(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】ポリイミド高分子組成物とその製造方法、及びそれを用いたポリイミドフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 79/08 20060101AFI20231114BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
C08L79/08
C08K5/20
(21)【出願番号】P 2016255917
(22)【出願日】2016-12-28
【審査請求日】2019-12-20
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】10-2015-0190927
(32)【優先日】2015-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517002971
【氏名又は名称】ドンジン セミケム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DONGJIN SEMICHEM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】チャ ヨンチョル
(72)【発明者】
【氏名】パク セジュ
(72)【発明者】
【氏名】アン ミンシ
(72)【発明者】
【氏名】イ スンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ピョン ジャフン
(72)【発明者】
【氏名】ホン ウスン
(72)【発明者】
【氏名】パク スンヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ジェフン
(72)【発明者】
【氏名】ペ ミニョン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ギソク
(72)【発明者】
【氏名】イ サンジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ドンミン
【合議体】
【審判長】加藤 友也
【審判官】植前 充司
【審判官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/186782(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79/08
C08K 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミン単量体を含有する合成溶液にアンハイドライド単量体を加えて反応させるステップと、
前記反応溶液に触媒及び脱水剤を加えて反応させてから固形化させるステップと、
前記固形化物をDMPA(ジメチルプロピオンアミド)に分散させるステップと、を含む
ことを特徴とす
る下記式1:
【化1】
(式中、R
1
は芳香族アンハイドライド単量体から誘導される4価の有機基であり、
Rはジアミン単量体から誘導される2価の有機基であり、
nは1~1,000の定数であり、
mは1~1,000の定数である。)
で表されるポリアミック酸-ポリイミド共重合体を含むポリイミド高分子組成物の製造方法であって、
前記ポリイミド高分子組成物の製造方法で使用される合成溶媒は、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるものを含み、
前記アミド系溶媒がジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、またはn
-メチルピロリドンである、ポリイミド高分子組成物の製造方法。
【請求項2】
前記ジアミン単量体は、PPDA(p-フェニレンジアミン)、ODA(4,4’-オキシジアニリン)、MDA(4,4’-メチレンジアニリン)、m-tolidine(2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル)、TPE-R(1,3-ビス(4’-アミノフェノキシ)ベンゼン)、TFMB(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)、HFBAPP(2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン)、BIS-AP-AF(2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)、DRFB(1,3-ジアミノ-2,4,5,6-テトラフルオロベンゼン)、DDS(3,3’-ジアミノジフェニルスルホン)、ASD(4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド)、BAPS(ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン)、m-BAPS(2,2’-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン]スルホン)及びこれらの組合せからなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項
1に記載のポリイミド高分子組成物の製造方法。
【請求項3】
前記アンハイドライド単量体は、芳香族ジアンハイドライド単量体であることを特徴とする請求項
1に記載のポリイミド高分子組成物の製造方法。
【請求項4】
