画像情報38を高精度で顕在化することができる。
【0043】
ステップS6では、彩色処理部12が、画像処理部7によって顕在化した潜像画像情報38を、彩色処理によって、有彩色に変換する。有彩色は任意であるが、例えば、赤色、緑色、青色等である。
【0044】
ステップS7では、判定部13が、判定手順によって、特定画像潜像部32と特定画像情報とが一致するか否かを判定する。特定画像情報は、特定画像潜像部32の画像情報37と関連付けられて予め記憶部2に記憶されている。潜像画像情報38に、特定画像潜像部32に相当する情報(以下、「特定部画像情報41」と記す。)が含まれており、特定部画像情報41と特定画像情報とが一致した場合、ステップS8の処理が実行される。一方で、潜像画像情報38に、特定部画像情報41が含まれていない場合や、潜像画像情報38に含まれた特定部画像情報41が、特定画像情報と一致しない場合は、ステップS11の処理が実行される。
【0045】
ステップS8では、表示処理部14による表示処理手順が実行される。表示処理手順では、潜像画像情報38のうち、潜像部31に相当する情報(以下、「潜像部画像情報42」と記す。)を潜像部31に重ね、特定部画像情報41を特定画像潜像部32に重ねて、ステップS9として、表示画面部15に表示する。ステップS1ないしS9の一連の処理は、リアルタイムで実行される。換言すれば、例えば、携帯端末等のカメラを被写体30にかざすと、読み取られた画像情報37が、静止画や動画として記録されたうえで処理されるのではなく、画像情報37が読み取られるのと同時に、ステップS1ないしS9が処理され、顕在化された潜像画像情報38が潜像36に重なって表示画面部15に現れることで、潜像36が際立って見える。よって、例えば、携帯端末等による操作する際、取り扱いが簡便であるうえ、真贋判定が容易である。特に、潜像画像情報38が、有彩色で際立って表示画面部15に現れるため、明瞭であり、真贋判定が容易である。
【0046】
ステップS11では、表示処理部14が稼働しないため、顕在化した潜像画像情報38は表示画面部15に現れない。すなわち、表示画面部15には、画像情報37のみが表示される。よって、顕在化した潜像画像情報38が現れない被写体30は、偽物であると判断できるため、真贋判定が容易である。
【0047】
以上のとおり、本実施形態では、例えば偽造防止印刷物に印刷されている網点や万線等を画像情報37として読み取るのであって、ドットコード等の点の位置情報を解析するものではないため、仕様が簡便である。
【0048】
なお、本発明に係る他の実施形態では、潜像に特定画像潜像部が含まれていない。
他の実施形態は、フィルタ処理が不要であれば、抽出処理部を有しない。
他の実施形態は、膨張・収縮処理が不要であれば、膨張収縮処理部を有しない。
他の実施形態は、顕在化処理が不要であれば、顕在化処理部を有しない。
他の実施形態は、判定部による判定が、ステップS6よりも前である。
他の実施形態では、表示処理部が、潜像画像情報のうち、潜像部画像情報のみを潜像部に重ねて表示画面部に表示し、特定部画像情報を表示画面上で顕在化させない。
他の実施形態では、被読取領域を被写体に印刷する手順を経る。
他の実施形態では、特定画像は、特定画像潜像部ではなく、印刷文字と同様に視認し得る態様である。この場合、記憶部に記憶されている特定画像情報は、特定画像と関連付けられており、判定部は、特定画像と特定画像情報とが一致するか否かを判定する。特定画像に基づく画像情報が起点となり、表示処理部による表示処理手順が実行される。
他の実施形態では、画像処理部による画像処理手順において、潜像画像情報と共に印字画像情報を抽出し、彩色処理部による彩色処理において、潜像画像情報と共に印字画像情報も有彩色に変換される。この場合、潜像画像情報と印字画像情報とは、同じ色であってもよいし、同色で濃度が異なる態様であってもよいし、異なる色であってもよい。
他の実施形態では、判定部による判定手順において、人工知能によって特定部画像情報が検知される。特定部画像情報の検知には、ニューラルネットワーク等の一般的な機械学習アルゴリズムが用いられる。
【0049】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 CPU
2 記憶部
3 ROM
4 RAM
5 HDD/SSD
6 撮像部
7 画像処理部
8 抽出処理部
9 二値化処理部
10 膨張収縮処理部
11 顕在化処理部
12 彩色処理部
13 判定部
14 表示処理部
15 表示画面部
20 真贋判定装置
30 被写体
31 潜像部
32 特定画像潜像部
33 背景
34 被読取領域
35 印刷文字
36 潜像
37 画像情報
38 潜像画像情報
39 印字画像情報
40 背景画像情報
41 特定部画像情報
42 潜像部画像情報
【要約】
【課題】真贋判定が容易な真贋判定装置、真贋判定方法及び真贋判定プログラムを提供する。
【解決手段】真贋判定装置20は、潜像を含む被読取領域が予め印刷された被写体を、画像情報として読み取る撮像部6と、画像情報から潜像画像情報を抽出して顕在化させる画像処理部7と、顕在化した潜像画像情報を有彩色に変換する彩色処理部12と、潜像に含まれた特定画像潜像と予め記憶された特定画像情報とが一致するか否かを判定する判定部13と、顕在化した潜像画像情報を、撮像部6による読み取りと同時に潜像に重ねて表示画面部15に表示する表示処理部14とを有し、特定画像潜像が特定画像情報と一致した場合に、表示処理部14が稼働する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6