前記芳香族ジアンハイドライド単量体は、BTDA(3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物)、PMDA(ピロメリト酸無水物)、BPDA(3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、6FDA(2,2-ビス(3,4-アンヒドロジカルボキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン二無水物)、a-BPDA(2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、ODPA(4,4’-オキシジフタル酸無水物)、DSDA(3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物)、BPADA(5,5’-[1-メチル-1,1-エタンジイルビス(1,4-フェニレン)ビスオキシ]ビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)、HQDA(ハイドロキノンジフタル酸無水物)及びこれらの組合せからなる群から選択されたものを含むものであることを特徴とする請求項
3に記載のポリイミド高分子組成物の製造方法。
【請求項5】
一つ以上のアンハイドライド単量体を加えるものであることを特徴とする請求項
1に記載のポリイミド高分子組成物の製造方法。
【請求項6】
前記脱水剤は、酸無水物を含み、前記触媒は、3級アミン類を含むものであることを特徴とする請求項
1に記載のポリイミド高分子組成物の製造方法。
【請求項7】
4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)を
添加するステップを含む請求項1に記載のポリイミド高分子組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド高分子組成物とその製造方法、及びそれを用いたポリイミドフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、他の高分子に比べて電気的、熱的、化学的、機械的性質が優れているため、耐熱尖端素材及び電子素材分野において多様に適用されている。特に、ディスプレイ分野において、柔軟基板を製造するための素材において、高い耐熱特性のため関心を集めている。
【0003】
ポリイミドを合成するために、一般的にはジアミン単量体とジアンハイドライド単量体及び極性溶媒が用いられる。イミド方法によって、熱的イミド方法、化学的イミド方法などが多く用いられるが、化学的イミド方法を適用するために触媒や脱水剤を用いて化学的イミド方法を進ませることもある。
【0004】
耐熱性の優れたポリイミド樹脂を合成するためには、芳香族構造の単量体を用いなければならないが、芳香族環の高密度により、フィルムの色が褐色または黄色になり、可視光線領域において透過度が低くなる。このようなポリイミド樹脂は、透明性が求められる分野においては限界があり、ガラス基板素材の代替物として用いるためには他の組成物と構造設計が必要である。ところが、一つの物性が改善されると他の物性が落ちる性質があり、ポリイミドの透明性、熱的性質、機械的性質を全て満足させる透明柔軟基板を製造するためには、ポリアミック酸(polyamic acid)組成物の開発が必要な実情である。
【0005】
ポリイミドを合成するために用いる溶媒は、その大概が極性溶媒で、環境規制対象物質である(特許文献1)。しかし、これを取り替えると求めている物性を得ることができないため、そのまま用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術による問題点を解決するために、DMPA(ジメチルプロピオンアミド)を合成溶媒または分散溶媒として用いてポリアミック酸-ポリイミド共重合体を製造することにより、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一側面は、DMPA(ジメチルプロピオンアミド)を合成溶媒または分散溶媒として用いて製造され、下記式1
【化1】
(式1中、R
1はフッ素基または芳香族アンハイドライド単量体であり、Rはジアミン単量体であり、nは1~1,000の定数であり、mは1~1,000の定数である。)で表示されるポリアミック酸-ポリイミド共重合体を含む、ポリイミド高分子組成物を提供する。
【0009】
本発明の他の側面は、ジアミン単量体を含有する合成溶媒にアンハイドライド単量体を加えて反応させるステップと、前記反応溶液に触媒及び脱水剤を加えて反応させてから固形化させるステップと、前記固形化物をDMPA(ジメチルプロピオンアミド)に分散させるステップと、を含む透明ポリイミドフィルム製造用ポリイミド高分子組成物の製造方法を提供する。
【0010】
本発明のまた他の側面は、ジアミン単量体を含有するDMPA(ジメチルプロピオンアミド)溶液にアンハイドライド単量体を加えて反応させるステップと、前記反応溶液に末端-キャッピング製剤を加えてから反応させてポリアミック酸を合成するステップと、前記ポリアミック酸に加橋剤を加えて混合するステップと、を含むポリイミド高分子組成物の製造方法を提供する。
【0011】
本発明のまた他の側面は、本発明の上記側面によるポリイミド高分子組成物から形成された透明または有色のポリイミドフィルムを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、既存ポリイミドの合成に用いられていた極性溶媒の代わりに、DMPA(ジメチルプロピオンアミド)を合成または分散に用いることにより、環境規制対象である極性溶媒を代替することができる。本発明は、DMPA(ジメチルプロピオンアミド)を用いることによって、従来の極性溶媒をもちいた時よりCTE、透過度などの物性の向上されたポリイミドフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図を参照し、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の具現例及び実施例を詳しく説明する。
【0014】
しかし、本発明は、様々な形態で具現することができ、下記の具現例及び実施例に限定されるものではない。そして、図面で本発明を明確に説明するために説明とは関係のない部分は省略しており、明細書全体にわたって類似した部分に対しては類似した図面符号を付けている。
【0015】
本発明の一側面は、DMPA(ジメチルプロピオンアミド)を合成溶媒または分散溶媒として用いて製造され、下記式1
【化2】
(式1中、R
1はフッ素基または芳香族アンハイドライド単量体であり、Rはジアミン単量体であり、nは1~1,000の定数であり、mは1~1,000の定数である。)で表示されるポリアミック酸-ポリイミド共重合体を含む、ポリイミド高分子組成物を提供する。
【0016】
本発明の一具現例において、前記ポリイミド高分子組成物は、透明または有色のポリイミドフィルムを製造するためのものであり得る。
【0017】
本発明の一具現例において、前記ジアミン単量体は、PPDA(p-フェニレンジアミン)、ODA(4,4’-オキシジアニリン)、MDA(4,4’-メチレンジアニリン)、m-tolidine(2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル)、TPE-R(1,3-ビス(4’-アミノフェノキシ)ベンゼン)、TFMB(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)、HFBAPP(2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン)、BIS-AP-AF(2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)、DRFB(1,3-ジアミノ-2,4,5,6-テトラフルオロベンゼン)、DDS(3,3’-ジアミノジフェニルスルホン)、ASD(4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド)、BAPS(ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン)、m-BAPS(2,2’-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン]スルホン)及びこれらの組合せからなる群から選択されたものを含むことができる。ポリイミドの適用分野の要求物性に応じて、適切なジアミン単量体を選択して用いることができる。高い耐熱特性を有し、かつ低い熱膨張係数を示すポリイミドフィルムを製造するためには、芳香族構造のジアミン単量体を選択して用いることができ、透明性が求められない有色ポリイミドの合成の場合、PPDA単量体を用いることが適切である。さらに、透明なポリイミドを合成するためにはフッ素系単量体を用いることができ、例えば、TFMB単量体を用いることができる。
【0018】
本発明の一具現例において、前記アンハイドライド単量体は、芳香族ジアンハイドライド単量体であり得、例えば、BTDA(3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物)、PMDA(ピロメリト酸無水物)、BPDA(3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、6FDA(2,2-ビス(3,4-アンヒドロジカルボキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン二無水物)、a-BPDA(2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、ODPA(4,4’-オキシジフタル酸無水物)、DSDA(3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物)、BPADA(5,5’-[1-メチル-1,1-エタンジイルビス(1,4-フェニレン)ビスオキシ]ビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)、HQDA(ハイドロキノンジフタル酸無水物)及びこれらの組合せからなる群から選択されたものを含むことができる。前記芳香族ジアンハイドライド単量体は、一つ以上、例えば、少なくとも二つの単量体を用いることができる。ポリイミドの適用分野に要求物性に応じて、適切なアンハイドライド単量体を選択して用いることができる。高い耐熱特性を有し、かつ透明性が求められない有色ポリイミドフィルムの合成の場合、BPDA及びPMDA単量体を用いることができる。さらに、透明なポリイミドを合成するためには6FDA単量体を用いることが適切であり、耐熱特性と機械的物性を向上させるためにはBPDA単量体を用いることが適切である。
【0019】
本発明の他の側面は、ジアミン単量体を含有する合成溶媒にアンハイドライド単量体を加えて反応させるステップと、前記反応溶液に触媒及び脱水剤を加えて反応させてから固形化させるステップと、前記固形化物をDMPA(ジメチルプロピオンアミド)に分散させるステップと、を含むポリイミド高分子組成物の製造方法を提供する。
【0020】
本発明のまた他の側面は、ジアミン単量体を含有するDMPA(ジメチルプロピオンアミド)溶液にアンハイドライド単量体を加えて反応させるステップと、前記反応溶液に末端-キャッピング製剤を加えてから反応させてポリアミック酸を合成するステップと、前記ポリアミック酸に加橋剤を加えて混合するステップと、を含むポリイミド高分子組成物の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の一具現例において、前記ポリイミド高分子組成物は、透明または有色のポリイミドフィルムを製造するためのものであり得る。
【0022】
本発明の一具現例において、前記ジアミン単量体は、PPDA(p-フェニレンジアミン)、ODA(4,4’-オキシジアニリン)、MDA(4,4’-メチレンジアニリン)、m-tolidine(2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル)、TPE-R(1,3-ビス(4’-アミノフェノキシ)ベンゼン)、TFMB(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)、HFBAPP(2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン)、BIS-AP-AF(2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)、DRFB(1,3-ジアミノ-2,4,5,6-テトラフルオロベンゼン)、DDS(3,3’-ジアミノジフェニルスルホン)、ASD(4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド)、BAPS(ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン)、m-BAPS(2,2’-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン]スルホン)及びこれらの組合せからなる群から選択されたものを含むことができる。ポリイミドの適用分野の要求物性に応じて、適切なジアミン単量体を選択して用いることができる。高い耐熱特性を有し、かつ低い熱膨張係数を示すポリイミドフィルムを製造するためには、芳香族構造のジアミン単量体を選択して用いることができ、透明性が求められない有色ポリイミドの合成の場合、PPDA単量体を用いることが適切である。さらに、透明なポリイミドを合成するためにはフッ素系単量体を用いることができ、例えば、TFMB単量体を用いることができる。
【0023】
本発明の一具現例において、前記アンハイドライド単量体は、芳香族ジアンハイドライド単量体であり得、例えば、BTDA(3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物)、PMDA(ピロメリト酸無水物)、BPDA(3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、6FDA(2,2-ビス(3,4-アンヒドロジカルボキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン二無水物)、a-BPDA(2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、ODPA(4,4’-オキシジフタル酸無水物)、DSDA(3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物)、BPADA(5,5’-[1-メチル-1,1-エタンジイルビス(1,4-フェニレン)ビスオキシ]ビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)、HQDA(ハイドロキノンジフタル酸無水物)及びこれらの組合せからなる群から選択されたものを含むことができる。前記芳香族ジアンハイドライド単量体は、一つ以上、例えば、少なくとも二つの単量体を用いることができる。ポリイミドの適用分野の要求物性に応じて、適切なアンハイドライド単量体を選択して用いることができる。高い耐熱特性を有し、かつ透明性が求められない有色ポリイミドフィルムの合成の場合、BPDA及びPMDA単量体を用いることができる。さらに、透明なポリイミドを合成するためには6FDA単量体を用いることが適切であり、耐熱特性と機械的物性を向上させるためにはBPDA単量体を用いることが適切である。
【0024】
本発明の一具現例において、前記合成溶媒は、本分野において用いられる溶媒なら制限なく用いることができ、例えば、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、対称グリコールジエーテル類溶媒、エーテル類溶媒及びこれらの組合せからなる群から選択されたものを含むことができる。前記アミド系溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、n-メチルピロリドン(NMP)などを含むことができ、前記ケトン系溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどを含むことができる。前記エーテル系溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサンなどを含むことができ、前記エステル系溶媒は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、δ-バレロラクトンなどを含むことができる。前記対称グリコールジエーテル類溶媒は、メチルモノグリム(1,2-ジメトキシエタン)、メチルジグリム(ビス(2-メトキシエチル)エーテル)、メチルトリグリム(1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン)、メチルテトラグリム(ビス[2-(2-メトキシエトキシエチル)]エーテル)、エチルモノグリム(1,2-ジエトキシエタン)、エチルジグリム(ビス(2-エトキシエチル)エーテル)、ブチルジグリム(ビス(2-ブトキシエチル)エーテル)などを含むことができ、前記エーテル類溶媒は、グリコールジエーテル類、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールペニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、1,3-ジオキソラン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどを含むことができる。
【0025】
本発明の一具現例において、前記合成溶媒はDMPA(ジメチルプロピオンアミド)であり得る。
【0026】
本発明の一具現例において、前記末端-キャッピング製剤は、PA(無水フタル酸)、TSA(n-テトラデシルコハク酸無水物)、HAS(ヘキサデシルこはく酸無水物)、OSA(オクタデシルこはく酸無水物)及びこれらの組合せからなる群から選択されたものであり得、好ましくはPAであり得る。前記末端-キャッピング製剤は、重合反応を調節するためのもので、モノ-アンハイドライド形態で高分子の分子量を調節し、未反応物の含量を減少させ、保管安定性を向上させることができる。
【0027】
本発明の一具現例において、ジアミン単量体を含有する合成溶媒にアンハイドライド単量体を加えて反応させるステップの後、末端-キャッピング製剤を加えるステップをさらに含むことができる。
【0028】
本発明の一具現例において、ポリアミック酸高分子溶液でポリイミド高分子組成物を合成することにおいて、イミド化反応は、熱的イミド反応と化学的イミド反応を並行できる。二つのイミド化反応を並行する場合、熱的イミド化反応の際、反応温度を減少させることができ、沈殿工程を通じて、合成の際残った未反応相を事前に除去できるメリットがある。
【0029】
本発明の一具現例において、前記脱水剤及び触媒は、化学的イミド化反応のために用いられるもので、前記脱水剤は、無水酢酸などの酸無水物を含み、前記触媒は、ピリジン、イソキノリン、β-ピコリンなどのような3級アミン類を含むことができる。
【0030】
本発明の一具現例において、前記加橋剤は4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)を含むことができる。前記4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)は下記構造を有することができる:
【化3】
【0031】
本発明の一具現例において、前記ポリイミド高分子組成物に加橋剤を加えるステップをさらに含むことができる。
【0032】
本発明のまた他の側面は、本発明に係るポリイミド高分子組成物から形成された透明または有色のポリイミドフィルムを提供する。
【0033】
本発明の一具現例において、前記ポリイミドフィルムは、前記ポリイミド高分子組成物を基板上にコーティングするステップと、前記ポリイミド高分子がコーティングされた基板を加熱乾燥させるステップとによって製造することができる。
【0034】
本発明の一具現例において、前記ポリイミド高分子組成物の製造の際用いられたジアミン単量体及びアンハイドライド単量体の種類によって、透明または有色のポリイミドフィルムを製造することができる。
【0035】
本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明するが、これらの実施例は単なる例示であり本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【実施例】
【0036】
実施例1:透明ポリイミドフィルム製造のためのポリイミド高分子溶液の製造
窒素注入装置及び滴下ロートが連結された、温度調節が可能な攪拌反応器に窒素を通過させながら、常温でDMAC704.2gを足してから、フッ素系ジアミン単量体であるTFMB32.02g(0.1mol)を溶解させた。ここにアンハイドライド単量体として芳香族単量体のBPDA8.83g(0.03mol)と、フッ素系単量体6FDA(31.1g(0.07mol)を入れて反応させた。完全に溶解されてから1時間経過後、触媒及び脱水剤としてピリジンと無水酢酸を投入して70℃に昇温させてから1時間反応させ、常温まで冷却させた。
その次、MeOHと蒸留水(3:1)の混合溶液に沈殿させて固形化させた。MeOHで十分に洗浄してから、80℃の真空オーブンで6時間十分に乾燥させてポリイミド高分子固形物を収得した。
取得したポリイミド固形物をDMPA(ジメチルプロピオンアミド)溶液に分散させ、残っている固形物がないように十分攪拌した後、異物及び未反応相を除去するためにろ過してポリイミド高分子溶液を収得した。
【0037】
比較例1
窒素注入装置及び滴下ロートが連結された、温度調節が可能な攪拌反応器に窒素を通過させながら、常温でDMAC704.2gを足してから、フッ素系ジアミン単量体であるTFMB32.02g(0.1mol)を完全に溶解させた。ここにアンハイドライド単量体として芳香族単量体のBPDA8.83g(0.03mol)と、フッ素系単量体6FDA(31.1g(0.07mol)を加えて反応させた。完全に溶解されてから1時間経過後、触媒及び脱水剤としてピリジンと無水酢酸を投入して70℃に昇温させてから1時間反応させ、常温まで冷却させた。
次いで、MeOHと蒸留水の混合溶液に沈殿させて固形化させた。MeOHで十分に洗浄してから、80℃の真空オーブンで6時間十分に乾燥させてポリイミド高分子固形物を収得した。
取得したポリイミド固形物をDMAC溶液に分散させ、残っている固形物がないように十分攪拌した後、異物及び未反応相を除去するためにろ過してポリイミド高分子溶液を収得した。
【0038】
比較例2
窒素注入装置及び滴下ロートが連結された、温度調節が可能な攪拌反応器に窒素を通過させながら、常温でDMPA(ジメチルプロピオンアミド)704.2gを足してから、フッ素系ジアミン単量体であるTFMB32.02g(0.1mol)を完全に溶解させた。ここにアンハイドライド単量体として芳香族単量体のBPDA8.83g(0.03mol)と、フッ素系単量体6FDA(31.1g(0.07mol)を加えて反応させた。完全に溶解されてから1時間経過後、触媒及び脱水剤としてピリジンと無水酢酸を投入して70℃に昇温させてから1時間反応させ、常温まで冷却させた。
その次、MeOHと蒸留水の混合溶液に沈殿させて固形化させた。MeOHで十分に洗浄してから、80℃の真空オーブンで6時間十分に乾燥させてポリイミド固形物を収得した。
取得したポリイミド固形物をDMPA(ジメチルプロピオンアミド)溶液に分散させ、残っている固形物がないように十分攪拌した後、異物及び未反応相を除去するためにろ過してポリイミド高分子溶液を収得した。
【0039】
実施例2:透明ポリイミドフィルムの製造
上記実施例1及び比較例1及び比較例2において収得したポリイミド高分子溶液を、ガラス基板上に塗布器(applicator)を用いてwet厚さ400μmでコーティングした後、コンベクションオーブン(convection oven)で280℃まで加熱乾燥させ、30μm厚さのポリイミドフィルムを製造した。
【0040】
実施例3:有色ポリイミドフィルム製造のためのポリイミド高分子溶液の製造
窒素注入装置及び滴下ロートが連結された、温度調節が可能な攪拌反応器に窒素を通過させながら、常温でDMPA(ジメチルプロピオンアミド)242.45gを足してから、PPDA10.91gを完全に溶解させ、BPDA26.48gと、PMDA2.18gを順番に投入した。完全に溶解されてから1時間経過後、PA0.2gを投入して16時間反応させ、PAAを合成した。次いで、単量体(DMPA、BPDA及びPMDA)含量の4000ppmの4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)を、反応溶媒と同じ溶媒に溶かし、反応の終わったPAAに加えて混合した。
【0041】
比較例3
窒素注入装置及び滴下ロートが連結された、温度調節が可能な攪拌反応器に窒素を通過させながら、常温でNMP242.45gを足してから、PPDA10.91gを完全に溶解させ、BPDA26.48gと、PMDA2.18gを順番に投入した。完全に溶解されてから1時間経過後、PA0.2gを投入して16時間反応させ、PAAを合成した。それから、単量体(PPDA、BPDA及びPMDA)含量の4000ppmの4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)を溶媒に溶かし、反応の終わったPAAに加えて混合した。
【0042】
実施例4:有色ポリイミドフィルムの製造
上記実施例3及び比較例3において収得したポリイミド高分子溶液を、ガラス基板上に塗布器を用いてwet厚さ350μmでコーティングした後、コンベクションオーブンで450℃まで加熱乾燥させ、20μm厚さのポリイミドフィルムを製造した。
【0043】
実験例1
上記実施例2及び実施例4において合成したポリイミドフィルムを、下記方法で物性を評価し、その結果は下記表1~3に示した。
【0044】
熱膨張係数測定
TMA(TA instrument社、Q400)を用いてTMA-methodによって線形熱膨張係数を測定した。昇温速度は1分当たり5℃、冷却速度は1分当たり20℃で測定し、フィルム内応力が残っている可能性があるため、Tg以下の温度で30℃~300℃までの温度範囲で測定した。CTE値は冷却の際の勾配から測定した。
【0045】
透過度測定
光学測定装備(Nippon Denshoku社、COH-400)を用いて可視光線領域で5回測定してから、その平均値を測定した。
【0046】
黄色度測定
光学測定装備(Nippon Denshoku社、COH-400)を用いて黄色度を測定した。
【0047】
上記測定した結果を表1~3に示した。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
前記表1~3で見られるように、従来ポリイミドフィルムの製造に用いられる極性溶媒のDMAC(N,N-ジメチルアセトアミド)またはNMP(1-メチル-2-ピロリドン)に比べて、DMPA(N,N-ジメチルプロピオンアミド)を用いた時にCTE、透過度などの物性がより優れていることが確認できる。さらに、DMPAで単量体がより良く溶解され、高い溶解度を見せた。
【0052】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明の属する技術分野の通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的特徴を変更せずに他の具体的形態に容易に変更できることが理解できると思う。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面において例示的なものであり、限定的ではないものと理解すべきである。例えば、単一型として説明されている各構成要素は、分散されて実施されることもでき、同じように、分散されたものとして説明されている構成要素も、結合された形態で実施できる。
【0053】
本発明の範囲は、上記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、それから、その均等概念から導出される全ての変更、または変更された形態が本発明に含まれるものと解釈されるべきである。